【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、上記で同定された問題を解決し、以下に概説されるように、以下の解決法を提供する。
【0008】
本発明は、サンプル中のゲノムの1種以上の核酸を定量および/もしくは検出するための方法に関し、ここで増幅反応において、(a)第1の核酸が増幅され、増幅される遺伝子座は、上記ゲノム内のマルチコピー遺伝子座(MCL)であり、ここで上記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号1に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有し、そして上記マルチコピー遺伝子座は、少なくとも2種の異なる染色体上にコピーを有し、(b)内部コントロールとして添加された第2の核酸もまた増幅され、(c)上記第1の核酸の増幅からの増幅産物の量が、決定される。
【0009】
本発明はまた、上記第1の核酸(MCL)を増幅するためのプライマーおよびプライマー対に関する。
【0010】
さらに、本発明は、上記第2の核酸(IC)を増幅するためのプライマーおよびプライマー対に関する。
【0011】
さらに、本発明は、上記第3の核酸(MCL−Y)を増幅するためのプライマーおよびプライマー対に関する。
【0012】
これらは、キット中に存在し得る。よって、本発明はまた、ヒト核酸を検出および/もしくは増幅するためのキットに関する。
【0013】
本明細書において、上記第1の核酸は、以下でより詳細に概説され、「MCL」としばしばいわれるマルチコピー遺伝子座である。
【0014】
本明細書において、上記第2の核酸は、以下でより詳細に概説され、「IC」としばしばいわれる内部コントロールである。
【0015】
本明細書において、上記第3の核酸は、以下でより詳細に概説され、「MCL−Y」としばしばいわれるY染色体上のマルチコピー遺伝子座である。
【0016】
(発明の詳細な説明)
上記で概説されるように、ヒトDNAの定量および検出は困難である。しばしば、増幅に十分な量のDNAが上記サンプル中に実際に存在するとしても、阻害性物質が陰性のPCR結果をもたらす。
【0017】
本発明は、この問題を解決する。本発明は、サンプル中のゲノムの1種以上の核酸を定量および/もしくは検出するための方法に関し、ここで増幅反応において、(a)第1の核酸は増幅され、増幅される遺伝子座は、上記ゲノム内のマルチコピー遺伝子座(MCL)であり、ここで上記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号1に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有し、上記マルチコピー遺伝子座は、少なくとも2種の異なる染色体上にコピーを有し、(b)内部コントロールとして添加された第2の核酸もまた、増幅され、(c)上記第1の核酸の増幅からの増幅産物の量が決定される。
【0018】
驚異的なことには、本発明者らは、反復エレメントではないマルチコピー遺伝子座が、核酸の検出および/もしくは定量のために使用される場合に、他の遺伝子座より優れていることを見いだした。反復エレメントが、個体間でコピー数において変化し得ることは、周知である。一般に、これら核酸は、任意の起源(原核生物、真核生物など)を有し得る。好ましくは、これらは、哺乳動物、およびより好ましくは、ヒトである。これは、本発明の1つの大きな利点は、法医学の分野におけるその適用であることが理由である。
【0019】
1つのこのような配列は、配列番号1において同定される。本発明者らは、この配列および/もしくはこれと配列類似性を共有する配列が、ヒトゲノムにおいて多くの回数見いだされ得ることを驚異的にも見いだした。
【0020】
上記ゲノム全体を通じて分布する配列は、全て正確に同一であるわけではない。上記選択されたプライマーがまた、ほぼ同一な配列に結合することは重要である。従って、理想的には、上記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号1に従う配列に対して少なくとも60%、70%、80%、90%もしくはさらに95%もしくは98%の配列同一性を共有する。
【0021】
2種の配列の間の%同一性の決定は、KarlinおよびAltschulの数学的アルゴリズム(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90: 5873−5877)を使用して達成される。このようなアルゴリズムは、Altschulら(J. Mol. Biol. (1990) 215: 403−410)のBLASTNプログラムおよびBLASTPプログラムの基本原理である。BLASTヌクレオチド検索は、BLASTNプログラム、スコア=100、ワード長=12で行われて、配列番号1に相同なヌクレオチド配列を得る。比較目的でギャップを入れたアラインメントを得るために、Gapped BLASTが、Altschulら(Nucleic Acids Res. (1997) 25: 3389−3402)によって記載されるように利用される。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメーターが使用される。
【0022】
複数コピーが増幅されることは、本発明の一局面である。理想的には、種々の染色体上の少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個のコピーが増幅される。配列番号1もしくはこれに非常に類似の配列は、ヒトゲノムにおいて29回存在する。これは、それほど驚くべきことではないが、本発明の方法の能力を提供する。また、上記コピーは、種々の染色体上で見いだされ得る(例えば、1、4、5、7、11、16)。
【0023】
本明細書で定義されるような配列番号1様の配列および/もしくは本明細書で定義されるような配列番号15様の配列が、本発明に従う方法において使用され得ることに注意することは重要である。配列番号1の配列を使用する方法について以下に概説される好ましい実施形態は、全て同様に、配列番号15の配列に当てはまる。好ましくは、それらは、1つの方法において一緒に使用される。
【0024】
Y染色体上のマルチコピー遺伝子座:
驚異的なことには、本発明者らはまた、Y染色体上のマルチコピー遺伝子座が、核酸の検出および/もしくは増幅に使用される場合に、他の遺伝子座より優れていることを見いだした。なぜなら、反応の感度が増強され得るからである。これは、本発明の1つの大きな利点が、法医学の分野におけるその適用であることが理由である。
【0025】
1つのこのような配列は、配列番号15において同定される。本発明者らは、驚異的なことには、この配列および/もしくはこれと配列類似性を共有する配列が、Y染色体上に多くの回数見いだされ得ることを見いだした。
【0026】
本発明はまた、サンプル中のゲノムの1種以上の核酸を増幅および/もしくは検出するための方法に関し、ここで増幅反応において、
a.第1の核酸は増幅され、増幅される遺伝子座は、上記ゲノム内のY染色体上のマルチコピー遺伝子座(MCL)であり、ここで上記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号15に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有し、
b.内部コントロール(IC)として添加された第2の核酸もまた増幅され、
c.上記第1の核酸の増幅からの増幅産物の量が決定される。
【0027】
上記Y染色体全体を通じて分布する配列は、全て正確に同一であるわけではない。上記選択されたプライマーがまた、ほぼ同一な配列に結合することは重要である。従って、理想的には、上記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号15に従う配列に対して少なくとも60%、70%、80%、90%もしくはさらには95%もしくは98%の配列同一性を共有する。
【0028】
性暴力サンプルの法医学的ワークフローは、STR反応を行う前に男性DNAの定量を示唆する。これは、どの種のSTRキットが遺伝分析のために使用されなければならないかという決定を補助するために、次に、どの程度のDNAがサンプルから得られたか、例えば、犯罪現場から集められたか、そしてこのDNAのうちのどの程度が、STR反応において使用されるべきかを決定するために、最初に行われる。異なるSTRキットが利用可能であり、代表的なSTRキットは、異なる常染色体上の遺伝的長さの多型性を検出するが、いくらかの場合(例えば、性暴力サンプルでの場合)においては、Y染色体上にもっぱらある長さの多型性の分析は、有利であり得る。なぜなら、女性のDNAは、Y染色体を有しないからである。
【0029】
代表的なSTR反応は、テンプレートDNAの特定の範囲において最適に機能し、全分析は、非常に労働集約的であるので、従って、上記STR分析において非常に高い成功率を確実にする方法論が必要とされる。従って、これは、上記定量キットは、そのユーザーが存在するDNA量を確実に同定できるのみならず、インヒビター(これは、上記STR反応結果を損ない得、失敗もしくは貴重なサンプル材料の喪失を生じ、重大な阻害が観察される場合にさらに精製され得る)の非存在をも評価できる場合に、真の利点である。
【0030】
理想的には、上記第3の核酸(MCL−Y)の増幅産物は、60塩基対〜200塩基対の間の長さ、80〜300塩基対の間、100〜200塩基対の間、もしくは120〜180塩基対の間である。
【0031】
好ましい実施形態において、上記第3の核酸(MCL−Y)は、長さが約130塩基対(±20%)である。
【0032】
本発明の1つの特徴は、PCRインヒビターの検出のための新規な内部コントロール(IC)である。上記ICは、1種以上の特定の標的とともに同じ反応バイアル中で並行して同時増幅される。上記ICは、上記反応においてPCRインヒビターを検出するために使用される。よって、上記ICの阻害(リアルタイムPCRにおいて閾値サイクルにおけるシフトによって検出可能)は、上記反応においてPCRインヒビターの特定の量の存在についてのマーカーである。
【0033】
法医学的ワークフローは、上記STR反応を行う前に、上記DNAの定量を示唆する。これは、どの程度のDNAがサンプルから得られたか、例えば、犯罪現場から集められたか、そしてこのDNAのうちのどの程度が、STR反応において使用されるべきかを決定するために、行われる。上記代表的STR反応は、テンプレートDNAの特定の範囲において最適に機能し、全分析は、非常に労働集約的であり、従って、方法論は、上記STR分析において非常に高い成功率を確実にすることが必要とされる。従って、これは、上記定量キットは、そのユーザーが存在するDNA量を確実に同定できるのみならず、インヒビター(これは、上記STR反応結果を損ない得、失敗もしくは貴重なサンプル材料の喪失を生じ、重大な阻害が観察される場合にさらに精製され得る)の非存在をも評価できる場合に、真の利点である。
【0034】
本発明において、上記ICが、インヒビターの存在を報告するが、良好な定量結果をなお与え、インヒビターがそれほど重要でないレベルにおいて存在する場合に、全DNA濃度範囲にわたって内部コントロールの安定なCt値を提供することによって、最近の法医学ワークフローに適合し、上記STR反応にとって重要なインヒビターの高い相関レベルを有するように、上記ICの性質は驚異的である。市場に最近導入された新世代のSTRキットのうちのいくつかは、先に導入されたキットより増大したインヒビター耐性を示す。これら新たなSTRキットは、PCRインヒビターに対するより高い耐性を提供するようにさらに開発された。これはまた、その後のSTR反応の成功にとって重大な阻害のレベルをもっぱら報告するICを提供することによって、DNA定量方法論に新たな要件を提供する。
【0035】
本発明のICは、上記サンプル核酸において起こらないコントロールDNA配列を有し、上記ICをもっぱら特異的に検出するオリゴヌクレオチドプライマーおよび/もしくはプローブの選択を可能にする。
【0036】
好ましい実施形態において、上記ICは、上記コントロールDNA配列を有する、PCR産物もしくはプラスミドである。あるいは、上記ICはまた、合成ロングマー(longmer)、またはプラスミドもしくはベクターの任意の他の種であり得る。
【0037】
好ましい実施形態において、上記第2の核酸の増幅産物の量もまた、決定される。
【0038】
上記増幅法は、非等温性の方法もしくは等温性の方法のいずれかである。
【0039】
上記非等温性の増幅法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Saikiら(1985) Science 230:1350)、定量的リアルタイムPCR(rtPCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Landegrenら(1988) Science 241:1077−1080)の群から選択され得る。ポリメラーゼ連鎖反応増幅が好ましい。
【0040】
上記等温性の増幅法は、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)(Vincentら(2004) EMBO rep 5(8):795−800)、熱安定性HDA(tHDA)(Anら(2005) J Biol Chem 280(32):28952−28958)、鎖置換増幅(SDA)(Walkerら(1992) Nucleic Acids Res 20(7):1691−6)、複数置換増幅(multiple displacement amplification)(MDA)(Deanら(2002) Proc Natl Acad Sci USA 99(8): 5261−5266)、ローリングサークル増幅(RCA)(Liuら(1996) J Am Chem Soc 118:1587−1594)、制限補助RCA(Wangら(2004) Genome Res 14:2357-2366)、単一プライマー等温性増幅(SPIA)(Daffornら(2004) Biotechniques 37(5):854−7)、転写媒介性増幅(TMA)(Vuorinenら(1995) J Clin Microbiol 33: 1856−1859)、ニック形成(nicking)酵素増幅反応(NEAR)(Maplesら、US2009017453)、指数関数的増幅反応(exponential amplification reaction)(EXPAR)(Van Nessら(2003) Proc Natl Acad Sci USA 100(8):4504−4509)、ループ媒介性等温性増幅(LAMP)(Notomiら(2000) Nucleic Acids Res 28(12):e63)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)(Piepenburgら(2006) PloS Biol 4(7):1115−1120)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)(Kievitsら(1991) J Virol Methods 35:273−286)、スマート増幅プロセス(SMAP)(Mitaniら(2007) Nat Methods 4(3):257−62)の群から選択され得る。
【0041】
本発明の状況において「等温性増幅反応」とは、温度が上記反応の間に大きく変化しないことを意味する。好ましい実施形態において、上記等温性増幅反応の温度は、増幅が起こる主要な酵素反応工程の間に、10℃を超えて、好ましくは、5℃を超えて、さらにより好ましくは、2℃を超えて外れない。
【0042】
核酸の等温性増幅の方法に依存して、異なる酵素が、上記増幅反応に必要とされる。核酸増幅のための公知の等温性の方法は、上述のものであり、ここで等温性条件下で核酸を増幅するための少なくとも1種の中温性酵素は、ヘリカーゼ、中温性ポリメラーゼ、鎖置換活性を有する中温性ポリメラーゼ、ニック形成酵素、組換えタンパク質、リガーゼ、グリコシラーゼおよび/もしくはヌクレアーゼからなる群より選択される。
【0043】
「ヘリカーゼ」は、当業者に公知である。それらは、NTPもしくはdNTPの加水分解から得られるエネルギーを使用して、2本のアニールされた核酸鎖(例えば、DNA、RNA、もしくはRNA−DNAハイブリッド)を分離する核酸ホスホジエステル骨格に沿った方向に動くタンパク質である。規定されたヘリカーゼモチーフの存在に基づいて、ヘリカーゼ活性を所定のタンパク質に帰することは可能である。当業者は、本発明に従う方法における使用のためにヘリカーゼ活性を有する適したタンパク質を選択し得る。好ましい実施形態において、上記ヘリカーゼは、異なるファミリーのヘリカーゼを含む群から選択される:スーパーファミリーIヘリカーゼ(例えば、dda、pcrA、F−プラスミドtraIタンパク質ヘリカーゼ、uvrD)、スーパーファミリーIIヘリカーゼ(例えば、recQ、NS3−ヘリカーゼ)、スーパーファミリーIIIヘリカーゼ(例えば、AAV repヘリカーゼ)、DnaB様スーパーファミリーのヘリカーゼ(例えば、T7ファージヘリカーゼ)もしくはRho様スーパーファミリーのヘリカーゼ。
【0044】
上記増幅法は、緩衝液、dNTPもしくはNTP、加えて、必要とされる酵素を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「dNTP」とは、デオキシリボヌクレオシドトリホスフェートに言及する。このようなdNTPの非限定的例は、dATP、dGTP、dCTP、dTTP、dUTPであり、これらはまた、標識された誘導体の形態において存在し得、例えば、蛍光標識、放射性標識、ビオチン標識を含む。改変ヌクレオチド塩基を有するdNTPがまた、包含され、ここで上記ヌクレオチド塩基は、例えば、ヒポキサンチン、キサンチン、7−メチルグアニン、イノシン、キサントシン(xanthinosine)、7−メチルグアノシン、5,6−ジヒドロウラシル、5−メチルシトシン、プソイドウリジン、ジヒドロウリジン、5−メチルシチジンである。さらに、上記の分子のddNTPは、本発明に包含される。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「NTP」とは、リボヌクレオシドトリホスフェートに言及する。このようなNTPの非限定的例は、ATP、GTP、CTP、TTP、UTPであり、これらはまた、標識された誘導体の形態において存在し得、例えば、蛍光標識、放射性標識、ビオチン標識を含む。
【0047】
好ましい実施形態において、上記増幅の方法は、ポリメラーゼ連鎖反応もしくはリアルタイムPCR反応であり、決定される核酸の量は、上記増幅の過程の間に、もしくは上記増幅反応の最後に終点測定としてのいずれかで決定される。
【0048】
オリゴヌクレオチドプライマーは、任意の適切な方法(例えば、ホスホトリエステルおよびホスホジエステル法もしくはその自動化実施形態)を使用して調製され得る。1つのこのような自動化実施形態において、ジエチルホスホルアミダイトは、出発物質として使用され、Beaucageら(1981) Tetrahedron Letters 22:1859−1862によって記載されるように合成され得る。改変固体支持体上でオリゴヌクレオチドを合成するための1つの方法は、米国特許第4,458,006号に記載される。生物学的供給源から単離されたプライマー(例えば、制限エンドヌクレアーゼ消化物)を使用することも可能である。好ましいプライマーは、約6〜100塩基、より好ましくは、約20〜50塩基、最も好ましくは、約20〜40塩基の長さを有する。
【0049】
リアルタイムPCRを使用するDNA定量
PCRの間に、DNAの量は、サイクルごとに理論的には倍加する。各サイクルの後に、DNAの量は、以前の状態の2倍になる。
【0050】
未知のサンプル中のDNAの絶対量は、好ましくは、上記ICを使用して決定される。
【0051】
リアルタイムPCR技術を使用して、蛍光は、リアルタイムPCRサーモサイクラーにおいて検出および測定され、上記生成物の指数関数的増加に対応するその幾何的増加は、各反応において閾値サイクル(CT)を決定するために使用される。
【0052】
標準曲線(標準物質の量の対数に対するCT値/交点(crossing point)のプロット)は、標準物質の異なる希釈物を使用して生成される。未知のサンプルのCT値は、上記標準曲線と比較され、上記標的の最初の量の計算を可能にする。定量されるべき核酸のタイプに対して適切な標準物質を選択することは、重要である。標準曲線を作成するために、少なくとも5種の異なる量の標準物質が定量されるべきであり、未知の標的の量は、上記標準曲線の範囲内に入るべきである。よって、一実施形態においてもまた、上記の定量工程が行われる。
【0053】
理想的には、上記第1の核酸(MCL)の増幅産物は、60塩基対〜200塩基対の間の長さ、80〜300塩基対の間、100〜200塩基対の間もしくは120〜180塩基対の間の長さである。
【0054】
さらに、理想的には、上記第2の核酸(IC)の増幅産物は、60〜400塩基対の間、100〜400塩基対の間、80〜300塩基対の間もしくは150〜250塩基対の間である。
【0055】
驚異的なことには、上記第2の核酸(IC)の増幅が上記第1の核酸(MCL)の増幅産物より長い場合、よりよい結果が達成され得ることが判明した。
【0056】
好ましい実施形態において、上記第1の核酸(MCL)は、約140塩基対の長さ(±20%)であり、上記第2の核酸(IC)は、約200塩基対の長さ(±20%)である。
【0057】
好ましい実施形態において、上記第3の核酸(MCL−Y)は、約130塩基対の長さ(±20%)である。
【0058】
理想的には、上記増幅反応は、(i)8〜8.8の間のpHのTris−HCl(20℃において)、および/もしくは(ii)塩化カリウムおよび硫酸カリウムの群から選択されるカリウム塩、および/もしくは(iii)アンモニウム塩(好ましくは、塩化アンモニウムもしくは硫酸アンモニウム)、および/もしくは(vi)塩化マグネシウム、および/もしくは(v)ホットスタートポリメラーゼ、を含む。
【0059】
好ましくは、Tris−HClの濃度は、10〜100mMの範囲、最も好ましくは、20〜70mMの範囲にあり、K
+の濃度は、1〜25mMの範囲、最も好ましくは、2,5〜20mMの範囲にあり、NH
4+の濃度は、1〜40mMの範囲、最も好ましくは、2,5〜30mMの範囲にあり、Mg
2+の濃度は、4種のdNTPの濃度に対して0,5mM〜8mM過剰であり、最も好ましくは、Mg
2+の濃度は、4種のdNTPの濃度に対して0,7mM〜5mM過剰であり、ホットスタートポリメラーゼ、優先的には、ホットスタートポリメラーゼは、5分間未満のホットスタート時間、最も好ましくは2分間未満のホットスタート時間を可能にする。
【0060】
第2の核酸の量が正しく選択されることは、重要である。このICは、反応系中にDNAがあるか否か、もしくはインヒビターが反応系中に存在するという事実に起因して、おそらく反応産物が得られないかどうかを決定し得る。反応は、代表的には、5〜100μlの間の容積を有し、より好ましくは、7μl〜75μlの範囲にあり、最も好ましくは、10μl〜50μlの範囲にあり、理想的には、15μl〜25μlの範囲にある。
【0061】
本発明者らは、上記第2の核酸(IC)の100〜5000コピーの間が理想的であることを見いだした。好ましくは、200〜2000コピーの間が存在し、より好ましくは、500〜1500コピーの間、より好ましくは、1000コピー(±20%)が存在する。μg/μl単位の量は、核酸のサイズ/長さに依存する。好ましくは、上記核酸は、PCR産物もしくはプラスミドDNAである。
【0062】
本発明はまた、以下の群から選択される、上記第1の核酸(MCL)を増幅するためのプライマーに関する:
【0063】
【化1】
本発明はさらに、以下のとおりのプライマーからなる、上記第1の核酸(MCL)を増幅するためのプライマー対に関する:
【0064】
【化2】
本発明はさらに、以下の群から選択される、上記第2の核酸(IC)を増幅するためのプライマーに関する:
【0065】
【化3】
本発明はまた、以下からなる、上記第2の核酸(IC)を増幅するためのプライマー対に関する:
【0066】
【化4】
本発明はまた、以下の群から選択される、上記第3の核酸(MCL−Y)を増幅するためのプライマーに関する:
【0067】
【化5】
注記、本明細書において、Scorpionプライマーが示される全ての場合(Scorp)において、上記のように配列番号38について、上記プライマーのプライミング部分(priming part)は、3’−プライム部分であり、本発明は、このような場合において、好ましくは、この部分に関し、プローブ部分(agtgggagagctgggaa−3’)に関しない。
【0068】
さらに、本発明は、ヒト核酸を検出および/もしくは定量するためのキットに関し、ここで上記キットは、ストリンジェントな条件下で、80塩基対の範囲にわたって配列番号1に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有する配列を結合する1種以上のプライマー、上記第2の核酸(IC)をストリンジェントに結合する少なくとも1種のプライマーもしくはプローブを含むか、または上記に概説されたものに従うプライマーもしくはプライマー対を含む。
【0069】
理想的には、上記キットは、配列番号2、3、5、6、8、9、10、11および/もしくは12、ならびに/または配列番号37および/もしくは38とは、18ヌクレオチドの範囲にわたって5個以下のヌクレオチドだけ異なるヌクレオチド配列を有する、少なくとも1種のプライマーを有する。理想的には、上記キットは、配列番号2、3、5、6、8、9、10、11および/もしくは12、ならびに/または配列番号37および/もしくは38とは、18ヌクレオチドの範囲にわたって5個以下のヌクレオチドだけ異なるヌクレオチド配列を有する。
本願は特定の実施形態において例えば以下の項目を提供する:
(項目1)
サンプル中のゲノムの1種以上の核酸を定量および/もしくは検出するための方法であって、ここで増幅反応において、
a.第1の核酸は増幅され、増幅される遺伝子座は、前記ゲノム内のマルチコピー遺伝子座(MCL)であり、ここで前記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号1に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有し、前記マルチコピー遺伝子座は、少なくとも2種の異なる染色体上にコピーを有し、
b.内部コントロール(IC)として添加された第2の核酸もまた、増幅され、
c.前記第1の核酸の増幅からの増幅産物の量が決定される、
方法。
(項目2)
第3の核酸がさらに増幅され、前記遺伝子座は、ヒトY染色体上のマルチコピー遺伝子座(MCL−Y)であり、ここで前記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号15に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有し、
a.内部コントロールとして添加された前記第3の核酸は、増幅され、
b.前記第1の核酸および前記第3の核酸の増幅からの増幅産物の量が、決定される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第2の核酸の増幅産物の量もまた決定される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記増幅の方法が、ポリメラーゼ連鎖反応もしくはリアルタイムPCR反応であり、決定される核酸の量は、前記増幅の過程の間に、もしくは前記増幅反応の最後に終点測定としてのいずれかで決定される、項目1〜3に記載の方法。
(項目5)
前記第1の核酸(MCL)および/もしくは前記第3の核酸(MCL−Y)の増幅産物は、60塩基対〜200塩基対の間の長さである、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記第2の核酸(IC)の増幅産物は、60〜400塩基対の間である、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記第2の核酸(IC)の増幅産物は、100〜400塩基対の間である、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記第2の核酸(IC)の増幅は、前記第1の核酸(MCL)の増幅産物より長い、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記増幅反応が、以下:
a.8〜8.8の間のpHのTris−HCl、ならびに/または
b.塩化カリウムおよび硫酸カリウムの群から選択されるカリウム塩、ならびに/または
c.アンモニウム塩、好ましくは、塩化アンモニウムもしくは硫酸アンモニウム、ならびに/または
d.塩化マグネシウム、ならびに/または
e.ホットスタートポリメラーゼ
を含む、項目1〜7に記載の方法。
(項目10)
前記増幅反応は、前記第2の核酸(IC)の100〜5000の間のコピーを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
以下:
【化6】
の群より選択される、第1の核酸(MCL)を増幅するためのプライマー。
(項目12)
以下:
【化7】
の群より選択される、第3の核酸(Y−MCL)を増幅するためのプライマー。
(項目13)
項目11に記載のプライマーからなる、第1の核酸(MCL)を増幅するためのプライマー対。
(項目14)
項目12に記載のプライマーからなる、第3の核酸(Y−MCL)を増幅するためのプライマー対。
(項目15)
以下:
【化8】
の群から選択される、第2の核酸(IC)を増幅するためのプライマー。
(項目16)
項目15に記載のプライマーからなる、第2の核酸(IC)を増幅するためのプライマー対。
(項目17)
ヒト核酸を検出および/もしくは定量するためのキットであって、ここで前記キットは、ストリンジェントな条件下で、80塩基対の範囲にわたって配列番号1に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有する配列に結合する1個以上のプライマー、第2の核酸(IC)にストリンジェントに結合するか、または項目11〜16に記載のプライマーもしくはプライマー対を含む少なくとも1つのプライマーもしくはプローブ、ならびに必要に応じてさらに、配列番号15(MCL−Y)に従う配列にストリンジェントに結合するプライマー、プライマー対および/もしくはプローブを含む、キット。
(項目18)
前記キット中の少なくとも1個のプライマーは、配列番号2、3、5、6、8、9、10、11および/もしくは12とは、18ヌクレオチドの範囲にわたって5以下のヌクレオチドだけ異なるヌクレオチド配列を有する、項目17に記載のキット。
(項目19)
サンプル中のゲノムの1種以上の核酸を定量および/もしくは検出するための方法であって、ここで増幅反応において、
a.第1の核酸は増幅され、増幅される遺伝子座は、前記ゲノム内のY染色体(MCL)上にマルチコピー遺伝子座であり、ここで前記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号15に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有し、
b.内部コントロール(IC)として添加された第2の核酸もまた、増幅され、
c.前記第1の核酸の増幅からの増幅産物の量が決定される、
方法。