特許第6021293号(P6021293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021293
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】バラスト水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20161027BHJP
   B63B 13/00 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   C02F1/00 S
   B63B13/00 E
   B63B13/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2010-97174(P2010-97174)
(22)【出願日】2010年4月20日
(65)【公開番号】特開2011-224476(P2011-224476A)
(43)【公開日】2011年11月10日
【審査請求日】2013年4月16日
【審判番号】不服2015-8423(P2015-8423/J1)
【審判請求日】2015年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】塚本 泉
(72)【発明者】
【氏名】大西 康介
(72)【発明者】
【氏名】安部 和也
【合議体】
【審判長】 新居田 知生
【審判官】 永田 史泰
【審判官】 中澤 登
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−112978(JP,A)
【文献】 特表2010−504855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00-1/78
B63B13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーチェストから取り入れられたバラスト水を、複数のバラストタンクに送出するバラストポンプと、
前記バラストポンプから送出されたバラスト水の流量を、開度を変更することによって増減させる流量調整バルブと、
前記流量調整バルブを通過したバラスト水の流量を測定する流量計と、
前記流量計を通過したバラスト水を処理するバラスト水処理装置と、
前記流量計により逐次測定された測定値に基づいて、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、前記バラスト水処理装置の流量の処理能力を超えないように、前記流量調整バルブの開度を所定の範囲内で制御する制御器と、
を備え、
複数の前記バラストタンクの少なくとも1つは、前記バラストポンプからの距離または他の前記バラストタンクとの水位差が異なり、
前記バラストポンプは、前記バラストタンクまでバラスト水を流通させる管路の長さが最も長く、管路抵抗が最大となる場合に必要な吐出圧力および前記水位差から求められた最小流量に基づいて能力が決定されることを特徴とするバラスト水処理システム。
【請求項2】
前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合、前記流量調整バルブが全閉とされることを特徴とする請求項1に記載のバラスト水処理システム。
【請求項3】
シーチェストから取り入れられたバラスト水を、複数のバラストタンクに送出するバラストポンプと、
ラスト水の流量を測定する流量計と、
前記流量計を通過したバラスト水を処理するバラスト水処理装置と、
前記流量計により逐次測定された測定値に基づいて、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、前記バラスト水処理装置の流量の処理能力を超えないように、前記バラストポンプの回転数を所定の範囲内で制御する制御器と、
を備え、
複数の前記バラストタンクの少なくとも1つは、前記バラストポンプからの距離または他の前記バラストタンクとの水位差が異なり、
前記バラストポンプは、前記バラストタンクまでバラスト水を流通させる管路の長さが最も長く、管路抵抗が最大となる場合に必要な吐出圧力および前記水位差から求められた最小流量に基づいて能力が決定されることを特徴とするバラスト水処理システム。
【請求項4】
前記バラストポンプと前記流量計との間に危急閉止バルブを備え、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合、前記制御器により前記危急閉止バルブが全閉とされることを特徴とする請求項3に記載のバラスト水処理システム。
【請求項5】
前記バラスト水処理装置が運転されている状態ではじめて、前記バラストポンプの運転が可能となるインターロック機構を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のバラスト水処理システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のバラスト水処理システムを具備していることを特徴とする船舶。
【請求項7】
シーチェストから取り入れられたバラスト水を、複数のバラストタンクに送出するバラストポンプと、
前記バラストポンプから送出されたバラスト水の流量を、開度を変更することによって増減させる流量調整バルブと、
前記流量調整バルブを通過したバラスト水の流量を測定する流量計と、
前記流量計を通過したバラスト水を処理するバラスト水処理装置とを備えたバラスト水処理システムの運転方法であって、
前記流量計により逐次測定された測定値に基づいて、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、前記バラスト水処理装置の流量の処理能力を超えないように、前記流量調整バルブの開度を所定の範囲内で制御するようにし、
複数の前記バラストタンクの少なくとも1つは、前記バラストポンプからの距離または他の前記バラストタンクとの水位差が異なり、
前記バラストポンプは、前記バラストタンクまでバラスト水を流通させる管路の長さが最も長く、管路抵抗が最大となる場合に必要な吐出圧力および前記水位差から求められた最小流量に基づいて能力が決定されることを特徴とするバラスト水処理システムの運転方法。
【請求項8】
前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合、前記流量調整バルブを全閉とすることを特徴とする請求項7に記載のバラスト水処理システムの運転方法。
【請求項9】
シーチェストから取り入れられたバラスト水を、複数のバラストタンクに送出するバラストポンプと
ラスト水の流量を測定する流量計と、
前記流量計を通過したバラスト水を処理するバラスト水処理装置とを備えたバラスト水処理システムの運転方法であって、
前記流量計により逐次測定された測定値に基づいて、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、前記バラスト水処理装置の流量の処理能力を超えないように、前記バラストポンプの回転数を所定の範囲内で制御するようにし、
複数の前記バラストタンクの少なくとも1つは、前記バラストポンプからの距離または他の前記バラストタンクとの水位差が異なり、
前記バラストポンプは、前記バラストタンクまでバラスト水を流通させる管路の長さが最も長く、管路抵抗が最大となる場合に必要な吐出圧力および前記水位差から求められた最小流量に基づいて能力が決定されることを特徴とするバラスト水処理システムの運転方法。
【請求項10】
前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合、前記バラストポンプと前記流量計との間に設けられた危急閉止バルブを全閉とすることを特徴とする請求項9に記載のバラスト水処理システムの運転方法。
【請求項11】
前記バラスト水処理装置が運転されている状態で、前記バラストポンプを運転するようにしたことを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載のバラスト水処理システムの運転方法。
【請求項12】
船舶の船尾部から船首部に設けられる前記バラストタンクに向かって延びる主管から枝分かれして各前記バラストタンクに向かって延びる枝管には、それぞれに自動開閉バルブが接続され、
前記制御器には、予め設定された、前記バラストポンプから前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記流量調整バルブおよび前記自動開閉バルブの開閉条件が、前記バラストタンク毎にデータベースとして保存され、
前記制御器が、選択された前記バラストポンプから選択された前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記流量調整バルブおよび前記自動開閉バルブの開閉条件ならびにその他の自動開閉バルブの開閉条件について、前記データベースに保存された前記開閉条件と適合していると判断した場合のみ、次の運転手順に進む制御を行う、請求項1に記載のバラスト水処理システム。
【請求項13】
船舶の船尾部から船首部に設けられる前記バラストタンクに向かって延びる主管から枝分かれして各前記バラストタンクに向かって延びる枝管には、それぞれに自動開閉バルブが接続され、
前記制御器には、予め設定された、前記バラストポンプから前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記自動開閉バルブの開閉条件が、前記バラストタンク毎にデータベースとして保存され、
前記制御器が、選択された前記バラストポンプから選択された前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記自動開閉バルブの開閉条件及びその他の自動開閉バルブの開閉条件について、前記データベースに保存された前記開閉条件と適合していると判断した場合のみ、次の運転手順に進む制御を行う、請求項3に記載のバラスト水処理システム。
【請求項14】
船舶の船尾部から船首部に設けられる前記バラストタンクに向かって延びる主管から枝分かれして各前記バラストタンクに向かって延びる枝管には、それぞれに自動開閉バルブが接続され
め設定された、前記バラストポンプから前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記流量調整バルブおよび前記自動開閉バルブの開閉条件が、前記バラストタンク毎にデータベースとして保存され、
選択された前記バラストポンプから選択された前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記流量調整バルブおよび前記自動開閉バルブの開閉条件ならびにその他の自動開閉バルブの開閉条件について、前記データベースに保存された前記開閉条件と適合していると判断した場合のみ、次の運転手順に進む制御を行う、請求項7に記載のバラスト水処理システムの運転方法。
【請求項15】
船舶の船尾部から船首部に設けられる前記バラストタンクに向かって延びる主管から枝分かれして各前記バラストタンクに向かって延びる枝管には、それぞれに自動開閉バルブが接続され、
め設定された、前記バラストポンプから前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記自動開閉バルブの開閉条件が、前記バラストタンク毎にデータベースとして保存され、
選択された前記バラストポンプから選択された前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記自動開閉バルブの開閉条件及びその他の自動開閉バルブの開閉条件について、前記データベースに保存された前記開閉条件と適合していると判断した場合のみ、次の運転手順に進む制御を行う、請求項9に記載のバラスト水処理システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶のバラストタンクに積み込まれるバラスト水中の水生生物や細菌類等を死滅させるまたは除去する処理を行なうとともに、処理されたバラスト水を排水する海域に悪影響を及ぼさないバラスト水処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
さて、鉱石や原油等を運搬する船舶にはバラストタンクが設けられ、このバラストタンクに海水や淡水等のバラスト水を貯留することによって船体の姿勢制御や復原性確保が行われる。バラスト水は、空船時等にバラストタンク内に取水され、積荷の進行に応じてバラストタンクから排水されるため、取水地と異なる地域で排水される。したがって、バラスト水とともに水生生物や細菌類等が移動し、新たな環境に定着するおそれがあり、その場合には生態系を破壊したり、水産業等の経済活動に影響を与えたりすることが懸念される。また、バラスト水とともに移動した病原菌によって、人体の健康に直接影響を与えることも危惧される。
【0003】
そこで、船舶のバラスト水管理に関する国際条約において、2004年2月に「船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約」が採択され、バラスト水処理装置の搭載が義務付けられた。国際海事機構(International Maritime Organization :IMO)が定めたバラスト水管理基準は次のとおりである。
・最小サイズが50μm以上の生物は1m中に生きた生物数が10個体未満。
・最小サイズが50μm未満で10μm以上の生物は1ml中に生きた生物数が10個体未満。
・毒素酸生性コレラ(O-1,O-139)は1cfu/100μm未満。
・大腸菌は250cfu/100ml未満。
・腸球菌は100cfu/100ml未満。
【0004】
このような基準を満たすため、バラスト水を浄化する様々なバラスト水処理技術が提案されている。例えば、従来は、フィルターで粗濾過(物理処理)をした後、殺菌剤を添加する殺菌方式が主流となっており、特許文献1では、塩素系薬剤を添加することによりバラスト水を殺菌している。また、特許文献2では、過酸化水素によりバラスト水を殺菌し、特許文献3では、オゾンによりバラスト水を殺菌している。
【0005】
近年では、殺菌方式に代わり、凝集分離方式も提案されている。例えば、特許文献4では、バラスト水に薬剤と磁性粉を添加することにより、除去対象の水生生物を巻き込んで磁性フロックを形成し、この磁性フロックを磁石やフィルターを用いて回収することで、対象となる水生生物を分離除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−322788号公報
【特許文献2】特開平5−910号公報
【特許文献3】特開2006−212494号公報
【特許文献4】特開2005−218887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、従来のバラスト水処理システムでは、バラストポンプの能力(定格流量)に対して、それと同等または若干上回る能力(装置容量)を有するバラスト水処理装置が選定されている。
しかしながら、一般的なバラストポンプは遠心ポンプであり、遠心ポンプの特性上、バラストポンプから送出される流量が、バラスト水処理装置の処理能力を超えてしまうことがある。すなわち、図5に示すように、バラスト水処理装置の処理能力が、例えば、Qm/hである場合に、Qm/hの能力を有する遠心ポンプをバラストポンプとして採用すると、バラストポンプの能力は、バラストタンクまでの管路長が最も長く、管路抵抗が最大となる場合に必要な吐出圧力および水位差から求められた最小流量に基づいて決定されているため、バラストタンクまでの管路長が短くなり、管路抵抗が減少するにしたがって、ポンプの性能曲線に沿って運転点がAからBに向かって移動し、図6に示すように、バラストポンプから送出される流量が、バラスト水処理装置の処理能力を超えてしまうことがある。
また、バラストポンプは、通常船舶に予備用を含め二台搭載されることが多く、二台同時運転も実質的には可能である。同時運転した場合、図5に示すポンプ性能曲線が流量増加の方向へ移動し、バラストポンプから送出される流量はより増加することになる。
なお、図6は、850m/hの能力を有する遠心ポンプを使って、管路長が最も短くなり、管路抵抗が最小となるバラストタンク(最も船尾側(機関室側)の船底に位置するバラストタンク)に注水したときに、遠心ポンプから実際に送出されるバラスト水(海水)の流量と、時間との関係を示している。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、バラストポンプから送出される流量を、常にバラスト水処理装置の処理能力以下に抑えることができて、バラストタンクに積み込まれるバラスト水中の水生生物や細菌類等を確実に死滅させるまたは除去することができるバラスト水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係るバラスト水処理システムは、シーチェストから取り入れられたバラスト水を、複数のバラストタンクに送出するバラストポンプと、前記バラストポンプから送出されたバラスト水の流量を、開度を変更することによって増減させる流量調整バルブと、前記流量調整バルブを通過したバラスト水の流量を測定する流量計と、前記流量計を通過したバラスト水を処理するバラスト水処理装置と、前記流量計により逐次測定された測定値に基づいて、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、前記バラスト水処理装置の流量の処理能力を超えないように、前記流量調整バルブの開度を所定の範囲内で制御する制御器とを備え、複数の前記バラストタンクの少なくとも1つは、前記バラストポンプからの距離または他の前記バラストタンクとの水位差が異なり、前記バラストポンプは、前記バラストタンクまでバラスト水を流通させる管路の長さが最も長く、管路抵抗が最大となる場合に必要な吐出圧力および前記水位差から求められた最小流量に基づいて能力が決定されることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るバラスト水処理システムの運転方法は、シーチェストから取り入れられたバラスト水を、複数のバラストタンクに送出するバラストポンプと、前記バラストポンプから送出されたバラスト水の流量を、開度を変更することによって増減させる流量調整バルブと、前記流量調整バルブを通過したバラスト水の流量を測定する流量計と、前記流量計を通過したバラスト水を処理するバラスト水処理装置とを備えたバラスト水処理システムの運転方法であって、前記流量計により逐次測定された測定値に基づいて、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、前記バラスト水処理装置の流量の処理能力を超えないように、前記流量調整バルブの開度を所定の範囲内で制御するようにし、複数の前記バラストタンクの少なくとも1つは、前記バラストポンプからの距離または他の前記バラストタンクとの水位差が異なり、前記バラストポンプは、前記バラストタンクまでバラスト水を流通させる管路の長さが最も長く、管路抵抗が最大となる場合に必要な吐出圧力および前記水位差から求められた最小流量に基づいて能力が決定されるようにした。
【0011】
本発明に係るバラスト水処理システムおよびバラスト水処理システムの運転方法によれば、バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、バラスト水処理装置の処理能力を超えないように調整されることになる。
これにより、バラストポンプから送出される流量を、常にバラスト水処理装置の処理能力以下に抑えることができて、バラストタンクに積み込まれるバラスト水中の水生生物や細菌類等を確実に死滅させるまたは除去することができる。
【0012】
上記バラスト水処理システムにおいて、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合、前記流量調整バルブが全閉にされるとさらに好適である。
【0013】
上記バラスト水処理システムの運転方法において、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合、前記流量調整バルブを全閉にするとさらに好適である。
【0014】
このようなバラスト水処理システムおよびバラスト水処理システムの運転方法によれば、バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合には、バラスト水処理装置へのバラスト水の供給が停止されることになる。
これにより、バラスト水処理装置の処理能力を超えたバラスト水処理装置へのバラスト水の供給を防止することができ、バラスト水処理装置で処理されなかったバラスト水のバラストタンクへの注水を防止することができる。
【0015】
本発明に係るバラスト水処理システムは、シーチェストから取り入れられたバラスト水を、複数のバラストタンクに送出するバラストポンプと、バラスト水の流量を測定する流量計と、前記流量計を通過したバラスト水を処理するバラスト水処理装置と、前記流量計により逐次測定された測定値に基づいて、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、前記バラスト水処理装置の流量の処理能力を超えないように、前記バラストポンプの回転数を所定の範囲内で制御する制御器とを備え、複数の前記バラストタンクの少なくとも1つは、前記バラストポンプからの距離または他の前記バラストタンクとの水位差が異なり、前記バラストポンプは、前記バラストタンクまでバラスト水を流通させる管路の長さが最も長く、管路抵抗が最大となる場合に必要な吐出圧力および前記水位差から求められた最小流量に基づいて能力が決定されるようにした。
【0016】
本発明に係るバラスト水処理システムの運転方法は、シーチェストから取り入れられたバラスト水を、複数のバラストタンクに送出するバラストポンプと、バラスト水の流量を測定する流量計と、前記流量計を通過したバラスト水を処理するバラスト水処理装置とを備えたバラスト水処理システムの運転方法であって、前記流量計により逐次測定された測定値に基づいて、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、前記バラスト水処理装置の流量の処理能力を超えないように、前記バラストポンプの回転数を所定の範囲内で制御するようにし、複数の前記バラストタンクの少なくとも1つは、前記バラストポンプからの距離または他の前記バラストタンクとの水位差が異なり、前記バラストポンプは、前記バラストタンクまでバラスト水を流通させる管路の長さが最も長く、管路抵抗が最大となる場合に必要な吐出圧力および前記水位差から求められた最小流量に基づいて能力が決定されるようにした。
【0017】
本発明に係るバラスト水処理システムおよびバラスト水処理システムの運転方法によれば、バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、バラスト水処理装置の処理能力を超えないように調整されることになる。
これにより、バラストポンプから送出される流量を、常にバラスト水処理装置の処理能力以下に抑えることができて、バラストタンクに積み込まれるバラスト水中の水生生物や細菌類等を確実に死滅させるまたは除去することができる。
【0018】
上記バラスト水処理システムにおいて、前記バラストポンプと前記流量計との間に危急閉止バルブを備え、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合、前記制御器により前記危急閉止バルブが全閉とされるとさらに好適である。
【0019】
上記バラスト水処理システムの運転方法において、前記バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合、前記バラストポンプと前記流量計との間に設けられた危急閉止バルブを全閉にするとさらに好適である。
【0020】
このようなバラスト水処理システムおよびバラスト水処理システムの運転方法によれば、バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた閾値を超えた場合には、バラスト水処理装置へのバラスト水の供給が停止されることになる。
これにより、バラスト水処理装置の処理能力を超えたバラスト水処理装置へのバラスト水の供給を防止することができ、バラスト水処理装置で処理されなかったバラスト水のバラストタンクへの注水を防止することができる。
【0021】
上記バラスト水処理システムにおいて、前記バラスト水処理装置が運転されている状態ではじめて、前記バラストポンプの運転が可能となるインターロック機構を備えているとさらに好適である。
【0022】
上記バラスト水処理システムの運転方法において、前記バラスト水処理装置が運転されている状態で、前記バラストポンプを運転するようにするとさらに好適である。
【0023】
このようなバラスト水処理システムおよびバラスト水処理システムの運転方法によれば、バラストポンプは、常にバラスト水処理装置が運転されている状態で運転されることになる。
これにより、バラスト水処理装置が停止されている状態でバラストポンプが運転されることを防止することおよびバラストポンプの同時運転を防止することができ、作業員による誤操作を未然に防止することができる。
【0024】
本発明に係る船舶は、上記いずれかのバラスト水処理システムを搭載している。
【0025】
本発明に係る船舶によれば、バラスト水処理装置に供給されるバラスト水の流量が、バラスト水処理装置の処理能力を超えないように調整されることになる。
これにより、バラストポンプから送出される流量を、常にバラスト水処理装置の処理能力以下に抑えることができて、バラストタンクに積み込まれるバラスト水中の水生生物や細菌類等を確実に死滅させるまたは除去することができる。
上記バラスト水処理システムにおいて、船舶の船尾部から船首部に設けられる前記バラストタンクに向かって延びる主管から枝分かれして各前記バラストタンクに向かって延びる枝管には、それぞれに自動開閉バルブが接続され、前記制御器には、予め設定された、前記バラストポンプから前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記流量調整バルブおよび前記自動開閉バルブの開閉条件が、前記バラストタンク毎にデータベースとして保存され、前記制御器が、選択された前記バラストポンプから選択された前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記流量調整バルブおよび前記自動開閉バルブの開閉条件ならびにその他の自動開閉バルブの開閉条件について、前記データベースに保存された前記開閉条件と適合していると判断した場合のみ、次の運転手順に進む制御を行うようにするとさらに好適である。
また、上記バラスト水処理システムにおいて、船舶の船尾部から船首部に設けられる前記バラストタンクに向かって延びる主管から枝分かれして各前記バラストタンクに向かって延びる枝管には、それぞれに自動開閉バルブが接続され、前記制御器には、予め設定された、前記バラストポンプから前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記自動開閉バルブの開閉条件が、前記バラストタンク毎にデータベースとして保存され、前記制御器が、選択された前記バラストポンプから選択された前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記自動開閉バルブの開閉条件及びその他の自動開閉バルブの開閉条件について、前記データベースに保存された前記開閉条件と適合していると判断した場合のみ、次の運転手順に進む制御を行うようにするとさらに好適である。
また、上記バラスト水処理システムの運転方法において、船舶の船尾部から船首部に設けられる前記バラストタンクに向かって延びる主管から枝分かれして各前記バラストタンクに向かって延びる枝管には、それぞれに自動開閉バルブが接続され、前記制御器には、予め設定された、前記バラストポンプから前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記流量調整バルブおよび前記自動開閉バルブの開閉条件が、前記バラストタンク毎にデータベースとして保存され、選択された前記バラストポンプから選択された前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記流量調整バルブおよび前記自動開閉バルブの開閉条件ならびにその他の自動開閉バルブの開閉条件について、前記データベースに保存された前記開閉条件と適合していると判断した場合のみ、次の運転手順に進む制御を行うようにするとさらに好適である。
また、上記バラスト水処理システムの運転方法において、船舶の船尾部から船首部に設けられる前記バラストタンクに向かって延びる主管から枝分かれして各前記バラストタンクに向かって延びる枝管には、それぞれに自動開閉バルブが接続され、前記制御器には、予め設定された、前記バラストポンプから前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記自動開閉バルブの開閉条件が、前記バラストタンク毎にデータベースとして保存され、選択された前記バラストポンプから選択された前記バラストタンクに至るまでの間に配置された前記自動開閉バルブの開閉条件及びその他の自動開閉バルブの開閉条件について、前記データベースに保存された前記開閉条件と適合していると判断した場合のみ、次の運転手順に進む制御を行うようにするとさらに好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るバラスト水処理システムによれば、バラストポンプから送出される流量を、常にバラスト水処理装置の処理能力以下に抑えることができて、バラストタンクに積み込まれるバラスト水中の水生生物や細菌類等を確実に死滅させるまたは除去することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係るバラスト水処理システムを搭載した船舶を上方から見た図であって、本発明の第1実施形態に係るバラスト水処理システムの概略の構成を示す図である。
図2図1の要部を拡大して示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るバラスト水処理システムの運転手順および制御器による制御手順を説明するためのフローチャートである。
図4】本発明の第2実施形態に係るバラスト水処理システムの概略の構成を示す図であって、図2と同様の図である。
図5】従来の問題点を説明するための図表である。
図6】従来の問題点を説明するための図表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係るバラスト水処理システムについて、図1から図3を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係るバラスト水処理システムを搭載した船舶を上方から見た図であって、本実施形態に係るバラスト水処理システムの概略の構成を示す図、図2図1の要部を拡大して示す図、図3は本実施形態に係るバラスト水処理システムの運転手順および制御器による制御手順を説明するためのフローチャートである。
【0029】
本発明に係るバラスト水処理システムは、船首部や船底、あるいは舷側に複数個(本実施形態では23個)のバラストタンク2を具備した船舶(コンテナ船、LNG船、油槽船等)1に搭載されて運転されるシステムである。
本実施形態に係るバラスト水処理システム10は、シーチェスト(海水吸入口)11と、二台のバラストポンプ12と、流量調整(制御)バルブ13と、流量計14と、バラスト水処理装置15と、バラストライン(注排水管)16と、制御器17とを備えている。
なお、バラストポンプ12、流量調整バルブ13、流量計14、およびバラスト水処理装置15は、船舶1の機関室3内に配置されている。
【0030】
バラストライン16は、船尾部から船首尾方向に沿って船首部に設けられたバラストタンク2に向かって延びる主管16aと、この主管16aから枝分かれして船幅方向(船首尾方向と直交する方向)に沿って船底や舷側に設けられたバラストタンク2またはシーチェスト11に向かって延びる枝管16bとを備えている。
【0031】
シーチェスト11は、左舷側の船底および右舷側の船底にそれぞれ一つずつ設けられており、シーチェスト11から取り入れられた海水は、枝管16bを介して主管16aの一端部(図1において左側に位置する船尾側の端部)に流入するようになっている。
バラストポンプ12は、主管16aの一端部と流量調整バルブ13との間の上流側で二つに分岐して二つの流路を形成し、その下流側で合流して再び一つの流路を形成する二本の主管16aにそれぞれ一台ずつ接続されている。
【0032】
流量調整バルブ13は、制御器17から送られてくる制御信号(指令信号)に基づいてその開度が例えば、30°〜90°の範囲(所定の範囲)内で自動的に調整される(開閉される)電動バタフライバルブであり、バラストポンプ12が接続された二本の主管16aが合流する合流点18と、流量計14との間に位置する主管16aの途中に接続されている。
なお、ここでいう開度0°とは全閉状態のことであり、開度90°とは全開状態のことである。
【0033】
流量計14は、流量調整バルブ13からバラスト水処理装置15に流入するバラスト水(海水)の流量を測定するもの(例えば、電磁流量計)であり、流量計14で測定されたデータ(流量計値q(t):測定値)は、制御器17に出力され、制御器17内にて処理される。
バラスト水処理装置15は、フィルター、電気分解、オゾン殺菌、UV照射、凝縮分離等を用いてバラストタンク2に注水(給水)されるバラスト水を処理する(例えば、バラスト水中の水生生物や細菌類等を死滅させるまたは除去する)装置であり、流量計14の下流側に位置する主管16aに接続されている。
【0034】
主管16aから各バラストタンク2に向かって延びる枝管16bの途中、および船首部に設けられたバラストタンク2に接続された主管16aの他端部(図1において右側に位置する船首側の端部)には、自動開閉バルブ19がそれぞれ接続されている。これら自動開閉バルブ19は、対応するバラストタンク2にバラスト水を注水するとき、または対応するバラストタンク2からバラスト水を排水するときに全開とされ、これら以外のとき(すなわち、対応するバラストタンク2にバラスト水を注水しないとき、または対応するバラストタンク2からバラスト水を排水しないとき)に全閉とされる。
【0035】
バラストタンク2に向かって延びる枝管16bのうち、最も船尾側(上流側)に位置する枝管16bと主管16aとの接合点20と、バラスト水処理装置15との間に位置する主管16aの途中には、リターンライン(第1の排水管)21の一端が接続され、主管16aの一端部と、この一端部の船尾側(下流側)で、バラストポンプ12が接続された二本の主管16aに分岐する分岐点22との間に位置する主管16aの途中には、リターンライン21の他端が接続されている。また、リターンライン21の上流側に位置する一端部(リターンライン21の、主管16aから分岐する分岐点23の近傍)には、自動開閉バルブ24が接続されている。この自動開閉バルブ24は、バラストタンク2からバラスト水を排水するときに全開とされ、これ以外のとき(バラストタンク2からバラスト水を排水しないとき)に全閉とされる。
【0036】
バラスト水処理装置15と分岐点23との間に位置する主管16aの途中には、船幅方向に沿って左舷側の舷側外板に向かって延びる船外排水ライン(第2の排水管)25の一端が接続され、船外排水ライン25の他端には、船外に開口する船外吐出口26が設けられている。船外排水ライン25の途中には、上流側から自動開閉バルブ27、手動開閉バルブ28が設けられている。自動開閉バルブ27は、バラストタンク2からバラスト水を排水するときに全開とされ、これ以外のとき(バラストタンク2からバラスト水を排水しないとき)に全閉とされる。一方、手動開閉バルブ28は、常時全開とされ、自動開閉バルブ27が故障により全閉できなくなったとき等に全閉とされる。
【0037】
船外排水ライン25の一端が接続される分岐点29と、リターンライン21の一端が接続される分岐点23との間に位置する主管16aの途中には、自動開閉バルブ30が接続されている。この自動開閉バルブ30は、バラストタンク2にバラスト水を注水するときに全開とされ、これ以外のとき(バラストタンク2にバラスト水を注水しないとき)に全閉とされる。
分岐点22とバラストポンプ12との間に位置する主管16aの途中には、自動開閉バルブ(サクションバルブ)31がそれぞれ接続されている。自動開閉バルブ31は、バラストタンク2にバラスト水を注水するとき、またはバラストタンク2からバラスト水を排水するときに全開とされ、これら以外のとき(すなわち、バラストタンク2にバラスト水を注水しないとき、またはバラストタンク2からバラスト水を排水しないとき)に全閉とされる。
なお、自動開閉バルブ19,24,27,30,31はそれぞれ、船橋、機関室または機関制御室に配置された図示しないコントロールパネル(制御盤)で遠隔操作できるように構成されている。
【0038】
制御器17は、図3に示すフローチャートにしたがって、流量調整バルブ13の開度を制御するための制御信号を流量調整バルブ13に出力する制御装置である。また、この制御器17には、予め設定された、バラストポンプ12からバラストタンク2に至るまでの間に配置された流量調整バルブ13、自動開閉バルブ19,30,31の開閉条件(状態)がバラストタンク2毎にデータベースとして保存(記憶)されている。そして、バラストポンプ12および注水するバラストタンク2が選定され、選択されたバラストポンプ12から当該バラストタンク2に至るまでの間に配置された流量調整バルブ13、自動開閉バルブ19,30,31の開閉条件、およびその他の自動開閉バルブ19,31の開閉条件がデータベースに保存された開閉条件と適合しない場合、つぎのステップに進めないようになっている。すなわち、選択されたバラストポンプ12から選択されたバラストタンク2に至るまでの間に配置された流量調整バルブ13、自動開閉バルブ19,30,31の開閉条件、およびその他の自動開閉バルブ19,31の開閉条件がデータベースに保存された開閉条件と適合している場合のみ、つぎのステップに進むことができるようになっている。
【0039】
以下、図3に示すフローチャートを説明する。
まず、使用するバラストポンプ12および注水するバラストタンク2を選定(決定:入力)する。
つぎに、選択されたバラストポンプ12から、選択されたバラストタンク2に至るまでの間に配置された流量調整バルブ13、自動開閉バルブ19,30,31の開閉条件、およびその他の自動開閉バルブ19,31の開閉条件がデータベースに保存された開閉条件と適合するか否かを判断し、適合していない場合には、流量調整バルブ13の開閉状態(流量調整バルブ13が全閉(閉止)状態となっていること)、各自動開閉バルブ19,30,31の開閉状態を確認し、データベースに保存された開閉条件と適合するようにバルブの開閉状態を訂正(修正)する。
【0040】
つづいて、コントロールパネルに設けられたバラスト水処理装置15の電源スイッチをONにし(入れ)、バラスト水処理装置15を運転(起動)する。
なお、バラスト水処理装置15の電源スイッチは、選択されたバラストポンプ12から、選択されたバラストタンク2に至るまでの間に配置された流量調整バルブ13、自動開閉バルブ19,30,31の開閉条件、およびその他の自動開閉バルブ19,31の開閉条件がデータベースに保存された開閉条件と適合しないとONにならない(入らない)ようになっている。
【0041】
つぎに、コントロールパネルに設けられた、選択されたバラストポンプ12側の自動開閉バルブ(サクションバルブ)31の開スイッチをONにし(入れ)、自動開閉バルブ31を全開にする。
なお、選択されたバラストポンプ12側の自動開閉バルブ31の開スイッチは、バラスト水処理装置15の電源スイッチがONにならない(入らない)とONにならない(入らない)ようになっている。
【0042】
つづいて、コントロールパネルに設けられた、選択されたバラストポンプ12の運転スイッチをONにし(入れ)、選択されたバラストポンプ12を運転(起動)する。
なお、選択されたバラストポンプ12の運転スイッチは、選択されたバラストポンプ12側の自動開閉バルブ31の開スイッチがONにならない(入らない)とONにならない(入らない)ようになっている。
そして、選択されたバラストポンプ12が運転されると、制御器17は、全閉状態にあった流量調整バルブ13の開度を30°(最小値:最小開度)とする制御信号を流量調整バルブ13に対して出力し、選択されたバラストポンプ12への注水が開始される。
【0043】
つぎに、制御器17は、流量計14から刻一刻(逐次)送られてくるデータ(流量計値q(t))と、データベースに予め保存された下限値Ql、下限値Qlよりも大きな値である上限値Qh、上限値Qhよりも大きな値である最大値(閾値)QMとを比較して、データ(流量計値q(t))が最大値QMよりも大きいときには、流量調整バルブ13の開度を0°とする制御信号を流量調整バルブ13に対して出力し、流量調整バルブ13は、全閉(閉止)状態となり、選択されたバラストタンク2への注水が停止される。
【0044】
また、制御器17は、流量計14から刻一刻送られてくるデータ(流量計値q(t))と、データベースに予め保存された下限値Ql、上限値Qh、最大値QMとを比較して、データ(流量計値q(t))が下限値Qlよりも小さいときには、流量計14で測定されるデータ(流量計値q(t))が下限値Ql以上となる制御信号を流量調整バルブ13に対して出力し、データ(流量計値q(t))が上限値Qhよりも大きいときには、流量計14で測定されるデータ(流量計値q(t))が上限値Qh以下となる制御信号を流量調整バルブ13に対して出力して、流量計14で測定されるデータ(流量計値q(t))が下限値Ql以上、上限値Qh以下になるようにする。
【0045】
選択されたバラストタンク2が一つだけで、当該バラストタンク2への注水が完了したら、当該バラストタンク2に通じる枝管16bに設けられた自動開閉バルブ19を、コントロールパネルに設けられた閉スイッチで全閉状態にし、バラストポンプ12を、コントロールパネルに設けられた停止スイッチで停止させ、自動開閉バルブ31を、コントロールパネルに設けられた閉スイッチで全閉状態にして、バラスト水処理装置15を、コントロールパネルに設けられた電源スイッチをOFFにして停止させ、当該バラストタンク2への注水作業を終了する。
【0046】
一方、選択されたバラストタンク2が二つ以上あり、注水先のバラストタンク2が切り換えられる場合、または選択されたバラストタンク2が当初は一つであったが、当該バラストタンク2への注水中に、注水先を他のバラストタンク2に変更しようとする場合等には、制御器17が、30°〜90°の範囲にあった(30°〜90°の範囲で調整されていた)流量調整バルブ13の開度を30°とする制御信号を流量調整バルブ13に対して出力し、流量調整バルブ13の開度が最小開度になるように流量調整バルブ13を操作(調整)する。
【0047】
つづいて、現在運転されているバラストポンプ12から、変更後のバラストタンク2に至るまでの間に配置された自動開閉バルブ19の開閉条件、およびその他の自動開閉バルブ19の開閉条件がデータベースに保存された開閉条件と適合するようにバルブの開閉状態を変更して、変更後のバラストタンク2への注水を開始する。
【0048】
つぎに、制御器17は、流量計14から刻一刻(逐次)送られてくるデータ(流量計値q(t))と、データベースに予め保存された下限値Ql、下限値Qlよりも大きな値である上限値Qh、上限値Qhよりも大きな値である最大値QMとを比較して、データ(流量計値q(t))が最大値QMよりも大きいときには、流量調整バルブ13の開度を0°とする制御信号を流量調整バルブ13に対して出力し、流量調整バルブ13は、全閉(閉止)状態となり、選択されたバラストタンク2への注水が停止される。
【0049】
また、制御器17は、流量計14から刻一刻送られてくるデータ(流量計値q(t))と、データベースに予め保存された下限値Ql、上限値Qh、最大値QMとを比較して、データ(流量計値q(t))が下限値Qlよりも小さいときには、流量計14で測定されるデータ(流量計値q(t))が下限値Ql以上となる制御信号を流量調整バルブ13に対して出力し、データ(流量計値q(t))が上限値Qhよりも大きいときには、流量計14で測定されるデータ(流量計値q(t))が上限値Qh以下となる制御信号を流量調整バルブ13に対して出力して、流量計14で測定されるデータ(流量計値q(t))が下限値Ql以上、上限値Qh以下になるようにする。
以下、注水先のバラストタンク2が切り換えられる度に、同様の手順が繰り返されることになる。
【0050】
本実施形態に係るバラスト水処理システム10によれば、バラスト水処理装置15に供給されるバラスト水の流量が、バラスト水処理装置15の処理能力を超えないように調整されることになる。
これにより、バラストポンプ12から送出される流量を、常にバラスト水処理装置15の処理能力以下に抑えることができて、バラストタンク2に積み込まれるバラスト水中の水生生物や細菌類等を確実に死滅させるまたは除去することができる。
【0051】
また、本実施形態に係るバラスト水処理システム10によれば、バラスト水処理装置15に供給されるバラスト水の流量が、予め定められた最大値(閾値)QMを超えた場合には、バラスト水処理装置15へのバラスト水の供給が停止されることになる。
これにより、バラスト水処理装置15の処理能力を超えたバラスト水処理装置15へのバラスト水の供給を防止することができ、バラスト水処理装置15で処理されなかったバラスト水のバラストタンク2への注水を防止することができる。
【0052】
さらに、本実施形態に係るバラスト水処理システム10によれば、バラストポンプ12は、常にバラスト水処理装置15が運転されている状態で運転されることになる。
これにより、バラスト水処理装置15が停止されている状態でバラストポンプ12が運転され、処理されなかったバラスト水のバラストタンク2への注水を防止することができ、作業員による誤操作を未然に防止することができる。
【0053】
〔第2実施形態〕
本発明に係るバラスト水処理システムの第2実施形態について、図4を参照しながら説明する。図4は本実施形態に係るバラスト水処理システムの概略の構成を示す図であって、図2と同様の図である。
本実施形態に係るバラスト水処理システム40は、流量調整バルブ13の代わりに危急閉止バルブ13’を備えるとともに、バイパスライン41およびバイパスバルブ42を具備しているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0054】
危急閉止バルブ13’は、流量計14で測定されたデータ(流量計値q(t))が最大値QMよりも大きいときに、制御器17によりその開度が0°とされるバルブであり、危急閉止バルブ13’の開度が0°(全閉(閉止)状態)とされることにより、選択されたバラストタンク2への注水が停止される。
【0055】
バイパスライン41の一端(上流端)は、合流点18と危急閉止バルブ13’との間に位置する主管16aの途中に接続されており、バイパスライン41の他端(下流端)は、リターンライン21の他端と主管16aとの接合点43と、分岐点22との間に位置する主管16aの途中に接続されている。
バイパスバルブ(流量調整バルブ)42は、制御器17から送られてくる制御信号(指令信号)に基づいてその開度が例えば、30°〜90°の範囲で自動的に調整される(開閉される)電動バタフライバルブであり、バイパスライン41の途中に接続されている。
なお、ここでいう開度0°とは全閉状態のことであり、開度90°とは全開状態のことである。
また、バイパスバルブ42は、上述した流量調整バルブ13と同様、図3に示すフローチャートにしたがって制御(操作)される。
【0056】
本実施形態に係るバラスト水処理システム40の作用効果は、上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0057】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更・変形が可能である。
例えば、上述した実施形態では、流量調整バルブ13またはバイパスバルブ42の開度を制御(調整)することによりバラスト水(海水)の流量を調整するようにしているが、流量調整バルブ13、バイパスライン41、バイパスバルブ42をなくして(省略して)構成の簡略化を図るとともに、バラストポンプ12の回転数をインバータによる回転数制御で増減させることによりバラスト水(海水)の流量を調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 船舶
2 バラストタンク
10 バラスト水処理システム
11 シーチェスト
12 バラストポンプ
13 流量調整バルブ
13’危急閉止バルブ
14 流量計
15 バラスト水処理装置
17 制御器
40 バラスト水処理システム
42 バイパスバルブ(流量調整バルブ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6