(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
【0022】
〜構成〜
図1A、
図1B及び
図2は、本発明の第1の実施の形態に係わる油圧ショベル(建設機械)の油圧駆動装置を示す図であり、
図1Aは油圧駆動装置全体を示す油圧回路図、
図2は油圧駆動装置全体を示すブロック図である。
図1Bは、
図1A及び
図2に示すトルクフィードバック回路の詳細を示す油圧回路図である。
【0023】
図1A及び
図2において、本実施の形態の油圧駆動装置は、第1及び第2の2つの吐出ポートP1,P2を有する可変容量型の第1油圧ポンプ1aと、第3及び第4の2つの吐出ポートP3,P4を有する可変容量型の第2油圧ポンプ1bと、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bに接続され、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bを駆動する原動機2と、第1及び第2油圧ポンプ1aの第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出油及び第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出油により駆動される複数のアクチュエータ3a〜3hと、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bの第1〜第4吐出ポートP1〜P4と複数のアクチュエータ3a〜3hとの間に配置され、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bの第1〜第4吐出ポートP1〜P4から複数のアクチュエータ3a〜3hに供給される圧油の流れを制御するコントロールバルブ4とを備えている。
【0024】
第1油圧ポンプ1aの容量と第2油圧ポンプ1bの容量は同一である。第1油圧ポンプ1aの容量と第2油圧ポンプ1bの容量は異なっていてもよい。
【0025】
第1油圧ポンプ1aは、第1及び第2吐出ポートP1,P2に対して共通に設けられた第1ポンプ制御装置(レギュレータ)5aを有し、同様に第2油圧ポンプ1bは、第3及び第4吐出ポートP3,P4に対して共通に設けられた第2ポンプ制御装置(レギュレータ)5bを有している。
【0026】
また、第1油圧ポンプ1aは、単一の容量制御機構(斜板)を備えたスプリットフロータイプの油圧ポンプであり、第1ポンプ制御装置5aはその単一の容量制御機構を駆動して第1油圧ポンプ1aの容量(斜板の傾転角)を制御し、第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出流量を制御する。同様に、第2油圧ポンプ1bは、単一の容量制御機構(斜板)を備えたスプリットフロータイプの油圧ポンプであり、第2ポンプ制御装置5bはその単一の容量制御機構を駆動して第2油圧ポンプ1bの容量(斜板の傾転角)を制御し、第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出流量を制御する。
【0027】
第1及び第2油圧ポンプ1a,1bは、それぞれ、単一の吐出ポートを有する可変容量型の油圧ポンプを2台組み合わせたものであってもよく、その場合は、第1油圧ポンプ1aの2台の油圧ポンプの2つの容量制御機構(斜板)を第1ポンプ制御装置5aで駆動し、第2油圧ポンプ1bの2台の油圧ポンプの2つの容量制御機構(斜板)を第2ポンプ制御装置5bで駆動すればよい。
【0028】
原動機2は例えばディーゼルエンジンである。ディーゼルエンジンは、公知の如く、例えば電子ガバナを備え、燃料噴射量を制御することで回転数とトルクが制御される。エンジン回転数は、エンジンコントロールダイヤル等の操作手段により設定される。原動機2は電動モータであってもよい。
【0029】
コントロールバルブ4は、クローズドセンタ型の複数の流量制御弁6a〜6mと、流量制御弁6a〜6mの上流側に接続され、流量制御弁6a〜6mのメータイン絞り部の前後差圧を制御する圧力補償弁7a〜7mと、流量制御弁6a〜6cの負荷圧ポートに接続され、アクチュエータ3a,3b,3eの最高負荷圧を検出する第1シャトル弁群8aと、流量制御弁6d〜6fの負荷圧ポートに接続され、アクチュエータ3a,3c,3dの最高負荷圧を検出する第2シャトル弁群8bと、流量制御弁6g〜6iの負荷圧ポートに接続され、アクチュエータ3e,3f,3hの最高負荷圧を検出する第3シャトル弁群8cと、流量制御弁6j〜6mの負荷圧ポートに接続され、アクチュエータ3d,3g,3hと流量制御弁6mに予備アクチュエータが接続されたときにその予備アクチュエータの最高負荷圧を検出する第4シャトル弁群8dと、第1油圧ポンプ1aの吐出ポートP1,P2にそれぞれ接続され、吐出ポートP1,P2の吐出圧が第1及び第2シャトル弁群8a,8bによって検出された最高負荷圧にバネ9a,9bのセット圧(アンロード圧)を加算した圧力よりも高くなると開状態になって吐出ポートP1,P2の吐出油をタンクに戻し、吐出圧の上昇を制限する第1及び第2アンロード弁10a,10bと、第2油圧ポンプ1bの吐出ポートP3,P4にそれぞれ接続され、吐出ポートP3,P4の吐出圧が第3及び第4シャトル弁群8c,8dによって検出された最高負荷圧にバネ9c,9dのセット圧(アンロード圧)を加算した圧力よりも高くなると開状態になって吐出ポートP3,P4の吐出油をタンクに戻し、吐出圧の上昇を制限する第3及び第4アンロード弁10c,10dと、第1油圧ポンプ1aの第1及び第2吐出ポートP1,P2のそれぞれの吐出油路の間及び第1及び第2シャトル弁群8a,8bのそれぞれの出力油路の間に配置された第1連通制御弁15aと、第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4のそれぞれの吐出油路の間及び第3及び第4シャトル弁群8c,8dのそれぞれの出力油路の間に配置された第2連通制御弁15bとを備えている。第1〜第4アンロード弁10a〜10dのバネ9a〜9dのセット圧は、後述するロードセンシング制御の目標差圧と等しいか、これよりも少し高い圧力に設定されている。
【0030】
また、図示はしないが、コントロールバルブ4は、第1油圧ポンプ1aの吐出ポートP1,P2にそれぞれ接続され、安全弁として機能する第1及び第2メインリリーフ弁と、第2油圧ポンプ1bの吐出ポートP3,P4にそれぞれ接続され、安全弁として機能する第3及び第4メインリリーフ弁とを備えている。
【0031】
圧力補償弁
7a〜7fは、第1油圧ポンプ1aの吐出ポートP1,P2の吐出圧と第1及び第2シャトル弁群8a,8bによって検出された最高負荷圧との差圧を目標補償差圧として設定するように構成され、圧力補償弁7g〜7mは、第2油圧ポンプ1bの吐出ポートP3,P4の吐出圧と第3及び第4シャトル弁群8c,8dによって検出された最高負荷圧との差圧を目標補償差圧として設定するように構成されている。具体的には、圧力補償弁7a〜7cは第1吐出ポートP1の吐出圧が開方向作動側に導かれ、第1及び第2シャトル弁群8a,8bにより検出されたアクチュエータ3a〜3eの最高負荷圧が閉方向作動側に導かれ、流量制御弁6a〜6cのメータイン絞り部の前後差圧が両者の差圧に等しくなるように制御する。圧力補償弁7d〜7fは第2吐出ポートP2の吐出圧が開方向作動側に導かれ、第1及び第2シャトル弁群8a,8bにより検出されたアクチュエータ3a〜3eの最高負荷圧が閉方向作動側に導かれ、流量制御弁6d〜6fのメータイン絞り部の前後差圧が両者の差圧に等しくなるように制御する。圧力補償弁7g〜7iは第3吐出ポートP3の吐出圧が開方向作動側に導かれ、第3及び第4シャトル弁群8c,8dにより検出されたアクチュエータ3d〜3hの最高負荷圧が閉方向作動側に導かれ、流量制御弁6g〜6iのメータイン絞り部の前後差圧が両者の差圧に等しくなるように制御する。圧力補償弁7j〜7mは第4吐出ポートP4の吐出圧が開方向作動側に導かれ、第3及び第4シャトル弁群8c,8dにより検出されたアクチュエータ3d〜3hの最高負荷圧が閉方向作動側に導かれ、流量制御弁6j〜6mのメータイン絞り部の前後差圧が両者の差圧に等しくなるように制御する。これにより第1油圧ポンプ1aと第2油圧ポンプ1bのそれぞれにおいて、複数のアクチュエータを同時に駆動する複合操作時に、アクチュエータの負荷圧の大小に係わらず、流量制御弁の開口面積比に応じた流量の配分が可能となるばかりでなく、第1〜第4吐出ポートP1〜P4の吐出流量が不足するサチュレーション状態にあっても、サチュレーションの度合いに応じて流量制御弁のメータイン絞り部の前後差圧を減少させ、良好な複合操作性を確保することができる。
【0032】
複数のアクチュエータ3a〜3dは、例えばそれぞれ、油圧ショベルのアームシリンダ、バケットシリンダ、旋回モータ、左走行モータであり、複数のアクチュエータ3e〜3hは、例えばそれぞれ、右走行モータ、スイングシリンダ、ブレードシリンダ、ブームシリンダである。
【0033】
ここで、アームシリンダ3aは、第1油圧ポンプ1aの第1及び第2吐出ポートP1,P2の両方の吐出油が合流して供給されるように、流量制御弁6a,6eと圧力補償弁7a,7eを介して第1及び第2吐出ポートP1,P2に接続され、ブームシリンダ3hは、第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4の両方の吐出油が合流して供給されるように、流量制御弁6h,6lと圧力補償弁7h,7lを介して第3及び第4吐出ポートP3,P4に接続されている。
【0034】
走行左の走行モータ3dは、第1油圧ポンプ1aの第1及び第2吐出ポートP1,P2の片側の吐出ポートである第2吐出ポートP2と、第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4の片側の吐出ポートである第4吐出ポートP4の吐出油が合流して供給されるように、流量制御弁6f,6jと圧力補償弁7f,7jを介して第2及び第4吐出ポートP2,P4に接続され、走行右の走行モータ3eは、第1油圧ポンプ1aの第1及び第2吐出ポートP1,P2の他の片側の吐出ポートである第1吐出ポートP1と、第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4の他の片側の吐出ポートである第3吐出ポートP3の吐出油が合流して供給されるように、流量制御弁6c,6gと圧力補償弁7c,7gを介して第1及び第3吐出ポートP1,P3に接続されている。
【0035】
また、バケットシリンダ3bは、第1油圧ポンプ1aの第1吐出ポートP1の吐出油が供給されるように、流量制御弁6bと圧力補償弁7bを介して第1吐出ポートP1に接続され、旋回モータ3cは、第1油圧ポンプ1aの第2吐出ポートP2の吐出油が供給されるように、流量制御弁6dと圧力補償弁7dを介して第2吐出ポートP2に接続されている。
【0036】
スイングシリンダ3fは、第2油圧ポンプ1bの第3吐出ポートP3の吐出油が供給されるように、流量制御弁6iと圧力補償弁7i介して第3吐出ポートP3に接続され、ブレードシリンダ3gは、第2油圧ポンプ1bの第4吐出ポートP4の吐出油が供給されるように、流量制御弁6kと圧力補償弁7k介して第4吐出ポートP4に接続されている。
【0037】
流量制御弁6mと圧力補償弁7mは予備用(アクセサリ)であり、例えばバケット308を破砕機に交換した場合に、破砕機の開閉シリンダが流量制御弁6mと圧力補償弁7mを介して第4吐出ポートP4に接続される。
【0038】
第1連通制御弁15aは、走行モータ3d,3eと第1油圧ポンプ1aに係わる他のアクチュエータ(ブームシリンダ3a、バケットシリンダ3b、旋回モータ3c)の少なくとも1つとを同時に駆動する複合動作時以外(以下走行複合動作時以外という)は図示上側の遮断位置にあり、走行モータ3d,3eと当該他のアクチュエータの少なくとも1つとを同時に駆動する複合動作時(以下走行複合動作時という)に図示下側の連通位置に切り換わる。
【0039】
第2連通制御弁15bは、走行モータ3d,3eと第2油圧ポンプ1bに係わる他のアクチュエータ(スイングシリンダ3f、ブレードシリンダ3g、ブームシリンダ3h)の少なくとも1つとを同時に駆動する複合動作時以外(以下走行複合動作時以外という)は図示上側の遮断位置にあり、走行モータ3d,3eと当該他のアクチュエータの少なくとも1つとを同時に駆動する複合動作時(以下走行複合動作時という)に図示下側の連通位置に切り換わる。
【0040】
第1連通制御弁15aは、図示上側の遮断位置にあるとき、第1油圧ポンプ1aの第1及び第2吐出ポートP1,P2のそれぞれの吐出油路の連通を遮断し、図示下側の連通位置に切り換わると、第1油圧ポンプ1aの第1及び第2吐出ポートP1,P2のそれぞれの吐出油路を連通させる。
【0041】
第2連通制御弁15bも同様であり、図示上側の遮断位置にあるとき、第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4のそれぞれの吐出油路の連通を遮断し、図示下側の連通位置に切り換わると、第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4のそれぞれの吐出油路を連通させる。
【0042】
また、第1連通制御弁15aはシャトル弁を内蔵しており、図示上側の遮断位置にあるときは、第1シャトル弁群8aの出力油路と第2シャトル弁群8bの出力油路との連通を遮断し、かつ第1及び第2シャトル弁群8a,8bのそれぞれの出力油路をそれぞれの下流側に連通させ、図示下側の連通位置に切り換わると、第1及び第2シャトル弁群8a,8bのそれぞれの出力油路をシャトル弁を介して連通させ、高圧側の最高負荷圧をそれぞれの下流側に導出する。
【0043】
第2連通制御弁15bも同様にシャトル弁を内蔵しており、図示上側の遮断位置にあるときは、第3シャトル弁群8cの出力油路と第4シャトル弁群8dの出力油路との連通を遮断し、かつ第3及び第4シャトル弁群8c,8dのそれぞれの出力油路をそれぞれの下流側に連通させ、図示下側の連通位置に切り換わると、第3及び第4シャトル弁群8c,8dのそれぞれの出力油路をシャトル弁を介して連通させ、高圧側の最高負荷圧をそれぞれの下流側に導出する。
【0044】
第1連通制御弁15aが図示上側の遮断位置にあるとき、第1油圧ポンプ1aの第1吐出ポートP1側では、第1シャトル弁群8aにより検出されたアクチュエータ3a,3b,3eの最高負荷圧が第1アンロード弁10aと圧力補償弁7a〜7cに導かれ、その最高負荷圧に基づいて第1アンロード弁10aは第1吐出ポートP1の吐出圧の上昇を制限し、圧力補償弁7a〜7cは流量制御弁6a〜6cのメータイン絞り部の前後差圧を制御する。第2油圧ポンプ1aの第2吐出ポートP2側では、第2シャトル弁群8bにより検出されたアクチュエータ3a,3c,3dの最高負荷圧が第2アンロード弁10bと圧力補償弁7d〜7fに導かれ、その最高負荷圧に基づいて第2アンロード弁10bは第2吐出ポートP2の吐出圧の上昇を制限し、圧力補償弁7d〜7fは流量制御弁6d〜6fのメータイン絞り部の前後差圧を制御する。
【0045】
第1連通制御弁15aが図示下側の連通位置に切り換わると、第1油圧ポンプ1aの第1吐出ポートP1側では、第1及び第2シャトル弁群8a,8bにより検出されたアクチュエータ3a〜3eの最高負荷圧が第1アンロード弁10aと圧力補償弁7a〜7cに導かれ、その最高負荷圧に基づいて第1アンロード弁10aは第1吐出ポートP1の吐出圧の上昇を制限し、圧力補償弁7a〜7cは流量制御弁6a〜6cのメータイン絞り部の前後差圧を制御する。第2油圧ポンプ1aの第2吐出ポートP2側では、同様に第1及び第2シャトル弁群8a,8bにより検出されたアクチュエータ3a〜3eの最高負荷圧が第2アンロード弁10bと圧力補償弁7d〜7fに導かれ、その最高負荷圧に基づいて第2アンロード弁10bは第2吐出ポートP2の吐出圧の上昇を制限し、圧力補償弁7d〜7fは流量制御弁6d〜6fのメータイン絞り部の前後差圧を制御する。
【0046】
第2連通制御弁15bが図示上側の遮断位置にあるとき、第2油圧ポンプ1bの第3吐出ポートP3側では、第3シャトル弁群8cにより検出されたアクチュエータ3e,3f,3hの最高負荷圧が第3アンロード弁10cと圧力補償弁7g〜7iに導かれ、その最高負荷圧に基づいて第3アンロード弁10cは第3吐出ポートP3の吐出圧の上昇を制限し、圧力補償弁7g〜7iは流量制御弁6g〜6iのメータイン絞り部の前後差圧を制御する。第2油圧ポンプ1bの第4吐出ポートP4側では、第4シャトル弁群8dにより検出されたアクチュエータ3d,3g,3hの最高負荷圧が第4アンロード弁10dと圧力補償弁7j〜7mに導かれ、その最高負荷圧に基づいて第4アンロード弁10dは第4吐出ポートP4の吐出圧の上昇を制限し、圧力補償弁7j〜7mは流量制御弁6j〜6mのメータイン絞り部の前後差圧を制御する。
【0047】
第2連通制御弁15bが図示下側の連通位置に切り換わると、第2油圧ポンプ1bの第3吐出ポートP3側では、第3及び第4シャトル弁群8c,8dにより検出されたアクチュエータ3d〜3hの最高負荷圧が第3アンロード弁10cと圧力補償弁7g〜7iに導かれ、その最高負荷圧に基づいて第3アンロード弁10cは第3吐出ポートP3の吐出圧の上昇を制限し、圧力補償弁7g〜7iは流量制御弁6g〜6iのメータイン絞り部の前後差圧を制御する。第2油圧ポンプ1bの第4吐出ポートP4側では、同様に第3及び第4シャトル弁群8c,8dにより検出されたアクチュエータ3d〜3hの最高負荷圧が第4アンロード弁10dと圧力補償弁7j〜7mに導かれ、その最高負荷圧に基づいて第4アンロード弁10dは第4吐出ポートP4の吐出圧の上昇を制限し、圧力補償弁7j〜7mは流量制御弁6j〜6mのメータイン絞り部の前後差圧を制御する。
【0048】
第1ポンプ制御装置5aは、第1油圧ポンプ1aの第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出圧が、複数のアクチュエータ3a〜3hのうち、第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出油により駆動されるアクチュエータ3a〜3eの最高負荷圧より所定圧力だけ高くなるように第1油圧ポンプ1aの斜板の傾転角(容量)を制御する第1ロードセンシング制御部12aと、第1油圧ポンプ1aの吸収トルクが所定値を超えないように第1油圧ポンプ1aの斜板の傾転角(容量)を制限制御する第1トルク制御部13aとを有している。
【0049】
第2ポンプ制御装置5bは、第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出圧が、複数のアクチュエータ3a〜3hのうち、第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出油により駆動されるアクチュエータ3d〜3hの最高負荷圧より所定圧力だけ高くなるように第2油圧ポンプ1bの斜板の傾転角(容量)を制御する第2ロードセンシング制御部12bと、第2油圧ポンプ1bの吸収トルクが所定値を超えないように第2油圧ポンプ1bの斜板の傾転角(容量)を制限制御する第2トルク制御部13bとを有している。
【0050】
第1ロードセンシング制御部12aは、ロードセンシング駆動圧力(以下LS駆動圧力という)を生成するロードセンシング制御弁16a,16bと、ロードセンシング制御弁16a,16bが生成したLS駆動圧力の低圧側を選択して出力する低圧選択弁21aと、低圧選択弁21aが選択して出力したLS駆動圧力が導かれ、このLS駆動圧力に応じて第1油圧ポンプ1aの斜板の傾転角を変化させるロードセンシング制御ピストン(ロードセンシング制御アクチュエータ)17aとを備えている。
【0051】
第2ロードセンシング制御部12bは、ロードセンシング駆動圧力(以下LS駆動圧力という)を生成するロードセンシング制御弁16c,16dと、ロードセンシング制御弁16c,16dが生成したLS駆動圧力の低圧側を選択して出力する低圧選択弁21bと、低圧選択弁21bが選択して出力したLS駆動圧力が導かれ、このLS駆動圧力に応じて第2油圧ポンプ1bの斜板の傾転角を変化させるロードセンシング制御ピストン(ロードセンシング制御アクチュエータ)17bとを備えている。
【0052】
第1ロードセンシング制御部12aにおいて、制御弁16aは、ロードセンシング制御の目標差圧を設定するバネ16a1と、このバネ16a1に対向して位置し、第1吐出ポートP1の吐出圧が導かれる受圧部16a2と、バネ16a1と同じ側に位置する受圧部16a3とを備えている。第1連通制御弁15aが図示上側の遮断位置にあるとき、制御弁16aの受圧部16a3には第1シャトル弁群8aにより検出されたアクチュエータ3a,3b,3eの最高負荷圧が導かれ、第1連通制御弁15aが図示下側の連通位置に切り換わると、制御弁16aの受圧部16a3には第1及び第2シャトル弁群8a,8bにより検出されたアクチュエータ3a〜3eの最高負荷圧が導かれる。制御弁16aは、受圧部16a2に導かれる第1吐出ポートP1の吐出圧と、受圧部16a3に導かれるアクチュエータ3a,3b,3e又はアクチュエータ3a〜3eの最高負荷圧と、バネ16a1の付勢力とのバランスによって変位し、LS駆動圧力を増減させる。
【0053】
すなわち、受圧部16a2に導かれる第1吐出ポートP1の吐出圧が、受圧部16a2に導かれる最高負荷圧にバネ16a1によって設定される目標差圧(所定圧力)を加算した圧力よりも高くなると、制御弁16aは図示左方に移動して二次ポートを油圧源(第1吐出ポートP1)に連通することでLS駆動圧力を上昇させ、受圧部16a2に導かれる第1吐出ポートP1の高圧側の吐出圧が、受圧部16a2に導かれる最高負荷圧にバネ16a1によって設定される目標差圧(所定圧力)を加算した圧力よりも低くなると、制御弁16aは図示右方に移動して二次ポートをタンクに連通することでLS駆動圧力を低下させる。制御弁16aが図示左方に移動したときに二次ポートが連通する油圧源はパイロットポンプの吐出油路に形成され、一定のパイロット圧を生成するパイロット油圧源であってもよい。
【0054】
制御弁16bは、ロードセンシング制御の目標差圧を設定するバネ16b1と、このバネ16b1に対向して位置し、第2吐出ポートP2の吐出圧が導かれる受圧部16b2と、バネ16b1と同じ側に位置する受圧部16b3とを備えている。第1連通制御弁15aが図示上側の遮断位置にあるとき、制御弁16bの受圧部16b3には第2シャトル弁群8bにより検出されたアクチュエータ3a,3c,3dの最高負荷圧が導かれ、第1連通制御弁15aが図示下側の連通位置に切り換わると、制御弁16bの受圧部16a3には第1及び第2シャトル弁群8a,8bにより検出されたアクチュエータ3a〜3eの最高負荷圧が導かれる。制御弁16bは、受圧部16b2に導かれる第2吐出ポートP2の吐出圧と、受圧部16b3に導かれるアクチュエータ3a,3c,3d又はアクチュエータ3a〜3eの最高負荷圧と、バネ16b1の付勢力とのバランスによって変位し、制御弁16aと同様にLS駆動圧力を増減させる。
【0055】
低圧選択弁21aはロードセンシング制御弁16a,16bが生成するLS駆動圧力の低圧側を選択してロードセンシング制御ピストン17aに出力する。ロードセンシング制御ピストン17aはそのLS駆動圧力に基づいて第1油圧ポンプ1aの斜板の傾転角を変化させ、第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出流量を増減させる。
【0056】
第2ロードセンシング制御部12bにおいて、制御弁16cは、ロードセンシング制御の目標差圧を設定するバネ16c1と、このバネ16c1に対向して位置し、第3吐出ポートP3の吐出圧が導かれる受圧部16c2と、バネ16c1と同じ側に位置する受圧部16c3とを備えている。第2連通制御弁15bが図示上側の遮断位置にあるとき、制御弁16cの受圧部16c3には第3シャトル弁群8cにより検出されたアクチュエータ3e,3f,3hの最高負荷圧が導かれ、第2連通制御弁15bが図示下側の連通位置に切り換わると、制御弁16cの受圧部16c3には第3及び第4シャトル弁群8c,8dにより検出されたアクチュエータ3d〜3hの最高負荷圧が導かれる。制御弁16cは、受圧部16c2に導かれる第3吐出ポートP3の吐出圧と、受圧部16c3に導かれるアクチュエータ3e,3f,3h又はアクチュエータ3d〜3hの最高負荷圧と、バネ16c1の付勢力とのバランスによって変位し、制御弁16aと同様にLS駆動圧力を増減させる。
【0057】
制御弁16dは、ロードセンシング制御の目標差圧を設定するバネ16d1と、このバネ16d1に対向して位置し、第4吐出ポートP4の吐出圧が導かれる受圧部16d2と、バネ16d1と同じ側に位置する受圧部16d3とを備えている。第2連通制御弁15bが図示上側の遮断位置にあるとき、制御弁16dの受圧部16d3には第4シャトル弁群8dにより検出されたアクチュエータ3d,3g,3hの最高負荷圧が導かれ、第2連通制御弁15bが図示下側の連通位置に切り換わると、制御弁16dの受圧部16d3には第3及び第4シャトル弁群8c,8dにより検出されたアクチュエータ3d〜3hの最高負荷圧が導かれる。制御弁16dは、受圧部16d2に導かれる第4吐出ポートP4の吐出圧と、受圧部16d3に導かれるアクチュエータ3d,3g,3h又はアクチュエータ3d〜3hの最高負荷圧と、バネ16d1の付勢力とのバランスによって変位し、制御弁16aと同様にLS駆動圧力を増減させる。
【0058】
低圧選択弁21bはロードセンシング制御弁16c,16dが生成するLS駆動圧力の低圧側を選択してロードセンシング制御ピストン17bに出力する。ロードセンシング制御ピストン17bはそのLS駆動圧力に基づいて第2油圧ポンプ1bの斜板の傾転角を変化させ、第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出流量を増減させる。
【0059】
図3は、ロードセンシング制御ピストン17a,17bが動作するときのLS駆動圧力と第1及び第2油圧ポンプ1a,1bの斜板の傾転角との関係を示す図である。図中、ロードセンシング制御ピストン17a,17bに作用するLS駆動圧力をPx1,px2で示し、第1及び第2油圧ポンプ1a,1bの斜板の傾転角をq1,q2で示している。
【0060】
図3に示すように、ロードセンシング制御ピストン17aは、LS駆動圧力Px1が上昇すると第1油圧ポンプ1aの斜板の傾転角q1を小さくして第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出流量を減少させ、LS駆動圧力Px1が低下すると第1油圧ポンプ1aの斜板の傾転角q1を大きくして第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出流量を増大させる。これにより第1ロードセンシング制御部12aは、第1油圧ポンプ1aの第1及び第2吐出ポートP1,P2の高圧側の吐出圧が、第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出油により駆動されるアクチュエータ3a〜3eの最高負荷圧より所定圧力だけ高くなるように第1油圧ポンプ1aの斜板の傾転角(容量)を制御する。図中、KはLS駆動圧力Px1に対する第1油圧ポンプ1aの斜板の傾転角q1の変化率であり、後述するバネS3,S4のバネ定数と第2油圧ポンプ1bの傾転角q2(容量)の関係から決定される値である。
【0061】
ロードセンシング制御ピストン17bも、ロードセンシング制御ピストン17aと同様にLS駆動圧力Px2の増減に応じて第2油圧ポンプ1bの斜板の傾転角q2を変化させ、第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4の高圧側の吐出圧が、第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出油により駆動されるアクチュエータ3d〜3hの最高負荷圧より所定圧力だけ高くなるように第2油圧ポンプ1bの斜板の傾転角(容量)を制御する。
【0062】
第1及び第2ロードセンシング制御部12,12bにおいて、バネ16a1,16b1及びバネ16c1,16d1で設定されるロードセンシング制御の目標差圧は、それぞれ、例えば2MPa程度である。
【0063】
また、第1ポンプ制御装置5aにおいて、第1トルク制御部13aは、第1吐出ポートP1の吐出圧が導入される第1トルク制御ピストン(第1トルク制御アクチュエータ)18aと、第2吐出ポートP2の吐出圧が導入される第2トルク制御ピストン(第1トルク制御アクチュエータ)19aと、最大トルクT1max(第1最大代トルク)を設定する付勢手段であるバネS1,S2(
図1では簡略化のため1つのバネのみを図示)とを備えている。
【0064】
第2トルク制御部13bは、第3吐出ポートP3の吐出圧が導入される第3トルク制御ピストン(第2トルク制御アクチュエータ)18bと、第4吐出ポートP4の吐出圧が導入される第4トルク制御ピストン(第2トルク制御アクチュエータ)19bと、最大トルクT2max(第2最大トルク)を設定する付勢手段であるバネS3,S4(
図1では簡略化のため1つのバネのみを図示)とを備えている。
【0065】
また、第1トルク制御部13aは、第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出圧と第2ロードセンシング制御部12bのロードセンシング制御ピストン17bに作用するLS駆動圧力とが導かれ、第2油圧ポンプ1bが第2トルク制御部13bの制御の制限を受け、最大トルクT2max(第2最大トルク)で動作するときと、第2油圧ポンプ1bが第2トルク制御部13bの制御の制限を受けず、第2ロードセンシング制御部12bが第2油圧ポンプ1bの容量を制御するとき(後述する第2油圧ポンプ1bの吸収トルク一定制御の開始圧力Pbより低いとき)のいずれの場合にも、第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出圧を、第2油圧ポンプ1bの吸収トルクを模擬するよう補正して出力するトルクフィードバック回路30と、第2油圧ポンプ1bの第3吐出ポートP3の吐出圧を補正したトルクフィードバック回路30の出力圧が導かれ、この出力圧が高くなるにしたがって第1油圧ポンプ1aの斜板の傾転角(容量)を減少させ、バネS1,S2によって設定された最大トルクT1maxを減少させる第1減トルク制御ピストン(第3トルク制御アクチュエータ)31aと、第2油圧ポンプ1bの第4吐出ポートP4の吐出圧を補正したトルクフィードバック回路30の出力圧が導かれ、この出力圧が高くなるにしたがって第1油圧ポンプ1aの斜板の傾転角(容量)を減少させ、バネS1,S2によって設定された最大トルクT1maxを減少させる第2減トルク制御ピストン(第3トルク制御アクチュエータ)31bとを備えている。
【0066】
図4Aは、第1トルク制御部13aのトルク制御線図であり、
図4Bは第2トルク制御部13bのトルク制御線図である。トルク制御線図では、縦軸は傾転角(容量)q1,q2であり、縦軸を吐出流量Q1,Q2;Q3,Q4に置き換えると、これらは馬力制御線図となる。また、横軸はポンプ吐出圧であり、
図4Aでは第1及び第2吐出ポートP1,P2の平均吐出圧(P1p+P2p/2)、
図4Bでは第3及び第4吐出ポートP3,P4の平均吐出圧(P3p+P4p/2)である。
【0067】
図4Aにおいて、第2油圧ポンプ1bの吐出油がアクチュエータ3d〜3hに供給されていないときは、トルクフィードバック回路30及び第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bは機能せず、第1トルク制御部13aにはバネS1,S2によって最大トルクT1maxが設定される。TP1a,TP1bはその最大トルクT1maxを設定するバネS1,S2の特性線である。
【0068】
この状態で、第1油圧ポンプ1aに係わるアクチュエータ3a〜3eのいずれかに第1油圧ポンプ1aの吐出油が供給され、第1及び第2吐出ポートP1,P2の平均吐出圧が上昇するとき、この平均吐出圧が特性線TP1aの始端の圧力(トルク制御開始圧力)Pa以下である間は、第1トルク制御部13aは動作しない。この場合、第1油圧ポンプ1aの斜板の傾転角(容量)q1は、第1トルク制御部13aの制御の制限を受けることなく、第1ロードセンシング制御部12aの制御により、操作レバー装置の操作量(要求流量)に応じて、第1油圧ポンプ1aが持つ最大傾転角q1maxまで増加可能である。
【0069】
第1油圧ポンプ1aの斜板が最大傾転角q1maxにある状態で第1及び第2吐出ポートP1,P2の平均吐出圧がPaを超えると第1トルク制御部13aは動作し、平均吐出圧が上昇するにしたがって第1油圧ポンプ1aの最大傾転角(最大容量)を特性線TP1a,TP1bに沿って減らすよう吸収トルク一定制御(或いは馬力一定制御)を行う。この場合、第1ロードセンシング制御部12aは第1油圧ポンプ1aの傾転角を特性線TP1a,TP1bが規定する傾転角を超えて増加させることはできない。
【0070】
図示の如く、特性線TP1a,TP1bは2本のバネS1,S2によって吸収トルク一定曲線(双曲線)TP1に近似するよう設定されている。これにより第1トルク制御部13aは第1油圧ポンプ1aの平均吐出圧が上昇するとき、第1油圧ポンプ1aの吸収トルクが最大トルクT1maxを超えないように吸収トルク一定制御(或いは馬力一定制御)を行う。最大トルクT1maxはエンジン2の定格出力トルクTERよりも少し小さくなるように設定されている。
【0071】
図4Bにおいて、第2トルク制御部13bには、第1油圧ポンプ1aの動作状態に係わらず、バネS3,S4によって最大トルクT2maxが設定されている。TP2a,TP2bはその最大トルクT1maxを設定するバネS3,S4の特性線である。
【0072】
第2油圧ポンプ1bに係わるアクチュエータ3d〜3hのいずれかに第2油圧ポンプ1bの吐出油が供給され、第3及び第4吐出ポートP3,P4の平均吐出圧が上昇するとき、この平均吐出圧が特性線TP2aの始端の圧力(トルク制御開始圧力)Pb以下である間は、第2トルク制御部13bは動作しない。この場合、第2油圧ポンプ1bの斜板の傾転角(容量)q2は、第2トルク制御部13bの制御の制限を受けることなく、第2ロードセンシング制御部12bの制御により、操作レバー装置の操作量(要求流量)に応じて、第2油圧ポンプ1bが持つ最大傾転角q2maxまで増加可能である。
【0073】
第2油圧ポンプ1bの斜板が最大傾転角q2maxにある状態で第3及び第4吐出ポートP3,P4の平均吐出圧がPbを超えると第2トルク制御部13bは動作し、平均吐出圧が上昇するにしたがって第2油圧ポンプ1bの最大傾転角(最大容量)を特性線TP2a,TP2bに沿って減らすよう吸収トルク一定制御を行う。この場合、第2ロードセンシング制御部12bは第2油圧ポンプ1bの傾転角を特性線TP2a,TP2bが規定する傾転角を超えて増加させることはできない。
【0074】
図示の如く、特性線TP2a,TP2bは2本のバネS3,S4によって吸収トルク一定曲線(双曲線)TP2を近似するよう設定されている。これにより第2トルク制御部13bは第2油圧ポンプ1bの平均吐出圧が上昇するとき、第2油圧ポンプ1bの吸収トルクが最大トルクT2maxを超えないように吸収トルク一定制御(或いは馬力一定制御)を行う。最大トルクT2maxは第1トルク制御部13aに設定される最大トルクT1maxよりも小さく、エンジン2の定格出力トルクTERの1/2程度に設定されておる。
【0075】
また、第2油圧ポンプ1bに係わるアクチュエータ3d〜3hのいずれかに第2油圧ポンプ1bの吐出油が供給され、第2油圧ポンプ1bの吐出油によりアクチュエータ3d〜3hのいずれかが駆動されるとき、トルクフィードバック回路30は、第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出圧を、第2油圧ポンプ1bの吸収トルクを模擬するよう補正して出力し、第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bは、トルクフィードバック回路30の出力圧が高くなるにしたがって第1トルク制御部13aに設定された最大トルクT1maxを減少させる。
【0076】
図4Aにおいて、2つの矢印R1,R2は、第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bが最大トルクT1maxを減少させる効果を示している。第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出圧が上昇し、そのときの第2油圧ポンプ1bの吸収トルクが最大トルクT2maxよりも小さいT2であり、トルクフィードバック回路30が模擬した吸収トルクがT2s(≒T2)であるとき、
第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bは、
図4Aに矢印R1で示すように、最大トルクT1maxをT1max−T2sへと減少させる。また、第2油圧ポンプ1bの吸収トルクが最大トルクT2maxであり、トルクフィードバック回路30が模擬した吸収トルクがT2maxs(≒T2max)であるとき、
第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bは、
図4Aに矢印R2で示すように、最大トルクT1maxをT1max−T2maxsへと減少させる。
【0077】
ここで、第1トルク制御部13aに設定される最大トルクT1maxは上述したようにエンジン2の定格出力トルクTERよりも少し小さく、第2油圧ポンプ1bの吐出油がアクチュエータ3d〜3hに供給されず、第1油圧ポンプ1aの吐出油がアクチュエータ3a〜3eのいずれかに供給され、アクチュエータ3a〜3eのいずれかを駆動するとき、第1トルク制御部13aは第1油圧ポンプ1aの吸収トルクが最大トルクT1maxを超えないように吸収トルク一定制御(或いは馬力一定制御)を行うことにより、第1油圧ポンプ1aの吸収トルクがエンジン2の定格出力トルクTERを超えないように制御される。これによりエンジン2の定格出力トルクTERを最大限有効に利用しつつ、エンジン2の停止(エンジンストール)を防止することができる。
【0078】
また、第2油圧ポンプ1bの吐出油がアクチュエータ3d〜3hのいずれかに供給され、第2油圧ポンプ1bの吐出油によりアクチュエータ3d〜3hのいずれかが駆動されるときは、上述したように
第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bは、
図4Aに矢印Xで示すように、最大トルクT1maxをT1max−T2s又はT1max−T2maxsへと減少させる。これにより第1油圧ポンプ1aに係わるアクチュエータ3a〜3eのいずれかと第2油圧ポンプ1bに係わるアクチュエータ3d〜3hのいずれかを同時に駆動する複合操作時においても、第1油圧ポンプ1aと第2油圧ポンプ1bの合計の吸収トルクがエンジン2の定格出力トルクTERを超えないように全トルク制御が行われ、この場合も、エンジン2の定格出力トルクTERを最大限有効に利用しつつ、エンジン2の停止(エンジンストール)を防止することができる。
【0079】
図1Bは、トルクフィードバック回路30の詳細を示す図である。
【0080】
トルクフィードバック回路30は、第2油圧ポンプ1bの第3吐出ポートP3の吐出圧を第2油圧ポンプ1bの吸収トルクを模擬するよう補正して出力する第1トルクフィードバック回路部30aと、第2油圧ポンプ1bの第4吐出ポートP4の吐出圧を第2油圧ポンプ1bの吸収トルクを模擬するよう補正して出力する第2トルクフィードバック回路部30bとを有している。
【0081】
第1トルクフィードバック回路部30aは、第3吐出ポートP3の吐出圧が一次圧として導かれる第1トルク減圧弁32aと、この第1トルク減圧弁32aのセット圧を設定するための目標制御圧力を生成する第1分圧回路33aとを有し、第1トルク減圧弁32aは、第3吐出ポートP3の吐出圧がセット圧よりも低いときは、第3吐出ポートP3の吐出圧をそのまま二次圧力として出力し、第3吐出ポートP3の吐出圧がセット圧よりも高いときは、第3吐出ポートP3の吐出圧をセット圧(目標制御圧力)に減圧して出力し、その出力圧(二次圧)がトルク制御圧力として第1減トルク制御ピストン31aに導かれる。
【0082】
第1分圧回路33aは、第3吐出ポートP3の吐出圧が導かれる第1分圧絞り部34a、この第1分圧絞り部34aの下流側に位置する第1分圧弁35a、第1分圧絞り部34aと第1分圧弁35aの間の第1油路36aに接続され、第1油路36aの圧力がセット圧(リリーフ圧)以上にならないようにする第1リリーフ弁(圧力制限弁)37aから構成されている。第1分圧絞り部34aは固定絞りであり、一定の開口面積を有している。第1分圧弁35aは、第2ロードセンシング制御部12bのロードセンシング制御ピストン17bに作用するLS駆動圧力Px2が導かれ、このLS駆動圧力Px2に応じて開口面積を変化させる可変絞り弁である。LS駆動圧力Px2がタンク圧であるとき、第1分圧弁35aの開口面積はゼロ(全閉)であり、LS駆動圧力Px2が上昇するにしたがって第1分圧弁35aの開口面積は増加し、LS駆動圧力Px2が所定の圧力以上に上昇すると、第1分圧弁35aの開口面積は最大(全開)となる。この第1分圧弁35aの開口面積の変化に応じて第1分圧絞り34aと第1分圧弁35aとの間の第1油路36aに生成される目標制御圧力は、第1リリーフ弁37aのセット圧からタンク圧(ゼロ)まで連続的に変化し、この目標制御圧力の変化に応じて第1トルク減圧弁32aが生成するトルク制御圧力も連続的に変化する。第1リリーフ弁37aのセット圧は第2トルク制御部13bのトルク制御開始圧力Pb(
図4B)に合わせ、Pbに等しく設定されている。
【0083】
第2トルクフィードバック回路部30bも第1トルクフィードバック回路部30aと同様に構成されている。すなわち、第2トルクフィードバック回路部30bは、第4吐出ポートP4の吐出圧が一次圧として導かれる第2トルク減圧弁32bと、この第2トルク減圧弁32bのセット圧を設定するための目標制御圧力を生成する第2分圧回路33bとを有し、第2トルク減圧弁32bは、第4吐出ポートP4の吐出圧がセット圧よりも低いときは、第4吐出ポートP4の吐出圧をそのまま二次圧力として出力し、第4吐出ポートP4の吐出圧がセット圧よりも高いときは、第4吐出ポートP4の吐出圧をセット圧(目標制御圧力)に減圧して出力し、その出力圧(二次圧)がトルク制御圧力として第2減トルク制御ピストン31bに導かれる。
【0084】
第2分圧回路33bは、第4吐出ポートP4の吐出圧が導かれる第2分圧絞り部34b、この第2分圧絞り部34bの下流側に位置する第2分圧弁35b、第2分圧絞り部34bと第2分圧弁35bの間の第2油路36bに接続され、第2油路36bの圧力がセット圧(リリーフ圧)以上にならないようにする第2リリーフ弁(圧力制限弁)37bから構成されている。第2分圧絞り部34bは固定絞りであり、一定の開口面積を有している。第2分圧弁35bは、第2ロードセンシング制御部12bのロードセンシング制御ピストン17bに作用するLS駆動圧力Px2が導かれ、このLS駆動圧力Px2に応じて開口面積を変化させる可変絞り弁である。LS駆動圧力Px2がタンク圧であるとき、第2分圧弁35bの開口面積はゼロ(全閉)であり、LS駆動圧力Px2が上昇するにしたがって第2分圧弁35bの開口面積は増加し、LS駆動圧力Px2が所定の圧力以上に上昇すると、第2分圧弁35bの開口面積は最大(全開)となる。この第2分圧弁35bの開口面積の変化に応じて第2分圧絞り34bと第2分圧弁35bとの間の第2油路36bに生成される目標制御圧力は、第2リリーフ弁37bのセット圧からタンク圧(ゼロ)まで連続的に変化し、この目標制御圧力の変化に応じて第2トルク減圧弁32bが生成するトルク制御圧力も連続的に変化する。第2リリーフ弁37bのセット圧は、第2トルク制御部13bのトルク制御開始圧力Pb(
図4B)に合わせ、Pbに等しく設定されている。
【0085】
図5Aは、LS駆動圧力Px2と第1及び第2分圧弁35a,35bの開口面積との関係を示す図であり、
図5Bは、第1及び第2分圧弁35a,35bの開口面積と目標制御圧力との関係を示す図であり、
図5Cは、LS駆動圧力Px2が変化するときの第3及び第4吐出ポートの吐出圧と目標制御圧力との関係を示す図であり、
図5Dは、LS駆動圧力Px2が変化するときの第3及び第4吐出ポートの吐出圧とトルク制御圧力との関係を示す図である。図中、AP3,AP4は第1及び第2分圧弁35a,35bの開口面積であり、P3tref,P4trefは第1及び第2油路36a,36bに生成される目標制御圧力であり、P3p,P4pは第3及び第4吐出ポートの吐出圧であり、P3t,P4tは第1及び第2トルク減圧弁32a,32bが生成するトルク制御圧力である。
【0086】
図5Aに示すように、第2ロードセンシング制御部12bのロードセンシング制御ピストン17bに作用するLS駆動圧力Px2がタンク圧であるとき第1及び第2分圧弁35a,35bの開口面積AP3,AP4はゼロ(全閉)であり、LS駆動圧力Px2が上昇するにしたがって第1及び第2分圧弁35a,35bの開口面積AP3,AP4は増加し、LS駆動圧力Px2が所定の圧力Px2a以上に上昇すると第1及び第2分圧弁35a,35bの開口面積AP3,AP4は最大APmax(全開)となる。
【0087】
図5Bに示すように、第1及び第2分圧弁35a,35bの開口面積AP3,AP4がゼロ(全閉)であるとき、第1及び第2油路36a,36bの圧力は第3及び第4吐出ポートの吐出圧P3p,P4pに等しい。ただし、第1及び第2油路36a,36bの圧力は第1及び第2リリーフ弁37a,37bのセット圧以上となることはできない。第1及び第2分圧弁35a,35bの開口面積AP3,AP4がゼロ(全閉)から増加するにしたがって、目標制御圧力P3tref,P4trefは低下し、第1第1及び第2分圧弁35a,35bの開口面積AP3,AP4が最大APmax(全開)になると、目標制御圧力P3tref,P4trefはタンク圧(ゼロ)となる。
【0088】
図5Cに示すように、LS駆動圧力がタンク圧(ゼロ)であるとき、第1及び第2分圧弁35a,35b開口面積AP3,AP4はゼロ(全閉)であり、目標制御圧力P3tref,P4trefは第3及び第4吐出ポートの吐出圧に等しくなる。その結果、第3及び第4吐出ポートの吐出圧が上昇するとき、目標制御圧力P3tref,P4trefも第3及び第4吐出ポートの吐出圧と同じ値で上昇する。このときの目標制御圧力P3tref,P4trefの上昇割合を表す直線の傾きは1である。第3及び第4吐出ポートの吐出圧が第1及び第2リリーフ弁37a,37bのセット圧に達すると、目標制御圧力P3tref,P4trefは第1及び第2リリーフ弁37a,37bのセット圧で一定となる。
【0089】
LS駆動圧力がタンク圧から上昇するとき、それに応じて第1及び第2分圧弁35a,35b開口面積AP3,AP4は増加し、第3及び第4吐出ポートの吐出圧が上昇するにしたがって第1及び第2分圧弁35a,35b開口面積AP3,AP4はゼロ(全閉)であるときよりも小さい割合(小さい直線の傾き)で目標制御圧力P3tref,P4trefは上昇する。LS駆動圧力が上昇するにしたがって目標制御圧力P3tref,P4trefの上昇割合(直線の傾き)は小さくなり、同じ第3及び第4吐出ポートの吐出圧で得られる目標制御圧力P3tref,P4trefは低くなる。第3及び第4吐出ポートの吐出圧が第1及び第2リリーフ弁37a,37bのセット圧であるトルク制御開始圧力Pbに達すると、目標制御圧力P3tref,P4trefは第1及び第2リリーフ弁37a,37bのセット圧(Pb)で一定となる。
【0090】
LS駆動圧力が所定の圧力Px2まで上昇すると、第1及び第2分圧弁35a,35b開口面積AP3,AP4は最大APmax(全開)となり、目標制御圧力P3tref,P4trefはタンク圧(ゼロ)となる。
【0091】
このように第3及び第4吐出ポートの吐出圧が上昇するとき目標制御圧力P3tref,P4trefが変化する結果、
図5Dに示すように、トルク制御圧力P3t,P4tも目標制御圧力P3tref,P4trefと同様に変化する。すなわち、LS駆動圧力がタンク圧(ゼロ)であるとき、トルク制御圧力P3t,P4tは第3及び第4吐出ポートの吐出圧と同じとなり、LS駆動圧力が上昇するにしたがってトルク制御圧力P3t,P4tの上昇割合(直線の傾き)は小さくなり、同じ第3及び第4吐出ポートの吐出圧で得られるトルク制御圧力P3t,P4tは低くなる。第3及び第4吐出ポートの吐出圧が第1及び第2リリーフ弁37a,37bのセット圧であるトルク制御開始圧力Pbに達すると、トルク制御圧力P3t,P4tは第1及び第2リリーフ弁37a,37bのセット圧(Pb)で一定となる。LS駆動圧力が所定の圧力Px2に達すると、トルク制御圧力P3t,P4tはタンク圧(ゼロ)となる。
【0092】
次に、上記のようにトルクフィードバック回路部30a,30bによって生成されるトルク制御圧力P3t,P4tが第2油圧ポンプ1bの吸収トルクを模擬するものであることについて説明する。
【0093】
図1A及び
図1Bに示す第2ポンプ制御装置5bにおいて、第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4の実際の吸収トルクをそれぞれτ3,τ4とすると、吸収トルクτ3,τ4は以下の式で計算される。
【0094】
τ3=(P3p×q2)/2π…(1)
τ4=(P4p×q2)/2π…(2)
前述したように、P3p,P4pは第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出圧であり、q2は第2油圧ポンプ1bのの傾転角である。
【0095】
また、第2トルク制御部13bの吸収トルク一定制御(或いは馬力一定制御)の制限を受けていない場合、第2油圧ポンプ1bの傾転角は第2ロードセンシング制御部12bにより制御される。このとき、第2油圧ポンプ1bの斜板はLS駆動圧力Px2とバネS3,S4の受け、傾転角q2は以下の式で表される。
【0096】
q2=q2max−K×Px2…(3)
ここで、KはバネS3,S4のバネ定数と第2油圧ポンプ1bの傾転角q2(容量)の関係から決定される定数であり、
図3に示した傾きKに相当する値である。
【0097】
一方、トルク制御圧力P3t,P4tを第2油圧ポンプ1bの吸収トルクを模擬するものとするためには、トルク制御圧力P3t,P4tの印加によって第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bに発生する付勢力が第3及び第4吐出ポートP3,P4の吸収トルクτ3,τ4に比例した値となることが必要であり、そのためには以下の関係が成り立つ必要がある。
【0098】
τ3=C(A×P3t)…(4)
τ4=C(A×P4t)…(5)
ここで、Aは第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bの受圧面積であり、Cは比例定数である。
【0099】
上記(1)〜(5)式より、トルク制御圧力P3t,P4tは以下の式で表される。
【0100】
τ3=(P3p×(q2max−K×Px2))/2π=C(A×P3t)
τ4=(P4p×(q2max−K×Px2))/2π=C(A×P4t)
変形すると、次の式になる。
【0101】
P3t=((P3p×(q2max−K×Px2))/2π)/C×A
P4t=((P4p×(q2max−K×Px2))/2π)/C×A
D=2π/C×Aと置き換えると、次の式になる。
【0102】
P3t=D(P3p×(q2max−K×Px2))
P4t=D(P4p×(q2max−K×Px2))
D×q2maxが1となるようにAとCの値を設定すると、次の式になる。
【0103】
P3t=P3p×(1−(K×Px2/D))…(6)
P4t=P4p×(1−(K×Px2/D))…(7)
図6は、(6)式及び(7)式で表される第3及び第4吐出ポートの吐出圧P3p,P4pとトルク制御圧力P3t,P4tとLS駆動圧力Px2との関係を示す図である。
【0104】
図6に示すように、(6)式及び(7)式でLS駆動圧力Px2がタンク圧(ゼロ)であるとき、トルク制御圧力P3t,P4tは第3及び第4吐出ポートの吐出圧P3p,P4pと同じとなる。また、LS駆動圧力Px2が上昇するにしたがってトルク制御圧力P3t,P4tの上昇割合を表す直線の傾きである(1−(K×Px2/D))の値は小さくなり、同じ第3及び第4吐出ポートの吐出圧P3p,P4pで得られるトルク制御圧力P3t,P4tは低くなる。第3及び第4吐出ポートの吐出圧P3p,P4pの吐出圧がトルク制御開始圧力Pbまで上昇すると、第2トルク制御部13bの吸収トルク一定制御(或いは馬力一定制御)が始まり、第2油圧ポンプ1bの吸収トルクは一定となる。よって、トルク制御圧力P3t,P4tもトルク制御開始圧力Pbで一定とすればよい。
【0105】
図5Dと
図6の比較から分かるように、
図5Dに示される第3及び第4吐出ポートの吐出圧P3p,P4pが上昇するときときのトルク制御圧力P3t,P4tの増加割合(直線の傾き)は、
図6に示される第3及び第4吐出ポートの吐出圧P3p,P4pが上昇するときときのトルク制御圧力P3t,P4tの増加割合(直線の傾き)と同じように、LS駆動圧力Px3が上昇するにしたがって小さくなるように変化し、トルク制御圧力P3t,P4tが第1及び第2リリーフ弁37a,37bのセット圧であるトルク制御開始圧力Pbに達すると、そのセット圧(Pb)で一定となる。
【0106】
このようにトルクフィードバック回路部30a,30bによって生成されるトルク制御圧力P3t,P4tは第2油圧ポンプ1bの吸収トルクを模擬しており、トルクフィードバック回路部30a,30bは、第2油圧ポンプ1bが第2トルク制御部13bの制御の制限を受け、最大トルクT2max(第2最大トルク)で動作するときと、第2油圧ポンプ1bが第2トルク制御部13bの制御の制限を受けず、第2ロードセンシング制御部12bが第2油圧ポンプ1bの容量を制御するとき(第2油圧ポンプ1bの吸収トルク一定制御の開始圧力Pbより低いとき)のいずれの場合にも、メインポンプ202の吐出圧をメインポンプ202の吸収トルクを模擬するよう補正して出力する機能を有している。
【0108】
図7において、油圧ショベルは、上部旋回体300と、下部走行体301と、フロント作業機302とを備え、上部旋回体300は下部走行体301上に旋回可能に搭載され、フロント作業機302は、上部旋回体300の先端部分にスイングポスト303を介して上下及び左右方向に回動可能に連結されている。下部走行体301は左右の履帯310,311を備え、かつトラックフレーム304の前方に上下動可能な排土用のブレード305を備えている。上部旋回体300はキャビン(運転室)300aを備え、キャビン300a内にフロント作業機及び旋回用の操作レバー装置309a,309b(一方のみ図示)や走行用の操作レバー/ペダル装置309c,309d(一方のみ図示)などの操作手段が設けられている。フロント作業機302はブーム306、アーム307、バケット308をピン結合して構成されている。
【0109】
上部旋回体300は下部走行体301に対して旋回モータ3cによって旋回駆動され、フロント作業機302は、スイングポスト303をスイングシリンダ3f(
図1A参照)により回動することで水平方向に回動し、下部走行体301の左右の履帯310,311は左右の走行モータ3d,3eによって回転駆動され、ブレード305はブレードシリンダ3gにより上下に駆動される。また、ブーム306、アーム307、バケット308は、それぞれ、ブームシリンダ3h、アームシリンダ3a、バケットシリンダ3bを伸縮することにより上下方向に回動する。
〜動作〜
次に、本実施の形態の動作を説明する。
【0110】
<単独駆動>
<<第1油圧ポンプ1a側アクチュエータの単独駆動>>
第1油圧ポンプ1a側に接続されたアクチュエータの1つ、例えばアームシリンダ3aを単独で駆動してアーム動作を行うときは、アーム用の操作レバーを操作すると流量制御弁6a,6eが切り換わり、アームシリンダ3aに第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出油が合流して供給される。また、このとき前述したように、第1ロードセンシング制御部12aのロードセンシング制御と第1トルク制御部13aの吸収トルク一定制御により第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出流量が制御される。
【0111】
バケットシリンダ3b又は旋回モータ3cを単独で駆動してバケット動作又は旋回動作を行うときは、それぞれの操作レバーを操作すると流量制御弁6b又は流量制御弁6dが切り換わり、片側の吐出ポートP1又はP2の吐出油がバケットシリンダ3b又は旋回モータ3c供給される。また、このときも第1ロードセンシング制御部12aのロードセンシング制御と第1トルク制御部13aの吸収トルク一定制御により第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出流量が制御される。バケットシリンダ3b又は旋回モータ3cに圧油を供給しない側の吐出ポートP2又はP1の吐出油はアンロード弁10b又は10aを介してタンクに戻される。
【0112】
<<第2油圧ポンプ1b側アクチュエータの単独駆動>>
第2油圧ポンプ1b側に接続されたアクチュエータの1つ、例えばブームシリンダ3hを単独で駆動してブーム動作を行うときは、ブーム用の操作レバーを操作すると流量制御弁6h,6lが切り換わり、ブームシリンダ3hに第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出油が合流して供給される。また、このとき前述したように、第2ロードセンシング制御部12bのロードセンシング制御と第2トルク制御部13bの吸収トルク一定制御により第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出流量が制御される。
【0113】
スイングシリンダ3f又はブレードシリンダ3gを単独で駆動してスイング動作又はブレード動作を行うときは、それぞれの操作レバーを操作すると流量制御弁6i又は流量制御弁6kが切り換わり、片側の吐出ポートP3又はP4の吐出油がスイングシリンダ3f又はブレードシリンダ3gに供給される。また、このときも第2ロードセンシング制御部12bのロードセンシング制御と第2トルク制御部13bの吸収トルク一定制御により第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出流量が制御される。スイングシリンダ3f又はブレードシリンダ3gに圧油を供給しない側の吐出ポートP4又はP3の吐出油はアンロード弁10d又は10cを介してタンクに戻される。
【0114】
<第1油圧ポンプ1a側アクチュエータと第2油圧ポンプ1b側アクチュエータの同時駆動>
<<アームシリンダとブームシリンダの同時駆動>>
アームシリンダ3aとブームシリンダ3hを同時に駆動してアーム307とブーム306の複合動作を行うときは、アーム用の操作レバーとブーム用の操作レバーを操作すると流量制御弁6a,6eと流量制御弁6h,6lが切り換わり、アームシリンダ3aに第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出油が合流して供給され、ブームシリンダ3hに第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出油が合流して供給される。また、第1油圧ポンプ1a側と第2油圧ポンプ1b側のそれぞれで、前述したように、第1及び第2ロードセンシング制御部12a,12bのロードセンシング制御と第1及び第2トルク制御部13a,13bの吸収トルク一定制御により、第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出流量と第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出流量が制御される。また、第1トルク制御部13aの吸収トルク一定制御では、
図4Aに示した全トルク制御が行われる。
【0115】
<<旋回モータとブームシリンダの同時駆動>>
旋回モータ3cとブームシリンダ3hとを同時に駆動して上部旋回体300(旋回)とブーム306の複合動作を行うときは、旋回用の操作レバーとブーム用の操作レバーを操作するとと流量制御弁6dと流量制御弁6h,6lが切り換わり、旋回モータ3cに第2吐出ポートP2の吐出油が供給され、ブームシリンダ3hに第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出油が合流して供給される。また、第1油圧ポンプ1a側と第2油圧ポンプ1b側のそれぞれで、前述したように、第1及び第2ロードセンシング制御部12a,12bのロードセンシング制御と第1及び第2トルク制御部13a,13bの吸収トルク一定制御により、第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出流量と第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出流量が制御される。また、第1トルク制御部13aの吸収トルク一定制御では、
図4Aに示した全トルク制御が行われる。流量制御弁6a〜6cが閉じられている側の第1吐出ポートP1の吐出油はアンロード弁10aを介してタンクに戻される。
【0116】
<<第1油圧ポンプ1a側アクチュエータと第2油圧ポンプ1b側アクチュエータの他の組み合わせの同時駆動>>
第1油圧ポンプ1aの第1及び第2吐出ポートP1,P2のみに接続されるアクチュエータ(アームシリンダ3a、バケットシリンダ3b、旋回モータ3c)の少なくとも1つと、第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4のみに接続されるアクチュエータ(スイングシリンダ3f、ブレードシリンダ3g、ブームシリンダ3h)の少なくとも1つを同時に駆動する上記以外の複合動作においても、上記と同様に、ロードセンシング制御と吸収トルク一定制御により、第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出流量と第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出流量が制御され、第1トルク制御部13aの吸収トルク一定制御では、
図4Aに示した全トルク制御が行われる。流量制御弁が閉じられている側の吐出ポートの吐出油は対応するアンロード弁を介してタンクに戻される。
【0117】
<第1油圧ポンプ1a側の2つのアクチュエータの同時駆動>
第1油圧ポンプ1aの第1吐出ポートP1に接続されるアクチュエータ(アームシリンダ3a、バケットシリンダ3b、走行右の走行モータ3e)の少なくとも1つと、第1油圧ポンプ1aの第2吐出ポートP2に接続されるアクチュエータ(アームシリンダ3a,旋回モータ3c、走行左の走行モータ3d)の少なくとも1つを同時に駆動する複合動作では、アームシリンダ3aを単独で駆動するアーム動作の場合と同様、第1ロードセンシング制御部12aのロードセンシング制御と第1トルク制御部13aの吸収トルク一定制御により第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出流量が制御される。また、要求流量の少ない側の吐出ポートの吐出油の余剰流量或いは流量制御弁が閉じられている側の吐出ポートの吐出油はアンロード弁を介してタンクに戻される。このとき、第1シャトル弁群
8aによって検出された第1吐出ポートP1側のアクチュエータの負荷圧(最高負荷圧)が圧力補償弁7a〜7cと第1アンロード弁
10aに導かれ、第2シャトル弁群
8bによって検出された第2吐出ポートP2側のアクチュエータの負荷圧(最高負荷圧)が圧力補償弁7d〜7fと第2アンロード弁
10bに導かれ、第1吐出ポートP1側と第2吐出ポートP2側とで別々に圧力補償弁とアンロード弁の制御が行われる。これにより低負荷圧側の吐出ポートの余剰流量がタンクに戻るとき、その吐出ポートの圧力は当該吐出ポート側のアンロード弁によって低い負荷圧に基づいて圧力上昇が制限されるため、余剰流量がタンクに戻るときのアンロード弁の圧損が低減し、エネルギーロスの少ない運転が可能となる。
【0118】
<第2油圧ポンプ1b側の2つのアクチュエータの同時駆動>
第2油圧ポンプ1b側の2つのアクチュエータを同時に駆動する複合動作においても、上述した第1油圧ポンプ1a側の2つのアクチュエータを同時に駆動する複合動作の場合と同様、第2ロードセンシング制御部12bのロードセンシング制御と第2トルク制御部13bの吸収トルク一定制御により第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出流量が制御される。また、要求流量の少ない側の吐出ポートの吐出油の余剰流量或いは流量制御弁が閉じられている側の吐出ポートの吐出油はアンロード弁を介してタンクに戻され、このときのアンロード弁の圧損が低減し、エネルギーロスの少ない運転が可能となる。
【0119】
<走行動作>
走行左の走行モータ3dと走行右の走行モータ3eを駆動して走行動作を行うときは、左右の走行用操作レバー或いはペダルを操作すると流量制御弁6f,6jと流量制御弁6c,6gが切り換わり、走行左の走行モータ3dに第1油圧ポンプ1aの第2吐出ポートP2の吐出油と第2油圧ポンプ1bの第4吐出ポートP4の吐出油が合流して供給され、走行右の走行モータ3eに第1油圧ポンプ1aの第1吐出ポートP1の吐出油と第2油圧ポンプ1bの第3吐出ポートP3の吐出油が合流して供給される。このため、仮に、第1油圧ポンプ1aの斜板の傾転角と第2油圧ポンプ1bの斜板の傾転角が相違し、第1及び第2吐出ポートP1,Pと第3及び第4吐出ポートP3,P4で吐出流量の相違が発生したとしても、走行左の走行モータ3dの供給流量と走行右の走行モータ3eの供給流量は同じとなり、車体は蛇行せず、直進走行することができる。
【0120】
すなわち、第1吐出ポートP1の吐出流量をQ1、第2吐出ポートP2の吐出流量をQ2、第3吐出ポートP3の吐出流量をQ3、第4吐出ポートP4の吐出流量をQ4とした場合、走行左の走行モータ3dへの供給流量と走行右の走行モータ3eへの供給流量はそれぞれ次のようになる。
【0121】
走行左の供給流量:Q2+Q4
走行右の供給流量:Q1+Q3
ここで、Q1=Q2(同一斜板のため)、Q3=Q4(同一斜板のため)の関係にある。したがって、仮にQ1=Q2≠Q3=Q4となったとしても、
Q2+Q4=Q1+Q3
の関係は成り立ち、走行左の走行モータ3dの供給流量と走行右の走行モータ3eの供給流量は同じとなる。
【0122】
このように第1及び第2吐出ポートP1,Pと第3及び第4吐出ポートP3,P4で吐出流量の相違が発生したとしても、走行左の走行モータ3dの供給流量と走行右の走行モータ3eの供給流量は同じとなり、車体は蛇行せず、直進走行することができる。
【0123】
<走行複合動作>
走行モータ3d,3eと他のアクチュエータの少なくとも1つ、例えばアームシリンダ3aとを同時に駆動する走行複合動作を行う場合について説明する。
【0124】
走行複合動作を意図して左右の走行用操作レバー或いはペダルとアーム用の操作レバーを操作すると、流量制御弁6f,6j及び流量制御弁6c,6gと流量制御弁6a,6eとが切り換わると同時に、第1連通制御弁215aが図示下側の連通位置に切り換わる。これにより走行左の走行モータ3dに第1油圧ポンプ1a側から第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出油が合流して供給され、第2油圧ポンプ1b側から第4吐出ポートP4の吐出油が供給され、走行右の走行モータ3eに第1油圧ポンプ1a側から第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出油が合流して供給され、第2油圧ポンプ1b側から第3吐出ポートP3の吐出油が供給される。アームシリンダ3aには、第1及び第2吐出ポートP1,P2の走行モータ3d,3eに供給された残りの圧油が供給される。
【0125】
このとき、また、第1油圧ポンプ1a側においては、第1連通制御弁
15aが図示下側の連通位置に切り換わるため、第1及び第2シャトル弁群
8a,8bにより検出されたアクチュエータ3a〜3eの最高負荷圧がロードセンシング制御弁
16a,16bと圧力補償弁7a〜7c,7d〜7f及び第1アンロード弁
10a,10bに導かれ、ロードセンシング制御と圧力補償弁及びアンロード弁の制御が行われる。一方、第2油圧ポンプ1b側においては、第2連通制御弁
15bは図示上側の遮断位置に保持されているため、第3吐出ポートP3側と第4吐出ポートP4側とで別々に最高負荷圧が検出され、それぞれの最高負荷圧が対応するロードセンシング制御弁
16c,16dと圧力補償弁7g〜7i,7j〜7m及び第3及び第4アンロード弁
10c,10dに導かれ、ロードセンシング制御と圧力補償弁及びアンロード弁の制御が行われる。
【0126】
ここで、走行複合動作で走行直進を行う場合について説明する。
【0127】
走行複合動作で走行直進を意図して左右の走行用操作レバー或いはペダルを同量操作すると、流量制御弁6f,6jのストローク量(開口面積)と流量制御弁6c,6gのストローク量(開口面積−要求流量)が同じとなるよう切り換わる。また、前述したように走行左の走行モータ3dに第1油圧ポンプ1aの第2吐出ポートP2の吐出油と第2油圧ポンプ1bの第4吐出ポートP4の吐出油が合流して供給され、走行左の走行モータ3dに第1油圧ポンプ1a側から第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出油が合流して供給され、第2油圧ポンプ1b側から第4吐出ポートP4の吐出油が供給され、走行右の走行モータ3eに第1油圧ポンプ1a側から第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出油が合流して供給され、第2油圧ポンプ1b側から第3吐出ポートP3の吐出油が供給される。これにより走行複合動作においても、走行左の走行モータ3dの供給流量と走行右の走行モータ3eの供給流量が同じとなり、車体は蛇行せず、直進走行することができる。
【0128】
すなわち、第1吐出ポートP1の吐出流量をQ1、第2吐出ポートP2の吐出流量をQ2、第3吐出ポートP3の吐出流量をQ3、第4吐出ポートP4の吐出流量をQ4とし、走行左の走行モータ3dに供給される圧油の流量をQd、走行右の走行モータ3eに供給される圧油の流量をQe、走行モータ以外のアクチュエータであるブームシリンダ3aに供給される圧油の流量をQaとした場合、左右の走行モータ3d,3eに供給される圧油の流量Qd,Qeは次のようになる。
【0129】
まず、左右の走行モータ3d,3eに第1油圧ポンプ1a側から、第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出油の合流流量Q1+Q2からブームシリンダ3aに供給される圧油の流量Qaを差し引いたQ1+Q2−Qaの1/2ずつが供給される。Q1+Q2−Qaの1/2になるのは、流量制御弁6fのストローク量(開口面積)と流量制御弁6cのストローク量(開口面積−要求流量)が同じであるからである。また、左右の走行モータ3d,3eに第2油圧ポンプ1b側から、第1及び第2吐出ポートP1,P2の吐出油の合流流量Q3+Q4の1/2ずつが供給される。この場合も、Q3+Q4の1/2になるのは、流量制御弁6jのストローク量(開口面積)と流量制御弁6gのストローク量(開口面積−要求流量)が同じであるからである。したがって、左右の走行モータ3d,3eに供給される圧油の流量Qd,Qeは次のように表される。
【0130】
走行右の供給流量Qd=(Q1+Q2−Qa)/2+(Q3+Q4)/2
走行左の供給流量Qe=(Q1+Q2−Qa)/2+(Q3+Q4)/2
すなわち、Qd=Qeであり、車体は蛇行せず、直進走行することができる。
【0131】
上記走行複合動作の動作例は走行モータ3d,3eとアームシリンダ3aとを同時に駆動した場合のものである。他の走行複合動作の動作例として、第1油圧ポンプ1aの第1吐出ポートP1又は第2吐出ポートP2のみから吐出される圧油により駆動されるアクチュエータ(バケットシリンダ3b、旋回モータ3c)、或いは第2油圧ポンプ1bの第3吐出ポートP3又は第4吐出ポートP4のみから吐出される圧油により駆動されるアクチュエータ(スイングシリンダ3f、ブレードシリンダ3g)とを同時に駆動する走行複合動作がある。本実施の形態では、そのような走行複合動作を行う場合でも、車体は蛇行せず、直進走行することができる。
【0132】
なお、本実施の形態では、第1〜第4シャトル弁群
8a〜8dと第1及び第2連通制御弁15a,15b、ロードセンシング制御弁
16a〜16d及び低圧選択弁
21a,21bを設け、第1及び第2連通制御弁15a,15bで吐出ポートと最大負荷圧の出力油路の両方を連通及び遮断する構成としたが、第1及び第2連通制御弁15a,15bは吐出ポートを連通及び遮断する構成とし、それ以外の回路構成は第1の実施の形態と同じであってもよい。この場合でも、第1及び第2連通制御弁15a,15bが走行複合動作時に連通位置に切り換わることで、直進走行性を確保する効果を得ることができる。
【0133】
〜効果〜
次に、本実施の形態により得られる効果について説明する。
【0134】
図8は、比較例として、
図1に示した第1及び第2油圧ポンプ1a,1bを備えた2ポンプロードセンシングシステムに特許文献2に記載の全トルク制御の技術を組み込んだ場合の油圧システムを示す図である。図中、
図1に示した要素と同等の部材には同じ符号を付している。
【0135】
図8に示す比較例の油圧システムは、トルクフィードバック回路30(第1トルクフィードバック回路部30a及び第2トルクフィードバック回路部30b)に代え、減圧弁41a,41bを備えている。減圧弁41a,41bは、二次圧(トルク制御圧力)がセット圧を超えないように第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートの吐出圧を減圧して出力する。減圧弁41a,41bのセット圧は、第2油圧ポンプ1bのトルク制御部のバネS3,S4によって設定される最大トルクT2max相当の値(
図4Bに示す吸収トルク一定制御の開始圧力Pb)となるよう設定されている。
【0136】
図9は
図8に示した比較例の全トルク制御を示す図である。
図8に示した比較例においては、第2油圧ポンプの第3及び第4吐出ポートの吐出圧が吸収トルク一定制御の開始圧力以上にある場合は、第2油圧ポンプ1bは吸収トルク一定制御下にあると想定して、減圧弁41a,41bは第2油圧ポンプの第3及び第4吐出ポートの吐出圧を最大トルクT2max相当の圧力に減圧して第1油圧ポンプ1aの減トルク制御ピストン31a,31bに導き、第1油圧ポンプ1a側では最大トルクをT1maxからT2max分減少させて全トルク制御を行っている。
【0137】
しかし、第2油圧ポンプの第3及び第4吐出ポートの吐出圧が吸収トルク一定制御の開始圧力以上にある場合であっても、第2油圧ポンプ1bが吸収トルク一定制御下になく、第2油圧ポンプ1bがロードセンシング制御によって吸収トルク一定制御で制限される傾転よりも小さい傾転角に制御される場合がある。この場合は、最大トルクT2max相当の圧力で想定した第2油圧ポンプ1bの吸収トルクは第2油圧ポンプ1bの実際の吸収トルクよりも大きい値となってしまう。
【0138】
その結果、最大トルクT2max相当の圧力が導かれ、T1max−T2maxの最大トルクで全トルク制御を行う第1油圧ポンプ1aでは、必要以上に最大トルクが減少するよう制御されてしまい、原動機の出力トルクを有効に使うことができない。
【0139】
図10は本実施の形態の全トルク制御を示す図である。
【0140】
本実施の形態では、トルクフィードバック回路30は、第2油圧ポンプ1bが第2トルク制御部13bの制御の制限を受け、最大トルクT2max(第2最大トルク)で動作するときと、第2油圧ポンプ1bが第2トルク制御部13bの制御の制限を受けず、第2ロードセンシング制御部12bが第2油圧ポンプ1bの容量を制御するとき(第2油圧ポンプ1bの吸収トルク一定制御の開始圧力Pbより低いとき)のいずれの場合にも、第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出圧を、第2油圧ポンプ1bの吸収トルクを模擬するよう補正して出力し、第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bは、トルクフィードバック回路30の出力圧が高くなるにしたがって第1トルク制御部13aに設定された最大トルクT1maxを減少させる。
【0141】
例えば、前述したように、第2油圧ポンプ1bの第3及び第4吐出ポートP3,P4の吐出圧が上昇し、そのときの第2油圧ポンプ1bの吸収トルクが最大トルクT2maxよりも小さいT2であり、トルクフィードバック回路30が模擬した吸収トルクがT2s(≒T2)であるとき、
第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bは、
図10に矢印で示すように、最大トルクT1maxをT1max−T2sへと減少させ、この最大トルクT1max−T2sで全トルク制御が行われる。その結果、必要以上に最大トルクが減少せず、エンジン2の定格出力トルクTERを最大限有効に利用しつつ、エンジン2の停止(エンジンストール)を防止することができる。
【0142】
以上のように本実施の形態によれば、第2油圧ポンプ1bの吸収トルクを純油圧的な構成(トルクフィードバック回路30)で精度良く検出することができるとともに、その吸収トルクを第1油圧ポンプ1a側にフィードバックすることで、全トルク制御を精度良く行い、原動機2の定格出力トルクTERを有効利用することができる。また、第2油圧ポンプ1bの吸収トルクを純油圧的に検出する構成であるため、第1ポンプ制御装置5aを小型化でき、ポンプ制御装置を含めた油圧ポンプの搭載性が向上する。これによりエネルギ効率の良い、低燃費で実用的な建設機械を提供することができる。
【0143】
また、
図5C及び
図5Dに示すように、第1及び第2分圧絞り部(固定絞り)34a,34bと第1及び第2分圧弁(可変絞り弁)35a,35bとの間の第1及び第2油路36a,36bに形成される目標制御圧力と第1及び第2減圧弁32a,32bが出力するトルク制御圧力とは同じ値の圧力であり、第1及び第2油路36a,36bに形成された圧力を直接トルク制御圧力として使用することも可能である。
【0144】
しかし、第1及び第2油路36a,36bに形成された圧力を直接トルク制御圧力として使用した場合は、トルク制御圧力で
第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bを駆動するとき、第1及び第2分圧絞り部(固定絞り)34a,34bが抵抗になって
第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bに十分な流量の圧油を供給することが難しく、
第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bの応答性が悪化する可能性がある。
【0145】
また、第1及び第2油路36a,36bから圧油が
第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bに供給される場合は、第1及び第2油路36a,36bの油量が変化して圧力変化が起きやすく、第1及び第2油路36a,36bに形成される圧力を
図5Cに示すような圧力変化となるように正確に設定することが難しくなる。更に、第2油圧ポンプ1bの吐出圧が変動すると、その吐出圧の変動が直接
第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bに伝わり、システムの安定性が阻害される可能性がある。
【0146】
本実施の形態では、第1及び第2分圧絞り部(固定絞り)34a,34bと第1及び第2分圧弁(可変絞り弁)35a,35bとの間の第1及び第2油路36a,36bの圧力を目標制御圧力として第1及び第2減圧弁32a,32bに導いて第1及び第2減圧弁32a,32bのセット圧を設定し、第2油圧ポンプ1bの吐出圧から第1及び第2減圧弁32a,32bによってトルク制御圧力を生成するようにしたので、トルク制御圧力で
第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bを駆動するときの流量が確保され、
第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bを駆動するときの応答性を良好にすることができる。
【0147】
また、第1及び第2分圧絞り部(固定絞り)34a,34bと第1及び第22分圧弁(可変絞り弁)35a,35bとの間の第1及び第2油路36a,36bの圧力は、直接トルク制御圧力として使用されないので、必要な目標制御圧力を得るための第1及び第2分圧絞り部(固定絞り)34a,34bと第1及び第22分圧弁(可変絞り弁)35a,35bの設定と
第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bの応答性の設定を独立して行うことができ、必要な性能を発揮するためのトルクフィードバック回路30の設定を容易かつ正確に行うことができる。
【0148】
更に、第2油圧ポンプ1bの吐出圧が第1及び第2減圧弁32a,32bのセット圧よりも高いときは、第2油圧ポンプ1bの吐出圧変動が第1及び第2減圧弁32a,32bでブロックされて
第1及び第2減トルク制御ピストン31a,31bに影響しないので、システムの安定性が確保される。
【0149】
〜その他〜
以上の実施の形態では、第1及び第2油圧ポンプが第1及び第2吐出ポートP1,P2及び第3及び第4吐出ポートP3,P4を有するスプリットフロータイプの油圧ポンプである場合について説明したが、第1及び第2油圧ポンプの両方或いは一方は単一の吐出ポートを有するシングルフロータイプの油圧ポンプであってもよい。第1及び第2油圧ポンプがシングルフロータイプの油圧ポンプである場合、トルクフィードバック回路30の回路部とトルク制御圧力が導かれる減トルク制御ピストンはそれぞれ1つづつあればよい。また、
図4A及び
図4Bの横軸は単一の吐出ポートの圧力(油圧ポンプの吐出圧)となる。
【0150】
また、上述したように、トルクフィードバック回路30において、第1及び第2分圧絞り部(固定絞り)34a,34bと第1及び第2分圧弁(可変絞り弁)35a,35bとの間の第1及び第2油路36a,36bに形成される目標制御圧力と第1及び第2減圧弁32a,32bが出力するトルク制御圧力とは同じ値の圧力であるので、第1及び第2油路36a,36bに形成された圧力を直接トルク制御圧力として
第1及び第2減トルク制御
ピストン31a,31bに導く構成としてもよい。
【0151】
また、上記実施の形態では、トルクフィードバック回路30において、第1及び第2分圧絞り部(固定絞り)34a,34bと第1及び第2分圧弁(可変絞り弁)35a,35bとの間の第1及び第2油路36a,36bの圧力がセット圧(トルク開始圧力Pb)以上にならないように第1及び第2リリーフ弁37a,37bを設けたが、リリーフ弁に代え減圧弁を用いてもよい。この場合、減圧弁のセット圧をトルク開始圧力Pbに設定し、減圧弁の出力圧を目標制御圧力P35ref,P4trefとして用いることで、同様の機能を得ることができる。
【0152】
また、第1ポンプ制御装置5aは、第1ロードセンシング制御部12aと第1トルク制御部
13aを有するものとしたが、第1ポンプ制御装置5aにおける第1ロードセンシング制御部12aは必須ではなく、操作レバーの操作量(流量制御弁の開口面積−要求流量)に応じて第1油圧ポンプの容量を制御することができるものであれば、いわゆるポジティブ制御或いはネガティブ制御等、その他の制御方式であってもよい。
【0153】
更に、上記実施の形態のロードセンシングシステムも一例であり、ロードセンシングシステムは種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、ポンプ吐出圧と最高負荷圧を絶対圧として出力する差圧減圧弁を設け、その出力圧を圧力補償弁に導いて目標補償差圧を設定しかつLS制御弁に導き、ロードセンシング制御の目標差圧を設定したが、ポンプ吐出圧と最高負荷圧を別々の油路で圧力制御弁やLS制御弁に導くようにしてもよい。