(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電力消費機器が設置された管理エリア内の状況を検知した検知情報と、電力消費機器に関する機器情報とに基づいて、電力消費機器の制御内容の優先度を算出する優先度算出部と、
前記優先度算出部により算出された優先度を補正する優先度補正部と、
前記優先度補正部により補正された優先度に対応する制御内容に基づいて、電力消費機器を制御する情報を生成する制御情報生成部と、
個人を識別する情報を記憶する個人識別情報記憶部と、
を有し、
前記優先度補正部は、
前記優先度に基づく制御内容の消費エネルギーのレベルと、各管理エリアにおいて許容できる消費エネルギーの許容レベルとに基づいて、消費エネルギーの目標値を満たす場合に、各管理エリアにおいて快適性が低下する度合いを算出する快適性低下度算出部と、
前記快適性の低下度と、あらかじめ設定された快適性の低下時間とに基づいて、快適性についての公平性の指標を算出する公平性指標算出部と、
前記公平性の指標に基づいて、前記優先度を補正する補正部と、
前記個人を識別する情報に基づいて、前記補正部による補正を行うために、個人が存在していた前記管理エリアの快適性の低下度から個人の公平性の指標を求める個人公平性指標算出部と、
を有することを特徴とする電力制御装置。
前記公平性指標算出部が公平性の指標を算出するための快適性の低下度として、各管理エリアにおける電力消費機器の過去の制御履歴に基づいて、各管理エリアにおける過去の快適性の低下度を算出する過去履歴算出部を有することを特徴とする請求項1記載の電力制御装置。
前記快適性低下度算出部による快適性が低下する度合いを算出するために、電力制御機器の制御内容に関する個人の好み情報を記憶する好み情報記憶部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力制御装置。
電力消費機器若しくはその設置領域をグルーピングした情報若しくは検知情報に基づいて、管理エリアを設定する管理エリア設定部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力制御装置。
前記過去履歴算出部が過去の快適性の低下度を算出するための、過去の制御情報の範囲を設定する参照範囲設定部を有することを特徴とする請求項2記載の電力制御装置。
前記優先度補正部による優先度補正を行わない期間に関する予約情報を記憶する予約情報記憶部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力制御装置。
前記優先度補正部による優先度補正を行なわない管理エリアに関するルール情報を記憶するルール情報記憶部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電力制御装置。
前記優先度補正部による優先度補正を行わないインセンティブの授受に関する情報を記憶するインセンティブ情報記憶部を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電力制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[A.第1の実施形態]
[1.概要]
まず、本実施形態が適用されるビル内の一例を、
図1に示す。すなわち、ビル内の各部屋には、天井に照明器具(以下、照明とする)L1、L2、空気調和機(以下、空調とする)A1、A2、センサS1、S2が設置されている。部屋の内部には、複数のデスクが配置され、着席している人、移動している人が存在する。
【0013】
そして、
図2に示すように、本実施形態の電力制御装置が適用される電力制御システム1は、
図2に示すように、ネットワークNを介して互いに接続されたサーバSA、照明L1、L2、空調A1、A2、センサS1、S2、端末Тを有している。
【0014】
サーバSAは、電力制御装置を構成するコンピュータである。このサーバSAには、後述するように、省エネ目標値、許容省エネレベル、管理エリア情報等が設定される。照明L1、L2は、発光によりビル内の明るさを調節する電力消費機器である。空調A1、A2は、ビル内の温度、湿度を調節する電力消費機器である。
【0015】
サーバSAは、ネットワークNを介して制御情報を送信することにより、照明L1、L2、空調A1、A2等の電力消費機器を制御する。制御情報としては、たとえば、以下のような情報が含まれる。
・照明 :ON/OFF信号、調光信号(調光率、目標照度)
・空調 :設定温度、設定PMV
【0016】
PMVは、Predicted Mean Voteの略であり、空調の温熱指標ISO7730が規定している。PMVは、人の寒冷の感じ方を数値化したものであり、0が快適、−が寒い、+が暖かいを示す。PMVの算出に用いるパラメータは、温度、湿度、平均輻射温度、着衣量、活動量、風速等である。
【0017】
これらの電力消費機器は、ネットワークNを介して、自らの機器情報をサーバSAに送信する。電力消費機器の情報は、たとえば、以下のような情報を含む。
・種別(空調、照明、その他)
・位置
・制御グループ
・消費電力
・稼働状態
【0018】
センサS1、S2は、ビル内の状況を検知する検知部である。センサS1、S2には、カメラ及び画像認識装置、入退出センサ、照度計、温湿度計、酸素濃度計などが含まれる。センサS1、S2が検知する検知情報としては、たとえば、以下のような情報が含まれる。
・人間の情報:在・不在、在室人数、活動量、位置
・環境の情報:照度、温湿度、酸素濃度
【0019】
センサS1、S2は、ネットワークNを介して、ビル内の情報をサーバSAに送信する。サーバSAは、受信したビル内の情報に基づいて、照明L1、L2、空調A1、A2を制御する。
【0020】
端末Tは、ネットワークNを介して、サーバSAとの間で情報の送受信が可能なコンピュータである。端末Tには、たとえば、ビルオーナー、ユーザ等のパーソナルコンピュータ、モバイル端末、操作パネルが含まれる。なお、ネットワークNは、電力会社や地域のエネルギー管理システムのサーバに接続され、必要な情報を送受信可能に構成されている。
【0021】
[2.構成]
次に、
図3及び
図4を参照して、本実施形態の電力制御装置100の構成を説明する。
図3に示すように、電力制御装置100は、検知情報記憶部110、機器情報記憶部120、設定情報記憶部130、過去情報記憶部140、制御部150、優先度記憶部160を有する。また、電力制御装置100には、入力部200、出力部300が接続されている。
【0022】
[2−1.検知情報記憶部]
検知情報記憶部110は、センサS1、S2から、ネットワークNを介して受信した検知情報を記憶する処理部である。検知情報は、上記の人間の情報、環境の情報を含む。
【0023】
[2−2.機器情報記憶部]
機器情報記憶部120は、電力消費機器から、ネットワークNを介して受信した機器情報を記憶する処理部である。機器情報の例は、上記の通りである。
【0024】
[2−3.設定情報記憶部]
設定情報記憶部130は、制御部150の処理に必要な各種の設定情報を記憶する処理部である。設定情報は、たとえば、省エネ目標値、管理エリア情報、許容省エネレベルを含む。
【0025】
省エネ目標値は、デマンドレスポンスにおける要求となる消費エネルギーの目標値である。ここで、「省エネ」とは、消費エネルギーの削減を意味する。つまり、「省エネ目標値」は、消費エネルギーの「目標値」と同義である。
【0026】
省エネ目標値は、電力会社や地域のエネルギー管理システムのサーバなどから、ネットワークNを介して入力されたものを、設定情報記憶部130が記憶する。なお、省エネ目標値は、自主的な省エネ活動として設定された消費エネルギーの目標値であってもよい。
【0027】
管理エリア情報は、ビル内を複数に区切った領域及びこれに属する電力消費機器の情報である。この管理エリア単位で、制御対象となる電力消費機器が決まる。
【0028】
許容省エネレベルは、管理エリア毎に、許容できる消費エネルギーのレベルである。つまり、「許容省エネレベル」は、消費エネルギーの「許容レベル」と同義である。許容省エネレベルの表現形式は、省エネ目標値を達成できる省エネレベルからの相対表現でもよいし、絶対表現でもよい。
【0029】
たとえば、+1という相対表現を考える。この場合、後述する省エネレベル2で省エネ目標値を達成できる場合であっても、より高いレベルである省エネレベル3までの制御を許容することを意味する。許容省エネレベルが大きいほど、快適性の低下度が大きい状態を、より短い時間でクリアできる。
【0030】
[2−4.過去情報記憶部]
過去情報記憶部140は、電力消費機器の制御情報及び後述する公平性の指標について、過去の演算結果を記憶する処理部である。
【0031】
[2−5.制御部]
制御部150は、優先度算出部151、優先度補正部152、制御情報生成部153、制御情報出力部154を有する。
【0032】
(優先度算出部)
優先度算出部151は、検知情報に基づいて、電力消費機器の優先度を算出する処理部である。優先度とは、省エネ制御のためにあらかじめ設定された複数の制御内容について、実行する順位をいう。
【0033】
たとえば、優先度には、検知情報に応じて、以下の種類が考えられる。これらの詳細は、後述する。
(1)人間の密度に応じた優先度
(2)個人の情報に応じた優先度
(3)環境に応じた優先度
(4)消費電力に応じた優先度
【0034】
優先度の値が小さい制御内容ほど優先度が高いため、優先的に実行される。省エネ制御の実行により、対象となる管理エリアに属する電力消費機器がオフとなり、若しくは電力消費機器の消費電力が低く抑えられる。このような省エネ制御の実行により、当該管理エリアの快適性は低下する。
【0035】
(優先度補正部)
優先度補正部152は、優先度算出部151が算出した優先度を補正する処理部である。この優先度補正部152は、
図4に示すように、快適性低下度算出部152a、過去履歴算出部152b、公平性指標算出部152c、補正部152dを有する。
【0036】
快適性低下度算出部152aは、省エネ目標値と許容省エネレベルに基づいて、快適性が低下する度合いを算出する処理部である。快適性低下度の算出例は、後述する。過去履歴算出部152bは、過去の制御履歴に基づいて、過去の快適性の低下度を算出する処理部である。快適性低下度の過去履歴を算出する際に、参照する制御履歴の範囲については、あらかじめ設定されたものを用いる。
【0037】
公平性指標算出部152cは、上記の快適性の低下度と、あらかじめ設定された快適性の低下時間に基づいて、管理エリア間での快適性の公平の度合いを算出する処理部である。公平性の指標の算出例は、後述する。補正部152dは、管理エリア間で、公平性の指標が等しくなるように、優先度を補正する処理部である。
【0038】
(制御情報生成部)
制御情報生成部153は、補正された優先度に従って決定される制御内容に基づいて、各電力消費機器への制御信号等の制御情報を生成する処理部である。
【0039】
(制御情報出力部)
制御情報出力部154は、制御情報生成部153が生成した制御情報を、各電力消費機器へ出力する処理部である。
【0040】
[2−6.優先度記憶部]
優先度記憶部160は、優先度算出部151が算出した優先度、優先度補正部152が補正した優先度を記憶する処理部である。
【0041】
[2−7.入力部]
入力部200は、電力制御装置100に必要な情報の入力、処理の選択や指示を入力する構成部である。この入力部200としては、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル(表示装置に構成されたものを含む)、スキャナ等が考えられる。管理エリア内に設置された操作パネルも、入力部200に含まれる。但し、入力部200は、現在又は将来において利用可能なあらゆる入力装置を含む。入力部200は、上記の各記憶部に記憶される情報を入力することができる。
【0042】
[2−8.出力部]
出力部300は、検知情報、機器情報、設定情報、優先度、制御情報、過去情報等を、ビルオーナーやユーザが認識可能となるように出力する構成部である。この出力部300としては、たとえば、表示装置、プリンタ等が考えられる。管理エリア内に設置された操作パネル内の表示装置も、出力部300に含まれる。但し、出力部300は、現在又は将来において利用可能なあらゆる出力装置を含む。
【0043】
なお、入力部200及び出力部300には、ネットワークNを介した情報の入出力を行うインタフェース等も含まれる。さらに、端末Tも、入力部200及び出力部300として機能する。
【0044】
[3.作用]
次に、本実施形態の作用を、
図5のフローチャートに沿って、
図6〜
図21を参照して説明する。まず、あらかじめ入力された省エネ目標値によって、ビル全体での消費エネルギーの削減量は決定されているものとする(ステップ01)。
【0045】
[3−1.優先度の算出]
次に、優先度算出部151が、電力消費機器の優先度を算出する(ステップ02)。この優先度の算出は、たとえば、人間の情報、環境の情報若しくは機器情報に基づいて、以下のように行う。ただし、優先度の算出手法は、これらの例には限定されない。
【0046】
(人間の密度に応じた優先度の算出)
優先度算出部151は、電力消費機器の位置を中心とした周囲の人間の密度を算出し、人間の密度に応じて制御の優先度を算出する。人間の密度は、たとえば、センサからの検知情報から得られる所定の範囲に存在する人間の数とする。所定の範囲は、たとえば、電力消費機器から所定の距離内、電力消費機器の存在する管理エリア内、電力消費機器の存在する管理エリアの近傍のエリア内とする。
【0047】
具体的には、人間の密度は、たとえば、電力消費機器の周囲3m以内の人間の数で表現できる。優先度算出部151は、このように人間の密度を算出し、密度−優先度の変換テーブルや、変換関数を用いて優先度を算出する。
【0048】
優先度の表現形式としては、1、2、3、…(値が小さいほど優先度は高い)などの整数値であってもよいし、優先度の順位であってもよい。
【0049】
(個人の情報に応じた優先度)
優先度算出部151は、人間の属性と、優先度の変換テーブルを用いて、優先度を算出してもよい。人間の属性としては、たとえば、従業員、客、VIPなどが含まれる。このとき、優先度算出部151は、電力消費機器に最も近い人間の属性に基づいて、優先度を求めてもよい。
【0050】
また、優先度算出部151は、電力消費機器から所定の距離内の各人間の属性に基づいて、それぞれの優先度を求め、それらの平均値を優先度としてもよい。また、優先度の算出に、人間の行動−優先度の変換テーブルを用いてもよい。人間の行動には、歩行、停止、作業中などが含まれる。
【0051】
(環境に応じた優先度)
優先度算出部151は、電力消費機器が存在する場所の環境に応じて、優先度を算出してもよい。環境には、たとえば、センサにより検知される照度などが含まれる。照度に応じた優先度の算出には、照度−優先度の変換テーブルや、変換関数を用いることができる。
【0052】
(消費電力に応じた優先度)
優先度算出部151は、電力消費機器の消費電力に応じて、優先度を算出してもよい。この優先度の算出は、たとえば、消費電力−優先度の変換テーブルや、変換関数を用いて行うことができる。
【0053】
[3−2.快適性低下度の算出]
次に、快適性低下度算出部152aは、快適性の低下度を算出する(ステップ03)。快適性の低下度は、たとえば、優先度に従って、省エネ目標値を満たすように決定される制御内容の省エネレベルと、あらかじめ設定された許容省エネレベルを用いて、以下の式(1)ように算出することができる。
【0054】
快適性の低下度=(a×(照明の省エネレベル+許容省エネレベル))
+(b×(空調の省エネレベル+許容省エネレベル)) …式(1)
【0055】
ここで、a,bは各電力消費機器に対する重み係数であり、a+b=1.0である。たとえば、単純作業をする場合は、空調の快適性を優先してa<bとする。細かい作業をする場合は、照明の快適性を優先してa>bとする。また、管理エリア毎に、重み係数を変更することもできる。
【0056】
より具体的な算出例を、
図6及び
図7に示す。すなわち、
図6に示すように、3つの管理エリア1〜3に、空調1〜3と照明1〜3が設置されているとする。
図7の優先度のテーブルに示す優先度6まで制御する場合、管理エリア1〜3の照明1〜3と空調1〜3は、省エネレベル1まで制御される。このため、重み係数が均等の場合は、快適性の低下度は、以下の式(2)のようになる。
【0057】
快適性の低下度=1=重み0.5×省エネレベル1+重み0.5×省エネレベル1 …式(2)
【0058】
[3−3.快適性低下度の過去履歴の算出]
過去履歴算出部152bは、過去情報に基づいて、上記の快適性の低下度の算出と同様に、快適性の低下度の過去履歴を算出する(ステップ04)。
【0059】
[3−4.公平性の指標の算出]
公平性指標算出部152cは、公平性の指標を算出する(ステップ05)。公平性の指標は、以下の式(3)のように求めることができる。快適性の低下時間の単位は、30分間、1時間、1日間など任意に設定可能である。
【0060】
公平性の指標=快適性の低下度×快適性の低下時間 …式(3)
【0061】
なお、公平性の指標は、所定の期間内において、最終的に管理エリア間で等しくなるように制御するものである。このため、公平性指標算出部152cによる公平性の指標の算出は、所定の期間内における快適性の低下の過去履歴に基づいても行われ、最新の公平性の指標に加算される。
【0062】
[3−5.優先度の補正]
補正部152dは、上記の公平性の指標に基づいて、優先度を補正する(ステップ06)。この優先度の補正は、上記の通り、できる限り管理エリア間の公平性の指標が等しくなるようにする。
【0063】
つまり、補正部152dは、快適の低下度合いと、快適性の低下時間を加味しつつ、ユーザが設定する許容省エネレベルに応じて、制御の優先度、つまり順番を変える。たとえば、
図7に示した制御内容の優先度を、公平性の指標に応じて入れ替える。このような優先度の補正の具体例については、後述する。
【0064】
[3−6.制御情報の生成]
制御情報生成部153は、上記のように補正された優先度に従って決定される制御内容に基づいて、各電力消費機器への制御情報を生成する(ステップ07)。
【0065】
[3−7.制御情報の出力]
さらに、制御情報出力部154は、制御情報生成部153が生成した制御情報を、各電気機器へ出力する(ステップ08)。これにより、各電力消費機器が、受信した制御情報に従って制御動作を行う。
【0066】
[3−8.優先度補正の具体例]
以上のように、制御部150が、公平性の指標に基づいて優先度を補正しながら、順次、電力消費機器を制御する具体例を、以下に説明する。
【0067】
(具体例1)
まず、
図6に示した管理エリア1〜3、
図7に示した優先度及び省エネレベルの例をベースとして、全管理エリア1〜3の許容省エネレベルが+0の場合を、
図8〜
図13を参照して説明する。
図8〜
図13は、管理エリア1〜3に対して、1時間ごとに制御内容を変えた場合を例示している。
【0068】
(13時〜14時)
図8及び
図9は、13時から14時の間に、優先度4までの制御を実行して、省エネ目標値を達成する場合である。
【0069】
この場合、管理エリア1の公平性の指標は、照明が、快適性の低下度0.5×1時間、空調が、快適性の低下度0.5×1時間なので、(0.5+0.5)×1で1となる。管理エリア2、3の公平性の指標は、照明が、快適性の低下度0.5×1時間、空調は、快適性の低下度0×1時間なので、(0.5+0)×1で0.5となる。
【0070】
つまり、各管理エリア1〜3における照明1、2、3は、省エネレベル1まで制御される。それに対して、管理エリア1の空調1は、省エネレベル1であるが、管理エリア2、3の空調2、3は制限されない。
【0071】
(14時〜15時)
次に、
図10及び
図11は、14時から15時の間に、優先度4までの制御を実行して、省エネ目標値を達成する場合である。ただし、ここでは、過去履歴も考慮した13時から15時まででの公平性の指標になる。
【0072】
つまり、管理エリア1は照明1のみが、省エネレベル1まで制御され、空調1は制御されないので、この時間のみの公平性の指標は、快適性の低下度0.5×1時間で0.5となる。ただし、この0.5に、13時から14時の快適性の低下度(0.5+0.5)×1時間の1が積算されるので、0.5+1で1.5となる。
【0073】
管理エリア2は、照明2と空調2ともに省エネレベル1まで制御しているので、この時間のみの公平性の指標は、快適性の低下度(0.5+0.5)×1時間で1となる。ただし、この1に、13時から14時の快適性の低下度0.5×1時間の0.5が積算されるので、1+0.5で、公平性の指標は1.5となる。
【0074】
管理エリア3は、照明3のみを省エネレベル1まで制御しているので、この時間のみの公平性の指標は、快適性の低下度0.5×1時間で0.5となる。ただし、この0.5に、13時から14時の快適性の低下度0.5×1時間の0.5が積算されるので、0.5+0.5で、公平性の指標は1となる。
【0075】
(15時〜16時)
次に、
図12及び
図13は、15時から16時の間に、優先度4までの制御を実行して、省エネ目標値を達成する場合である。ただし、ここでは、過去履歴も考慮した13時から16時まででの公平性の指標になる。
【0076】
つまり、管理エリア1は、照明1のみが、省エネレベル1まで制御され、空調1は制御されないので、この時間のみの公平性の指標は、快適性の低下度0.5×1時間で0.5となる。ただし、この0.5に、13時から15時の快適性の低下度(0.5+0.5)×1時間の1と、快適性の低下度0.5×1時間の0.5とが積算されるので、1.5+0.5で、公平性の指標は2となる。
【0077】
管理エリア2は、照明2のみを省エネレベル1まで制御しているので、この時間のみの公平性の指標は、快適性の低下度0.5×1時間で0.5となる。ただし、この0.5に、13時から15時の快適性の低下度0.5×1時間の0.5と、快適性の低下度(0.5+0.5)×1時間とが積算されるので、1.5+0.5で、公平性の指標は2となる。
【0078】
管理エリア3は、照明3と空調3ともに省エネレベル1まで制御しているので、この時間のみの公平性の指標は、快適性の低下度(0.5+0.5)×1時間で1となる。ただし、この0.5に、13時から15時の快適性の低下度0.5×1時間と、快適性の低下度0.5×1時間との1が積算されるので、1+1で、公平性の指標は2となる。
【0079】
以上によって、管理エリア1〜3の公平性の指標が2で揃うことになる。したがって、13時〜16時の間で、公平な制御が実現される。なお、全管理エリア1〜3の許容省エネレベルが同じ+0であるため、各制御ごとの快適性の低下度は同じとなっている。
【0080】
(具体例2)
さらに、
図6に示した管理エリア1〜3、
図7に示した優先度及び省エネレベルの設定の例をベースとして、管理エリア1の許容省エネレベルが+1、管理エリア2、3の許容省エネレベルが+0の場合を、
図14〜
図21を参照して説明する。
図14〜
図21は、管理エリア1〜3に対して、1時間ごとに制御内容を変えた場合を例示している。
【0081】
(13時〜14時)
図14及び
図15は、13時から14時の間に、優先度2までの制御を実行して、省エネ目標値を達成する場合である。
【0082】
この場合、管理エリア1の公平性の指標は、許容省エネレベルが+1であるため、照明1が、快適性の低下度1×1時間、空調1が、快適性の低下度1×1時間なので、(1+1)×1で2となる。照明1、空調1ともに省エネレベル2まで制御するので、管理エリア1の照明1と空調1のみで、省エネ目標値を達成できる。このため、管理エリア2、3は、全く制御しなくても済む。
【0083】
(14時〜15時)
図16及び
図17は、14時から15時の間に、優先度3までの制御を実行して、省エネ目標値を達成する場合である。管理エリア1は、既に公平性の指標が2となっているため、管理エリア2、3が制御されることになる。ただし、管理エリア2、3は、許容省エネレベルが+0であるため、通常の省エネレベル1でしか運用されない。このため、管理エリア2の照明2、空調2を制御し、さらに、管理エリア3の照明3も制御しなければ、目標を達成できない。その結果、公平性の指標は、管理エリア2が1、管理エリア3が0.5となる。
【0084】
(15時〜16時)
図18及び
図19は、15時から16時の間に、優先度3までの制御を実行して、省エネ目標値を達成する場合である。ここでも、管理エリア1は、既に公平性の指標が2となっていて、管理エリア2は、公平性の指標が1となっている。このため、管理エリア3が優先して制御されることになる。つまり、管理エリア3の照明3、空調3を省エネレベル1に制御する。これでも目標を達成できないため、管理エリア2の空調2を省エネレベル1へ制御する。その結果、公平性の指標は、管理エリア2、管理エリア3ともに1.5となる。
【0085】
(16時〜17時)
図20及び
図21は、16時から17時の間に、優先度3までの制御を実行して、省エネ目標値を達成する場合である。ここでも、管理エリア1は、既に公平性の指標が2となっているが、管理エリア2及び管理エリア3は公平性の指標が1.5となっている。このため、管理エリア2の照明2、空調2を制御し、さらに、管理エリア3の照明3も制御して、目標を達成する。その結果、公平性の指標は、管理エリア2が2.5、管理エリア3が2となる。管理エリア2の公平性の指標は、管理エリア1、3とは相違しているが、13時〜17時の間で、ある程度の公平な制御が実現される。
【0086】
[3.効果]
以上のような本実施形態によれば、公平性の指標に基づいて、快適性が低下する管理エリアを動的に変更することにより、ビル内の人間の快適性が公平となるように、電力消費機器を制御できる。このため、管理エリア及びそこに在室するユーザの間で、不公平感が生じることを防止できる。
【0087】
[B.第2の実施形態]
[1.構成]
本実施形態の電力制御装置100の構成を、
図22〜
図24を参照して説明する。本実施形態は、基本的には、上記の第1の実施形態と同様の構成である。ただし、
図22に示すように、本実施形態は、個人を識別する情報を記憶する個人識別情報記憶部170を有している。
【0088】
この個人識別情報には、センサS1、S2による、画像認識(顔称号、歩容照合など)、生体認証、モバイル端末、RFID、パーソナルコンピュータからのログイン情報、入退室情報などが含まれる。これらの個人識別情報は、
図23に示すように、ネットワークNを介して、センサS1、S2、端末Т等の入力部200から入力され、個人識別情報記憶部170が記憶する。
【0089】
また、本実施形態における優先度補正部152は、
図24に示すように、個人公平性指標算出部152eを有している。この個人公平性指標算出部152eは、個人識別情報に基づいて、個人の公平性の指標を求める処理部である。この算出処理の例は、後述する。
【0090】
[2.作用]
以上のような本実施形態による処理の手順を、
図25のフローチャートを参照して説明する。なお、優先度算出部151による優先度算出(ステップ11)、快適性低下度算出部152aによる快適性低下度算出(ステップ12)、過去履歴算出部152bによる過去履歴の算出(ステップ13)は、上記の第1の実施形態と同様である。
【0091】
個人公平性指標算出部152eは、各個人が存在していた場所、時間等についての個人識別情報と、各個人が存在していた管理エリアの快適性の低下度の過去履歴に基づいて、個人の公平性の指標を求める(ステップ14)。この算出の例を、以下の式(4)に示す。
【0092】
個人の公平性の指標=快適性の低下度×快適性の低下時間 …式(4)
【0093】
個人公平性指標算出部152eは、各管理エリア内に存在する全員の個人の公平性の指標を用いて、各管理エリアの公平性の指標を求める(ステップ15)。このとき、以下の式(5)に示すように、各管理エリアの公平性の指標は、個人の公平性の指標の統計値として、平均値、中央値、最大値、最小値などとすることが考えられる。
【0094】
管理エリアの公平性の指標=管理エリアに存在する全員の公平性の指標の統計値 …式(5)
【0095】
その後、補正部152dは、快適性の低下が公平になるように、各管理エリアの優先度を補正する(ステップ16)。制御情報の生成(ステップ17)、制御情報の出力(ステップ18)は、上記の通りである。
【0096】
[3.効果]
以上のような本実施形態によれば、個人の快適性の低下を考慮して、管理エリアの制御の公平性を図るので、個人間での制限の不公平間を解消することができる。つまり、単に管理エリアごとに公平性を図る場合には、在室人数の少ない管理エリアに存在する人や、制限される管理エリアばかりを移動する人が、頻繁に制限を受ける可能性が高くなる。このため、本実施形態のように、個人の快適性に応じた制御を行うことにより、各個人に不満が生じることを防止できる。
【0097】
[C.第3の実施形態]
[1.構成]
本実施形態の電力制御装置100の構成を、
図26及び
図27を参照して説明する。本実施形態は、基本的には、上記の第2の実施形態と同様の構成である。ただし、
図26及び
図27に示すように、本実施形態は、好み情報を記憶する好み情報記憶部180を有している。
【0098】
好み情報は、個人の好む環境条件である。この好み情報の例としては、暑い、寒い、明るい、暗いなどが含まれる。好み情報は、端末Т等を含む入力部200の操作パネルなどから入力され、好み情報記憶部180が記憶する。
【0099】
好み情報は事前に登録することもできるし、リアルタイムに変更することもできる。たとえば、風邪をひいているときには、空調に対する好み情報を変更することができる。事前に登録する場合は、季節や時間ごとに設定してもよい。
【0100】
また、入力値は、温度や照度などの具体的な数値でもよいし、暑がり、寒がりなどの定性的な数値でもよい。また、昨日や1時間前などと比較して、相対的に少し涼しくする、などの相対値でもよい。
【0101】
[2.作用]
以上のような本実施形態による処理の手順を、
図28及び
図29を参照して説明する。なお、基本的な処理については、上記の第2の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0102】
すなわち、ユーザは、出力部300に表示される
図28のようなインタフェースを用いて、入力部200から好み情報を入力することができる。この好み情報は、入力したユーザと関連付けて、好み情報記憶部180に記憶される。
【0103】
そして、快適性低下度算出部152aは、好み情報を個人識別情報に関連付けて、快適性の低下度を算出する際に、各電力消費機器の重み係数に反映させる。この算出の例を、式(6)に示す。
【0104】
快適性の低下度=(a×(照明の省エネレベル+許容省エネレベル))+(b×(空調の省エネレベル+許容省エネレベル)) …式(6)
【0105】
たとえば、平均的な人がa=0.5、b=0.5に対し、非常に暑がりの人は照明より空調を重要視し、a=0、b=1.0とする。
【0106】
好み情報から重み係数への変換は、たとえば、
図29に示すような変換テーブルを使用する。
図29は、照明の照明係数を、オフから明るめの6段階とし、空調の空調係数を、オフから明るめの6段階とした例である。重み係数は、たとえば、以下の式(7)のように求める。
照明の重み係数a=照明係数/(空調係数+照明係数) …式(7)
空調の重み係数b=空調係数/(空調係数+照明係数) …式(8)
【0107】
[3.効果]
以上のような本実施形態によれば、個人の好みを加味した快適性の低下度に基づいて、公平性の指標を算出することができるので、より各個人に適したきめ細かい制御が可能となる。たとえば、強い冷房や暖房を苦手とする人の場合、暑がりで強い冷房を好む人の場合等に応じて、公平性と関連付けた制御ができる。
【0108】
[D.第4の実施形態]
[1.構成]
本実施形態の電力制御装置100の構成を、
図30を参照して説明する。本実施形態は、基本的には、上記の第1の実施形態と同様の構成である。ただし、
図30に示すように、本実施形態は、管理エリアを設定する管理エリア設定部155を有している。管理エリア設定部155は、入力部200から入力された情報に基づいて、管理エリアを設定する処理部である。
【0109】
[2.作用]
以上のような本実施形態による処理を、
図31〜34を参照して説明する。なお、基本的な処理については、上記の第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0110】
すなわち、入力部200から、管理エリアの設定及びフロアマップ等のフロアデータが入力されると、管理エリア設定部155は、フロアマップから、管理エリアの設定に従って、電力消費機器をグルーピングする。また、電力消費機器を任意にグルーピングした情報が、入力部200から入力された場合に、そのグループに基づいて、管理エリア設定部155が管理エリアを設定することもできる。
【0111】
管理エリアの設定例としては、島単位、部屋単位、フロア単位、建屋単位などが考えられる。
図31は、島単位若しくは部屋単位で、4つの管理エリアA〜Dを設定した例である。
図32は、各管理エリアA〜Bのグループに属する電力消費機器のリストである。
【0112】
管理エリア設定部155は、管理エリアを、照明や空調の制御可能な最小単位に設定することも可能である。これにより、各照明や空調の影響を及ぼす範囲ごとに、最適な制御を行うことができる。また、管理エリア設定部155は、管理エリアを、デスク単位、個人単位で設定することも可能である。これにより、各個人に最適な制御を行うことができる。なお、この場合、一つの電力消費機器が複数の管理エリアに影響を及ぼすものとして制御される場合がある。
【0113】
さらに、管理エリア設定部155は、管理エリア毎の作業内容、作業者の職種や立場、出入りの頻度など、管理エリアの利用情報を加味して、最適なグループを設定することもできる。
【0114】
このとき、管理エリアの利用情報は、あらかじめユーザが入力部200から入力した情報、センサで取得した検知情報を含む。たとえば、営業職が在席する管理エリア、技術職が在席する管理エリア、担当の在席する管理エリア、役職者の在席する管理エリアでは、在席率が異なる。
【0115】
このため、あらかじめ在席者の職種に応じた在席率を設定しておき、これに応じて、管理エリア設定部155が管理エリアを設定できる。また、管理エリア設定部155は、検知情報から所定期間内の在席率を求め、これに応じて、管理エリアを設定することもできる。
【0116】
管理エリア設定部155が、在席率に基づいて、管理エリアを設定した例を、
図33及び
図34に示す。
図33は、在席率が同じ領域を、同じ管理エリアA〜Cにまとめた例である。
図34は、各管理エリアA〜Cグループに属する電力消費機器のリストである。
【0117】
なお、管理エリア設定部155は、検知情報に基づいて、管理エリアを変化させることができる。たとえば、人のいつもいる部屋、人のいない部屋等、人の分布状況は、時間に応じて変化するため、在室人数の変化に応じて、管理エリア設定部155が、自動的にエリアを変えていくことができる。
【0118】
[3.効果]
以上のような本実施形態によれば、管理エリアを任意に設定することができるので、ビルの所有者、管理者、ユーザの希望を反映した機器制御を実現できる。また、検知情報に基づいて、管理エリアを設定、変更することができるので、現実の状況に適した機器制御を実現できる。さらに、管理エリアを、特定のデスクにする等、所属する個人を一人に特定できるレベルにすると、管理エリアの公平性の確保は、個人の公平性の確保に近づく。
【0119】
[E.第5の実施形態]
本実施形態の電力制御装置100の構成を、
図35を参照して説明する。本実施形態は、基本的には、上記の第1の実施形態と同様の構成である。ただし、
図35に示すように、本実施形態は、公平性を確保する時間の範囲を設定する参照範囲設定部156を有している。
【0120】
この参照範囲設定部156は、ビルオーナーやユーザが、入力部200を介して入力した所望の期間を設定する。この期間としては、たとえば、ビルで主催されるイベントや季節に応じた1時間、1日、1週間、1ヶ月などの期間が考えられる。この期間は、定時間内と残業時間内とで分ける、午前と午後とで分けることも考えられる。
【0121】
制御部150は、参照範囲設定部156が設定した期間に基づいて、個人やエリアが公平になるように、電力消費機器を制御する。つまり、電力消費機器の優先度補正において、過去履歴算出部152bが参照する過去の制御情報の範囲を、設定時間に応じた最適な範囲とする。
【0122】
以上のような本実施形態によれば、ビルオーナー、ユーザが、公平性を確保する期間を自由に設定できるので、ビルオーナー、ユーザの希望に応じた機器制御を実現できる。たとえば、消費電力の多い期間の電力量を、消費電力が少ない期間での削減量に充当してバランスをとることにより、イベントや季節などの開催時に多大な制約を受けることを防止できる。
【0123】
[F.第6の実施形態]
[1.構成]
本実施形態の電力制御装置100の構成を、
図36及び
図37を参照して説明する。本実施形態は、基本的には、上記の第1の実施形態と同様である。ただし、
図36に示すように、本実施形態は、予約情報記憶部181及び予約情報判定部157を有している。
【0124】
予約情報記憶部181は、
図37に示すように、端末T等の入力部200から入力された予約情報を記憶する。予約情報とは、快適性を維持したい期間、快適性を低下してもよい期間について、あらかじめ設定しておく情報である。
【0125】
この予約情報は、たとえば、水曜日に会議が多いために、水曜日は快適性を低下させてもよいといった情報である。なお、水曜日以外の曜日は快適性を維持したいといった情報でもよい。予約情報判定部157は、予約情報の有無を判定する処理部である。
【0126】
[2.作用]
以上のような本実施形態による処理を、
図38のフローチャートを参照して説明する。なお、本実施形態の処理は、基本的には、上記の第1の実施形態と同様である(ステップS21、S23〜S28)。ただし、優先度算出部151による優先度算出の後(ステップS21)、予約情報判定部157が、予約情報の有無を判定する(ステップS22)。
【0127】
予約情報判定部157が、予約情報がないと判定した場合には(ステップS22のNO)、優先度の補正処理を行い(ステップS23〜S26)、制御を実行する(ステップS27、S28)。予約情報判定部157が、予約情報があると判定した場合には(ステップS22のYES)、優先度補正部152は、優先度の補正処理を行わず、制御処理に移行する(ステップS27、S28)。
【0128】
上記の例では、水曜日は快適性を低下させてもよい若しくは水曜日以外は快適性を維持したいという情報に基づいて、優先度補正部152は、カレンダーから判断して、水曜日においては、公平性に基づく優先度の補正処理を行わない。
【0129】
[3.効果]
以上のような本実施形態によれば、快適性を維持したい期間については、公平性に基づく優先度の補正処理は行わないため、ビルオーナー、ユーザの希望に応じた機器制御を実現できる。
【0130】
[G.第7の実施形態]
[1.構成]
本実施形態の電力制御装置100の構成を、
図39及び
図40を参照して説明する。本実施形態は、基本的には、上記の第1の実施形態と同様である。ただし、
図39に示すように、本実施形態は、ルール情報記憶部182及びルール情報判定部158を有している。
【0131】
ルール情報記憶部182は、
図40に示すように、端末Т等の入力部200から入力されたルール情報を記憶する。ルール情報とは、優先度補正の対象から外す管理エリアについて、あらかじめ設定しておく情報である。
【0132】
このルール情報は、たとえば、VIP用に用意された部屋、エレベータホール、通路などの管理エリアの情報である。このため、ルール情報には、検知情報から、個人識別によりVIPが在室しているという情報を含めることもできる。ルール情報判定部158は、ルール情報の有無を判定する処理部である。
【0133】
[2.作用]
以上のような本実施形態による処理を、
図41のフローチャートを参照して説明する。なお、本実施形態の処理は、基本的には、上記の第1の実施形態と同様である(ステップS31、S33〜S38)。ただし、優先度算出部151による優先度算出の後(ステップS31)、ルール情報判定部158が、ルール情報の有無を判定する(ステップS32)。
【0134】
ルール情報判定部158が、ルール情報がないと判定した場合には(ステップS32のNO)、優先度の補正処理を行い(ステップS33〜S36)、制御を実行する(ステップS37、S38)。ルール情報判定部158が、ルール情報があると判定した場合には(ステップS32のYES)、優先度補正部152は、優先度の補正処理を行わず、制御処理に移行する(ステップS37、S38)。
【0135】
上記の例では、VIP用に用意された部屋、エレベータホール、通路などの管理エリアについては、優先度補正部152は、公平性に基づく優先度の補正処理を行わない。
【0136】
[3.効果]
以上のような本実施形態によれば、ルール情報で設定された管理エリアについては、公平性に基づく優先度の補正処理は行わないため、ビル内の状況に応じた機器制御を実現できる。
【0137】
[H.第8の実施形態]
[1.構成]
本実施形態の電力制御装置100の構成を、
図42及び
図43を参照して説明する。本実施形態は、基本的には、上記の第1の実施形態と同様である。ただし、
図42に示すように、本実施形態は、インセンティブ情報記憶部183及びインセンティブ情報判定部159を有している。
【0138】
インセンティブ情報記憶部183は、
図43に示すように、端末Т等の入力部200から入力されたインセンティブ情報を記憶する。インセンティブ情報とは、ビルオーナーやユーザーが、所望の管理エリアについて、節電に対するインセンティブの金銭の授受をしたか否かの情報である。インセンティブ情報の入力は、受け渡しか受け取りの区別、その金額を申請することにより行う。
【0139】
インセンティブとしての金銭を受け取った管理エリアについては、優先度の補正を許容する管理エリアとなり。ペナルティとしての金銭を支払った管理エリアについては、優先度の補正を行わない管理エリアとなる。インセンティブ情報判定部159は、ペナルティの支払いがあるインセンティブ情報の有無を判定する処理部である。
【0140】
[2.作用]
以上のような本実施形態による処理を、
図44のフローチャートを参照して説明する。なお、本実施形態の処理は、基本的には、上記の第1の実施形態と同様である(ステップS41、S43〜S48)。ただし、優先度算出部151による優先度算出の後(ステップS41)、インセンティブ情報判定部159が、インセンティブ情報として、金銭等のペナルティの支払に関する情報の有無を判定する(ステップS42)。
【0141】
インセンティブ情報判定部159が、ペナルティの支払に関する情報がないと判定した場合には(ステップS42のNO)、優先度の補正処理を行い(ステップS43〜S46)、制御を実行する(ステップS47、S48)。つまり、インセンティブ情報が存在しない管理エリアについては、公平性の指標により優先度を補正して、快適性の低下を許容する。また、ペナルティとして支払われた金銭などを受け取った管理エリアについても、優先度の補正をして、快適性の低下を許容する。たとえば、上記の公平性の指標では、本来補正を受けない場合であっても、優先度の補正を受ける。
【0142】
インセンティブ情報判定部159が、ペナルティの支払に関する情報があると判定した場合には(ステップS42のYES)、優先度補正部152は、優先度の補正処理を行わず、制御処理に移行する(ステップS47、S48)。つまり、優先度補正部152は、ペナルティを支払った管理エリアについては、算出された優先度を、公平性の指標により補正せずに、快適性を維持することができる。
【0143】
なお、管理エリアのインセンティブ情報は、当該管理エリアに在室若しくは所属する個人のインセンティブ情報の積算としてもよい。たとえば、管理エリアに在室する人間について、ペナルティとして支払った金銭、インセンティブとして受け取った金銭の積算により、管理エリアのインセンティブ情報としてもよい。
【0144】
なお、インセンティブの授受は、1対1、1対多、多対多の組合せが可能である。また、インセンティブとして授受されるものは、金銭以外でもよい。授受される金額は、快適性の低下度合やその管理エリアに属する人数などにより決定してもよい。授受される金額に応じて、許容省エネレベルを変化させてもよい。授受の主体若しくは単位は、個人、エリア、フロア、ビルでもよい。
【0145】
[3.効果]
以上のような本実施形態によれば、インセンティブの授受も含めて、当事者の経済状況や意思を考慮した公平性を実現することができる。
【0146】
[I.第9の実施形態]
本実施形態は、制御情報や快適性の変更の内容を、制御の実行前に、あらかじめ出力部300に出力することによって、ビルオーナー、ユーザ、管理エリア内に存在する人に報知する態様である。この場合、制御部150は、将来の一定期間における制御情報を生成する。
【0147】
そして、出力部300は、予告通知部として機能する。出力部300への通知の方法は、メールであっても、Webページであってもよい。これにより、端末Т、管理エリアの操作パネル等において、ユーザが情報を閲覧することができる。制御情報が更新されると、表示内容も変更される。
【0148】
これにより、機器制御や、快適性の変更の計画を、エリア内の人物にあらかじめ伝えることができる。たとえば、
図45は、各管理エリアA〜Dごとに、各時間帯における快適性のレベルを大、中、小で表示した例である。
【0149】
ユーザは、管理エリアごとに、何時から何時まで、不快になるかという情報を得ることができるので、これに応じて、退去する、部屋を移動する等の対処が可能となる。
【0150】
[J.他の実施形態]
本実施形態は、上記の態様に限定されるものではない。
(1)たとえば、上記の実施形態をどのように組み合わせてもよい。つまり、第2の実施形態〜第9の実施形態の各組み合わせの全てが、それぞれ発明を構成する。
【0151】
(2)本実施形態は、ビル等の所定の建物内に設置された電力消費機器を管理するシステムであるビルエネルギー管理システムに適している。ただし、電力消費機器の設置位置は、単一の建物か複数の建物かには限定されず、屋外を含んでいてもよい。つまり、所定の領域に設置された電力消費機器を制御するエネルギー管理システムとして、広く適用可能である。
【0152】
(3)電力制御装置は、CPU等を含むコンピュータを所定のプログラムで制御することによって実現できる。この場合のプログラムは、コンピュータのハードウェアを物理的に活用することで、上記のような各部の処理を実現するものである。なお、上記の各部の処理を実行する方法、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体も、実施形態の一態様である。
【0153】
ハードウェアで処理する範囲、プログラムを含むソフトウェアで処理する範囲をどのように設定するかは、特定の態様には限定されない。たとえば、上記の各部のいずれかを、それぞれの処理を実現する回路として構成することも可能である。
【0154】
さらに、電力制御装置を構成する各部は、共通のコンピュータにおいて実現してもよいし、ネットワークで接続された複数のコンピュータによって実現してもよい。
【0155】
(4)各記憶部は、典型的には、内蔵された若しくは外部接続された各種メモリ、ハードディスク等により構成できる。演算に用いるレジスタ等も、記憶部として捉えることができる。すでに情報が記憶された記憶媒体を、読み取り装置に装着することにより、演算に利用可能となる態様でもよい。記憶の態様も、長期間記憶が保持される態様のみならず、処理のために一時的に記憶され、短時間で消去若しくは更新される態様も含まれる。
【0156】
(5)本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。