(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
【0023】
<第1の実施の形態>
〜構成〜
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる油圧ショベル(建設機械)の油圧駆動装置を示す図である。
【0024】
図1において、本実施の形態の油圧駆動装置は、原動機(例えばディーゼルエンジン)1と、その原動機1によって駆動され、第1及び第2圧油供給路105,205に圧油を吐出する第1及び第2吐出ポート102a,102bを有するスプリットフロータイプの可変容量型メインポンプ102(第1油圧ポンプ)と、原動機1によって駆動され、第3圧油供給路305に圧油を吐出する第3吐出ポート202aを有するシングルフロータイプの可変容量型メインポンプ202(第2油圧ポンプ)と、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102b及びメインポンプ202の第3吐出ポート202aから吐出される圧油により駆動される複数のアクチュエータ3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3hと、第1〜第3圧油供給路105,205,305に接続され、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102b及びメインポンプ202の第3吐出ポート202aから複数のアクチュエータ3a〜3hに供給される圧油の流れを制御するコントロールバルブユニット4と、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bの吐出流量を制御するためのレギュレータ112(第1ポンプ制御装置)と、メインポンプ202の第3吐出ポート202aの吐出流量を制御するためのレギュレータ212(第2ポンプ制御装置)とを備えている。
【0025】
コントロールバルブユニット4は、第1〜第3圧油供給路105,205,305に接続され、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102b、メインポンプ202の第3吐出ポート202aから複数のアクチュエータ3a〜3hに供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁6a,6b,6c,6d,6e,6f,6g,6h,6i,6jと、複数の流量制御弁6a〜6jの前後差圧が目標差圧に等しくなるよう複数の流量制御弁6a〜6jの前後差圧をそれぞれ制御する複数の圧力補償弁7a,7b,7c,7d,7e,7f,7g,7h,7i、7jと、複数の流量制御弁6a〜6jのスプールと一緒にストロークし、各流量制御弁の切り換わりを検出するための複数の操作検出弁8b,8c,8d,8f,8g,8i、8jと、第1圧油供給路105に接続され、第1圧油供給路105の圧力を設定圧力以上にならないように制御するメインリリーフ弁114と、第2圧油供給路205に接続され、第2圧油供給路
205の圧力を設定圧力以上にならないように制御するメインリリーフ弁214と、第3圧油供給路305に接続され、第3圧油供給路305の圧力を設定圧力以上にならないように制御するメインリリーフ弁314と、第1圧油供給路105に接続され、第1圧油供給路105の圧力が第1吐出ポート102aから吐出される圧油によって駆動されるアクチュエータの最高負荷圧にバネの設定圧力(所定圧力)を加算した圧力(アンロード弁セット圧)よりも高くなると開状態になって第1圧油供給路105の圧油をタンクに戻すアンロード弁115と、第2圧油供給路205に接続され、第2圧油供給路205の圧力が第2吐出ポート102bから吐出される圧油によって駆動されるアクチュエータの最高負荷圧にバネの設定圧力(所定圧力)を加算した圧力(アンロード弁セット圧)よりも高くなると開状態になって第2圧油供給路205の圧油をタンクに戻すアンロード弁215と、第3圧油供給路305に接続され、第3圧油供給路305の圧力が第3吐出ポート202aから吐出される圧油によって駆動されるアクチュエータの最高負荷圧にバネの設定圧力(所定圧力)を加算した圧力(アンロード弁セット圧)よりも高くなると開状態になって第3圧油供給路305の圧油をタンクに戻すアンロード弁315とを備えている。
【0026】
コントロールバルブユニット4は、また、第1圧油供給路105に接続される流量制御弁6d,6f,6i,6jの負荷ポートに接続され、アクチュエータ3a,3b,3d,3fの最高負荷圧Plmax1を検出するシャトル弁9d,9f,9i,9jを含む第1負荷圧検出回路131と、第2圧油供給路205に接続される流量制御弁6b,6c,6gの負荷ポートに接続され、アクチュエータ3b,3c,3gの最高負荷圧Plmax2を検出するシャトル弁9b,9c,9gを含む第2負荷圧検出回路132と、第3圧油供給路305に接続される流量制御弁6a,6e、6hの負荷ポートに接続され、アクチュエータ3a,3e,3hの負荷圧(最高負荷圧)Plmax3を検出するシャトル弁9e,9hを含む第3負荷圧検出回路133と、第1圧油供給路105の圧力(すなわち第1吐出ポート102aの圧力)P1と第1負荷圧検出回路131によって検出された最高負荷圧Plmax1(第1圧油供給路105に接続されるアクチュエータ3a,3b,3d,3fの最高負荷圧)との差(LS差圧)を絶対圧Pls1として出力する差圧減圧弁111と、第2圧油供給路205の圧力(すなわち第2吐出ポート102bの圧力)P2と第2負荷圧検出回路132によって検出された最高負荷圧Plmax2(第2圧油供給路205に接続されるアクチュエータ3b,3c,3gの最高負荷圧)との差(LS差圧)を絶対圧Pls2として出力する差圧減圧弁211と、第3圧油供給路305の圧力(すなわちメインポンプ202の吐出圧或いは第3吐出ポート202aの圧力)P3と第3負荷圧検出回路133によって検出された最高負荷圧Plmax3(第3圧油供給路305に接続されるアクチュエータ3a,3e,3hの負荷圧)との差(LS差圧)を絶対圧Pls3として出力する差圧減圧弁311とを備えている。以下において、差圧減圧弁111,211,311が出力する絶対圧Pls1,Pls2,Pls3を、適宜、LS差圧Pls1,Pls2,Pls3という。
【0027】
前述したアンロード弁115には、第1吐出ポート102aから吐出される圧油によって駆動されるアクチュエータの最高負荷圧として第1負荷圧検出回路131によって検出された最高負荷圧Plmax1が導かれ、前述したアンロード弁215には、第2吐出ポート102bから吐出される圧油によって駆動されるアクチュエータの最高負荷圧として第2負荷圧検出回路132によって検出された最高負荷圧Plmax2が導かれ、前述したアンロード弁315には、第3吐出ポート202aから吐出される圧油によって駆動されるアクチュエータの最高負荷圧として第3負荷圧検出回路133によって検出された最高負荷圧Plmax3が導かれる。
【0028】
また、差圧減圧弁111が出力するLS差圧Pls1は、第1圧油供給路105に接続された圧力補償弁7d,7f,7i,7jとメインポンプ102のレギュレータ112に導かれ、差圧減圧弁211が出力するLS差圧Pls2は、第2圧油供給路205に接続された圧力補償弁7b,7c,7gとメインポンプ102のレギュレータ112に導かれ、差圧減圧弁311が出力するLS差圧Pls3は、第3圧油供給路305に接続された圧力補償弁7a,7e,7hとメインポンプ202のレギュレータ212に導かれる。
【0029】
ここで、アクチュエータ3aは、流量制御弁6i及び圧力補償弁7iと第1圧油供給路105を介して第1吐出ポート102aに接続され、かつ流量制御弁6a及び圧力補償弁7aと第3圧油供給路305を介して第3吐出ポート202aに接続されている。アクチュエータ3aは、例えば油圧ショベルのブームを駆動するブームシリンダであり、流量制御弁6aはブームシリンダ3aのメイン駆動用であり、流量制御弁6iはブームシリンダ3aのアシスト駆動用である。アクチュエータ3bは、流量制御弁6j及び圧力補償弁7jと第1圧油供給路105を介して第1吐出ポート102aに接続され、かつ流量制御弁6b及び圧力補償弁7bと第2圧油供給路205を介して第2吐出ポート102bに接続されている。アクチュエータ3bは、例えば油圧ショベルのアームを駆動するアームシリンダであり、流量制御弁6bはアームシリンダ3bのメイン駆動用であり、流量制御弁6jはアームシリンダ3bのアシスト駆動用である。
【0030】
アクチュエータ3d,3fはそれぞれ流量制御弁6d,6f及び圧力補償弁7d,7fと第1圧油供給路105を介して第1吐出ポート102aに接続され、アクチュエータ3c,3gはそれぞれ流量制御弁6c,6g及び圧力補償弁7c,7gと第2圧油供給路205を介して第2吐出ポート102bに接続されている。アクチュエータ3d,3fは、それぞれ、例えば油圧ショベルのバケットを駆動するバケットシリンダ、下部走行体の左側履帯を駆動する左走行モータである。アクチュエータ3c,3gは、それぞれ、例えば油圧ショベルの上部旋回体を駆動する旋回モータ、下部走行体の右側履帯を駆動する右走行モータである。アクチュエータ3e,3hはそれぞれ流量制御弁6e,6h及び圧力補償弁7e,7hと第3圧油供給路305を介して第3吐出ポート
202aに接続されている。アクチュエータ3e,3hは、それぞれ、例えば油圧ショベルのスイングポストを駆動するスイングシリンダ、ブレードを駆動するブレードシリンダである。
【0031】
図2Aは、ブームシリンダであるアクチュエータ3a(以下適宜ブームシリンダ3aという)及びアームシリンダであるアクチュエータ3b(以下適宜アームシリンダ3bという)以外のアクチュエータ3c〜3hの流量制御弁6c〜6hのそれぞれのメータイン通路の開口面積特性を示す図である。これらの流量制御弁は、スプールストロークが不感帯0−S1を超えて増加するにしたがって開口面積が増加し、最大のスプールストロークS3の直前で最大開口面積A3となるように開口面積特性が設定されている。最大開口面積A3は、アクチュエータの種類に応じてそれぞれ固有の大きさを持つ。
【0032】
図2Bの上側は、ブームシリンダ3aの流量制御弁6a,6i及びアームシリンダ3bの流量制御弁6b,6jのそれぞれのメータイン通路の開口面積特性を示す図である。
【0033】
ブームシリンダ3aのメイン駆動用の流量制御弁6aは、スプールストロークが不感帯0−S1を超えて増加するにしたがって開口面積が増加し、中間ストロークS2で最大開口面積A1となり、その後、最大のスプールストロークS3まで最大開口面積A1が維持されるように開口面積特性が設定されている。アームシリンダ3bのメイン駆動用の流量制御弁6bの開口面積特性も同様である。
【0034】
ブームシリンダ3aのアシスト駆動用の流量制御弁6iは、スプールストロークが中間ストロークS2になるまでは開口面積はゼロであり、スプールストロークが中間ストロークS2を超えて増加するにしたがって開口面積が増加し、最大のスプールストロークS3の直前で最大開口面積A2となるように開口面積特性が設定されている。アームシリンダ3bのアシスト駆動用の流量制御弁6jの開口面積特性も同様である。
【0035】
図2Bの下側は、ブームシリンダ3aの流量制御弁6a,6i及びアームシリンダ3bの流量制御弁6b,6jのメータイン通路の合成開口面積特性を示す図である。
【0036】
ブームシリンダ3aの流量制御弁6a,6iのメータイン通路は、それぞれが上記のような開口面積特性を有する結果、スプールストロークが不感帯0−S1を超えて増加するにしたがって開口面積が増加し、最大のスプールストロークS3の直前で最大開口面積A1+A2となるような合成開口面積特性となる。アームシリンダ3bの流量制御弁6b,6jの合成開口面積特性も同様である。
【0037】
ここで、
図2Aに示すアクチュエータ3c〜3hの流量制御弁6c,6d,6e,6f,6g,6hの最大開口面積A3とブームシリンダ3aの流量制御弁6a,6i及びアームシリンダ3bの流量制御弁6b,6jの合成した最大開口面積A1+A2は、A1+A2>A3の関係にある。すなわち、ブームシリンダ3a及びアームシリンダ3bは、他のアクチュエータよりも最大の要求流量が大きいアクチュエータである。
【0038】
図1に戻り、コントロールバルブ
ユニット4は、上流側が絞り43を介してパイロット圧油供給路31b(後述)に接続され下流側が操作検出弁8a,8b,8c,8d,8f,8g,8i,8jを介してタンクに接続された走行複合操作検出油路53と、この走行複合操作検出油路53によって生成される操作検出圧に基づいて切り換わる第1切換弁40,第2切換弁146及び第3切換弁246とを更に備えている。
【0039】
走行複合操作検出油路53は、左走行モータであるアクチュエータ3f(以下適宜左走行モータ3fという)及び/又は右走行モータであるアクチュエータ3g(以下適宜右走行モータ3gという)と、第1圧油供給路105と第2圧油供給路205に接続される左右走行モータ以外のアクチュエータ3a,3b,3c,3dの少なくとも1つとを同時で駆動する走行複合操作でないときは、少なくとも操作検出弁8a,8b,8c,8d,8f,8g,8i,8jのいずれかを介してタンクに連通することで油路53の圧力がタンク圧となり、当該走行複合操作時は、操作検出弁8f,8gと、操作検出弁8a,8b,8c,8d,8i,8jのいずれかがそれぞれ対応する流量制御弁と一緒にストロークしてタンクとの連通が遮断されることで、油路53に操作検出圧(操作検出信号)を生成する。
【0040】
第1切換弁40は、走行複合操作でないときは、図示下側の第1位置(遮断位置)にあって、第1圧油供給路105と第2圧油供給路205の連通を遮断し、走行複合操作時に、走行複合操作検出油路53にて生成された操作検出圧によって図示上側の第2位置(連通位置)に切り替わって、第1圧油供給路105と第2圧油供給路205を連通させる。
【0041】
第2切換弁146は、走行複合操作でないときは、図示下側の第1位置にあって、タンク圧を第2負荷圧検出回路132の最下流のシャトル弁9gに導き、走行複合操作時に、走行複合操作検出油路53にて生成された操作検出圧によって図示上側の第2位置に切り替わって、第1負荷圧検出回路131によって検出された最高負荷圧Plmax1(第1圧油供給路105に接続されるアクチュエータ3a,3b,3d,3fの最高負荷圧)を第2負荷圧検出回路132の最下流のシャトル弁9gに導く。
【0042】
第3切換弁246は、走行複合操作でないときは、図示下側の第1位置にあって、タンク圧を第1負荷圧検出回路131の最下流のシャトル弁9fに導き、走行複合操作時に、走行複合操作検出油路53にて生成された操作検出圧によって図示上側の第2位置に切り替わって、第2負荷圧検出回路132によって検出された最高負荷圧Plmax2(第2圧油供給路205に接続されるアクチュエータ3b,3c,3gの最高負荷圧)を第1負荷圧検出回路131の最下流のシャトル弁9fに導く。
【0043】
ここで、左走行モータ3f及び右走行モータ3gは、同時に駆動されかつそのとき供給流量が同等になることで所定の機能を果たすアクチュエータである。本実施の形態において、左走行モータ3fはスプリットフロータイプのメインポンプ102の第1吐出ポート102aから吐出される圧油で駆動され、右走行モータ3gはスプリットフロータイプのメインポンプ102の第2吐出ポート102bから吐出される圧油で駆動される。
【0044】
また、
図1において、本実施の形態における油圧駆動装置は、原動機1によって駆動される固定容量型のパイロットポンプ30と、パイロットポンプ30の圧油供給路31aに接続され、パイロットポンプ30の吐出流量を絶対圧Pgrとして検出する原動機回転数検出弁13と、原動機回転数検出弁13の下流側のパイロット圧油供給路31bに接続され、パイロット圧油供給路31bに一定のパイロット一次圧Ppilotを生成するパイロットリリーフバルブ32と、パイロット圧油供給路31bに接続され、ゲートロックレバー24により下流側のパイロット圧油供給路31cをパイロット圧油供給路31bに接続するかタンクに接続するかを切り替えるゲートロック弁100と、ゲートロック弁100の下流側のパイロット圧油供給路31cに接続され、後述する複数の流量制御弁6a,6b,6c,6d,6e,6f,6g,6hを制御するための操作パイロット圧を生成する複数のパイロットバルブ(減圧弁)を有する複数の操作装置122,123,124a,124b(
図7)とを備えている。
【0045】
原動機回転数検出弁13は、パイロットポンプ30の圧油供給路31aとパイロット圧油供給路31bとの間に接続された流量検出弁50と、その流量検出弁50の前後差圧を絶対圧Pgrとして出力する差圧減圧弁51とを有している。
【0046】
流量検出弁50は通過流量(パイロットポンプ30の吐出流量)が増大するにしたがって開口面積を大きくする可変絞り部50aを有している。パイロットポンプ30の吐出油は流量検出弁50の可変絞り部50aを通過してパイロット
圧油供給路31b側へと流れる。このとき、流量検出弁50の可変絞り部50aには通過流量が増加するにしたがって大きくなる前後差圧が発生し、差圧減圧弁51はその前後差圧を絶対圧Pgrとして出力する。パイロットポンプ30の吐出流量は原動機1の回転数によって変化するため、可変絞り部50aの前後差圧を検出することにより、パイロットポンプ30の吐出流量を検出することができ、原動機1の回転数を検出することができる。原動機回転数検出弁13(差圧減圧弁51)が出力する絶対圧Pgrは目標LS差圧としてレギュレータ112,212に導かれる。以下において、差圧減圧弁51が出力する絶対圧Pgrを、適宜、出力圧Pgr或いは目標LS差圧Pgrという。
【0047】
レギュレータ112(第1ポンプ制御装置)は、差圧減圧弁111が出力するLS差圧Pls1と差圧減圧弁211が出力するLS差圧Pls2の低圧側を選択する低圧選択弁112aと、低圧選択されたLS差圧Pls12と目標LS差圧である原動機回転数検出弁13の出力圧Pgrとが導かれ、LS差圧Pls12が目標LS差圧Pgrよりも小さくなるにしたがって低くなるようロードセンシング駆動圧力(以下LS駆動圧力Px12という)を変化させるLS制御弁112bと、LS駆動圧力Px12が導かれ、LS駆動圧力Px12が低くなるにしたがってメインポンプ102の傾転角(容量)を増加させ吐出流量が増加するようメインポンプ102の傾転角を制御するLS制御ピストン112cと、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bのそれぞれの圧力が導かれ、それらの圧力の上昇時にメインポンプ102の斜板の傾転角を減少させ、吸収トルクが減少するようメインポンプ102の傾転角を制御するトルク制御(馬力制御)ピストン112e,112d(第1トルク制御アクチュエータ)と、最大トルクT12max(
図3A参照)を設定する第1付勢手段であるバネ112uとを備えている。
【0048】
低圧選択弁112a、LS制御弁112b及びLS制御ピストン112cは、メインポンプ102の吐出圧(第1及び第2吐出ポート102a,102bの高圧側の吐出圧)が、メインポンプ102から吐出される圧油によって駆動されるアクチュエータの最高負荷圧(最高負荷圧Plmax1と最高負荷圧Plmax2の高圧側の圧力)より目標差圧(目標LS差圧Pgr)だけ高くなるようメインポンプ102の容量を制御する第1ロードセンシング制御部を構成する。
【0049】
トルク制御ピストン112d,112eとバネ112uは、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bのそれぞれの吐出圧(メインポンプ102の吐出圧)とメインポンプ102の容量の少なくとも一方が増加して、メインポンプ102の吸収トルクが増加するとき、メインポンプ102の吸収トルクがバネ112uで設定された最大トルクT12maxを超えないようにメインポンプ102の容量を制御する第1トルク制御部を構成する。
【0050】
図3Aは、第1トルク制御部(トルク制御ピストン112d,112eとバネ112u)により得られるトルク制御特性と本実施の形態の効果を示す図である。
図3A中、P12は、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bの圧力P1,P2の合計P1+P2(メインポンプ102の吐出圧)であり、q12はメインポンプ102の斜板の傾転角(容量)であり、P12maxはメインリリーフ弁114,214の設定圧力によって得られるメインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bの最高吐出圧の合計であり、q12maxはメインポンプ102の構造で決まる最大傾転角である。なお、メインポンプ102の吸収トルクは、メインポンプ102の吐出圧P12(P1+P2)と傾転角q12との積で表される。
【0051】
図3Aにおいて、メインポンプ102の最大吸収トルクはバネ112uによって、曲線502で示されるT12max(最大トルク)に設定されている。メインポンプ102から吐出される圧油によってアクチュエータが駆動され、メインポンプ102の吸収トルクが増加して最大トルクT12maxに達すると、メインポンプ102の吸収トルクがそれ以上増加しないようメインポンプ102の傾転角はレギュレータ112のトルク制御ピストン112d,112eによって制限される。例えば、メインポンプ102の傾転角が曲線502上のいずれかにある状態でメインポンプ102の吐出圧が上昇すると、トルク制御ピストン112d,112eはメインポンプ102の傾転角q12を曲線502に沿って減少させる。また、メインポンプ102の傾転角が曲線502上のいずれかにある状態でメインポンプ102の傾転角q12が増加しようとすると、トルク制御ピストン112d,112eはメインポンプ102の傾転角q12が曲線502上の傾転角に保持されるように制限する。
図3A中、符号TEは原動機1の定格出力トルクTerateを示す曲線であり、最大トルクT12maxはTerateよりも小さい値に設定されている。このように最大トルクT12maxを設定し、メインポンプ102の吸収トルクが最大トルクT12maxを超えないように制限することで、原動機1の定格出力トルクTerateを最大限有効に利用しつつ、メインポンプ102がアクチュエータを駆動するときの原動機1の停止(エンジンストール)を防止することができる。
【0052】
第1ロードセンシング制御部(低圧選択弁112a、LS制御弁112b及びLS制御ピストン112c)は、メインポンプ102の吸収トルクが最大トルクT12maxよりも小さく、第1トルク制御部によるトルク制御の制限を受けていないときに機能し、ロードセンシング制御によりメインポンプ102の容量を制御する。
【0053】
レギュレータ212(第2ポンプ制御装置)は、差圧減圧弁311が出力するLS差圧Pls3と目標LS差圧である原動機回転数検出弁13の出力圧Pgrとが導かれ、LS差圧Pls3が目標LS差圧Pgrよりも小さくなるにしたがって低くなるようロードセンシング駆動圧力(以下LS駆動圧力Px3という)を変化させるLS制御弁212bと、LS駆動圧力Px3が導かれ、LS駆動圧力Px3が低くなるにしたがってメインポンプ202の傾転角(容量)を増加させ吐出流量が増加するようメインポンプ202の傾転角を制御するLS制御ピストン212c(ロードセンシング制御アクチュエータ)と、メインポンプ202の吐出圧P3が導かれ、その圧力の上昇時にメインポンプ202の斜板の傾転角を減少させ、吸収トルクが減少するようメインポンプ202の傾転角を制御するトルク制御(馬力制御)ピストン212d(第2トルク制御アクチュエータ)と、最大トルクT3max(
図3B参照)を設定する第2付勢手段であるバネ212eとを備えている。
【0054】
LS制御弁212bとLS制御ピストン212cは、メインポンプ202の吐出圧P3が、メインポンプ202から吐出される圧油によって駆動されるアクチュエータの最高負荷圧Plmax3より目標差圧(目標LS差圧Pgr)だけ高くなるようメインポンプ202の容量を制御する第2ロードセンシング制御部を構成する。
【0055】
トルク制御ピストン212dとバネ212eは、メインポンプ202の吐出圧P3と容量の少なくとも一方が増加して、メインポンプ202の吸収トルクが増加するとき、メインポンプ202の吸収トルクが最大トルクT3maxを超えないようにメインポンプ202の容量を制御する第2トルク制御部を構成する。
【0056】
図3Bは、第2トルク制御部(トルク制御ピストン212dとバネ212e)により得られるトルク制御特性と本実施の形態の効果を示す図である。
図3B中、P3はメインポンプ202の吐出圧であり、q3はメインポンプ202の斜板の傾転角(容量)であり、P3maxはメインリリーフ弁314の設定圧力によってられるメインポンプ202の最高吐出圧であり、q3maxはメインポンプ202の構造で決まる最大傾転角である。なお、メインポンプ202の吸収トルクは、メインポンプ202の吐出圧P3と傾転角q3との積で表される。
【0057】
図3Bにおいて、メインポンプ202の最大吸収トルクはバネ212eによって、曲線602で示されるT3max(最大トルク)に設定されている。メインポンプ202から吐出される圧油によってアクチュエータが駆動され、メインポンプ202の吸収トルクが増加して最大トルクT3maxに達すると、
図3Aのレギュレータ112の場合と同様、メインポンプ202の吸収トルクがそれ以上増加しないようメインポンプ202の傾転角はレギュレータ212のトルク制御ピストン212dによって制限される。
【0058】
第2ロードセンシング制御部(LS制御弁212bとLS制御ピストン212c)は、メインポンプ202の吸収トルクが最大トルクT3maxよりも小さく、第2トルク制御部によるトルク制御の制限を受けていないときに機能し、ロードセンシング制御によりメインポンプ202の容量を制御する。
【0059】
図1に戻り、レギュレータ112(第1ポンプ制御装置)は、メインポンプ202の吐出圧P3とレギュレータ212のLS駆動圧力Px3とが導かれ、メインポンプ202の吐出圧P3を、メインポンプ202の吸収トルクを模擬するよう補正して出力するトルクフィードバック回路112vと、このトルクフィードバック回路112vの出力圧が導かれ、トルクフィードバック回路112vの出力圧が高くなるにしたがってメインポンプ102の斜板の傾転角(容量)を減少させ、バネ112uによって設定された最大トルクT12maxが減少するようメインポンプ102の傾転角を制御するトルクフィードバックピストン112f(第3トルク制御アクチュエータ)とを更に備えている。トルクフィードバック回路112vは、メインポンプ202(第2油圧ポンプ)がトルク制御の制限を受け、トルク制御の最大トルクT3maxで動作するときと、メインポンプ202がトルク制御の制限を受けず、ロードセンシング制御によって容量制御を行うときのいずれの場合にも、メインポンプ202の吐出圧P3を、メインポンプ202の吸収トルクを模擬するよう補正して出力するよう構成されている(後述)。
【0060】
図3Aにおいて矢印AR1,AR2は、トルクフィードバック回路112v及びトルクフィードバックピストン112fの効果を示している。メインポンプ202の吐出圧P3が上昇するとき、トルクフィードバック回路112vはメインポンプ202の吐出圧P3を、メインポンプ202の吸収トルクを模擬するよう補正して出力し、トルフィードバックピストン112fは、
図3Aに矢印AR1,AR2で示すように、バネ112uによって設定された最大トルクT12maxをトルクフィードバック回路112vの出力圧分、減少させる。これによりメインポンプ102に係わるアクチュエータとメインポンプ202に係わるアクチュエータを同時に駆動する複合操作時においても、メインポンプ102の吸収トルクが最大トルクT12maxを超えないように制御され(全トルク制御)、原動機1の停止(エンジンストール)を防止することができる。なお、
図3A中、矢印AR1は、メインポンプ202(第2油圧ポンプ)がトルク制御の制限を受け、トルク制御の最大トルクT3maxで動作する場合のもの、矢印AR2は、メインポンプ202がトルク制御の制限を受けず、ロードセンシング制御によって容量制御を行う場合のものである(後述)。
【0061】
〜トルクフィードバック回路の詳細〜
トルクフィードバック回路112vの詳細を説明する。
【0062】
<回路構成>
トルクフィードバック回路112vは、第1可変減圧弁112gと第2可変減圧弁112qとを有している。
【0063】
第1可変減圧弁112gは、入力ポートに油路112jを介してメインポンプ202の吐出圧P3が導かれ、このメインポンプ202の吐出圧P3が第1設定圧以下であるときは、メインポンプ202の吐出圧P3をそのまま出力し、メインポンプ202の吐出圧P3が第1設定圧より高いときは、メインポンプ202の吐出圧P3を第1設定圧に減圧して出力する。第2可変減圧弁112qは、入力ポートに油路112kを介してレギュレータ212のLS駆動圧力Px3が導かれ、LS駆動圧力Px3が第2設定圧以下であるときは、LS駆動圧力Px3をそのまま出力し、LS駆動圧力Px3が第2設定圧より高いときは、LS駆動圧力Px3を第2設定圧に減圧して出力する。
【0064】
また、第1可変減圧弁112gは、第1設定圧の初期値を設定する開方向作動のバネ112tと、バネ112tの反対側に位置する受圧部112hとを有し、受圧部112hには第2可変減圧弁112qの出力圧が油路112nを介して導かれ、第2可変減圧弁112qの出力圧が高くなるにしたがって第1設定圧が小さくなるよう構成されている。第2可変減圧弁112qは、第2設定圧の初期値を設定する開方向作動のバネ112sと、バネ112sの反対側に位置する受圧部112iとを有し、受圧部112iにはメインポンプ202の吐出圧P3が油路112jを介して導かれ、メインポンプ202の吐出圧P3が高くなるにしたがって第2設定圧が小さくなるよう構成されている。
【0065】
第1可変減圧弁112gの出力圧はトルクフィードバック回路112vの出力圧としてトルクフィードバックピストン112fに導かれる。
【0066】
LS駆動圧力Px3を第2可変減圧弁112qの入力ポートに導く油路112kには、LS駆動圧力Px3が振動的である場合にその振動を吸収して圧力を安定させるための絞り(固定絞り)112rが配置されている。
【0068】
<<第2可変減圧弁112q>>
図4は、トルクフィードバック回路112vの第2可変減圧弁112qの出力特性を示す図である。
【0069】
LS駆動圧力Px3が絞り112rを介して第2可変減圧弁112qの入力ポートに導かれる。
【0070】
一方、メインポンプ202の吐出圧P3は、第2可変減圧弁112qの第2設定圧の初期値を設定するバネ112sの反対側に位置する受圧部112iに導かれる。メインポンプ202の吐出圧P3が最小圧力P3minであるときは、第2可変減圧弁112qの第2設定圧はバネ112sによって決まる圧力(初期値)に設定され、メインポンプ202の吐出圧P3が高くなるにしたがって第2可変減圧弁112qの第2設定圧は小さくなる。このため第2可変減圧弁112qに入力されたLS駆動圧力Px3はメインポンプ202の吐出圧P3に応じて変化し、第2可変減圧弁112qの出力圧は
図4に示すような特性となる。
【0071】
図4において、Q1〜Q4はメインポンプ202の吐出圧P3によって変化する第2可変減圧弁112qの減圧特性を示している。Q1はメインポンプ202の吐出圧P3が最小圧力P3minであるときの特性であり、Px3'aはそのときの第2設定圧(バネ112sによって設定される初期値)である。Q4はメインポンプ202の吐出圧P3が最大圧力P3maxであるときの特性であり、Px3'iはそのときの第2設定圧(最小の第2設定圧)である。メインポンプ202の吐出圧P3がP3a(P3min),P3g,P3h,P3i(P3max)と高くなるにしたがって第2可変減圧弁112qの第2設定圧はPx3'a,Px3'g,Px3'h,Px3'iと小さくなり、第2可変減圧弁112qの減圧特性は直線Q1,Q2,Q3,Q4のように変化する。その結果、LS駆動圧力Px3が第2可変減圧弁112qの第2設定圧よりも高いとき、第2可変減圧弁112qの出力圧Px3outは、メインポンプ202の吐出圧P3が高くなるにしたがってPx3'a,Px3'g,Px3'h,Px3'iと小さくなる。
【0072】
LS駆動圧力Px3が第2可変減圧弁112qの第2設定圧以下であるときは、LS駆動圧力Px3は減圧されることなくそのまま出力される。直線Q0はそのときの特性を示している。
【0073】
<<第1可変減圧弁112g>>
図5は、トルクフィードバック回路112vの第1可変減圧弁112gの出力特性を示す図である。
【0074】
メインポンプ202の吐出圧P3が第1可変減圧弁112gの入力ポートに導かれる。
【0075】
一方、第2可変減圧弁112qの出力圧P3outは、第1可変減圧弁112gの第1設定圧の初期値を設定するバネ112tの反対側に位置する受圧部112hに導かれる。第2可変減圧弁112qの出力圧P3outが最小のタンク圧である場合、第1可変減圧弁112gの第1設定圧はバネ112tによって決まる圧力(初期値)に設定され、第2可変減圧弁112qの出力圧P3outが高くなるにしたがって第1可変減圧弁112gの第1設定圧は小さくなる(第1減圧特性)。また、第2可変減圧弁112qの出力圧P3outは、上述したように、メインポンプ202の吐出圧P3に応じて変化し、第1可変減圧弁112gの第1設定圧もメインポンプ202の吐出圧P3に応じて変化する(第2減圧特性)。このように第1可変減圧弁112gの第1設定圧はLS駆動圧力Px3とメインポンプ202の吐出圧P3とに応じて変化し、第1可変減圧弁112gの出力圧は
図5に示すような特性となる。
【0076】
図5において、G1〜G5は、LS駆動圧力Px3が第2設定圧以下で、LS駆動圧力Px3が減圧されないとき得られる第1可変減圧弁112gの第1減圧特性を示し、Zは、LS駆動圧力Px3が第2設定圧よりも高く、LS駆動圧力Px3が第2設定圧に減圧されるときに得られる第2減圧特性を示している。G1は第2可変減圧弁112qの出力圧P3outが最小のタンク圧であるときの特性であり、P3'eはこのときの第1設定圧(バネ112tによって設定される初期値)である。G3は第2可変減圧弁112qの出力圧P3outがPx3i(
図4参照)であるときの特性であり、G5は第2可変減圧弁112qの出力圧P3outがPx3a(
図4参照)であるときの特性である。
【0077】
第2可変減圧弁112qにおいて、LS駆動圧力Px3が第2設定圧以下で、LS駆動圧力Px3が減圧されないとき、LS駆動圧力Px3が高くなるにしたがって第1可変減圧弁112gの第2設定圧はP3'e,P3'j,P3'i,P3'b,P3'aと小さくなり、第1可変減圧弁112gの第1減圧特性は直線G1,G2,G3,G4,G5のように変化する。その結果、メインポンプ202の吐出圧P3が第1可変減圧弁112gの第2設定圧よりも高いときの第1可変減圧弁112gの出力圧P3outは、LS駆動圧力Px3が高くなるにしたがってP3'e,P3'jc,P3'i,P3'b,P3'aと小さくなる。
【0078】
第2可変減圧弁112qにおいて、LS駆動圧力Px3が第2設定圧よりも高く、LS駆動圧力Px3が第2設定圧に減圧されるとき、第2可変減圧弁112qの出力圧Px3outは、
図4に示すようにメインポンプ202の吐出圧P3が高くなるにしたがってPx3'a,Px3'g,Px3'h,Px3'iと小さくなり、この出力圧Px3outの減少に応じて第1可変減圧弁112gの第2設定圧は大きくなるため、第1可変減圧弁112gの第2減圧特性は直線Zのように変化する。その結果、メインポンプ202の吐出圧P3が第1可変減圧弁112gの第2設定圧よりも高いときの第1可変減圧弁112gの出力圧P3outは、メインポンプ202の吐出圧P3が高くなるにしたがって直線Zのように直線比例的に大きくなる。
【0079】
メインポンプ202の吐出圧P3が第1可変減圧弁112gの第2設定圧以下であるときは、メインポンプ202の吐出圧P3は減圧されることなくそのまま出力される。直線G0はそのときの特性を示している。
【0080】
<吸収トルクの模擬>
次に、トルクフィードバック回路112vがメインポンプ202の吐出圧P3をメインポンプ202の吸収トルクを模擬するよう補正して出力するものであることについて、説明する。
【0081】
メインポンプ202がロードセンシング制御により容量制御を行うとき、メインポンプ202の容量変更部材(斜板)の位置、すなわち容量(傾転角)は、LS駆動圧力が作用するLS制御ピストン212cとメインポンプ202の吐出圧P3が作用するトルク制御ピストン212dのそれぞれが斜板を押す力の合力と、最大トルクを設定する付勢手段であるバネ212eが斜板を反対方向に押す力との釣り合いによって決まる。このためロードセンシング制御時のメインポンプ202の傾転角はLS駆動圧力によって変化するだけでなく、メインポンプ202の吐出圧P3の影響も受けて変化する。
【0082】
図6Aは、メインポンプ202のレギュレータ212におけるトルク制御とロードセンシング制御の関係(メインポンプ202の吐出圧P3と傾転角とLS駆動圧力Px3との関係)を示す図であり、
図6Bは、
図6Aの縦軸をメインポンプ202の吸収トルクに置き換えてトルク制御とロードセンシング制御の関係(メインポンプ202の吐出圧P3と吸収トルクとLS駆動圧力Px3との関係)を示した図である。
【0083】
メインポンプ202に係わるアクチュエータ3a,3e,3hの操作レバーのいずれかがフル操作され、メインポンプ202の吐出流量がサチレーション状態となり、LS駆動圧力Px3がタンク圧に等しくなる場合は(後述のブーム上げフル操作(c))、メインポンプ202の吐出圧P3が上昇するとき、メインポンプ202の傾転角q3は、
図6Aの特性Hq(Hqa,Hqb)のように変化し、メインポンプ202の吐出圧P3と傾転角q3との積に比例するメインポンプ202の吸収トルクT3は
図6Bの特性HT(Hta,HTb)のように変化する。特性Hqの直線Hqaは
図3Bの直線601に対応し、メインポンプ202の構造で決まる最大傾転角q3maxの特性である。特性Hqの曲線Hqbは
図3Bの曲線602に対応し、バネ212eによって設定された最大トルクT3maxの特性である。メインポンプ202の吸収トルクT3がT3maxに達する前は傾転角q3は直線Hqaに示すようにq3maxで一定である(
図6A)。このときメインポンプ202の吸収トルクT3は直線Htaで示すように吐出圧P3が上昇するにしたがってほぼ直線的に増加する(
図6B)。吸収トルクT3がT3maxに達すると曲線Hqbに示すように吐出圧P3が上昇するにしたがって傾転角q3は小さくなる(
図6A)。このときメインポンプ202の吸収トルクT3は曲線HTbに示すようにT3maxでほぼ一定となる(
図6B)。
【0084】
メインポンプ202に係わるアクチュエータ3a,3e,3hの操作レバーのいずれかが微操作され、LS駆動圧力Px3がタンク圧とパイロット一次圧Ppilotの中間の圧力に上昇する場合は(後述のブーム上げ微操作(b)及び水平均し作業(f))、LS駆動圧力Px3がPx3-1,Px3-2,Px3-3と高くなるにしたがって、メインポンプ202の傾転角q3は、
図6Aの曲線Iq,Jq,Kqのように変化し、これに対応してメインポンプ202の吸収トルクT3は
図6Bの曲線IT,JT,KTのように変化する。
【0085】
すなわち、メインポンプ202の吐出圧P3が上昇するとき、LS駆動圧力Px3が例えばPx3bと一定であっても、メインポンプ202の傾転角q3は上述したように曲線Iqのように吐出圧P3の上昇の影響を受けて低下するため、吐出圧P3の高圧側ではT3maxの曲線Hqb上の傾転角よりも小さい傾転角となる(
図6A)。その結果、メインポンプ202の吸収トルクT3は、吐出圧P3が上昇するにしたがって曲線ITのように増加し、やがてT3maxよりも小さいT3-1で最大トルクに達しほぼ一定となる(
図6B)。ただし、傾転角q3はメインポンプ202の構造で決まる最小傾転角q3min以下にはならず、吸収トルクT3も最小傾転角q3minに対応した直線LTの最小トルクT3min以下にはならない。
【0086】
LS駆動圧力Px3がPx3-2,Px3-3の場合も同様であり、傾転角q3は曲線Jq,Kqのように吐出圧P3の上昇の影響を受けて低下し、吐出圧P3の高圧側では曲線Iq上の傾転角よりも更に小さくなる(
図6A)。これに対応してメインポンプ202の吸収トルクT3は、吐出圧P3が上昇するにしたがって曲線JT,KTのように増加し、T3-1よりも更に小さいT3-2,T3-3(T3-1>T3-2>T3-3)で最大トルクに達しほぼ一定となる(
図6B)。ただし、この場合も、傾転角q3はメインポンプ202の構造で決まる最小傾転角q3min以下にはならず、吸収トルクT3も最小傾転角q3minに対応した直線LTの最小トルクT3min以下にはならない。
【0087】
メインポンプ202に係わるアクチュエータ3a,3e,3hの全ての操作レバーが中立の場合、或いはそれらの操作レバーのいずれかが操作された場合でも、その操作量が極めて少なく、流量制御弁の要求流量がメインポンプ202の最小傾転角q3minで得られる最少流量よりも少ない場合には(後述の全操作レバー中立時の動作(a)及び吊り荷作業でのブーム上げ微操作(g))、メインポンプ202の傾転角q3は、
図6Aに直線Lqで示すようにメインポンプ202の構造で決まる最小傾転角q3minに保持され、これに対応してメインポンプ202の吸収トルクT3も最小トルクT3minとなり、この最小トルクT3minは
図6Bの直線LTのように変化する。すなわち、最小トルクT3minは吐出圧P3が上昇するにしたがって直線LTのように直線比例的に増加する。
【0088】
図5に戻り、メインポンプ202の吐出圧P3の上昇時におけるトルクフィードバック回路112vの出力圧P3outの最大値は、
図5に示す第1減圧特性の直線G1〜G5で示すように、LS駆動圧力Px3が高くなるにしたがって小さくなる。また、メインポンプ202が最小傾転角q3minにあるとき、メインポンプ202の吐出圧P3の上昇時におけるトルクフィードバック回路112vの出力圧P3outは、
図5に示す第2減圧特性の直線Zのように直線比例的に増加する。
【0089】
図5と
図6Bの比較から分かるように、
図5に示す第1減圧特性の直線G1〜G5の圧力(出力圧P3outの最大値)は、
図6Bに示す曲線HT,IT,JT,KTの吸収トルクの最大値と同じようにLS駆動圧力Px3が上昇するにしたがって小さくなるように変化する。また、メインポンプ202が最小傾転角q3minにあるとき、
図5に示す第2減圧特性の直線Zの圧力は、
図6Bに示す曲線LTと同じように吐出圧P3が上昇するにしたがって直線比例的に増加する。
【0090】
このようにトルクフィードバック回路112vは、メインポンプ202(第2油圧ポンプ)がトルク制御の制限を受け、トルク制御の最大トルクT3maxで動作するときと、メインポンプ202がトルク制御の制限を受けず、ロードセンシング制御によって容量制御を行うときのいずれの場合にも、メインポンプ202の吐出圧P3をメインポンプ202の吸収トルクを模擬するよう補正して出力する。また、メインポンプ202が最小傾転角q3minにあるときにも、メインポンプ202の吐出圧P3をメインポンプ202の吸収トルクを模擬するよう補正して出力する。
【0091】
〜油圧ショベル〜
図7は、上述した油圧駆動装置が搭載される油圧ショベルの外観を示す図である。
【0092】
図7において、作業機械としてよく知られている油圧ショベルは、下部走行体101と、上部旋回体109と、スイング式のフロント作業機104を備え、フロント作業機104は、ブーム104a、アーム104b、バケット104cから構成されている。上部旋回体109は下部走行体101に対して旋回モータ3cによって旋回可能である。上部旋回体109の前部にはスイングポスト103が取り付けられ、このスイングポスト103にフロント作業機104が上下動可能に取り付けられている。スイングポスト103はスイングシリンダ3eの伸縮により上部旋回体109に対して水平方向に回動可能であり、フロント作業機104のブーム104a、アーム104b、バケット104cはブームシリンダ3a,アームシリンダ3b,バケットシリンダ3dの伸縮により上下方向に回動可能である。下部走行体102の中央フレームには、ブレードシリンダ3h(
図1参照)の伸縮により上下動作を行うブレード106が取り付けられている。下部走行体101は、走行モータ3f,3gの回転により左右の履帯101a,101b(
図7では左側のみ図示)を駆動することによって走行を行う。
【0093】
上部旋回体109にはキャノピータイプの運転室108が設置され、運転室108内には、運転席121、フロント/旋回用の左右の操作装置122,123(
図7では左側のみ図示)、走行用の操作装置124a,124b(
図7では左側のみ図示)、図示しないスイング用の操作装置及びブレード用の操作装置、ゲートロックレバー24等が設けられている。操作装置122,123の操作レバーは中立位置から十字方向を基準とした任意の方向に操作可能であり、左側の操作装置122の操作レバーを前後方向に操作するとき、操作装置122は旋回用の操作装置として機能し、同操作装置122の操作レバーを左右方向に操作するとき、操作装置122はアーム用の操作装置として機能し、右側の操作装置123の操作レバーを前後方向に操作するとき、操作装置123はブーム用の操作装置として機能し、同操作装置123の操作レバーを左右方向に操作するとき、操作装置123はバケット用の操作装置として機能する。
【0094】
〜動作〜
次に、本実施の形態の動作を説明する。
【0095】
まず、原動機1によって駆動される固定容量型のパイロットポンプ30から吐出された圧油は、圧油供給路31aに供給される。圧油供給路31aには原動機回転数検出弁13が接続されており、原動機回転数検出弁13は流量検出弁50と差圧減圧弁51によりパイロットポンプ30の吐出流量に応じた流量検出弁50の前後差圧を絶対圧Pgr(目標LS差圧)として出力する。原動機回転数検出弁13の下流にはパイロットリリーフバルブ32が接続されており、パイロット圧油供給路31bに一定の圧力(パイロット一次圧Ppilot)を生成している。
【0096】
(a)全ての操作レバーが中立の場合
全ての操作装置の操作レバーが中立なので、全ての流量制御弁6a〜6jが中立位置となる。全ての流量制御弁6a〜6jが中立位置なので、第1負荷圧検出回路131,第2負荷圧検出回路132,第3負荷圧検出回路133は、それぞれ、最高負荷圧Plmax1,Plmax2,Plmax3としてタンク圧を検出する。この最高負荷圧Plmax1,Plmax2,Plmax3は、それぞれ、アンロード弁115,215,315と差圧減圧弁111,211,311に導かれる。
【0097】
最高負荷圧Plmax1,Plmax2,Plmax3がアンロード弁115,215,315に導かれることによって、第1、第2及び第3吐出ポート102a,102b,202aの圧力P1,P2,P3は、最高負荷圧Plmax1,Plmax2,Plmax3にアンロード弁115,215,315のそれぞれのバネの設定圧力を加算した圧力(アンロード弁セット圧)である最小圧P1min,P2min,P3minに保たれる。ここで、アンロード弁115,215,315のバネの設定圧力をPunspとすると、通常、Punspは目標LS差圧である原動機回転数検出弁13の出力圧Pgrよりも若干高く設定される(Punsp>Pgr)。
【0098】
差圧減圧弁111,211,311は、それぞれ、第1、第2及び第3圧油供給路105,205,305の圧力P1,P2,P3と最高負荷圧Plmax1,Plmax2,Plmax3(タンク圧)との差圧(LS差圧)を絶対圧Pls1,Pls2,Pls3として出力する。最高負荷圧Plmax1,Plmax2,Plmax3は上述したようにそれぞれタンク圧であり、このタンク圧をPtankとすると、
Pls1=P1−Plmax1=(Ptank+Punsp)−Ptank=Punsp>Pgr
Pls2=P2−Plmax2=(Ptank+Punsp)−Ptank=Punsp>Pgr
Pls3=P3−Plmax3=(Ptank+Punsp)−Ptank=Punsp>Pgr
となる。LS差圧Pls1,Pls2はレギュレータ112の低圧選択弁112aに導かれ、Pls3はレギュレータ212のLS制御弁212bに導かれる。
【0099】
レギュレータ112において、低圧選択弁112aに導かれたLS差圧Pls1,Pls2はそれらの低圧側が選択され、LS差圧Pls12としてLS制御弁112bに導かれる。このとき、Pls1,Pls2のいずれが選択されても、Pls12>Pgrであるので、LS制御弁122bは
図1で左方向に押されて右側の位置に切り換わり、LS駆動圧力Px12はパイロットリリーフバルブ32によって生成される一定のパイロット一次圧Ppilotまで上昇し、このパイロット一次圧PpilotがLS制御ピストン112cに導かれる。LS制御ピストン112cにパイロット一次圧Ppilotが導かれるので、メインポンプ102の容量(流量)は最小に保たれる。
【0100】
一方、レギュレータ212のLS制御弁212bにLS差圧Pls3が導かれる。Pls3>Pgrであるので、LS制御弁212bは
図1で右方向に押されて左側の位置に切り換わり,LS駆動圧力Px3はパイロット一次圧Ppilotまで上昇し、このパイロット一次圧PpilotがLS制御ピストン212cに導かれる。LS制御ピストン212cにパイロット一次圧Ppilotが導かれるので、メインポンプ202の容量(流量)は最小に保たれる。
【0101】
(a−1)トルクフィードバック回路112vの動作
図8は
図4に示した第2可変減圧弁112qの出力特性に第2可変減圧弁112qの動作点(黒丸)を付記した動作説明図であり、
図9は
図5に示した第1可変減圧弁112gの出力特性に第1可変減圧弁112gの動作点(黒丸)を付記した動作説明図である。
【0102】
全ての操作レバーが中立の場合、メインポンプ202の吐出圧(第3圧油供給路305の圧力)P3は、前述したように、タンク圧にアンロード弁315のバネの設定圧力を加算した最小吐出圧P3minに保たれる。その圧力をP3aとする。
【0103】
第2可変減圧弁112qでは、このときのメインポンプ202の吐出圧P3aによって第2設定圧が初期値から減少し、P3a=P3minであるため、
第2可変減圧弁112qは
図8の直線Q1の特性となる。
【0104】
一方、このときのメインポンプ202のLS制御ピストン212cに導かれるLS駆動圧力Px3は前述のようにパイロット圧油供給路31bの一定のパイロット一次圧Ppilot(最大)になっている。この値をPx3maxとする。このLS駆動圧力Px3maxは絞り112rを介して第2可変減圧弁112qの入力ポートに導かれ、LS駆動圧力Px3maxは第2可変減圧弁112qによって点aの圧力Px3'aに減圧される。
【0105】
Px3'aに減圧された点aの圧力は第2可変
減圧弁112qの出力圧Px3outとして第1可変減圧弁112gの受圧部112hに導かれる。ここで、Px3'aは減圧された圧力であるため、第1可変減圧弁112gは
図9の直線Zの特性(第2減圧特性)となる。
【0106】
第1可変減圧弁112gの入力ポートに導かれたメインポンプ202の吐出圧P3a(P3min)は、第1可変減圧弁112gの直線Zの減圧特性によりP3'jに減圧される。この状態が
図9において点Aで示されている。
【0107】
P3'jに減圧された圧力は第1可変減圧弁112gの出力圧P3outとしてトルクフィードバックピストン112fに導かれる。トルクフィードバックピストン112fにおいては、P3'jとトルクフィードバックピストン112fの受圧面積との積で決まる力がメインポンプ102の容量(傾転角)を小さくする方向に作用する。しかし、前述したようにメインポンプ102の容量(傾転角)は既にLS制御ピストン112cによって最小に保たれており、この状態が維持される。
【0108】
(b)ブーム操作レバーを入力した場合(微操作)
例えばブーム用の操作装置の操作レバー(ブーム操作レバー)をブームシリンダ3aが伸長する向き、つまりブーム上げ方向に入力すると、ブームシリンダ3a駆動用の流量制御弁6a,6iが
図1中で上方向に切り換わる。ここで、ブームシリンダ3a駆動用の流量制御弁6a,6iの開口面積特性は、
図2Bを用いて説明したように流量制御弁6aがメイン駆動用であり、流量制御弁6iがアシスト駆動用である。流量制御弁6a,6iは、操作装置のパイロットバルブによって出力された操作パイロット圧に応じてストロークする。
【0109】
ブーム操作レバーが微操作で、流量制御弁6a,6iのストロークが
図2BのS2以下の場合、ブーム操作レバーの操作量(操作パイロット圧)が増加していくと、メイン駆動用の流量制御弁6aのメータイン通路の開口面積はゼロからA1に増加していく。一方、アシスト駆動用の流量制御弁6iのメータイン通路の開口面積はゼロに維持される。
【0110】
このようにアシスト駆動用の流量制御弁6iは、ブーム上げ微操作では
図1中で上方向に切り換わっても、メータイン通路は開かず、また、負荷検出ポートもタンクに接続されたままであり、第1負荷圧検出回路131は最高負荷圧Plmax1としてタンク圧を検出する。このためメインポンプ102の容量(流量)は全ての操作レバーが中立の場合と同様に最小に保たれる。
【0111】
一方、流量
制御弁6aが
図1中で上方向に切り換わると、ブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧が流量制御弁6aの負荷ポートを介して第3負荷圧検出回路133によって最高負荷圧Plmax3として検出され、アンロード弁315と差圧減圧弁311に導かれる。最高負荷圧Plmax3がアンロード弁315に導かれることによって、アンロード弁315のセット圧は、最高負荷圧Plmax3(ブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧)にバネの設定圧力Punspを加算した圧力に上昇し、第3圧油供給路305の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧Plmax3が差圧減圧弁311に導かれることによって、差圧減圧弁311は第3圧油供給路305の圧力P3と最高負荷圧Plmax3との差圧(LS差圧)を絶対圧Pls3として出力し、このPls3はLS制御弁212bに導かれる。LS制御弁212bは、目標LS差圧Pgrと上記LS差圧Pls3を比較する。
【0112】
ブーム上げ起動時の操作レバー入力直後は、ブームシリンダ3aの負荷圧が第3圧油供給路305に伝わり両者の圧力差は殆ど無くなるから、LS差圧Pls3はほぼゼロに等しくなる。よって、Pls3<Pgrの関係となるので、LS制御弁212bは
図1中で左方向に切り換わり、LS制御ピストン212cの圧油をタンクに放出する。このためLS駆動圧力Px3は低下し、メインポンプ202の容量(流量)は増加する。このLS駆動圧力Px3の低下による流量増加はPls3=Pgrになるまで継続し、Pls3=Pgrとなった時点でLS駆動圧力Px3は、パイロットリリーフバルブ32によって生成される一定のパイロット一次圧Ppilotとタンク圧の中間のある値に保持される。このようにメインポンプ202は、流量制御弁6aの要求流量に応じて、必要な流量を必要な分だけ吐出する、いわゆるロードセンシング制御を行う。これによりブーム操作レバーの入力に応じた流量の圧油がブームシリンダ3aのボトム側に供給され、ブームシリンダ3aは伸長方向に駆動される。
【0113】
(b−1)トルクフィードバック回路112vの動作(1)
ブーム上げ微操作でメインポンプ202の容量(傾転角)が最大と最小の中間にある場合には、メインポンプ202のLS制御ピストン212cに導かれるLS駆動圧力Px3は、パイロット圧油供給路31bの一定のパイロット一次圧Ppilot(最大)とタンク圧の中間のある値に保持される。この値を
図8に例えばPx3bで示す。
【0114】
また、このときのメインポンプ202の吐出圧が例えば
図8のP3gであるとすると、第2可変減圧弁112qにおいては、メインポンプ202の吐出圧P3gによって第2設定圧が減少し、第2可変減圧弁112qは
図8の直線Q2の特性となる。この場合、LS駆動圧力Px3bは第2可変減圧弁112qによって減圧されずにそのまま出力される。この状態が
図8において点b1で示されている。
【0115】
一方、
図9において、LS駆動圧力Px3bは第2可変減圧弁112qによって減圧されない圧力であるため、第1可変減圧弁112gは
図9の直線G4の特性(第1減圧特性)となり、メインポンプ202の吐出圧P3gは第1可変減圧弁112gによって圧力P3'bに減圧される。この状態が
図9において点Bで示されている。
【0116】
P3'bに減圧された圧力は第1可変減圧弁112gの出力圧P3outとしてトルクフィードバックピストン112fに導かれる。トルクフィードバックピストン112fにおいては、P3'bとトルクフィードバックピストン112fの受圧面積との積で決まる力がメインポンプ102の容量(傾転角)を小さくする方向に作用する。しかし、前述したようにメインポンプ102の容量(傾転角)は既にLS制御ピストン112cによって最小に保たれており、この状態が維持される。
【0117】
(b−2)トルクフィードバック回路112vの動作(2)
次に、ブーム上げ微操作時において、メインポンプ202の吐出圧がP3gのままブーム操作レバーの入力量を徐々に増やしていった場合を考える。
【0118】
この場合、メインポンプ202のLS制御ピストン212cに導かれるLS駆動圧力Px3は徐々に減少していく。この減少したある値を例えば
図8のPx3cとする。
【0119】
前述のように、第2可変減圧弁112qはメインポンプ202の吐出圧P3gによって
図8の直線Q2の特性となっており、LS駆動圧力Px3cは第2可変減圧弁112qによって減圧されずにそのまま出力される。この状態が
図8において点cで示されている。
【0120】
一方、
図9において、LS駆動圧力Px3cは第2可変減圧弁112qによって減圧されない圧力であるため、第1可変減圧弁112gは
図9の直線G2の特性(第1減圧特性)となる。また、LS駆動圧力Px3がPx3bからPx3cへと小さくなり、第1可変減圧弁112gの第1設定圧が大きくなるにしたがって、第1可変減圧弁112gの出力圧P3outは大きくなってゆき、LS駆動圧力Px3がPx3cになると、メインポンプ202の吐出圧P3gと等しくなる。この状態が
図9において点Cで示されている。
【0121】
この状態ではメインポンプ202の吐出圧P3gは、第1可変減圧弁112gによって減圧されることなくトルクフィードバックピストン112fに導かれるが、前述したようにメインポンプ102の容量(傾転角)は既にLS制御ピストン112cによって最小に保たれており、この状態が維持される。
【0122】
(b−3)トルクフィードバック回路112vの動作(3)
次に、
図9の点Cの状態から、メインポンプ202の吐出圧P3が更に上昇していった場合を考える。
【0123】
この場合、メインポンプ202の吐出圧P3が例えば
図9のP3kまで上昇すると、圧力P3kは第1可変減圧弁112gの直線G2の特性(第1減圧特性)によってP3'gに減圧される。
【0124】
P3'gに減圧された圧力は第1可変減圧弁112gの出力圧P3outとしてトルクフィードバックピストン112fに導かれるが、この場合も前述したようにメインポンプ102の容量(傾転角)は既にLS制御ピストン112cによって最小に保たれており、この状態が維持される。
【0125】
(b−4)トルクフィードバック回路112vの動作(4)
次に、ブーム上げ微操作時において、
図9の点Bの状態からLS駆動圧力が同じPx3bで、メインポンプ202の吐出圧P3が高くなっていった場合を考える。
【0126】
図8において、メインポンプ202の吐出圧P3がP3gからP3hに上昇するとき、第2可変減圧弁112qは直線Q3の特性となる。この場合、点b1のLS駆動圧力Px3bは減圧されずにそのまま出力される。
【0127】
一方、
図9において、第1可変減圧弁112gは直線G4の特性(第1減圧特性)のままであり、メインポンプ202の吐出圧P3hは第1可変減圧弁112gによって圧力P3'bに減圧される。この状態が
図9において点Hで示されている。
【0128】
P3'bに減圧された圧力は第1可変減圧弁112gの出力圧P3outとしてトルクフィードバックピストン112fに導かれるが、前述したようにメインポンプ102の容量(傾転角)は既にLS制御ピストン112cによって最小に保たれており、この状態が維持される。
【0129】
(b−5)トルクフィードバック回路112vの動作(5)
次に、ブーム上げ微操作において、
図9の点Hに対してLS駆動圧力が同じPx3bで、メインポンプ202の吐出圧P3が最大の吐出圧P3maxまで上昇した場合を考える。
【0130】
図8において、メインポンプ202の吐出圧が最大の吐出圧P3maxまで上昇すると、第2可変減圧弁112qの第2設定圧は更に小さくなり、
図8でP3=P3i(P3max)の直線Q4の特性となり、LS駆動圧力Px3bは点b2の圧力Px3'iに減圧される。
【0131】
一方、
図9において、Px3'iは減圧された圧力であるため、第1可変減圧弁112gは
図9の直線Zの特性(第2減圧特性)となり、第1可変減圧弁112gの入力ポートに導かれたメインポンプ202の吐出圧P3i(P3max)は第1可変減圧弁112gの直線Zの減圧特性によって点Iの圧力P3'iに減圧される。
【0132】
P3'iに減圧された圧力は第1可変減圧弁112gの出力圧P3outとしてトルクフィードバックピストン112fに導かれる。しかし、前述したようにメインポンプ102の容量(傾転角)は既にLS制御ピストン112cによって最小に保たれており、この状態が維持される。
【0133】
(c)ブーム操作レバーを入力した場合(フル操作)
例えばブーム操作レバーをブームシリンダ3aが伸長する向き、つまりブーム上げ方向にフルに操作した場合、ブームシリンダ3a駆動用の流量制御弁6a,6iが
図1中で上方向に切り換わり、
図2Bに示したように、流量制御弁6a,6iのスプールストロークはS2以上となり、流量制御弁6aのメータイン通路の開口面積はA1に保たれ、流量制御弁6iのメータイン通路の開口面積はA2となる。
【0134】
前述したように、ブームシリンダ3aの負荷圧は流量制御弁6aの負荷ポートを介して第3負荷圧検出回路133によって最高負荷圧Plmax3として検出され、この最高負荷圧Plmax3に応じてメインポンプ202の吐出流量はPls3がPgrに等しくなるように制御され、メインポンプ202からブームシリンダ3aのボトム側に圧油が供給される。
【0135】
一方、ブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧は、流量制御弁6iの負荷ポートを介して第1負荷圧検出回路131によって最高負荷圧Plmax1として検出され、アンロード弁115と差圧減圧弁111に導かれる。最高負荷圧Plmax1がアンロード弁115に導かれることによって、アンロード弁115のセット圧は、最高負荷圧Plmax1(ブームシリンダ3aのボトム側の負荷圧)にバネの設定圧力Punspを加算した圧力に上昇し、第1圧油供給路105の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧Plmax1が差圧減圧弁111に導かれることによって、差圧減圧弁111は第1圧油供給路105の圧力P1と最高負荷圧Plmax1との差圧(LS差圧)を絶対圧Pls1として出力する。このPls1はレギュレータ112の低圧選択弁112aに導かれ、低圧選択弁112aによってPls1とPls2の低圧側が選択される。
【0136】
ブーム上げ起動時の操作レバー入力直後は、ブームシリンダ3aの負荷圧が第1圧油供給路105に伝わり両者の圧力の差は殆ど無くなるから、LS差圧Pls1はほぼゼロに等しくなる。一方、このとき、Pls2は操作レバーの中立時と同様、Pgrよりも大きな値に保たれている(Pls2=P2−Plmax2=(Ptank+Punsp)−Ptank=Punsp>Pgr)。よって、低圧選択弁112aではPls1が低圧側のLS差圧Pls12として選択され、LS制御弁112bに導かれる。LS制御弁112bは、目標LS差圧PgrとLS差圧Pls1を比較する。この場合、上記のようにLS差圧Pls1はほぼゼロに等しく、Pls1<Pgrの関係となるので、LS制御弁112bは
図1中で右方向に切り換わり、LS制御ピストン112cの圧油をタンクに放出する。このためLS駆動圧力Px3が低下し、メインポンプ102の容量(流量)は増加してゆき、メインポンプ102の流量はPls1がPgrに等しくなるように制御される。これによりメインポンプ102の第1吐出ポート102aからブームシリンダ3aのボトム側に圧油が供給され、ブームシリンダ3aは、メインポンプ202の第3吐出ポート202aとメインポンプ102の第1吐出ポート102aからの合流した圧油により伸長方向に駆動される。
【0137】
このとき、第2圧油供給路205には、第1圧油供給路105に供給される圧油と同じ流量の圧油が供給されるが、その圧油は余剰流量としてアンロード弁215を介してタンクに戻される。ここで、第2負荷圧検出回路132は最高負荷圧Plmax2としてタンク圧を検出しているため、アンロード弁215のセット圧はバネの設定圧力Punspに等しくなり、第2圧油供給路205の圧力P2はPunspの低圧に保たれる。これにより余剰流量がタンクに戻るときのアンロード弁215の圧損が低減し、エネルギーロスの少ない運転が可能となる。
【0138】
(c−1)トルクフィードバック回路112vの動作
ブーム上げフル操作を行っている際には、メインポンプ202の容量(傾転角)は最大であるので、メインポンプ202のLS制御ピストン212cに導かれるLS駆動圧力Px3は、ほぼタンク圧に等しくなる。この状態は
図8において点dで示されている。また、点dの圧力(=タンク圧Ptank)がPx3dで表されている。
【0139】
この場合、メインポンプ202の吐出圧P3がいずれの値にあったとしても、LS駆動圧力Px3d(=タンク圧Ptank)は第2可変減圧弁112qによって減圧されることなく、そのまま第1可変減圧弁112gに出力される。
【0140】
第1可変減圧弁112gに導かれた圧力Px3dはタンク圧Ptankであるため、第1可変減圧弁112gの第1設定圧はバネ112tによって決まる圧力(初期値)となり、第1可変減圧弁112gは
図9の直線G1の特性(第1減圧特性)となる。このときのメインポンプ202の吐出圧P3を
図9のP3dとすると、P3dは第1可変減圧弁112gによって減圧されずにそのまま出力される。この状態が
図9において点Dで示されている。メインポンプ202の吐出圧P3が更に高くなり、例えば
図9のP3eまで上昇すると、P3eは第1可変減圧弁112gの直線G1の特性(第1減圧特性)によってP3'eに減圧される。この状態が
図9において点Eで示されている。
【0141】
P3'eに減圧された圧力は第1可変減圧弁112gの出力圧P3outとしてトルクフィードバックピストン112fに導かれる。トルクフィードバックピストン112fにおいては、P3'eとトルクフィードバックピストン112fの受圧面積との積で決まる力がメインポンプ102の容量(傾転角)を小さくする方向に作用する。
【0142】
ここで、メインポンプ202は、流量制御弁6aの要求流量に応じて流量を吐出し吸収トルクを増大させるが、その吸収トルクが
図3Bの曲線602で示されるT3maxに達すると、メインポンプ202の吐出流量が要求流量に対して不足するいわゆるサチレーション状態となる。この状態が
図3Bで例えば点X1で示されている。サチレーション状態になると、Pls3<Pgrとなり、LS制御弁212bは
図1の図示右側の位置に切り換わるため、LS駆動圧力Px3はタンク圧Ptank(=Px3d)に等しくなる。このためトルクフィードバック回路112vにおいて、第2可変減圧弁112qはタンク圧Ptank(=Px3d)をそのまま出力し(
図8の点d)、第1可変減圧弁112gは
図9の直線G1の特性(第1減圧特性)となる。ここで、前述したようにブーム上げの負荷圧は比較的高いため、メインポンプ202の吐出圧P3は
図9のD点よりも高い圧力へと上昇し、第1可変減圧弁112gは、
図9の直線G1の特性の制限された圧力P3'eを出力する。この圧力P3'eはトルクフィードバックピストン112fに伝えられ、トルクフィードバックピストン112fはメインポンプ102の最大トルクを、
図3Aの曲線502のT12maxから圧力P3'e相当分だけ、T12maxよりも小さい曲線503の値T12max−T3maxへと減少させる。
【0143】
これによりメインポンプ102の吸収トルクがT12max−T3maxを超えないようにメインポンプ102の傾転角を制御する全トルク制御が行われるため、メインポンプ102,202の吸収トルクの合計は最大トルクT12maxを超えないようになり、原動機1の停止(エンジンストール)を防止することができる。
【0144】
(d)アーム操作レバーを入力した場合(微操作)
例えばアーム用の操作装置の操作レバー(アーム操作レバー)をアームシリンダ3bが伸長する向き、つまりアームクラウド方向に入力すると、アームシリンダ3b駆動用の流量制御弁6b,6jが
図1中で下方向に切り換わる。ここで、アームシリンダ3b駆動用の流量制御弁6b,6jの開口面積特性は、
図2Bを用いて説明したように流量制御弁6bがメイン駆動用であり、流量制御弁6jがアシスト駆動用である。流量制御弁6b,6jは、操作装置のパイロットバルブによって出力された操作パイロット圧に応じてストロークする。
【0145】
アーム操作レバーが微操作で、流量制御弁6b,6jのストロークが
図2BのS2以下の場合、アーム操作レバーの操作量(操作パイロット圧)が増加していくと、メイン駆動用の流量制御弁6bのメータイン通路の開口面積はゼロからA1に増加していく。一方、アシスト駆動用の流量制御弁6jのメータイン通路の開口面積はゼロに維持される。
【0146】
流量切換弁6bが
図1中で下方向に切り換わると、アームシリンダ3bのボトム側の負荷圧が流量制御弁6bの負荷ポートを介して第2負荷圧検出回路132によって最高負荷圧Plmax2として検出され、アンロード弁215と差圧減圧弁211に導かれる。最高負荷圧Plmax2がアンロード弁215に導かれることによって、アンロード弁215のセット圧は、最高負荷圧Plmax2(アームシリンダ3bのボトム側の負荷圧)にバネの設定圧力Punspを加算した圧力に上昇し、第2圧油供給路205の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧Plmax2が差圧減圧弁211に導かれることによって、差圧減圧弁211は第2圧油供給路205の圧力P2と最高負荷圧Plmax2との差圧(LS差圧)を絶対圧Pls2として出力し、このPls2はレギュレータ112の低圧選択弁112aに導かれる。低圧選択弁112aはPls1とPls2の低圧側を選択する。
【0147】
アームクラウド起動時の操作レバー入力直後は、アームシリンダ3bの負荷圧が第2圧油供給路205に伝わり両者の圧力の差は殆ど無くなるから、LS差圧Pls2はほぼゼロに等しくなる。一方、このとき、Pls1は操作レバーの中立時と同様、Pgrよりも大きな値に保たれている(Pls1=P1−Plmax1=(Ptank+Punsp)−Ptank=Punsp>Pgr)。よって、低圧選択弁112aはPls2を低圧側のLS差圧Pls12として選択し、Pls2がLS制御弁112bに導かれる。LS制御弁112bは、目標LS差圧である原動機回転数検出弁13の出力圧PgrとPls2を比較する。この場合、上記のようにLS差圧Pls2はほぼゼロに等しく、Pls2<Pgrの関係となるので、LS制御弁112bは
図1中で右方向に切り換わり、LS制御ピストン112cの圧油をタンクに放出する。このためメインポンプ102の容量(流量)は増加してゆき、その流量増加はPls2=Pgrになるまで継続する。これによりメインポンプ102の第2吐出ポート102bからアーム操作レバーの入力に応じた流量の圧油がアームシリンダ3bのボトム側に供給され、アームシリンダ3bは伸長方向に駆動される。
【0148】
このとき、第1圧油供給路105に、第2圧油供給路205に供給される圧油と同じ流量の圧油が供給され、その圧油は余剰流量としてアンロード弁115を介してタンクに戻される。ここで、第1負荷圧検出回路131は最高負荷圧Plmax1としてタンク圧を検出するため、アンロード弁115のセット圧はバネの設定圧力Punspに等しくなり、第1圧油供給路105の圧力P1はPunspの低圧に保たれる。これにより余剰流量がタンクに戻るときのアンロード弁115の圧損が低減し、エネルギーロスの少ない運転が可能となる。
【0149】
また、このときは、メインポンプ202に係わるアクチュエータは駆動されていないので、全ての操作レバーが中立である場合と同様、第2可変減圧弁112qは
図8の点aの状態、第1可変減圧弁112gは
図9の点Aの状態となり、P3'jに減圧された圧力は第1可変減圧弁112gの出力圧P3outとしてトルクフィードバックピストン112fに導かれる。ここで、P3'jはP3min以下の極めて低い圧力であり、
図3Aのメインポンプ102の最大トルクは
図3Aの曲線502のT12maxに維持される。
【0150】
(e)アーム操作レバーを入力した場合(フル操作)
例えばアーム操作レバーをアームシリンダ3bが伸長する向き、つまりアームクラウド方向にフルに操作した場合、アームシリンダ3b駆動用の流量制御弁6b,6jが
図1中で下方向に切り換わり、
図2Bに示したように、流量制御弁6b,6jのスプールストロークはS2以上となり、流量制御弁6bのメータイン通路の開口面積はA1に保たれ、流量制御弁6jのメータイン通路の開口面積はA2となる。
【0151】
上記(d)で説明したように、アームシリンダ3bのボトム側の負荷圧が流量制御弁6bの負荷ポートを介して第2負荷圧検出回路132によって最高負荷圧Plmax2として検出され、アンロード弁215が第2圧油供給路205の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧Plmax2が差圧減圧弁211に導かれることによって、LS差圧Pls2が出力され、レギュレータ112の低圧選択弁112aに導かれる。
【0152】
一方、アームシリンダ3bのボトム側の負荷圧は、流量制御弁6jの負荷ポートを介して第1負荷圧検出回路131によって最高負荷圧Plmax1(=Plmax2)として検出され、アンロード弁115と差圧減圧弁111に導かれる。最高負荷圧Plmax1がアンロード弁115に導かれることによって、アンロード弁115は第1圧油供給路105の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧Plmax1が差圧減圧弁111に導かれることによって、LS差圧Pls1(=Pls2)がレギュレータ112の低圧選択弁112aに導かれる。
【0153】
アームクラウド起動時の操作レバー入力直後は、アームシリンダ3bの負荷圧が第1及び第2圧油供給路105,205に伝わり両者の圧力の差は殆ど無くなるから、LS差圧Pls1,Pls2は、共に、ほぼゼロに等しくなる。よって、低圧選択弁112aは、Pls1とPls2のいずれかを低圧側のLS差圧Pls12として選択し、Pls12がLS制御弁112bに導かれる。この場合、上記のようにPls1,Pls2は、共に、ほぼゼロに等しく、Pls12<Pgrであるので、LS制御弁112bは
図1中で右方向に切り換わり、LS制御ピストン112cの圧油をタンクに放出する。このためメインポンプ102の容量(流量)は増加してゆき、その流量増加はPls12=Pgrになるまで継続する。これによりメインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bからアームシリンダ3bのボトム側にアーム操作レバーの入力に応じた流量の圧油が供給され、アームシリンダ3bは第1及び第2吐出ポート102a,102bからの合流した圧油により伸長方向に駆動される。
【0154】
また、このときも、メインポンプ202に係わるアクチュエータは駆動されていないので、全ての操作レバーが中立である場合と同様、第2可変減圧弁112qは
図8の点aの状態、第1可変減圧弁112gは
図9の点Aの状態となり、P3'jに減圧された圧力は第1可変減圧弁112gの出力圧P3outとしてトルクフィードバックピストン112fに導かれる。ここで、P3'jはP3min以下の極めて低い圧力であり、
図3Aのメインポンプ102の最大トルクは
図3Aの曲線502のT12maxに維持される。
【0155】
これにより第1トルク制御部は、メインポンプ102の吸収トルクが最大トルクT12maxを超えないようにメインポンプ102の傾転角を制御し、アームシリンダ3bの負荷が増加した場合に原動機1の停止(エンジンストール)を防止することができる。
【0156】
(f)水平均し作業をした場合
水平均し作業はブーム上げ微操作とアームクラウドのフル操作との組み合わせとなる。アクチュエータとしては、アームシリンダ3bが伸長し、ブームシリンダ3aが伸長する動作である。
【0157】
水平均し作業では、ブーム上げは微操作なので、上記(b)で説明したように、ブームシリンダ3aのメイン駆動用の流量制御弁6aのメータイン通路の開口面積はA1以下となり、アシスト駆動用の流量制御弁6iのメータイン通路の開口面積はゼロに維持される。ブームシリンダ3aの負荷圧は
流量制御弁6aの負荷ポートを介して第3負荷圧検出回路133によって最高負荷圧Plmax3として検出され、アンロード弁315が第3圧油供給路305の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧Plmax3がメインポンプ202のレギュレータ212にフィードバックされ、メインポンプ202の容量(流量)が流量制御弁6aの要求流量(開口面積)に応じて増加し、メインポンプ202の第3吐出ポート202aからブーム操作レバーの入力に応じた流量の圧油がブームシリンダ3aボトム側に供給され、ブームシリンダ3aは第3吐出ポート202aからの圧油により伸長方向に駆動される。
【0158】
一方、アーム操作レバーはフル入力となるので、上記(e)で説明したように、アームシリンダ3bのメイン駆動用の流量制御弁6bとアシスト駆動用の流量制御弁6jのそれぞれのメータイン通路の開口面積はA1,A2となる。アームシリンダ3bの負荷圧は、流量制御弁6b,6jの負荷ポートを介して第1及び第2負荷圧検出回路131,132によって最高負荷圧Plmax1,Plmax2(Plmax1=Plmax2)として検出され、アンロード弁115,215がそれぞれ第1及び第2圧油供給路105,205の圧油をタンクに排出する油路を遮断する。また、最高負荷圧Plmax1,Plmax2がメインポンプ102のレギュレータ112にフィードバックされ、メインポンプ102の容量(流量)が流量制御弁6b,6jの要求流量に応じて増加し、メインポンプ102の第1及び第2吐出ポート102a,102bからアームシリンダ3bのボトム側にアーム操作レバーの入力に応じた流量の圧油が供給され、アームシリンダ3bは第1及び第2吐出ポート102a,102bからの合流した圧油により伸長方向に駆動される。
【0159】
ここで、水平均し作業の場合、通常アームシリンダ3bの負荷圧は低く、ブームシリンダ3aの負荷圧は高いことが多い。本実施の形態では、水平均し作業では、ブームシリンダ3aを駆動する油圧ポンプはメインポンプ202、アームシリンダ3bを駆動する油圧ポンプはメインポンプ102というように、負荷圧の異なるアクチュエータを駆動するポンプが別個になるので、1つのポンプで負荷圧の異なる複数のアクチュエータを駆動する従来技術の1ポンプロードセンシングシステムの場合のように、低負荷側の圧力補償弁7bでの絞り圧損による無駄なエネルギー消費を発生させることはない。
【0160】
(f−1)トルクフィードバック回路112vの動作
水平均し作業のブーム上げ微操作におけるLS駆動圧力Px3が
図8の点b1のPx3bで、メインポンプ202の吐出圧が
図8のP3gであるとすると、(b−1)で説明したように、LS駆動圧力Px3bは第2可変減圧弁112qによって減圧されないため、第1可変減圧弁112gは
図9の直線G4の特性(第1減圧特性)となり、メインポンプ202の吐出圧P3gは第1可変減圧弁112gの直線G4の減圧特性によって圧力P3'bに減圧される(点B)。
【0161】
P3'bに減圧された圧力は第1可変減圧弁112gの出力圧P3outとしてトルクフィードバックピストン112fに導かれる。トルクフィードバックピストン112fにおいては、P3'bとトルクフィードバックピストン112fの受圧面積との積で決まる力がメインポンプ102の容量(傾転角)を小さくする方向に作用する。
【0162】
ここで、メインポンプ202が
図3Bの点X2で動作しているとすると、トルクフィードバック回路112vは、メインポンプ202の吐出圧P3gを、点X2の吸収トルクT3gを模擬するよう補正して出力し、トルクフィードバックピストン112fはメインポンプ102の最大トルクを、
図3Aの曲線502のT12maxから曲線504のT12max−T3gsへと減少させる(T3gs≒T3g)。
【0163】
これにより、水平均し作業でアーム操作レバーをフル操作した場合でも、メインポンプ102の吸収トルクがT12max−T3gsを超えないようにメインポンプ102の傾転角を制御する全トルク制御が行われるため、メインポンプ102,202の吸収トルクの合計は最大トルクT12maxを超えないようになり、原動機1の停止(エンジンストール)を防止することができる。
【0164】
(g)吊り荷作業でブーム上げ微操作をした場合
吊り荷作業とは、バケットに設けたフックにワイヤを取り付けて、そのワイヤで荷を吊り上げて別の場所に移動する作業である。この吊り荷作業でブーム上げ微操作を行う場合も、上記(b)で説明したように、レギュレータ212のロードセンシング制御によりメインポンプ202の第3吐出ポート202aからブームシリンダ3aボトム側に圧油が供給され、ブームシリンダ3aは伸長方向に駆動される。ただし、吊り荷作業におけるブーム上げは極めて慎重を要する作業であるため、操作レバーの操作量は極めて少なく、流量制御弁の要求流量がメインポンプ202の最小傾転角q3minで得られる最少流量で十分である場合がある。この場合、Pls3>Pgrで、LS制御弁212bは
図1の図示左側の位置にあり、LS駆動圧力Px3は、パイロットリリーフバルブ32によって生成される一定のパイロット一次圧Ppilotと等しくなるので、上記(a)の全ての操作レバーが中立にある場合と同様、トルクフィードバック回路112vの第1可変減圧弁112gは、
図9の直線Zの特性(第2減圧特性)となる。
【0165】
ここで、吊り荷作業の荷の重量は重く、メインポンプ202の吐出圧P3は例えば
図9のP3lのように高圧となる場合が多い。また、吊り荷作業では、ブーム上げ微操作と同時に旋回モータ3cを駆動して吊り荷の旋回方向の位置を変えたり、アームシリンダ3bを駆動して吊り荷の前後方向の位置を変えることがある。このようなブーム上げ微操作と旋回或いはアームの複合動作では、メインポンプ102からも圧油が吐出され、メインポンプ102とメインポンプ202の両方で原動機1の馬力が消費される。
【0166】
本実施の形態において、もし、トルクフィードバック回路112vに第2可変減圧弁112qが設けられていない場合は、
図9の直線G5で示すように、トルクフィードバック回路112vの出力圧は、第1可変減圧弁112gの出力圧P3'aに制限され、トルクフィードバック回路112vは
図9のP3lよりも低い圧力P3'aを出力する。この場合、メインポンプ202の吸収トルクをメインポンプ102側に正確にフィードバックすることができなくなり、メインポンプ102とメインポンプ202の合計の消費トルクが過大となって、エンジンストールが発生するおそれがある。
【0167】
本実施の形態では、第2可変減圧弁112qが設けられているので、メインポンプ202の吐出圧P3が
図9のP3lのように高圧となる場合でも、トルクフィードバック回路112vは直線Z上の点Lに対応した高めの圧力が出力され、その分、メインポンプ102の最大トルクが減少するよう制御される。このようにメインポンプ202の吸収トルクがメインポンプ102側に正確にフィードバックされるため、吊り荷作業でブーム上げ微操作と旋回或いはアームの複合動作を行った場合でも、メインポンプ102とメインポンプ202の合計の消費トルクが過大とならず、エンジンストールを防止することができる。
【0168】
〜効果〜
以上のように構成した本実施の形態においては、
図3Bの点X1のようにメインポンプ202(第2油圧ポンプ)がトルク制御の制限を受け、トルク制御の最大トルクT3maxで動作する運転状態にあるときは勿論のこと、メインポンプ202がトルク制御の制限を受けず、ロードセンシング制御によって容量制御を行う運転状態にある場合であっても、トルクフィードバック回路112vによりメインポンプ202の吐出圧P3がメインポンプ202の吸収トルクを模擬するよう補正され、この補正した吐出圧分、トルクフィードバックピストン112f(第3トルク制御アクチュエータ)により最大トルクT12maxが減少するよう補正される。このようにメインポンプ202の吸収トルクは純油圧的な構成(トルクフィードバック回路112v)で精度良く検出され、その吸収トルクをメインポンプ102側にフィードバックすることで、全トルク制御を精度良く行い、原動機1の定格出力トルクTerateを有効利用することができる。
【0169】
図10は、本実施の形態の上述した効果を説明するための比較例を示す図である。この比較例は、
図1に示す本発明の第1の実施の形態におけるレギュレータ112のトルクフィードバック回路112vを減圧弁112w(特許文献2に記載の減圧弁14に相当)に置き換えたものである。
【0170】
図10に示す比較例では、減圧弁112wの設定圧は一定であり、この設定圧は、
図1の第1可変減圧弁112gの設定圧の初期値と同じ値に設定されている。この場合、減圧弁112wの特性は
図9の直線G1のようになり、メインポンプ202の吐出圧P3が上昇するとき、減圧弁112wの出力圧は、LS駆動圧力Px3如何に係わらず、
図9の直線G0,G1のように変化する。
【0171】
この比較例において、例えばブーム上げのフル操作(c)のように、メインポンプ202が
図3Bの最大トルクT3maxの曲線602上の点X1で動作しLS駆動圧力Px3がタンク圧であるときは、減圧弁112wは、
図1のトルクフィードバック回路112vの第1可変減圧弁112gと同様、メインポンプ202の吐出圧を
図9の直線G1上の圧力P3'eに補正して出力し、トルクフィードバックピストン112fは、メインポンプ102の最大トルクを、
図3Aに曲線503で示すようにT12maxからT12max−T3maxへと減少させ、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0172】
しかし、水平均し作業のように、メインポンプ202が
図3Bの点X2で動作しLS駆動圧力Px3がパイロット一次圧Ppilotとタンク圧の中間の圧力にあるときは、メインポンプ202が点X1で動作するときと同様、減圧弁112wは、メインポンプ202の吐出圧を
図9の直線G1上の圧力P3'eに補正して出力する。このためメインポンプ202の吸収トルクはT3maxよりも小さいT3gであるのにも係わらず、トルクフィードバックピストン112fは、メインポンプ102の最大トルクを
図3Aに曲線503で示すように、T12maxからT12max−T3maxへと必要以上に減少させてしまう。
【0173】
本実施の形態では、水平均し作業の(f−1)で説明したように、メインポンプ202が
図3Bの点X2で動作しLS駆動圧力Px3がパイロット一次圧Ppilotとタンク圧の中間の圧力にあるときは、前述したように、トルクフィードバック回路112vは、例えば
図9の直線G2の特性となり、トルクフィードバック回路112vは、メインポンプ202の吐出圧を、メインポンプ202の吸収トルク(例えばT3g)を模擬するよう補正して出力し(例えば
図9のP3'g)、トルクフィードバックピストン112fはメインポンプ102の最大トルクを、
図3Aの曲線502のT12maxから曲線504の吸収トルク(例えばT12max−T3gs)へと減少させる(T3gs≒T3g)。その結果、メインポンプ202が利用できる吸収トルクは比較例のT12max−T3maxよりも多くなる。
【0174】
このように本実施の形態では、トルクフィードバック回路112vによってメインポンプ202の吸収トルクT3max或いはT3gを精度良くメインポンプ102側にフィードバックすることで、原動機1の停止(エンジンストール)を防止する全馬力制御を精度良く行うことができ、原動機1が有する出力トルクTerateを有効に利用することができる。
【0175】
また、本実施の形態では、第2可変減圧弁112qが設けられているので、メインポンプ202の吐出圧P3が
図9のP3lのように高圧となる場合でも、トルクフィードバック回路112vは直線Z上の点Lに対応した高めの圧力を出力し、その分、メインポンプ102の最大トルクが減少するよう制御される。このようにメインポンプ202が最小傾転角で動作するときも、メインポンプ202の吸収トルクがメインポンプ102側に正確にフィードバックされるため、吊り荷作業でブーム上げ微操作と旋回或いはアームの複合動作を行った場合に、メインポンプ102とメインポンプ202の合計の消費トルクが過大とならず、エンジンストールを防止することができる。
【0176】
<その他>
以上の実施の形態は一例であり、本発明の精神の範囲内で種々の変形が可能である。
【0177】
例えば、上記実施の形態では、LS駆動圧力Px3を第2可変減圧弁112qの入力ポートに導く油路112kに、LS駆動圧力Px3が振動的である場合にその振動を吸収して圧力を安定させるための絞り112rを設けたが、これはLS駆動圧力Px3が振動的である場合を想定しており、LS駆動圧力Px3の振動が第1及び第2可変減圧弁112g,112qの出力の安定性に大きな影響を及ぼさない程度である場合は、絞り112rを省略してもよい。
【0178】
また、上記実施の形態では、メインポンプ202の吐出圧を第1及び第2可変減圧弁112g,112qに導く油路112jに絞りを設けていないが、油路112kに絞り112rを設けただけでは第1及び第2可変減圧弁112g,112qの出力が安定しない場合は、油路112jにも絞りを設けてもよい。
【0179】
上記実施の形態では、第1油圧ポンプが第1及び第2吐出ポート102a,102bを有するスプリットフロータイプの油圧ポンプ102である場合について説明したが、第1油圧ポンプは、単一の吐出ポートを有する可変容量型の油圧ポンプであってもよい。
【0180】
また、第1ポンプ制御装置は、ロードセンシング制御部(低圧選択弁112a、LS制御弁112b及びLS制御ピストン112c)とトルク制御部(トルク制御ピストン112d,112eとバネ112u)を有するレギュレータ112であるとしたが、第1ポンプ制御装置におけるロードセンシング制御部は必須ではなく、操作レバーの操作量(流量制御弁の開口面積−要求流量)に応じて第1油圧ポンプの容量を制御することができるものであれば、いわゆるポジティブ制御或いはネガティブ制御等、その他の制御方式であってもよい。
【0181】
更に、上記実施の形態のロードセンシングシステムは一例であり、ロードセンシングシステムは種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、ポンプ吐出圧と最高負荷圧を絶対圧として出力する差圧減圧弁を設け、その出力圧を圧力補償弁に導いて目標補償差圧を設定しかつLS制御弁に導き、ロードセンシング制御の目標差圧を設定したが、ポンプ吐出圧と最高負荷圧を別々の油路で圧力制御弁やLS制御弁に導くようにしてもよい。