特許第6021230号(P6021230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6021230内部コントロールを使用するヒトDNAを定量するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021230
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】内部コントロールを使用するヒトDNAを定量するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20161027BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12Q1/68 A
【請求項の数】19
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2013-553849(P2013-553849)
(86)(22)【出願日】2012年2月20日
(65)【公表番号】特表2014-506794(P2014-506794A)
(43)【公表日】2014年3月20日
(86)【国際出願番号】EP2012000833
(87)【国際公開番号】WO2012113577
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2014年12月10日
(31)【優先権主張番号】11155178.4
(32)【優先日】2011年2月21日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/588,975
(32)【優先日】2012年1月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507214038
【氏名又は名称】キアゲン ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】502310852
【氏名又は名称】キアゲン マンチェスター リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ディ パスクアール, フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】エンゲル, ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】シュトラウス, ザーシャ
(72)【発明者】
【氏名】セルウェル, ニコラ ジョー
【審査官】 田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−105887(JP,A)
【文献】 特表2013−540436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12Q 1/68
CAplus/REGISTRY(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のゲノムの1種以上の核酸を定量するための方法であって、ここで増幅反応において、
a.第1の核酸は増幅され、増幅される遺伝子座は、前記ゲノム内のマルチコピー遺伝子座(MCL)であり、ここで前記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号1に従う配列に対して少なくとも90%の配列同一性を共有し、前記マルチコピー遺伝子座は、少なくとも2種の異なる染色体上にコピーを有し、
b.内部コントロール(IC)として添加された第2の核酸もまた、増幅され、ここで、標準曲線の生成を可能にするために異なる量の前記第2の核酸が増幅され、
c.前記標準曲線を参考にして前記第1の核酸の増幅からの増幅産物の量が決定される、
方法。
【請求項2】
第3の核酸がさらに増幅され、前記遺伝子座は、ヒトY染色体上のマルチコピー遺伝子座(MCL−Y)であり、ここで前記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号15に従う配列に対して少なくとも90%の配列同一性を共有し、
a.前記第3の核酸は、増幅され、
b.前記第1の核酸および前記第3の核酸の増幅からの増幅産物の量が、決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の核酸の増幅産物の量もまた決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記増幅の方法が、ポリメラーゼ連鎖反応もしくはリアルタイムPCR反応であり、決定される核酸の量は、前記増幅の過程の間に、もしくは前記増幅反応の最後に終点測定としてのいずれかで決定される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1の核酸(MCL)および/もしくは前記第3の核酸(MCL−Y)の増幅産物は、60塩基対〜200塩基対の間の長さである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第2の核酸(IC)の増幅産物は、60〜400塩基対の間である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第2の核酸(IC)の増幅産物は、100〜400塩基対の間である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の核酸(IC)の増幅産物は、前記第1の核酸(MCL)の増幅産物より長い、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記増幅反応が、以下:
a.8〜8.8の間のpHのTris−HCl、ならびに/または
b.塩化カリウムおよび硫酸カリウムの群から選択されるカリウム塩、ならびに/または
c.アンモニウム塩、ならびに/または
d.塩化マグネシウム、ならびに/または
e.ホットスタートポリメラーゼ
を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記アンモニウム塩が塩化アンモニウムもしくは硫酸アンモニウムである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記増幅反応は、前記第2の核酸(IC)の100〜5000の間のコピーを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
以下:
【化6】
の群より選択される、請求項1〜11のいずれかに記載の方法に従って第1の核酸(MCL)を増幅するためのプライマー。
【請求項13】
以下:
【化7】
の群より選択される、請求項2に記載の方法に従って第3の核酸(Y−MCL)を増幅するためのプライマー。
【請求項14】
請求項12に記載のプライマーからなる、第1の核酸(MCL)を増幅するためのプライマー対。
【請求項15】
請求項13に記載のプライマーからなる、第3の核酸(Y−MCL)を増幅するためのプライマー対。
【請求項16】
以下:
【化8】
の群から選択される、請求項1〜11のいずれかに記載の方法に従って第2の核酸(IC)を増幅するためのプライマー。
【請求項17】
請求項16に記載のプライマーからなる、第2の核酸(IC)を増幅するためのプライマー対。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれかに記載の方法に従ってヒト核酸を定量するためのキットであって、ここで前記キットは、請求項12〜17に記載のプライマーもしくはプライマー対を含む少なくとも1つのプライマーもしくはプローブを含む、キット。
【請求項19】
前記キット中の少なくとも1個のプライマーは、配列番号2、3、5、6、8、9、10、11および/もしくは12とは、18ヌクレオチドの範囲にわたって以下のヌクレオチドだけ異なるヌクレオチド配列を有する、請求項18記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、分子生物学、診断学の分野、より詳細には、分析科学および法科学の分野にある。本発明はさらに、核酸増幅および定量の分野、より詳細には、DNA定量の分野にある。
【0002】
さらに、DNA染色における異なる寄与因子の存在の初期の評価は、しばしば、調査の間の非常に重要な情報である。この場合において、STR分析は、上記複数の寄与因子の干渉が原因で、結果として困難になる。
【0003】
混合サンプルの特定の場合は、女性および男性のDNAの混合物を含む性的暴行の染色である。男性:女性DNA比の正確な決定は、最適な下流STR分析の選択を補助する。非常に少量の利用可能な犯罪者DNAの場合、特定のタイプのSTR分析が行われて、Y染色体上にもっぱら存在する遺伝的エレメントをアドレス決定し(address)得、従って、女性が一因となる干渉を排除する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
法医学サンプルおよび他のサンプルから回収されたDNAの量の決定は、DNAタイプ決定プロセス全体において重要な工程であるが、種々の他の科学分野におけるDNAの検出においても同様である。0.5〜2ngの狭い範囲の投入DNAは、例えば、多重DNAタイプ決定キットで最適な結果を生じるためにしばしば必要とされる。従って、DNAの非存在に起因して、陽性結果が陽性結果であり、そして/または陰性結果が陰性結果であることを確実にするために、DNAの定量は、絶対的に重要である。さらに、法医学的DNA試験研究室の標準の質は、ヒト特異的DNAの定量を要する。これは、ヒトDNA、ならびに細菌DNAおよび他の外因性DNAを回収し得る単離技術に起因する。多くの手順が、ヒト特異的DNAの定量を可能にするために開発された(スタートブロット技術、液体ベースのハイブリダイゼーションアッセイおよびリアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)が挙げられる)。現在では、リアルタイムPCRは、その広いダイナミックレンジおよび自動化の容易さに起因して、主要な技術である。
【0005】
現代のSTR−キットは、遙かに高感度になり、少量のDNAを使用してすら、良好な結果を得ることができる。従って、少量の濃縮サンプル中ですらヒトDNAの精密かつ正確な定量を可能にする方法、キットおよび核酸領域が望ましい。特定の定量および検出のキットは既に利用可能であるが、これらは、重大な欠点を有する。1つのこのようなキットは、Quantifiler Human Kit(Applied Biosystems)であり、別のキットは、Quantifiler Duo Kit(Applied Biosystems)であり、別のキットは、Plexor HY Real−Time PCR Quantification Kit(Promega)である。Quantifiler Duo KitおよびPlexor HY Kitはともに、ゲノム上の常染色体および性染色体(Y染色体)標的を標的とする。上記キットの欠点:LaSalleら(Forensic Science International: Genetics, “Analysis of Single and Multi−copy Methods for DNA Quantification by Real−Time Polymerase Chain Reaction”)によれば、上記Quantifiler Kitsは、定量においてより正確であるが、上記Plexor HYより低いダイナミックレンジを有する。上記Plexor HYは、マルチコピー標的の定量に起因して、より高いダイナミックレンジを提供するが、精度は低い。この低い精度は、上記マルチコピー標的に帰し得る。ゲノム上の20コピーの全セット未満が増幅される場合、例えば、上記標的コピー数における不安定性が原因で、常染色体標的と性染色体(Y)標的との間の増幅の比が変動し得る。上記Plexor HYキットのダイナミックレンジは、他のキットのものより僅かによい(LaSalleら、Forensic Science International: Genetics, “Analysis of Single and Multi−copy Methods for DNA Quantification by Real−Time Polymerase Chain Reaction”)。統計的比較において、LaSalleらは、上記2種のキットの間で統計的差異を示した。
【0006】
法医学における別の重要なパラメーターは、分析されるべきDNAの分解グレードである。上記Quantifiler HumanおよびPlexor HYのアンプリコンサイズは、62塩基対(bp)から133塩基対まで変動し、有意差は、上記キットが分解されたDNAに対して適用される場合に予測され得る。また、インヒビターが考慮されなければならない。DNAが上記反応に存在するが、阻害物質の存在に起因して結果が得られないことは、よくあり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、上記で同定された問題を解決し、以下に概説されるように、以下の解決法を提供する。
【0008】
本発明は、サンプル中のゲノムの1種以上の核酸を定量および/もしくは検出するための方法に関し、ここで増幅反応において、(a)第1の核酸が増幅され、増幅される遺伝子座は、上記ゲノム内のマルチコピー遺伝子座(MCL)であり、ここで上記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号1に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有し、そして上記マルチコピー遺伝子座は、少なくとも2種の異なる染色体上にコピーを有し、(b)内部コントロールとして添加された第2の核酸もまた増幅され、(c)上記第1の核酸の増幅からの増幅産物の量が、決定される。
【0009】
本発明はまた、上記第1の核酸(MCL)を増幅するためのプライマーおよびプライマー対に関する。
【0010】
さらに、本発明は、上記第2の核酸(IC)を増幅するためのプライマーおよびプライマー対に関する。
【0011】
さらに、本発明は、上記第3の核酸(MCL−Y)を増幅するためのプライマーおよびプライマー対に関する。
【0012】
これらは、キット中に存在し得る。よって、本発明はまた、ヒト核酸を検出および/もしくは増幅するためのキットに関する。
【0013】
本明細書において、上記第1の核酸は、以下でより詳細に概説され、「MCL」としばしばいわれるマルチコピー遺伝子座である。
【0014】
本明細書において、上記第2の核酸は、以下でより詳細に概説され、「IC」としばしばいわれる内部コントロールである。
【0015】
本明細書において、上記第3の核酸は、以下でより詳細に概説され、「MCL−Y」としばしばいわれるY染色体上のマルチコピー遺伝子座である。
【0016】
(発明の詳細な説明)
上記で概説されるように、ヒトDNAの定量および検出は困難である。しばしば、増幅に十分な量のDNAが上記サンプル中に実際に存在するとしても、阻害性物質が陰性のPCR結果をもたらす。
【0017】
本発明は、この問題を解決する。本発明は、サンプル中のゲノムの1種以上の核酸を定量および/もしくは検出するための方法に関し、ここで増幅反応において、(a)第1の核酸は増幅され、増幅される遺伝子座は、上記ゲノム内のマルチコピー遺伝子座(MCL)であり、ここで上記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号1に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有し、上記マルチコピー遺伝子座は、少なくとも2種の異なる染色体上にコピーを有し、(b)内部コントロールとして添加された第2の核酸もまた、増幅され、(c)上記第1の核酸の増幅からの増幅産物の量が決定される。
【0018】
驚異的なことには、本発明者らは、反復エレメントではないマルチコピー遺伝子座が、核酸の検出および/もしくは定量のために使用される場合に、他の遺伝子座より優れていることを見いだした。反復エレメントが、個体間でコピー数において変化し得ることは、周知である。一般に、これら核酸は、任意の起源(原核生物、真核生物など)を有し得る。好ましくは、これらは、哺乳動物、およびより好ましくは、ヒトである。これは、本発明の1つの大きな利点は、法医学の分野におけるその適用であることが理由である。
【0019】
1つのこのような配列は、配列番号1において同定される。本発明者らは、この配列および/もしくはこれと配列類似性を共有する配列が、ヒトゲノムにおいて多くの回数見いだされ得ることを驚異的にも見いだした。
【0020】
上記ゲノム全体を通じて分布する配列は、全て正確に同一であるわけではない。上記選択されたプライマーがまた、ほぼ同一な配列に結合することは重要である。従って、理想的には、上記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号1に従う配列に対して少なくとも60%、70%、80%、90%もしくはさらに95%もしくは98%の配列同一性を共有する。
【0021】
2種の配列の間の%同一性の決定は、KarlinおよびAltschulの数学的アルゴリズム(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90: 5873−5877)を使用して達成される。このようなアルゴリズムは、Altschulら(J. Mol. Biol. (1990) 215: 403−410)のBLASTNプログラムおよびBLASTPプログラムの基本原理である。BLASTヌクレオチド検索は、BLASTNプログラム、スコア=100、ワード長=12で行われて、配列番号1に相同なヌクレオチド配列を得る。比較目的でギャップを入れたアラインメントを得るために、Gapped BLASTが、Altschulら(Nucleic Acids Res. (1997) 25: 3389−3402)によって記載されるように利用される。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメーターが使用される。
【0022】
複数コピーが増幅されることは、本発明の一局面である。理想的には、種々の染色体上の少なくとも4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個のコピーが増幅される。配列番号1もしくはこれに非常に類似の配列は、ヒトゲノムにおいて29回存在する。これは、それほど驚くべきことではないが、本発明の方法の能力を提供する。また、上記コピーは、種々の染色体上で見いだされ得る(例えば、1、4、5、7、11、16)。
【0023】
本明細書で定義されるような配列番号1様の配列および/もしくは本明細書で定義されるような配列番号15様の配列が、本発明に従う方法において使用され得ることに注意することは重要である。配列番号1の配列を使用する方法について以下に概説される好ましい実施形態は、全て同様に、配列番号15の配列に当てはまる。好ましくは、それらは、1つの方法において一緒に使用される。
【0024】
Y染色体上のマルチコピー遺伝子座:
驚異的なことには、本発明者らはまた、Y染色体上のマルチコピー遺伝子座が、核酸の検出および/もしくは増幅に使用される場合に、他の遺伝子座より優れていることを見いだした。なぜなら、反応の感度が増強され得るからである。これは、本発明の1つの大きな利点が、法医学の分野におけるその適用であることが理由である。
【0025】
1つのこのような配列は、配列番号15において同定される。本発明者らは、驚異的なことには、この配列および/もしくはこれと配列類似性を共有する配列が、Y染色体上に多くの回数見いだされ得ることを見いだした。
【0026】
本発明はまた、サンプル中のゲノムの1種以上の核酸を増幅および/もしくは検出するための方法に関し、ここで増幅反応において、
a.第1の核酸は増幅され、増幅される遺伝子座は、上記ゲノム内のY染色体上のマルチコピー遺伝子座(MCL)であり、ここで上記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号15に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有し、
b.内部コントロール(IC)として添加された第2の核酸もまた増幅され、
c.上記第1の核酸の増幅からの増幅産物の量が決定される。
【0027】
上記Y染色体全体を通じて分布する配列は、全て正確に同一であるわけではない。上記選択されたプライマーがまた、ほぼ同一な配列に結合することは重要である。従って、理想的には、上記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号15に従う配列に対して少なくとも60%、70%、80%、90%もしくはさらには95%もしくは98%の配列同一性を共有する。
【0028】
性暴力サンプルの法医学的ワークフローは、STR反応を行う前に男性DNAの定量を示唆する。これは、どの種のSTRキットが遺伝分析のために使用されなければならないかという決定を補助するために、次に、どの程度のDNAがサンプルから得られたか、例えば、犯罪現場から集められたか、そしてこのDNAのうちのどの程度が、STR反応において使用されるべきかを決定するために、最初に行われる。異なるSTRキットが利用可能であり、代表的なSTRキットは、異なる常染色体上の遺伝的長さの多型性を検出するが、いくらかの場合(例えば、性暴力サンプルでの場合)においては、Y染色体上にもっぱらある長さの多型性の分析は、有利であり得る。なぜなら、女性のDNAは、Y染色体を有しないからである。
【0029】
代表的なSTR反応は、テンプレートDNAの特定の範囲において最適に機能し、全分析は、非常に労働集約的であるので、従って、上記STR分析において非常に高い成功率を確実にする方法論が必要とされる。従って、これは、上記定量キットは、そのユーザーが存在するDNA量を確実に同定できるのみならず、インヒビター(これは、上記STR反応結果を損ない得、失敗もしくは貴重なサンプル材料の喪失を生じ、重大な阻害が観察される場合にさらに精製され得る)の非存在をも評価できる場合に、真の利点である。
【0030】
理想的には、上記第3の核酸(MCL−Y)の増幅産物は、60塩基対〜200塩基対の間の長さ、80〜300塩基対の間、100〜200塩基対の間、もしくは120〜180塩基対の間である。
【0031】
好ましい実施形態において、上記第3の核酸(MCL−Y)は、長さが約130塩基対(±20%)である。
【0032】
本発明の1つの特徴は、PCRインヒビターの検出のための新規な内部コントロール(IC)である。上記ICは、1種以上の特定の標的とともに同じ反応バイアル中で並行して同時増幅される。上記ICは、上記反応においてPCRインヒビターを検出するために使用される。よって、上記ICの阻害(リアルタイムPCRにおいて閾値サイクルにおけるシフトによって検出可能)は、上記反応においてPCRインヒビターの特定の量の存在についてのマーカーである。
【0033】
法医学的ワークフローは、上記STR反応を行う前に、上記DNAの定量を示唆する。これは、どの程度のDNAがサンプルから得られたか、例えば、犯罪現場から集められたか、そしてこのDNAのうちのどの程度が、STR反応において使用されるべきかを決定するために、行われる。上記代表的STR反応は、テンプレートDNAの特定の範囲において最適に機能し、全分析は、非常に労働集約的であり、従って、方法論は、上記STR分析において非常に高い成功率を確実にすることが必要とされる。従って、これは、上記定量キットは、そのユーザーが存在するDNA量を確実に同定できるのみならず、インヒビター(これは、上記STR反応結果を損ない得、失敗もしくは貴重なサンプル材料の喪失を生じ、重大な阻害が観察される場合にさらに精製され得る)の非存在をも評価できる場合に、真の利点である。
【0034】
本発明において、上記ICが、インヒビターの存在を報告するが、良好な定量結果をなお与え、インヒビターがそれほど重要でないレベルにおいて存在する場合に、全DNA濃度範囲にわたって内部コントロールの安定なCt値を提供することによって、最近の法医学ワークフローに適合し、上記STR反応にとって重要なインヒビターの高い相関レベルを有するように、上記ICの性質は驚異的である。市場に最近導入された新世代のSTRキットのうちのいくつかは、先に導入されたキットより増大したインヒビター耐性を示す。これら新たなSTRキットは、PCRインヒビターに対するより高い耐性を提供するようにさらに開発された。これはまた、その後のSTR反応の成功にとって重大な阻害のレベルをもっぱら報告するICを提供することによって、DNA定量方法論に新たな要件を提供する。
【0035】
本発明のICは、上記サンプル核酸において起こらないコントロールDNA配列を有し、上記ICをもっぱら特異的に検出するオリゴヌクレオチドプライマーおよび/もしくはプローブの選択を可能にする。
【0036】
好ましい実施形態において、上記ICは、上記コントロールDNA配列を有する、PCR産物もしくはプラスミドである。あるいは、上記ICはまた、合成ロングマー(longmer)、またはプラスミドもしくはベクターの任意の他の種であり得る。
【0037】
好ましい実施形態において、上記第2の核酸の増幅産物の量もまた、決定される。
【0038】
上記増幅法は、非等温性の方法もしくは等温性の方法のいずれかである。
【0039】
上記非等温性の増幅法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Saikiら(1985) Science 230:1350)、定量的リアルタイムPCR(rtPCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Landegrenら(1988) Science 241:1077−1080)の群から選択され得る。ポリメラーゼ連鎖反応増幅が好ましい。
【0040】
上記等温性の増幅法は、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)(Vincentら(2004) EMBO rep 5(8):795−800)、熱安定性HDA(tHDA)(Anら(2005) J Biol Chem 280(32):28952−28958)、鎖置換増幅(SDA)(Walkerら(1992) Nucleic Acids Res 20(7):1691−6)、複数置換増幅(multiple displacement amplification)(MDA)(Deanら(2002) Proc Natl Acad Sci USA 99(8): 5261−5266)、ローリングサークル増幅(RCA)(Liuら(1996) J Am Chem Soc 118:1587−1594)、制限補助RCA(Wangら(2004) Genome Res 14:2357-2366)、単一プライマー等温性増幅(SPIA)(Daffornら(2004) Biotechniques 37(5):854−7)、転写媒介性増幅(TMA)(Vuorinenら(1995) J Clin Microbiol 33: 1856−1859)、ニック形成(nicking)酵素増幅反応(NEAR)(Maplesら、US2009017453)、指数関数的増幅反応(exponential amplification reaction)(EXPAR)(Van Nessら(2003) Proc Natl Acad Sci USA 100(8):4504−4509)、ループ媒介性等温性増幅(LAMP)(Notomiら(2000) Nucleic Acids Res 28(12):e63)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)(Piepenburgら(2006) PloS Biol 4(7):1115−1120)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)(Kievitsら(1991) J Virol Methods 35:273−286)、スマート増幅プロセス(SMAP)(Mitaniら(2007) Nat Methods 4(3):257−62)の群から選択され得る。
【0041】
本発明の状況において「等温性増幅反応」とは、温度が上記反応の間に大きく変化しないことを意味する。好ましい実施形態において、上記等温性増幅反応の温度は、増幅が起こる主要な酵素反応工程の間に、10℃を超えて、好ましくは、5℃を超えて、さらにより好ましくは、2℃を超えて外れない。
【0042】
核酸の等温性増幅の方法に依存して、異なる酵素が、上記増幅反応に必要とされる。核酸増幅のための公知の等温性の方法は、上述のものであり、ここで等温性条件下で核酸を増幅するための少なくとも1種の中温性酵素は、ヘリカーゼ、中温性ポリメラーゼ、鎖置換活性を有する中温性ポリメラーゼ、ニック形成酵素、組換えタンパク質、リガーゼ、グリコシラーゼおよび/もしくはヌクレアーゼからなる群より選択される。
【0043】
「ヘリカーゼ」は、当業者に公知である。それらは、NTPもしくはdNTPの加水分解から得られるエネルギーを使用して、2本のアニールされた核酸鎖(例えば、DNA、RNA、もしくはRNA−DNAハイブリッド)を分離する核酸ホスホジエステル骨格に沿った方向に動くタンパク質である。規定されたヘリカーゼモチーフの存在に基づいて、ヘリカーゼ活性を所定のタンパク質に帰することは可能である。当業者は、本発明に従う方法における使用のためにヘリカーゼ活性を有する適したタンパク質を選択し得る。好ましい実施形態において、上記ヘリカーゼは、異なるファミリーのヘリカーゼを含む群から選択される:スーパーファミリーIヘリカーゼ(例えば、dda、pcrA、F−プラスミドtraIタンパク質ヘリカーゼ、uvrD)、スーパーファミリーIIヘリカーゼ(例えば、recQ、NS3−ヘリカーゼ)、スーパーファミリーIIIヘリカーゼ(例えば、AAV repヘリカーゼ)、DnaB様スーパーファミリーのヘリカーゼ(例えば、T7ファージヘリカーゼ)もしくはRho様スーパーファミリーのヘリカーゼ。
【0044】
上記増幅法は、緩衝液、dNTPもしくはNTP、加えて、必要とされる酵素を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「dNTP」とは、デオキシリボヌクレオシドトリホスフェートに言及する。このようなdNTPの非限定的例は、dATP、dGTP、dCTP、dTTP、dUTPであり、これらはまた、標識された誘導体の形態において存在し得、例えば、蛍光標識、放射性標識、ビオチン標識を含む。改変ヌクレオチド塩基を有するdNTPがまた、包含され、ここで上記ヌクレオチド塩基は、例えば、ヒポキサンチン、キサンチン、7−メチルグアニン、イノシン、キサントシン(xanthinosine)、7−メチルグアノシン、5,6−ジヒドロウラシル、5−メチルシトシン、プソイドウリジン、ジヒドロウリジン、5−メチルシチジンである。さらに、上記の分子のddNTPは、本発明に包含される。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「NTP」とは、リボヌクレオシドトリホスフェートに言及する。このようなNTPの非限定的例は、ATP、GTP、CTP、TTP、UTPであり、これらはまた、標識された誘導体の形態において存在し得、例えば、蛍光標識、放射性標識、ビオチン標識を含む。
【0047】
好ましい実施形態において、上記増幅の方法は、ポリメラーゼ連鎖反応もしくはリアルタイムPCR反応であり、決定される核酸の量は、上記増幅の過程の間に、もしくは上記増幅反応の最後に終点測定としてのいずれかで決定される。
【0048】
オリゴヌクレオチドプライマーは、任意の適切な方法(例えば、ホスホトリエステルおよびホスホジエステル法もしくはその自動化実施形態)を使用して調製され得る。1つのこのような自動化実施形態において、ジエチルホスホルアミダイトは、出発物質として使用され、Beaucageら(1981) Tetrahedron Letters 22:1859−1862によって記載されるように合成され得る。改変固体支持体上でオリゴヌクレオチドを合成するための1つの方法は、米国特許第4,458,006号に記載される。生物学的供給源から単離されたプライマー(例えば、制限エンドヌクレアーゼ消化物)を使用することも可能である。好ましいプライマーは、約6〜100塩基、より好ましくは、約20〜50塩基、最も好ましくは、約20〜40塩基の長さを有する。
【0049】
リアルタイムPCRを使用するDNA定量
PCRの間に、DNAの量は、サイクルごとに理論的には倍加する。各サイクルの後に、DNAの量は、以前の状態の2倍になる。
【0050】
未知のサンプル中のDNAの絶対量は、好ましくは、上記ICを使用して決定される。
【0051】
リアルタイムPCR技術を使用して、蛍光は、リアルタイムPCRサーモサイクラーにおいて検出および測定され、上記生成物の指数関数的増加に対応するその幾何的増加は、各反応において閾値サイクル(CT)を決定するために使用される。
【0052】
標準曲線(標準物質の量の対数に対するCT値/交点(crossing point)のプロット)は、標準物質の異なる希釈物を使用して生成される。未知のサンプルのCT値は、上記標準曲線と比較され、上記標的の最初の量の計算を可能にする。定量されるべき核酸のタイプに対して適切な標準物質を選択することは、重要である。標準曲線を作成するために、少なくとも5種の異なる量の標準物質が定量されるべきであり、未知の標的の量は、上記標準曲線の範囲内に入るべきである。よって、一実施形態においてもまた、上記の定量工程が行われる。
【0053】
理想的には、上記第1の核酸(MCL)の増幅産物は、60塩基対〜200塩基対の間の長さ、80〜300塩基対の間、100〜200塩基対の間もしくは120〜180塩基対の間の長さである。
【0054】
さらに、理想的には、上記第2の核酸(IC)の増幅産物は、60〜400塩基対の間、100〜400塩基対の間、80〜300塩基対の間もしくは150〜250塩基対の間である。
【0055】
驚異的なことには、上記第2の核酸(IC)の増幅が上記第1の核酸(MCL)の増幅産物より長い場合、よりよい結果が達成され得ることが判明した。
【0056】
好ましい実施形態において、上記第1の核酸(MCL)は、約140塩基対の長さ(±20%)であり、上記第2の核酸(IC)は、約200塩基対の長さ(±20%)である。
【0057】
好ましい実施形態において、上記第3の核酸(MCL−Y)は、約130塩基対の長さ(±20%)である。
【0058】
理想的には、上記増幅反応は、(i)8〜8.8の間のpHのTris−HCl(20℃において)、および/もしくは(ii)塩化カリウムおよび硫酸カリウムの群から選択されるカリウム塩、および/もしくは(iii)アンモニウム塩(好ましくは、塩化アンモニウムもしくは硫酸アンモニウム)、および/もしくは(vi)塩化マグネシウム、および/もしくは(v)ホットスタートポリメラーゼ、を含む。
【0059】
好ましくは、Tris−HClの濃度は、10〜100mMの範囲、最も好ましくは、20〜70mMの範囲にあり、Kの濃度は、1〜25mMの範囲、最も好ましくは、2,5〜20mMの範囲にあり、NHの濃度は、1〜40mMの範囲、最も好ましくは、2,5〜30mMの範囲にあり、Mg2+の濃度は、4種のdNTPの濃度に対して0,5mM〜8mM過剰であり、最も好ましくは、Mg2+の濃度は、4種のdNTPの濃度に対して0,7mM〜5mM過剰であり、ホットスタートポリメラーゼ、優先的には、ホットスタートポリメラーゼは、5分間未満のホットスタート時間、最も好ましくは2分間未満のホットスタート時間を可能にする。
【0060】
第2の核酸の量が正しく選択されることは、重要である。このICは、反応系中にDNAがあるか否か、もしくはインヒビターが反応系中に存在するという事実に起因して、おそらく反応産物が得られないかどうかを決定し得る。反応は、代表的には、5〜100μlの間の容積を有し、より好ましくは、7μl〜75μlの範囲にあり、最も好ましくは、10μl〜50μlの範囲にあり、理想的には、15μl〜25μlの範囲にある。
【0061】
本発明者らは、上記第2の核酸(IC)の100〜5000コピーの間が理想的であることを見いだした。好ましくは、200〜2000コピーの間が存在し、より好ましくは、500〜1500コピーの間、より好ましくは、1000コピー(±20%)が存在する。μg/μl単位の量は、核酸のサイズ/長さに依存する。好ましくは、上記核酸は、PCR産物もしくはプラスミドDNAである。
【0062】
本発明はまた、以下の群から選択される、上記第1の核酸(MCL)を増幅するためのプライマーに関する:
【0063】
【化1】
本発明はさらに、以下のとおりのプライマーからなる、上記第1の核酸(MCL)を増幅するためのプライマー対に関する:
【0064】
【化2】
本発明はさらに、以下の群から選択される、上記第2の核酸(IC)を増幅するためのプライマーに関する:
【0065】
【化3】
本発明はまた、以下からなる、上記第2の核酸(IC)を増幅するためのプライマー対に関する:
【0066】
【化4】
本発明はまた、以下の群から選択される、上記第3の核酸(MCL−Y)を増幅するためのプライマーに関する:
【0067】
【化5】
注記、本明細書において、Scorpionプライマーが示される全ての場合(Scorp)において、上記のように配列番号38について、上記プライマーのプライミング部分(priming part)は、3’−プライム部分であり、本発明は、このような場合において、好ましくは、この部分に関し、プローブ部分(agtgggagagctgggaa−3’)に関しない。
【0068】
さらに、本発明は、ヒト核酸を検出および/もしくは定量するためのキットに関し、ここで上記キットは、ストリンジェントな条件下で、80塩基対の範囲にわたって配列番号1に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有する配列を結合する1種以上のプライマー、上記第2の核酸(IC)をストリンジェントに結合する少なくとも1種のプライマーもしくはプローブを含むか、または上記に概説されたものに従うプライマーもしくはプライマー対を含む。
【0069】
理想的には、上記キットは、配列番号2、3、5、6、8、9、10、11および/もしくは12、ならびに/または配列番号37および/もしくは38とは、18ヌクレオチドの範囲にわたって5個以下のヌクレオチドだけ異なるヌクレオチド配列を有する、少なくとも1種のプライマーを有する。理想的には、上記キットは、配列番号2、3、5、6、8、9、10、11および/もしくは12、ならびに/または配列番号37および/もしくは38とは、18ヌクレオチドの範囲にわたって5個以下のヌクレオチドだけ異なるヌクレオチド配列を有する。
本願は特定の実施形態において例えば以下の項目を提供する:
(項目1)
サンプル中のゲノムの1種以上の核酸を定量および/もしくは検出するための方法であって、ここで増幅反応において、
a.第1の核酸は増幅され、増幅される遺伝子座は、前記ゲノム内のマルチコピー遺伝子座(MCL)であり、ここで前記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号1に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有し、前記マルチコピー遺伝子座は、少なくとも2種の異なる染色体上にコピーを有し、
b.内部コントロール(IC)として添加された第2の核酸もまた、増幅され、
c.前記第1の核酸の増幅からの増幅産物の量が決定される、
方法。
(項目2)
第3の核酸がさらに増幅され、前記遺伝子座は、ヒトY染色体上のマルチコピー遺伝子座(MCL−Y)であり、ここで前記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号15に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有し、
a.内部コントロールとして添加された前記第3の核酸は、増幅され、
b.前記第1の核酸および前記第3の核酸の増幅からの増幅産物の量が、決定される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第2の核酸の増幅産物の量もまた決定される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記増幅の方法が、ポリメラーゼ連鎖反応もしくはリアルタイムPCR反応であり、決定される核酸の量は、前記増幅の過程の間に、もしくは前記増幅反応の最後に終点測定としてのいずれかで決定される、項目1〜3に記載の方法。
(項目5)
前記第1の核酸(MCL)および/もしくは前記第3の核酸(MCL−Y)の増幅産物は、60塩基対〜200塩基対の間の長さである、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記第2の核酸(IC)の増幅産物は、60〜400塩基対の間である、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記第2の核酸(IC)の増幅産物は、100〜400塩基対の間である、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記第2の核酸(IC)の増幅は、前記第1の核酸(MCL)の増幅産物より長い、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記増幅反応が、以下:
a.8〜8.8の間のpHのTris−HCl、ならびに/または
b.塩化カリウムおよび硫酸カリウムの群から選択されるカリウム塩、ならびに/または
c.アンモニウム塩、好ましくは、塩化アンモニウムもしくは硫酸アンモニウム、ならびに/または
d.塩化マグネシウム、ならびに/または
e.ホットスタートポリメラーゼ
を含む、項目1〜7に記載の方法。
(項目10)
前記増幅反応は、前記第2の核酸(IC)の100〜5000の間のコピーを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
以下:
【化6】
の群より選択される、第1の核酸(MCL)を増幅するためのプライマー。
(項目12)
以下:
【化7】
の群より選択される、第3の核酸(Y−MCL)を増幅するためのプライマー。
(項目13)
項目11に記載のプライマーからなる、第1の核酸(MCL)を増幅するためのプライマー対。
(項目14)
項目12に記載のプライマーからなる、第3の核酸(Y−MCL)を増幅するためのプライマー対。
(項目15)
以下:
【化8】
の群から選択される、第2の核酸(IC)を増幅するためのプライマー。
(項目16)
項目15に記載のプライマーからなる、第2の核酸(IC)を増幅するためのプライマー対。
(項目17)
ヒト核酸を検出および/もしくは定量するためのキットであって、ここで前記キットは、ストリンジェントな条件下で、80塩基対の範囲にわたって配列番号1に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有する配列に結合する1個以上のプライマー、第2の核酸(IC)にストリンジェントに結合するか、または項目11〜16に記載のプライマーもしくはプライマー対を含む少なくとも1つのプライマーもしくはプローブ、ならびに必要に応じてさらに、配列番号15(MCL−Y)に従う配列にストリンジェントに結合するプライマー、プライマー対および/もしくはプローブを含む、キット。
(項目18)
前記キット中の少なくとも1個のプライマーは、配列番号2、3、5、6、8、9、10、11および/もしくは12とは、18ヌクレオチドの範囲にわたって5以下のヌクレオチドだけ異なるヌクレオチド配列を有する、項目17に記載のキット。
(項目19)
サンプル中のゲノムの1種以上の核酸を定量および/もしくは検出するための方法であって、ここで増幅反応において、
a.第1の核酸は増幅され、増幅される遺伝子座は、前記ゲノム内のY染色体(MCL)上にマルチコピー遺伝子座であり、ここで前記遺伝子座は、80塩基対の範囲にわたって配列番号15に従う配列に対して少なくとも80%の配列同一性を共有し、
b.内部コントロール(IC)として添加された第2の核酸もまた、増幅され、
c.前記第1の核酸の増幅からの増幅産物の量が決定される、
方法。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1図1は、最小限にした反応時間によって本発明の利点を示す。「Qiagen Investigator Quantiplex」は、本発明の範囲にある方法の特別な実施形態を表す。第1のカラム(左から)は、Rotor−Gene QリアルタイムPCR機器(Qiagen)での「Qiagen Investigator Quantiplex」法の実行時間を示す。カラム2は、Applied Biosystems製の7500 Fast PCR Systemでの「Qiagen Investigator Quantiplex」法の実行時間を示す。比較のために、カラム3は、Applied Biosystems製の7500 Real−time PCR Systemで実行した、Applied Biosystems製のQuantifiler Human Kitについての実行時間を示し、カラム4は、Applied Biosystems製の7500 Real−time PCR Systemで実行した、Applied Biosystems製のQuantifiler Duo Kitについての実行時間を示し、カラム5は、Applied Biosystems製の7500 Real−time PCR Systemで実行した、Promega製のPlexor HY Kitについての実行時間を示す。
図2図2は、理論的濃度に関連して、異なる定量法の精度の比較を示す。「Quantiplex Investigator」は、本発明の範囲にある方法の特別な実施形態を表す。市販の定量キットを設定し、適切なハンドブックに記載されるように分析した。既知の濃度のヒト参照DNA(National Institute of Standards and Technology,USAから得た)の連続希釈物を、上記3種のキットのうちの全てに関してテンプレートとして使用した。上記「Quantiplex Investigator」法は、それらの正確な濃度において、最大誤差20%で使用されたテンプレートの全量を定量するために高い精度を提供し、特に、濃度6,25pg/μl以下は、上記Quantifiler Human法(Applied Biosystems製のQuantifiler Human Kitに基づき、これは、単一コピーの標的を使用する)、および上記Plexor HY法(Promega製のPlexor HY Kitに基づき、これは、数コピーにおいて存在する標的を使用する)、説明において与えられた参照と比較して、遙かにより適切に定量した。Quantifiler Human法(単一コピー標的を使用する、Applied Biosystems製のQuantifiler Human Kitに基づく)は、大きな変動を示すか、または12,5pg/μl ヒトDNA以下において定量結果を作成すらできなかった。上記Plexor HYは、理論的定量結果から大きな偏差を示す。上記ヒト参照DNAの所定の希釈物の2μlを、各反応において使用した。濃度とは、上記テンプレート溶液中の濃度に言及する。NTC:テンプレートなしコントロール。
図3図3は、異なる人種グループのドナーに由来するゲノムDNAサンプル中の、配列番号11および配列番号12によって検出されるヒトマーカーのコピー数にバリエーションがないことを示す。定量的リアルタイムPCRを、ヒトの特異的単一コピー標的と上記Investigator Quantiplexマルチコピー標的とを比較するために使用して実行した。上記2種の標的の間のΔCTは、異なる集団について示される。ΔCTは全ての集団において一定であることが認識できるようになり、これは、領域の一定のコピー数が配列番号11および配列番号12によって検出されることを示す。
図4図4は、上記定量反応後のSTR分析という手段によって、高感度かつ正確な定量(図2に示される)の重要性を示す。図4において、図2のヒトDNAの連続希釈物を使用して、上記Investigator ESSplex Kit(Qiagen)のプロトコルの後に、示されるSTRプロフィールを生成した。図2において使用される最も低い濃度からでも完全なSTRプロフィールを得るという可能性を実証し、低いテンプレート量すら非常に正確な定量の有用性を示す。
図5-1】図5は、ヘマチンによる上記AmpFlSTR Identiler反応の阻害に対する文献のデータセットを示し、Identifiler(以下に示される出典から得た-Quantifiler Human page 137)を使用して、上記DNAフィンガープリント反応は、最大20μMまでのヘマチン濃度ですら機能する。出典: http://www3.appliedbiosystems.com/cms/groups/applied_markets_support/documents/generaldocuments/cms_041395.pdf 。
図5-2】図5は、ヘマチンによる上記AmpFlSTR Identiler反応の阻害に対する文献のデータセットを示し、Identifiler(以下に示される出典から得た-Quantifiler Human page 137)を使用して、上記DNAフィンガープリント反応は、最大20μMまでのヘマチン濃度ですら機能する。出典: http://www3.appliedbiosystems.com/cms/groups/applied_markets_support/documents/generaldocuments/cms_041395.pdf 。
図6-1】図6は、上記AmpFlSTR NGM Kitの阻害に対する文献のデータセットを示す。これは、いわゆる「次世代STRキット」であり、インヒビターの存在に対して遙かにより耐性である(例においては、最大75μM ヘマチン未満)。出典:http://marketing.appliedbiosystems.com/images/All_Newsletters/Forensic_0710/pdfs/Customer−Corner/nextGeneration.pdf 。
図6-2】図6は、上記AmpFlSTR NGM Kitの阻害に対する文献のデータセットを示す。これは、いわゆる「次世代STRキット」であり、インヒビターの存在に対して遙かにより耐性である(例においては、最大75μM ヘマチン未満)。出典:http://marketing.appliedbiosystems.com/images/All_Newsletters/Forensic_0710/pdfs/Customer−Corner/nextGeneration.pdf 。
図6-3】図6は、上記AmpFlSTR NGM Kitの阻害に対する文献のデータセットを示す。これは、いわゆる「次世代STRキット」であり、インヒビターの存在に対して遙かにより耐性である(例においては、最大75μM ヘマチン未満)。出典:http://marketing.appliedbiosystems.com/images/All_Newsletters/Forensic_0710/pdfs/Customer−Corner/nextGeneration.pdf 。
図6-4】図6は、上記AmpFlSTR NGM Kitの阻害に対する文献のデータセットを示す。これは、いわゆる「次世代STRキット」であり、インヒビターの存在に対して遙かにより耐性である(例においては、最大75μM ヘマチン未満)。出典:http://marketing.appliedbiosystems.com/images/All_Newsletters/Forensic_0710/pdfs/Customer−Corner/nextGeneration.pdf 。
図7-1】図7は、定量反応におけるインヒビター感度の例を示す。データは、市販のキットQuantifiler HumanおよびYの開発検証レポートからとっている。データは、以下においてキット供給業者の検証レポート中で入手可能である:Quantifiler Humanhttp://www3.appliedbiosystems.com/cms/groups/applied_markets_support/documents/generaldocuments/cms_041395.pdfQuantifiler Duohttp://www.appliedbiosystems.com.br/site/material/5q7aqqbm.pdf法医学的ワークフローから、上記STR反応が行われる前に、上記DNAの定量が示唆される。これは、どの程度のDNAが、サンプルから得られたか(例えば、犯罪現場から集められたか)、およびこのDNAのうちのどの程度がSTR反応において使用されるべきかを決定するために行われる。上記代表的なSTR反応は、テンプレートDNAの特定の範囲において最適に機能し、全体の分析は、非常に労働集約的であるので、上記STR分析において非常に高い成功率を確実にする方法論が必要である。従って、上記定量キットが、ユーザーが存在するDNAの量を確実に同定するだけでなく、インヒビター(上記STR反応結果を損ない得、失敗もしくは貴重なサンプル材料の喪失を生じさせ得、重大な阻害が観察される場合にさらに精製され得る)の非存在を評価することをも可能にするのであれば、真に有利である。上記データは、合わされたQuantifiler HumanキットおよびYキットのみが、上記ヒト標的と比較して、上記内部コントロール標的の僅かにより低い安定性を示すことを示す。この場合、上記ICのCt値は、インヒビターが上記DNAサンプル中に含まれる場合に、より高い値へとシフトする一方で、上記Humanキットおよび上記YキットのCt値は、少なくともヘマチンのより少ない量に関して安定なままである。上記Quantifiler humanキットおよびYキットの場合、インヒビター(例えば、ヘマチン)への耐性が、極めて小さい(反応系において16μM〜20μM ヘマチンの間)。よって、STRキットの次世代に必要とされる場合、より多量のインヒビター耐性と適合性である方法論は、失われつつある。
図7-2】図7は、定量反応におけるインヒビター感度の例を示す。データは、市販のキットQuantifiler HumanおよびYの開発検証レポートからとっている。データは、以下においてキット供給業者の検証レポート中で入手可能である:Quantifiler Humanhttp://www3.appliedbiosystems.com/cms/groups/applied_markets_support/documents/generaldocuments/cms_041395.pdfQuantifiler Duohttp://www.appliedbiosystems.com.br/site/material/5q7aqqbm.pdf法医学的ワークフローから、上記STR反応が行われる前に、上記DNAの定量が示唆される。これは、どの程度のDNAが、サンプルから得られたか(例えば、犯罪現場から集められたか)、およびこのDNAのうちのどの程度がSTR反応において使用されるべきかを決定するために行われる。上記代表的なSTR反応は、テンプレートDNAの特定の範囲において最適に機能し、全体の分析は、非常に労働集約的であるので、上記STR分析において非常に高い成功率を確実にする方法論が必要である。従って、上記定量キットが、ユーザーが存在するDNAの量を確実に同定するだけでなく、インヒビター(上記STR反応結果を損ない得、失敗もしくは貴重なサンプル材料の喪失を生じさせ得、重大な阻害が観察される場合にさらに精製され得る)の非存在を評価することをも可能にするのであれば、真に有利である。上記データは、合わされたQuantifiler HumanキットおよびYキットのみが、上記ヒト標的と比較して、上記内部コントロール標的の僅かにより低い安定性を示すことを示す。この場合、上記ICのCt値は、インヒビターが上記DNAサンプル中に含まれる場合に、より高い値へとシフトする一方で、上記Humanキットおよび上記YキットのCt値は、少なくともヘマチンのより少ない量に関して安定なままである。上記Quantifiler humanキットおよびYキットの場合、インヒビター(例えば、ヘマチン)への耐性が、極めて小さい(反応系において16μM〜20μM ヘマチンの間)。よって、STRキットの次世代に必要とされる場合、より多量のインヒビター耐性と適合性である方法論は、失われつつある。
図8図8は、定量反応におけるインヒビター感度の例を示す。データは、市販のキットであるQuantifiler Duoの開発検証レポートからとっている。データは、以下においてキット供給業者の検証レポートにおいて入手可能である:Quantifiler Duohttp://www.appliedbiosystems.com.br/site/material/5q7aqqbm.pdf 上記Quantifiler Duo Kitにおける内部コントロールシステムは、インヒビターの存在下でのヒト特異的標的よりも安定である。この場合における上記内部コントロールシステムの有用性は、当然のことながら、上記内部コントロールシステムが、上記サンプル中のインヒビターの存在のいかなる指標も与えないと同時に、上記DNA定量が、既に損なわれていることから低い。実際に、上記RPPH1および上記SRYシステムのCt値は、少量のインヒビターにおいてすらより高い値にシフトする。12,5μM ヘマチンの存在下で、上記RPPH1システムのCt値が>40へと劇的に増大することは、上記ヒトDNAの定量を不可能にする。上記サンプル中のインヒビターの存在に対する耐性は、次世代STR−キットと比較して非常に低い(すなわち、10μM ヘマチンおよび3,75ng/μl フミン酸)。
図9-1】図9は、定量反応におけるインヒビター感度の例を示す。データは、市販のキットPlexor HYの開発検証レポートからとっている。データは、以下においてキット供給業者の検証レポートにおいて入手可能である:Plexor HYhttp://www.promega.com/plexorhy/an157.pdf上記Plexor HY Kitは、常染色体標的(上側パネル)および上記内部コントロール(IPC)(下側パネルにおいて示される)に関して、上記Ct値の、より高い値への匹敵するシフトによって認識できるように、上記ヒト標的と比較して、上記内部コントロール標的のほとんど同じ安定性を示す。この場合、上記ICのCt値は、インヒビターが上記DNAサンプル中に含まれる場合に、より高い値へとシフトする。上記ヒト特異的標的のCt値すら上記インヒビターが上記サンプル中に含まれる場合により高いレベルへとシフトするので、上記DNA定量を損なう。上記Plexor HYの場合において、インヒビター(例えば、ヘマチン)への耐性は、極めて小さい(上記反応系において約25μM ヘマチン)。
図9-2】図9は、定量反応におけるインヒビター感度の例を示す。データは、市販のキットPlexor HYの開発検証レポートからとっている。データは、以下においてキット供給業者の検証レポートにおいて入手可能である:Plexor HYhttp://www.promega.com/plexorhy/an157.pdf上記Plexor HY Kitは、常染色体標的(上側パネル)および上記内部コントロール(IPC)(下側パネルにおいて示される)に関して、上記Ct値の、より高い値への匹敵するシフトによって認識できるように、上記ヒト標的と比較して、上記内部コントロール標的のほとんど同じ安定性を示す。この場合、上記ICのCt値は、インヒビターが上記DNAサンプル中に含まれる場合に、より高い値へとシフトする。上記ヒト特異的標的のCt値すら上記インヒビターが上記サンプル中に含まれる場合により高いレベルへとシフトするので、上記DNA定量を損なう。上記Plexor HYの場合において、インヒビター(例えば、ヘマチン)への耐性は、極めて小さい(上記反応系において約25μM ヘマチン)。
図10図10は、PCRインヒビターであるフミン酸およびヘマチンの所定の濃度の存在下で、本発明の範囲における反応の結果を示す。本発明の使用を介して、より高い濃度のインヒビターに対する上記内部コントロールの高い安定性および上記ヒト特異的標的のより高い安定性が、達成できた。このことは、上記内部コントロールが完全に阻害されたとしても、正確な定量を与える。上記ヒト特異的標的の阻害は、80〜100μMの間の濃度のヘマチンにおいて始まり、Applied BiosystemsのAmpFlSTR NGMもしくはQiagenのInvestigator ESSplexのような次世代STRキットのインヒビター耐性と完全に適合する。
図11-1】図11は、配列表を示す。
図11-2】図11は、配列表を示す。
図12-1】図12は、理論的濃度に関連して異なる定量法の精度の比較を示す。「Quantiplex Investigator HYres」は、本発明の範囲にある方法の特別な実施形態を表す。市販の定量キットを、適切なハンドブックに記載されるように設定および分析した。ヒトDNA(QIAamp Investigator Kitを使用して匿名のドナーに由来するヒト血液から単離)の連続希釈物および既知の濃度のその混合物を、上記3種のキットのうちの全てのテンプレートとして使用した。上記「Quantiplex Investigator HYres」法は、それらの正しい濃度において使用されるテンプレートの全ての量を定量するために、高い精度を提供し、特に、6,25pg/μl以下の濃度は、上記Quantifiler DUO法(Applied BiosystemsのQuantifiler DUOキットに基づき、これは、単一コピー標的を使用する)および上記Plexor HY法(PromegaのPlexor HYキットに基づき、数コピーにおいて存在する標的(説明において与えられる参照)を使用する)と比較して、はるかにより正確に定量された。Quantifiler DUO法(Applied BiosystemsのQuantifiler DUOキットに基づき、単一コピー標的を使用する)は、高い変動性を示したか、または1,5pg/μl以下のヒトDNAでは定量結果を生成すらできず、女性DNAバックグラウンドの存在下で1,5pg/μl未満の男性DNA濃度を定量できなかった。上記Plexor HYは、バックグラウンド女性DNAの存在下もしくは非存在下で、3pg/μl未満の男性DNA画分を定量できなかった。上記ヒト参照DNAの2μlの所定の希釈物を、各反応において使用した。濃度は、上記テンプレート溶液中の濃度を参照する。
図12-2】図12は、理論的濃度に関連して異なる定量法の精度の比較を示す。「Quantiplex Investigator HYres」は、本発明の範囲にある方法の特別な実施形態を表す。市販の定量キットを、適切なハンドブックに記載されるように設定および分析した。ヒトDNA(QIAamp Investigator Kitを使用して匿名のドナーに由来するヒト血液から単離)の連続希釈物および既知の濃度のその混合物を、上記3種のキットのうちの全てのテンプレートとして使用した。上記「Quantiplex Investigator HYres」法は、それらの正しい濃度において使用されるテンプレートの全ての量を定量するために、高い精度を提供し、特に、6,25pg/μl以下の濃度は、上記Quantifiler DUO法(Applied BiosystemsのQuantifiler DUOキットに基づき、これは、単一コピー標的を使用する)および上記Plexor HY法(PromegaのPlexor HYキットに基づき、数コピーにおいて存在する標的(説明において与えられる参照)を使用する)と比較して、はるかにより正確に定量された。Quantifiler DUO法(Applied BiosystemsのQuantifiler DUOキットに基づき、単一コピー標的を使用する)は、高い変動性を示したか、または1,5pg/μl以下のヒトDNAでは定量結果を生成すらできず、女性DNAバックグラウンドの存在下で1,5pg/μl未満の男性DNA濃度を定量できなかった。上記Plexor HYは、バックグラウンド女性DNAの存在下もしくは非存在下で、3pg/μl未満の男性DNA画分を定量できなかった。上記ヒト参照DNAの2μlの所定の希釈物を、各反応において使用した。濃度は、上記テンプレート溶液中の濃度を参照する。
図13-1】図13は、定量反応後のSTR分析による高感度および正確な定量(図12に示される)の重要性を示す。図13において、図12のヒトDNAの連続希釈物を使用して、上記Investigator ESSplex Plusキット(Qiagen)のプロトコルの後に、示されるSTRプロフィールを生成した。図12に使用される最低濃度からすら完全なSTRプロフィールを得るという可能性が示され、さらに少量のテンプレートの非常に正確な定量の有用性を実証する。
図13-2】図13は、定量反応後のSTR分析による高感度および正確な定量(図12に示される)の重要性を示す。図13において、図12のヒトDNAの連続希釈物を使用して、上記Investigator ESSplex Plusキット(Qiagen)のプロトコルの後に、示されるSTRプロフィールを生成した。図12に使用される最低濃度からすら完全なSTRプロフィールを得るという可能性が示され、さらに少量のテンプレートの非常に正確な定量の有用性を実証する。
図14図14は、最小化された反応時間によって、本発明の利点をさらに示す。上記「QIAGEN Investigator Quantiplex HYres」は、本発明の範囲の方法の特別な実施形態を表す。第1カラム(左から)は、Rotor−Gene QリアルタイムPCR機器(QIAGEN)での上記「QIAGEN Investigator Quantiplex HYres」法の実施時間を示す。カラム2は、Applied Biosystemsの7500 PCR Systemでの上記「QIAGEN Investigator Quantiplex HYres」法の実施時間を示す。比較のために、カラム3は、Rotor−Gene QリアルタイムPCR機器(QIAGEN)で実施した、QIAGENのQIAGEN Investigator Quantiplexキットについての実施時間を示し、カラム4は、Applied Biosystemsの7500 Real−time PCR Systemで実施した、QIAGENの上記QIAGEN Investigator Quantiplexキットについての実施時間を示し、カラム5は、Applied Biosystemsの7500 Real−time PCR Systemで実施した、Applied BiosystemsのQuantifiler Human Kitについての実施時間を示し、カラム6は、Applied Biosystemsの7500 Real−time PCR Systemで実施した、Applied BiosystemsのQuantifiler Duo Kitについての実施時間を示し、カラム7は、Applied Biosystemsの7500 Real−time PCR Systemで実施した、Promegaの上記Plexor HY Kitについての実施時間を示す。
図15図15は、本発明の方法を使用する結果を示す。上記方法を、PCRインヒビターであるフミン酸およびヘマチンの所定の濃度の存在下で適用した。本発明を使用して、より高濃度のインヒビターに対する上記内部コントロールの高い安定性および上記ヒト特異的標的のより高い安定性が達成できた。これは、上記内部コントロールが完全に阻害されたとしても、正確な定量を与える。上記ヒト特異的標的の阻害は、90〜110μMの間のヘマチン濃度で始まり、これは、Applied BiosystemsのAmpFlSTR NGMもしくはQIAGENのInvestigator ESSplexのような次世代STRキットのインヒビター耐性と完全に適合する。
図16-1】図16は、Y−MC配列(すなわち、Y染色体マルチコピー配列)を示す。配列番号15は、参照配列のみとして働く。配列番号15〜35はまた、使用され得る。上記に概説されるように、上記方法はまた、Y染色体配列のみを使用し得る。
図16-2】図16は、Y−MC配列(すなわち、Y染色体マルチコピー配列)を示す。配列番号15は、参照配列のみとして働く。配列番号15〜35はまた、使用され得る。上記に概説されるように、上記方法はまた、Y染色体配列のみを使用し得る。
【発明を実施するための形態】
【0071】
ヒトDNAの定量は、法医学分野においてSTR反応の設定に必須の工程である。多くの異なるキットが、DNAを定量するために、市場で市販されている(Quantifiler Human、Quantifiler Y、Quantifiler Duo、Plexor HY)が、全てのこれらキットは、異なる欠点を有する(例えば、ヒトDNAで増幅されるPCR産物は短く、分解されたDNAの代表ではなく、上記反応は、時間がかかり、上記選択された標的は、異なる集団もしくは個体において安定ではない)。
【0072】
上記第1の核酸のPCR産物は、146bpである。48分の反応時間を達成した。これは、一部は、8〜9の間のpH範囲を有し、NH、KおよびMg2+イオン、ならびにファストホットスタート酵素の存在を含むファストPCR反応化学と、非化学的ホットスタート法(例えば、抗体、アプタマーもしくはアフィボディー(affibodies))に起因するが、特に、インヒビターの存在を報告するが、良好な定量結果をなお与える内部コントロールと合わせて、より高い感度および信頼性を提供する安定なマルチコピー標的にも起因する。この内部コントロールは、全DNA濃度範囲にわたって安定なCt値を有する。
【0073】
最初かつ最も驚くべき結果は、本発明の成分に起因する高い反応速度である。ファスト非化学的ホットスタートDNAポリメラーゼの組み合わせ(例えば、抗体、アプタマーもしくはアフィボディー、NH4+、KおよびMg2+イオンを含む反応緩衝液に起因する)、ならびにまた、好ましくは、上記マルチコピーを検出するためのscorpionプライマーの使用は、この結果をもたらす。上記反応を、Tris−HCl、8.0〜8.8の間のpH、カリウム塩(好ましくは、クロリドもしくはスルフェート)、アンモニウム塩(好ましくは、クロリドもしくはスルフェート)、塩化マグネシウム、各dNTP、2.5Uの示された熱安定性DNAポリメラーゼ、ならびに表1に与えられる正方向プライマーおよび逆方向プライマーの各々0.1μMを含む反応緩衝液において行った。
【0074】
【表1】
上記反応化学はまた、市販のPEG−8000、分子量約8000ダルトンを有するポリエチレングリコールを含んだ。上記反応はまた、ウシ血清アルブミン(BSA)を含んだ。
【0075】
当該分野の技術水準における他の方法は、遙かにより時間がかかる。他方で、この組み合わせは、上記マルチコピー標的のより感度が高くより信頼性の高い検出、よって、DNAの量のより良好な定量を可能にする。表1のプライマーは、ゲノムの非反復性マルチコピー標的を増幅する。マルチコピー標的を使用することの大きな利点は、達成され得る高感度である。異なる集団内のこの標的領域の安定性はまた、多施設試験(ここで、そのコピー数が異なる人種群に属する個体に関して測定された)においてもいまや示された。(以下の図を参照のこと)。
【0076】
非常に高感度であり、他方で、DNAが上記サンプル中に含まれない場合には真の陰性シグナルを示す定量ツールを有することは、法医学分野において重要である。上記Quantifiler Humanを使用する定量の後、6,25pg/μlの濃度の下で信頼できる定量は不可能であった。この場合、ユーザーは、上記STRプロフィールを得て、上記サンプルを「DNAを含まない」として分類しようとしない(以下の図2)。上記Plexor HYキットを使用すると、低濃度サンプルと上記NTCとの間のシグナルにほとんど差異はなかった。
【0077】
本発明を使用すると、このようなDNA濃度範囲における定量が可能であり、完全なSTRプロフィールすら得られ得る(図3)。この結果は、この信頼性の高い定量が、上記STRプロフィールの予測される結果とよりよい相関関係を有することを示す。実際に、このことは、非常に少量のDNAを使用して、いかなるSTRプロフィールをも失わないようにする一助となり、決してDNAを含まないサンプルを分析することを回避する。
【0078】
法医学的適用のためのDNA定量における理想的内部コントロールは、上記DNAの定量を損なうことなく、上記サンプル中のPCRインヒビターの存在を示すはずであるPCRシステムである。上記定量結果は、ユーザーに、上記DNAフィンガープリント反応設定についての定量データをさらに利用する可能性を与えるために、可能な限り安定であり、PCRインヒビターの存在下でも同様である。
【0079】
Identifilerを使用すると、上記DNAフィンガープリント反応は、20μMのヘマチン濃度に達するまで機能する。
【0080】
いわゆる「次世代STRキット」は、最大75μM未満のヘマチンが添加され得る例において、インヒビターの存在に遙かにより耐性である。
【0081】
代表的な法医学的ワークフローは、上記STR反応が行われる前に、上記DNAの定量を示唆する。これは、どの程度のDNAがサンプルから得られたか(例えば、犯罪現場から集められたか)、およびこのDNAのうちのどの程度がSTR反応において使用されるべきかを決定するために行われる。代表的STR反応は、テンプレートDNAの特定の範囲において最適に機能し、その分析は、非常に労働集約的であるので、非常に高い成功率を確実にする方法論が必要とされる。従って、本発明は、そのユーザーが存在するDNA量を確実に同定できるのみならず、インヒビター(これは、上記STR反応結果を損ない得、失敗もしくは貴重なサンプル材料の喪失を生じ得る)の非存在をも評価できることは、真の利点である。
【0082】
定量反応におけるインヒビター感度のいくつかの例は、以下のプロットに示される。
【0083】
Plexor HYは、ここで見いだされ得る:
http://www.promega.com/plexorhy/an157.pdf。
【0084】
Quantifiler Humanは、ここで見いだされ得る:
http://www3.appliedbiosystems.com/cms/groups/applied_markets_support/documents/generaldocuments/cms_041395.pdf。
【0085】
Quantifiler Duoは、ここで見いだされ得る:
http://www.appliedbiosystems.com.br/site/material/5q7aqqbm.pdf。
【0086】
Quantifiler HumanキットおよびYキットの組み合わせのみが、上記ヒト標的と比較して、内部コントロール標的のわずかに低い安定性を示す。この場合、上記ICのCt値は、インヒビターが上記DNAサンプルに含まれる場合に、より高い値へとシフトする一方で、上記Humanキットおよび上記YキットのCt値は、少なくともより少量のヘマチンに関しては安定なままである。上記Quantifiler humanキットおよびYキットの場合には、インヒビター(例えば、ヘマチン)に対する耐性は、ほとんどない(上記反応において16μM〜20μMの間のヘマチン)。
【0087】
上記Quantifiler Duo Kitにおける内部コントロールシステムは、インヒビターの存在下での上記ヒト特異的標的より安定である。この場合の上記内部コントロールシステムの有用性は、当然のことながら、上記内部コントロールシステムが、上記サンプル中のインヒビターの存在のいかなる指標をも与えない一方で、上記DNA定量は既に損なわれているので、低い。実際に、上記RPPH1および上記SRYシステムのCt値は、少量のインヒビターにおいてすらより高い値にシフトする。12,5μM ヘマチンの存在下で上記RPPH1システムのCt値が>40へと劇的に増大したことは、上記ヒトDNAの定量を不可能にする。
【0088】
上記サンプル中のインヒビターの存在に対する耐性は、次世代STRキットと比較して非常に低い(すなわち、10μM ヘマチンおよび3,75ng/μl フミン酸)。
【0089】
上記Plexor HYキットは、上記ヒト標的と比較して、上記内部コントロール標的のほぼ同じ安定性を示す。この場合において、上記ICのCt値は、インヒビターが上記DNAサンプル中に含まれる場合に、より高い値へとシフトする。さらに、上記ヒト特異的標的のCt値は、上記インヒビターが上記サンプル中に含まれる場合に、より高いレベルへとシフトするので、正確なDNA定量を困難にする。上記Plexor HYの場合において、インヒビター(例えば、ヘマチン)への耐性は、極めて小さい(上記反応において約25μM ヘマチン)。
【0090】
本発明者らは、高濃度のインヒビターに対する上記内部コントロールの高い安定性および上記ヒト特異的標的のより高い安定性を達成できた。このことは、上記内部コントロールが完全に阻害されたとしても、正確な定量を与える。上記ヒト特異的標的の阻害は、80〜100μMの間の濃度のヘマチンにおいて始まり、これは、次世代STRキット(例えば、ABI NGMTMキット)のインヒビター耐性と完全に適合する。
【0091】
リアルタイムPCRは、PCR産物の増幅のリアルタイム検出に基づくということは公知である。実際には、法医学におけるDNA定量目的でのこのPCR産物の長さは、非常に重要である。事実、DNAの定量は、DNAフィンガープリント分析に向かう第1の工程であり、これは、代表的には、短いタンデム反復(STR)の分析である。これら反復は、多重反応において分析され、ここで異なる遺伝子座が、同じ反応ウェルでのPCRを介して増幅される。これら遺伝子座の増幅産物は、上記遺伝子座(これは分析されなければならない)に依存して、約100bpから最大約450bpまで変動し得る。
【0092】
分解されたDNA(これは、例えば、染色がストレス因子(例えば、光)に曝された場合に起こりうる)の場合には、上記ヒトDNAの平均フラグメント長が短くなり、しばしば、最も長い遺伝子座が、もはや増幅可能ではない。上記定量アッセイがより短いDNAフラグメントを検出する場合、上記アッセイは、STRサイズのフラグメントの量を過大評価し得、それほど増幅されておらず(under−amplified)検出されていないSTR対立遺伝子の比較的高い割合を生じ、これは望ましくない結果になる。従って、本発明者らは、定量目的で増幅されるべきより長いフラグメントを選択する。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図7-1】
図7-2】
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16-1】
図16-2】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]