【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、従来のバラスト水処理システムでは、バラストポンプの能力(定格流量)に対して、それと同等または若干上回る能力(装置容量)を有するバラスト水処理装置が選定されている。
しかしながら、一般的なバラストポンプは遠心ポンプであり、遠心ポンプの特性上、バラストポンプから送出される流量が、バラスト水処理装置の処理能力を超えてしまうことがある。すなわち、
図5に示すように、バラスト水処理装置の処理能力が、例えば、Qm
3/hである場合に、Qm
3/hの能力を有する遠心ポンプをバラストポンプとして採用すると、バラストポンプの能力は、バラストタンクまでの管路長が最も長く、管路抵抗が最大となる場合に必要な吐出圧力および水位差から求められた最小流量に基づいて決定されているため、バラストタンクまでの管路長が短くなり、管路抵抗が減少するにしたがって、ポンプの性能曲線に沿って運転点がAからBに向かって移動し、
図6に示すように、バラストポンプから送出される流量が、バラスト水処理装置の処理能力を超えてしまうことがある。
また、バラストポンプは、通常船舶に予備用を含め二台搭載されることが多く、二台同時運転も実質的には可能である。同時運転した場合、
図5に示すポンプ性能曲線が流量増加の方向へ移動し、バラストポンプから送出される流量はより増加することになる。
なお、
図6は、850m
3/hの能力を有する遠心ポンプを使って、管路長が最も短くなり、管路抵抗が最小となるバラストタンク(最も船尾側(機関室側)の船底に位置するバラストタンク)に注水したときに、遠心ポンプから実際に送出されるバラスト水(海水)の流量と、時間との関係を示している。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、バラストポンプから送出される流量を、常にバラスト水処理装置の処理能力以下に抑えることができて、バラストタンクに積み込まれるバラスト水中の水生生物や細菌類等を確実に死滅させるまたは除去することができるバラスト水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係るバラスト水処理システムは、シーチェストから取り入れられたバラスト水を、
複数のバラストタンクに送出するバラストポンプと、前記バラストポンプから送出されたバラスト水の流量を、開度を変更することによって増減させる流量調整バルブと、前記流量調整バルブを通過したバラスト水の流量を測定する流量計と、前記流量計を通過したバラスト水を処理するバラスト水処理装置と、前記流量計により逐次測定された測定値に基づいて、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、前記バラスト水処理装置の
流量の処理能力を超えないように、前記流量調整バルブの開度を所定の範囲内で制御する制御器とを備え
、複数の前記バラストタンクの少なくとも1つは、前記バラストポンプからの距離または他の前記バラストタンクとの水位差が異なり、前記バラストポンプは、前記バラストタンクまでバラスト水を流通させる管路の長さが最も長く、管路抵抗が最大となる場合に必要な吐出圧力および前記水位差から求められた最小流量に基づいて能力が決定されることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るバラスト水処理システムの運転方法は、シーチェストから取り入れられたバラスト水を、
複数のバラストタンクに送出するバラストポンプと、前記バラストポンプから送出されたバラスト水の流量を、開度を変更することによって増減させる流量調整バルブと、前記流量調整バルブを通過したバラスト水の流量を測定する流量計と、前記流量計を通過したバラスト水を処理するバラスト水処理装置とを備えたバラスト水処理システムの運転方法であって、前記流量計により逐次測定された測定値に基づいて、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、前記バラスト水処理装置の
流量の処理能力を超えないように、前記流量調整バルブの開度を所定の範囲内で制御するようにし
、複数の前記バラストタンクの少なくとも1つは、前記バラストポンプからの距離または他の前記バラストタンクとの水位差が異なり、前記バラストポンプは、前記バラストタンクまでバラスト水を流通させる管路の長さが最も長く、管路抵抗が最大となる場合に必要な吐出圧力および前記水位差から求められた最小流量に基づいて能力が決定されるようにした。
【0011】
本発明に係るバラスト水処理システムおよびバラスト水処理システムの運転方法によれば、バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、バラスト水処理装置の処理能力を超えないように調整されることになる。
これにより、バラストポンプから送出される流量を、常にバラスト水処理装置の処理能力以下に抑えることができて、バラストタンクに積み込まれるバラスト水中の水生生物や細菌類等を確実に死滅させるまたは除去することができる。
【0012】
上記バラスト水処理システムにおいて、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合、前記流量調整バルブが全閉にされるとさらに好適である。
【0013】
上記バラスト水処理システムの運転方法において、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合、前記流量調整バルブを全閉にするとさらに好適である。
【0014】
このようなバラスト水処理システムおよびバラスト水処理システムの運転方法によれば、バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合には、バラスト水処理装置へのバラスト水の供給が停止されることになる。
これにより、バラスト水処理装置の処理能力を超えたバラスト水処理装置へのバラスト水の供給を防止することができ、バラスト水処理装置で処理されなかったバラスト水のバラストタンクへの注水を防止することができる。
【0015】
本発明に係るバラスト水処理システムは、シーチェストから取り入れられたバラスト水を、複数のバラストタンクに送出するバラストポンプと
、バラスト水の流量を測定する流量計と、前記流量計を通過したバラスト水を処理するバラスト水処理装置と、前記流量計により逐次測定された測定値に基づいて、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、前記バラスト水処理装置の流量の処理能力を超えないように、前記バラストポンプの回転数を所定の範囲内で制御する制御器とを備え、複数の前記バラストタンクの少なくとも1つは、前記バラストポンプからの距離または他の前記バラストタンクとの水位差が異なり、前記バラストポンプは、前記バラストタンクまでバラスト水を流通させる管路の長さが最も長く、管路抵抗が最大となる場合に必要な吐出圧力および前記水位差から求められた最小流量に基づいて能力が決定されるようにした。
【0016】
本発明に係るバラスト水処理システムの運転方法は、シーチェストから取り入れられたバラスト水を、複数のバラストタンクに送出するバラストポンプと
、バラスト水の流量を測定する流量計と、前記流量計を通過したバラスト水を処理するバラスト水処理装置とを備えたバラスト水処理システムの運転方法であって、前記流量計により逐次測定された測定値に基づいて、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、前記バラスト水処理装置の流量の処理能力を超えないように、前記バラストポンプの回転数を所定の範囲内で制御するようにし、複数の前記バラストタンクの少なくとも1つは、前記バラストポンプからの距離または他の前記バラストタンクとの水位差が異なり、前記バラストポンプは、前記バラストタンクまでバラスト水を流通させる管路の長さが最も長く、管路抵抗が最大となる場合に必要な吐出圧力および前記水位差から求められた最小流量に基づいて能力が決定されるようにした。
【0017】
本発明に係るバラスト水処理システムおよびバラスト水処理システムの運転方法によれば、バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、バラスト水処理装置の処理能力を超えないように調整されることになる。
これにより、バラストポンプから送出される流量を、常にバラスト水処理装置の処理能力以下に抑えることができて、バラストタンクに積み込まれるバラスト水中の水生生物や細菌類等を確実に死滅させるまたは除去することができる。
【0018】
上記バラスト水処理システムにおいて、前記バラストポンプと前記流量計との間に危急閉止バルブを備え、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合、前記制御器により前記危急閉止バルブが全閉とされるとさらに好適である。
【0019】
上記バラスト水処理システムの運転方法において、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合、前記バラストポンプと前記流量計との間に設けられた危急閉止バルブを全閉にするとさらに好適である。
【0020】
このようなバラスト水処理システムおよびバラスト水処理システムの運転方法によれば、バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合には、バラスト水処理装置へのバラスト水の供給が停止されることになる。
これにより、バラスト水処理装置の処理能力を超えたバラスト水処理装置へのバラスト水の供給を防止することができ、バラスト水処理装置で処理されなかったバラスト水のバラストタンクへの注水を防止することができる。
【0021】
上記バラスト水処理システムにおいて、前記バラスト水処理装置が運転されている状態ではじめて、前記バラストポンプの運転が可能となるインターロック機構を備えているとさらに好適である。
【0022】
上記バラスト水処理システムの運転方法において、前記バラスト水処理装置が運転されている状態で、前記バラストポンプを運転するようにするとさらに好適である。
【0023】
このようなバラスト水処理システムおよびバラスト水処理システムの運転方法によれば、バラストポンプは、常にバラスト水処理装置が運転されている状態で運転されることになる。
これにより、バラスト水処理装置が停止されている状態でバラストポンプが運転されることを防止することおよびバラストポンプの同時運転を防止することができ、作業員による誤操作を未然に防止することができる。
【0024】
本発明に係る船舶は、上記いずれかのバラスト水処理システムを搭載している。
【0025】
本発明に係る船舶によれば、バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、バラスト水処理装置の処理能力を超えないように調整されることになる。
これにより、バラストポンプから送出される流量を、常にバラスト水処理装置の処理能力以下に抑えることができて、バラストタンクに積み込まれるバラスト水中の水生生物や細菌類等を確実に死滅させるまたは除去することができる。
上記バラスト水処理システムにおいて、船舶の船尾部から船首部に設けられる前記バラストタンクに向かって延びる主管から枝分かれして各前記バラストタンクに向かって延びる枝管には、それぞれに自動開閉バルブが接続され、前記制御器には、予め設定された、前記バラストポンプから前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記流量調整バルブおよび前記自動開閉バルブの開閉条件が、前記バラストタンク毎にデータベースとして保存され、前記制御器が、選択された前記バラストポンプから選択された前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記流量調整バルブおよび前記自動開閉バルブの開閉条件ならびにその他の自動開閉バルブの開閉条件について、前記データベースに保存された前記開閉条件と適合していると判断した場合のみ、次の運転手順に進む制御を行うようにするとさらに好適である。
また、上記バラスト水処理システムにおいて、
船舶の船尾部から船首部に設けられる前記バラストタンクに向かって延びる主管から枝分かれして各前記バラストタンクに向かって延びる枝管には、それぞれに自動開閉バルブが接続され、前記制御器には、予め設定された、前記バラストポンプ
から前記バラストタンクに至るまでの間に配置された
前記自動開閉バルブの開閉条件が、前記バラストタンク毎にデータベースとして保存され、前記制御器が、選択された前記バラストポンプ
から選択された前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記自動開閉バルブの開閉条件
及びその他の自動開閉バルブの開閉条件について、前記データベースに保存され
た前記開閉条件と適合していると判断した場合のみ、次の運転手順に進む制御を行うようにするとさらに好適である。
また、上記バラスト水処理システムの運転方法において、船舶の船尾部から船首部に設けられる前記バラストタンクに向かって延びる主管から枝分かれして各前記バラストタンクに向かって延びる枝管には、それぞれに自動開閉バルブが接続され、前記制御器には、予め設定された、前記バラストポンプから前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記流量調整バルブおよび前記自動開閉バルブの開閉条件が、前記バラストタンク毎にデータベースとして保存され、選択された前記バラストポンプから選択された前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記流量調整バルブおよび前記自動開閉バルブの開閉条件ならびにその他の自動開閉バルブの開閉条件について、前記データベースに保存された前記開閉条件と適合していると判断した場合のみ、次の運転手順に進む制御を行うようにするとさらに好適である。
また、上記バラスト水処理システムの運転方法において、
船舶の船尾部から船首部に設けられる前記バラストタンクに向かって延びる主管から枝分かれして各前記バラストタンクに向かって延びる枝管には、それぞれに自動開閉バルブが接続され、前記制御器には、予め設定された、前記バラストポンプ
から前記バラストタンクに至るまでの間に配置された
前記自動開閉バルブの開閉条件が、前記バラストタンク毎にデータベースとして保存され、選択された前記バラストポンプ
から選択された前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記自動開閉バルブの開閉条件
及びその他の自動開閉バルブの開閉条件について、前記データベースに保存され
た前記開閉条件と適合していると判断した場合のみ、次の運転手順に進む制御を行うようにするとさらに好適である。