(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流量調整弁は、前記温熱生成熱交換器から前記インタークーラへ向かう冷媒流量を調整するインタークーラ流量調整弁、及び前記温熱生成熱交換器から前記インタークーラへ向かう冷媒をバイパスさせて前記蒸発器へと導くインタークーラバイパス流路に設けられたインタークーラバイパス弁の少なくとも何れか一方である請求項1記載のヒートポンプの制御装置。
前記流量調整弁は、前記蒸発器から前記インタークーラへ向かう冷媒流量を調整するインタークーラ流量調整弁、及び前記蒸発器から前記インタークーラへ向かう冷媒をバイパスさせて前記圧縮機へと導くインタークーラバイパス流路に設けられたインタークーラバイパス弁の少なくとも何れか一方である請求項1記載のヒートポンプの制御装置。
前記インタークーラ流量調整弁の開度及び前記インタークーラバイパス弁の開度の一方を変化させるときに他方を変化させない請求項2又は請求項3記載のヒートポンプの制御装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒートポンプサイクルによって温水(温熱)を供給するヒートポンプが知られている。
【0003】
ここで、特許文献1には、高い熱媒出口温度を得ることができるヒートポンプとして、吸熱部の一部(気相部)とヒートポンプの主経路の導管の一部(放熱部と中間部との間の導管の一部)とが熱的に接続された熱交換部であるインタークーラを有している。このインタークーラは、高温の流体(導管内の作動流体)と低温の流体(吸熱部内の作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換構造を有している。これにより、圧縮機の吸込冷媒温度を高くすることができるので、圧縮機の吐出冷媒温度も高くなり、これに伴い温熱媒体の出口温度(熱媒出口温度)を高くできる。
【0004】
この特許文献1に記載のインタークーラの交換熱量は、制御されていない。このため、インタークーラの交換熱量が過大となり、その結果、吐出冷媒温度が高くなりすぎるという問題があった。そこで、インタークーラの交換熱量が過大となった場合には、圧縮機の冷媒吸込口の直前に膨張弁の手前から抽出した冷媒液を注入して、圧縮機に吸い込まれる冷媒を冷却する方法(液インジェクション)を必要としていた。
【0005】
図11は、液インジェクションが行われる前後におけるターボヒートポンプの冷凍サイクル図(モリエル線図)の一例である。
図11には、冷媒圧力とエンタルピの変化と共に、液インジェクション流量Ginj、圧縮機循環冷媒流量Gcomp、膨張弁冷媒流量Gexv、HG冷媒流量Ghg、及びモータ冷却用冷媒流量Gmotorの流れが示されている(
図11における破線)。
液インジェクション流量Ginjは、液インジェクションによって圧縮機の吸込口へ注入される冷媒流量である。膨張弁冷媒流量Gexvは、膨張弁を通過した冷媒流量である。HG冷媒流量Ghgは、ホットガスバイパス弁を通過した冷媒流量である。冷却用冷媒流量Gmotorは、その他の流路を通過した冷媒流量の一例であり、膨張弁の前方から取出され、圧縮機のモータを冷却した後に、蒸発器の出口側へ流れる冷媒流量である。そして、圧縮機冷媒流量Gcompは、液インジェクション流量Ginj、膨張弁冷媒流量Gexv、HG冷媒流量Ghg、及びモータ冷却用冷媒流量Gmotorの合計となる。
また、
図11に示されるhexvは膨張弁を通過する冷媒のエンタルピ、hconは温熱生成熱交換器の出口における冷媒のエンタルピ、hgeは蒸発器の出口における冷媒のエンタルピ、hsは圧縮機の入口における冷媒のエンタルピ、hdは圧縮機が吐出する冷媒のエンタルピである。
【0006】
そして、液インジェクションが行われると、
図11に示されるように、吸込冷媒温度が低下すると共にエンタルピhsも低下するので、吐出冷媒温度が低下することとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、高い熱媒出口温度を得る高温熱媒ヒートポンプでは、定格負荷と低負荷(低い負荷率)とで圧縮機の吐出冷媒温度の目標温度が一定となっていると、低負荷で運転しているときに圧縮機がサージングし易くなる。
【0009】
この理由は、高い熱媒出口温度を要しない他のヒートポンプに比べて高温熱媒ヒートポンプは、圧縮機の吐出冷媒温度が高いためである。
具体的には、吐出冷媒温度が高いと圧縮機から吐出される冷媒のエンタルピも高い。このため、温熱生成熱交換器の出口冷媒温度が一定であると仮定すると、温熱生成熱交換器における冷媒のエンタルピ落差が大きい。
そして、温熱生成熱交換器の交換熱量Qcon[kW]、温熱生成熱交換器を流通する冷媒流量Gcon[kg/s]、圧縮機が吐出する冷媒のエンタルピhd[kJ/kg]、及び温熱生成熱交換器の出口における冷媒のエンタルピhcon[kJ/kg]は、下記(1)式で表わされる関係を有しているため、低負荷のときには冷媒流量Gconがより少なくなる。
【数1】
このため、低負荷で運転しているときに高温熱媒ヒートポンプは、圧縮機がサージングし易くなる。
【0010】
さらに、圧縮機の吐出冷媒温度の設定値を定格負荷と低負荷とで同一とした場合、温熱生成熱交換器の性能過剰により、熱媒出口温度が設定値をオーバーシュートする可能性がある。また、熱媒出口温度が設定値を超えていると、冷媒流量を減少させ、温熱生成熱交換器の交換熱力Qconを減少させるように制御が行われるので、熱媒出口温度が設定値を超えることによっても、圧縮機のサージングを招き易くなる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、圧縮機のサージングを防止すると共に、温熱媒体の出口温度の適切な制御を可能とする、ヒートポンプの制御装置、ヒートポンプ、及びヒートポンプの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のヒートポンプの制御装置、ヒートポンプ、及びヒートポンプの制御方法は以下の手段を採用する。
【0013】
本発明の第一態様に係るヒートポンプの制御装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された冷媒により外部負荷へと提供する温熱媒体を加熱する温熱生成熱交換器と、前記温熱生成熱交換器から導かれた冷媒を膨張させる膨張弁と、前記膨張弁から導かれた冷媒を熱源媒体との熱交換によって蒸発させる蒸発器と、前記温熱生成熱交換器から前記蒸発器へと向かう冷媒と、前記蒸発器から前記圧縮機へと向かう冷媒とを熱交換させるインタークーラと、前記インタークーラを流れる冷媒流量を調整する流量調整弁と、を備えたヒートポンプの制御装置であって、前記圧縮機の吐出冷媒温度の設定値を前記温熱生成熱交換器における負荷率の低下と共に低下させ、
前記膨張弁の開度を大きくし、該設定値に基づいて前記流量調整弁の開度を制御することを特徴とする。
【0014】
本構成によれば、ヒートポンプは、冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮機によって圧縮された冷媒により外部負荷へと提供する温熱媒体を加熱する温熱生成熱交換器、温熱生成熱交換器から導かれた冷媒を膨張させる膨張弁、膨張弁から導かれた冷媒を熱源媒体との熱交換によって蒸発させる蒸発器、温熱生成熱交換器から前記蒸発器へと向かう冷媒と蒸発器から圧縮機へと向かう冷媒とを熱交換させるインタークーラ、及びインタークーラの交換熱量を調整するために、インタークーラを流れる冷媒流量を調整する流量調整弁を備える。
【0015】
ここで、温熱生成熱交換器の負荷率が低下すると、冷媒流量が減少し、圧縮機にサージングが発生する可能性がある。なお、温熱生成熱交換器における負荷率とは、すなわちヒートポンプの負荷率である。
【0016】
そこで、圧縮機の吐出冷媒温度の設定値が温熱生成熱交換器における負荷率の低下と共に低下
し、膨張弁の開度を大きくすることで、該設定値に基づいて流量調整弁の開度が制御される。
負荷率の低下に応じて吐出冷媒温度の設定値を低下させると、温熱生成熱交換器における冷媒のエンタルピ落差が減少する。このため、熱量を確保するために膨張弁の開度を大きくし、冷媒流量を増加させる必要が生じる。すなわち、負荷率の低下に応じて冷媒流量が増加することとなり、圧縮機がサージングし難くなる。
また、圧縮機の吐出冷媒温度の設定値を定格負荷と負荷率が低い低負荷とで同一とした場合、温熱生成熱交換器の性能過剰により、温熱媒体の出口温度が設定値をオーバーシュートする可能性がある。しかし、本構成によれば、負荷率の低下に応じて吐出冷媒温度の設定値が低下し、冷媒流量が増加するので、温熱媒体の出口温度が設定値をオーバーシュートすることを抑制できる。
従って、本構成は、圧縮機のサージングを防止すると共に、温熱媒体の出口温度の適切な制御を可能とできる。
【0017】
上記第一態様では、前記流量調整弁が、前記温熱生成熱交換器から前記インタークーラへ向かう冷媒流量を調整するインタークーラ流量調整弁、及び前記温熱生成熱交換器から前記インタークーラへ向かう冷媒をバイパスさせて前記蒸発器へと導くインタークーラバイパス流路に設けられたインタークーラバイパス弁の少なくとも何れか一方であることが好ましい。
【0018】
本構成によれば、インタークーラ流量調整弁及びインタークーラバイパス弁の少なくとも何れか一方を冷媒流路の高温側に設け、インタークーラを流れる冷媒流量を直接制御するので、簡易にインタークーラの交換熱量を制御できる。
【0019】
上記第一態様では、前記流量調整弁が、前記蒸発器から前記インタークーラへ向かう冷媒流量を調整するインタークーラ流量調整弁、及び前記蒸発器から前記インタークーラへ向かう冷媒をバイパスさせて前記圧縮機へと導くインタークーラバイパス流路に設けられたインタークーラバイパス弁の少なくとも何れか一方であることが好ましい。
【0020】
本構成によれば、インタークーラ流量調整弁及びインタークーラバイパス弁の少なくとも何れか一方を冷媒流路の低温側に設け、インタークーラを流れる冷媒流量を直接制御するので、簡易にインタークーラの交換熱量を制御できる。
【0021】
上記第一態様では、前記インタークーラ流量調整弁の開度及び前記インタークーラバイパス弁の開度の一方を変化させるときに他方を変化させないことが好ましい。
【0022】
本構成によれば、インタークーラ流量調整弁の開度及びインタークーラバイパス弁の開度を同時に制御することはないので、インタークーラへ向かう冷媒流量が急変することを防止できる。
【0023】
本発明の第二態様に係るヒートポンプは、上記記載の制御装置を備える。
【0024】
本発明の第三態様に係るヒートポンプの制御方法は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機によって圧縮された冷媒により外部負荷へと提供する温熱媒体を加熱する温熱生成熱交換器と、前記温熱生成熱交換器から導かれた冷媒を膨張させる膨張弁と、前記膨張弁から導かれた冷媒を熱源媒体との熱交換によって蒸発させる蒸発器と、前記温熱生成熱交換器から前記蒸発器へと向かう冷媒と、前記蒸発器から前記圧縮機へと向かう冷媒とを熱交換させるインタークーラと、前記インタークーラの交換熱量を調整するために、前記インタークーラを流れる冷媒流量を調整する流量調整弁と、を備えたヒートポンプの制御方法であって、前記圧縮機の吐出冷媒温度の設定値を前記温熱生成熱交換器における負荷率の低下と共に低下させ、
前記膨張弁の開度を大きくし、該設定値に基づいて前記流量調整弁の開度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、圧縮機のサージングを防止すると共に、温熱媒体の出口温度の適切な制御を可能とする、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係るヒートポンプの制御装置、ヒートポンプ、及びヒートポンプの制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
図1には、遠心式(ターボ式)の圧縮機を用いたターボヒートポンプ1の概略構成図が示されている。冷媒としては、例えば代替フロン冷媒(R134a)が用いられる。
【0029】
ターボヒートポンプ1は、冷媒を圧縮する圧縮機3と、外部から供給される熱源水(熱源媒体)と冷媒とが熱交換する蒸発器5と、温水(温熱媒体)を出力する温熱生成熱交換器6と、蒸発器5と温熱生成熱交換器6との間に設けられた膨張弁9とを備えている。これら圧縮機3、蒸発器5、温熱生成熱交換器6及び膨張弁9によって、主系統の冷媒回路が構成されている。
【0030】
圧縮機3は、高圧力比が得られる遠心圧縮機となっている。圧縮機3は、軸線周りに回転する羽根車19を二段備えている。羽根車19の冷媒流れ上流側には、流入する冷媒流量を調節するIGV(インレットガイドベーン;吸込冷媒流量調整手段)21が設けられている。IGV21の開度は、制御装置7によってIGV用電動モータMが駆動されることによって調整される。
圧縮機3は、増速機18を介して接続された電動機17によって駆動される。電動機17は、制御装置7によって制御され、インバータ20による周波数制御によって回転数が適宜変更され得るようになっている。
圧縮機3の吸込側には吸込冷媒圧力P0を計測する圧力センサおよび吸込冷媒温度T0を計測する温度センサが、圧縮機3の吐出側には吐出冷媒圧力P1を計測する圧力センサおよび吐出冷媒温度T1を計測する温度センサが、それぞれ設けられている。これらセンサの出力値は、それぞれ制御装置7へと送られる。なお、圧縮機3は、冷媒を超臨界圧力で吐出する。
【0031】
蒸発器5は、例えば、プレート式の熱交換器とされている。蒸発器5には、熱源水配管13が接続されており、この熱源水配管13内を流れる熱源水と熱交換器内の冷媒とが熱交換を行い、熱源水から与えられる熱によって熱交換器内の冷媒が蒸発する。
【0032】
温熱生成熱交換器6は、例えば、プレート式の熱交換器とされている。温熱生成熱交換器6には、温水配管11が接続されており、この温水配管11内を流れる水と熱交換器内の冷媒とが熱交換を行う。温水配管11は、プロセス用加熱機器等の外部負荷と接続されている。温水配管11には、熱媒入口温度Ta及び熱媒出口温度Tbを測定する温度センサがそれぞれ設けられている。また、図示しないが、温水配管11には温水流量を計測する流量センサが設けられている。これらセンサからの出力値は、制御装置7へと送られる。
温熱生成熱交換器6の冷媒出口には、温水熱交出口冷媒温度T2を計測する温度センサが設けられており、この温度センサの出力値は制御装置7へと送られる。
【0033】
膨張弁9は、蒸発器5と温熱生成熱交換器6との間の冷媒配管に設けられており、温熱生成熱交換器6から導かれた液冷媒を絞ることによって等エンタルピ膨張させるものである。膨張弁9の開度は、制御装置7によって制御される。
【0034】
温熱生成熱交換器6と膨張弁9との間には、インタークーラ10が設けられている。インタークーラ10は、温熱生成熱交換器6から導かれた液冷媒と、蒸発器5にて蒸発したガス冷媒とを熱交換する熱交換器である。このインタークーラ10によって、圧縮機3へと吸い込まれる冷媒の温度が調整される。
インタークーラ10と膨張弁9とを接続するインタークーラ下流側冷媒配管23には、インタークーラ流量調整弁25が設けられている。温熱生成熱交換器6とインタークーラ10とを接続するインタークーラ上流側冷媒配管24と、インタークーラ下流側冷媒配管23との間には、インタークーラ10をバイパスして冷媒を流すインタークーラバイパス冷媒配管27が設けられており、このインタークーラバイパス冷媒配管27には冷媒流量を調整するインタークーラバイパス弁28が設けられている。インタークーラ流量調整弁25とインタークーラバイパス弁28の開度を制御装置7によって適宜調整することにより、インタークーラ10へと送り込む温熱生成熱交換器6からの高温冷媒流量を調整する。
【0035】
インタークーラ流量調整弁25及びインタークーラバイパス弁28は、例えば、ボールバルブで構成されており、ステッピングモータによって開度の制御が可能とされている。これにより、インタークーラ10を流れる冷媒流量を直接制御するので、簡易にインタークーラ10の交換熱量を制御できる。
ターボヒートポンプ1の起動時には、インタークーラ流量調整弁25は閉状態とされ、インタークーラバイパス弁28は開状態とされ、インタークーラ10は機能しない状態である。そして、インタークーラ流量調整弁25が徐々に開かれることによって、インタークーラ10へ冷媒が流れ、インタークーラ10が機能し始め、熱交換が行われることとなる。
【0036】
インタークーラ下流側冷媒配管23には、インタークーラ流量調整弁25と膨張弁9との間から分岐して吸込冷媒配管29へと至るインジェクション配管30が設けられている。インジェクション配管30にはインジェクション弁31が設けられている。このインジェクション弁31の開度は、制御装置7によって制御される。インジェクション弁31にて所望量に調整された冷媒を吸込冷媒配管29へ吹き込むことにより、圧縮機3へと供給される吸込冷媒の温度を調整できる。
また、蒸発器5とインタークーラ10との間には、冷媒を蓄えるためのアキュムレータ(不図示)が設けられている。
【0037】
圧縮機3の吐出側と蒸発器5の下流側との間には、ホットガスバイパス(以下、「HGBP」という。)配管34が設けられている。HGBP配管34には、HGBP弁35が設けられており、制御装置7によってその開度が制御されるようになっている。HGBP弁35は、高負荷の場合には全閉とされており、低負荷となり所定値を下回った場合に開となり漸次開度が増大されるようになっている。これにより、圧縮機3がサージングまたは旋回失速に陥ることを回避できる。
なお、HGBP弁35の開度については、外部負荷が増加してHGBP弁35を閉めていくときの開度のスケジュールと、外部負荷が減少してHGBP弁35を開けていくときの開度のスケジュールを異ならせてヒステリシスを持たせることが更に好ましい。これにより、システムに大きな影響を与えるHGBP弁35の開度変更の回数を少なくし、安定的にシステムを運転することができる。
【0038】
次に、上記構成のターボヒートポンプ1の動作について説明する。
圧縮機3は、電動機17によって駆動され、制御装置7によるインバータ制御により所定周波数で回転させられる。
蒸発器5及びインタークーラ10から吸い込まれた低圧ガス冷媒は、圧縮機3によって超臨界状態まで圧縮される。
圧縮機3から吐出された冷媒は、温熱生成熱交換器6へと導かれる。温熱生成熱交換器6において、高温高圧のガス冷媒は略等圧的に冷却され、高圧低温の冷媒となる。この際に得られる放出熱によって、温水配管11内を流れる温水が加熱される。
【0039】
温熱生成熱交換器6において高圧低温とされた冷媒は、インタークーラ上流側冷媒配管24を通過してインタークーラ10へと導かれる。インタークーラ10では、温熱生成熱交換器6からの高温液冷媒と蒸発器5にて蒸発した低温ガス冷媒との熱交換が行われる。インタークーラ10での交換熱量は、制御装置7によってインタークーラ流量調整弁25及びインタークーラバイパス弁28の開度を調整することによって制御される。
インタークーラ10にて熱交換を終えた高圧冷媒は、インタークーラ下流側冷媒配管23を通過して膨張弁9へと導かれ、この膨張弁9によって等エンタルピ的に膨張させられる。膨張弁9の開度は、制御装置7によって蒸発器5への供給冷媒量が所定量となるように制御される。
【0040】
膨張弁9によって膨張された冷媒は、蒸発器5へと導かれ、蒸発器5にて熱源水と熱交換することによって蒸発させられる。蒸発器5において蒸発した低圧ガス冷媒は、インタークーラ10にて所定温度だけ上昇させられる。圧縮機3へと吸い込まれる冷媒の温度を低下させたい場合には、制御部によってインジェクション弁31の開度を調整することによって低温冷媒を吸込冷媒配管29へと吹き込む。その後、ガス冷媒は、圧縮機3へと導かれ、再び圧縮される。
【0041】
制御装置7は、膨張弁9の開度(以下、「膨張弁開度」という。)を制御する膨張弁開度制御、IGV21のベーン開度を制御するベーン開度制御、インバータ20による周波数制御、HGBP弁35の開度を制御するHGBP弁開度制御、並びにインタークーラ流量調整弁25の開度(以下、「インタークーラ流量調整弁開度」という。)及びインタークーラバイパス弁28の開度(以下、「インタークーラバイパス弁開度」という。)を制御するインタークーラ流量制御等を行う。
なお、制御装置7は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等から構成されている。そして、各種制御に係る機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種制御が実現される。
【0042】
図2は、本実施形態に係る制御装置7におけるインタークーラ流量制御に係る機能ブロック図である。インタークーラ流量制御は、インタークーラ10を流れる冷媒流量を調整する流量調整弁である、インタークーラ流量調整弁25及びインタークーラバイパス弁28の開度を制御することによって、インタークーラ10の交換熱量を調整する。
【0043】
制御装置7は、設定値演算部40、偏差計算部41、PI演算部42、及び開度変換部43A,43Bを用いて、吐出冷媒温度T1と吐出冷媒温度T1の設定値である吐出冷媒温度設定値との差に基づいて、インタークーラ流量調整弁開度及びインタークーラバイパス弁開度を制御する。
【0044】
設定値演算部40は、負荷率に応じた圧縮機3の吐出冷媒温度T1の設定値(以下、「吐出冷媒温度設定値」という。)を演算し、偏差計算部41へ出力する。
【0045】
偏差計算部41は、吐出冷媒温度設定値を温度センサから入力された吐出冷媒温度T1の偏差を計算し、PI演算部42へ出力する。
【0046】
PI演算部42は、偏差計算部41から入力された偏差計算値に基づいて、吐出冷媒温度T1が吐出冷媒温度設定値となるように、PI制御等によってインタークーラに流す冷媒流量を示すPI演算値を算出し、開度変換部43A,43Bへ出力する。
【0047】
開度変換部43Aは、PI演算部42から入力されたPI演算値に基づいて、インタークーラ流量調整弁開度を算出し、インタークーラ流量調整弁25へ出力する。
【0048】
開度変換部43Bは、PI演算部42から入力されたPI演算値に基づいて、インタークーラバイパス弁開度を算出し、インタークーラバイパス弁28へ出力する。
【0049】
ここで、ターボヒートポンプ1は、温熱生成熱交換器6の負荷率が低下すると、冷媒流量が減少し、圧縮機3にサージングが発生する可能性がある。なお、温熱生成熱交換器6における負荷率とは、すなわちターボヒートポンプ1の負荷率である。
そこで、制御装置7が備える設定値演算部40は、負荷率の上昇と共に上昇し、負荷率の低下と共に低下するように、吐出冷媒温度設定値を演算する。
【0050】
図3は、負荷率と吐出冷媒温度設定値との関係を示すグラフである。設定値演算部40は、
図3に示されるグラフに基づいたデータを用いて、負荷率に応じた吐出冷媒温度設定値を演算する。なお、このデータは、制御装置7に予め記憶されている。
図3に示されるように、吐出冷媒温度設定値は、負荷率に比例している。なお、
図3のグラフは一例であり、これに限られない。
【0051】
そして、温熱生成熱交換器6の交換熱量Qcon[kW]、温熱生成熱交換器6を流通する冷媒流量Gcon[kg/s]、圧縮機3が吐出する冷媒のエンタルピ(以下、「温熱生成熱交入口エンタルピ」という。)hd[kJ/kg]、及び温熱生成熱交換器6の出口における冷媒のエンタルピ(以下、「温熱生成熱交出口エンタルピ」という。)hcon[kJ/kg]は、下記(2)式で表わされる関係を有している。
【数2】
【0052】
図4は、負荷率の低下に応じて吐出冷媒温度設定値を低下させる前後におけるターボヒートポンプ1の冷凍サイクル図(モリエル線図)の一例である。
図4に示されるhexvは膨張弁9を通過する冷媒のエンタルピ、hconは温熱生成熱交換器6の出口における冷媒のエンタルピ、hgeは蒸発器5の出口における冷媒のエンタルピ、hsは圧縮機3の入口における冷媒のエンタルピ、hdは圧縮機3が吐出する冷媒のエンタルピである。
そして、負荷率の低下に応じて吐出冷媒温度設定値を低下させると、
図4に示されるように、温熱生成熱交入口エンタルピhdが減少するので、温熱生成熱交換器6における冷媒のエンタルピ落差(hd-hcon)が減少する。
【0053】
このため、制御装置7は、熱量を確保するために膨張弁開度を大きくし、冷媒流量を増加させる必要が生じる。すなわち、負荷率の低下に応じて冷媒流量が増加することとなり、圧縮機3がサージングし難くなる。
このように、制御装置7は、吐出冷媒温度設定値を負荷率に比例して変化させるので、温熱生成熱交換器6の負荷率が低下しても、圧縮機3がサージングすることを防止することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る制御装置7は、吐出冷媒温度設定値を用いたフィードバック制御によりインタークーラ流量調整弁開度及びインタークーラバイパス弁開度を制御することとなり、温熱生成熱交換器6の負荷率が低下しても、圧縮機3がサージングすることを簡易な構成で防止することができる。
【0055】
さらに、
図4に示されるように、負荷率の低下に応じて吐出冷媒温度設定値を低下させる前後で、インタークーラ10(低温側)の出口における冷媒のエンタルピhsも減少している。この理由は、吐出エンタルピを下げるためには吸込エンタルピを下げる必要があるためである。
【0056】
図5は、PI演算部42で算出されたPI演算値、インタークーラ流量調整弁開度、及びインタークーラバイパス弁開度の関係を示している。PI演算部42から入力されるPI演算値は、例えばインタークーラ10に流通させることができる最大の冷媒流量を100%とした場合に対する割合で示される。
そして、
図5に示されるように、インタークーラ流量調整弁開度を示す開度指令値は、予め定められた所定値に達するまで比例して上昇する。これによって、インタークーラ10を流通する冷媒流量は増加し、インタークーラ10の交換熱量は増加することとなる。しかし、開度指令値は、所定値に達するとそれ以上上昇しない。このように、インタークーラ流量調整弁開度が大きくなるとインタークーラ10の交換熱量は増加し、インタークーラ流量調整弁開度が小さくなるとインタークーラ10の交換熱量は減少する。
一方、インタークーラバイパス弁開度を示す開度指令値は、インタークーラ流量調整弁開度が上記所定値に達するまで変化しない。しかし、インタークーラバイパス弁開度を示す開度指令値は、インタークーラ流量調整弁開度が所定値に達すると減少する。これによって、インタークーラバイパス冷媒配管27を流通する冷媒流量は減少するので、インタークーラ上流側冷媒配管24を流通する冷媒流量、すなわちインタークーラ10に流通する冷媒流量は増加し、インタークーラ10による交換熱量は増加することとなる。このように、インタークーラバイパス弁開度が小さくなるとインタークーラ10による交換熱量は増加し、インタークーラバイパス弁開度が大きくなるとインタークーラ10による交換熱量は減少する。
【0057】
上記のように、制御装置7は、冷媒流路の高温側に設けられたインタークーラ流量調整弁25及びインタークーラバイパス弁28によって、温熱生成熱交換器6からインタークーラ10へ向かう冷媒流量を制御する。従って、制御装置7は、インタークーラ10における交換熱量を容易に制御することができ、吸込冷媒温度T0を調整し易くなる。この結果、温水熱交入口冷媒温度である吐出冷媒温度T1が安定することとなるので、温水熱交出口冷媒温度T2も温水熱交出口冷媒温度設定値に達するように制御され易くなり、圧縮機3のサージングがより確実に防止されることとなる。
【0058】
また、圧縮機3の吐出冷媒温度T1の設定値を定格負荷と負荷率が低い低負荷とで同一とした場合、低負荷のときでは冷媒流量が減少するため、温熱生成熱交換器6の性能過剰により、熱媒出口温度Tbが設定値をオーバーシュートする可能性がある。しかし、本実施形態に係る制御装置7は、負荷率の低下に応じて吐出冷媒温度設定値を低下させることに伴って、冷媒流量が増加するので、熱媒出口温度Tbが設定値をオーバーシュートすることを抑制できる。
【0059】
さらに、制御装置7は、インタークーラ流量調整弁開度及びインタークーラバイパス弁開度の一方を変化させるときに他方を変化させない。すなわち、インタークーラ流量調整弁開度及びインタークーラバイパス弁開度を同時に制御されることはないので、制御装置7は、インタークーラ10へ向かう冷媒流量が急変することを防止できる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係るターボヒートポンプ1の制御装置7は、圧縮機3の吐出冷媒温度設定値を温熱生成熱交換器6における負荷率の低下と共に低下させ、吐出冷媒温度と吐出冷媒温度設定値との差に基づいて、インタークーラ流量調整弁開度及びインタークーラバイパス弁開度を演算する。
従って、制御装置7は、圧縮機3のサージングを防止すると共に、熱媒出口温度Tbの適切な制御を可能とする。
【0061】
(第1変形例)
次に、ターボヒートポンプ1の変形例について説明する。
図6から
図10は、変形例に係るターボヒートポンプ1の構成である。なお、
図6における
図10と同一の構成部分については
図1と同一の符号を付して、その説明を省略するが、
図6から
図10には
図1では不図示としたアキュムレータ50を図示している。
【0062】
上記実施形態では、
図1に示されるように、インタークーラ流量調整弁25は、インタークーラ10と蒸発器5との間、すなわちインタークーラ10に対して冷媒の流れの下流側に設けられている。
しかし、
図6(a)に示されるように、インタークーラ流量調整弁25は、温熱生成熱交換器6とインタークーラ10との間、すなわちインタークーラ10に対して冷媒の流れの上流側に設けられてもよい。
なお、
図1,
図6(a)に示される位置にインタークーラ流量調整弁25及びインタークーラバイパス弁28を配置した方が、下記に説明する他の位置に配置するよりもインタークーラ10における冷媒の交換熱量の制御範囲が最も広い。
図6(a)に示されるように、インタークーラ10に対して冷媒の流れの上流側にインタークーラ流量調整弁25を設ける方が、インタークーラ10に冷媒が溜まることを抑制できる。インタークーラ10に冷媒が溜まると、意図せずにインタークーラ10による熱交換を機能させる可能性がある。このため、
図6(a)に示されるようにインタークーラ10に対して冷媒の流れの上流側にインタークーラ流量調整弁25を設ける方が好ましい。
【0063】
また、
図6(b)に示されるように、インタークーラ流量調整弁25が設けられずに、インタークーラバイパス弁28のみが設けられてもよい。この形態の場合、インタークーラ流量調整弁25の替わりに、温熱生成熱交換器6からインタークーラ10へ向かう流量を調整するためのオリフィスが設けられてもよい。
また、
図6(c)に示されるように、インタークーラバイパス弁28が設けられずに、インタークーラ流量調整弁25のみが温熱生成熱交換器6とインタークーラ10との間に設けられてもよい。
また、
図7に示されるように、インタークーラバイパス弁28が設けられずに、インタークーラ流量調整弁25のみがインタークーラ10と蒸発器5との間に設けられてもよい。
図6(c)と
図7に示される形態の場合、インタークーラバイパス弁28の替わりに、温熱生成熱交換器6から蒸発器5へ向かう流量を調整するためのオリフィスが設けられてもよい。
【0064】
なお、インタークーラ流量調整弁25及びインタークーラバイパス弁28両方を設けた方が、何れか一方とする場合に比べて、インタークーラ10による交換熱量の制御範囲が広がるが、何れか一方とする方が構成を簡略化できる。インタークーラ流量調整弁25及びインタークーラバイパス弁28の何れか一方を設ける場合は、インタークーラ流量調整弁25を設けた方が、インタークーラ10の交換熱量を直接的に制御できるので、より好ましい。
【0065】
(第2変形例)
上記実施形態及び第1変形例では、インタークーラ流量調整弁25及びインタークーラバイパス弁28が冷媒流路の高温側に設けられているが、冷媒流路の低温側に設けられてもよい。
本第2変形例では、インタークーラ流量調整弁25’が、蒸発器5からインタークーラ10へ向かう冷媒流量を調整する弁とされ、インタークーラバイパス弁28’が、蒸発器5からインタークーラ10へ向かう冷媒をバイパスさせて圧縮機3へと導くインタークーラバイパス冷媒配管27’に設けられた弁とされることとなる。一例として、インタークーラバイパス冷媒配管27’は、インタークーラ10とアキュムレータ50との間で冷媒流路が分岐し、分岐した他方の冷媒流路にインタークーラ10と圧縮機3との間で合流する。
【0066】
第2変形例では、
図8(a)に示されるように、インタークーラ流量調整弁25’が蒸発器5とインタークーラ10(アキュムレータ50)との間に設けられ、インタークーラバイパス弁28’がインタークーラバイパス冷媒配管27’に設けられる。
また、
図8(b)に示されるように、インタークーラ流量調整弁25’がインタークーラ10と圧縮機3の間に設けられ、インタークーラバイパス弁28’がインタークーラバイパス冷媒配管27’に設けられてもよい。
また、
図8(c)に示されるように、インタークーラ流量調整弁25’が設けられずに、インタークーラバイパス弁28’のみが設けられてもよい。この形態の場合、インタークーラ流量調整弁25’の替わりに、蒸発器5からインタークーラ10へ向かう流量を調整するためのオリフィスが設けられてもよい。
【0067】
また、
図9(a)に示されるように、インタークーラバイパス弁28’が設けられずに、インタークーラ流量調整弁25’のみが蒸発器5とインタークーラ10(アキュムレータ50)との間に設けられてもよい。
また、
図9(b)に示されるように、インタークーラバイパス弁28’が設けられずに、インタークーラ流量調整弁25’のみが圧縮機3とインタークーラ10との間に設けられてもよい。
図9(a),(b)に示される形態の場合、インタークーラバイパス弁28’の替わりに、蒸発器5から圧縮機3へ向かう流量を調整するためのオリフィスが設けられてもよい。
【0068】
(第3変形例)
図10に示されるように、高温側及び低温側の両方にインタークーラ流量調整弁25,25’及びインタークーラバイパス弁28,28’が設けられてもよい。
【0069】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0070】
また、上記実施形態では、制御装置7が、インタークーラ流量調整弁開度を大きくした後に、インタークーラバイパス弁開度を小さくする形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、インタークーラ流量調整弁開度及びインタークーラバイパス弁開度を同時に制御しなければよく、インタークーラ流量調整弁開度及びインタークーラバイパス弁開度を交互に制御する形態としてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、圧縮機3は冷媒を超臨界圧力で吐出する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、圧縮機3は冷媒を超臨界圧力未満で吐出する形態としてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、吐出冷媒温度設定値を用いたフィードバック制御によりインタークーラ流量調整弁開度及びインタークーラバイパス弁開度を制御する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、吐出冷媒温度設定値を用いたフィードフォワード制御によりインタークーラ流量調整弁開度及びインタークーラバイパス弁開度を制御する形態、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせた形態としてもよい。