(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1の噴射ボタン10は、エアゾール容器のステムAに連結される筒状のボタン下部11と、そのボタン下部11と定量室Rを形成するように、そのボタン下部11と連結されるボタン上部12とからなる。噴射ボタン10は、ボタン上部12をボタン下部11に対して回転させて異なる位置に移動することにより、定量室の容積を変えることができる。
【0010】
ボタン下部11は、
図2a、bに示すように、円状の下底15と、その縁部から上方に延びる円筒状の側壁16とを有する。
下底15の中心には、側壁16内(上方)に突出するようにエアゾール容器のステムAを内部に挿入する円筒状のステム係合部17が形成されている。ステム係合部17の上端には、上端外面が球面状を呈する中心突起18が上方に突出するように形成されている。中心突起18の側面には、中心突起18内と側壁16内とを連通する連通孔18aが複数個環状に形成されている。
側壁16は、弧の一部が肉厚となった肉厚部16aを有している。側壁16の下端には、半径方向外側に突出したフランジ部16bが形成されている。また、フランジ部16bには、外方に突出した突起16cが形成されている。
ステムAと側壁16内とは、ステム係合部17、中心突起18を介して連通している。
【0011】
ボタン上部12は、
図2cに示すように、円柱状の噴射部21と、その噴射部の下端縁部から下方に延びる円筒状の外筒部22と、その外筒部22と空間を空けて噴射部の下端から下方に延びる円筒状の内筒部23とを有する。
噴射部21は、下端中央から下方に延びる中心筒25と、側面に形成された噴射孔26と、中心筒25と噴射孔26とを連通するボタン上部内通路27とを有する。中心筒25は、下端内面が球面状を呈しており、中心突起18の上端外面と当接してシールされるように構成されている。つまり、中心筒25の下端内面と中心突起18の上端外面とを当接させたときボタン上部内通路27がシールされる(
図3a参照)。噴射孔26には、噴射チップ26aが設けられている。
【0012】
外筒部22は、
図3aに示すように、内周面が前記ボタン下部11の側壁16の外周面と沿うように形成されている。外筒部22の高さは、ボタン上部12の中心筒25の下端
内面とボタン下部11の中心突起18の上端外面とが係合したとき、外筒部22の下端がボタン下部11のフランジ部16bと当接するように構成されている。
内筒部23は、外周面が前記ボタン下部の側壁16の肉厚部16aの内周面と沿うように形成されている。内筒部23の高さは、ボタン上部12の中心筒25の下端内面とボタン下部11の中心突起18の上端外面とが係合したとき、内筒部23の下端がボタン下部11の下底15と当接あるいはシールするように構成されている。また内筒部23の下端には、
図2cに示すように、下端から上方に向けて形成されるスリット23aが一つ形成されている。つまり、内筒部23の下端が下底15と当接したとき、内筒部23の内部と外部とはスリット23aで連通される。
【0013】
この噴射ボタン10は、ボタン上部12の外筒部22と内筒部23との間の空間に、ボタン下部11の側壁16を挿入するようにしてボタン下部11とボタン上部12とを連結する。そして、ステム係合部17から中心突起18のボタン下部11内の通路、定量室、中心筒25から噴射孔26のボタン上部12内の通路(部材内通路27)が噴射通路となる。
またボタン上部12をボタン下部11に対して下方に押下げ、ボタン上部12の中心筒25の下端内面とボタン下部11の中心突起18の上端外面とを当接またはシールさせたとき、内筒部23と下底15とは当接し、ボタン下部11とボタン上部12との間(噴射ボタン10内)には、
図2dに示すように、内筒部23と下底15の間の内空間S1と、内筒部23と外筒部22の間の外空間S2とが形成される。つまり、ボタン上部内通路27は定量室(空間S1)から遮断される(噴射通路が遮断)。
【0014】
このように構成された噴射ボタン10において、
図3aに示すように、ボタン上部12の内筒部23のスリット23aをボタン下部11の側壁16の肉厚部16aに沿って位置させた場合、内筒部23の内部と外部とを連通するスリット23aは肉厚部16aによって塞がれ、ステムAは内空間S1とのみ連通する。
一方、ボタン上部12を回転させて、スリット23aを肉厚部16a以外と沿うように位置させた場合、内空間S1と外空間S2はスリット23aによって連通し、ステムAは内空間S1および外空間S2の両方と連通する。
つまり、ボタン上部12の回転位置によって、ステムAと連通する定量室Rの容積を、内空間S1のみの場合(小空間)と、内空間S1と外空間S2を合わせた場合(大空間)とに変換させることができる。
【0015】
次に、この噴射ボタン10を連結させたエアゾール容器の噴射過程を示す。
図3aまたは
図3cのように、噴射ボタン10のボタン上部12を下降させ、ボタン上部12の中心筒25の下端内面とボタン下部11の中心突起18の上端外面とを当接またはシールさせ、その後、さらにステムAを下方に押圧する。これによりエアゾール容器のエアゾールバルブが開放され、エアゾール容器内の内容物がステムAより噴射ボタン10内に供給される。このとき、ボタン上部内通路27は定量室から遮断されるため、内容物は噴射孔26から噴射されずに噴射ボタン内の定量室R(内空間S1または内空間S1+
外空間S2)に蓄積される。
次いで蓄積された状態でボタン上部12の押圧力を開放すると、
図1のように定量室R内の内容物(噴射剤)の圧力によりボタン上部12が上方に移動し、ボタン上部12の中心筒25の下端内面とボタン下部11の中心突起18の上端外面との当接またはシールが解除される。それと同時に、定量室R内の内容物が、その圧力によって中心筒25およびボタン上部内通路27を通って噴射孔26より噴射される。また、ステムAも上昇し、エアゾール容器のエアゾールバルブが再度閉鎖されるため、定量室R内に蓄積された定量の内容物以外は噴射されない。
上述したように、ボタン上部12のボタン下部11に対する回転位置を設定することにより、内容物を小空間または大空間に蓄積させることができ、内容物の定量噴射を小量あ
るいは多量に設定することができる。
【0016】
ボタン下部11の突起16cは、
図1に示すように、エアゾール容器の肩カバーTに形成された縦溝T1内に挿入されるように構成されている。つまり、突起16cを縦溝T1内に挿入させることにより、ボタン下部11が回転しないようにする回転抑制手段となっている。そのため、ボタン上部12を保持して回転させるとき、縦溝T1がボタン下部11を支持し、ボタン上部12の回転が簡単になる。また、突起16cと噴射孔の位置関係でボタン上部12の回転位置を示すものとしてもよい。例えば、噴射孔26と突起16cとを平行にすることによって、多量あるいは小量の定量噴射ができるようにしてもよい。
このように噴射ボタン10は、ボタン下部11に対するボタン上部12の角度に応じて定量室の容積を変えることができる。そのため、消費者が殺虫剤や消臭・芳香剤、殺菌剤などを部屋の大きさに応じて1回で噴射する噴射量を切り替えることができ、1本のエアゾール製品で適切な効果を得ることができる。
【0017】
図4aの噴射ボタン30は、内容物の定量の噴射量を3段階に調整できるものである。詳しくは、ボタン下部31と、ボタン上部12とからなり、ボタン下部31が側壁16の内面に半径方向内側に突出した上下に延びる区画壁32を備えたものである。ボタン上部12は、
図1のボタン上部12と実質的に同じものであり、噴射部21、外筒部22および内筒部23を有する。ボタン下部31も区画壁32以外は、
図1のボタン下部11と実質的に同じものであり、円状の下底15および側壁16を有する。
区画壁32は、
図4bに示すように、肉厚部の一方の端部と区画壁32との間の円弧C1と、肉厚部の他方の端部と区画壁32との間の円弧C2との長さが異なるように構成されている。この実施形態では、円弧C1、円弧C2の長さは反時計回りに順に大きくなっている。
【0018】
この噴射ボタン30も、ボタン上部12の外筒部22と内筒部23との間の空間に、ボタン下部31の側壁16を挿入するようにしてボタン下部31とボタン上部12とを連結する。
そして、ボタン上部12をボタン下部31に対して下方に押下げ、ボタン上部12の中心筒25の下端内面とボタン下部31の中心突起18の上端外面とを当接またはシールさせたとき、ボタン下部31とボタン上部12との間(噴射ボタン30内)には、内筒部23と下底15の間の内空間S1と、内筒部23と側壁16の円弧C1の間の第1外空間S2と、内筒部23と側壁16の円弧C2の間の第2外空間S3とが形成される。この実施形態では、第1外空間S2、第2外空間S3の順番で大きくなるように構成されている。
また、この噴射ボタン30も、ステム係合部17から中心突起18のボタン下部31内の通路、定量室、中心筒25から噴射孔26のボタン上部12内の通路(ボタン上部内通路27)が噴射通路となる。
【0019】
このように構成された噴射ボタン30において、
図4cに示すように、ボタン上部12の内筒部23のスリット23aをボタン下部31の側壁16の肉厚部16bに沿って位置させた場合、内空間S1が定量室Rとなる。
また、
図4dに示すように、ボタン上部12を反時計回りに90度回転させてスリット23aを側壁16の円弧C1に位置させた場合、内空間S1と外空間S2はスリット23aによって連通し、内空間S1および第1外空間S2が定量室Rとなる。
さらに、
図4eに示すように、ボタン上部12を反時計回りに90度回転させて、スリット23aを側壁16の円弧C2に位置させた場合、内空間S1と第2外空間S3がスリット23aによって連通し、内空間S1および第2外空間S3が定量室となる。
このように噴射ボタン30は、ボタン下部31に対するボタン上部12の角度に応じて定量室の容積を変えることができる。この実施形態では、上述した順番に回転させることによって、定量室R(小空間、中空間、大空間)の容積が大きくなるように構成している
。
【0020】
図4fの噴射ボタン35は、内容物の定量の噴射量を4段階に調整できるものである。詳しくは、ボタン下部36と、ボタン上部12とからなり、ボタン下部36が側壁16の内面に半径方向内側に突出した上下に延びる区画壁37a、37bを備えたものである。ボタン上部12は、
図1のボタン上部12と実質的に同じものであり、噴射部21、外筒部22および内筒部23を有する。ボタン下部36も区画壁32以外は、
図1のボタン下部11と実質的に同じものであり、円状の下底15および側壁16を有する。
区画壁37a、37bは、
図4gに示すように、肉厚部の一方の端部と区画壁37aとの間の円弧C1と、区画壁37aと区画壁37bとの間の円弧C2と、肉厚部の他方の端部と区画壁37bとの間の円弧C3との長さが異なるように構成されている。この実施形態では、円弧C1、円弧C2、円弧C3の長さは反時計回りに大きくなっている。つまり、ボタン上部12をボタン下部36に対して下方に押下げることにより、ボタン下部36とボタン上部12との間(噴射ボタン35内)には、内筒部23と下底15の間の内空間S1と、内筒部23と側壁16の円弧C1の間の第1外空間S2と、内筒部23と側壁16の円弧C2の間の第2外空間S3と、内筒部23と側壁16の円弧C3の間の第3外空間S4が形成される。この実施形態では、第1外空間S2、第2外空間S3、第3外空間S4の順番に大きくなるように構成されている。
【0021】
そして、噴射ボタン35において、ボタン上部12の内筒部23のスリット23aの位置を、肉厚部16b、円弧C1、円弧C2、円弧C3と調節して噴射操作をすることにより、4つの異なる容積の定量室(内空間S1(
図4h参照)、内空間S1と第1外空間S2(
図4i参照)、内空間S1と第2外空間S3(
図4j参照)、内空間S1と第3外空間S4(
図4k参照))を形成することができる。
つまり、噴射ボタン35は、ボタン下部36に対するボタン上部12の角度に応じて定量室の容積を変えることができる。
【0022】
図
5aの噴射ボタン40は、エアゾール容器のステムAに連結される筒状のボタン下部41と、そのボタン下部41と定量室Rを形成するように、そのボタン下部41と上下移動自在に連結されるボタン上部42とからなる。噴射ボタン40は、ボタン上部42をボタン下部41に対して上下に移動させることにより、定量室の容積を変えることができる。
【0023】
ボタン下部41は、円状の下底45と、その縁部から上方に延びる円筒状の側壁46とを有する。
下底45の中心には、側壁46内(上方)に突出するようにエアゾール容器のステムAと係合する円筒状のステム係合部47が形成されている。ステム係合部47の上端には、さらに上方に延びる円筒状の中心突起48が形成されている。中心突起48の側面の上部および下部には、それぞれ中心突起48内と側壁46内とを連通する連通孔48b、48aが複数個環状に形成されている。
側壁46の下端には、半径方向外側に突出したフランジ部46bが形成されている。また側壁46の外周には、係合突起46cが形成されている。さらにフランジ部46bには、一方向に突出した突起46dが形成されている。この突起46dは、エアゾール容器の肩カバーTの縦溝T1内に挿入され、噴射ボタン40の回転を抑制する。
ステムAと側壁46内とは、ステム係合部47、中心突起48を介して連通している。
【0024】
ボタン上部42は、円柱状の噴射部51と、その噴射部の下端縁部から下方に延びる円筒状の外筒部52とを有する。
噴射部51は、下端中央から下方に延びる中心筒53と、側面に形成された噴射孔26と、中心筒53と噴射孔26とを連通するボタン上部内通路27とを有する。中心筒53は筒状体であり、下端に閉止部材54が挿入されている。閉止部材54は
図6bに示すように、円盤状の基部54aとその中央から上方に延びる筒状の挿入部54bとからなる。基部54aの上部側面に横溝55aが設けられており、挿入部54bの側面には横溝55aから上方に伸びる縦溝55bが設けられている。該閉止部材54の挿入部54bを中心筒53の下端に挿入することで、中心筒53の下端を閉じ、側面に中心筒53の内外を連通する側通孔53a(横溝55a)が形成される。つまり、中心筒53を中心突起48内に決められた深さに挿入させたとき、ボタン上部内通路27は定量室から遮断される(詳細は
図6a、
図6c参照)。噴射孔
26には、噴射チップが設けられている。中心筒53の外周に環状のシール材を設けてもよい。
外筒部52は、ボタン下部41の側壁46の外周面と沿うように形成されている。外筒部52の下部内面には、係合突起46cと係合する係合凹部52aが形成されている。係合凹部52aは、係合突起46cの長さより若干長く形成されている。
【0025】
この噴射ボタン40は、ボタン上部42の外筒部52内にボタン下部41を挿入するようにして連結する。この噴射ボタン50は、ステム係合部47から中心突起48のボタン下部41内の通路、定量室、中心筒53から噴射孔26のボタン上部42内の通路(ボタン上部内通路27)が噴射通路となる。
図6bの状態からボタン上部42をボタン下部41に対して下方に押下げると、
図6aに示すように、ボタン上部42の外筒部52の下端がボタン下部41の係合突起46cと係合し、ボタン下部41も下方に移動する。このときボタン上部42の中心筒53がボタン下部41の中心突起48内に挿入され、側通孔53aが中心突起48の内面によって塞がれる。つまり、ボタン上部42とボタン下部41との間の空間が定量室R1となり、ボタン上部内通路27が定量室R1から遮断される(噴射通路が遮断される)。
また
図6aよりも下方にボタン上部42を押下げると、
図6dのように、ボタン上部42の外筒部52の下端がボタン下部41の係合突起46cを乗り越える。さらにボタン上部42を押下げると、係合突起46cとボタン上部42の外筒部52の係合凹部52aの上面とが係合し、ボタン下部41も下方に移動可能になる。このとき、ボタン上部42の側通孔53aは、中心突起48の連通孔48a、bの間に位置するように構成されているため、側通孔53aはやはり中心突起48の内面によってシールされる。つまり、ボタン上部内通路27は定量室から遮断される(噴射通路が遮断される)。このとき、ボタン上部42とボタン下部41との間の空間が定量室R2となる。
図6aの定量室R1と
図6cの定量室R2とは、その高さが異なる分だけ容積も定量室R1の方が定量室R2より大きい。
【0026】
それぞれ
図6bおよび
図6dの状態で、噴射ボタン40(ボタン上部42)をエアゾール容器に対して下降させることにより、エアゾール容器のステムAを下降させ、エアゾールバルブを開放させることができる。これにより、エアゾール容器内の内容物は下方の連通孔48aからそれぞれ噴射ボタン40の定量室R1またはR2に供給される。
次いで
図6aの状態からボタン上部42の押圧力を開放すると、
図6bのように定量室R1内の内容物の圧力によりボタン上部42が上方に移動する。これによりボタン上部42の側通孔53aが中心突起48内から開放され、同時に、定量室R1内の内容物がその圧力によって中心筒53およびボタン上部内通路27を通って噴射孔26より噴射される。
一方、
図6cの状態からボタン上部42の押圧力を開放すると、
図6dのように、定量室R2内の内容物の圧力によりボタン上部42が上方に圧力を受け、係合突起46cが係合凹部52aの下面と当接するようにしてボタン上部42が上方に移動する。これによりボタン上部42の側通孔53aが中心突起48の上の連通孔48bと連通し、同時に定量室R2内の内容物がその圧力によって中心筒53およびボタン上部内通路27を通って噴射孔26より噴射される。
このように噴射ボタン40は、ボタン下部41に対するボタン上部42の高さに応じて定量室の容積を変えることができる。
【0027】
図7の噴射ボタン56は、ボタン下部57およびボタン上部58が小量噴射状態と多量噴射状態とでそれぞれ異なる係合状態を呈するものである。これにより、消費者は、その係合状態を視認することによりいずれの状態か認識することができる。
ボタン下部57は、側壁46の下端のフランジ部が前方円側(前方フランジ57a)と後方円側(後方フランジ57b)と高さが異なる部位から構成されている。この実施形態では、前方フランジ57aが低く、後方フランジ57bが高くなっている。
一方、ボタン上部58は、外筒部52の下端が前方の半円58aと後方の半円58bとで高さが異なる部位から構成されている。この実施形態では、前方の半円58aが高く、後方の半円58bが低く形成されている。
他の構成は、
図5の噴射ボタン40と実質的に同じであり、ボタン上部58をボタン下部57に対して上下に移動させることにより、定量室の容積を変えることができるものである。
【0028】
このように構成されているため、ボタン下部57とボタン上部58とが前方を向いている場合は、
図7bのように後方フランジ57bと後方の半円58bとが係合し、ボタン下部57とボタン上部58との連結状態の高さが高くなり、
図6aのように定量室が大きくなる。一方、ボタン下部57とボタン上部58とが互い違いに向いている場合は、
図7cのように後方フランジ57bと半円58aとが係合し、ボタン下部57とボタン上部58との連結状態の高さが低くなり、前方フランジ57aと後方の半円58bとが係合し、
図6bのように定量室が小さくなる。
【0029】
これまでの実施形態では、ボタン上部をボタン下部に対してどちらか回転または上下移動させて所定の位置に固定することにより定量室の容積を変えることができる噴射ボタンを開示してきたが、ボタン上部をボタン下部に対して回転および上下移動させて所定の位置に固定できるようにしてもよい。この場合、さらに容積を細かく変えることができる。
【0030】
図8の噴射ボタン60は、エアゾール容器のステムAに連結される筒状のボタン下部61と、そのボタン下部61と定量室Rを形成するように、そのボタン下部61と連結されるボタン上部62と、その定量室の容積を可変させる操作弁63とからなる。
【0031】
ボタン下部61は、
図9aに示すように、円状の下底65と、その縁部から上方に延びる円筒状の外壁66と、その外壁と空間を空けて下底から延びる円筒状の内壁67とを有する。
下底65の中心には、内壁67内(上方)に突出するようにエアゾール容器のステムAを内部に挿入する円筒状のステム係合部68が形成されている。ステム係合部68の上端には、上端外面が球面状を呈する中心突起69が上方に突出するように形成されている。中心突起69の側面には、中心突起69内と内壁67内とを連通する連通孔69aが複数個環状に形成されている。外壁66の下端には、半径方向外側に突出したフランジ部66bが形成されている。また、フランジ部66bには、外方に突出した突起66cが形成されている。内壁67の上端67aは、外面が球面状となっている。
【0032】
ボタン上部62は、
図9bに示すように、円柱状の噴射部71と、その噴射部の下端縁部から下方に延びる円筒状の外筒部72と、その外筒部72と空間を空けて噴射部の下端から下方に延びる円筒状の内筒部73とを有する。
噴射部71は、下端中央から下方に延びる中心筒75と、側面に形成された噴射孔76と、中心筒75と噴射孔76とを連通するボタン上部内通路77とを有する。中心筒75は、下端内面が球面状を呈しており、中心突起69の上端外面と当接してシールされるように構成されている。つまり、中心筒75の下端内面と中心突起69の上端外面とを当接させたとき、ボタン上部内通路77の下端がシールされる(
図3a参照)。この噴射孔7
6にも、噴射チップ76aが設けられている。
外筒部72は、内周面が前記ボタン下部61の外壁66の外周面と沿うように形成されている。また、操作弁63の挿入を許す貫通孔72aが形成されている。外筒部72の高さは、ボタン上部62の中心筒75の下端内面とボタン下部61の中心突起69の上端外面とが係合したとき、外壁66を覆うようになっていればよい。
内筒部73は、下端73aが内壁67の上端67aと係合できるように球面状の凹面となっている。そして、ボタン上部62の中心筒75の下端内面とボタン下部61の中心突起69の上端外面とが係合したとき、その下端73aと上端67aと係合し、シールするように構成されている。また、内筒部73の下部には、前記外筒部72の貫通孔72と同一直線上となるように挿通孔73bが形成されている。
【0033】
ボタン下部61とボタン上部62とを連結させることにより、ボタン下部61の外壁66と、ボタン上部62の外筒部72とによってできる空間が定量室Rとなる。また、
図8b、cに示すように、ボタン上部62を下降させ、ボタン上部62の中心筒75の下端内面とボタン下部61の中心突起69の上端外面とを係合させたとき、ボタン下部61の内壁67の上端67aとボタン上部62の内筒部73の下端73aとの係合によって内空間S1と、その内壁67、外壁66、内筒部73、外筒部72によって外空間S2とがボタン下部61とボタン下部62によって形成される。
【0034】
操作弁63は、円筒状の弁棒63aと、その端部に設けられる操作コック63bとからなる。弁棒63aは、ボタン上部62の貫通孔72aおよび挿通孔73bに挿入されるものであり、挿入することによりそれぞれの孔をシールするものである。この実施形態では、弁棒63aの操作コック63b側には、貫通孔72aとねじ嵌合する雄ねじが形成されており、操作弁63を回転させることにより操作弁63を挿通孔73bから入れ出しができるように構成されている。弁棒63aの側面に操作弁63が貫通孔72aから外れないように、貫通孔72aと係合する係止突起を設けてもよい。
【0035】
このように構成されているため、
図10a、bに示すように、操作弁の弁棒63aを挿通孔73bに挿入した状態では、内空間S1のみが定量室となる。一方、
図10c、dに示すように、操作弁の弁棒63aを挿通孔73bから出した状態では、内空間S1と外空間S2とは挿通孔73bで連通するため、その両空間が定量室となる。
【0036】
図11aの噴射ボタン80は、ボタン下部81と、ボタン上部82と、操作弁87とからなる。ボタン下部81とボタン上部82を組み合わせると、
図11bに示すように断面環状の定量室84が形成される。そしてこの実施形態では、
図11bに示すように、定量室84が半径方向に延びる2箇所の仕切り壁85、86によって第1定量室84aと第2定量室84bの2室に仕切られている。それぞれの仕切り壁85、86はボタン下部81と一体の下壁85a、86aと、ボタン上部82と一体の上壁85b、86bとに分かれている。さらに一方の仕切り壁86には、回動によって連通/遮断を切り替える操作弁87が設けられている。他の構成は
図9a、
図9bの噴射ボタン61と実質的に同一である。
【0037】
操作弁87は、
図11cに示すように、短冊状の板部87aと、その板部の上端の中心から上に延びる回動軸87bと、その回動軸87bの上端に固定される摘み87cとからなる。回動軸87bはボタン上部82を貫通して上端が外部に突出し、その端部に摘み87cが固定される。板部87aは仕切り壁86内で回動自在に設けられる。
【0038】
この噴射ボタン80では、ボタン上部82を押し込むと、下壁85a、86aと上壁85b、86bおよびボタン下部81の中心突起69とボタン上部82の中心筒75の下端が閉じて環状の定量室84が得られる。そのとき、
図11a、
図11bのように操作弁8
7が半径方向に向いている状態では、第1定量室84aと第2定量室84bが2箇所の仕切り壁85、86で2つの扇型の範囲に区画され、連通孔69aと連通している第1定量室84aが定量室として機能する(
図11bのハッチングした扇状の部位参照)。そして上壁と下壁が当接した状態でさらにボタン上部を押し込むと、ステムAを経由して第1定量室84aに内容物が導入され、噴射ボタン80から指を離したときに第1定量室84a内の内容物がボタン上部内通路を通り噴射孔から噴射される。
【0039】
他方、操作弁87を90度回動した状態でボタン上部82を押し込むと、ステムAを経由して定量室84(第1定量室84aと第2定量室84bの全体が定量室として機能)に内容物が導入され、指を離すと広くなった定量室から内容物がボタン上部内通路を通り噴射孔から噴射される。このように
図11a、
図11bの噴射ボタン80は、操作弁87の回動操作によって、定量室の容積を切り替えることができ、噴射量を変更することができる。