(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パワー透過スペクトルが前記ファイバブラッググレーティングに印加された摂動に反応することにより、前記ファイバブラッググレーティングを透過する光に前記摂動を示す位相変化が生じ、前記少なくとも1つの光検出器は、前記位相変化に反応して前記摂動を示す信号を生成するように構成される、請求項1に記載の光デバイス。
前記実質的に周期的な屈折率変調の周期は、前記ファイバブラッググレーティングの全長に沿って変動し、したがって前記ファイバブラッググレーティングはチャープグレーティングである、請求項1に記載の光デバイス。
前記実質的に周期的な屈折率変調の振幅は、前記ファイバブラッググレーティングの全長に沿って変動し、したがって前記ファイバブラッググレーティングはアポダイズグレーティングである、請求項1に記載の光デバイス。
前記狭帯域光源、前記第1の光路、および前記第2の光路と光通信状態にある第1のファイバカプラをさらに備え、前記狭帯域光源によって発生される光は、前記第1のファイバカプラによって、前記第1の光路に向かって伝搬する第1の部分と、前記第2の光路に向かって伝搬する第2の部分とに分割され、
前記第1の光路および前記第2の光路と光通信状態にある第2のファイバカプラをさらに備え、前記第1の部分と前記第2の部分とは、前記第2のファイバカプラによって再結合され、前記少なくとも1つの光検出器まで透過される、請求項1に記載の光デバイス。
前記パワー透過スペクトルは、ブラッグ波長を含む第1の透過極小と前記ブラッグ波長の短波長側にある第2の透過極小との間にある第1の透過極大と、前記第2の透過極小と前記ブラッグ波長の短波長側にある第3の透過極小との間にある第2の透過極大とを有し、
前記狭帯域光源によって発生される前記光の前記波長は、前記第1の透過極大の波長もしくはその付近の波長、または、前記パワー透過スペクトルが、前記第1の透過極大と前記第1の透過極小および前記第2の透過極小のうちのいずれか一方との間で最大傾斜を有する波長もしくはその付近の波長である、請求項1に記載の光デバイス。
前記パワー透過スペクトルは、ブラッグ波長を含む第1の透過極小と前記ブラッグ波長の短波長側にある第2の透過極小との間にある第1の透過極大と、前記第2の透過極小と、前記ブラッグ波長の短波長側にある第3の透過極小との間にある第2の透過極大とを有し、
前記狭帯域光源によって発生される前記光の前記波長は、前記第2の透過極大の波長もしくはその付近の波長、または、前記パワー透過スペクトルが、前記第2の透過極大と前記第2の透過極小および前記第3の透過極小のうちのいずれか一方との間で最大傾斜を有する波長もしくはその付近の波長である、請求項1に記載の光デバイス。
前記パワー透過スペクトルは、ブラッグ波長を含む第1の透過極小と前記ブラッグ波長の長波長側にある第2の透過極小との間にある第1の透過極大と、前記第2の透過極小と前記ブラッグ波長の長波長側にある第3の透過極小との間にある第2の透過極大とを有し、
前記狭帯域光源によって発生される前記光の前記波長は、前記第1の透過極大の波長もしくはその付近の波長、または、前記パワー透過スペクトルが、前記第1の透過極大と前記第1の透過極小および前記第2の透過極小のうちのいずれか一方との間で最大傾斜を有する波長もしくはその付近の波長である、請求項1に記載の光デバイス。
前記パワー透過スペクトルは、ブラッグ波長を含む第1の透過極小と前記ブラッグ波長の長波長側にある第2の透過極小との間にある第1の透過極大と、前記第2の透過極小と、前記ブラッグ波長の長波長側にある第3の透過極小との間にある第2の透過極大とを有し、
前記狭帯域光源によって発生される前記光の前記波長は、前記第2の透過極大の波長もしくはその付近の波長、または、前記パワー透過スペクトルが、前記第2の透過極大と前記第2の透過極小および前記第3の透過極小のうちのいずれか一方との間で最大傾斜を有する波長もしくはその付近の波長である、請求項1に記載の光デバイス。
光の第2の部分を前記ファイバブラッググレーティングから反射させることによって前記第2の部分を第2の光路に沿って透過させるステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
ファイバブラッググレーティング(FBG)は、詳細が異なる多くの形態を取り得るものの、FBGは典型的に、光ファイバの誘導領域に沿って作製された周期Λの周期的な屈折率グレーティングを含む。FBGの導波領域中に周期的な構造が存在することにより、光学的バンドギャップ、すなわち光をグレーティングを通して前へ伝搬させない有限帯域幅の帯域が光周波数空間中に誘起される。このバンドギャップの中心波長は、ブラッグ波長、λ
Braggとして知られている。λ
Braggの付近の波長の光がFBGのコアに注入されると、この光は実質的にFBGから反射され、λ
Braggから十分に遠く離れた波長の光は、
FBGの全長に沿って実質的に透過される。この反射の物理的な説明は、コア領域の屈折率中の各リプルが、入射光のごく一部をファイバの逆伝搬基本モードの中に反射するというものである。この反射は、物理的には、屈折率の異なる2つの誘電媒体間の界面で起こるフレネル反射による。したがって、各リプルで反射される光のこの一部(電界に関して)は、Δnに比例し、これは非常に小さな数字である。しかしながら、FBGは、典型的に数万の周期を含むので、これらの反射のすべては足し合わさって、かなり大きな合計反射になり得る。ブラッグ波長で、グレーティング周期Λは、すべての個別の反射が互いに位相が合っているような状態である。次に、全反射は、建設的に逆伝搬基本モードの中に加わり、これは結局、入射光のパワーの大部分を運ぶことになり得る。十分に長い長さと強い屈折率変調Δnを備えたFBGにおいて、本質的に入射光の100%が反射され得る。
【0017】
ファイバセンサの領域において、今日までのほとんどのFBGは、この明細書中でブラッグ反射モードと称されるモードで用いられてきた。このモードの動作の概略図を、
図1に示す。光(たとえば広帯域光源)は、ファイバカプラを通してFBGに送込まれる。FBGから反射される、光スペクトルのλ
Braggを中心とする部分は、同一のカプラによっ
て分割され、たとえば光スペクトル分析器(optical spectrum analyzer:OSA)のよ
うな、波長監視計器に向けられ、この計器は、λ
Braggを測定する。これに代えて、光ス
ペクトルのFBGによって透過された部分を、ここでもまたたとえばOSAのような、第2の波長監視計器で測定することができ、この計器も、λ
Braggの測定値を提供する。温
度変化がFBGに印加されるとλ
Braggが変化し、このλ
Braggの変化(またはλ
Braggの
変化値)を、波長監視計器の一方または両方によって測定し、次に温度変化の絶対値をλ
Braggの測定された変化(またはλ
Braggの変化値)から計算することができる。同じ原理を用いて、歪みまたは加速などのλ
Braggを変調させるFBGに印加される任意の他の摂
動の絶対的(または相対的)な大きさを測定する。FBGのセンサとしてのこの動作モードの多くの例は、文献に説明されている。それらすべての共通点は、それらがブラッグ波長λ
Bragg(またはλ
Braggの変化値)の測定に依存して、測定量を回収するという点である。
【0018】
ブラッグ反射モードで用いられるFBGの感度を向上させるためには、たとえば10
-13メートル未満の変化のような波長の極めて小さい変化を測定する能力を向上させること
が必須である。これは、高分解能を備えたOSAを使用することによって達成することができる。十分に高い波長分解能を備えた市販のOSAが入手可能である。たとえば、日本国東京の横河電機株式会社は、0.05mmの分解能を有するOSAを販売し、日本国厚木のアンリツ株式会社は、0.07mm分解能を備えたOSAを提供している。
【0019】
たとえば10
-12mの分解能のような、従来のOSAよりもはるかに高い波長分解能を
提供する別の解決法は、不均衡マッハツェンダー(Mach-Zehnder:MZ)干渉計を用いて波長を監視することである。たとえば、A.D.カージー(A.D. Kersey)、T.A.バ
ーコフ(T.A. Berkoff)およびW.W.モレ(W.W. Morey)、「干渉計による波長シフト検出を備えた高分能ファイバグレーティングベースの歪みセンサ(High resolution fibr
e-grating based strain sensor with interferometric wavelength-shift detection)
」、Electronic Letters、第28巻、第3号(1992年1月)参照。このコンセプトの一般的な実現化例の図を
図2に示す。測定されるべき波長λ
Braggを有する、FBGから
反射された信号は、MZ干渉計の2つのアームを通っていく。2つのアームの長さL1およびL2は、たとえばL1が50cmおよびL
2が51cmのように異なるため、位相に
適切にバイアスをかけることで、MZ干渉計の1つの出力ポートから出てくる信号は、sin(Δφ/2)に比例し、式中、Δφ=2πnΔL/λ
Braggであり、nはMZファイ
バ内におけるモード有効屈折率であり、ΔL=L
1−L
2である。FBGに印加された摂動の結果、FBGのブラッグ波長がδλ
Braggだけ変動する場合、MZ干渉計の2つのアー
ム間の位相差は、
|δΔφ|=−2πnΔLδλ
Bragg/λ
Bragg2 (1)
だけ変化する。
【0020】
MZ干渉計の位相に適切にバイアスをかけることで、摂動が存在する場合の検出されるパワーは、sin(Δφ/2)に比例し、よって検出されるパワーは、sin(πnΔLδλ
B/λ
B2)だけ変動し、パワーのこの変動を測定することによって、δλ
Braggを回収することができる。小さな摂動に対しては、δλ
Braggは小さく、δΔφもそうなので、
するとパワー変化は、ΔLδλ
Bragg/λ
Bragg2に比例する。よって、この技術は、原則
として、ΔLを非常に高い値まで増加させることによってδλ
Braggにおける非常に高い
分解能を与えることができる。この増加は、光ファイバは典型的に損失が非常に低いため非常に行うのが簡単であり(よって長い長さを信号損失の増加、したがって信号対雑音比の低下という不利益なしに用いることができる)、高価でない。
【0021】
図2にアプローチは、2つの主な限界を有する。第1の限界は、不均衡ΔLは、無限に増大させることはできないことである。MZ干渉計の基本的な動作は、2つの信号が干渉することができるように、この2つの信号が(たとえばMZ干渉計中の第2のカプラで)高い程度の時間的コヒーレンスで再結合されることを要する。これは、光路長不整合ΔLは、MZ干渉計を通って伝わる信号のコヒーレンス長L
Cをおおよそ超過しないように選
択されることを意味する。このコヒーレンス長は、FBGによって反射される信号の周波数線幅Δν(または波長線幅Δλ)に次式により関連している。
【0023】
次に、グレーティングから反射される光の線幅は、
【0025】
によっておおよそ与えられ、式中、N=L/Λは、グレーティング中の周期の数であり、Lは、FBG長である。たとえば、Y.J.ラオ(Y.J. Rao)、「インファイバブラッググレーティングセンサ(In-fibre Bragg grating sensors)」、Meas. Sci. Technol.、
第8巻、335−375頁(1997年)参照。したがって、第2の条件(狭い反射された線幅)は、FBGの屈折率変調を減少させることおよび/または周期の数を増加させること、たとえばFBGの長さを増加させることによって、満たすことができる。
【0026】
反射された信号の線幅が狭い場合、信号コヒーレンス長は長く、大きな長さ不均衡がMZ干渉計において用いられ得、感度は高いものであり得る。しかしながら、反射された信号の線幅は任意に狭くすることはできない。線幅は、方程式3を通して、グレーティングによってすなわち周期の数Nおよび相対屈折率コントラストΔn/nによって制限される。大きな光路不整合ΔLを用いることができるように、非常に弱いグレーティング(非常に小さな相対屈折率コントラスト(または変調)Δn/nおよび非常に長いグレーティング)を用いることができる。たとえば、1mの光路不整合を1.55μmの波長で用いるためには、1mのコヒーレンス長が用いられるか、または方程式(3)に従って、たとえば〜10
-5の相対屈折率コントラストおよび16cmよりも長いグレーティング長が用いられる。
【0027】
図3には、FBGから反射された光のコヒーレンス長がその屈折率コントラストΔnの関数として3つの異なるFBG長について波長1.064ミクロンについて説明されており、無損失グレーティングを想定して計算されている。所与のFBG長に対して、屈折率コントラストが減少するにつれて、コヒーレンス長は何らかの最大値まで増加する。この最大値は、グレーティング長が増加するにつれて増加する。この最大コヒーレンス長は、グレーティング長におよそ等しい(
図3参照)。この結果は、方程式(2)および方程式(3)から予期される。無視できるΔn/nの限度内で、Δλはλ
Bragg/Nに近づき、
したがって、L
cは、
【0029】
に近づき、式中、FBGのブラッグ波長の式、λ
Bragg=2nΛが用いられている。シリ
カファイバにおいて、n≒1.45、よって方程式(4)中の2n/πは、0.92に等しいので、L
cは、
図3において予測されるようにLに近い。所与の屈折率コントラスト
について、長さが増大するにつれて、コヒーレンス長も平坦域に近づき、この平坦域を超えると、FBG長をさらに増加させてもコヒーレンス長は有意に増加しない。よって、長いコヒーレンス長を得るためには、低コントラストで長さの長いグレーティングを用いることができる。しかしながら、典型的なコントラスト値(10
−4から10
−6、10
−5がおおよそ最も典型的である)に対して、典型的に妥当な値(数cm)を超過しているFBG長についてさえも、コヒーレンス長は、たった10cm以下のオーダである。これは、カージー(Kersey)他の報告と一致し、この報告では、10mmの長さ不整合が線幅Δλ=0.2nmを備えたFBGからの反射信号を処理したMZ干渉計において用いられた(方程式2に従って〜3.8mmのコヒーレンス長に相当する)。
【0030】
上記に基づいて、
図2のブラッグ反射構成の感度は、長さ不整合によって制限され、この長さ不整合自体、反射信号のコヒーレンス長によって制限されており、このコヒーレンス長自体、
図3に従ってΔnおよびLによって課せられている。長さ不整合ΔLに対する、FBGによって反射される波長δλ
Braggの変化から生じるMZ干渉計の2つのアーム
間の位相差Δφの変化は、方程式1に与えられる。この波長の変化は主として温度に伴うファイバ屈折率の変化によると一次で想定して(たとえばFBG長およびファイバ横断寸法の変化の影響を無視して)、
図2のセンサの感度は、明示的に以下のように書くことができる。
【0032】
感度は、ΔLの単純線形関数である。シリカファイバについては、dn/dT≒1.1×10
-5℃
-1である。
図3において用いられた10cmの例示的な最大長さ不整合についておよびおよそ1.064μmのブラッグ波長について、方程式5は、温度に対する位相感度は、約6.5rad/℃であることを述べている。MZ干渉計の出力で検出可能な最小位相変化が1μrad(典型的な良好値)である場合、最小検出可能温度変化10
−6/6.5≒1.54×10
-7℃である。
【0033】
上記で述べたことは、10cmの特定のアーム長不整合を想定している(これはたとえば、約10cmのグレーティング長および10
-5を下回るのコントラストに対して適用可能である、
図3参照)。実際には、最大可能不均衡は、
図3に従ってFBGの屈折率コントラストおよび長さによって決定され、10cm未満である。
図4には、屈折率コントラストの関数としてプロットされた温度に対する感度が、異なるグレーティング長について、1.064ミクロンの波長について説明されており、無損失グレーティングを想定して計算されている。所与のグレーティング長について、感度は、屈折率コントラストが減少するにつれて漸近最大値まで増加する。この漸近最大値は、グレーティング長が増加するにつれて増加する。
図4には、高いコントラストが用いられると、たとえデバイスの長さが増加されても、はるかにより小さい感度がもたらされることが示されている。
【0034】
図5には、グレーティング長の関数としてプロットされた温度に対する感度が異なる屈折率コントラストについて1.064ミクロンの波長について説明されており、無損失グレーティングを想定して計算されている。位相感度は、グレーティングの長さが増加するにつれて漸近最大値まで増加する。ブラッグ反射モードで高感度を達成するためには、FBGの屈折率コントラストを低く選択することができ、その長さを長く選択することができる。加えて、最大実用感度は、10rad/℃のオーダであり(
図5参照)、または最小検出可能温度は、10
-7℃のオーダである。さらに屈折率コントラストを減少させ、長さを減少させることによって、より小さい値を得ることができるが、デバイスがより長くなることを代償とする。
【0035】
図2のアプローチの第2の限界は、不均衡MZ干渉計は、温度変動に非常に影響を受けやすく、不均衡が増加するにつれてますますそうであることである。信号が各アームを通って伝搬するとき、信号にこのアームの長さに比例した位相シフトが起こる(たとえばアーム1についてφ
1=2πnL
1/λ
Bragg)。MZ干渉計全体が不注意で温度変化ΔTに
晒されると、アーム1信号の位相とアーム2における信号の位相とで変動量が異なり、結果としてMZ干渉計の位相バイアスが変化するであろう。この位相バイアスは、あまり変動させないことが望ましい。さもなくば、MZ干渉計の感度は、(最適バイアスのための)最適値とゼロとの間を経時変化するであろう。したがって、MZ干渉計の温度を安定化させることが望ましい。より大きな長さ不整合ΔLについては、この温度制御は、望ましくはいっそう厳格であり、これは、実際に実現化することは難しい。たとえば、1.064μmの信号波長および10cmのアーム長不整合を備えたシリカ製ファイバの例を考える。2つのアーム間の位相差が±0.02rad(妥当なバイアス安定性要件)を下回ったままであるためには、温度は、望ましくは約±0.003℃に制御され得る。これは著しい工学技術的課題であり、これにより、複雑さと、電力消費量と、最終的なセンサシステムのコストとが増加する。
【0036】
この同じアプローチは、波長シフトのFBGに印加される摂動への依存を増加させるた
めに、たとえばK.P.クー(K.P. Koo)およびA.D.カージー(A.D. Kersey)、「
干渉計による問合せおよび波長分割多重化を備えたブラッググレーティングベースのレーザセンサシステム(Bragg grating-based laser sensors systems with interferometric
interrogation and wavelength division multiplexing)」J. Lightwave Technol.、第13巻、第7号(1995年7月)に説明されるようにFBGをレーザ空洞の内側に配置することによってのように、他の方法でも用いられている。しかしながら、不均衡MZ干渉計の温度を安定化させたいという要望から生じる困難は、変わらない。要約すると、λ
Braggの変動の識別力を、長さ不整合を増加させることによってより大きくすることはで
きるが、これは、MZ干渉計の不安定性がより大きくなることを代償として得られる。
【0037】
この明細書中に説明される特定の実施例は、FBGセンサの新しい動作モードを有利に使用する。こういった新しいモードは、ブラッグ反射モードでのセンサとしてのFBGの以前の使用よりも相当な便益を提供し、そのうち最大のものは、所与のFBG長についての測定量(たとえば歪み)について感度の大きな増大および/または所与の感度についてFBG長の大きな削減である。特定の実施例において、感度の増大および/または長さの削減は、1から数桁倍の範囲である。
【0038】
この明細書中に説明される特定の実施例に従った2つの光デバイス例10を概略的に
図6Aおよび
図6Bに示す。
図6Aおよび
図6Bの各々において、光デバイス10は、FBG20を含み、このFBGは、FBG20の全長に沿って実質的に周期的な屈折率変調を含む。FBG20は、複数の透過極小を含むパワー透過スペクトルを有する。隣り合った透過極小の各対は、その間に透過極大を有する。透過極大は、最大パワーを透過ピーク波長で有する。光デバイス10は、第1の光路31および第2の光路32と光通信状態にある狭帯域光源30を含む。狭帯域光源30は、2つの隣り合った透過極小間の波長を有する光を発生させるように構成されている。この波長は、透過極大もしくはその付近またはパワー透過スペクトルが透過極大とこの透過極大に隣り合った2つの透過極小のうちいずれか1つとの間で最大傾斜を有する波長もしくはその付近である。
【0039】
特定の波長に関してこの明細書中で用いられる用語「でまたはその付近で」は、合理的に最も広いその解釈を有し、この特定の波長でまたは光デバイス10の性能が特定の波長での光デバイス10の性能と実質的に等価であるようこの特定の波長に十分に近い波長であることを含むが、これに限定されない。たとえば、特定の波長「でまたはその付近で」あるべき波長とは、この波長が、特定の目標波長の量Δ内であることを意味することができ、Δは透過ピークのFWHM線幅のごく一部である。この一部は、用途要求に応じてたとえば1%、または5%、または10%、または20%であり得る。たとえば、Δ=10%について、FWHM線幅が2pmである場合、特定の目標波長の0.2pm以内の波長は、この目標波長の付近であると考えられ、この目標波長から2pm離れている波長は、この目標波長の付近であるとは考えられない。
【0040】
特定の実施例において、光デバイス10は、光センサであり、さらに、FBG20と光通信状態にある少なくとも1つの光検出器40を含む。狭帯域光源30によって発生される光は、第1の部分33aと第2の部分33bとに分割される。第1の部分33aは、FBG20の全長に沿ってかつ通って延在する第1の光路31に沿って透過される。特定の実施例において、少なくとも1つの光検出器40は、第1の部分33a、第2の部分33b、または第1および第2の部分33a、33bの両方を受けるように構成されている。
【0041】
特定の実施例において、狭帯域光源30によって発生される光の波長は、FBG20が狭帯域光源30からの入射光の相当の部分を透過するよう、透過極大の透過ピーク波長またはその付近である。特定のそのような実施例において、
図6Aによって概略的に説明されるように、第1の部分33aは、狭帯域光源30からFBG20に入射し、FBG20
に沿って透過される光を含み、第2の部分33bは、FBG20と実質的には相互作用しない光を含む。したがって、第1の部分33aは、第1の部分33aがFBG20に沿って透過される間にFBG20に印加された摂動によって実質的に影響を受け、第2の部分33bは、FBG20に印加された摂動によって実質的に影響を受けない。
【0042】
特定の他の実施例において、狭帯域光源30によって発生される光の波長は、FBG20が狭帯域光源30からの入射光の相当の部分を透過し、狭帯域光源30からの入射光の相当の部分を反射するよう、透過極大とこの透過極大のいずれかの側にある2つの隣り合った透過極小のうち1つとの間である。特定のそのような実施例において、
図6Bによって概略的に説明されるように、第1の部分33aは、狭帯域光源30からFBG20に入射し、FBG20に沿って透過される光を含み、第2の部分33bは、FBG20から反射される光を含む。したがって、特定の実施例において、第1の部分33aは、第1の部分33aがFBG20に沿って透過される間にFBG20に印加された摂動によって実質的に影響を受け、第2の部分33bは、第2の部分33bがFBG20から反射される間にFBG20に印加された摂動によって実質的に影響を受ける。
【0043】
以下により十分に説明されるように、狭帯域光源30によって発生される光は、FBG20に沿って透過される光がFBG20を通って伝搬するほとんどの他の波長の光が有するよりも遅い群速度を有する波長であるように選択される。たとえば、特定の実施例において、狭帯域光源30によって発生される光の波長は、真空中の光の速度(約3×10
5
km/秒)のFBG20を通って透過される光の群速度に対する比率が5よりも大きいか、10よりも大きいか、30よりも大きいか、50よりも大きいか、100よりも大きいか、300よりも大きいか、500よりも大きいか、1,000よりも大きいか、3,000よりも大きいか、5,000よりも大きいか、10,000よりも大きいか、30,000よりも大きいか、50,000よりも大きいか、100,000よりも大きいか、300,000よりも大きいか、500,000よりも大きいか、または1,000,000よりも大きいよう選択することができる。特定の他の実施例において、狭帯域光源30によって発生される光の波長は、真空中の光の速度(約3×10
5km/秒)のFBG
20を通って透過される光の群速度に対する比率が5〜10、5〜30、10〜50、30〜100、50〜300、100〜500、300〜1,000、500〜3,000、1,000〜5,000、3,000〜10,000、5,000〜30,000、10,000〜50,000、30,000〜100,000、50,000〜300,000、100,000〜500,000、300,000〜1,000,000、500,000〜3,000,000、または1,000,000〜5,000,000であるように選択することができる。
【0044】
特定の実施例において、FBG20中の実質的に周期的な屈折率変調は、FBG20の全長に沿って一定の周期を有する。他の特定の実施例において、実質的に周期的な屈折率変調は、チャープグレーティングにおけるように、FBG20の全長に沿って変動する周期を有する。いくつかの実施例において、屈折率変調の振幅は、アポダイズグレーティングにおけるように、全長に沿って変動し得る。
【0045】
FBG20は、光ファイバのコアを空間的に変調された紫外線ビームに曝露することよって、または多くの他の手段によって作製することができる。屈折率変調は、正弦曲線状であり得、または任意の数の他の空間分布を取り得る。特定の実施例において、光ファイバは、ニューヨーク州コーニングのコーニング(Corning, Inc.)社から入手可能なSM
F−28(登録商標)光ファイバなどの従来の単一モードファイバである。しかしながら、他の実施例におけるファイバは、マルチモードファイバである。特定の他の実施例において、ファイバは、空間的に変動する光への曝露により屈折率の所望の変調が誘起されるよう、ファイバを実質的に感光性(たとえば紫外光に実質的に反応する)にする特殊元素
でドープされている。ファイバは、シリカ、水素を添加されたシリカ、リン酸塩ガラス、カルコゲナイドガラス、または他の材料から作られ得る。
【0046】
FBG20中のグレーティングの屈折率摂動または変調は、弱い(たとえばΔn≒10
-5)または非常に高い(たとえばΔn≒0.015)ものであり得る。FBG20の屈折率グレーティングは、通常、コアに限定されるものの、場合によっては、屈折率グレーティングは、コアを直に取囲んでいるクラッド中までも延在する。FBG20は、典型的に、長さが数mmから数cmであるものの、長さが1メートルを超えるまたはわずか1mmの短さのFBG20が作られている。
【0047】
特定の実施例において、狭帯域光源30は、たとえばアリゾナ州トゥーソンにあるNPフォトニクス(NP Photonics)社製の1530nm〜1565nmの波長範囲を備えたEr−Ybでドープされたファイバレーザのような、半導体レーザを含む。他の実施例において、狭帯域光源30は、1064.2nmの波長を備えたNd:YAGレーザを含む。特定の実施例において、狭帯域光源30は、10
-13メートル以下の線幅を有する。他の
波長(たとえば1.3ミクロン)および他の線幅もこの明細書中に説明される特定の実施例と適合する。
【0048】
特定の実施例において、狭帯域光源30によって発生される光は、第1の部分33aと第2の部分33bとに分割される。第1の部分33aは、FBG20の全長に沿って延在する第1の光路31に沿って透過される。第2の部分33bは、FBG20の全長に沿って延在しない第2の光路32に沿って透過される。特定の実施例において、
図6Aに示されるように、第1の光路31は、第2の光路32と異なる。たとえば、
図6Aに示されるように、第1の光路31は、第2の光路32と重ならない。特定の他の実施例については、第1の光路31と第2の光路32とは、互いに重なってもよい。たとえば、
図6Bに示されるように、第1の光路31と第2の光路32との両方は、狭帯域光源30とFBG20との間に共通部分を含む。特定の実施例において、第1の光路31および/または第2の光路32は、自由空間またはさまざまな光学素子を横断してもよい。たとえば、第1の光路31および第2の光路32のうち一方または両方は、以下により十分に説明されるように、たとえばファイバカプラのような光学素子を横断し得る。特定の実施例において、第1の光路31および/または第2の光路32は、屈折率が異なる領域を横断してもよい。たとえば、
図6Aにおいて、第1の光路31は、FBG20を横断し、このFBGは、FBG20の全長に沿って実質的に周期的な屈折率変調を有する。
【0049】
特定の実施例において、光デバイス10は、FBG20と光通信状態にある少なくとも1つの光検出器40を含む。少なくとも1つの光検出器40は、光の第1の部分33a、光の第2の部分33b、または光の第1および第2の部分33a、33bの両方を受けるように構成されている。特定の実施例において、光検出器40は、ニューフォーカス(New Focus)社の汎用光検出器Model1811、低雑音光検出器である。しかしながら
、光検出器40は、この技術分野において周知のさまざまな低雑音光検出器のうち1つであってもよいが、これから考案される検出器も用いられてもよい。
【0050】
特定の実施例において、この明細書中で低速光透過モードと称される動作モードを用いることができる(たとえば、
図6Aおよび
図7によって概略的に説明される構造で)。これらの実施例において、狭帯域スペクトルを備えた光は、FBG20が光をほとんど反射するのではなくほとんど透過する波長(たとえば上または近く)である波長で、FBG20に送込まれる。たとえば、光の波長は、FBG20のパワー透過スペクトルの透過極大に対応する透過ピーク波長(たとえば上または近く)であるように選択される。この明細書中でλ
1およびλ′
1と称されるこれら2つの波長があり得る場所は、以下に、特に
図9Aから
図9Hに関連してより詳細に論じられる。これらの波長で、光には著しい群遅延が
起こり、すなわち光はFBG20のバンドギャップからさらに離れた波長での光の群速度よりも大幅に遅い群速度で伝わる。たとえば、低速光群速度は、300km/秒もの低さであり得、非低速光群速度は、典型的に、シリカ中を伝わる光についておよそ207,000km/秒である。FBG20のバンドギャップの端縁の付近においてこのより遅い群速度を備えた光は、この明細書中で低速光と称される。低速光は、以前に他の文脈で、特に、分散補償のためのFBGのたとえば光通信システムにおける使用の可能性を評価するために、研究されている。たとえば、F.ウーレット(F. Ouellette)、P.A.クリュッグ(P.A. Krug)、T.スティーブンズ(T. Stephens)、G.ドーシ(G. Dhosi)、およびB.エグルトン(B. Eggleton)、「チャープサンプルファイバブラッググレーティ
ングを用いた広帯域およびWDM分散補償(Broadband and WDM dispersion compensation using chirped sample fibre Bragg gratings)」、Electronic Letters、第31巻、
第11号(1995年5月)参照。
【0051】
特定の実施例において、低速光透過動作モードの便益は、たとえばλ
1またはλ′
1のような低速光波長の付近で、パワー透過が、極大(たとえば、それは1に近いまたは等しいものであり得る)を有することである。結果として、信号がFBG20に沿ってまたは通って伝播するとき信号に起こる損失は、小さい。特定の実施例において、別の便益は、低速光波長λ
1およびλ′
1のうちいずれか1つまたはその付近で、FBG20にFBG20を通って伝わる光上に印加された摂動(たとえば歪み)が、FBG20を通って進む光の振幅ではなく、その位相を変調することである。より正確には、特定の実施例において、摂動は光の位相を一次に変調し、光の振幅を二次に変調する。これは、FBGへの摂動が最大に反射される光の周波数を変調するFBGのブラッグ反射モードと対照的である。その結果、低速光透過モードを用いる特定の実施例(たとえば
図6Aおよび
図7)において、FBG20は、位相センサとして働くことができ、たとえば、それは任意の数の干渉計のうち1つの中に直接配置されて、摂動によって誘起された位相変調(測定量)を(使用者が測定する量である)パワー変化に変換することができる。
【0052】
図7には、均衡が名目上取れたMZ干渉計を含む構成例が説明されている。
図7の構成は、
図6Aに概略的に示された一般的な構成の一例である。
図7において、光デバイスまたはセンサ10は、狭帯域光源30、第1の光路31、およびFBG20に沿ってかつ通って延在しない第2の光路32と光通信状態にある第1のファイバカプラ51を含む。狭帯域光源30によって発生される光は、第1のファイバカプラ51によって、たとえば3dBのパワー分割比で第1の部分33aと第2の部分33bとに分割される。この実施例において、第1の部分33aは、第1の光路31に沿って透過され、第2の部分33bは、第2の光路32に沿って透過される。第1の部分33aは、FBG20に沿って伝搬し、第2の部分33bは、FBG20と実質的に相互作用しない。この実施例において、第1の部分33aは、FBG20の摂動に関する情報を含み、第2の部分33bは、そのような摂動によって影響を受けない。
【0053】
図7において、光センサ10は、さらに、たとえば3dBのパワー分割比を備え第1の光路31および第2の光路32と光通信状態にある第2のファイバカプラ52を含む。第1の部分33aと第2の部分33bとは第2のファイバカプラ52によって再結合され、少なくとも1つの光検出器40まで透過される。この再結合により、第1の部分33aと第2の部分33bとが互いに干渉することが可能になり、第1の部分33aと第2の部分33bとの間の位相差に関する情報を含む結合信号が生み出される。特定の実施例において、少なくとも1つの光検出器40は、第2のファイバカプラ52の出力ポートのうち一方に単一の光検出器を含む。特定の他の実施例において、
図7によって概略的に説明されるように、少なくとも1つの光検出器40は、第1の光検出器40aを第2のファイバカプラ52の一方の出力ポートに、第2の光検出器40bを第2のファイバカプラ52の他方の出力ポートに含む。これらの2つの光検出器40a、40bによって検出される信号
は、互いから逆の方向に変動し(たとえば第2のファイバカプラ52の一方の出力ポートで検出されるパワーが増加すると、第2のファイバカプラ52の他方の出力ポートで検出されるパワーが減少する)、2つの光検出器40a、40bからの出力間の差をセンサシグナルとして用いることができる。そのような検出方式は、コモンモード除去とより高い信号とを含めて、さまざまな便益を提供することができる。特定の実施例において、位相差は、FBG20に印加された歪みの量を示す。特定の他の実施例において、位相差は、FBG20に印加された温度を示す。
【0054】
特定の実施例において、
図7に概略的に示されるように、均衡MZ干渉計構成を低速光とともに用いると、第1の部分33aと第2の部分33bとの間の位相差を検出し、測定することによって、FBGに印加される摂動の精密な検出および測定が可能になる。対照的に、ブラッグ反射モードにおいて、波長(周波数)変化は、(たとえば
図1に示されるように)検出されるか、またはパワー変化に変換され、これは、高精度のためには、不均衡干渉計を安定化することによって(たとえば
図2に示されるように)行なうことができる。また、特定の実施例において、均衡MZ干渉計を低速光透過モードで使用することにより、均衡MZ干渉計の温度に対する高い感度が有利に回避され、MZ干渉計の温度安定性したがってその位相バイアスの大きな改善がもたらされる。これは、用いられる温度制御量を削減することによって、設計構築を相当単純化もする。
【0055】
光が媒体を通って進み、群速度が低いとき、物質と場との相互作用は、増加される。光が媒体を通って進むのにより長い時間がかかるため、局所エネルギ密度の圧縮により、位相シフトを含めて、増大された物理効果が引起される。誘起されたdkシフトへの位相依存性は、群速度ν
g=dω/dkが小さいとき著しく増大される。M.ソウルヤチーチ(M. Soljacic)、S.G.ジョンソン(S.G. Johnson)、S.ファン(S. Fan)、M.イバネスク(M. Ibanescu)、E.イッペン(E. Ippen)、およびJ.D.ジョアンノポウロ
ス(J.D. Joannopoulos)、「非線形位相感度のフォトニック結晶低速光増大(Photonic-crystal slow-light enhancement of nonlinear phase sensitivity)」、JOSA B
、第19巻、第9号(2002年9月)に示されるように、位相シフトを群速度に関連付けることによって、この効果を定量化することができる。
【0056】
δφ=L×δk≒L
*δω/(dω/dk) (6)
この関係は、位相シフトは、群速度ν
g=dω/dkに反比例するか、または群屈折率
n
g=c/ν
gに比例することを述べており、式中cは、真空中の光の速度である。この明細書中に説明される特定の実施例に従ったこの低速光透過モードで動作することの主な便益は、先に証明なしに述べたように、他はすべて同じだが、所与の摂動により、光が高い群速度を有する装置におけるよりも大幅により大きい位相摂動が、光が低群速度を有する装置において誘起されるという点である。したがって、以下に数値的シミュレーションで証明されるように、この明細書中に説明される特定の実施例に従った低速光透過モードで動作されるFBG20を含む光センサ10は、グレーティング中を伝わる信号の位相を変える任意の測定量に対するはるかにより高い感度を示す。
【0057】
図7の構成中のマッハツェンダー(MZ)干渉計は、FBG20に沿って伝わる光に摂動によって誘起される位相シフトを強度変化に変換するために用いることができる多くの干渉計のうち1つに過ぎない。MZ干渉計に代えて、位相変調を振幅変調に変換する任意の干渉計を用いることができる。たとえば、干渉計は、マイケルソン干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、またはサニャック干渉計(摂動が時間依存性の場合)であり得る。たとえば、特定の実施例において、光センサ10は、非対称に位置するファイバブラッググレーティングを含むファイバループ(たとえばサニャック干渉計ループ)を含む。第1の光路は、ファイバループに沿って第1の方向に延在し、第2の光路は、ファイバループに沿って第2の方向に延在し、第2の方向は、第1の方向と対向している。特定のそのような実
施例において、光センサ10は、さらに、狭帯域光源およびファイバループに光学的に結合された少なくとも1つのファイバカプラを含み、狭帯域光源によって発生される光は、第1の部分が第1の光路に沿って伝搬し、第2の部分が第2の光路に沿って伝搬するよう、この少なくとも1つのファイバカプラによって、第1の部分と第2の部分とに分割される。第1の部分と第2の部分とは、ファイバブラッググレーティングの全長に沿ってかつ通って伝搬した後、少なくとも1つのファイバカプラによって再結合される。少なくとも1つの光検出器は、再結合された第1および第2の部分を受け、第1の部分と第2の部分との間の位相差を検出するように構成された光位相検出器を含む。そのようなサニャック構成を用いて、FBG20への経時変化する摂動を検出することができる。特定の実施例において、少なくとも1つのファイバカプラは、逆の出力ポートでのパワーの検出を可能にするように構成されている。
【0058】
図6Bおよび
図8には、この明細書中に開示され低速光反射モードと称される第2の動作モードが説明されている。
図8の構成は、
図6Bに概略的に示された一般的構成の一例である。光デバイス10は、FBG20を含む。FBG20は、FBG20の全長に沿って実質的に周期的な屈折率変調を含む。FBG20は、複数の透過極小を含むパワー透過スペクトルを有する。隣り合った透過極小の各対は、その間に透過極大を有する。透過極大は、透過ピーク波長で最大パワーを有する。光センサ10は、第1の光路31および第2の光路32と光通信状態にある狭帯域光源30を含む。狭帯域光源30は、2つの隣り合った透過極小間(たとえば透過極大とこの透過極大の隣の透過極小との間)の波長を有する光を発生させるように構成されている。特定の実施例において、光デバイス10は、FBG20と光通信状態にある少なくとも1つの光検出器40a、40bをさらに含む光センサである。狭帯域光源30によって発生される光は、FBG20によって第1の部分33aと第2の部分33bとに分割される。第1の部分33aは、FBG20の全長に沿って延在する第1の光路31に沿って透過される。第2の部分33bは、
図8により概略的に示されるように、第2の光路32に沿って透過され、FBG20から反射され、よってFBG20の全長に沿って延在しない。特定の実施例において、少なくとも1つの光検出器40a、40bは、第1の部分33a、第2の部分33b、または第1および第2の部分33a、33bの両方を受けるように構成されている。
【0059】
図8に示される実施例において、狭帯域光源30によって発生される光は、ファイバカプラ51を横断する。しかしながら、
図7に示される実施例とは異なり、第1の光路31と第2の光路32とは互いに重なっている。
図8の第1の光路31は、狭帯域光源30からファイバカプラ52を通ってFBG20の全長に沿ってかつ通って延在する。
図8の第2の光路32は、狭帯域光源30からファイバカプラ51を通りFBG20まで延在し、このFBGで光は反射されてファイバカプラ51に向かって戻る。透過された第1の部分33aは、FBG20に第1の方向で入射する光によって形成され、FBG20と相互作用し次第、この入射光のうちいくらかは、建設的に前へ(第1の方向に)干渉する。反射された第2の部分33bは、FBG20に第1の方向に入射する光によって形成され、FBG20と相互作用し次第、この入射光のうちいくらかは、建設的に後ろへ(第1の方向と対向する第2の方向に)干渉する。この実施例において、第2の部分33bは、FBG20から反射されるため、FBG20Bに沿って伝搬しない。光検出器40bは、第1の部分を受けるように構成されており、光検出器40aは、第2の部分33bがファイバカプラ51を通って横断して戻った後、第2の部分33bを受ける。
【0060】
特定の実施例において、FBG20は、狭帯域レーザ30で問合せされ、第1の部分33aは、FBG20に沿って透過され、第2の部分33bは、FBG20から反射される。FBG20に問合せする光の波長は、パワー透過スペクトルの透過極大(たとえば、
図9aおよび
図9bを参照して、以下により十分に述べられるλ
1、λ
2、λ
3、λ′
1、λ′
2、λ′
3、またはi≧1でλ
iもしくはλ′
i)と、この透過極大の隣の透過極小との間に
あるよう選択される。特定のそのような実施例において、FBG20に入射する光は、FBG20反射ピークの最も急な部分またはその付近で波長λ
Aおよびλ′
Aを有する(たとえば、
図9Aおよび
図9Eを参照して、以下により十分に述べられるλ
a、λ
b、λ
c、λ
d、λ
e、λ
f、λ′
a、λ′
b、λ′
c、λ′
d、λ′
e、λ′
f、またはi≧1で波長λ′
i間にある他のそのような波長)。
【0061】
たとえば、特定の実施例において、FBG20は、ブラッグ波長を第1のエッジ波長(たとえば以下により十分に述べられる第1の透過極大の透過ピーク波長λ
1)から第2の
エッジ波長(たとえば以下により十分に述べられる第2の透過極大の透過ピーク波長λ′
1)まで包含する波長の範囲にある光を反射する。反射された光は、バンドギャップ内(
たとえば第1のエッジ波長と第2のエッジ波長との間)にある反射ピーク波長(たとえばブラッグ波長)で最大強度を有する。2つの透過ピーク波長λ
1とλ′
1との間の領域を、FBG20のパワー透過スペクトルの透過極小であると考えることができる。特定のそのような実施例において、波長を、パワー透過が第1または第2の透過極大の透過ピーク波長λ
1およびλ′
1でのパワー透過の最大値の選択された何分の1か(たとえば約2分の1、または1/5〜4/5の範囲)である共振または低速光ピークの端縁上にあるように選択することができる。
【0062】
外部摂動がFBG20に印加されると、反射ピークは、波長がシフトする。このλ
Braggのシフトは、FBG20によって透過される第1の部分33aと、たとえばFBG20に入射する光の波長で反射された光のパワーのようなFBG20によって反射される第2の部分33bとに、変化をもたらす。特定の実施例において、少なくとも1つの光検出器40は、第2の部分33bの光パワーを受け、検出するように構成されたフォトダイオード
40aを含む。
図8に示されるように、FBG20によって反射されたレーザ信号の第2の部分33bは、ファイバカプラ51(たとえば約3dB電力分割比を備えたファイバカプラ)によってFBGの入力ポートから分離され、第2の部分33bの光パワーは、光検出器40aによって測定される。特定の実施例において、少なくとも1つの光検出器40は、第1の部分33aの光パワーを受け、検出するように構成されたフォトダイオード40bを含む。
図8において、パワーの変化は、FBG20の出力で、FBG20の出力と光通信状態にある光検出器40bで検出することができる。
【0063】
特定の実施例において、検出された光パワーは、FBG20に印加された歪みの量を示す。特定の他の実施例において、検出された光パワーは、FBG20の温度を示す。
【0064】
低速光反射モードで動作している特定の実施例において、
図7の低速光透過モードにおける特定の実施例ほど遅くはないものの、信号がFBG20を通って伝わるとき、信号に低群速度が起こる。したがって、特定のそのような実施例も、ブラッグ反射モードで動作されるFBGよりも大きく増加された感度を有利に提供する。加えて、低速光反射モードは、ブラッグ反射モード(たとえば
図2)とは異なり波長シフトを測定することを伴わないため、低速光反射モードは、不均衡MZ干渉計を使用しないことによって、MZ干渉計熱安定性の問題をなくし、設計を著しく単純化する。低速光反射動作モードにおいて、この明細書中に説明される特定の実施例に従って、FBGのパワー透過は、低速光透過モードにおける特定の実施例ほどは高くない。しかしながら、透過は、依然として高い(〜70%、損失を除く、設計の詳細による)ので、信号がFBG20を通って伝搬するとき信号に起こる損失は、依然として小さい。したがって、特定の実施例において、FBG20によって透過される光パワーを、(たとえばフォトダイオード40bで)検出および測定して、FBG20に印加された摂動を測定することができる。
【0065】
この明細書中に説明される新しい反射および透過モードのうち1つで動作される光センサ10の特定の実施例の感度は、FBG20において光の群速度をどれだけ遅くすること
ができるかに直接依存する。以下に説明される数多くのコンピュータシミュレーションは、この原理を説明し、これらの新しい動作モードの特定の実施例によってもたらされた感度改善の大きさを定量化する。比較のために、これらのシミュレーションは、上記で概説されたブラッグ反射モードにおけるFBGの特定の測定量、すなわち温度に対する感度もモデル化する。もしこのシミュレーションが歪みなどの別の測定量の影響をモデル化したとしても結果は実質的に同じであったであろう。これらのシミュレーションは、既知のパラメータ(たとえばA.ヤリーブ(A. Yariv)およびP.イェー(P. Yeh)、結晶中の光波:レーザ放射の伝搬および制御(Oprical waves in crystals: propagation and control of laser radiation)、155−214頁(ニューヨーク:ワイリー(Wiley)社19
84年)参照)、すなわち周期Λおよび振幅Δnとを備えた正弦曲線状屈折率変調、グレーティング長L、および均一で小さい温度変化ΔTからなる、グレーティングを通って進む信号の位相の周知の式を用いた。
【0066】
図9Aから
図9Dには、正弦曲線状FBGを用いる温度センサの計算された特性がΔn=1.5×10
-4、L=1cm、およびΛ=0.37μm(これはおよそ1.64μmのブラッグ波長λ
Braggを与える)のパラメータ値で示されており、無損失グレーティングを想定して計算されている。
図9Eから
図9Hには、正弦曲線状FBGを備えた温度センサの計算された特性がΔn=2.0×10
-4、L=2cm、損失=1m
-1、およびΛ=0.53μm(これはおよそ1.55μmのブラッグ波長λ
Braggを与える)で示されており、無損失グレーティングを想定して計算されている。
図9Aおよび
図9Eには、λ
Braggの付近でのこのグレーティングのパワー透過が示されており、2つの温度、すなわち室温(300
K)(
図9Aから
図9Cおよび
図9Eから
図9Gにおいて非加熱と示されている)で計算されている。
図9Aから
図9Cに示される1.064ミクロンのブラッグ波長について、加熱曲線は、室温にΔT=0.01℃を加えたものに相当する。
図9Aから
図9Cに示される1.55ミクロンのブラッグ波長については、加熱曲線は、室温+ΔT=0.01℃に対応する。温度変化が非常に小さいため、
図9Aから
図9Cおよび
図9Eから
図9Gの加熱および非加熱曲線は、互いに非常に近く、グラフ上で区別することができない。
図9Aから
図9Cおよび
図9Eから
図9Gには、FBGパワー透過、位相、群屈折率の波長依存性がそれぞれ1.064ミクロンおよび1.55ミクロンのブラッグ波長について説明されている。λ
Braggの付近で、FBGは反射鏡として働き、その透過は、
図9Aおよび
図9Eによって示されるようにゼロに近いことが予期される。反射率が高いこの低透過率領域は、FBGのバンドギャップをおおよそ構成する。λ
Bragg=1.064μmについてこのグレーティングの半値全幅(full width at half maximum:FWHM)は、
図9Aによって示されるようにおよそ126pmであり、λ
Bragg=1.55μmについてバンドギャップのFWHMは、
図9Eによって示されるように、およそ202pmである。このバンドギャップ領域の外側で、透過は、第1の共振ピークに達し、次に透過は振動性で、λ
Braggからさらに離れると漸減する振幅を備えている。λ
Braggから十分に離れると(図中に示される範囲より外側)、透過は漸近的にほぼユニティとなる。
【0067】
先に述べたように、透過が共振ピークに達する第1の波長は、この明細書中でλ
1(λ
Braggの短波長側)およびλ′
1(λ
Braggの長波長側にある)と称される。透過が共振ピークに達するより高次の波長は、λ
i(λ
Braggの短波長側にある)およびλ′
i(λ
Braggの長波長側にある)と称され、式中i≧2である。特定の実施例において、狭帯域光源は、透過極大(たとえば、この明細書中で共振ピークまたは低速光ピークとも称され、λ
1、
λ
2、λ
3、λ
4などおよびλ′
1、λ′
2、λ′
3、λ′
4などで示すことができる)のうち
1つまたはその付近の波長を有する光を発生させる。特定の実施例において、狭帯域光源は、透過極大(たとえば、この明細書中で共振ピークまたは低速光ピークとも称され、λ
1、λ
2、λ
3、λ
4などおよびλ′
1、λ′
2、λ′
3、λ′
4などで示すことができる)のうち1つと、隣接する透過極小との間の波長(λ
a、λ
b、λ
c、λ
d、などおよびλ′
a、λ
′
b、λ′
c、λ′
dなどで示すことができる)を有する光を発生させる。
【0068】
たとえば、パワー透過スペクトルが、ブラッグ波長を含む第1の透過極小とブラッグ波長の短波長側にある第2の透過極小との間にある第1の透過極大λ
1と、第2の透過極小
とブラッグ波長の短波長側にある第3の透過極小との間にある第2の透過極大λ
2とを有
する特定の実施例において、狭帯域光源によって発生される光の波長を、第1の透過極小と第2の透過極小との間、第1の透過極大、第1の透過極大λ
1と第1の透過極小か第2
の透過極小かのいずれかとの間、第2の透過極小と第3の透過極小との間、第2の透過極大、または第2の透過極大と第2の透過極小か第3の透過極小かのいずれかとの間であるよう選択することができる。同様に、波長を、ブラッグ波長の短波長側で、第3の透過極大、第4の透過極大、または第3か第4かいずれかの透過極大と隣接する透過極小との間にあるように選択することができる。
【0069】
別の例として、パワー透過スペクトルが、ブラッグ波長を含む第1の透過極小とブラッグ波長の長波長側にある第2の透過極小との間にある第1の透過極大λ′
1と、第2の透
過極小とブラッグ波長の長波長側にある第3の透過極小との間にある第2の透過極大λ′
2とを有する特定の実施例において、狭帯域光源によって発生される光源の波長を、第1
の透過極小と第2の透過極小との間、第1の透過極大、第1の透過極大と第1の透過極小か第2の透過極小かのいずれかとの間、第2の透過極小と第3の透過極小との間、第2の透過極大、または第2の透過極大と第2の透過極小か第3の透過極小かのいずれかとの間にあるよう選択することができる。同様に、波長を、ブラッグ波長の長波長側で、第3の透過極大、第4の透過極大、または第3か第4かいずれかの透過極大と隣接する透過極小との間にあるあるように選択することができる。
【0070】
図9Bから
図9Fには、このグレーティングを通って狭帯域信号が伝わった後の狭帯域信号の計算された位相が波長の関数として示されている。この計算は、ここでもまた、
図9Aおよび
図9Bに対して用いられた温度について行なわれた、特定の波長λ
1およびλ
′
1ならびにλ
2およびλ′
2あたりで、位相は曲線のおよそ中心(FBGが強く反射する
λ
Braggあたり)よりも急速に波長とともに変化する。位相の波長への依存性がエッジ波
長またはその近くでのこのように増加するのは、信号がグレーティングを通って伝わるにつれて信号の群遅延がより大きくなる結果である。言い換えれば、これらの2つの波長の付近、たとえば±5pmで、グレーティングは、低速光に対応している。
【0071】
図9Cおよび
図9Gには、方程式6を
図9Bおよび
図9Fの波長への位相依存性に適用することによって波長の関数として計算された、このFBGを通って伝わる光の群屈折率がプロットされている。
図9Cおよび
図9Gには、λ
1およびλ′
1の付近で、群屈折率n
gが著しく増加することが示されている。同じことは、図中に示されるλ
2およびλ′
2な
どの他の透過共振の付近でもあてはまるが、図中に示された波長の範囲外にある他の共振λ
iおよびλ′
iの付近でもあてはまる。具体的には、λ
Bragg=1.064μmを備えた
グレーティング例において、n
gは、エッジ波長またはその近くで約4.2の値に達する
。ファイバにおいておよびλ
Braggから遠い波長に対してFBGにおいて、光の群屈折率
は、およそc/nまたは約207,000km/秒である(この値は、光波長に弱く依存する)。対照的に、2つのエッジ波長のあたりで、群屈折率は、自由空間における光の速度よりもたった約4.2分の1しか小さくないか、または約71,400km/秒である。λ
Bragg=1.55μmを備えた別のグレーティング例において、n
gは、エッジ波長またはその近くで約8.7の値または約34,500km/秒の群速度に達する。
【0072】
図9Aから
図9Cに概説される一般的な挙動を示す正弦曲線状屈折率摂動を備えたFBGのパワー透過スペクトル、透過位相、および群屈折率は、異なる文脈で以前に報告されていた。M.リー(M. Lee)他、「ファイバブラッググレーティングを用いた広帯域誘導ブリュアン散乱システムの向上された低速光遅延性能(Improved slow-light delay perf
ormance of a braodband stimulated Brillouin scattering system using fiber Bragg gratings)」、Applied Optics、第47巻、第34号、6404−6415頁、2008年12月1日参照。この参考文献において、著者らは、数字的シミュレーションを通じて、FBGを
図9Aから
図9Cにおいて用いられたのと同様なパラメータでモデル化しており、すなわち長さL=2.67cm、10
-4の屈折率コントラストΔn、およびグレーティング周期Λ=533nm(1550nmのブラッグ波長)を備えた正弦曲線状屈折率変調である。彼らの結論は、FBGを通って伝わる光は、光の周波数がブラッグ波長反射ピーク側にある第1の透過ピークの付近を中心としていると、通常よりも高い群遅延を示すというものであった。この特性は、この参考文献においてSBSベースの光遅延線における群遅延をパワー消費量を増加させることなく、1つまたは2つのFBGをSBS遅延線に加えることによって増加させるために用いられた。しかしながら、この参考文献は、群遅延は長さとともに非線形に増加することを認識または教示していない。実際には、参考文献には、この明細書中に説明される特定の実施例の局面とは対照的に、1つではなく2つのグレーティングを用いるとき群遅延が2倍になることが開示されている。特に、以下により十分に説明されるように、群遅延は、グレーティング長の高い累乗で増大する。加えて、この参考文献は、この明細書中に説明されるさまざまな局面について述べておらず、この局面には(1)群遅延を増大させるために屈折率コントラストを増加させることの望ましさ、(2)この波長でより速く累積する位相、(3)(グレーティング透過が極大を示す)他の共振波長の存在およびこれらの波長での動作の可能性、および(4)低速光モードでのセンサとしてのFBGの使用およびその便益ならびにその性能特性を最適化する手段、が含まれるがこれに限定されない。
【0073】
この明細書中に説明される特定の実施例において、FBGは、極めて大きな群遅延、または等価に極めて大きな群屈折率を生じるように設計または構成されており、これは、このFBGがこの明細書中に説明される低速光動作モードのうち1つでセンサとして用いられるとき極めて高い感度をもたらす。それに対し、FBGについての以前の研究は、比較的小さな群屈折率を生じている。たとえば、以前に引用したM.リー(M. Lee)他において、この参考文献における
図2(a)から計算される最大群屈折率は、約3.3である。別の例として、ジョー・T.モク(Joe T. Mok)他、「ギャップソリトンを用いた無分散低速光(Dispersionless slow light using gap solitons)」Nature Physics、第21巻、775−780頁、2006年11月において、約5の群屈折率が長さ10cmで屈折率コントラストΔn=1.53×10
-4のアポダイズFBGにおいて報告されている。対照的に、この明細書中に説明される特定の実施例は、以下により十分に説明されるように、大幅により高くはないとしても、数百の範囲の群屈折率を備えたFBGの生産を可能にする革命的なコンセプトを用いる。
【0074】
この明細書中に説明される特定の実施例は、数十から数百以上の範囲の相当大きな群屈折率を備えたFBGを有利に提供する。そのようなグレーティングは、以下に説明されるように、ほとんどの測定量について既存のFBGベースのセンサと比較して数十から数百以上の改善がある著しく増加された感度を備えたファイバセンサを生産するために用いることができる。そのようなグレーティングは、これに限定されないがソリトン、群遅延線、分散補償、および光フィルタを含めて、大きな群屈折率または大きな群遅延を利用する、または大きな群屈折率または大きな群遅延から利益を受ける任意の用途のために用いることもできる。
【0075】
方程式6に基づいて、かつ
図9Aから
図9CのFBGで達成することができる約4.2の群屈折率値または
図9Eから
図9GのFBGで達成することができる約8.7の群屈折率値に鑑みて、この明細書中に説明される特定の実施例に従った低速光センサの温度に対する感度は、この同一のFBGがブラッグ透過モードで用いられたときよりも著しく大きい。
図9Aから
図9Cの各々には、λ
Bragg=1.064μmについての2つの曲線が示
されており、各曲線は、ΔT=0.01℃だけ間隔をおかれた2つの温度で計算されており、
図9Eから
図9Gの各々には、λ
Bragg=1.55μmについての2つの曲線が示さ
れており、各曲線はΔT=0.01℃だけ間隔をおかれた2つの温度で計算されている。
図9Bの2つの位相曲線間の差を取ってΔTで除算することによって、ΔTは小さいので、
図9Dに示されるように、λ
Bragg=1.064μmについて温度dφ/dTに関して
位相の導関数のごく近い近似式が得られる。同様に、
図9Fの2つの位相曲線間の差を、ΔTで除算して、
図9Hに示されるように、λ
Bragg=1.55μmについて温度dφ/
dTに関して位相の導関数のごく近い近似式を得ることができる。最大感度は、λ
1およ
びλ′
1の付近で起こる。これらの波長のうちいずれかで、λ
Bragg=1.064μmについて群屈折率は4.2であり、感度dφ/dTは、2.9rad/℃であり、λ
Bragg=
1.55μmについて群屈折率は8.7であり、感度dφ/dTは、8.1rad/℃である。よって、これらの低速光波長で、温度への感度は非常に高い。
【0076】
図10Aおよび
図10Bには、位相感度と透過との関係がそれぞれλ
B=1.064μ
mについておよびλ
B=1.55μmについてより詳細に説明されており、無損失グレー
ティングを想定して計算されている。感度は、(パワー透過が1に等しい)ちょうどλ
1
およびλ′
1でではなく、それらの付近で最大であることが示されている。透過は定義上
これらの2つの波長で最大(かつユニティに等しい)ため、
図10Aおよび
図10Bには、(少なくともこれらの例において)透過(信号がグレーティングを通って伝わるとき信号に起こる損失を最小化するために望ましい)と群屈折率(感度を最大化するために望ましい)との両方を最大化する単一の波長はないことが示されている。しかしながら、透過および群屈折率が最大化される波長は、互いの付近にあるので、するべき妥協は比較的小さい。たとえば、λ
Bragg=1.064μmについて、第1の透過共振ピークで、透過は
ユニティであり、群屈折率は4.0であり、感度dφ/dTは、2.6rad/℃である。群屈折率が最大(かつ4.2に等しい)波長で、感度は、2.85rad/℃であり、透過は94%に等しい。別の例として、λ
Bragg=1.55μmについて、第1の共振ピ
ーク(透過≒89%)で、群屈折率は、8.38であり、感度dφ/dTは、7.84rad/℃である。群屈折率が最大(かつ8.7に等しい)波長で、感度は、8.1rad/℃であり、透過は、85%に等しい。損失を考えるとき、透過ピークは、100%パワー透過に達しない。これらの値は、それらそれぞれの最大値と10%未満異なるので、特定の実施例において、対象とする具体的な用途によって課せられる基準に応じて、透過か群屈折率かのいずれかを最大化するように波長を選択することができる。正確な動作点にはかかわらず、透過および群屈折率(よって感度)は両方とも、波長の比較的広い範囲にわたってそれらそれぞれの最大値近くであり、これは両方の点で特定の実施例において有用な特徴である。この定性的な結論は、非常に広い範囲のFBGパラメータ値に対して有効であり、この特定の数値例において用いらるよりも相当高い群屈折率(たとえば10
5
)を生じる値に対してさえも有効である。
【0077】
上述の図は、所与の屈折率コントラスト(λ
Bragg=1.064μmについてΔn=1
.5×10
-4およびλ
Bragg=1.55μmについてΔn=2.0×10
-4)を備えたF
BGをモデル化することによって作製された。屈折率コントラストが増加するにつれて、群遅延はさらに増加し、方程式6に従って、測定量に対する感度も上昇する。FBGのΔnはこのモデル化された値よりも相当高いものであり得るため、たとえばFBGが水素添加ファイバ中に作製されているとき(たとえば、Δnが0.015、たとえばP.J.ルメール(P.J. Lemaire)、R.M.アトキンス(R.M. Atkins)、V.ミズラヒ(V. Mizrahi)、およびW.A.リード(W.A. Reed)、「GeO
2でドープされた光ファイバにお
ける超高紫外光感度および熱感度を達成するための技術としての高圧H
2添加(High pressure H
2 loading as a technique for achieving ultrahigh UV photosensitivity and thermal sensitivity in GeO
2 doped optical fibers)」、Electronic Letters、第29
巻、第13号(1993年6月)参照)、群遅延および感度のかなりの増加が、Δnを増
加させることから起こる。この改善を定量化するために、感度は、この明細書中に説明される特定の実施例に従った低速光透過構成において用いられるグレーティングについて屈折率コントラストの関数として演算された。グレーティングの損失は、群屈折率および感度の屈折率変調および長さへの依存性のみを説明するために、両方の波長においてゼロであると見なされている。
図11A(λ
Bragg=1.064μmについて)および11B(
λ
Bragg=1.55μmについて)には、(i)λ
1または等価にλ′
1での低速光透過構
成のこの感度が、(ii)この明細書中に説明される特定の実施例に従ったλ
aまたは等価
にλ′
aでの低速光反射構成において用いられるグレーティングについての感度および(iii)ブラッグ反射構成において用いられるグレーティングについての感度とともにプロットされており、無損失グレーティングを想定して計算されている。
図11Aおよび
図11Bの各々についてすべての3つの曲線は、例示的なグレーティング長L=2cmについて演算された。この比較を行なうために、位相感度は、以下のように低速光透過方式におけるパワー感度に変換された。MZ干渉計が最大感度のために位相バイアスをかけられているとき、干渉計の出力パワーのうち1つでの出力パワーは、P
0が合計出力パワー(両方
のポートを含む)であり、Δφが2つのアーム間の位相差であるときP=P
0sin(Δ
φ/2)として与えられる。小さな摂動δΔφがMZ干渉計の2つのアームのうち一方の中に置かれたFBGに印加されると、出力パワーは、δP≒P
0δΔφ/2で変動する。
よって、センサのパワー感度は、定義上、
【0079】
であり、言い換えれば、感度に対する測定基準として上記で用いられた位相感度の半分に等しい。
【0080】
低速光透過構成において、所与のグレーティング長に対して、特定の屈折率コントラストを下回ると、感度は一定である。屈折率コントラストが十分に大きい(典型的に約10
-4を上回る)とき、感度は、Δnの高い累乗で増加する。たとえば、1.064μmで動作している2cmのグレーティング長について、温度に対するパワー感度は、Δn
1.95で変わる。別の例として、1.55μmで動作している2cmのグレーティング長について、温度に対するパワー感度は、Δn
1.99で変わる。比較すると、低速光反射構成において、感度は、屈折率コントラストが増加されるにつれて単調に高まる(
図11Aおよび
図11B参照)。この例において約10
-4を上回る屈折率コントラストについては、2つの低速光方式の感度は、極めて互いに近い。
【0081】
対照的に、
図11A(1.064μm)および
図11B(1.55μm)には、ブラッグ反射モードにおいて、特定の屈折率コントラスト(この特定のグレーティング長については約10
-5)を下回ると、ちょうど低速光透過方式の場合におけるように、感度は一定である。この屈折率コントラストを上回ると、感度は減少する。この減少の理由は、上記で述べた。これらのシミュレーションにおいて、ブラッグ反射構成の感度は、MZ干渉計の長さ不均衡ΔLを(たとえば長さ不均衡をFBGによって反射される光のコヒーレント長に等しくすることによって)最大化することによって最大化された。このコヒーレンス長は、FBGの屈折率コントラストに依存するため(方程式2および3参照)、この値は、シミュレーションにおいて用いられたΔnの各値について調節された。屈折率コントラストが増加するにつれて、反射された光のコヒーレンス長は減少し、長さ不均衡ΔLは減少し、したがって感度が減少する(方程式5参照)。
【0082】
図11Aには、この場合もまた実際に得ることができる1.5×10
-2のΔnに対して
、(たとえばルメール(Lemaire)他参照)λ
Bragg=1.064μmについての低速光透過方式および低速光反射方式におけるパワー感度は、〜6.5×10
4℃
-1(曲線の上端
)もの高さであることが示されており、1.3×10
5rad/℃の位相感度に相当する
。これは、ブラッグ反射モード(1.18rad/℃)で動作されるグレーティング(L=2cm、Δn=10
-5)に対して予測される最良値よりも110,000倍近く高い。
図11Bには、1.5×10
-2のΔnに対して、λ
Bragg=1.55μmについての低速
光透過方式および低速光反射方式におけるパワー感度は、〜1.9×10
4℃
-1もの高さ
であることが示されており、3.8×10
4rad/℃の位相感度に相当する。これは、
ブラッグ反射モード(0.82rad/℃)で動作されるグレーティング(L=2cm、Δn=10
-5)に対して予測される最良値よりも〜46,000倍高い。
【0083】
2つの低速光構成が大きなΔnに対してほぼ同じ感度を示す理由は(
図11Aおよび
図11B参照)、低速光透過構成において波長λ
1(またはλ′
1)で用いられた光および低速光反射構成においてλ
2(またはλ′
2)で用いられた光の群屈折率がほぼ同じであるためである。これは、
図12A(1.064μm)および
図12B(1.55μm)において見られ、これらの図には、長さL=2cmのFBGについてΔnの関数として計算された群屈折率がプロットされており、無損失グレーティングを想定して計算されている。これらのプロットは、この場合もまた透過モードに対してはλ
1(または等価にλ′
1)で、反射モードに対してはλ
a(または等価にλ′
a)で演算された。低速光反射構成と低速光透過構成とは、ほぼ同じ群屈折率を生じ、後者は、反射構成に対してわずかにのみ小さい。両方の方式において、群屈折率は、およそΔn
1.95としてのΔnとともに増加する。低速光反射方式において、信号波長は、最も遅い光を発生される波長から低速光透過方式におけるよりもより強く離調される。
図12Aには、極めて低速の光をλ
Bragg=1.06
4μmを備えた光ファイバグレーティングにおいて達成することが可能であることも示されている。この例において、0.015のΔnを備えたFBG(水素添加FBG)に起こる最大実用n
gは、およそ10
5である。これは、たった3,000m/秒の群速度に相当し、実験的にまたはシミュレーションを通じてFBGにおいて以前に証明されたものよりも約20,000倍遅い。FBG長を2cm(このシミュレーションにおいて用いられた値)から10cmに増加させることによって、この群屈折率数値は、およそ5
1.99≒25だけ増え、2,500万−群速度120m/秒になる。λ
Bragg=1.55μmに対する
図12Bに示される例において、ここでも再び両方の方式について、群屈折率はおよそΔn
1.99としてのΔnとともに増加する。0.015のΔnを備えたFBG(水素添加FBG)に起こる最大実用n
gは、およそ4.2×10
4である。これは、たった7,100m/秒の群速度に相当し、実験的にまたはシミュレーションを通じてFBGにおいて以前に証明よりも約8,000倍遅い。FBG長を2cmから10cmに増加させることによって、この数値は、およそ100万−群速度300m/秒に増加される。この特性は、すべての前述の用途を含めて(たとえば、これに限定されないが光データ記憶、光バッファ、光レーザまたはパルスの遅延を含めて)多数の用途に対して極めて大きい意味を持つ。よって、特定の実施例において、光デバイス10は、光データ記憶装置、光バッファ、または光遅延装置である。
【0084】
FBGの長さの感度への影響を決定するために、図
13A(1.064μm)および
図13B(1.55μm)は作製され、この明細書中に説明される特定の実施例に従った1.5×10
-4の固定Δnについてパワー感度対グレーティング長が示されており、無損失グレーティングを想定して計算されている。低速光透過方式(ここでもまたλ
1または等価にλ′
1で評価された)については、1.064μmでの動作に対する位相感度は、およそL
2.75で変わる。この依存性は、正確に普遍的なものではないが、近い。たとえば、Δn=7.5×10
-4で(たとえばヤリーブ(Yariv)およびイェー(Yeh)の計算方式を用いて)実行された同一のシミュレーションは、L
2.98で変動した感度をもたらした。Δnがさらに1.5×10
-3まで増加されると、感度はL
2.97で大きくなる。これらの数値は、屈折率変調の正確な空間プロファイルにも依存する(正弦曲線状、2乗など)。しかしながら、結論として、感度は長さに急速に依存する。1.55μmでの低速光透過方式の動作については、位相感度は、およそL
2.89で変わる。1.064μmでの低速光反射方式(ここではまたλ
aまたは等価にλ′
aで評価された)についても、感度は、L
2.91で大きくなり、これは、低速光透過方式において見られる関係と類似する。1.55μmでの低速光反射方式についても、感度はL
2.85で大きくなる。
【0085】
λ
Bragg=1.064μm、1.5×10
-4のΔn、および2cmの長さを備えたFB
Gの上記例において、低速光透過モードにおけるパワー感度は、〜8℃
-1であった。
図13Aには、このグレーティングの長さを2cmから10cm(反射グレーティングにおいて用いるのに妥当と見なされた高い値例、
図4参照)に増加させると、このパワー感度は、877℃
-1まで増加することが示されている。これらの図には、この明細書中に説明される特定の実施例に従った低速光透過モードで動作されるFBGの長さおよび/または屈折率コントラストを増加させることによって得ることができる感度の劇的な改善が説明されている。
図13Bに示される1.550μmでの他の例において、1.5×10
-4のΔnおよび2cmの長さを備えたFBGについて、低速光透過モードにおけるパワー感度は、〜2.7℃
1であった。
図13Bには、このグレーティングの長さを2cmから10c
mに増加させると、このパワー感度は、243℃
-1まで増加することが示されている。
【0086】
特定の実施例において、長さLおよび屈折率コントラストΔnは、10よりも大きい、20よりも大きい、30よりも大きい、40よりも大きい、50よりも大きい、100よりも大きい、500よりも大きい、1,000よりも大きい、5,000よりも大きい、または10,000よりも大きい群屈折率n
gを提供するように選択され得る。
【0087】
1つの実施例において、FBGは、
図7に描かれるように、たとえば光ファイバから作られているMZ干渉計の一方のアーム中に置かれる。特定の実施例のMZ干渉計は、2つのアームにバイアス(たとえばπ/2)をかけるおよび小さな位相変化に対する感度を最大化する目的を除いて、実質的に均衡が取れている。FBGに小さな温度変化が印加されると、FBGを通って伝わる信号の位相は、変化するのに対して、基準アームを通って伝わる信号の位相は変化しない。これらの2つの信号がMZ干渉計の第2のカプラで再結合されると、信号は、その相対位相シフトに応じて干渉し、この位相シフトは、π/2+δφであり、式中δφ=(dφ/dT)ΔTおよびdφ/dTは、(たとえば、
図10Aおよび
図10Bにおいて)以前に述べられ計算された感度である。この相対位相シフトの結果、MZ干渉計のいずれかのポートでの信号出力パワーは、δφに比例する量だけ変化する。
【0088】
ファイバMZ干渉計は、典型的に、0.1から1μradのオーダの最小検出可能位相(minimum detectable phase:MDP)を有する。例として、1μradのMDP、0.015の屈折率コントラスト、および10cmのグレーティング長を備え、1.55ミクロンで動作するMZ干渉計について、位相感度は、4.8×10
6rad/℃である。M
PDは、1μradであるので、このMZ低速光センサ配置は、2.1×10
-13℃もの
小ささの温度変化を検出することができる。これは、再びまた、同じ長さの最適化された反射FBGのものよりも500万倍近く大きい。
【0089】
この原理のもう1つの例は、
図14Aおよび
図14Bに示されており、これらの図には、計算最小検出可能温度がFBG屈折率コントラストの関数としてブラッグ反射モードで用いられるFBGについてそれぞれλ
Bragg=1.064μmについてとλ
Bragg=1.55μmについてプロットされており、損失グレーティングを想定して計算されている。このシミュレーションにおいて、グレーティング長は、λ
Bragg=1.064μmについて
1cmであり、λ
Bragg=1.55μmについて2cmであり、MZ干渉計は、1μra
dのMDPを有すると解釈された。先のシミュレーションにおいて、具体的には
図11Aおよび
図11Bにおいて予測されたように、屈折率コントラストが増加するにつれ、感度は降下し、したがって最小検出可能温度は上昇する。同じ依存性は、
図15Aおよび
図15Bに、この明細書中に説明される特定の実施例に従った低速光透過モードで動作される同じ長さ(およびMDP)のFBGについて示されており、無損失グレーティングを想定して計算されている。ブラッグ反射モードと際立って対照的に、最小検出可能温度は、屈折率コントラストが増加するにつれて単調に減少し、次第に非常に小さい値に達する。
【0090】
この例により、この明細書中に説明される特定の実施例によって提供される、先行するブラッグ反射動作モードよりも優れた便益がはっきりと説明される。第1に、この明細書中に説明される特定の実施例に従った両方の低速光構成について、感度は相当より大きい。第2に、この明細書中に説明される特例の実施例に従った低速光透過構成について、MZ干渉計は、不均衡である必要がないので、そのアームの両方は、極めて短い長さを有することができ、したがって温度変化に対してかなり安定していることができる。第3に、この明細書中に説明される特定の実施例に従った両方の低速光構成について、センサは、先行技術の反射モード構成とは異なって、市販のレーザを光源として使用することができ、この先行技術は、1つのケースでは広帯域光源を必要とし(たとえばカージー(Kersey)他参照)、第2のケースではそれ独自のレーザを必要とする(たとえばクー(Koo)お
よびカージー(Kersey)参照)。市販のレーザは、特定の実施例において、極めて狭い線幅とショット雑音によって制限される低雑音を有するように選択され得る。対照的に、ブラッグ反射構成の第1のケースにおいて(たとえば
図1)、広帯域光源は、はるかに雑音があり、これは、位相および強度ノイズを出力信号に検出で加え、MDP(およびよって最小検出可能温度)をさらに増加させるであろう。ブラッグ反射構成の第2のケースにおいて(たとえば
図2)、光源は、本質的に、FBGを含む特注レーザであり、これは、レーザ線の広がりを削減し、低雑音に保つためには、精密な波長安定化を必要とするであろう。これを行なうことはできるが、この場合もまた、それは、かなりの工学技術を要し、かつそれは、大量に製造および販売され経済の規模の恩恵を受ける市販の狭線幅レーザよりも費用がよりかかる。
【0091】
驚異的に小さい温度を検出するこの能力は、ほとんどの用途にとって過剰である。しかしながら、実際の適用においては、この高い感度をより短い長さと引換えることができる。上記に引用されたλ
Bragg=1.064μmについの低速光透過モード例において、セ
ンサの感度は、10cmの長さについて2.2×10
7rad/℃である。このFBG長
を800μmまたは〜125分の一に減少させることによって、L
2.88依存性に従って、感度は〜1.77×10
6分の一に降下し、12.4rad/℃まで下がる。1.55μ
mで動作する第2の低速光透過モード例については、センサの位相感度は、10cmの長さについて4.8×10
6rad/℃である。このFBG長を800μmまで減少させる
ことによって、感度は、およそ1×10
6分の一に降下し、4.8rad/℃まで下がる
。これらのセンサの感度は、依然としてブラッグ反射モード(
図4参照)において用いられる最適化されたFBGとおよそ同じであるが、10cmではなくたった800μmの長さであり、したがって相当より小型である。
【0092】
上記に説明された分析を、温度が測定量である場合に対して行った。測定量がFBGに直接印加される長手方向の歪みなどの別の量であるときも、同じ結論が適用される。
【0093】
低速光を用いることによって、歪み感度と温度感度との両方が増加される。よって、この明細書中に説明される特定の実施例に従った低速光センサの1つの影響は、このセンサは、感度のよりよい歪みセンサでありながら、温度変動に対しても感度がよりよいことである。特定の実施例において、センサを温度変動に対して安定化させることはできるものの、そのような安定化は望ましくないことがある。しかしながら、感度と長さとを常に互
いに交換することができる。したがって、歪み感度と温度感度とはこの明細書中に説明された特定の実施例の低速光センサにおいておよそ同じ比率で増大されたので、グレーティングの物理的長さLを減少させて、ブラッグ反射FBGの最良ケースにおけるのと同じレベルに歪み感度と温度感度をすることができる。低速光構成の違い‐および利益‐は、同じ感度に対して、低速光FBGは、相当により短いことであり、これは、小型性が決定的に重要である多くの用途にとって重要であり得る。長さおよび感度の任意の妥協も可能であり、これによって、低速光センサは、従来の反射グレーティングよりも感度がよりよいばかりではなく、いくぶん短いように設計される。加えて、グレーティングに印加された歪みの変化と温度の変化とを区別するために適用されてきた数多くの工学技術的解決法が、低速光センサのこの構成において適用可能である。具体的には、たとえば、歪みおよび温度が変化している領域に2つのグレーティングを並列に置くことができる。グレーティングのうち一方は、歪みに晒されるが他方は晒されず、その一方で、両方とも(同じ)温度変化に晒される。2つのセンサの示度間を比較すると、共通の温度変化とグレーティングのうち一方に印加された歪み変化との両方を提供することができる。
【0094】
シミュレーションにより、この明細書中に説明される特定の実施例における低速光モードのいずれかで動作されるFBGに問合せるために用いられる光源の線幅は、非常に妥当であることも示された。
図16には、この点がパワー感度のレーザの線幅への依存性のプロットで、長さL=2cmおよびΔn=1.5×10
-4を備えλ
Bragg=1.064ミク
ロンで動作されるグレーティングについて説明されており、無損失グレーティングを想定して計算されている。レーザ線幅が増加するとき、感度は約10
-13mの線幅まで一定で
ある。この値を上回ると、感度は減少し始める。なぜならば、レーザ信号は、群屈折率スペクトル中のピークのみではなくそれ以上に及ぶより広いスペクトル領域を調べているためである。言い換えれば、光子の中には高い群屈折率が起こるもの(群屈折率スペクトルのピークまたはその付近の周波数のもの)もあり、より低い群屈折率が起こるもの(このピークから離調された周波数のもの)もある。この曲線は、最大感度を得るためには、レーザ線幅は、有利には、約10
-13m以下または26MHzの周波数線幅であるように選
択されることを示す。これは、たとえばアリゾナ州トゥーソンにあるNPフォトニクス(NP Pnotonics)社製のEr−Ybでドープされたファイバレーザのような多数の市販の半導体レーザにより容易に利用可能な線幅である。長さは同じだが屈折率コントラストが大きい(Δn=1.5×10
-3)FBGについて実行された同様のシミュレーションは、約2×10
-15m(530kHz)のレーザ線幅に対する最大値をもたらす。そのようなレ
ーザ線幅も、市場で容易に入手可能である。したがって、レーザ線幅は、グレーティングの屈折率コントラストが減少されるにつれてまたはその長さが増加されるにつれて減少され得る。
【0095】
すべてのシミュレーションは、1064nm(Nd:YAGレーザの主波長)か1.55μmかのいずれかのブラッグ波長を備えたFBGについて実行された。これらの波長は、一般的に用いられているため選択された。しかしながら、波長は、この明細書中に説明される特定の実施例において概説された一般的な傾向と関係がない。たとえばおよそ1.3μmのような異なる波長を中心とする類似のFBGの特性は、この明細書中に提示された特性と実質的に異ならず、この明細書中に提示され引用されたのと同じ方程式を用いてモデル化することができる。この明細書中に説明される特定の実施例に従った低速光方式のこの明細書中に説明されたブラッグ反射より優れた相対的な便益は、実質的に変化しないままである。
【0096】
最適化プロセス
均一なグレーティングの透過および群屈折率スペクトルの特性は、屈折率変調、長さ、および損失の3つのパラメータによって一義的に決定することができる。上記で述べたケースである無損失グレーティングにおいて、群屈折率を、屈折率コントラストおよび長さ
を無限に増加させることによって増大させることができる。実際には、光がグレーティングを通って伝わるとき、光は散乱による損失に直面し、これは、放射モード結合を誘起する。損失がある場合、グレーティングの長さが増加するにつれて、光はグレーティング中でより長い距離にわたって伝わり、対応してより高い損失に直面する。この効果は、FBGの群屈折率が高いとき増大される。なぜならば、光は、グレーティングを通って前後により多くの回数伝わるにつれて、より多くの損失に直面するためである。よって、所与の損失に対して、グレーティング長が増加されるにつれて、群屈折率が、上述のようにまず増加する。群屈折率がさらに増加するにつれて、損失は、ファブリ・ペロー干渉計において損失が行なったのとよく似て、往復の最大数を制限し始め、群屈折率は、長さがさらに増加するのとともに減少し始める。所与の損失係数に対して、結果として、群屈折率を共振で最大化するグレーティング長が存在する。同様に、長さが増加するにつれて、損失もこれらの共振でグレーティングの透過を制限する。低速光用途のためのFBGを設計する際、たとえば上述のモデルを用いて最適化研究を行なって、グレーティングの最適な長さをそのプロファイル型、屈折率変調、および損失を考慮して決定することが望ましいことがある。FBGの損失係数は、当業者に知られている任意の数の標準技術を用いて測定することができる。FBGの測定されたパワー損失係数は、Geでドープされたグレーティングにおける1m
-1(Y.リュウ(Y. Liu)、L.ウェイ(L. Wei)、およびJ.リット(J. Lit)、「損失の大きい材料中の位相シフトされたファイバブラッググレーティングの透過損失:理論的および実験的調査(Transmission loss of phase-shifted fiber Bragg gratings in lossy materials: a theoretical and experimental investigation)」、Applied Optics、2007年)から、水素添加グレーティングにおける2m
-1超(D.ヨーレン(D. Johlen)、F.クナッペ(F. Knappe)、H.レナー(H. Renner)、およ
びE.ブリンクマイヤー(E. Brinkmeyer)、「紫外線側面書込ファイバにおける紫外線
誘起吸収、散乱および透過損失(UV-induced absorption, scattering and transition losses in UV side-written fibers)」、光ファイバ通信会議ならびに光集積回路および
光ファイバ通信に関する国際会議において、1999年、OSA Technical Digest Series
(アメリカ光学学会(Optical Society of America)、ワシントンD.C.、1999年)、paper ThD1、50−52頁)までにわたる。
【0097】
この挙動は、1.55μmで動作される均一なグレーティング例について
図17に示されている。この図には、たとえば大きな屈折率コントラスト(この例においては、Δn=1.0×10
-3)のような強くGeでドープされたグレーティングにおける、たとえば第1の共振(λ
1)での群屈折率および透過の長さへの依存性が1m
-1〜2m
-1で変動する
損失係数について示されている。所与の損失係数に対して、グレーティングの長さが短いと、グレーティングは十分な周期を有さず、群屈折率は低い。長さが長いと、光は、グレーティングを通って伝わるにつれてより多くの損失に遭遇し、群屈折率は、減少する。これらの2つの限界の間のどこかで、群屈折率は最大値である。
図17の例に示されるように、グレーティングの損失が1m
−1であるとき、最も高い群屈折率は、グレーティング長2.25cmでの84であり、透過は、約10%である。損失が2m
-1まで増加すると、最も高い群屈折率は、より短い最適長さ1.8cmでの53まで減少する。この長さでの透過は、およそ同じである(11%)。また、上記で説明されたように、長さが増加するにつれて透過は着実に減少する。最高群屈折率が望ましく透過があまり問題でない用途においては、最適な長さまたはその付近での動作が好ましい。透過がより問題である用途において、透過を過度に減少させることなく可能な限り最も高い群屈折率を達成するために妥協を行なうことができる。低速光FBG設計者は、この例においてモデル化された第1の共振波長以外の他の共振波長も選択することができる。
【0098】
図18には、水素添加ファイバ中に作製された一層より強いFBG例について計算された同じ依存性が示されている。このシミュレーションにおいて用いられたΔnの値は、水素添加ファイバに書込まれたグレーティングについて報告された値、0.01であり、損
失係数は、2m
-1である。P.J.ルメール(P.J. Lemaire)、R.M.アトキンス(R.M. Atkins)、V.ミズラヒ(V. Mizrahi)、およびW.A.リード(W.A. Reed)、「GeO
2でドープされた光ファイバにおける超高紫外光感度および熱感性を達成するための
技術としての高圧H
2添加(High-pressure H
2-loading as a technique for achieving ultrahigh UV photosensitivity and thermal sensitivity in GeO
2-doped optical fibers)」、Electron. Lett、1993年参照。FBGは、この計算について均一であると見
なされた。この例について最も高い群屈折率は、長さ0.37に対して起こり、243に等しい。この群屈折率でのグレーティングの増加は、12%である。
【0099】
アポダイゼーションも、群屈折率と、透過と、長さとの間の関係に影響を及ぼす。2つの型のアポダイゼーション例を、この明細書中で屈折率変化がゼロdcの2乗ガウシアンアポダイズをA型、ガウシアンアポダイズをB型と称し、
図19Aに示す。T.エルドガン(T. Erdogan)、「ファイバグレーティングスペクトル(Fiber grating spectra)」
、J. of Lightwave Technology、第15巻、1277−1294頁、1997年参照。
図19Aに説明されるように、A型において、屈折率プロファイルは、何らかの平均屈折率値の上下に変調されている。B型において、屈折率プロファイルは、厳密に何らかの平均値より上に変調されている。両方の型において、屈折率変調の包絡線は、たとえば余弦またはガウシアンのような任意のプロファイルを有することができる。以下のシミュレーションにおいて、A型およびB型両方のFBGについて、包絡線は、Wで表記される半値全幅(FWHM)を備えたガウシアンであると見なされている。
図19Bには、Δn=1.0×10
-3、L=2cm、1.3m
-1の損失係数、およびW=2Lを備えたA型アポダイズFBGについて計算された群屈折率スペクトルが説明されている。最も高い群屈折率ピークは、第2の共振で起こるが、値は、同じ屈折率変調、長さおよび損失を備えた均一なグレーティングのものよりも小さい。そのようなアポダイズグレーティングの低速光挙動を制御する4つの関連したパラメータがあり、最大屈折率変調、長さ、損失係数、および屈折率プロファイル包絡線の半値全幅(FWHM)Wである。B型グレーティングは、
図19Cおよび
図19DにΔn=1.0×10
-3、L=2cm、損失=1.3m
-1、およびW=2Lについて示される非対称な透過および群屈折率スペクトルを生じる。最も高い群屈折率は、短波長側で第1の共振ピークで起こる。適切なアポダイゼーションで、その値は、同じ屈折率変調および長さを備えた均一なグレーティングのものよりも大きくなり得る。これは、特定の実施例において、以下に説明される最適化プロセスによって達成することができる。
【0100】
所与の最大屈折率コントラストΔnおよび所与の損失係数に対して、群屈折率を最大化するために最適化され得る2つのパラメータは、長さおよびFWHM Wである。最適化プロセスにおいて周知である最も一般的なアプローチにおいて、簡単明瞭な二次元パラメータ研究を行なうことができる。例として、
図20には、群屈折率と、透過と長さとの間の関係がB型アポダイズFBGについて示されており、このFBGにおいて、FWHMは、長さの2倍に等しく、Δnは1.0×10
-3であり、損失係数は1m
-1である。最大群屈折率のための最適な長さは、1.43cmである。この長さで、群屈折率は、178もの高さがある。すると透過は、1.4%である。損失を1.5m
-1まで増加させることにより、群屈折率が減少され、それは、予期されるように、最適な長さを減少させる。しかしながら、透過は、約1.7%までわずかに増加する。同じ屈折率コントラストを備えた均一なFBGをモデル化した
図17との比較により、同じ長さおよび屈折率変調について、均一なグレーティングと同じ長さおよび屈折率変調を備えたB型のアポダイズグレーティングは、均一なグレーティングよりも高い群屈折率および低い透過を生じることが示される。したがって、FBGの屈折率プロファイルを調整することは、低速光デバイスとして用いられるFBGのこの明細書中に説明される特定の実施例の設計に著しい影響を与え得る。
【0101】
アポダイゼーション包絡線の幅も群屈折率および透過において重要な役割を果たし得る。FWHMが小さいとき、グレーティングの有効長は、小さくなり、それはより低い群屈折率に繋がる。FWHMが大きいとき、グレーティングプロファイルは、均一なグレーティングに類似したものになる。したがって、この限界において、長さへの群屈折率依存性および透過依存性は、対応する均一なグレーティングにおけるそれらそれぞれの依存性に収束する。
図21において、群屈折率および透過は、損失係数1m
-1、最大屈折率コントラストΔn=1.0×10
-3、および長さ1.43cmの例示的な場合における包絡線のFWHM Wに対してプロットされている。最大群屈折率に対する最適FWHMは、1.4cmである。このFWHMで、群屈折率は200であり、これは
図20におけるよりも高いが、パワー透過は非常に低い。この場合もまた、妥協を行なって、用途要求に応じてどの最適な長さを選択するかを決定することができるが、
図20および
図21のような曲線は、この行なわれるべき選択を可能にする情報をはっきりと提供している。
【0102】
同じ最適化プロセスを、
図22に示されるように、B型のアポダイズ水素添加FBGに適用することができる。ガウシアン包絡線のFWHMが長さの2倍に等しいとき、1.0×10
-2のΔnおよび2m
-1の損失係数に対する最適な長さは、0.17cmである。この例について群屈折率は、744に達し、この群屈折率でのパワー透過は、5%である。
【0103】
図22にモデル化される水素添加FBGについて、その長さが0.17cmであるように選択されるとして、
図23には、最適FWHMは0.17であることが示されている。このFWHMで、群屈折率は868に達するが、この点でのパワー透過は非常に低い。最も高い群屈折率を生じるFWHMは、この場合、グレーティングの長さとおよそ等しい。この特定のFWHMの利点は、非常に高い群屈折率であり、欠点は、低いパワー透過である。ここで、先に引用されたすべての他の例におけるように、パワー透過と群屈折率との間のトレードオフは、各用途に特有のものである。
【0104】
均一なアポダイズグレーティングとは別に、πシフトされたグレーティングは、低速光を生じることができる別の種類の一般的なグレーティングプロファイルである。πシフトされたグレーティングは、グレーティングプロファイルの中心に位置するπ位相シフトを有する。この種類のグレーティングは、ブラッグ波長で狭い透過共振を開き、また、透過スペクトルも広げる。この種類のグレーティングについて最も低い群速度は、バンドギャップ端縁にはもはや位置せず、バンドギャップλπの中心に位置する。これは、Δn=2.0×10
-4、L=2cmおよびゼロ損失を備えた均一なπシフトされたグレーティングについて計算された透過および群屈折率が示されている
図29Aおよび
図29Bに説明されている。
【0105】
これらの予測は、1550nmに近いブラッグ波長を備えたさまざまなFBGを通って伝わる光の群遅延を測定することによって実験的に実証された。大きな群屈折率が起こる波長で伝わる光には、この群屈折率に比例して大きな群遅延が起こる。群遅延は、異なる波長の2つの信号の到着時間間の時間差を測定することによって決定され、両方とも同一の波長可変レーザによって提供された。第1の波長は、光がFBGを通常の群速度で通って伝わるよう、FBGのバンドギャップ端縁から遠く離れて(〜2nm)位置していた。この第1の波長で、群屈折率は、位相屈折率に非常に近く、この位相屈折率自体、たとえば約1.45のような材料の屈折率n
0に非常に近い。第2の波長は、群屈折率、したが
って群遅延がより大きいバンドギャップ端縁に近い(200pm以内)ように合わせられた。第1の波長の信号と第2の波長の信号とは、両方とも、FBGに入る前に同じ周波数で振幅が調整された。2つの波長で測定された群遅延間の差により、FBGによって誘起された群遅延の増加の目安が提供された。
【0106】
この測定のために用いられた実験構成が
図24に描かれている。波長可変レーザ(ヒュ
ーレットパッカード(Hewlette-Packard)社のHP81689A)からのビームは、光アイソレータおよび偏向制御器を通って、次に振幅変調器を通って送られた。偏向制御器は、変調器に入る光の偏向状態(state of polarization:SOP)を調節するため、よっ
て変調器によって透過されるパワーを最大化するために用いられた(この変調器の動作は、偶然、偏向依存であった)。関数発生器からの25MHz〜100MHzの周波数f
m
を備えた正弦曲線状信号が変調器に送られ、この変調器は、レーザ信号のパワーを変調した。この正弦曲線状に変調されたレーザ光は、試験下のFBGを通って送られた。FBGを励起する信号は、50/50ファイバカプラを用いて2つに分割された。出力信号のうち一方は、そのパワーを、よって(レーザ波長を変動させる際)FBGの透過スペクトルを測定するパワーメータに送られた。他方のビームが光検出器に、続いてロックイン増幅器に送られ、このロックイン増幅器が他方その位相を測定した。第1の測定は、バンドギャップ端縁から十分に遠く離れている(2nm)ので低速光が起こらない1548.000nmの波長で行なわれ、よって基準信号として用いられた。次にレーザは、バンドギャップ端縁に近い低速光波長に合わせられ、位相測定が繰返された。第1の波長と第2の波長との間の群遅延間の差は、これら2つの波長間で測定された位相変化Δφから次式を用いて計算された。
【0108】
第2の波長での群屈折率は、微分群遅延から次式を用いて計算することができる。
【0110】
表1には、試験された市販のファイバブラッググレーティングが列挙されている。これらは、すべてカナダにあるOE−ランド(OE-Land)社によって製造された。表には、製
造業者による、それらの長さ、それらが温度無依存性グレーティングであったか、およびそのグレーティングの屈折率プロファイルが均一であったかが列挙されている。この表には、各グレーティングの屈折率コントラストΔnも列挙されている(非均一FBGの場合ピーク値)。
【0112】
図25Aには、例として、グレーティング1番の測定された透過スペクトルが示されており、このグレーティングの長さは3cm、公称均一屈折率コントラストは販売業者によって特定された値、約1×10
-4である。透過スペクトルは、均一なグレーティングに対して予期された形状を示し、つまりブラッグ波長(この場合λ
Bragg≒1549.948
nm)を中心とする狭い反射ピークの両側をこのピークから離れた漸減する振幅の発振が取囲んでいる。
図25A中の実曲線は、均一なFBGに対して理論から計算された透過スペクトルである。屈折率コントラストは、理論上の曲線を実験に合わせるために調節された唯一のパラメータである。この適合は、製造業者によって特定された屈折率コントラストの値が十分に正確でなかったために用いられた。
図25Aを作製するために用いられた適合された値、Δn=1.10×10
-4は、販売業者値に近い。これらのシミュレーションは、損失をゼロと見なした。これらの曲線は、ブラッグ反射ピークの両側での透過の存在は、100%に非常に近い透過でピークとなることを示している。
【0113】
図25Bには、
図25A中の実曲線と同じΔnおよび長さについて計算された理論スペクトルのみならず、同じグレーティング(1番)について測定された群屈折率スペクトルが示されている。光は、λ1≒1549.881nmおよびλ′
1≒1550.012n
mで最も遅く、これらの波長は、λ
Braggに対して対称に位置しており、FBGのバンド
ギャップのいずれかの側にある第1の高い透過ピークと一致もしている。これらの2つの波長での群屈折率の最も高い測定値は、〜3.7であり、この値は、予測値と極めて一致している。
図25Aにおけるように、理論と実験とは非常に良好に合致している。
【0114】
より高い屈折率コントラストを備えたFBGが試験され、予期された通り、これらのFBGは、より高い最大群屈折率を提供した。例として、
図26Aから
図26Cには、グレーティング3番についての対応する曲線が示されており、このグレーティングの長さは2cm、Δnは〜1.0×10
-3であった。
図26Aには、測定された透過スペクトル全体は、ブラッグ波長の周りで対称ではないことが示されており、これは上述のようにアポダイズグレーティングを示す。
図26Bには、同一の測定された透過スペクトルの短波長部
分が示されており、便宜上拡大されている。この測定されたスペクトルに重ね合わされているのは、モデルによって予測された適合透過スペクトルであり、4つのパラメータ、すなわち屈折率コントラスト(Δn=1.042×10
-3)、長さ(L=20mm)、ガウシアンアポダイゼーションのFWHM(W=42mm)、および損失係数(γ=1.6m
-1)に適合して、測定されたスペクトルへの公称最良適合を得ている。ここでもまた、測定値と理論とはすばらしく一致している。適合された群屈折率Δnは、製造業者によって特定された値に近く、損失係数は、FBGについて報告された値の範囲内である。
図26Cには、このグレーティングについて測定された群屈折率スペクトルおよび
図26Bにおいて用いられたのと同じ適合パラメータ値について計算された予測スペクトルが示されている。最大測定群屈折率は、第2の低速光ピーク(波長λ
2)で起こり、69であり、こ
れはファイバブラッググレーティングにおいて今日までに報告された最高値であり(J.T.モク(J.T. Mok)、C.マーティン・デ・スターク(C. Martijn de Sterke)、I.C.M.リトラー(I.C.M. Littler)、およびB.J.エグルトン(B.J. Eggleton)、
「ギャップソリトンを用いた無分散低速光(Dispersionless slow-light using gap solitons)」、Nature Physics 2、775−780頁(2006年)において報告されるように、以前の記録は、〜5であった)、かつ光ファイバにおいて報告された最高値であった(C.J.ミサス(C.J. Misas)、P.ペトロプロス(P. Petropoulos)、およびD.J.リチャードソン(D.J. Richardson)、「酸化ビスマス光ファイバにおけるブリュアン
増幅器を用いたワット未満パワーレベルおよび低遅延でのパルスのc/10までの減速(Slowing of Pulses to c/10 With Subwatt Power Levels and Low Latency Using Brillouin Amplification in a Bismuth-Oxide Optical Fiber)」J. of Lightwave Technology、第25巻、第1号、2007年1月において報告されるように、以前の記録は、〜10であった)。それは、〜4,350km/秒の群速度に相当し、光ファイバにおいて今日までに報告された大幅に最も低い値である。実験スペクトルと理論スペクトルとは極めてよく一致している。このn
g=69の値は、ブラッグ波長から2番目の低速光ピークで観
察された(波長λ
2)。第1の低速光ピークは、
図26Bに示されるように、第1のピー
ク(λ
1=1549.692nmの波長あたり)が測定するには弱すぎたため測定するこ
とができなかった。第2のピークでのFBG透過は、〜0.5%であった。第3のピーク(波長λ
3)で測定された群屈折率は、ごくわずかに低かった(〜68)が、FBG透過
は、著しくより高く、約8%であった。第4のピーク(波長λ
4)について対応する値は
、n
g≒43および透過32%であった。
図26Cには、低速光ピークの帯域幅は、低速
光ピークの順序iが増加するにつれて増加することも示されている。これは、所与のFBGは、広範な群屈折率/群屈折率帯域幅/透過の組合せを与えることができることを再び示しており、この組合せは、意図される用途に対して所望される性能に基づいて、使用者が選択することができる。
【0115】
表1の最後のカラムには、試験された5つのグレーティングにおいて測定された最大n
g値がまとめられている。グレーティング4番を除いたすべてのケースにおいて、予測値
と測定値とは極めてよく一致した。グレーティング4番のケースにおいて、長さが非常に長かったので計算が収束せず、信頼性のある値を提供することができなかった。
【0116】
低速光ピークの線幅は、たとえばグレーティングの屈折率コントラストまたは長さが増加するにつれてのように群屈折率が増加するにつれて、減少する傾向がある。低速光FBGセンサからまたは他の目的のために用いられる低速光FBGから最大の便益を得るために、レーザを、用いられている低速光ピークの線幅よりも小さい線幅で選択することができる。レーザの線幅が低速光ピークの線幅よりも大きい場合、ピーク最大値のレーザ光子に最大感度が起こるが、ピークから離調された光子には、より低い感度が起こる。したがって平均感度は、低下される。これは、測定において用いられるレーザ線幅で説明することができる。あまり大きくない最大群屈折率を有するグレーティング1番について、この低速光ピーク(λ
1)の群屈折率線幅は、比較的広く、その透過および群屈折率スペクト
ル(
図25Aおよび
図25B)を、〜1pmに等しい線幅のレーザで調べることができた。大幅に高い最大群屈折率を有するグレーティング3番については、低速光ピーク(λ
2
、λ
3およびλ
4)の群屈折率線幅は、はるかに狭く、その透過および群屈折率スペクトル(
図26Bおよび
図26C)は、〜0.8fmに等しい線幅のレーザ(周波数で100kHz)で調べられた。低速光ピークの線幅は、
図25および
図26を用いて説明されたように、上述の理論モデルを用いて容易に計算することができる。この線幅予測から、センサの感度をレーザ線幅の関数として演算することは簡単明瞭である。これに代えて、センサをより広い線幅で動作させることもでき、不利点は、感度が低くなることだが(
図16のとおり)、利点は、温度変化に対する安定性が高くなることである。
【0117】
温度は、低速光スペクトルに影響を与える。FBGの温度が変化するとき、その周期Λ、有効モード屈折率、および長さはすべて、ファイバ材料の熱膨張および/または屈折率依存性の温度依存性の組合せにより変動する。これらの影響は周知であり、十分に確立された数学的モデルを用いて容易に予測することができる。例として、これらの基本的な影響をL=2cm、Δn≒1.5×10
-4、およびλ
Bragg=1.55μmを備えたFBG
に適用すると、1℃当たりおよそΔλ
1/λ
1=10pmの第1の透過ピーク波長(λ
1お
よびλ′
1)の相対温度感度が予測される。FBGをたとえば歪みセンサとして用いる場
合、グレーティングの温度が変化するにつれて、歪みに対する感度は、透過ピーク波長が温度とともに変動するため、一般的に変動する。これは、FBGの温度を動作の波長で群屈折率に依存する度数に制御することによって、実際には回避することができる(群屈折率が高いほど、一般的に温度制御は厳格になる)。これに代えて、温度無依存性FBG、グレーティングを適切にパッケージングすることによってFBGスペクトルの固有の温度依存性が部分的に補償されている市販の装置も用いることができる。そのような装置は、たとえばカナダ国にあるOEランド(OE land)社またはテラキシオン(Teraxion)社か
ら市販されている。
【0118】
ファイバブラッググレーティングは、位相または振幅無秩序、すなわちグレーティング長手方向軸zに沿ったグレーティングの周期かグレーティングの屈折率かいずれかの不規則な変動を受け得る。そのような無秩序の存在は、FBGの特性を変えることが周知である。特に、そのような無秩序は、一般的に、反射ピークの広がりおよびそのパワー反射係数の減少をもたらす。同様に、位相または振幅の無秩序は、FBGの低速光スペクトルの変更をもたらし、特に、一般的に低速光ピークの透過および群屈折率を減少させる方に変更する。これらの影響が検討される用途に対して有害であると見なされる場合、位相または振幅の無秩序を最小化させるための措置を低速光FBGの製造中に取ってもよい。
【0119】
図27は、この明細書中に説明される特定の実施例に従ったファイバブラッググレーティングの使用方法例1000のフローチャートである。方法1000は、動作ブロック1010に示されるように、FBG20を提供するステップを備え、このFBGは、実質的に周期的な反射屈折率摂動をFBG20の全長に沿って含む。FBG20は、複数の透過極小を含むパワー透過スペクトルを有する。隣り合った透過極小の各対は、その間に透過極大を有する。透過極大は、透過ピーク波長で最大パワーを有する。方法1000は、
図28の動作ブロック1020に示されるように、2つの隣り合った透過極小間の波長を有する光を狭帯域光源から発生させるステップも含む。特定の実施例において、発生される光は、透過ピークの線幅よりも狭い線幅を有する。方法1000は、さらに、動作ブロック1030において、FBG20の全長に沿ってかつ通って延在する第1の光路31に沿って光の第1の部分33aを透過させるステップと、動作ブロック1040において、第2の光路32に沿って光の第2の部分33bを透過させるステップとを含む。光センサにおいてFBGが用いられる特定の実施例において、方法1000は、さらに、動作ブロック1050において、第1の部分33a、第2の部分33b、または第1および第2の部分33a、33bの両方を光検出器30で検出するステップを含む。
【0120】
方法1000の特定の実施例において、実質的に周期的な反射屈折率摂動の周期は、FBGの全長に沿って一定である。特定の他の実施例において、実質的に周期的な反射屈折率摂動の周期は、FBGの全長に沿って変動し、したがってFBG20は、チャープドグレーティングである。いくつかの実施例において、実質的に周期的な屈折率摂動の振幅は、FBG20の全長に沿って変動し、したがってFBG20は、アポダイズグレーティングである。
【0121】
方法1000の特定の実施例において、方法1000は、さらに、第1および第2の部分33a、33bを再結合し、光検出器40まで透過させるステップを含む。たとえば、特定の実施例において、方法1000は、狭帯域光源30、第1の光路31および第2の光路32と光通信状態にある第1のファイバカプラ51を提供するステップと、第1の光路31および第2の光路32と光通信状態にある第2のファイバカプラ52を提供するステップとを含む。これらの実施例において、方法1000は、狭帯域光源30によって発生される光を、第1のファイバカプラ51で、第1の部分33aと第2の部分33bとに分割するステップを含む。よって、これらの実施例において、再結合するステップおよび透過させるステップは、第2のファイバカプラ52によって達成される。また、これらの実施例において、検出するステップ1050は、第1の部分33aと第2の部分33bとの間の位相差を検出するステップを含む。特定の実施例において、第1の光路31と第2の光路32とは、均衡が名目上取れたマッハツェンダー干渉計を形成する。
【0122】
特定の実施例において、位相差は、FBG20に印加された歪みの量を示す。いくつかの実施例において、位相差は、FBGの温度を示す。
【0123】
方法1000の特定の実施例において、光の第2の部分33bを第2の光路32に沿って透過させるステップ1040は、第2の部分33bをFBG20から反射させるステップを含む。これらの実施例において、検出するステップ1050は、第1の部分33a、第2の部分33b、または第1および第2の部分33a、33bの両方の光パワーを検出するステップを含み得る。いくつかの実施例において、検出された光パワーは、FBG20に印加された歪みの量を示す。いくつかの実施例において、検出された光パワーは、FBG20の温度を示す。方法1000の特定の実施例において、FBG20に沿って透過される第1の部分33aは、FBG20に沿って透過される波長の反射される範囲外にある波長を有する光の第2の群速度未満の第1の群速度を有する。これらの実施例の中には、第1の群速度の第2の群速度に対する比率が、1/3以下のものもある。いくつかの実施例において、第1の群速度の第2の群速度に対する比率は、1/10以下である。
【0124】
図28は、この明細書中に説明される特定の実施例に従ったファイバブラッググレーティングの使用方法2000の別の実施例のフローチャートである。方法2000は、動作ブロック2010に示されるように、FBG20を提供するステップを含み、このFBGは、実質的に周期的な反射屈折率摂動をFBG20の全長に沿って含む。方法2000の特定の実施例において、方法2000は、動作ブロック2020に示されるように、ある波長を有する光を狭帯域光源30から発生させるステップを含む。特定の実施例において、この波長はFBG20の低速光ピークの付近である。方法2000は、さらに、動作ブロック2030において、FBG20の全長に沿ってかつ通って延在する第1の光路31に沿って光の第1の部分33aを、真空中の光の速度の群速度に対する比率が5よりも大きいような群速度で透過させるステップと、動作ブロック2040において、光の第2の部分33bを第2の光路32に沿って透過させるステップとを含む。FBG20が光学感知のために用いられる特定の実施例において、方法2000は、動作ブロック2050において、さらに、第1の部分33a、第2の部分33b、または第1および第2の部分33a、33bの両方を光検出器40で検出するステップを含む。
【0125】
この発明のさまざまな実施例が上記に説明された。この発明は、これらの特定の実施例を参照して説明されたが、説明はこの発明を例示することを意図したものであり、限定することを意図したものではない。この明細書中に定義されるこの発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな変形例および用途が当業者には思い浮かぶであろう。