(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(E)反応性エポキシモノマーが、ポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び/又はポリオキシイソプロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び/又はポリオキシエチレングリコールジグリシジルエーテルである請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
(E)反応性エポキシモノマーの配合割合が、(A)エポキシ樹脂及び(B)ポリオール化合物の合計質量に対して2〜12質量%である請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
(C)光カチオン重合開始剤の配合割合が、(A)エポキシ樹脂、(B)ポリオール化合物及び(E)反応性エポキシモノマーの合計質量に対して0.1〜15質量%である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
(D)エポキシ基含有シラン化合物の配合割合が、(A)エポキシ樹脂、(B)ポリオール化合物、(C)光カチオン重合開始剤及び(E)反応性エポキシモノマーの合計質量に対して1〜15質量%である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物が含有する(A)エポキシ樹脂は、上記式(1)で表されるフェノール誘導体とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂(a)及び上記式(2)で表されるエポキシ樹脂(b)の両者を必須成分とする。このうち、エポキシ樹脂(a)は、本発明の感光性樹脂組成物を用いて、フォトリソグラフィー加工により得られる硬化物(パターン)の、垂直側壁形状並びに微細な解像性に寄与するものであり、式(1)で表されるフェノール誘導体とエピハロヒドリンを用いて、従来公知のエポキシ樹脂の合成方法により得ることができる。
【0023】
エポキシ樹脂(a)の一般的な合成方法としては、例えば、式(1)で表されるフェノール誘導体及びエピハロヒドリン(エピクロロヒドリンやエピブロモヒドリン等)を溶解し得る溶剤に溶解した混合溶液に、水酸化ナトリウム等のアルカリ類を添加し、反応温度まで昇温して付加反応及び閉環反応を行った後、反応液の水洗、分離及び水層の除去を繰り返し、最後に油層から溶剤を留去する方法が挙げられる。
前記の合成反応に用いる式(1)で表されるフェノール誘導体とエピハロヒドリンとの使用比率によって、エポキシ樹脂(a)中の主成分の異なるエポキシ樹脂(a)が得られることが知られている。例えば、フェノール誘導体のフェノール性水酸基に対して過剰量のエピハロヒドリンを用いた場合、式(1)中の3つのフェノール性水酸基の全てがエポキシ化された3官能のエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂(a)が得られるが、フェノール性水酸基に対するエピハロヒドリンの使用量が少なくなるのに伴い、複数のフェノール誘導体のフェノール性水酸基がエピハロヒドリンを介して結合し、残りのフェノー性水酸基がエポキシ化された分子量の大きい多官能エポキシ樹脂の含有率が増加する。
この様な多量体のエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂(a)を得る方法としては、前記のフェノール誘導体とエピハロヒドリンの使用比率で制御する方法の他に、エポキシ樹脂(a)に更にフェノール誘導体を反応させる方法も挙げられ、該方法で得られたエポキシ樹脂(a)も本発明の感光性樹脂の含有するエポキシ樹脂(a)の範疇に含まれる。
式(1)で表されるフェノール誘導体とエピハロヒドリンとの反応は、フェノール誘導体1モル(水酸基3モル相当)に対して、エピハロヒドリンを通常0.3〜30モル、好ましくは1〜20モル。より好ましくは3〜15モル用いて行われる。
【0024】
本発明の樹脂組成物が含有するエポキシ樹脂(a)としては、式(1)で表されるフェノール誘導体とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂であれば、フェノール誘導体の単量体のエポキシ樹脂またはフェノール誘導体の多量体のエポキシ樹脂のいずれを主成分として含有するエポキシ樹脂(a)でも用いることができるが、エポキシ樹脂(a)が溶剤溶解性に優れることや、軟化点が低く取扱い易いことから、フェノール誘導体の単量体のエポキシ樹脂、フェノール誘導体の二量体のエポキシ樹脂(式(1)で表されるフェノール誘導体2個がエピハロヒドリンを介して結合した構造を有するエポキシ樹脂)またはフェノール誘導体の三量体のエポキシ樹脂(式(1)で表されるフェノール誘導体3個がエピハロヒドリンを介して結合した構造を有するエポキシ樹脂)のいずれかを主成分とするエポキシ樹脂(a)が好ましく、フェノール誘導体の単量体のエポキシ樹脂またはフェノール誘導体の二量体のエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂(a)がより好ましい。
尚、本願で述べる「主成分」とは、エポキシ樹脂(a)が含有する単量体のエポキシ樹脂や多量体のエポキシ樹脂のうち、最も含有量の多いエポキシ樹脂成分を意味する。
【0025】
以下に、式(1)で表されるフェノール誘導体の単量体エポキシ樹脂(a)の具体的な構造を式(5)に示した。
【0027】
以下に、式(1)で表されるフェノール誘導体の二量体のエポキシ樹脂(a)の具体的な構造を下記式(6)に示した。
【0029】
以下に、式(1)で表されるフェノール誘導体の三量体のエポキシ樹脂(a)の具体的な構造を下記式(7)に示した。
【0031】
エポキシ樹脂(a)としては、500〜12000の範囲の重量平均分子量を有するものが好ましく、500〜9000の範囲の重量平均分子量を有するものがより好ましい。その好ましい具体例としては、NC−6300H(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量220〜240g/eq.、軟化点60〜85℃)が挙げられる。尚、本願における重量平均分子量はGPCの測定結果に基づいてポリスチレン換算で算出した値を、エポキシ当量はJIS K−7236に準拠して測定した値を、また、軟化点はJIS K−7234に準拠して測定した値をそれぞれ意味する。
【0032】
また、エポキシ樹脂(b)は、本発明の感光性樹脂組成物を用いて、フォトリソグラフィー加工により得られる硬化物(パターン)に、解像性並びに可撓性を付与するもので、その結果、該硬化物の湿熱密着性が向上する。エポキシ樹脂(b)は、ビスフェノール類とエピクロロヒドリンとの重縮合物の有するアルコール性ヒドロキシル基の一部に、更にエピクロロヒドリンを反応させることにより得ることができる。その具体例としては、NER−7604、NER−7403及びNER−1302(いずれも商品名、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。エポキシ樹脂(b)のエポキシ当量は
250〜400g/eq.であることが好ましく、又その軟化点は60〜85℃であることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物においては、エポキシ樹脂(a)の質量に対してエポキシ樹脂(b)を通常2〜4900質量%、好ましくは5〜100質量%、より好ましくは10〜70質量%用いる。エポキシ樹脂(a)の質量に対するエポキシ樹脂(b)の使用率が4900質量%を超える場合は感光画像パターンが垂直な側壁形状とならず、丸みを帯び易くなり、また、2質量%未満の場合は感光画像パターン表面に亀裂を生じ易くなる。
【0033】
本発明の感光性樹脂組成物が含有する(A)エポキシ樹脂には、前記のエポキシ樹脂(a)及びエポキシ樹脂(b)以外のエポキシ樹脂を併用してもよい。併用し得るエポキシ樹脂は特に限定されないが、後述する(E)反応性エポキシモノマーの定義に含まれるエポキシ樹脂は、併用し得るエポキシ樹脂の範疇には含まれないものとする。併用し得るエポキシ樹脂の配合割合は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。
【0034】
本発明の感光性樹脂組成物が含有する(B)ポリオール化合物は、上記式(3)及び/または上記式(4)で表されるポリエステルポリオールを必須成分とする。(B)ポリオール化合物は、強酸触媒の影響の下で(A)エポキシ樹脂中のエポキシ基と反応するヒドロキシ基を含み、反応性希釈剤として働く。特に式(3)及び/または式(4)で表されるポリカプロラクトンポリオールを用いることにより、樹脂組成物を塗布後、必要により溶剤分を乾燥させて得られる乾燥塗膜が軟化するため、フォトリソグラフィー加工時における露光硬化、現像、及び熱硬化工程での応力誘発を回避し、収縮を低減させ、感光画像の亀裂を防止することができる。
また、感光性樹脂組成物の乾燥塗膜を基材で挟み込んだレジスト積層体(ドライフィルム)として使用する場合には、レジスト積層体をプラスチック製の円筒に長尺ロールとして巻いた際に、レジスト塗膜に亀裂が起きない効果も得られる。
【0035】
式(3)中、xは平均値であり、1〜15の範囲にある実数を表し、好ましくは1〜10の範囲にある実数である。尚、ここでいう平均値とは、式(3)中に2つ記載されているxの平均値を意味し、例えば一方のxが4、他方のxが6の場合。平均値xは5となる。
R
3は2価の脂肪族炭化水素基を表し、該脂肪族炭化水素基は酸素原子で結合されていてもよい。R
3が表す脂肪族炭化水素残基とは、通常は、炭素数1〜15の直鎖又は分岐鎖の2価の脂肪族炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖の2価の脂肪族炭化水素基、より好ましくは炭素数2〜8の2価の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基であり、その具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等の直鎖の脂肪族炭化水素基や、前記の直鎖脂肪族炭化水素基に、側鎖としてアルキル基が結合した分岐鎖の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
また、R
3が表す脂肪族炭化水素残基は酸素原子で結合されていてもよい。ここでいう酸素原子で結合された脂肪族炭化水素基とは、2価の脂肪族炭化水素基が酸素原子を介して結合した2価の連結基を意味し、具体的には、例えばメチレン基とエチレン基が酸素原子を介して結合した連結基である。該連結基中の酸素数は特に限定されず、例えば、前記のメチレン基と酸素原子とエチレン基からなる連結基に、更に酸素原子とエチレン基が結合した連結基もR
3の定義に含まれる。
酸素原子により結合される2価の脂肪族炭化水素基は、該連結基中の炭素数が前記の範囲内であれば特に限定されず、直鎖同士、分岐鎖同士、直鎖と分岐鎖の組み合わせのいずれでも構わないし、また、それぞれの炭素数が異なっても構わない。尚、該連結基中の酸素原子の数は通常は1〜3個であり、1〜2個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0036】
式(3)で表されるポリエステルポリオールは、市販製品を入手可能である。その具体例としては、分子量530でOH価が210mgKOH/gである「プラクセル205」、分子量が1000でOH価が110mgKOH/gである「プラクセル210」、分子量2000でOH価が56mgKOH/gである「プラクセル220」(いずれも商品名、ダイセル社製)や、分子量550でOH価が204mgKOH/gである「Capa2054」、分子量1000でOH価が112mgKOH/gである「Capa2100」、分子量2000でOH価が56mgKOH/gである「Capa2200」(いずれも商品名、パーストープ社製)が挙げられる。
【0037】
式(4)中、yは平均値であり、1〜6の範囲にある実数を表し、好ましくは1〜4の範囲にある実数である。尚、ここでいう平均値とは、式(4)中に3つ記載されているyの平均値を意味し、例えばそれぞれのyが2、3及び7の場合。平均値yは4となる。
R
4は3価の脂肪族炭化水素基を表し、該脂肪族炭化水素基は酸素原子で結合されていてもよい。R
4が表す脂肪族炭化水素残基とは、通常は、炭素数1〜15の分岐鎖の3価の脂肪族炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10の分岐鎖の3価の脂肪族炭化水素基、より好ましくは炭素数2〜8の3価の分岐鎖の脂肪族炭化水素基であり、これらの脂肪族炭化水素基には、側鎖としてアルキル基を有するもの含まれる。
また、R
4が表す脂肪族炭化水素残基は酸素原子で結合されていてもよい。ここでいう酸素原子で結合された脂肪族炭化水素基とは、酸素原子を介して脂肪族炭化水素基が結合した3価の連結基であり、前記したR
3が表す酸素原子で結合された脂肪族炭化水素基の説明に準ずるものである。
【0038】
式(4)で表されるポリエステルポリオールは、市販製品を入手可能である。その具体例としては、分子量530〜550でOH価が310mgKOH/gである「Capa3050」、分子量900でOH価が183mgKOH/gである「Capa3091」、分子量2000でOH価が84mgKOH/gである「Capa3201」(いずれも商品名、パーストープ社製)や分子量530〜550でOH価が310mgKOH/gである「プラクセル305」、分子量850でOH価が195mgKOH/gである「プラクセル308」、分子量1250でOH価が135mgKOH/gである「プラクセル312」、分子量2000でOH価が84mgKOH/gである「プラクセル320」(いずれも商品名、ダイセル社製)が挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物における(B)ポリオール化合物の配合割合は、(A)エポキシ樹脂の合計質量に対して通常1〜30質量%、好ましくは2〜25質量%、より好ましくは3〜15質量%である。(B)ポリオール化合物の配合割合が、30質量%を超える場合は感光画像パターンが垂直な側壁形状とならず丸みを帯び易くなり、また1質量%未満の場合は充分な希釈効果や乾燥塗膜の軟化効果が得られない恐れや感光画像パターン表面に亀裂を生じ易くなる。
尚、式(3)及び式(4)で表されるポリエステルポリオールを併用する場合の両者の使用割合は、(A)エポキシ樹脂に対する(B)ポリオール化合物の配合割合が上記の範囲内であれば特に限定されない。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物が含有する(B)ポリオール化合物には、前記の式(3)及び式(4)で表されるポリオール化合物以外のポリオール化合物を併用してもよい。併用し得るポリオール化合物は特に限定されず、また併用し得るポリオール化合物の配合割合も、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。
【0040】
本発明の感光性樹脂組成物が含有する(C)光カチオン重合開始剤は、紫外線、遠紫外線、KrFやArFなどのエキシマレーザー、X線および電子線などの放射線の照射を受けてカチオンを発生し、そのカチオンが重合開始剤となりうる化合物である。(C)光カチオン重合開始剤としては、芳香族ヨードニウム錯塩や芳香族スルホニウム錯塩を挙げることができる。この内、芳香族ヨードニウム錯塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(ローディア社製、商品名 ロードシルPI2074)、ジ(4−ターシャリブチル)ヨードニウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニド(BASF社製、商品名 CGI BBI−C1)等が挙げられる。又、芳香族スルホニウム錯塩の具体例としては、4−チオフェニルジフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート(サンアプロ社製、商品名 CPI−101A)、チオフェニルジフェニルスルフォニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(サンアプロ社製、商品名 CPI−210S)、4−{4−(2−クロロベンゾイル)フェニルチオ}フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(ADEKA社製、商品名 SP−172)、4−チオフェニルジフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートを含有する芳香族スルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートの混合物(ACETO Corporate USA製、商品名 CPI−6976)及びトリフェニルスルホニウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニド(BASF社製、商品名 CGI TPS−C1)、トリス[4−(4−アセチルフェニル)スルホニルフェニル]スルホニウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド(BASF社製、商品名 GSID 26−1)、トリス[4−(4−アセチルフェニル)スルホニルフェニル]スルホニウムテトラキス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)ボレート(BASF社製、商品名 イルガキュアPAG290)等が好適に用いられる。以上の光カチオン重合開始剤のうち、本発明では感光画像形成工程において、垂直矩形加工性が高く、熱安定性が高い、芳香族スルホニウム錯塩が好ましく、4−{4−(2−クロロベンゾイル)フェニルチオ}フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−チオフェニルジフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートを含有する芳香族スルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートの混合物、トリス[4−(4−アセチルフェニル)スルホニルフェニル]スルホニウムテトラキス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)ボレートが特に好ましい。
【0041】
これらの(C)光カチオン重合開始剤は単独若しくは2種以上を併用しても差し支えない。(C)光カチオン重合開始剤成分は光を吸収する作用を持っている為、厚膜(例えば50μ以上)の場合に(C)成分を多量に使用した場合(例えば15質量%を超える量)
には硬化させる際の光を深部へ充分に透過させることが出来なくなる一方で、少量使用の場合(例えば3質量%未満)では充分な硬化速度を得ることが難しくなる。薄膜の場合には、少量(例えば1質量%以上)の添加で充分な性能を発揮する。逆に、(C)成分を多量に使用した場合には、深部への光の透過に関しては問題ないが、高価な開始剤を不必要に使用することになるため、経済的ではない。これらの点から、本発明の感光性樹脂組成物における(C)光カチオン重合開始剤成分の配合割合は、(A)エポキシ樹脂、(B)ポリオール化合物及び(E)反応性エポキシモノマーの合計質量に対して、通常0.1〜15質量%、好ましくは0.2〜8質量%である。但し、(C)光カチオン重合開始剤の、波長300〜380nmにおけるモル吸光係数が高い場合は、感光性樹脂組成物を用いる際の膜厚に応じて適切な配合量に調整する必要がある。
【0042】
本発明の感光性樹脂組成物が含有する(D)エポキシ基含有シラン化合物は、本発明の組成物を使用する工程において、基材との密着性の向上、及び、本発明の組成物により多層構造を形成させた場合の層間接着性の向上をもたらす。且つ、本発明の感光性樹脂組成物の保存安定性を阻害することがない。(D)エポキシ基含有シラン化合物の好ましい具体例としては、エポキシ基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。エポキシ基含有アルコキシシラン化合物としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の感光性樹脂組成物における(D)エポキシ基含有シラン化合物の配合割合は、(A)エポキシ樹脂、(B)ポリオール化合物、(C)光カチオン重合開始剤及び(E)反応性エポキシモノマーの合計質量に対して、通常1〜15質量%、好ましくは3〜10質量%である。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物が含有する(E)反応性エポキシモノマーは、本発明の感光性樹脂組成物による未硬化膜及び硬化膜の柔軟性、可撓性の向上に寄与し、且つ、硬化膜の接着性向上に寄与する。本発明においては、1分子中に2つのエポキシ基を有し、かつGPCの測定結果に基づいてポリスチレン換算で算出した分子量が1000以下のエポキシ化合物を反応性エポキシモノマーとする。(E)反応性エポキシモノマーの分子量が1000を超えると、相溶性が低くなり樹脂組成物の塗膜品質が劣化したり、現像性が難化し、高精細な感光画像を形成困難となり適合しない。(E)反応性エポキシモノマーとして前記式(12)で表されるエポキシ化合物を必須成分とすることにより、特に柔軟性等の前記の効果に優れた感光性樹脂組成物が得られる。
【0044】
式(12)で表される(E)反応性エポキシモノマーとしては、ポリオキシアルキレングリコールジグリシジルエーテルであることが好ましく、より好ましくはポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオキシイソプロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリオキシエチレングリコールジグリシジルエーテルなどである。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の感光性樹脂組成物における(E)反応性エポキシモノマーの配合割合は、(A)エポキシ樹脂及び(B)ポリオール化合物の合計質量に対して、通常2〜12質量%、好ましくは3〜10質量%である。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物が含有する(E)反応性エポキシモノマーには、前記式(12)で表されるエポキシ化合物以外の反応性エポキシモノマーを併用してもよい。併用し得る反応性エポキシモノマーは特に限定されず、また併用し得る反応性エポキシモノマーの配合割合も、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。
【0046】
本発明の感光性樹脂組成物には、樹脂組成物の粘度を下げ、塗膜性を向上させるために(F)溶剤を用いることができる。溶剤としては、インキや塗料等に通常用いられる有機溶剤であって、感光性樹脂組成物の各構成成分を溶解可能なもので、且つ、構成成分との化学反応を起こさないものであれば特に制限なく用いることができる。(F)溶剤の具体例としては、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びジプロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、乳酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びγ−ブチロラクトン等のエステル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、オクタン及びデカン等の脂肪族炭化水素、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ及びソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
これら溶剤は、単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。(F)溶剤成分は、基材へ塗布する際の膜厚や塗布性を調整する目的で加えるものであり、主成分の溶解性や成分の揮発性、組成物の液粘度等を適正に保持する為の使用量は、溶剤を含んでの感光性樹脂組成物中において、95質量%以下が好ましく、特に好ましくは10〜90質量%である。
【0047】
本発明の感光性樹脂組成物には、更に、紫外線を吸収し、吸収した光エネルギーを光カチオン重合開始剤、特に、芳香族ヨードニウム錯塩に対して供与するために、増感剤を使用してもよい。増感剤としては、例えばチオキサントン類、9位と10位にアルコキシ基を有するアントラセン化合物(9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体)が好ましい。前記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基等のC1〜C4のアルコキシ基が挙げられる。9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体は、更に置換基を有していても良い。置換基としては、例えば弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基や、スルホン酸アルキルエステル基、カルボン酸アルキルエステル基等が挙げられる。スルホン酸アルキルエステル基やカルボン酸アルキルエステルにおけるアルキルとしては、C1〜C4のアルキルが挙げられる。これら置換基の置換位置は2位が好ましい。
【0048】
チオキサントン類の具体例としては、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられ、2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製、商品名 カヤキュアーDETX−S)、2−イソプロピルチオキサントンが好ましい。
【0049】
9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体としては、例えば9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジメトキシ−2−エチルアントラセン、9,10−ジエトキシ−2−エチルアントラセン、9,10−ジプロポキシ−2−エチルアントラセン、9,10−ジメトキシ−2−クロロアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸メチルエステル、9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホン酸メチルエステル、9,10−ジメトキシアントラセン−2−カルボン酸メチルエステル等を挙げることができる。
【0050】
これらは、単独であるいは2種以上混合して用いることができるが、2,4−ジエチルチオキサントン及び、9,10−ジメトキシ−2−エチルアントラセンの使用が最も好ましい。増感剤成分は、少量で効果を発揮する為、その使用割合は、(C)光カチオン重合開始剤成分の質量に対し30質量%以下が好ましく、特に好ましくは20質量%以下である。
【0051】
本発明の樹脂組成物には、(C)光カチオン重合開始剤由来のイオンによる悪影響を低減する必要がある場合には、必要に応じて、イオンキャッチャーを添加してもよい。イオンキャッチャーの具体例としては、トリスメトキシアルミニウム、トリスエトキシアルミニウム、トリスイソプロポキシアルミニウム、イソプロポキシジエトキシアルミニウム及びトリスブトキシアルミニウム等のアルコキシアルミニウム、トリスフェノキシアルミニウム及びトリスパラメチルフェノキシアルミニウム等のフェノキシアルミニウム、トリスアセトキシアルミニウム、トリスステアラトアルミニウム、トリスブチラトアルミニウム、トリスプロピオナトアルミニウム、トリスアセチルアセトナトアルミニウム、トリストリフルオロアセチルアセナトアルミニウム、トリスエチルアセトアセタトアルミニウム、ジアセチルアセトナトジピバロイルメタナトアルミニウム及びジイソプロポキシ(エチルアセトアセタト)アルミニウム等の有機アルミニウム化合物等が挙げられる。これら成分は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、その配合量は、(A)エポキシ樹脂、(B)ポリオール化合物、(C)光カチオン重合開始剤及び(E)反応性エポキシモノマーの合計質量に対して10質量%以下である。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、熱可塑性樹脂、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤等の各種添加剤を用いることが出来る。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリカーボネート等が挙げられる。着色剤としては、例えばフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジン・グリーン、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック、アンスラキノンレッド、キナクリドンレッド、ジケトピロロピロールレッド等が挙げられる。これらの添加剤等を使用する場合は、その使用量は溶剤を除く本発明の感光性樹脂組成物質量中、例えば、それぞれ30質量%以下が一応の目安であるが、使用目的及び硬化膜の要求機能に応じ適宜増減し得る。増粘剤としては、例えばオルベン、ベントン、モンモリロナイト等が挙げられ、消泡剤としては、例えばシリコーン系、フルオロアルキル系および高分子系等の消泡剤が挙げられる。これらの添加剤等を使用する場合は、その使用量は溶剤を除く本発明の感光性樹脂組成物質量に対し、例えば、それぞれ10質量%以下が一応の目安であるが、使用目的及び塗工品質に応じ、適宜増減し得る。
【0053】
更に、本発明の感光性樹脂組成物には、例えば硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、モンモリロナイト、雲母粉末等の任意の無機充填剤を使用することができる。その使用量は、溶剤を除く本発明の感光性樹脂組成物質量に対し60質量%以下であるが、使用目的及び硬化膜の要求機能に応じ、適宜増減し得る。同様に、ポリメチルメタクリレート、ゴム、フルオロポリマー、ポリウレタン粉末などの有機充填剤を組み込むこともできる。
【0054】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)ポリオール化合物、(C)光カチオン重合開始剤、(D)エポキシ基含有シラン化合物及び(E)反応性エポキシモノマーの必須成分と、必要により、任意成分である(F)溶剤、増感剤、イオンキャッチャー、熱可塑性樹脂、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤および無機充填剤等を、通常の方法で混合、攪拌することにより調整される。混合、攪拌の際には、必要に応じディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミルなどの分散機を用いても良い。また、混合した後で、更にメッシュ、メンブランフィルターなどを用いて濾過を施しても良い。
【0055】
本発明の感光性樹脂組成物は、基板への塗工の為、好ましくは溶剤を添加した液状の形態で使用される。溶剤で所望粘度に希釈した本発明の感光性樹脂組成物を基板上へ計量分配し、この基板を一定の回転速度まで加速し、且つ回転速度を一定に保持して所望の膜厚を得られる工程からなるスピンコート法により塗布できる。スピンコートは、膜厚を制御するために種々の回転速度で実施できる。別法として、フォトレジスト組成物は、ローラー塗工、ドクターナイフ塗工、スロット塗工、浸漬塗工、グラビア塗工、吹付け塗工などの他の塗工方法を使用して基板に塗布できる。塗工後、乾燥ベークを行い、溶媒を蒸発させる。乾燥ベーク条件は、フォトレジストの半硬化乾燥塗膜を形成するように選択し、典型的な条件としては、表面平滑なホットプレートを使用し、表面に接触させるか又は接触に近い状態として、塗膜の厚さや溶剤の揮発性、並びに基板の熱伝導性や基板厚さに応じて、65℃で1〜15分間、続いて90〜125℃で5〜120分間乾燥を行う。別法として、乾燥ベークは対流式オーブン内で実施できる。次いで、乾燥した感光性樹脂組成物塗膜は、所望のマスクパターンの描かれたフォトマスクを通して、中圧若しくは超高圧水銀灯からの近紫外、300〜500nmの輝線による露光、若しくは、シンクロトロン線源からのX線放射線によるエネルギー線照射、若しくは、直接又はパターニングした露光を介した電子ビーム放射線照射により、感光画像の形成をすることができる。密着、近接、又は投影プリントを使用できる。露光に続いて、塗膜における露光した領域を酸触媒作用による重合反応を促進するために、露光後ベークを行う。典型的な条件は、ホットプレート上において塗膜の厚さ並びに基板の熱伝導性や基板厚さに応じて、65℃で1〜5分間、次いで、95℃で1〜60分間である。
【0056】
次いで、未露光部を溶解除去するために、塗膜の厚さ、及び現像液溶媒の溶媒力価に応じて典型的には2〜30分間有機溶媒現像液中に浸漬する。更に、濯ぎ溶媒を塗布することにより現像した画像を濯いで、硬化膜に付着した現像液を除去する。付着した現像液は溶解したフォトレジスト成分を含有しており、乾燥させると感光画像上に残渣となり汚染を起こし易いので、付着した現像液の除去が必要である。浸漬法の場合は、清浄な現像液槽を準備し、多段階にわたり現像を行うことで残渣の付着を防止可能である。
別法として、防爆型霧化用噴霧ノズル、又は防爆型微小シャワーヘッド噴霧ノズルのいずれかを使用して吹付けにより現像液溶媒を塗布できる。更に、他の現像方法としては、パドル法を使用して現像液を塗布する方法が挙げられる。パドル法とは、現像する基板を、回転するツールヘッド上に置き、次いで基板面積全体の上に澱んでいる層、又はパドルを形成するに足る量の現像液を、低速回転する基板上に計量分配し回転を停止し、形成された現像液パドルを、一定時間基板上で静置させた後、基板の回転を加速して使用済みの現像液をスピン除去し、回転が止まるまで減速する。明瞭な感光画像が得られるまで、必要に応じシーケンスを数回繰り返す方法を用いるのが通常である。
【0057】
適切な現像液としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アセトン、シクロペンタノン、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、N−メチルピロリドン、アニソール、及び乳酸エチルが挙げられるが、それらに限定されない。未露光部を良好に溶解し、且つ比較的低コストである、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが、特に好ましい。
適切な濯ぎ液としては、任意の上述の現像液溶媒、並びにメタノール、エタノール、イソプロパノール、及び酢酸n−ブチルが挙げられる。この内、速やかに洗浄ができ急速に乾燥させることができる、アセトン、エタノール、及びイソプロパノールが特に好ましい。最後に、基板の耐熱性に応じて、130〜200℃の温度条件で加熱処理を施し、膜を熱硬化させることにより、諸特性を満足する永久保護膜が得られる。
【0058】
使用することができる基板材料には、シリコン、二酸化ケイ素、タンタル、リチウムタンタレート、窒化ケイ素、アルミナ、ガラス、ガラス−セラミックス、砒化ガリウム、燐化インジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、鋼、銅−シリコン合金、インジウム−スズ酸化物被覆ガラス、ポリイミド及びポリエステルなどの有機フィルム、金属、半導体、及び絶縁材料のパターニング領域を含有する任意の基板などが含まれるが、それらに限定されない。
【0059】
本発明の感光性樹脂組成物は、基材で挟み込んでレジスト積層体として用いることもできる。例えば、ベースフィルム(基材)上に、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター等を用いて溶剤で希釈した感光性樹脂組成物を塗工した後、45〜100℃に設定した乾燥炉で溶剤を除去することにより、また、必要に応じてカバーフィルム(基材)等をラミネートすることによりレジスト積層体を得ることができる。この際、ベースフィルム上のレジストの厚さは、2〜100μmに調整される。基材であるベースフィルム及びカバーフィルムとしては、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、TAC、ポリイミド等のフィルムが使用される。これらフィルムは必要に応じて、シリコーン系離型処理剤や非シリコーン系離型処理剤等により離型処理されたフィルムを用いてもよい。この様なレジスト積層体を使用するには、例えばカバーフィルムを剥がして、ハンドロール、ラミネーター等により、温度40〜100℃、圧力0.05〜2MPaで基板に転写し、前記液状の感光性樹脂組成物と同様に露光、露光後ベーク、現像、加熱処理をすればよい。
本発明のレジスト積層体によって、感光性樹脂組成物ドライフィルムレジストとして使用すれば、支持体又は基板上への塗布、および乾燥の工程を省略することが可能であり、より簡便に本発明の感光性樹脂組成物を用いた微細パターンの形成が可能となる。
【0060】
MEMSパッケージ、半導体パッケージ、及び又は、マイクロリアクター形成部品として用いる場合は、本発明の感光性樹脂組成物を基板に塗布、乾燥し、第一層の感光性樹脂塗膜を形成する。該第一層を露光、露光後ベークする。さらに本発明の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥し、第二層の感光性樹脂塗膜を形成した後、該第二層を露光、露光後ベークする。この工程を繰り返し、最後に一括して現像、ハードベーク処理を行うことにより複雑な多層構造パターンを形成することが可能である。或いは、第一層を現像し、ハードベーク後、第二層を塗布、乾燥し、フォトマスクを介しアライメント露光を行い、現像、ハードベークを行うことを繰り返すことによって多層構造パターンを形成してもよい。また、各感光性樹脂層の形成はドライフィルムレジストをラミネートして形成してもよい。
【0061】
尚、「パッケージ」とは、基板、配線、素子等の安定性を保つため、外気の気体、液体の浸入を遮断するために用いられる封止方法又は封止されたものである。本発明で記載するパッケージとは、MEMSのような駆動部があるものや、SAWデバイス等の振動子をパッケージするための中空パッケージや、半導体基板、プリント配線版、配線等の劣化を防ぐために行う表面保護や、マイクロリアクター形成部品及びそれらを天板で密閉する為の樹脂封止等をいう。「ウエハレベルパッケージ」とはウエハの状態で保護膜、端子、配線加工、パッケージまで行い、その後チップへ切り出して個片化するもの、また、微細なミクロ乃至ナノ流路やオリフィスプレートをウエハ内で一括して三次元加工する工法のことを表す。
【0062】
本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、フォトリソグラフィーで微細かつ垂直な側壁形状パターンを形成することが可能であり、その硬化物は、低応力、耐湿熱性に優れる特性を有する。半導体やMEMS・マイクロマシンアプリケーション分野、特に、MEMSパッケージ、半導体パッケージ、マイクロリアクター形成部品に必要とされる特性を満足する永久レジスト及び硬化物を得られ、これらの分野において大いに有用である。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではない。
【0064】
実施例1〜6及び比較例1〜7
(感光性樹脂組成物溶液(液状レジスト)の調整)
表1に記載の配合量(単位は質量部、溶液品は本体の固形分質量部とした)に従って、(A)エポキシ樹脂、(B)ポリオール化合物、(C)光カチオン重合開始剤、(D)エポキシ基含有シラン化合物及び(E)反応性エポキシモノマーを、シクロペンタノンによって濃度が65質量%となるように希釈したものを「液状レジスト−A」、濃度が34質量%となるように希釈したものを「液状レジスト−B」とし、攪拌機付きフラスコで60℃、1時間攪拌混合溶解し、放冷後、孔径1.0μmのメンブランフィルターによって各々濾過を施し、本発明及び比較用の感光性樹脂組成物溶液(液状レジスト)を得た。
【0065】
(感光性樹脂組成物のパターニング)
実施例1〜6及び比較例1〜7で得られた各液状レジスト−Aを、シリコンウエハ上にスピンコーターで塗工後、95℃のホットプレートにより10分間のプレベークを行い、塗工後乾燥膜厚25μmの感光性樹脂組成物層を得た。その後、ウエハ端面の塗膜盛り上がり部分を溶解除去、乾燥後、i線露光装置(マスクアライナー:ウシオ電機社製)を用いて解像性評価用グレースケール付きフォトマスクを介して、露光量500mJ/cm
2(ソフトコンタクト、i線)を照射した。続いて、95℃のホットプレートにより5分間の露光後ベーク(以下「PEB」と記載する)を行った。次にSU−8 Developer(商品名、マイクロケム社製、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート主成分)によって23℃で3分間浸漬現像し、イソプロパノールでリンス洗浄、乾燥を経て、シリコンウエハ上に硬化した樹脂パターンを得た。
【0066】
(感光性樹脂組成物の感度、解像性、クラック評価)
前記のパターニング試験において、マスク転写精度が最良となる露光量を最適露光量とし、それぞれの感光性樹脂組成物の感度の評価を行った。最適露光量の値が小さいほど感度が高いことを表す。結果を下記表1に示した。
また、1〜100μmのラインアンドスペース及び真円形のホールパターンの配置されたフォトマスクを使用し、各組成物の最適露光量(ソフトコンタクト、i線、表1の露光量参照)の照射をし、95℃のホットプレートにより5分間のPEBを行った。SU−8 Developer(商品名、マイクロケム社製、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート主成分)によって23℃で3分間浸漬現像し、イソプロパノールでリンス洗浄後、乾燥を行った。残渣及び曲がりがなく垂直な側壁形状に解像されたレジストパターン中、基板へ密着している最も細かいパターン幅を測定して解像性の評価を行った。結果を下記表1に示した。
また、得られた感光画像パターンのクラック発生について評価を行った。膜全面に亀裂(膜底部まで不連続な断裂を生じている)がある状態を「××」、矩形ホールパターンの角にのみひび(膜の極表面部に生じる断裂状態を指す)を生じている状態を「×」、ひびの発生が全く無い状態を「○」とした。結果を下記表1に示した。
【0067】
(感光性樹脂組成物の硬化物の湿熱密着性評価)
実施例1〜6及び比較例1〜7で得られた各液状レジスト−Aを、シリコンウエハ上にスピンコーターで塗工後、95℃のホットプレートにより10分間のプレベークを行い、塗工後乾燥膜厚25μmの感光性樹脂組成物層を得た。その後、ウエハ端面の塗膜盛り上がり部分を溶解除去、乾燥後、i線露光装置(マスクアライナー:ウシオ電機社製)を用いて密着性評価用パターンフォトマスクを介して、各組成物の最適露光量(ソフトコンタクト、i線、表1の露光量参照)の照射をし、95℃のホットプレートにより5分間のPEBを行った。SU−8 Developer(商品名、マイクロケム社製、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート主成分)によって23℃で3分間浸漬現像し、イソプロパノールでリンス洗浄、乾燥、200℃のオーブンで60分間ハードベーク処理を経て、シリコンウエハ上に硬化した樹脂パターンを得た。この樹脂パターン付きウエハを切断し、PTFE製内筒型密閉容器中で、水溶性有機溶剤入り水溶液−A(組成:2−イミダゾリジノン10質量%、2,2’−スルホニルジエタノール7.5質量%、グリセリトール5質量%、ペンチレングリコール5質量%、エチレンオキシド変性アセチレノール0.4質量%)、同−B(組成:ガンマブチロラクタム30質量%、2,2’−オキシジエタノール10質量%、ヘキサメチレングリコール5質量%、エチレンオキシド変性アセチレノール0.2質量%)、同−C(組成:グリセリトール15質量%、ポリエチレングリコール#400 5質量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル3質量%)の各溶液に、各切断片を個別に浸して、80℃、24時間の湿熱試験に処した。試験前後の樹脂パターンの接着力を、シェア強度試験機にて測定し、接着力劣化無き場合を「○」、劣化の有った場合を「×」、試験後にパターンの浮きや剥離があった場合を「××」とした。結果を下記表1に示した。
【0068】
(膜付き基板の内部応力測定)
「膜付き基板の内部応力」とは、触針式表面形状測定器Dektak8(商品名、Veeco社製)によって、3点支持されたシリコンウエハ基板(直径100mm
厚さ0.5mm)の膜形成前と膜形成後の基板の反り量を測定し、前後の反り量の変化を応力に換算したものである。一般に、膜の応力は、膜を形成される基材の形状・材質によって影響されるものではないので、シリコンウエハ基板上に膜を形成し、形成前後の基板反り量を測定して得られたものが、内部応力を示す。樹脂膜が硬化収縮する場合は圧縮応力となり、その応力の大きさにつれて、硬化膜のストレスが基板の反りを増大させ、膜自体もクレイジングやクラックなどの亀裂を生じる。内部応力が小さいほど、基板の反りも低減し、膜自体の亀裂も解消する。
実施例1〜6及び比較例1〜7で得られた各液状レジスト−Bを、反り量測定済みの各シリコンウエハ(直径100mm 厚さ0.5mm)上にスピンコーターで塗工後、95℃のホットプレートにより5分間のプレベークを行い、塗工後乾燥膜厚2.0μmの感光性樹脂組成物層を得た。その後、ウエハ端面の塗膜盛り上がり部分を溶解除去、乾燥後、i線露光装置(マスクアライナー:ウシオ電機社製)を用いて、各組成物の最適露光量(ソフトコンタクト、i線、表1の露光量参照)を膜全面に照射し、95℃のホットプレートにより5分間のPEBを行った後、200℃のオーブンで60分間ハードベーク処理を経て、硬化した樹脂膜付きシリコンウエハを得た。膜付き基板の各サンプルを23℃に充分放冷した後、反り量を測定し、圧縮応力を計算した。結果を下記表1に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
尚、表1における(A−1)〜(E’−1)はそれぞれ以下のものを示す。
(A−1):NC−6300H(商品名、日本化薬社製、エポキシ樹脂(a)、エポキシ当量225g/eq.)
(A−2):NER−7604(商品名、日本化薬社製、エポキシ樹脂(b)、エポキシ当量330g/eq.)
(A−3):NER−7403(商品名、日本化薬社製、エポキシ樹脂(b)、エポキシ当量250g/eq.)
(A’−1):EPON SU−8(商品名、モーメンティブ社製、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量213g/eq.)
(A’−2):ERL−4221(商品名、ポリサイエンシズ社製、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、エポキシ当量126g/eq.)
(A’−3): EHPE−3150(商品名、ダイセル社製、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、エポキシ当量180g/eq.)
(A’−4):XD−1000(商品名、日本化薬社製、ジシクロペンタジエンフェノール縮合型エポキシ樹脂、エポキシ当量253g/eq.)
(B−1):Capa3050(商品名、パーストープ社製、式(4)におけるyが1〜2、R
4が炭素数6の3価の脂肪族炭化水素基である三官能ポリオール、分子量540、OH当量310mgKOH/g)
(B−2):プラクセル308(商品名、ダイセル社製、式(4)におけるyが2〜3、R
4が炭素数6の3価の脂肪族炭化水素基である三官能ポリオール、分子量850、OH当量195mgKOH/g)
(B−3):プラクセル312(商品名、ダイセル社製、式(4)におけるyが3〜4、R
4が炭素数6の3価の脂肪族炭化水素基である三官能ポリオール、分子量1250、OH当量135mgKOH/g)
(B−4):プラクセル205(商品名、ダイセル社製、式(3)におけるxが1〜3、R
3が炭素数4〜6の2価の脂肪族炭化水素基である二官能ポリオール、分子量530、OH当量210mgKOH/g)
(B−5): プラクセル220(商品名、ダイセル社製、式(3)におけるxが8〜9、R
3が炭素数5の2価の脂肪族炭化水素基である二官能ポリオール、分子量2000、OH当量56mgKOH/g)
(B’−1):ポリエチレングリコール1000(分子量1000)
(C−1):SP−172(商品名、ADEKA社製、50wt%炭酸プロピレン溶液、但し表中記載配合量は固形分値を表記した)
(C−2):CPI−6976(商品名、ACETO社製、50wt%炭酸プロピレン溶液、但し表中記載配合量は固形分値を表記した)
(C−3):イルガキュアPAG290(商品名、BASF社製)
(D−1):3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(D−2):3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン
(E−1):エポトートPG−207GS(商品名、新日鉄住金化学社製、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量317g/eq.、分子量634)
(E−2):アデカグリシロールED−506(商品名、ADEKA社製、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量310g/eq.、分子量620)
(E’−1):エピオールE−1000(商品名、日油社製、PEG−1000のジグリシジルエーテル、エポキシ当量571g/eq.、分子量1142)
表1の結果の通り、各実施例から得られた組成物の特性は、最適露光量が小さく高感度で、感光パターンの解像寸法が高解像であり、内部応力も低くパターンにクラックを発生せず、湿熱後の密着性も保持されていることが判った。
【0071】
実施例7(本発明の感光性樹脂組成物からなるレジスト積層体)
表1の実施例1の配合組成比に、更にエチレングリコールジメチルエーテルを追加配合し、攪拌機付きフラスコで60℃、1時間攪拌混合溶解して、25℃における溶液粘度が3Pa・sになるよう希釈し、放冷後、孔径1.0μmのメンブラン濾過を施し、本発明の感光性樹脂組成物ドライフィルム用ラッカーを得た。このラッカーを、ベースフィルム(ポリプロピレン製、三菱樹脂社製、膜厚38μm)上に均一に塗布し、温風対流乾燥機により65℃で5分間および80℃で15分間乾燥した後、露出面上にカバーフィルム(ポリプロピレン製、三菱樹脂社製、膜厚38μm)をラミネートして、膜厚25μmのドライフィルムレジストを挟んでなるレジスト積層体(感光性樹脂組成物積層体)を得た。
【0072】
(ドライフィルムレジストのパターニング)
前記で得られた感光性樹脂組成物積層体からカバーフィルムを剥離し、ロール温度70℃、エアー圧力0.2MPa、速度0.5m/分でシリコンウエハ上にラミネートした後に、ベースフィルムを剥離し、25μmの感光性樹脂組成物層(ドライフィルムレジスト)を得た。この感光性樹脂組成物層に、i線露光装置(マスクアライナー:ウシオ電機社製)を用いてコンタクト露光を行った。その後、95℃ホットプレートで5分間のPEBを行い、SU−8 Developer(商品名、マイクロケム社製、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート主成分)によって23℃で3分間浸漬現像し、イソプロパノールでリンス洗浄、乾燥させ、基板上に硬化した樹脂パターンを得た。最適露光量125mJ/cm
2で、残渣及び亀裂がなく、細線密着パターン幅が3μmの垂直な側壁を有する硬化物が得られた。