(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、150℃以上の高温下での伸長疲労耐久性に優れた車両防振部品用のミラブルシリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、シリコーンゴム組成物にホウ酸またはホウ酸の前駆体またはホウ酸の誘導体またはそれらの組み合わせを適切な割合で添加すると、硬さの上昇や切断時伸びの大幅な低下を伴わずに、150℃以上の高温下での伸長疲労耐久性が飛躍的に向上するという予期せぬ効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1](a)シロキサンユニットの平均組成が、下記一般式(1)
R
1aSiO
(4−a)/2 (1)
(式(1)中、R
1は同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、全R
1基中の0.001〜20モル%はアルケニル基、aは1.90〜2.05の正数である。)
で示されるオルガノポリシロキサン 100質量部、
(b)BETの比表面積が少なくとも50m
2/gである補強性シリカ、10〜100質量部、
(c)酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸前駆体、ホウ酸塩又は部分的に加水分解されたホウ酸塩から選択される1種または2種以上のホウ素化合物 0.005〜0.
2質量部、
(d)シリコーンゴム用硬化剤 有効量、
を含有することを特徴とする車両防振部品用ミラブルシリコーンゴム組成物、
[2](e)そのシロキサンユニットの平均組成が、下記一般式(2)
R
2bSiO
(4−b)/2 (2)
(式(2)中、R
2は炭素数1〜10の同一又は異種の非置換のアルキル基、bは1.90〜2.05の正数である。)で示されるアルキルポリシロキサンをさらに含有する[1]に記載の車両防振部品用ミラブルシリコーンゴム組成物、
[3]車両が、自動車または走行式建設機械または走行式農業機械である[1]または[2]のいずれかに記載の車両防振部品用ミラブルシリコーンゴム組成物、
[4][1]〜[3]のいずれかに記載のミラブルシリコーンゴム組成物の硬化物からなる車両防振部品用ゴム部材、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物の硬化物は、硬さや引張強さ、切断時伸びなどの機械的特性を維持しながら、高温下での防振特性、特に150℃以上の高温下での伸長疲労耐久性に優れるもので、高温で使用される車両防振部品を提供するためのシリコーンゴム組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき、さらに詳しく説明する。
本発明の(a)成分は、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンであって、シロキサンユニットの平均組成が、下記一般式(1)
R
1aSiO
(4−a)/2 (1)
(式(1)中、R
1は同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、全R
1基中の0.001〜20モル%はアルケニル基、aは1.90〜2.05の正数である。)で示されるオルガノポリシロキサンである。本発明に用いる(a)成分のオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に直結したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有することが好ましい。
【0012】
オルガノポリシロキサンの重合度は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の分子量から計算される数平均重合度として、100〜100,000であり、ミラブルゴムとしての取り扱い易さから3,000〜50,000の範囲であることが好ましく、4,000〜20,000の範囲であることが特に好ましい。
【0013】
一般式(1)におけるR
1としては、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基から選ばれ、アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2−エチルへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。シクロアルキル基として、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。アリール基として、具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基として、具体的には、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等が挙げられる。アルケニル基として、具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、へキセニル基、シクロへキセニル基等が挙げられる。また、これらの炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基などによって置換されていてもよく、具体的には、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、シアノエチル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノ置換アルキル基等が挙げられる。一般式(1)のR
1として不飽和基を含有しない炭化水素基の中で、経済性に優れ、製造が容易であるという点からメチル基が好ましいが、硬化後の組成物に耐寒性や特殊な光学的性質が求められる時はフェニル基を、また耐油性が求められるときは、3,3,3−トリフルオロプロピル基などを任意に選択して使用することができる。一般式(1)におけるR
1のアルケニル基としては、経済性に優れ、製造が容易であるという点からビニル基が好ましい。
【0014】
さらに、(a)成分は硬化型ポリオルガノシロキサンのベースポリマーとなるもので、架橋反応のためにアルケニル基を含むことが必須であり、一般式(1)の全R
1基中の0.001〜20モル%はアルケニル基であることを要する。(a)成分中、アルケニル基を含むシロキサン単位は、ポリオルガノシロキサンの分子鎖の末端、途中のいずれに存在しても良い。
【0015】
(a)成分のポリオルガノシロキサンは当業者にとって公知の方法によって製造されるものであっても良く、ポリオルガノシロキサンは直鎖状でも、分岐状であっても、レジン状のいずれでも良く、またこれらの混合物であっても良い。合成が容易で、流動性が良く、かつ、弾性を有するシリコーンゴムが得られる点で、直鎖状のポリオルガノシロキサンが好ましい。また、上記オルガノポリシロキサンは、単独で用いても、重合度や分子構造の異なる2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0016】
(b)成分はシリコーンゴムに優れた機械的特性を付与する補強性シリカであり、BET法による比表面積は、50m
2/g未満であると補強効果が不十分となるため50m
2/g以上であることが必要で、好ましくは100〜400m
2/gである。
【0017】
補強性シリカには、当業者に公知の方法により製造されたものや、従来からシリコーンゴム組成物の充填剤として使用されているものが使用でき、その種類は特に限定されない。例えばケイ酸ソーダと鉱酸をアルカリ側で反応させ、ろ過しやすいシリカを析出させる沈降法により合成される湿式シリカ、気化させた四塩化ケイ素と水素を混合させたものを1000〜1200℃以上にて空気中で燃焼させ、10nm程度の非常に微細な粒子を得る燃焼法により合成される乾式シリカ、乾式シリカを疎水化表面処理剤および水蒸気を不活性のキャリアーガスとともに高温加熱し、乾式シリカ表面の親水性であるシラノール基と疎水化表面処理剤を反応させ合成される疎水性乾式シリカ等が挙げられる。疎水化表面処理剤としてはオルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等が挙げられる。本発明では、シリカは乾式シリカであることが好ましく、特に疎水性乾式シリカが好適に用いられる。特に電気自動車用の部品では、電気特性の要求が厳しいため、湿式シリカよりも体積抵抗率の高い疎水性乾式シリカを用いることが好ましい。これらのシリカは単独でも2種以上を併用しても良い。
【0018】
これらのシリカ充填剤の添加量は、通常、(a)成分100質量部に対して、10〜100質量部の範囲であり、10質量部以下ではシリコーンゴム硬化物の機械的物性、特に引裂強さが低下し、100質量部以上ではシリコーンゴム硬化物の機械的物性、特に切断時伸びが不十分となる。好ましくは10〜80質量部、さらに好ましくは20〜70質量部の範囲で使用される。
【0019】
(c)成分のホウ素化合物は150℃以上の高温下での伸長疲労耐久性を向上させる本発明の必須成分である。本発明のホウ素化合物は、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸前駆体、ホウ酸塩又は部分的に加水分解されたホウ酸塩から選択される1種または2種以上である。具体的には、無水ホウ酸と称されることもある酸化ホウ素、オルトホウ酸、メタホウ酸及びテトラホウ酸等のホウ酸、ホウ酸前駆体は、例えば、トリメトキシボロキシン等の、加水分解してホウ酸となる化合物、並びにホウ酸塩、例えば、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリシクロヘキシル、ホウ酸トリトリル、ホウ酸トリベンジル、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸トリアリル、ホウ酸トリドデシル、ホウ酸トリオクタデシル(trioctadecyl)、トリ第三級ブチルホウ酸塩、フェニルエチレンホウ酸塩、シクロヘキシルエチレンホウ酸塩、シクロヘキシルフェニレンホウ酸塩、ホウ酸グリセロール、トリス−トリメチルシリルホウ酸塩、ジアンモニウムテトラボレート、アンモニウムペンタボレート、ジアンモニウムオクタボレート、四ホウ酸ナトリウム十水和物(ホウ砂)、五ホウ酸カリウム、二ホウ酸マグネシウム、一ホウ酸カルシウム、三ホウ酸バリウム及びメタホウ酸亜鉛であり得る。ホウ酸塩は、単なるホウ酸塩、又は部分的に加水分解されたホウ酸塩であり得る。本発明の(c)成分としては、特にホウ酸が望ましい。
【0020】
(c)成分の配合量は、(a)成分100質量部に対して、0.005〜0.5質量部であり、0.005質量部より少ないと伸長疲労耐久性を向上させる効果が不十分であり、0.5質量部より多いと耐熱性に悪影響を与える。(c)成分の配合量は、好ましくは0.01〜0.3質量部、より好ましくは0.05〜0.2質量部である。
【0021】
(d)成分はシリコーンゴム用硬化剤であり、既知の有機過酸化物硬化剤、または、付加反応硬化剤であり、有機過酸化物硬化剤と付加反応硬化剤は、各々単独で、又は併用しても良い。
【0022】
有機過酸化物硬化剤としては、有機過酸化物硬化型ポリオルガノシロキサン組成物において、(a)成分の架橋反応を促進するための触媒として使用されるものであればよく、従来公知のものを使用することができる。具体的には、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシヘキセン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどを挙げることができる。有機過酸化物の種類ならびに添加量は、活性−O−O−の量や分解温度に応じて選択することができ、通常の添加量は(a)成分100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。
【0023】
付加反応硬化剤の場合は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと付加反応触媒を組み合わせて用いられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(a)成分のアルケニル基と付加反応して、本発明の組成物をゴム弾性体又はゲル状物へと硬化させるための成分である。この成分は、1分子中にSi−H結合を2個以上有するものであれば、その分子構造に特に制限はなく、従来公知の直鎖状、環状、分岐状のものが使用され得る。
【0024】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、ケイ素原子結合水素原子以外の、ケイ素原子に結合するオルガノ基は、脂肪族不飽和基を含まない非置換又は置換の1価炭化水素基であって、前記(a)成分の一般式(1)におけるR
1と同様のものが挙げられるが、耐熱性などの点でメチル基及び/又はフェニル基が好ましい。好ましいポリオルガノハイドロジェンシロキサンの例として、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)SiO
3/2単位とからなる共重合体などやこれらの例示化合物において、メチル基の一部又は全部をエチル基、プロピル基等の他のアルキル基、フェニル基等のアリール基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基などで置換したもの等が挙げられる。
【0025】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであっても良いが、直鎖状が好ましい。1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は2〜1,000、好ましくは3〜500、より好ましくは3〜300、特に好ましくは4〜150程度のものを使用することができ、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは当業者にとって公知の方法によって製造される。
【0026】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの使用量は、(a)成分のR
1中のアルケニル基1個に対し、ケイ素原子に結合した水素原子が0.5〜7.0個、好ましくは0.7〜5.0個、さらに好ましくは0.8〜3.0個となるような量が良い。水素原子が0.5個未満では組成物の硬化が十分に進行せず、また7.0個を超えると硬化時に発泡しやすく、さらに硬化後の物性、特に耐熱性の低下が大きくなるからである。
【0027】
付加反応触媒は、(a)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基と上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンのSi−H基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒であり、この付加反応触媒としては、金属及びその化合物、例えば白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム及びイリジウムが挙げられる。これらヒドロシリル化触媒の中で、特に好ましくは白金又は白金系化合物である。
【0028】
白金化合物としては、具体的には、白金黒、白金ハロゲン化物(例えば、PtCl
4、H
2PtCl
4・6H
2O、H
2PtCl
6・6H
2O、Na
2PtCl
4・4H
2O、Na
2PtCl
6・4H
2Oとシクロヘキサンからなる反応生成物)、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、白金−アルコラート錯体、白金−エーテル錯体、白金−アルデヒド錯体、白金−ケトン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、ビス−(γ−ピコリン)−白金ジクロライド、トリメチレンジピリジン−白金ジクロライド、ジシクロペンタジエン−白金ジクロライド、シクロオクタジエン−白金ジクロライド、シクロペンタジエン−白金ジクロライド)、ビス(アルキニル)ビス(トリフェニルホスフィン)白金錯体、ビス(アルキニル)(シクロオクタジエン)白金錯体などが挙げられる。
【0029】
また、ヒドロシリル化触媒は微粒子固体等にマイクロカプセル化した形で使用することもできる。この場合、触媒を含有し、かつポリオルガノシロキサン中に不溶の微粒子固体は、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエステル樹脂又はシリコーン樹脂)である。また、ヒドロシリル化触媒は包接化合物の形で、例えば、シクロデキストリン内で使用することも可能である。なお、付加反応触媒成分のヒドロシリル化触媒は有効量、即ち、いわゆる触媒量で用いられ、金属換算で通常(a)成分に対し0.1〜1000ppmとなる範囲であり、硬化性及び硬化後の物理的特性を考慮した場合、好ましくは0.5〜200ppmの範囲である。
【0030】
本発明の組成物には、本発明の効果を助長させるために、(e)成分として、そのシロキサンユニットの平均組成が一般式(2)で示されるような、脂肪族不飽和基を有しないアルキルポリシロキサンを配合することが好ましい。
R
2bSiO
(4−b)/2 (2)
(式(2)中、R
2は炭素数1〜10の同一又は異種の非置換のアルキル基、bは1.90〜2.05の正数である。)
脂肪族不飽和基を有しないアルキルポリシロキサンの効果は、本発明の組成物を有機過酸化物硬化剤を用いて硬化する場合に特に顕著であり、これによって、切断時伸びを向上させると共に、伸長疲労耐久性を向上させることができる。式(2)中、R
2として、一般式(1)のR
1で例示したアルキル基を挙げることができる。(e)のアルキルポリシロキサンは、直鎖状、環状あるいは分岐状であってもよいが直鎖状であることが好ましい。その重合度は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の分子量から数平均重合度として求めたもので、100〜100,000であり、硬化物の物性を損なうことなく所期の効果を挙げる点から高重合度の3,000〜50,000の範囲であることが好ましく、4,000〜20,000の範囲であることが特に好ましい。
【0031】
本発明の(a)成分〜(d)成分以外に、必要に応じてシリコーンゴム組成物の添加剤として公知の各種添加剤を使用することができる。これらの添加剤には、離型剤、充填剤用分散剤、顔料、反応抑制剤、耐熱付与剤、難燃剤、防腐剤、安定剤などがある。これ以外であっても、本発明の効果を妨げないものであれば各種添加剤を必要に応じて、さらに添加することは任意である。
【0032】
例えば、物理的性質の改善などのために種々の無機質又は有機質充填剤を使用することは何らさしつかえない。この充填剤としては、けいそう土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム(タルク)、ケイ酸アルミニウム(クレー)、珪藻土、メタケイ酸カルシウム、ゼオライト、ハイドロタルサイト、グラファイト、カーボンブラック、石英、アルミナなどが挙げられる。これら充填剤などの使用量は本発明の目的を損なわないかぎり任意である。
【0033】
反応抑制剤としては、アセチレン系化合物、ヒドラジン類、トリアゾール類、フォスフィン類、メルカプタン類、などがあり、アセチレンアルコール、ビニル基含有ポリオルガノポリシロキサン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタールアミド、トリアリルホスフェート、アセチレン基含有シラン、シロキサンなどが例示される。
【0034】
顔料としては、酸化チタン、アルミナケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、希土類酸化物、セリウムシラノレート、アルミニウムオキシド、アルミニウムヒドロキシド、チタンイエロー、クロムイエロー、コバルトブルーなどであり、これらの混合物であってもよい。
【0035】
さらに耐熱付与剤としては、水酸化セリウム、酸化セリウム、酸化鉄、ヒューム二酸化チタンなどが例示され、これらの混合物であってもよい。
【0036】
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸亜鉛、シリカ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、セラミック粉、シリコーンゴム硬化物の粉砕粉、ハロゲン化合物、リン化合物などが例示され、これらの混合物であってもよい。
【0037】
本発明の組成物を金属部品や他の樹脂などと接着する要求がある場合は、必要に応じてシリコーンゴム組成物の接着付与剤として公知の各種添加剤、例えばカップリング剤などを使用しても良い。
【0038】
本発明のシリコーンゴム組成物は、(a)成分と(b)成分と(c)成分をプラネタリーミキサーやニーダーなどの混練機能を有する装置を使用して均一に混合した後、必要に応じて100〜200℃の範囲で1〜4時間熱処理した後、室温で(d)成分を混合して得ることができる。
【0039】
成形方法は、シリコーンゴム組成物の粘度により自由に選択することができ、注入成形、圧縮成形、射出成形、押出成形、トランスファー成形または溶剤に溶かしてディップ成形、コーティング等によって成形することができる。その硬化条件は、通常60〜200℃で10秒〜24時間の範囲内で加熱成形することができる。
【0040】
本発明の車両とは、自動車、バイク、原動機付自転車、軽車両、トロリーバス、鉄道車両など、旅客・貨物を輸送するための車であり、自動車とは、原動機の動力によって陸上を走行する車両のうち、軌条によらずに運転者の操作で進路と速度を変えることができる乗り物で、乗用自動車の他に特殊自動車を含み、特殊自動車とは、特殊な用途のために特殊な形状構造をした自動車であり、例えば、作業機を取り付けて、その作業機を使うことを目的とする建設機械や農業機械が該当する。
【0041】
本発明によるシリコーンゴム組成物の与える硬化物は高温下での伸長疲労耐久性に優れる。そのため、該硬化物は高温下で使用される車両防振部品用ゴム部材として使用することができる。高温下で使用される車両防振部品としては、エンジンマウント、ラジエーターマウント、マフラーハンガー(マフラーサポート)、各種ダイナミックダンパーや、車体に組み込まれた建設機械や農業機械部分においても高温に晒される防振部品を含む。
【0042】
さらには、現在は高温では使用されていないが、デフマウント、センターベアリングラバー、クラッチダンピングラバー、プロペラシャフトカップリング、サスペンションブッシュ、サスペンションマウント、サブフレームマウント、ボディマウント、ドアストッパー、バンプストッパー(ヘルパー)、および、エンジン・クランクシャフト用トーショナルダンパ(クランクダンパ、ダンパープーリー)、電気自動車用バッテリーや太陽電池部品の防振部品等も、使用温度が上がれば本発明の車両防振部品に含まれる。さらに、モーターで駆動する電気自動車についても、防振機能を有する類似の部品で、高温下で使用されるものは本発明の車両防振部品に含まれる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、各例における部は、いずれも質量部を示す。
【0044】
<ベース組成物の調製>
(a)〜(c)、(e)成分として、以下のものを用いた。
(a)ビニル基含有オルガノポリシロキサン
(CH
3)
2SiO単位99.95モル%、(CH
3)(CH
2=CH)SiO単位0.05モル%からなり、分子鎖両末端が(CH
2=CH)(CH
3)
2SiO
1/2単位で封鎖された平均重合度が約6,000のビニル基含有直鎖状ジメチルポリシロキサン生ゴム、
(b)シリカ
BET吸着法による比表面積が200m
2/gの乾式シリカ、
(c)ホウ酸のマスターバッチ
平均重合度が約6,000のビニル基含有直鎖状ジメチルポリシロキサン生ゴム100部に、ホウ酸13部、BET吸着法による比表面積が150m
2/gの乾式シリカ46部、カルシウムステアレート5部とイオン交換水30部配合したものを、ニーダーで均一に混合し、窒素雰囲気下、150℃で3時間熱処理して、イオン交換水を除去したものを使用した。
(e)ビニル基を有しないオルガノポリシロキサン
(CH
3)
2SiO単位からなり、分子鎖両末端が(CH
3)
3SiO
1/2単位で封鎖された平均重合度が約6,000のビニル基を含有しない直鎖状ジメチルポリシロキサン生ゴム、
上記の成分(a)、(b)及び配合条件によっては(e)をニーダーで均一に混合し、150℃で2時間熱処理を行い、80℃まで冷却した後に(c)を添加して、さらに均一に混合してベース組成物を作成した。
【0045】
<試験用シートの作成>
ベース組成物の100部に対して(d)硬化剤、2,5−ジメチル−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサン0.6部を2本ロールで混練後添加し、均一に混合した後、170℃/10分間プレスキュアーを行い、次いでギヤーオーブン内で200℃で4時間ポストキュアーを行い、2mm厚の試験用シートを作製した。
【0046】
<物性測定>
試験用シートは、JIS K6249に基づいて、硬さ(デュロメータタイプA)、引張強さ、切断時伸び、引裂強さ(クレセント型)を測定した。
【0047】
<伸長試験>
上記で得られた試験用シートについて、JIS−3号ダンベルとし、恒温槽付デマッチャ屈曲試験機((株)東洋精機製作所製)で0−125%伸長疲労試験を行った。試験条件は、雰囲気温度:150℃、周波数:5Hz、測定値:n=5で破断時までの回数の中央値とし、50,000回以上破断しなかった場合を合格とした。
【0048】
(実施例1、2及び比較例1,2)
表1に、実施例1、2及び比較例1、2の(a)〜(e)の配合組成と、物性測定及び伸長疲労試験の結果を示した。実施例におけるホウ素化合物の配合量は、(a)100部に対して、実施例1は0.16部、実施例2は0.17部に相当する。比較例1は硬さ50度で処方したゴム組成物である。伸長疲労試験では1300回ですべて破断した。比較例2では、アルキル基のみを有する直鎖状のジメチルポリシロキサンを配合したものであるが、切断時伸びの向上によって破断回数に若干の改善が見られる。実施例1は、ホウ酸を添加したものであるが、比較例1の他の物性にほとんど影響を与えずに、伸長疲労試験の結果を大幅に改善することができた。さらに実施例2において、比較例2と同様に切断時伸びの向上による効果が認められた。
【0049】
【表1】