特許第6021214号(P6021214)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021214
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】ステントデリバリカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/958 20130101AFI20161027BHJP
   A61F 2/89 20130101ALI20161027BHJP
   A61F 2/915 20130101ALI20161027BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20161027BHJP
【FI】
   A61F2/958
   A61F2/89
   A61F2/915
   A61M25/10 512
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-98303(P2012-98303)
(22)【出願日】2012年4月24日
(65)【公開番号】特開2013-226165(P2013-226165A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】393015324
【氏名又は名称】株式会社グッドマン
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和仁
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/122094(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0235899(US,A1)
【文献】 特開2009−195555(JP,A)
【文献】 特開平08−164210(JP,A)
【文献】 特表2006−507083(JP,A)
【文献】 特表2002−512862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/82− 2/958
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状のシャフト本体部と、該シャフト本体部の先端部に設けられ収縮状態から拡張状態に遷移可能なバルーンと、収縮状態の該バルーンを被包するように圧着され、かつ該バルーンの拡張により拡張するステントとを備えるステントデリバリカテーテルであって、
前記バルーンは収縮状態で複数の羽状片を有し、該各羽状片は前記バルーンの軸方向と平行に延びる折畳み目で折り返されて前記バルーンの周方向に巻きつくように折畳まれ、
前記ステントは、前記ステントの軸方向に並ぶ複数の環状部を有し、該各環状部は、先端側に位置する複数の先端側屈曲部と、基端側に位置し該先端側屈曲部と前記ステントの周方向で交互に配置される複数の基端側屈曲部と、前記ステントの周方向で隣り合う該先端側屈曲部と該基端側屈曲部とを接続する支柱部とを有し、
前記各羽状片に対応する前記折畳み目のうち少なくとも1つは前記ステントの最先端の前記環状部の周方向で隣り合う前記先端側屈曲部の間に位置することを特徴とするステントデリバリカテーテル。
【請求項2】
前記ステントは、複数の前記環状部を前記ステントの軸方向に接続する接続部を有し、該接続部は前記折畳み目に対して交差していることを特徴とする請求項1に記載のステントデリバリカテーテル。
【請求項3】
前記各羽状片は、前記バルーンの軸方向と平行に延びて前記羽状片の稜線を形成する頂部を有し、前記各羽状片は前記バルーンの周方向で隣り合う羽状片と重なるように折畳まれ、該頂部は前記折畳み目と前記バルーンの周方向でずれるように位置することを特徴とする請求項1または2に記載のステントデリバリカテーテル。
【請求項4】
前記各羽状片に対応する前記折畳み目のうち少なくとも1つは前記ステントの最基端の前記環状部の前記基端側屈曲部と重なるように位置することを特徴とする請求項1から3いずれかに記載のステントデリバリカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道等の生体管腔内に生じた狭窄部、もしくは閉塞部の改善を行うためのステントを備えたステントデリバリーカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、血管あるいは他の生体内管腔が狭窄もしくは閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄もしくは閉塞部位を拡張し、その内腔を確保するためにそこに留置する一般的には管状の医療用具である。ステントは、体外から体内に挿入するため、直径が小さく、目的の狭窄もしくは閉塞部位で拡張させて直径を大きくし、かつその管腔をそのままで保持する物である。
【0003】
ステントとしては、金属線材、あるいは金属管を加工した円筒状のものが一般的である。カテーテルなどに細くした状態で装着され、生体内に挿入され、目的部位で何らかの方法で拡張させ、その管腔内壁に密着、固定することで管腔形状を維持する。ステントは、機能および留置方法によって、セルフエクスパンダブル ステントとバルーンエクスパンダブルステントに区別される。バルーンエクスパンダブルステントはステント自体に拡張機能はなく、ステントを目的部位に挿入した後、ステント内のバルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的管腔の内面に密着させて固定する。
【0004】
特許文献1には、折り畳まれたバルーンを被包するように装着され、バルーンの拡張により拡張するステントを備えるステントデリバリカテテールが開示されている。当該ステントデリバリカテーテルはバルーンからのステントの離脱抑制を目的として、ステントを構成する線上構成要素をバルーンの羽状片の稜線を形成する頂部の下に侵入させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−195555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステントデリバリカテーテルに要求される性能として、バルーンからのステントの離脱抑制以外に、屈曲した血管または狭窄した病変の通過性が挙げられる。上記特許文献1に記載のステントデリバリカテーテルでは折畳まれたバルーンと、ステントとの位置関係についてステントデリバリカテーテルの通過性について考慮されたものではない。したがってステントデリバリカテーテルの通過性向上という観点においては折畳まれたバルーンと、ステントとの位置関係について未だ改良の余地がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、通過性が良好なステントデリバリカテーテルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、チューブ状のシャフト本体部と、該シャフト本体部の先端部に設けられ収縮状態から拡張状態に遷移可能なバルーンと、収縮状態の該バルーンを被包するように圧着され、かつ該バルーンの拡張により拡張するステントとを備えるステントデリバリカテーテルであって、前記バルーンは収縮状態で複数の羽状片を有し、該各羽状片は前記バルーンの軸方向と平行に延びる折畳み目で折り返されて前記バルーンの周方向に巻きつくように折畳まれ、前記ステントは、前記ステントの軸方向に並ぶ複数の環状部を有し、該各環状部は、先端側に位置する複数の先端側屈曲部と、基端側に位置し該先端側屈曲部と前記ステントの周方向で交互に配置される複数の基端側屈曲部と、前記ステントの周方向で隣り合う該先端側屈曲部と該基端側屈曲部とを接続する支柱部とを有し、前記各羽状片に対応する前記折畳み目のうち少なくとも1つは前記ステントの最先端の前記環状部の周方向で隣り合う前記先端側屈曲部の間に位置することを特徴とするステントデリバリカテーテルである。
【0009】
本発明によれば、前記各羽状片に対応する前記折畳み目のうちの少なくとも1つが前記ステントの最先端の環状部の周方向で隣り合う先端側屈曲部の間に位置する。複数の羽状片がバルーンの軸方向に延びる折畳み目で折り返されバルーンの周方向に巻きつくように折畳まれて収縮状態を形成するバルーンの構成において、羽状片が折り返される折畳み目が最もバルーンの径方向に圧縮し難いことを本発明者は見出した。本発明の構成ではステントの先端縁を形成する最先端の環状部の先端側屈曲部が、羽状片の折畳み目のうち少なくとも1つを避けるようにステントをバルーンに圧着されている。したがって羽状片の折畳み目と最先端の環状部の先端側屈曲部とが重なる場合と比較して、ステントの先端縁の外径を小さくすることができるのでステントデリバリカテーテルの通過性を良好なものとすることができる。
【0010】
また本発明は、前記ステントは、複数の前記環状部を前記ステントの軸方向に接続する接続部を有し、該接続部は前記折畳み目に対して交差していることを特徴とするステントデリバリカテーテルである。
【0011】
本発明によれば、複数の環状部をステントの軸方向に接続する接続部が前記バルーンの折畳み目に対して交差している。これによってステントの最先端の環状部と最基端の環状部との間でステント外表面よりバルーン外表面が外方に突出することを抑制することができる。これによってステントが圧着された領域においてステントデリバリカテーテルの外径を小さくすることができるので、ステントデリバリカテーテルの通過性を良好なものとすることができる。
【0012】
また本発明は、前記各羽状片は、前記バルーンの軸方向と平行に延びて前記羽状片の稜線を形成する頂部を有し、前記各羽状片は前記バルーンの周方向で隣り合う羽状片と重なるように折畳まれ、該頂部は前記折畳み目と前記バルーンの周方向でずれるように位置することを特徴とするステントデリバリカテーテルである。
【0013】
本発明によれば、前記頂部は、前記折畳み目と前記バルーンの周方向でずれるように配置されている。各羽状片が周方向で隣り合う羽状片と重なるように折畳まれる構成において、前記頂部と、前記折畳み目とを前記バルーンの周方向でずれるように配置することにより、収縮状態のバルーンの外径が大きくなることを抑制することができる。これによってステントが圧着された領域において外径を小さくすることができるので、ステントデリバリカテーテルの通過性を良好なものとすることができる。
【0014】
また本発明は、前記各羽状片に対応する前記折畳み目のうち少なくとも1つは前記ステントの最基端の前記環状部の前記基端側屈曲部と重なるように位置することを特徴とするステントデリバリカテーテルである。
【0015】
本発明によれば、上記ステントデリバリカテーテルの通過性向上という効果に加えて、ステントの脱落を抑制することができる。ステントデリバリカテーテルは、ステントを留置すべき病変部手前までの搬送路を形成するガイディングカテーテルなどを介して搬送される。このときステントが脱落する状況として、ステントデリバリカテーテルを基端側に引き戻す際、ステントの基端縁がガイディングカテーテルの開口部にひっかかり、ステントが脱落することが考えられる。具体的にはステントの基端縁とバルーンとの間に段差が生じていると、ガイディングカテーテルの開口部にステント基端縁がひっかかりステントが脱落するおそれがある。本発明では、バルーンの折畳み目のうち少なくとも1つは最基端の環状部の基端側屈曲部と重なるように配置されているので、ステント基端縁の基端側でバルーンが盛り上がるように形成される。これによってステント基端縁とこれより基端側のバルーンとの間の段差を小さくすることができ、ステントの脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は、ステントデリバリカテーテルの正面図であり、(b)は、ステントデリバリカテーテルの先端部の拡大図であり、(c)は、ステントデリバリカテーテルの先端部の拡大断面図である。
図2】(a)は、ステントを示す斜視図であり、(b)はステントの展開図である。
図3】(a)は、ステントを装着しない状態のステントデリバリカテーテルの先端部の拡大図であり、(b)は、(a)のIII−III線で切断した断面図である。
図4】(a)は、ステントの最先端の環状部を示すステントデリバリカテーテルの拡大図であり、(b)は、(a)のIV−IV線で切断した断面図である。
図5】(a)は、ステントの最基端の環状部を示すステントデリバリカテーテルの拡大図であり、(b)は、(a)のV−V線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化したステントデリバリカテーテルの一実施の形態を図面を用いて説明する。図1(a)は、ステントデリバリカテーテルの正面図であり、(b)は、ステントデリバリカテーテルの先端部の拡大図であり、(c)は、ステントデリバリカテーテルの先端部の拡大断面図である。
【0018】
本実施形態のステントデリバリカテーテル1は、チューブ状のシャフト本体部2と、シャフト本体部2の先端部に設けられ収縮状態から拡張状態に遷移可能なバルーン3と、収縮状態のバルーン3を被包するようにバルーン3に圧着され、かつバルーン3の拡張により拡張するステント4とを備える。
【0019】
シャフト本体部2は、内管5と外管6と分岐ハブ7とを有する。内管5は、内部にガイドワイヤーを挿通するためのガイドワイヤールーメン8が形成されたチューブ体である。内管5は、外管6の内部に挿通され、その先端部が外管6より突出している。この内管5の外面と外管6の内面により
バルーン拡張用ルーメン9が形成されている。外管6は、外管6の先端が内管5の先端よりやや後退するように位置するチューブ体である。
【0020】
外管6は、先端側外管10と基端側外管11とにより形成され、両者が接合されている。そして、先端側外管10は、基端側外管11との接合部より先端側の部分において、テーパ状に縮径し、このテーパ部より先端側が細径となっている。
【0021】
内管5および外管6の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチ
レン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴ ム、ラテックスゴム等が使用でき、好ましくは上記の熱可塑性樹脂であり、より好ましくは、ポリオレフィンである。
【0022】
内管5と外管6との間(バルーン拡張用ルーメン9内)には、線状の剛性付与体(図示せず)が挿入されていてもよい。剛性付与体は、ステントデリバリカテーテルの可撓性をあまり低下させることなく、シャフト本体部2の極度の折れ曲がりを防止するとともに、ステントデリバリカテーテル1の先端部の押し込みを容易にする。剛性付与体の先端部は、他の部分より研磨などの方法により細径となっていることが好ましい。また、剛性付与体は、細径部分の先端が、本体部外管6の先端部付近まで延びていることが好ましい。剛性付与体としては、金属線であることが好まく、ステンレス鋼等の弾性金属、超弾性合金などであり、特に好ましくは、ばね用高張力ステンレス鋼、超弾性合金線である。
分岐ハブ7は、シャフト本体部2の基端に固定されている。分岐ハブ7は内管ハブと、外管ハブとを有する。内管ハブは、ガイドワイヤールーメン8と連通するガイドワイヤーポート12を有し、内管5に固着される。外管ハブはバルーン拡張用ルーメン9と連通するインジェクションポート13を有し、外管6に固着される。分岐ハブ7の形成材料としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリ
レート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が好適に使用できる。
【0023】
なお、ステントデリバリカテーテル1の構造は、上記のようなものに限定されるものではなく、ステントデリバリカテーテル1の外管6の中間部分に内管5が開口し、当該開口がガイドワイヤールーメン8と連通するガイドワイヤーポート12を形成するものであってもよい。
【0024】
バルーン3は、全体が肉薄の膜(バルーン膜)で形成され、先端側接合部14および基端側接合部15を有し、先端側接合部14が内管5の先端部より若干基端側の位置に接合され、基端側接合部15が外管6の先端部に接合されている。これによってバルーン3はバルーン拡張用ルーメン9と連通している。バルーン3は拡張時にほぼ同一径となる筒状部分(好ましくは、略円筒部分)となった拡張可能部16を有している。拡張可能部16は、完全な円筒でなくてもよく、多角柱状のものであってもよい。またバルーン3は、拡張可能部16と各接合部14,15との間がテーパ状となるように拡張可能部16の先端側に先端側テーパ部17および拡張可能部16の基端側に基端側テーパ部18を有している。ステント4は拡張可能部16に圧着される。バルーン3は、内部に拡張用流体が注入されることにより、収縮状態から拡張に遷移し、圧着されているステント4を拡張する。
【0025】
バルーン3の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プ
ロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、 ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアリレーンサルファイド(例えば、ポリフェニレンサルファイド)等の熱可塑性樹脂、シリコーン
ゴム、ラテックスゴム等が使用できる。特に、延伸可能な材料であることが好ましく、バルーン3は、高い強度および拡張力を有する二軸延伸されたものが好ましい。本実施形態ではチューブ状のパリソンを二軸延伸することによってバルーンを肉薄の膜で形成している。
【0026】
拡張可能部16の両端の軸方向位置において重なるようにシャフト本体部2に2つのX線造影性部材19a、19bが設けられている。具体的には内管5の外面に拡張可能部16の両端の軸方向位置に対応するように2つのX線造影性部材19が設けられている。なお拡張可能部16の両端に対応する位置にX線造影性部材19を設けたが、ステント4の中央部となる位置、具体的には拡張可能部16の中央位置の内管5の外面に固定された単独のX線造影性部材19を設けるものとしてもよい。X線造影性部材19は、所定の長さを有するリング状のもの、もしくは線状体をコイル状に巻き付けたものなどが好適であり、形成材料は、例えば、金、白金、タングステンあるいはそれらの合金、あるいは銀−パラジウム合金等が好適である。
【0027】
ステント4は、全体として筒状(又は管状)であって網目状をなし収縮状態のバルーン3を被包するようバルーン3に圧着されている。ステント4は、ステント4の拡張時より小径かつ折り畳まれたバルーンの外径より大きい内径の金属パイプを加工することにより形成される。具体的にはステント4は、ステンレスやコバルトクロム合金などといった金属材料により形成されており、当該金属材料により形成されたチューブをレーザーカットすることにより形成される。レーザーカットが行われたステント4は、線状要素によって、全体として筒状(又は管状)であって網目状をなしている。形成されたステント4内に収縮状態のバルーン3を挿入し、ステント4の外面に対して均一な力を内側に向けて与えステント4を縮径させ、ステント4の軸とバルーン3の軸とがほぼ同一となるようにステント4をバルーン3に圧着する。これにより製品状態のステントデリバリカテーテルが形成される。
【0028】
図2(a)は、ステントを示す斜視図であり、(b)はステントの展開図である。ステント4は、ステント4の軸方向に並ぶ複数の環状部20と、それら各環状部20を一体化させるように
隣り合う環状部20同士を接続する接続部21を複数備えている。各環状部20はステント4の同一軸線上に並んでいる。なお環状部20のうちステント4の最も先端側に位置する環状部20を最先端側環状部20aとし、ステント4の最も基端側に位置する環状部20を最基端側環状部20bとする。
【0029】
各環状部20は、先端側に位置する複数の先端側屈曲部22と、基端側に位置し先端側屈曲部22とステント4の周方向で交互に配置される複数の基端側屈曲部23と、ステントの周方向で隣り合う先端側屈曲部22と基端側屈曲部23とを繋ぐ支柱部24とを有す。具体的には環状部20は、線状要素が軸方向の両端にて複数回折り返されたような形状となっており、全体としてステント4の周方向に連続する波状となっている。各環状部20は、ステントの軸方向の先端側において基端側に向けて返す(又は折り返す)先端側屈曲部22と、軸方向の基端側において先端側に向けて返す(又は
折り返す)基端側屈曲部23とが周方向に交互に並べて形成されている。ステントの周方向で隣り合う先端側屈曲部22と基端側屈曲部23とが支柱部24によって接続され、全体としてステントの周方向に連続する波状となっている。
【0030】
単一の環状部20において、先端側屈曲部22の頂点25は軸方向の位置が同一又は略同一となるように設定されているとともに、基端側屈曲部23の頂点26も軸方向の位置が同一又は略同一となるように設定されている。なお最先端側環状部20aの先端側屈曲部22の頂点25がステント4の先端縁を形成し、最基端側環状部20bの基端側屈曲部23の頂点26がステント4の基端縁を形成する。また先端側屈曲部22及び基端側屈曲部23は、U字状となっており、その内角は拡張状態、
収縮状態及び製造時の状態のいずれであっても、180度未満、より詳細には90度未満となっている。また、この内角は、少なくとも製造時の状態において各屈曲部22,23間で同一となるように設定されており、さらには収縮状態や拡張状態においても同一又は略同一となる。また、各先端側屈曲部22の頂点25間のピッチは同一又は略同一となっているとともに、各基端側屈曲部23の頂点26間のピッチも同一又は略同一となっており、さらには各先端側屈曲部22に係るピッ
チと各基端側屈曲部23に係るピッチも同一又は略同一となっている。つまり各環状部20は周期及び振幅が一定又は略一定となるように、その波形状が設定されている。各環状部20は相互に概ね同一の形状をしている。
また、軸方向に並べられた環状部20の数はステント4の使用目的に即してその機能が良好に発揮されるのであれば、具体的な数は任意である。
【0031】
各環状部20が線状要素によって波線状に形成されていることにより、各環状部20の半径方向への収縮及び拡張が可能となっている。これにより、バルーン3にステント4を装着する場合に、製造時の状態
から収縮状態への遷移(すなわち、変形)を良好に行わせることができる。
【0032】
接続部21は、隣り合う環状部20間に複数設けられている。ステント4では、隣り合う環状部20間の接続部21の数が3個であるが、これに限定される ことはなく3個以上であってもよく、ステント4の機能が良好に発揮されるのであれば1個であってもよい。また、各接続部21は、1個の環状部20を挟んで軸方向に隣り合う接続部21同士が軸方向に並ばないように配置されており、その間の間隔は、両接続部21のステントの周方向の位置が少なくとも1組の屈曲部22,23分相違している位置となるように設定されている。
【0033】
各接続部21は、隣り合う環状部20において相互に近い側の屈曲部間を接続するように設けられている。具体的には、隣り合う環状部20のうち、一方の環状部20における基端側屈曲部23の外回り側に先端が接続(一体化)されているとともに、他方の環状部20における基端側屈曲部23に対して最も近い位置
にある先端側屈曲部22の外回り側に基端が接続(一体化)されている。このように接続部21の接続を行うことで、接続部21の長さ寸法を短く抑えることが 可能となる。
【0034】
各接続部21は、両端部の間において曲線状に形成されている。具体的には、両端部間の途中位置において複数の屈曲部(接続部側屈曲部)27が生じるように、S字状に形成されている。各環状部20はステント4の使用に際して半径方向に収縮及び拡張されるが、この遷移に際して各環状部20は軸方向の長さ寸法が変動する。これに対して、接続部21が上記のよう
に曲線状に形成されていることにより、各接続部側屈曲部27において各環状部20における軸方向の長さ寸法の変動を吸収することができ、ステント4の全長の変動を抑えることができる。本実施形態では接続部21が曲線状に形成されているが、これに限定されることはなく接続部の形状としてたとえばステント4の軸に交差するような直線状など種々の形状を採用することができる。
【0035】
図3(a)は、ステントを装着しない状態のステントデリバリカテーテルの先端部の拡大図であり、(b)は、(a)のIII−III線で切断した断面図である。バルーン3は収縮状態で、バルーン3の径方向外側に立ち上がるように形成される複数の羽状片28を有し、各羽状片28がバルーン3の軸方向と平行に延びる折畳み目29で折り返されバルーン3の周方向に巻きつくように折畳まれる。本実施形態では、同一の巻き方向に各羽状片28が折畳まれ、内管5周りに各羽状片28が巻きついている。各羽状片28は、各羽状片28の稜線30が拡張可能部16を含んでバルーンの先端側テーパ部17から基端側テーパ部18にわたって形成されている。
【0036】
各羽状片28はバルーンの径方向外側に山折されることによって形成される頂部31を有する。各羽状片の頂部31は、バルーン3の軸方向と平行に延びる羽状片28の稜線30を形成する。各羽状片28は、バルーン3の周方向にほぼ等角度となるように形成されていることが好まく、本実施形態のバルーン3は収縮状態で、6つの羽状片28が形成され、各羽状片28はバルーン3の周方向に約60度毎の配置となっている。本実施形態では羽状片の数を6つとしたが、羽状片の数は2つであってもよく、また3つ、4つ、5つであってもよい。
【0037】
折畳み目29は、各羽状片28の根元に形成される。具体的には折り畳み目29は、各羽状片28の頂部31の間に形成され、各羽状片28の頂部31が形成する稜線30に平行に形成される。折畳み目29を覆うように各羽状片28が折畳み目29で折り返され、各頂部31がバルーンの巻き方向に向くように形成されている。バルーン3の羽状片28および折り畳み目29は、バルーン3の拡張によって実質的に消失する。
【0038】
図4(a)は、ステントの最先端側環状部を示すステントデリバリカテーテルの拡大図であり、(b)は、(a)のIV−IV線で切断した断面図である。なお図4(b)は、IV−IV線で切断し、ステントデリバリカテーテル1を先端側から見た断面図であり、図5(b)は、V−V線で切断し、ステントデリバリカテーテル1を基端側から見た断面図である。
【0039】
図4に示すように、ステント4がバルーン3に圧着された状態では、バルーン3の折畳み目29は、ステント4の最先端側環状部20aの周方向で隣り合う先端側屈曲部22の間に位置する。具体的には折畳み目29と、最先端側環状部20aの先端側屈曲部22とが、バルーン3の周方向においてずれるように配置されている。これによって折畳み目29は、最先端側環状部20aの支柱部24の間に配置されることとなる。本実施形態では全ての折畳み目29を最先端側環状部20aの周方向で隣り合う先端側屈曲部22の間に配置したが、少なくとも1つの折畳み目29を配置する構成としてもよい。
【0040】
バルーン3の頂部31は、ステント4がバルーン3に圧着された状態では、ステント4の最先端側環状部20aの先端側屈曲部22とバルーン3の径方向で重なるように位置する。具体的には、頂部31と、最先端側環状部20aの先端側屈曲部22の少なくとも一部分とが、バルーン3の周方向において同じ位置となるように配置されている。本実施形態では全ての頂部31を最先端側環状部20aの先端側屈曲部22と重複するように配置したが、少なくとも1つの頂部31を配置する構成としてもよい。
【0041】
バルーン3の各羽状片28は、ステント4が圧着された状態では、周方向で隣り合う羽状片28とバルーン3の径方向で重なるように折畳まれ、各羽状片28の頂部31は、周方向で隣り合う羽状片28の折畳み目29とバルーン3の周方向においてずれるように配置されている。また本実施形態では、6つの羽状片28を有するバルーン3において、ステント4が圧着された状態でバルーン3の径方向にバルーン膜が5層に重なる重複領域32を形成している。このようにバルーン膜がバルーン3の径方向に5層に重なる重複領域32を形成することによって、大きい径のステント4、具体的には拡張時(体腔留置時)の外径が3.5mm以上のステントをバルーン3に圧着する場合に安定して圧着することができる。
【0042】
ステント4の各接続部21は、ステント4が圧着された状態では、バルーン3の折畳み目29に対して交差している。具体的には折畳み目29と、ステント4の接続部21のうち少なくとも一部分とが、バルーン3の周方向において同じ位置となる配置されている。本実施形態では全ての接続部21がバルーンの折畳み目29に対して交差するように配置したが、環状部20の間に配置される接続部21のうち少なくとも1つの接続部21が交差するように配置してもよい。
【0043】
図5に示すように、ステント4がバルーン3に圧着された状態では、バルーン3の折畳み目29は、ステント4の最基端側環状部20bの基端側屈曲部23とバルーン3の径方向で重なるように位置する。具体的には、折畳み目29と、最基端側環状部20bの基端側屈曲部23の少なくとも一部分とが、バルーン3の周方向において同じ位置となるように配置されている。本実施形態では全ての折畳み目29を最基端側環状部20bの基端側屈曲部23と重なるように配置したが、少なくとも1つの折畳み目29を配置する構成としてもよい。
【0044】
バルーン3の頂部31は、ステント4がバルーン3に圧着された状態では、最基端側環状部20bの周方向で隣り合う基端側屈曲部23の間に位置する。具体的には頂部31と、最基端側環状部20bの基端側屈曲部23とが、バルーン3の周方向においてずれるように配置されている。これによってバルーンの頂部31は、最基端側環状部20bの支柱部24の間に配置されることとなる。本実施形態では全ての頂部31を最基端側環状部20bの周方向で隣り合う基端側屈曲部23の間に配置したが、少なくとも1つの頂部31を配置する構成としてもよい。
【0045】
以下本実施形態のステントデリバリカテーテル1の使用方法を簡単に説明する。ステントデリバリカテーテル1のバルーン3にステント4を圧着した状態でステントデリバリカテーテル1を生体内に挿入し、生体内における狭窄部や閉塞部といった治療対象箇所にてバルーン3を拡張させる。このバルーンの拡張によりステント4を治療対象箇所におけるほぼ正常な管径まで拡張させる。これにより、ステント4は、体内の管腔等の内部に密着固定されるとともに、当該管腔等の内部を拡張させた状態で保持する。この場合に、治療対象箇所を拡張させ且つその拡張させた状態を保持する剛性の機能が各環状部20において果たされる。
【0046】
ステントデリバリカテーテル1は、チューブ状のシャフト本体部2と、シャフト本体部2の先端部に設けられ収縮状態から拡張状態に遷移可能なバルーン3と、収縮状態のバルーン3を被包するように圧着され、かつバルーン3の拡張により拡張するステント4とを備える。またバルーン3は収縮状態で複数の羽状片28を有し、羽状片28がバルーン3の軸方向と平行に延びる折畳み目29で折り返されてバルーン3の周方向に巻きつくように折畳まれる。ステント4は、ステント4の軸方向に並ぶ複数の環状部20を有し、環状部20は先端側に位置する複数の先端側屈曲部22と、基端側に位置し先端側屈曲部22とステント4の周方向で交互に配置される複数の基端側屈曲部23と、ステント4の周方向で隣り合う先端側屈曲部22と基端側屈曲部23とを繋ぐ支柱部24とを有し、各羽状片28に対応する折畳み目29のうちの少なくとも1つがステント4の最先端側環状部20aの周方向で隣り合う先端側屈曲部22の間に位置する。
【0047】
本実施形態のステントデリバリカテーテル1によれば、各羽状片28に対応する前記折畳み目29のうちの少なくとも1つがステント4の最先端側環状部20aの周方向で隣り合う先端側屈曲部22の間に位置する。複数の羽状片28がバルーン3の軸方向に延びる折畳み目29で折り返されバルーン3の周方向に巻きつくように折畳まれて収縮状態を形成するバルーン3の構成において、羽状片28が折り返される折畳み目29が最もバルーン3の径方向に圧縮し難い。ステントデリバリカテーテル1では、ステント4の先端縁を形成する最先端側環状部20aの先端側屈曲部22が、羽状片28の折畳み目のうち少なくとも1つを避けるようにステント4がバルーン3に圧着されている。したがって羽状片28の折畳み目29と最先端側環状部20aの先端側屈曲部とが重なる場合と比較して、ステント4の先端縁の外径を小さくすることができるのでステントデリバリカテーテル1の通過性を良好なものとすることができる。
【0048】
またステント4は、複数の環状部20をステント4の軸方向に接続する接続部21を有し、接続部21はバルーン3の折畳み目29に対して交差している。これによってステント4の最先端側環状部20aと最基端側環状部20bとの間でステント4の外表面よりバルーン3の外表面が外方に突出することを抑制することができる。これによってステント4が圧着された領域においてステントデリバリカテーテル1の外径を小さくすることができるので、ステントデリバリカテーテル1の通過性を良好なものとすることができる。
【0049】
また羽状片28は、バルーン3の軸方向と平行に延びて羽状片28の稜線30を形成する頂部31を有し、各羽状片28はバルーン3の周方向で隣り合う羽状片28と重なるように折畳まれ、頂部31は折畳み目29とバルーン3の周方向でずれるように位置する。羽状片28が周方向で隣り合う羽状片28と重なるように折畳まれる構成において、頂部31と、折畳み目29とをバルーン3の周方向でずれるように配置することにより、収縮状態のバルーン3の外径が大きくなることを抑制することができる。これによってステント4が圧着された領域において外径を小さくすることができるので、ステントデリバリカテーテル1の通過性を良好なものとすることができる。
【0050】
また各羽状片28に対応する折畳み目29のうちの少なくとも1つが、ステント4の最基端側環状部20bの基端側屈曲部23と重なるように位置する。本構成によってステントデリバリカテーテル1の通過性向上という効果に加えて、ステント4の脱落を抑制することができる。ステントデリバリカテーテル1は、ステントを留置すべき病変部手前までの搬送路を形成するガイディングカテーテルなどを介して搬送される。このときステント4が脱落する状況として、ステントデリバリカテーテル1を基端側に引き戻す際、ステント4の基端縁がガイディングカテーテルの開口部にひっかかり、ステント4が脱落することが考えられる。具体的にはステント4の基端縁とバルーン3との間に段差が生じていると、ガイディングカテーテルの開口部にステント基端縁がひっかかりステントが脱落するおそれがある。ステントデリバリカテーテル1では、バルーン3の折畳み目29のうち少なくとも1つは最基端側環状部20bの基端側屈曲部23と重複するように配置されている。これによってステント4の基端縁の基端側でバルーン3が盛り上がるように形成される。これによってステント4の基端縁とこれより基端側のバルーンとの間の段差を小さくすることができ、ステント4の脱落を抑制することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…ステントデリバリカテーテル、2…シャフト本体部、3…バルーン、4…ステント、20…環状部、20a…最先端側環状部、20b…最基端側環状部、22…先端側屈曲部、23…基端側屈曲部、24…支柱部、28…羽状片、29…折畳み目、30…稜線、31…頂部。
図1
図2
図3
図4
図5