特許第6021302号(P6021302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6021302伸縮継手およびこれを備えた蒸気タービン設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021302
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】伸縮継手およびこれを備えた蒸気タービン設備
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/08 20060101AFI20161027BHJP
   F28B 1/00 20060101ALI20161027BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20161027BHJP
   F01D 25/30 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   F16L27/08 Z
   F28B1/00
   F01D25/00 H
   F01D25/30 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-80882(P2011-80882)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-215242(P2012-215242A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2014年3月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】日本バルカー工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505254164
【氏名又は名称】株式会社三和テック
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】島川 司
(72)【発明者】
【氏名】永嶋 潤
(72)【発明者】
【氏名】坂東 祐次
(72)【発明者】
【氏名】尾下 智洋
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 弘
【審査官】 豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−211868(JP,A)
【文献】 実公平04−026652(JP,Y2)
【文献】 特開2008−255967(JP,A)
【文献】 特開2001−263562(JP,A)
【文献】 特許第2933144(JP,B2)
【文献】 特開2004−060736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/00 − 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービン出口と復水器入口との間に設けられた伸縮継手であって、
上流側固定端に一端が固定されるとともに他端が自由端とされ、蒸気流路を形成する内側金属製筒体と、
下流側固定端に一端が固定されるとともに他端が自由端とされ、該自由端が前記内側金属製筒体の前記自由端の外側にて相対移動可能とされた外側金属製筒体と、
樹脂シートを用いた非金属材料によって形成されるとともに、前記内側金属製筒体および前記外側金属製筒体の外側を気密に包囲しつつ変形可能とされた可撓性筒体と、
前記内側金属製筒体と前記可撓性筒体との間に充填され、前記内側金属製筒体の面と前記可撓性筒体の内面とに接触する充填部材と、
前記内側金属製筒体の自由端と、前記外側金属製筒体の自由端との間の空間を封止する、可撓性のある封止部材と、
を備えていることを特徴とする伸縮継手。
【請求項2】
前記充填部材は、前記外側金属製筒体の前記自由端によって下方から支持されていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮継手。
【請求項3】
前記撓性筒体は、前記樹脂シートに対してガラスクロスが積層されていることを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮継手。
【請求項4】
前記蒸気タービンおよび前記復水器は、液化ガスを処理する洋上浮体または船舶に搭載された機械駆動用の蒸気タービン設備とされていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の伸縮継手。
【請求項5】
蒸気によって回転駆動される蒸気タービンと、
該蒸気タービンから排気された蒸気を復水する復水器と、
前記蒸気タービンと前記復水器との間に設けられた請求項1から4のいずれかに記載された伸縮継手と、
を備えていることを特徴とする蒸気タービン設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンと復水器との間の相対変位を吸収する伸縮継手およびこれを備えた蒸気タービン設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン設備の蒸気タービンと復水器とを接続する蒸気流路には、蒸気タービンと復水器との相対変位を吸収するために伸縮継手が採用されている。この伸縮継手としては、例えば特許文献1及び2に示されているように、ベローズが多用されている。当該用途のベローズは、内部が負圧となり例えば60〜80℃といった常温よりも高い温度の蒸気が流れるため、高い気密性および信頼性を確保する観点からステンレス製とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−255967号公報
【特許文献2】特開平10−196313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステンレス製ベローズは、その軸線に対する直角方向の可動量が小さく、所望の可動量を得るためには軸線方向に直列に接続して複数本のベローズを用いざるを得ない。例えば、軸線方向に20mmの可動量を得たい場合には、可動量10mmのベローズを2本直列接続して用いることになる。または、要求される軸直角方向の可動量を得るために、可動量に相当する変位角度を吸収できる中間筒体を配置し、前後をステンレス製ベローズで狭持することにより、可動量を得ることになる。しかし、複数本のベローズを直列接続すると全体の軸線方向の長さが長くなり、また重量も増大してしまう。
【0005】
また、LNG(液化天然ガス)を受け取り、貯蔵して輸送するLNG船や、LNGを受け取り、貯蔵し、再ガス化する洋上浮体であるFSRU(Floating Storage and Regasification Unit)やFPSO(Floating Production, Storage and Offloading)には、LNGを輸送する際、LNGを再ガス化する際、あるいはBOG(ボイルオフガス)を再液化する際などに、圧縮機や膨張機を駆動する設備が必要となる。このような圧縮機や膨張機を駆動するために、機械駆動用の蒸気タービン設備が利用される。しかし、機械駆動用の蒸気タービン設備は、船舶推進用の蒸気タービン設備が船底側に設けられるのに対して、一般に船舶の上方のデッキ側に設けられるので、船舶の動揺による影響を大きく受けてしまう。したがって、FSRUやFPSOといった洋上浮体やLNG船等の船舶に用いられる機械駆動用の蒸気タービン設備では、タービン低圧車室と復水器との相対変位が極めて大きくなる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、変形量が大きく、コンパクトで軽量化された伸縮継手およびこれを備えた蒸気タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の伸縮継手およびこれを備えた蒸気タービン設備は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる伸縮継手は、蒸気タービン出口と復水器入口との間に設けられた伸縮継手であって、上流側固定端に一端が固定されるとともに他端が自由端とされ、蒸気流路を形成する内側金属製筒体と、下流側固定端に一端が固定されるとともに他端が自由端とされ、該自由端が前記内側金属製筒体の前記自由端の外側にて相対移動可能とされた外側金属製筒体と、樹脂シートを用いた非金属材料によって形成されるとともに、前記内側金属製筒体および前記外側金属製筒体の外側を気密に包囲しつつ変形可能とされた可撓性筒体と、前記内側金属製筒体と前記可撓性筒体との間に充填され、前記内側金属製筒体の面と前記可撓性筒体の内面とに接触する充填部材と、前記内側金属製筒体の自由端と、前記外側金属製筒体の自由端との間の空間を封止する、可撓性のある封止部材と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
内側金属製筒体の外側を外側金属製筒体が相対移動する構成としたので、金属製筒体によって変位が規制されることがない。そして、これら金属製筒体の外側を気密に包囲するように、樹脂シートを用いた非金属材料によって形成された可撓性筒体を配置することとしたので、ステンレス製ベローズに比べて変形量を大きくすることができる。このように、大きな変形量が可能となるので、従来のステンレス製ベローズのように複数を直列接続する必要がなく、コンパクトにかつ軽量化することができる。
また、蒸気流路側に金属製筒体を配置した上で、その外側に可撓性筒体を配置して気密性を高める構成としたので、信頼性を向上させることができる。
また、蒸気流路を形成する内側金属製筒体の下流側に外側金属製筒体を配置し、かつ、外側金属製筒体の自由端が内側金属製筒体の自由端の外側に位置するようになっているので、各金属製筒体の自由端間に蒸気が流れ込むことができない構造とした。したがって、蒸気流れが内側金属製筒体と外側金属製筒体との間を通って可撓性筒体へと到達することを抑制でき、さらに信頼性を向上させることができる。
なお、樹脂シートとしては、テフロン(登録商標)等のPTFE樹脂シートが好適に用いることができる。
また、本発明の伸縮継手では、前記充填部材は、前記外側金属製筒体の前記自由端によって下方から支持されていることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の伸縮継手では、前記可撓性筒体は、前記樹脂シートに対してガラスクロスが積層されていることを特徴とする。
【0010】
樹脂シートに対してガラスクロスを積層することとしたので、可撓性筒体の強度を高めることができる。これにより、例えば伸張して過剰な引張り力が加わったとしても、可撓性筒体が破れてしまうことを回避できる。
【0011】
さらに、本発明の伸縮継手では、前記蒸気タービンおよび前記復水器は、液化ガスを処理する洋上浮体または船舶に搭載された機械駆動用の蒸気タービン設備とされていることを特徴とする。
【0012】
FSRUやFPSOといった洋上浮体やLNG船等の液化ガス(例えば液化天然ガス(LNG))を処理する船舶に搭載する機械駆動用の蒸気タービン設備は、船舶の上方のデッキ側に設けられるので船舶の動揺の影響が大きく、蒸気タービンと復水器との相対変位が大きくなる。この位置に上記の伸縮継手を設けることにより、大きな相対変位も許容することができる。さらに、上記の伸縮継手は変形量が大きく、コンパクトにかつ軽量化できるので、積載量や設置スペースが限られた船舶には特に好適である。
【0013】
また、本発明の蒸気タービン設備は、蒸気によって回転駆動される蒸気タービンと、該蒸気タービンから排気された蒸気を復水する復水器と、前記蒸気タービンと前記復水器との間に設けられた請求項1からのいずれかに記載された伸縮継手とを備えていることを特徴とする。
【0014】
上記の伸縮継手を備えているので、コンパクトで軽量化された蒸気タービン設備を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
内側金属製筒体の外側を外側金属製筒体が相対移動する構成とし、かつ、これら金属製筒体の外側を気密に包囲するように、樹脂シートによって形成された可撓性筒体を配置することとしたので、大きな変形量が可能となり、伸縮継手をコンパクトにかつ軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態である蒸気タービン設備を示した正面図である。
図2図1の伸縮継手の一実施形態を示した要部縦断面図である。
図3図2の可撓性筒体の一実施形態を示した拡大部分縦断面図である。
図4】筒体が吸収する変位のパターンを模式的に示し、(a)は軸方向変位、(b)は軸直角方向変位、(c)は曲げ変位を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態にかかる伸縮継手(エキスパンション・ジョイント)1が適用される蒸気タービン設備が示されている。
蒸気タービン設備は、例えば、FSRUやFPSOといった洋上浮体やLNG船等の液化ガス(例えば液化天然ガス(LNG))を処理する船舶のデッキ側に搭載されており、圧縮機や膨張機等の機械駆動用とされている。この蒸気タービン設備は、図示しないボイラから過熱蒸気が供給されて駆動される蒸気タービン3と、蒸気タービン3の下方に接続された復水器5とを備えている。
蒸気タービン3の回転駆動出力は、圧縮機や膨張機等の各種機械に供給される。復水器5では、蒸気タービン3にて仕事を終えた低圧蒸気を冷却して凝縮液化するようになっている。復水器5内は、例えば100Torr程度の真空状態とされている。
蒸気タービン3出口と復水器5入口との間には、蒸気が流れる排気管7が接続されている。この排気管7の中途位置に、伸縮継手1が設けられている。伸縮継手1によって、熱伸び差や船舶の動揺によって生じる蒸気タービン3と復水器5との間の相対変位が吸収されるようになっている。
【0018】
図2には、伸縮継手1の要部縦断面が示されている。
伸縮継手1は、最内周位置に設けられ蒸気流路を形成する上流バッフル管(内側金属製筒体)11と、この上流バッフル管11の下流側でかつ外側に設けられた下流バッフル管(外側金属製筒体)13と、これらバッフル管11,13の外側を気密に包囲しつつ変形可能とされた可撓性筒体15とを備えている。
【0019】
上流バッフル管11は、ステンレス製とされており、一端11aが排気管7(図1参照)の上流側に固定されるとともに、他端11bが自由端とされている。上流バッフル管11の一端11aには、外側に折り曲げられた平板状の固定部が設けられており、この固定部が可撓性筒体15の上流端15aと共締めされるようになっている。
上流バッフル管11は、蒸気流れの上流側から下流側に向かって内径が漸次縮小する形状とされ、図2ではテーパ形状とされている。ただし、上流バッフル管は、このテーパ形状に限定されるものではない。
【0020】
下流バッフル管13は、ステンレス製とされており、一端13aが排気管7(図1参照)の下流側に固定されるとともに、他端13bが自由端とされている。下流バッフル管13の一端13aには、外側に折り曲げられた平板状の固定部が設けられており、この固定部が可撓性筒体の下流端15bと共締めされるようになっている。
なお、下流バッフル管13は、図2では軸線方向に一定の内径を有する円筒形状とされているが、筒形状とされていれば良い。
【0021】
上流バッフル管11の自由端11bと下流バッフル管13の自由端13bとの間には、空間が形成されており、この空間には封止部材17が設けられている。封止部材17は、自由端11b,13b間の空間を埋めるように配置され、ガラスクロス(glass cloth)をPTFE(ポリテトラフルロエチレン)シートとステンレス製メッシュで積層したものである。この封止部材17によって、主流方向の反対方向に向けて逆流して回り込み、自由端11b,13b間に入り込んできた蒸気を一次的に遮るとともに、蒸気中のミストやダスト分を捕捉するようになっている。
【0022】
上流バッフル管11と可撓性筒体15との間には、充填部材19が充填されている。充填部材19の下方には、下流バッフル管13の自由端13bが位置しており、この下流バッフル管13によって充填部材19は下方から支持されている。この充填部材19は、ガラスフェルトをテフロンシートで覆ったものとなっている。この充填部材19によって、各バッフル管11,13の自由端11b,13b間を通り、封止部材17を通過した蒸気を二次的に遮るとともに、可撓性筒体15の軸方向中央部が外周側に凸となるように形状を保持するものである。
【0023】
可撓性筒体15は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、シリコン等の樹脂やガラスクロスといった非金属材料から構成されている。可撓性筒体は、軸方向中央部が外周側に膨らんだ円筒形状とされている。可撓性筒体15の上流端15a及び下流端15bのそれぞれには、固定のためのフランジ部が外周側に張り出した状態で設けられている。各フランジ部では、その両面にガスケットを介挿した後に、ボルト21a及びナット21bによって、上述した上流バッフル管11及び下流バッフル管13とともに共締めされている。
可撓性筒体15の中央部の上下2カ所には、形状保持のためのワイヤリング22,23が設けられている。各ワイヤリング22,23は、上流側および下流側の固定端に一端が取り付けられた支持プレート25等を用いることによって定位置に固定されている。
【0024】
図3には、可撓性筒体15の拡大部分縦断面が示されている。
同図に示されているように、可撓性筒体15は、内周側から外周側に向けて、PTFE製の第1テフロンシート27(「テフロン」は登録商標)と、第1シリコン樹脂層28と、第2シリコン樹脂層29と、第2テフロンシート30と、内周側にテフロンを含浸させたガラスクロス31とから構成されている。
気密性は、主として、第1テフロンシート27及び第2テフロンシート30によって確保されている。
テフロンシート27,30間に挟まれた第1シリコン樹脂層28及び第2シリコン樹脂層29は、断熱層としての機能を有している。シリコン樹脂層28,29としては、例えば、コーネックスシリコン(商品名)が好適に用いられる。ただし、断熱層としての機能を有すれば、他の材料を用いても良い。
このように、可撓性筒体15は、テフロンシート27,30及びシリコン樹脂層28,29によって、樹脂層を構成している。この樹脂層に積層されたガラスクロス31は、樹脂層を補強するために設けられている。これにより、例えば、可撓性筒体15が伸張して過剰な引張り力が加わったとしても、可撓性筒体15の樹脂層が破れてしまうことを回避できるようになっている。
【0025】
次に、上述した伸縮継手1の動作について説明する。
蒸気タービン3から排出された蒸気は、排気管7へと流れ込み、上方から下方へと流れる。伸縮継手1へと導かれた蒸気は、図2に示すように、上流バッフル管11によって形成された蒸気流路を流れる。伸縮継手1を通過する際の蒸気温度は60〜80℃とされており、真空度は100Torr程度とされている。伸縮継手1を通過した蒸気は、復水器5へと導かれる。
熱伸び差または船舶の動揺によって蒸気タービン3と復水器5との間に相対変位が生じると、この相対変位を吸収するように伸縮継手1が機能する。すなわち、上流バッフル管11に対して外側に配置された下流バッフル管13は、上流バッフル管11に拘束されることなく相対変位する。そして、相対変位に応じて、可撓性筒体15が変形する。
図4には、筒体の変位のパターンが模式的に示されている。図4(a)は筒体32の軸方向に伸び縮みする軸方向変位、図4(b)は両端の接続フランジ33が互いに軸直角方向に平行に移動する軸直角方向変位、図4(c)は両端の接続フランジ33面同士が角度を持つように変位して筒体32の軸線が円弧状となる曲げ変位が示されている。
図4に示したような変位が生じても、可撓性筒体15は非金属製とされており主として樹脂によって構成されているので、大きな反力を与えることなく大きく変形する。
【0026】
以上の通り、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
上流バッフル管11の外側を下流バッフル管13が相対移動する構成としたので、これら金属製のバッフル管11,13によって相対変位が規制されることがない。そして、これらバッフル管11,13の外側を気密に包囲するように、主として樹脂層とされた非金属材料によって形成された可撓性筒体15を配置することとしたので、ステンレス製ベローズに比べて変形量を大きくすることができる。このように、大きな変形量が可能となるので、従来のステンレス製ベローズのように複数を直列接続する必要がなく、コンパクトにかつ軽量化することができる。
【0027】
また、蒸気流路側に金属製のバッフル管11,13を配置した上で、その外側に可撓性筒体15を配置して気密性を高める構成としたので、信頼性を向上させることができる。
【0028】
また、蒸気流路を形成する上流バッフル管11の下流側に下流バッフル管13を配置し、かつ、下流バッフル管13の自由端13bが上流バッフル管11の自由端11bの外側に位置するようにしたので、蒸気流れがUターンしないかぎり各バッフル管11,13の自由端11b、13b間に蒸気が流れ込むことができない構造とした。したがって、蒸気流れが自由端11b,13b間を通って可撓性筒体15へと到達することを抑制でき、さらに信頼性を向上させることができる。さらに、本実施形態では、封止部材17及び充填部材19を設けているので、さらに蒸気を遮ることができる構造となっている。
【0029】
また、樹脂層27,28,29,30に対してガラスクロス31を積層することとしたので、可撓性筒体15の強度を高めることができる。これにより、例えば伸張して過剰な引張り力が加わったとしても、可撓性筒体15の樹脂層が破れてしまうことを回避できる。
【0030】
FSRUやFPSOといった洋上浮体やLNG船等の液化ガス(例えば液化天然ガス(LNG))を処理する船舶に搭載する機械駆動用の蒸気タービン設備は、船舶の上方のデッキ側に設けられるので船舶の動揺の影響が大きく、蒸気タービンと復水器との相対変位が大きくなる。本実施形態では、この位置に上記の伸縮継手1を設けることとしたので、大きな相対変位を許容することができる。さらに、伸縮継手1は変形量が大きく、コンパクトにかつ軽量化できるので、積載量や設置スペースが限られた船舶に特に好適である。
【符号の説明】
【0031】
1 伸縮継手
3 蒸気タービン
5 復水器
11 上流バッフル管(内側金属製筒体)
13 下流バッフル管(外側金属製筒体)
15 可撓性筒体
17 封止部材
19 充填部材
図1
図2
図3
図4