【実施例1】
【0022】
本発明に係るバイオマス原料からの発酵装置について、図面を参照して説明する。
図7は、実施例1に係るバイオマスの水熱分解装置を示す概略図である。
まず、「少なくともセルロース、ヘミセルロース及びリグニンを含むバイオマス原料と加圧熱水とを対向接触させつつ180℃〜240℃の温度範囲で高温高圧処理する水熱分解装置50」に関して
図7を使用して説明する。
水熱分解装置50は、
図7に示すように垂直型の装置としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、傾斜型や水平型の水熱分解装置としてもよい。なお、水熱分解装置としては、傾斜型又は垂直型がより好ましい。これは、水熱分解反応において発生したガスや原料中に持ち込まれたガス等が上方から速やかに抜けることができ好ましいからである。また、加圧熱水55で分解生成物を抽出するので、抽出効率の点において上方から下方に向かって抽出物の濃度が高まることとなり、好ましいものとなるからである。
【0023】
本実施例に係る水熱分解装置50では、搬送スクリュー手段54を設けることにより、1)固液カウンターフローでの固形分の搬送が可能となる。2)装置本体53内で固液の分離が可能となる。3)装置本体53内で固体表面、固体中の加圧熱水55の混合が進み反応が促進される。
【0024】
本実施例に係る水熱分解装置50は、バイオマス供給装置52によりバイオマス原料(本実施例では、例えば麦わら等)11を常圧下から加圧下に供給し、前記バイオマス原料11の供給とは異なる端部側から加圧熱水15を装置本体53内部に供給し、バイオマス原料11と加圧熱水55とを対向接触させつつ水熱分解し、加圧熱水55中にリグニン成分及びヘミセルロース成分を移行し、バイオマス原料51中からリグニン成分及びヘミセルロース成分を分離し、バイオマス抜出装置57により、バイオマス固形分56を加圧下から常圧下に抜出している。図中符号58は加圧窒素を図示する。
【0025】
ここで、前記水熱分解装置50に供給するバイオマス原料としては、特に限定されるものではなく、地球生物圏の物質循環系に組み込まれた生物体又は生物体から派生する有機物の集積をいう(JIS K 3600 1258参照)が、本発明では特に木質系の例えば広葉樹、草本系等のセルロース系資源や農業系廃棄物、食品廃棄物等を用いるのが好ましい。
【0026】
また、前記バイオマス原料としては、粒径は特に限定されるものではないが、例えば5mm以下に粉砕することが好ましい。
本実施例では、バイオマスの供給前において、前処理装置として、例えば粉砕装置を用いて前処理するようにしてもよい。また、洗浄装置により洗浄するようにしてもよい。
なお、バイオマス原料として、例えば籾殻等の場合には、粉砕処理することなく、そのまま水熱分解装置50に供給することができるものとなる。
【0027】
また、水熱分解装置50における、反応温度は180℃〜240℃の範囲とするのが好ましい。さらに好ましくは200℃〜230℃とするのがよい。
これは、180℃未満の低温では、水熱分解速度が小さく、長い分解時間が必要となり、装置の大型化につながり、好ましくないからである。一方240℃を超える温度では、分解速度が過大となり、セルロース成分が固体から液体側へ移行を増大すると共に、ヘミセルロース系糖類の過分解が促進され、好ましくないからである。
また、ヘミセルロース成分は約140℃付近から、セルロースは約230℃付近から、リグニン成分は140℃付近から溶解するが、セルロースを固形分側に残し、且つヘミセルロース成分及びリグニン成分が十分な分解速度を持つ180℃〜240℃の範囲とするのがよい。
【0028】
また、反応圧力は装置本体53の内部が加圧熱水55の状態となる、各温度の水の飽和蒸気圧に更に0.1〜0.5MPaほどの高い圧力とするのが好ましい。
また、反応時間は20分以下、3分〜10分とするのが好ましい。これはあまり長く反応を行うと過分解物の割合が増大し、好ましくないからである。
【0029】
また、水熱分解装置50は、バイオマス原料51と加圧熱水55とを対向接触する際に、均一な加圧熱水流れとすることが好ましい。
【0030】
このような水熱分解装置50を用いることで、本発明におけるバイオマス高温処理液101Aを得ることができる。
【0031】
本発明における、加圧熱水55は、アルカリ性、中性、酸性いずれのpHでもよく、例えばアルカリ性であれば、水酸化ナトリウム、消石灰、アンモニアなどを使用でき、また酸性であれば、希硫酸、塩酸、燐酸などを使用することができる。加圧熱水55は、アルカリ性、もしくは、酸性であれば、効率的にバイオマスの前処理を進められるといった利点を有する。但し、その一方で、酵素投入前までにpH調整を行う必要があり、pH調整の薬品あるいはpH調整装置を設置しなければならないという欠点を有する。
【0032】
図1は、実施例1に係るバイオマスを原料とする発酵装置の概略図である。
次に、前記
図7の水熱処理装置50で排出されたバイオマス高温処理液101Aを冷却する冷却手段90と、冷却された処理液101Bを用いて酵素により糖化する酵素糖化槽103と、前記酵素糖化槽103から抜き出した糖液104に含まれる水難溶性発酵阻害物質を除去する固液分離装置112および精密濾過(Microfiltlation:MF)膜113aを備えた異物除去部113と、前記異物除去部113の後流側に設けられ、水難溶性発酵阻害物質を除去した糖液104に水を添加して希釈する希釈槽132と、希釈した糖液104から水114を除去して、濃縮糖液115を得る逆浸透(Reverse Osmosis:RO)膜116aを備えた水分分離部116と、前記濃縮糖液115を用いて発酵を行う発酵タンク141とを有するバイオマスを原料とする発酵装置200Aに関して
図1の概略図を用いて説明する。
【0033】
この発酵タンク141には酵母142が添加され、発酵液143が得られる。発酵液143は、別途蒸留処理がなされて目的の発酵産物が得られる。
【0034】
本実施例では、前記酵素糖化槽103から抜き出した糖液104に含まれる水難溶性発酵阻害物質を除去する装置として、固液分離装置112と、さらにその後流側に精密濾過(Microfiltlation:MF)膜113aを備えた異物除去部113とを配置している。
【0035】
この水難溶性発酵阻害物質を除去する装置を設けることにより、バイオマス原料を高温・高圧条件で分解した際に発生するバイオマス高温処理液から水難溶性発酵阻害物質を除去し、不純物の少ない糖液を得ることができ、良好な発酵を行うことができる。
【0036】
ここで、本発明で、水難溶性発酵阻害物質とは、後述する試験例に示すように、その物質の詳細は解明がなされていないが、一般に発酵阻害物質として公知のフルフラール、HMF(5−ヒドリキシメチルフルフラール)とは異なる物質であることが、本発明者等により確認された。
【0037】
例えば、公知の水熱分解処理においては、前述したようにバイオマスと加圧熱水とを対向接触するように供給して、内部熱交換で水熱反応させており、その際の反応条件が内部温度180℃〜240℃の高温状態であると共に、その各温度における水の飽和蒸気に対して、更に0.1から0.4MPa高い圧力を加えているので、その反応後のバイオマス高温処理液(熱水排出液)中には、リグニン等の反応分解物が含まれている。
【0038】
このバイオマス高温処理液に溶解した熱水可溶分は、後工程の糖化工程においては、酵素糖化温度(例えば60℃以下)まで冷却されるので、一度熱水中に溶解した熱水可溶分の一部が析出し、固化あるいはコロイド状となり、水難溶性物質となる。
すなわち、常温でバイオマス原料を分解処理するような場合には、この水難溶性物質は液体側には存在しないものであるので、バイオマス高温処理液における特異な物質であると推定される。
【0039】
本発明では、このような水難溶性発酵阻害物質を、糖液精製手段110により除去することで、糖化処理における精製がなされ、その後の発酵工程においては、良好な発酵処理を行うことが可能となり、後述する試験例に示すように例えばアルコール発酵の発酵効率の向上を図ることができる。
【0040】
ここで、前記糖液精製手段110は、
図1に示すように、酵素糖化槽103から抜き出した糖液104から、水難溶性発酵阻害物質を含むリグニン等固形残渣111を分離する固液分離装置112と、固液分離装置112で分離した糖液104から残存する水難溶性発酵阻害物質をさらに除去する、精密濾過(Microfiltlation:MF)膜113aを備えた異物除去部113とを有するものである。
【0041】
前記固液分離部112は、例えばスクリューデカンタ、砂濾過装置、MF膜等を用いることができ、これにより固形物を除去してRO膜116aの保護を図るようにしている。
【0042】
本実施例に係るバイオマスを原料とするアルコール発酵装置200Aでは、水難溶性発酵阻害物質を除去した糖液104に、水(RO水)131を添加して希釈する希釈槽132を有するものである。なお、
図1中、符号P
6は、糖液104を希釈槽132に送液する送液ポンプを図示する。
【0043】
これは、固形物除去前に水を添加する場合には、水難溶性発酵阻害物質の溶解度分だけ溶解し、発酵阻害物質濃度は低下しないが、水難溶性発酵阻害物質を除去した後に、水で希釈することで、リグニン等の分解物以外の有機酸(例えば酢酸)等の除去も可能となると共に、後工程において高効率な発酵が可能となる。
【0044】
この希釈槽132で希釈された希釈水133は、水114がRO(Reverse Osmosis:RO)膜116aを有する水分分離部116で分離され、所定の濃度に濃縮され、濃縮糖液115を得ている。
【0045】
次いで、前記濃縮糖液115は発酵タンク141に送られ、酵母142が添加され、発酵液143を得る。
【0046】
また、水分分離部116には、ルーズRO膜、ナノ濾過膜(Nanofiltration Membrane:NF膜)等を用いてもよい。
【0047】
本実施例では、この水難溶性発酵阻害物質を含むリグニン等固形残渣111を除去するために、固液分離装置112の固液分離処理と、異物除去部113の膜処理とを行うことで、効果的に発酵阻害物質の除去が可能となる。
【0048】
特に、熱水可溶分であるヘミセルロースを糖化した糖液(C5糖)を発酵する発酵菌は、エタノール耐性、発酵阻害物質耐性が弱いものが多く、発酵菌の耐性に合わせることが重要であるが、本発明によりそれが可能となる。遺伝子組み換え酵母を用いることができない発酵では、発酵菌の耐性の問題は特に顕著となるので、本発明によりこれが解決されることとなる。
【0049】
また、糖液104処理中において、水難溶性発酵阻害物質を含むリグニン等の分解物を除去するので、後流側に設置する水分分離のためのRO膜116aに対しての異物の析出が防止でき、RO膜116aの膜寿命の延命化を図ることが可能となる。
【0050】
次に、このバイオマスを用いたアルコール発酵装置200Aの処理手順について説明する。
本発明の熱水排出液は主にヘミセルロース成分を含むので、この熱水可溶分を五炭糖(C5糖)等に酵素糖化するC5糖化・膜処理を行う際に、糖液の精製を行うものである。
【0051】
<酵素糖化工程>
先ず、前記酵素糖化槽103において、バイオマス高温処理液(熱水排出液)101Aが導入され、酵素102が添加され、酵素糖化工程における酵素反応による糖化がなされる。
【0052】
<固液分離工程>
次に、糖液104は第1の糖液タンク121に貯留される。その後、固液分離装置112により水難溶性発酵阻害物質を含むリグニン等固形残渣111が分離され、その後糖液104は第2の糖液タンク122に貯留される。
【0053】
<異物除去工程>
次に、糖液104は、MF膜113aを備えた異物除去部113によりさらに残存する水難溶性発酵阻害物質を含むリグニン等固形残渣111等の異物が膜分離され、その後糖液104は希釈槽132に貯留される。
除去されない異物を含む糖液104は、第1の糖液タンク121又は第2の糖液タンク122に戻すようにしている。
【0054】
<糖液希釈工程>
次に、水難溶性発酵阻害物質を除去した糖液104は、希釈槽132で水(RO水)131が添加されて希釈水133を得る。
【0055】
<糖濃縮工程>
次に、希釈水133は、RO膜116aを備えた水分分離部116により水114が除去され、濃縮糖液115を得る。
【0056】
また、糖液精製手段110で精製され、水難溶解性物質等を除去した濃縮糖液115の濁度又は吸光度のいずれか一方又は両方を測定する第1の測定部(例えば濁度計及び/又は吸光度計)を有するようにしてもよい。
【0057】
ここで、第1の測定部で濁度及び/又は吸光度を測定する目的は、濃縮糖液115の不純物除去の度合い(糖液104の清澄度の目安)を監視するためである。
【0058】
この結果、濃縮糖液115中に水難溶解性物質等が十分除去されていることの確認が可能となり、これにより、清澄の程度により、濁度計及び/又は吸光度計で糖液104の品質管理ができることとなる。
【0059】
また、第1の測定部において、糖液104が十分清澄であることが把握されているため、後工程の酵母142等の増殖による清澄の程度の変化、すなわち、清澄の程度の増減により、第2の測定部において発酵工程のエタノール製造プロセス管理ができることとなる。
【0060】
<発酵工程>
次に、前記糖液精製手段110で精製され、濃縮糖液115が発酵タンク141に導入され、酵母142が添加され、発酵工程における例えばアルコール発酵がなされる。
なお、
図1中、符号M
1〜M
4は、酵素糖化槽103及び第1〜第3の糖液タンク121〜123の攪拌手段を駆動するモータ、M
5は、発酵タンク141を攪拌する攪拌手段を駆動するモータ、P
1〜P
4は、糖液104を送液する送液ポンプ、P
5は、エタノール発酵液143を送液する送液ポンプを各々図示する。
【0061】
以上述べたように、本実施例によれば、バイオマス原料を高温・高圧条件で分解した際に発生するバイオマス高温処理液101Aに含まれる水難溶性発酵阻害物質等を糖液精製手段110により除去することで、不純物の少ない糖液を得ることができ、その後のアルコール発酵工程での発酵処理における発酵阻害の抑制を図ることができ、良好な発酵を行うことができる。
【実施例2】
【0062】
次に、バイオマスを原料とする発酵装置について、図面を参照して説明する。
図2は、実施例2に係るバイオマスを原料とする発酵装置の概略図である。なお、実施例1の装置と同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図2に示すように、バイオマスを原料とする発酵装置200Bは、
図1に示す実施例1と異なる構成の糖液精製手段110を設けたものである。
図2に示す糖液精製手段110は、酵素糖化槽103から抜き出した糖液104を貯留する糖液精製槽151と、前記糖液精製槽151からの第1の循環ラインL
1に介装され、抜き出した糖液104から水難溶性発酵阻害物質(リグニン等固形残渣111)を除去する固液分離部(例えば遠心分離)112と、前記糖液精製槽151からの第2の循環ラインL
2に介装され、抜き出した糖液104から水難溶性発酵阻害物質を除去する精密濾過(Microfiltlation:MF)膜113aを備えた異物除去部113とを有するものである。
なお、
図2中、符号M
6は、糖液精製槽151の攪拌手段を駆動するモータを図示する。
【0063】
実施例1の糖液精製手段110においては、順次膜処理を行っていたが、実施例2の糖液精製手段110では、糖液精製槽151において、二つの循環ライン(第1の循環ラインL
1及び第2の循環ラインL
2)を有しているので、水難溶性発酵阻害物質(リグニン等固形残渣111)の濃度の状況に応じた処理を行うことができる。
【0064】
すなわち、水難溶性発酵阻害物質(リグニン等固形残渣)の割合が所定値よりも高い場合には、第1の循環ラインL
1及び第2の循環ラインL
2との併用処理を行い、水難溶性発酵阻害物質を除去するようにしている。
なお、水難溶性発酵阻害物質が少ない場合には、第2の循環ラインL
2を用いての膜処理のみを行うことができる。なお、必要に応じて固液分離処理を行うようにしてもよい。
【実施例3】
【0065】
次に、本発明に係るバイオマスを原料とした発酵装置について、図面を参照して説明する。
図3は、実施例3に係るバイオマスを原料とした発酵装置の概略図である。なお、実施例1及び3の装置と同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図3に示すように、バイオマスを原料としたアルコール発酵装置200Cは、実施例2の糖液精製手段110における前記酵素糖化槽103と前記糖液精製槽151とを一体化した糖液精製槽161としている。
図中、符号M
7は、糖液精製槽161の攪拌手段を駆動するモータを図示する。
【0066】
これにより、実施例2においては、酵素糖化槽103と糖液精製槽151を別々に設置していたが、本実施例ではこれらを一体化することで、設置スペースの省略化を図ることができる。
【0067】
[試験例1]
<水難溶性発酵阻害物の確認試験>
冷却したバイオマス高温処理液と各種溶媒とを1対9の割合で混合し、高速液体クロマトグラフィー装置を用いて、その確認を行った。
【0068】
バイオマス高温処理液は、
図7に示す水熱分解装置50を用い、稲藁を180℃の加圧条件下で水熱分解させたものであり、その熱水排出液101Aを用いた。
【0069】
用いた溶媒は、アセトニトリル、アセトン、メタノールであり、いずれも極性溶媒である。また比較例として、「Milli−Q」(商品名)で濾過した純水を用いた。
【0070】
操作は、これらの溶剤及び水に対して、冷却後のバイオマス高温処理液を混合し、冷蔵庫(4℃)内で一晩静置した。
その後、遠心分離操作(15,000rpm、10分、4℃)を行い、その上澄み液を回収して、フィルター(0.45μm)で処理した。
【0071】
このフィルター処理した後の試験液(試験1−1:アセトニトリル、試験1−2:アセトン、試験1−3:メタノール、試験1−4:純水)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。
用いたカラムは、ODSカラム(synergi 4μ Hydro−RP80A 4.6x250mm:Phenomenex社製)を用いた。
溶離液は、水−アセトニトリル溶剤で、アセトニトリルの濃度を8%から100%にグラジェント処理した。
検出波長は220nmとした。
【0072】
この結果を
図4及び表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
図4は、高速液体クロマトグラフィーの計測チャートである。
図4及び表1に示すように、既知の発酵阻害物質であるHMF(5−ヒドリキシメチルフルフラール:溶離時間が6.5分付近)、フルフラール(溶離時間が10.5分付近)については、試験1−1〜1−4の全てにおいて検出された。
これに対し、溶離時間が22.6分付近において、試験1−1〜1−3では未知の成分が確認された。なお、試験1−4ではこの未知のピーク成分は検出されなかった。
よって、バイオマス高温処理液中には、水難溶性の物質が混在していることが判明した。
【0075】
[試験例2]
<水難溶性発酵阻害物の有無による発酵試験>
冷却後のバイオマス高温処理液を用いた糖化液用いて、発酵を行い、この発酵の際におけるCO
2の減少量を比較した。
【0076】
使用菌株は、ピキア・スティピティス NBRC1687(標準株)を用いた。
前培養条件は、培地として10mL YPD(1% イースト抽出液、2%ペプトン、2%グルコース)を用いて、30℃、120rpmで振とう培養した。
発酵は、前発酵した液をフィルター(0.45μm)で濾過したものと、該フィルター(0.45μm)で濾過しないものとを準備し、発酵を行った。
エタノール発酵条件は、発酵液100mLとし30℃で120rpm振とう培養を行った。
【0077】
発酵条件及び試験結果を表2及び表3に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
図5及び
図6は、エタノール発酵試験における二酸化炭素の減少量の結果を示す図である。横軸は時間であり、縦軸はCO
2減少量である。
【0081】
図5及び
図6に示すように、発酵試験の結果、試験2−1(栄養源なし、フィルターなし)の場合に対して、試験2−2(栄養源なし、フィルターあり)の場合には、約90時間経過前後から、二酸化炭素の減少量に差が現れた。
【0082】
試験2−3(栄養源あり、フィルターなし)の場合に対して、試験2−4(栄養源あり、フィルターあり)の場合には、約20時間経過前後から、二酸化炭素の減少量に差が現れ、その後大幅に減少量が拡大された。
【0083】
また、試験2−2の発酵効率は11%、試験2−4の発酵効率は38%であった。
【0084】
よって、フィルター(0.45μm)を用いて処理することにより、水難溶性発酵阻害物質の除去がなされ、発酵が良好に行われることを確認した。
【0085】
このように、水難溶性発酵阻害物質を糖液精製手段により除去することで、不純物の少ない糖液を得ることができ、後工程でのアルコール発酵処理における発酵阻害の大幅な抑制ができることが判明した。