特許第6021469号(P6021469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021469
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】段ボール製箱体および段ボール製棺桶
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/42 20060101AFI20161027BHJP
   A61G 17/00 20060101ALI20161027BHJP
   B65D 5/44 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   B65D5/42 F
   A61G17/00 Z
   B65D5/44 HBRB
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-143552(P2012-143552)
(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-5067(P2014-5067A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】598061014
【氏名又は名称】株式会社福永
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 博幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良一
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3134919(JP,U)
【文献】 実開昭56−156716(JP,U)
【文献】 実公昭46−009791(JP,Y1)
【文献】 実開昭63−64616(JP,U)
【文献】 米国特許第2015148(US,A)
【文献】 米国特許第01527021(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/00− 5/76
A61G17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボールからなる展開シートに曲げ溝を形成し、該曲げ溝に沿って展開シートを折り曲げて組み立て構成される段ボール製箱体であって、
少なくとも矩形状の底板部と、
該底板部に長辺曲げ溝を介して折り曲げ起立可能に連設される長辺側板部と、
前記底板部に短辺曲げ溝を介して折り曲げ起立可能に連設される短辺側板部と、
前記長辺側板部に長辺折返し曲げ溝を介して水平内曲げ折返し可能に連設されて前記長辺側板部の内側に重ねられる長辺折返し板部と、
前記長辺側板部に側辺曲げ溝を介して垂直内向き折り曲げ可能に連設されて前記短辺側板部の内側において解放端同士を突き合わせた状態で当該内側に面一状に重ねられる内曲げ単片板部と、を備え、
前記長辺曲げ溝は、段ボールの波状中芯の波状方向に向けた方向に形成され、
前記長辺曲げ溝を含めて前記底板部側と前記長辺側板部側に連通存在する前記波状中芯の空洞部に接着性を有する充填剤を流し込み充填した状態で、前記長辺側板部を前記長辺曲げ溝に沿って折り曲げ起立させて前記底板部と前記長辺側板部との連設コーナー部分に、長辺全長にわたる強化梁材を硬化形成してなり、
前記強化梁材は、前記連設コーナー部分のコーナー内側において長辺全長にわたり、前記長辺側板部の内側に重ねられた状態で前記底板部に当接する前記長辺折返し板部の波状中芯の空洞部内にはみ出し硬化されて形成される長辺内コーナー押え部を一体に備え、
前記長辺内コーナー押え部は、前記短辺曲げ溝に前記充填剤を流し込み充填した状態で、前記短辺側板部を前記短辺曲げ溝に沿って折り曲げ起立させて前記底板部と前記短辺側板部との連設コーナー部分のコーナー内側において短辺全長にわたり、前記短辺側板部の内側に重ねられた状態で前記底板部に当接する前記内曲げ単片板部の波状中芯の空洞部内にはみ出し硬化されて形成される短辺内コーナー押え部と一体に連設されて硬化形成されることを特徴とする段ボール製箱体。
【請求項2】
前記強化梁材は、前記連設コーナー部分において断面視でL字状に硬化形成されて長辺全長にわたり内設されることを特徴とする請求項1に記載の段ボール製箱体。
【請求項3】
段ボールからなる展開シートに曲げ溝を形成し、該曲げ溝に沿って展開シートを折り曲げて組み立て構成される段ボール製箱体であって、
矩形状の底板部と、
該底板部に長辺曲げ溝を介して折り曲げ起立可能に連設される長辺側板部と、
前記底板部に短辺曲げ溝を介して折り曲げ起立可能に連設される短辺側板部と、
前記長辺側板部に長辺折返し曲げ溝を介して水平内曲げ折返し可能に連設されて前記長辺側板部の内側に重ねられる長辺折返し板部と、
前記短辺側板部に短辺折返し曲げ溝を介して水平内曲げ折返し可能に連設されて前記短辺側板部の内側に重ねられる短辺折返し板部と、
前記長辺側板部に側辺曲げ溝を介して垂直内向き折り曲げ可能に連設されて前記短辺側板部の内側において解放端同士を突き合わせた状態で当該内側に面一状に重ねられる内曲げ単片板部と、を備え、
前記短辺折返し板部は、前記内曲げ単片板部の上辺端部に突き合わせ係合された状態で該内曲げ単片板部とともに前記短辺側板部の内側に面一状に重なるように形成されていることを特徴とする段ボール製箱体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の段ボール製箱体を、棺本体に適用してなる段ボール製棺桶
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール製箱体および段ボール製棺桶に係り、特に、強化段ボールからなる展開シートを曲げ溝に沿って折り曲げることで箱状に組み立て構成される段ボール製箱体、およびこの段ボール製箱体を棺本体に適用させてなる段ボール製棺桶に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、エコ思考の時代の流れに乗って木製の棺桶に代わり、段ボール製の棺桶が注目されている。段ボール製棺桶は、木製棺桶に比べ軽量であり輸送上の利便性があり、しかも、火葬時の燃焼性に優れているために焼却時間を短縮でき、燃料消費を抑え、二酸化炭素(CO2)の排出量も少なく、さらに、木材資源の浪費を抑えることから天然資源の保護にも資することができるなどの環境に優しいエコ商品として注目度を高め、種々形態ものが提案されている(例えば、特許文献1などを参照)。
【0003】
特許文献1に記載の段ボール製棺桶は、強化段ボールからなる展開シートに縦横方向のV溝を形成し、該V溝に沿って展開シートを折り曲げることで箱状に組み立て構成されるようになっている。
すなわち、箱状の棺桶を組み立て構成する展開シートは、矩形状の底板と、この底板の左右長辺で縦V溝により垂直に折り曲げられる両側板および底板の前後短辺で横V溝により垂直に折り曲げられる両妻板とを備えている。また、展開シートは、両側板に、妻板よりもシート厚さ分、底板の前後方向(短辺方向)中央側にズレタ位置で、横V溝により垂直内向きに折り曲げられて妻板の内側に重なる挟み代板を両側板に備え、両妻板には挟み代板の上方で横V溝により水平内向きに折り曲げられる架橋板と、この架橋板の先端(解放端)から横V溝により垂直下向きに折り返されて挟み代板の内側に重なる折り返し板とを備えている。
【0004】
ところで、段ボール製棺桶は、木製棺桶に比べて耐荷重強度(耐久性)が劣る。特に、一枚の展開シートから上面開口の平面視で矩形状(長方形)に組み立て形成される棺本体の底部や両側部の長辺方向(長手方向)における耐荷重強度が劣る。そのために、同長辺方向の耐荷重強度を強化して、収容される遺体やその他の収容物(ドライアイスなど)の荷重負荷によって棺本体の長辺方向、特に、長辺方向における中央部分などが下方に撓む(歪む)などの座屈が起きないようにすることが重要である。
つまり、棺桶は、持ち上げ移動するときや葬儀祭壇に安置されるときには、長手方向における両側(短手側)を支えて行われる。葬儀祭壇に安置される場合には棺台に長手方向の両側を載置支持させた状態で葬儀祭壇に安置されるために、両側の棺台間における長手方向の中央部分などが下方に撓むなどの座屈が起きないように長手方向の耐荷重強度の強化が重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3134919号公報(段落番号0013、0032〜0038、および図1図9などを参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、特許文献1に記載の従来技術では、挟み代板の外側と内側に妻板と折返し板をそれぞれ重ねることで、板面同士の広い範囲での接触面(接着面積)を確保し、これにより、棺本体の両側板と両妻板との固定強度を高め、棺本体の耐荷重強度を向上させるようにしている。
【0007】
しかしながら、このように棺本体の両側板と両妻板との固定強度を高めたところで、収容される遺体やその他の収容物などの荷重負荷に対して最も耐荷重強度が求められる棺本体の長辺方向(長手方向)における耐荷重強度を向上させることはできない。そのために、従来技術では、収容される遺体やその他の収容物などの荷重負荷によって棺本体の長辺方向における特に底部中央部分が下方に撓む(歪む)などの座屈を引き起こす長辺方向の強度不足が依然として残されていた。
【0008】
また、従来技術では、特許文献1の図1図2図9に示されているように、棺本体の左右長辺側を側板とその内側に折り返し重ねられる枠板との二層壁構造とし、前後短辺側を前記のように挟み代板、この挟み代板を内外から挟む妻板と折返し板との三層壁構造としている。そのために、棺本体の開口部における長辺側の開口縁幅よりも短辺側の開口縁幅が広く、また、長辺側と短辺側とのコーナー外側には三層強化段ボールの一枚の厚さに相当する段差が現れ存在しているなどによって、外観などの見栄えを低下させるものとなっていた。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題を解消することを課題に創案されたものである。すなわち、表裏ライナーと波状中芯との積層構造からなる段ボールの断面形状特性を利用して、段ボールの展開シートから組み立て構成される段ボール製箱体からなる棺本体の長辺方向(長手方向)を実用上十分な耐荷重強度に強化すること、などが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明に係る段ボール製箱体および段ボール製棺桶では少なくとも以下の構成を具備している。
すなわち、本発明の段ボール製箱体は、段ボールからなる展開シートに曲げ溝を形成し、該曲げ溝に沿って前記展開シートを折り曲げて組み立て構成される段ボール製箱体であって、
前記展開シートは、少なくとも矩形状の底板部と、該底板部に長辺曲げ溝を介して折り曲げ起立可能に連設される長辺側板部と、前記底板部に短辺曲げ溝を介して折り曲げ起立可能に連設される短辺側板部と、前記長辺側板部に長辺折返し曲げ溝を介して水平内曲げ折返し可能に連設されて前記長辺側板部の内側に重ねられる長辺折返し板部と、前記長辺側板部に側辺曲げ溝を介して垂直内向き折り曲げ可能に連設されて前記短辺側板部の内側において解放端同士を突き合わせた状態で当該内側に面一状に重なられる内曲げ単片板部とを備え、前記長辺曲げ溝は、段ボールの波状中芯の波状方向に向けた方向に形成され、
前記長辺曲げ溝を含めて前記底板部側と前記長辺側板部側に連通存在する前記波状中芯の空洞部に接着性を有する充填剤を流し込み充填した状態で、前記長辺側板部が前記長辺曲げ溝に沿って折り曲げ起立されて前記底板部と前記長辺側板部との連設コーナー部分に、長辺全長にわたる強化梁材を硬化形成してなり、前記強化梁材は、前記底板部と前記長辺側板部との前記連設コーナー部分のコーナー内側において長辺全長にわたり、前記長辺側板部の内側に折り返された状態で前記底板部に当接する前記長辺折返し板部の波状中芯の空洞部内にはみ出し硬化されて形成される長辺内コーナー押え部を一体に備え、前記長辺内コーナー押え部は、前記短辺曲げ溝に前記充填剤を流し込み充填した状態で、前記短辺側板部を前記短辺曲げ溝に沿って折り曲げ起立させて前記底板部と前記短辺側板部との連設コーナー部分のコーナー内側において短辺全長にわたり、前記短辺側板部の内側に内曲げされた状態で前記底板部に当接する前記内曲げ単片板部の波状中芯の空洞部内にはみ出し硬化されて形成される短辺内コーナー押え部と一体に連設されて硬化形成されることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記強化梁材は、断面視でL字状に硬化形成されて長辺全長にわたり内設されるように、前記底板部側と前記長辺側板部側の前記波状中芯の空洞部に、前記長辺曲げ溝を含めて前記充填剤を流し込み充填することなどの構成を採用することが好適なものとなる。
【0012】
また、本発明の段ボール製箱体は、段ボールからなる展開シートに曲げ溝を形成し、該曲げ溝に沿って展開シートを折り曲げて組み立て構成される段ボール製箱体であって、
前記展開シートは、矩形状の底板部と、該底板部に長辺曲げ溝を介して折り曲げ起立可能に連設される長辺側板部と、前記底板部に短辺曲げ溝を介して折り曲げ起立可能に連設される短辺側板部と、前記長辺側板部に長辺折返し曲げ溝を介して水平内曲げ折返し可能に連設されて前記長辺側板部の内側に重ねられる長辺折返し板部と、前記短辺側板部に短辺折返し曲げ溝を介して水平内曲げ折返し可能に連設されて前記短辺側板部の内側に重ねられる短辺折返し板部と、前記長辺側板部に側辺曲げ溝を介して垂直内向き折り曲げ可能に連設されて前記短辺側板部の内側において解放端同士を突き合わせた状態で当該内側に面一状に重ねられる内曲げ単片板部とを備え、前記短辺折返し板部は、前記内曲げ単片板部の上辺端部に突き合わせ係合された状態で該内曲げ単片板部とともに前記短辺側板部の内側に面一状に重なるように形成されていることを特徴とする。
【0013】
このような構成を有する段ボール製箱体によれば、箱体の長辺方向(長手方向)は、矩形状の底板部と長辺側板部との連設コーナー部分において波状中芯の空洞部に流れ込み充填されて当該連設コーナー部分の長辺全長にわたり硬化形成される強化梁材によって強化される。これにより、箱体底部の長辺方向(長手方向)に実用上十分な耐荷重強度を付与する。つまり、木製棺桶の変わらぬ耐荷重強度を箱体底部の長辺方向に付与し、当該底部が荷重負荷により下方に撓む(歪む)座屈を抑えることができる。
【0014】
また、強化梁材は、底板部側と長辺側板部側に一体に連設する断面視でL字状を呈している所謂アングル材としての機能、つまり、曲げ方向の荷重負荷に対して強い断面構造を呈していることで、箱体底部の長辺方向(長手方向)の耐荷重強度を効果的に強化することができる。
また、箱体底部(底板部)から垂直に折り曲げ起立される長辺側部(長辺側板部)の直立姿勢は、その直立根元の連設コーナー部分に長辺全長にわたり内設されているL字状の強化梁材によって定形保持される。これにより、箱体底部(底板部)が荷重負荷を受けた際に箱体の長辺側部(長辺側板部)が内側に引っ張られるように倒れ込む現象をその起立根元にて防ぐことができる。
【0015】
また、底板部と長辺側板部との連設コーナー部分のコーナー内側には強化梁材と一体に連設されて硬化形成される長辺内コーナー押え部を備え、底板部と短辺側板部との連設コーナー部分のコーナー内側には長辺内コーナー押え部に一体に連設されて硬化形成される短辺内コーナー押え部を備えていることで、箱体底部の耐荷重強度を長辺と短辺との両辺コーナー内側からさらに強化することができる。
また、長辺内コーナー押え部によって長辺側板部の内側に折り返し重ねられる長辺折返し板部を押え込むことができ、また、短辺内コーナー押え部によって短辺側板部の内側に解放端同士を突き合せた状態で内曲げ重ねられる内曲げ単片板部を押え込むことができる。つまり、従来技術では、箱体底部の内側に底板部とほぼ同じ形状の内底板を落とし込むように内設させて、長辺、短辺両折返し板部が跳ね上がるなどによって剥離することを防いでいたことを、長辺および短辺の両辺コーナー内側に沿って一体に連設形成される長辺、短辺両内コーナー押え部によって防ぐことができる。
【0016】
また、箱体の長辺側部は、長辺側板部と、その内側全面に折り返し重ねられる長辺折返し板部との二層壁構造と成し、箱体の短辺側部は、短辺側板部と、その内側において解放端同士を突き合せた状態で重ねられる長辺側板部側からの内曲げ単片板部と、この内曲げ単片部に面一状に突き合わせ係合された状態で該内曲げ単片板部とともに短辺側板部の内側に重ねられる短辺側板部側からの短辺折返し板部とからなる二層壁構造を成している。これにより、箱体の長辺側部と短辺側部とに底部が受ける耐荷重強度に対する剛性を付与することができる。
また、箱体の開口部における長辺開口縁と短辺開口縁とは同じ縁幅で、なおかつ、長辺側板部と短辺側板部とのコーナー外側には段差などが現れ存在しない格調ある外観を呈する箱体を組み立て構成することができる。
【0017】
また、本発明の段ボール製棺桶は、前記段ボールからなる展開シートを曲げ溝に沿って前記展開シートを折り曲げて箱状に組み立てて構成される段ボール製箱体を、棺本体に適用してなることを特徴とする。
【0018】
このような構成を有する段ボール製棺桶によれば、前記した構成の段ボール製箱体を棺本体に適用させてなる。
つまり、棺本体の底部長辺方向は、矩形状の底板部と長辺側板部との連設コーナー部分において波状中芯の空洞部に流れ込み充填されて当該連設コーナー部分の長辺全長にわたり硬化形成される強化梁材によって強化される。これにより、収容される遺体やその他の収容物などの荷重負荷により底部が下方に撓む(歪む)座屈を抑える実用上十分な耐荷重強度を箱体底部の長辺方向(長手方向)に付与することができる。
【0019】
また、断面視がL字状の強化梁材によって、棺本体の底部長辺方向における耐荷重強度を効果的に強化することができ、しかも、底部(底板部)が荷重負荷を受けた際に棺本体の長辺側部(長辺側板部)が棺本体の内側に引っ張られるように倒れ込む現象をその起立根元にて防ぐことができる。
【0020】
また、底板部と長辺側板部との連設コーナー部分のコーナー内側には強化梁材と一体に連設されて硬化形成される長辺内コーナー押え部を備え、底板部と短辺側板部との連設コーナー部分のコーナー内側には長辺内コーナー押え部に一体に連設されて硬化形成される短辺内コーナー押え部を備えていることで、棺本体底部の耐荷重強度を長辺と短辺との両辺コーナー内側からさらに強化することができる。つまり、棺本体底部の矩形状形態が、長辺両側の強化梁材と、長辺および短辺の両辺コーナー内側に沿って一体に連設される長辺、短辺両内コーナー押え部とによって定形保持されることで、耐荷重強度をさらに強化することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の段ボール製箱体によれば、矩形状の底板部と長辺側板部との連設コーナー部分に、長辺全長にわたり硬化形成される強化梁材を備えていることで、長辺方向(長手方向)に実用上十分な耐荷重強度を強化することができる。これにより、底部の長辺方向(長手方向)における耐荷重強度を向上させて荷重負荷によって底部が下方に撓む(歪む)座屈を抑えることができる。
また、強化梁材は、断面視でL字状に硬化形成されることで、箱体長手方向の耐荷重強度を効果的に強化することができる。
【0022】
また、底板部と長辺側板部との連設コーナー部分のコーナー内側に強化梁材と一体に連設されて硬化形成される長辺内コーナー押え部を備え、底板部と短辺側板部との連設コーナー部分のコーナー内側に長辺内コーナー押え部に一体に連設されて硬化形成される短辺内コーナー押え部を備えていることで、長辺方向の耐荷重強度を長辺および短辺の両辺コーナー内側からさらに強化することができる。
【0023】
また、本発明の段ボール製棺桶によれば、前記構成の段ボール製箱体を棺本体に適用させてなることで、棺本体の底部長辺方向は、矩形状の底板部と長辺側板部との連設コーナー部分において波状中芯の空洞部に流れ込み充填されて当該連設コーナー部分の長辺全長にわたり硬化形成される強化梁材によって強化される。これにより、収容される遺体やその他の収容物などの荷重負荷により底部が下方に撓む(歪む)座屈を抑える実用上十分な耐荷重強度を箱体底部の長辺方向(長手方向)に付与することができる。
【0024】
また、断面視がL字状の強化梁材によって、棺本体の底部長辺方向における耐荷重強度を効果的に強化することができる。
また、底部(底板部)が荷重負荷を受けた際に棺本体の長辺側部(長辺側板部)が棺本体の内側に引っ張られるように倒れ込む現象を、強化梁材が内設されている連設コーナー部分の起立根元にて防ぐことができる。これにより、棺本体底部の下方に撓む(歪む)座屈を抑える耐荷重強度の強化を図ることができる。
【0025】
また、棺本体底部の矩形状形態が、長辺両側の強化梁材と、長辺および短辺の両辺コーナー内側に沿って一体に連設されて硬化形成される長辺および短辺両内コーナー押え部とによって定形保持されることで、棺本体の耐荷重強度をさらに強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る段ボール製箱体を棺本体に適用させてなる段ボール製棺桶の全体構成を示す長辺方向を示す縦断説明図である。
図2】同短辺方向の縦断説明図である。
図3】同段ボール製棺桶の棺本体を組み立て構成する展開シートを裏面側から見たときの説明斜視図である。
図4】長辺曲げ溝および長辺折返し曲げ溝の加工形態の一例を示す要部の拡大斜視図である。
図5】短辺曲げ溝および短辺折返し曲げ溝、側辺曲げ溝の加工形態の一例を示す要部の拡大斜視図である。
図6】強化梁材および長辺内コーナー押え部を示す要部の拡大斜視図である。
図7】長辺折返し板部を長辺側板部の内側に折り返し重ねた状態を示す説明斜視図である。
図8】長辺側板部を垂直に折り曲げ起立させ、かつ、内曲げ単片板部を内向きに折り曲げた状態を示す説明斜視図である。
図9】短辺側板部を垂直に折り曲げ起立させ、かつ、短辺折返し板部を短辺側板部の内側上半部に折り返し重ねた状態を示す説明斜視図である。
図10】組み立て構成された棺本体を蓋体とともに示す説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る段ボール製箱体を棺本体に適用させてなる段ボール製棺桶の全体構成を示す長辺方向の縦断説明図であり、図2は、同短辺方向の縦断説明図である。
【0028】
≪段ボール製棺桶の説明≫
段ボール製棺桶(以後、単に「棺桶」称する)Aは、二層や三層などからなる強化段ボール、例えば、図1に拡大図で示す二層強化段ボールから折り曲げ組み立てられて箱状に構成される上面開口の棺本体A1と、この棺本体A1の開口部を閉じる下面開口の蓋体A2とからなる。蓋体A2の前側寄り(一側短辺側)には観音開きの扉によって開閉される窓が開口されており、扉を開くことで棺本体A1の内部を覗くことができるようになっている。
棺桶Aの大きさは、例えば、長辺(長さ)寸法が1700〜2000mm程度、短辺(幅)寸法が500〜700mm程度、蓋体A2を含めた高さ寸法が400〜500mm程度である。
【0029】
二層強化段ボールは、強化厚板からなる表面ライナーa1と裏面ライナーa2との間に、中間ライナー(仕切り板)a3を介して二層の波状中芯a4を積層接着してなる二層フルート構造である。
そして、本実施例では、表面ライナーa1および裏面ライナーa2、中間ライナーa3、波状中芯a4の素材として、古紙の少ない木材や非木材から直接作られているバージンパルプを使用している。これにより、火葬後、拾骨作業の障害となる燃え残り滓、所謂カルシウム成分が灰として残ることを極力少なくして分別作業を軽減するようにしている。
ここで、表面ライナーa1は、棺桶Aの表面(外被)となり、裏面ライナーa2は、棺桶Aの内面(内皮)となる。
【0030】
なお、棺桶Aの表面などに、必要に応じて可燃性の布やフィルムなどからなる化粧シートを貼り付けるなどの化粧仕上げなどを施すことで、棺桶Aの質感を高めることができる。
【0031】
≪棺本体の説明≫
図3は、棺本体を組み立て構成する展開シートを裏面側(裏面ライナー側)から見たときの説明斜視図である。ここでは、図1および図2を適宜参照しながら説明する。
棺本体A1は、図3に示す展開シート(ブランクシート)aから後記する各曲げ溝に沿って折り曲げられて図1および図2に示す上面開口の箱状に組み立て構成される。
展開シートaは、プレスなどの打抜き加工機によって二層強化段ボールから打ち抜き裁断されて製造される。この展開シートaは、図3に示すように、矩形状(長方形)の底板部1と、この底板部1の両長辺に長辺曲げ溝7aを介して折り曲げ起立可能に連設される長辺側板部2と、両短辺に短辺曲げ溝7bを介して折り曲げ起立可能に連設される短辺側板部(妻板部)3とを備えている。
また、図3に示すように、展開シートaは、長辺側板部2の上辺に二列(二重)に隣接させた長辺折返し曲げ溝7cを介して内向き折返し可能に連設させた長辺折返し板部4と、短辺側板部3の上辺に同じく2列に隣接させた短辺折返し曲げ部7dを介して内向きに折返し可能に連設される辺折返し板部4および短辺折返し板部5と、長辺側板部2の両側辺に側辺曲げ溝7eを介して内向きに折り曲げ可能に連設される内曲げ単片板部6とを備えている。
【0032】
平面視で矩形状の底板部1の両長辺および両短辺から垂直に折り曲げ起立される長辺側板部2および短辺側板部3は、底板部1からの折り曲げ起立高さが同じ高さ寸法に形成されている。
【0033】
長辺側板部2の上辺に長辺曲げ溝7aを介して連設される長辺折返し板部4は、長辺側板部2の起立高さ寸法にて形成されている。これにより、棺本体A1の長辺両壁部は、図2に示すように、長辺側板部2と長辺折返し板部4とからなる二重壁構造(二層強化段ボールの2枚重ねW構造)となって実用上十分な強度を備えることになる。
【0034】
そして、長辺側板部2の起立両側辺に側辺曲げ溝7eを介して連設される内曲げ単片板部6は、図1および図2に示すように、互いの解放端同士を短辺側板部3の幅方向中央において突き合わせた状態で短辺側板部3の内側に面一状に重なる折り曲げ幅寸法にて形成されている。
また、図1および図2に示すように、内曲げ単片板部6は、短辺側板部3の内側に折り曲げ重ねられた状態で、底板部1からの起立高さ寸法が、当該底板部1からの短辺側板部3の起立高さ寸法よりも低い高さに形成されている。これにより、短辺折返し板部5が短辺側板部3の内側に折り返し重ねられるとき、内曲げ単片板部6の上辺に突き合わせ係合されるようにしている。
【0035】
一方、短辺側板部3の上辺に短辺折返し曲げ溝7dを介して連設される短辺折返し板部5は、図1および図2に示すように、短辺側板部3の内側に折り返し重ねられるとき、内曲げ単片板部6の上辺に解放端を突き合わせ係合させる折り返し幅寸法に形成されている。つまり、短辺折返し板部5は、短辺側板部3の内側上半部に位置して内曲げ単片板部6と面一状に重ねられるお置きに形成されている。
これにより、短辺折返し板部5は、短辺側板部3の幅方向中央部位において解放端同士を突き合わせて短辺側板部3の内側に重ねられる両内曲げ単片板部6とともに短辺側板部3の内側に面一状に重なる。つまり、棺本体A1の短辺両壁部は、短辺側板部3と、この短辺側部3の内側に解放端同士を突き合わせて面一状に重なる両内曲げ単片板部6、そして両内曲げ単片板部6の上辺に突き合わせ係合させて短辺側部3の内側上半部において面一状に重なる短辺折返し板部5とからなる二重壁構造(二層強化段ボールの2枚重ねW構造)となって、前記の長辺両壁部2と同様に実用上十分な強度を備えることになる。
【0036】
≪曲げ溝の説明≫
つぎに、長辺側板部2、短辺側板部3、長辺折返し板部4、短辺折返し板部5、内曲げ単片板部6、これらを90°折り曲げ可能に、または、180°折り返し可能に連設するように各板部2〜6の境界部分にそれぞれ形成される各曲げ溝7a〜7eについて説明する。ここでは、図1図3を適宜参照しながら説明する。
【0037】
まず、長辺曲げ溝7aと長辺折返し曲げ溝7cについて説明する。図4は、長辺曲げ溝および長辺折返し曲げ溝の加工形態を示す要部の拡大斜視図である。
この長辺曲げ溝7aと長辺折返し曲げ溝7cは、二重強化段ボールの波状中芯a3の波状方向に向けた方向にそれぞれ形成される。
具体的に説明すると、図4に示すように、長辺曲げ溝7aと長辺折返し曲げ溝7cは、表面ライナーa1側を残し、裏面ライナーa2、中間ライナーa3、二層の波状中芯a4を、回転刃などを用いて溝角が略90°のV字状になるように切除することにより、底板部1と長辺側板部2の境界、そして長辺側板部2と長辺折返し板部4の境界において波状中芯a3の波状方向に向けた方向(波状芯材a3の空洞部8と直交する方向)に向けてそれぞれ形成されるV溝である。
これにより、底板部1側と長辺側板部2側の波状中芯a4の空洞部8は、長辺方向に連なって延びる長辺曲げ溝7aの溝方向と直交する方向において開口連通状に存在することとなり、また、長辺側板部2側と長辺折返し板部4側の波状中芯a4の空洞部8は、長辺方向に連なって延びる長辺折返し曲げ溝7cの溝方向と直交する方向において開口連通状に存在することとなる。
【0038】
なお、長辺折返し曲げ溝7cは、図2および図3に示すように、長辺折返し板部4が長辺側板部2の上辺から内向きに90°折り曲げられ、さらに下向きに90°折り返される。つまり、長辺折返し板部4を長辺側板部2の上辺から内向きに180°折り返して長辺側板部2の内側全面に重ねるに適する二列(二重)に形成されている。
【0039】
つぎに、短辺曲げ溝7bおよび短辺折返し曲げ溝7d、そして側辺曲げ溝7eについて説明する。図5は、短辺曲げ溝および短辺折返し曲げ溝、側辺曲げ溝の加工形態を示す要部の拡大斜視図である。
この短辺曲げ溝7bと短辺折返し曲げ溝7d、そして側辺曲げ溝7eは、波状中芯a4の空洞部8方向(波状中芯a3の波状方向と直交する方向)にそれぞれ形成される。
具体的に説明すると、図5に示すように、短辺曲げ溝7bと短辺折返し曲げ溝7d、側辺曲げ溝7eは、表面ライナーa1側を残し、裏面ライナーa2、中間ライナーa3、二層の波状中芯a4にスリットを入れ、このスリットの両側を溝角が略90°のV字状になるように押し潰すことにより、底板部1と短辺側板部3との境界、そして短辺側板部3と短辺折返し板部5との境界、長辺側板部2と内曲げ単片板部6の境界において波状中芯a3の波状中芯a4の空洞部8方向に向けてそれぞれ形成されるV溝である。
【0040】
なお、短辺折返し曲げ溝7dは、図1および図3に示すように、短辺折返し板部5が短辺側板部3の上辺から内向きに90°折り曲げられ、さらに下向きに90°折り返される。つまり、短辺折返し板部5を短辺側板部3の上辺から内向きに180°折り返して短辺側板部3の内側上半部に重ねるに適する二列(二重)のV溝に形成されている。
【0041】
そして、本実施例では、このようにして形成される各曲げ溝7a〜7eに沿って展開シートaを順次に折り曲げて棺本体A1を組み立て構成する組み立て作業において、長辺曲げ溝7aを含めて該長辺曲げ溝7aを介して開口連通する底板部1側と長辺側板部2側の波状中芯a4の空洞部8に紙材(段ボール)の接着性を有する充填剤を流し込み充填することで、棺本体A1の底部となる底板部1と長辺壁部となる長辺側板部2との連設コーナー部分に断面視でL字状の強化梁材9が硬化形成されるようにしている。
【0042】
また、本実施例では、図1および図2に示すように、強化梁材9が硬化形成されると同時に、長辺方向(長手方向)における連設コーナー部分のコーナー内側に強化梁材9に一体に連設される長辺内コーナー押え部10が、短辺方向(短手方向)における連設コーナー部分のコーナー内側に長辺内コーナー押え部10に一体に連設される短辺内コーナー押え部11が硬化形成されるようにしている。
【0043】
≪強化梁材および長辺および短辺両内コーナー押え部の説明≫
図6は、強化梁材および長辺内コーナー押え部を示す要部の拡大斜視図である。
強化梁材9は、矩形状(長方形)に組み立て構成される棺本体A1の底部と両側長辺壁部との連設コーナー部分において断面視でL字状に硬化形成れて長辺全長にわたり内設されることで、棺本体A1の長辺方向(長手方向)の耐荷重強度を強化する。つまり、棺本体A1内に収容される遺体やその他の収容物の荷重負荷によって棺本体A1の底部が下方に撓む(歪む)座屈を抑えるべく、底部の長辺全長にわたり実用上十分な耐荷重強度を付与する役目を成すものである。
【0044】
この強化梁材9を硬化形成する充填剤は、樹脂を主成分とする樹脂系、例えば、変性酢酸ビニル系の接着剤である。この充填剤の粘度(mPa・s/23℃)は、長辺曲げ溝7aから底板部1側と長辺側板部2側の波状中芯a4の空洞部8へ流し込み充填した際に、長辺曲げ溝7aに溝壁の開口から空洞部8内の所定の充填部範囲において空洞部8を完全に埋め尽くすようにその流れが当該充填部範囲内に止まる程度の例えば、20,000〜30,000の範囲が好ましく、特に好ましは25,000である。
【0045】
そして、このような粘度を有する充填剤の長辺曲げ溝a1を含めて長辺曲げ溝a1からの空洞部8への流し込み充填は、図示省略の充填ノズルを用いた強制充填にて行われる。また、底板部1に短辺側板部3を折り曲げ起立可能に連設する短辺曲げ溝a2を含めた残る曲げ溝a3〜a7への充填剤の充填も同様に充填ノズルによる強制充填により行われるものである。
【0046】
[作用説明]
つぎに、展開シートaから棺本体A1を組み立て構成するその組み立て手順の一例について簡単に説明する。
図7〜9図は、棺本体の組み立て手順を示す説明斜視図であり、図10は、組み立て構成された棺本体を蓋体とともに示す説明斜視図である。ここでは、図1図3を適宜参照しながら説明する。
【0047】
図3に示す展開シートaの状態から、まず初めに、図7に示すように、長辺折り返し板部を長辺折返し曲げ溝7cに沿って長辺側板部2の内側に折り返して接着固定する。
つぎに、底板部1と長辺側板部2との長辺曲げ溝7aおよび底板部1と短辺側板部3との短辺曲げ溝7bに充填ノズルを用いた強制充填によって充填剤を流し込み充填する。このとき、長辺曲げ溝7aを介して連通する底板部1側と長辺側板部2側の波状中芯a4の空洞部8の所定の充填範囲に充填剤が流れ込み充填される分量の充填剤を長辺曲げ溝7aから両空洞部8に流し込み充填する。また、長辺側板部2を長辺曲げ溝7aに沿って垂直に折り曲げ起立させたときに、充填剤の一部が連設コーナー部分のコーナー内側にはみ出すように多めの分量にて充填剤を長辺曲げ溝7aに流し込み充填する。
また、短辺側板部3を短辺曲げ溝7bに沿って垂直に折り曲げ起立させたときに、充填剤の一部が連設コーナー部分のコーナー内側にはみ出す分量の充填剤を短辺曲げ溝7bに流し込み充填する。
【0048】
このようにして、長辺曲げ溝7aと短辺曲げ溝7bに充填剤を流し込み充填した状態で、図に示すように、長辺側板部2を長辺曲げ溝7aに沿って垂直折り曲げ起立させるとともに、長辺側板部2両側の内曲げ単片板部6を側辺曲げ溝7eに沿って内向きに折り曲げ、次いで短辺側板部3を短辺曲げ溝7bに沿って垂直に折り曲げ起立させて立ち上げて短辺側板部3の内側に内曲げ単片板部6を接着固定する。
最後に、短辺折返し板部5を短辺折返し曲げ溝7dに沿って短辺側板部3の内側上半部に折り返して接着固定することで、図9および図10に示す矩形状(長方形)の棺本体A1が組み立て構成される。
【0049】
また、本実施例では、棺本体A1の底部(底板部1)裏面に、図1および図2に示すように、底部全面の耐荷重強度をさらに向上させるために同じく二層強化段ボールからなる補強底板12を貼り付けなどによって備える。この補強底板12は、図9に示すように、波状中芯a4の方向(目方向)を底板部1の波状中芯a4の方向(目方向)に対し直交させた方向にて棺本体A1の底部裏面に貼り付けられるものである。
【0050】
以上詳述のように、長辺側板部2を長辺曲げ溝7aに沿って垂直折り曲げ起立させることで、底板部1と長辺側板部2との連設コーナー部分に、図1および図2に示すように、断面視でL字状を呈して長辺全長にわたる強化梁材9と、コーナー内側を埋め尽くし底板部1に当接する内曲げ単片板部6の長辺端部における波状中芯a4の空洞部8内に流れ込み充填されるように長辺曲げ溝7aからはみ出して長辺全長にわたり強化梁材9と一体に連設される長辺内コーナー押え部10とが硬化形成される。
また、底板部1と短辺側板部3との連設コーナー部分のコーナー内側には、図1および図2に示すように、コーナー内側を埋め尽くし底板部1に当接する内曲げ単片板部6の下辺端部における波状中芯a4の空洞部8内に流れ込み充填されるように短辺曲げ溝7bからはみ出して短辺全長にわたり長辺内コーナー押え部10に一体に連設される短辺内コーナー押え部11が硬化形成される。
このように、本実施形態に係る棺桶Aの棺本体A1の底部は、長辺両側の連設コーナー部分に硬化形成されて長辺全長にわたり内設される強化梁材9と、長辺および短辺の両辺コーナー内側に沿って全長にわたり一体に連設されて硬化形成される長辺および短辺両内コーナー押え部10,11とによって定形保持されることで、収容される遺体やその他の収容物などの荷重負荷に対して実用上十分な耐荷重強度に強化されるものである。
また、長辺内コーナー押え部10によって長辺側板部2の内側に折り返し重ねられる長辺折返し板部4を当該内側に押え込むことができ、また、短辺内コーナー押え部11によって短辺側板部3の内側に解放端同士を突き合せた状態で内曲げ重ねられる内曲げ単片板部6を当該内側に押え込むことができる。つまり、従来技術では、箱体底部の内側に底板部とほぼ同じ形状の内底板を落とし込むことで、長辺、短辺両折返し板部が跳ね上がるなどによって長辺、短辺両側板部の内側から剥離することを防いでいたことを、本実施形態では、長辺および短辺の両辺コーナー内側に沿って一体に連設形成される長辺および短辺両内コーナー押え部10,11によって防ぐことができる。
【0051】
そして、本実施例では、底板部1と長辺側板部2との連設コーナー部分に強化梁材9および長辺内コーナー押え部10を一体に備え、また、底板部1と短辺側板部3との連設コーナー部分には長辺内コーナー押え部10と一体に連設させた短辺内コーナー押え部11を備えた棺本体A1(実施品)の耐荷重強度を確認するために、以下の試験条件によって耐荷重強度試験(たわみ量測定)を試みた。
この耐荷重強度試験は荷重を掛けた状態で24時間放置した後、棺本体(試験体)の底部長辺中央部のたわみ量を観察することで行った。また、比較品として強化梁材、長辺および短辺両内コーナー押え部を備えていない棺本体を準備して耐荷重強度試験を行った。
ちなみに、充填剤から硬化形成される強化梁材9および長辺、短辺両内コーナー押え部10,11の硬度(Hv)は、65〜75であることが材料試験(硬さ試験)によって確認されている。
【0052】
試験条件
a.棺本体(試験体)寸法:長辺寸法1900mm、短辺寸法570mm、高さ寸法
440mm
b.棺本体(試験体)支持:短辺両側二箇所を棺台で支持する二点支持で、支持間隔
は1700mmである。
c.試験荷重 :210kg
d.載荷方法 :長辺中央集中荷重法(24時間放置)
e.試験環境 :自然環境下(温湿度変動下)
(ここでは気温19〜26℃、湿度74〜91%)
f.試験時間 :24時間放置
g.測定 :スケールによる撓み量(棺台の棺桶載置面を測定基準と
して底部長辺中央部のたわみ量を測定)
【0053】
以上詳述の試験条件で耐荷重強度試験を行ったところ、底部長辺方向における中央部分のたわみ量が、実施品では10mmであったのに対し、比較品では17mmであることが確認された。また、耐荷重強度が比較品に比べて40%高められていることが確認された。
【0054】
以上、本発明の実施形態の具体例を詳細に説明したが、前記詳述の実施形態は例示にすぎなく、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術事項には、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更などしたものであっても含まれるものである。
例えば、棺本体の底部両側長辺の連設コーナー部分に硬化形成される強化梁材の断面視形状はL字状に限られるものではない。
【0055】
また、長辺折返し板部を長辺側板部の内側に折り返し重ねるとき、長辺折返し溝部を含めて長辺折返し溝部から長辺側板部側と長辺折返し板部側に連通存在する波状中芯の空洞部に充填剤を流し込み充填して、長辺側板部と長辺折返し板部との折返し部分に、長辺全長にわたる強化梁材が硬化形成されるようにすることができる。これにより、棺本体の長辺壁部の剛性を高めて、長辺方向の耐荷重強度をさらに強化させることが期待できる。
【0056】
また、本発明に係る平面視で矩形状(長方形)の段ボール製箱体は、マグロなどの大型魚などを箱詰め運搬するときの運搬箱としても適用することができる。この場合、耐水性や撥水性などの加工処理が施された二層や三層などの強化段ボールからなる展開シートを用いて運搬箱を組み立て構成することが好ましい。また、運搬箱の開口部には封緘用の内外フラップを備える。
このように、大型魚の箱詰め運搬用として使用した場合、運搬箱の底板部と長辺側板部との連設コーナー部分には強化梁材が長辺全長にわたり内設存在し、そのコーナー内側には強化梁材と一体とする長辺内コーナー押え部が長辺全長に存在し、また、底板部と短辺側板部とのコーナー内側には長辺内コーナー押え部と一体に連設された短辺内コーナー押え部が短辺全長にわたり存在していることで、当該コーナー押え部が防水作用を成して大形魚を箱詰めの際に箱内に入り込んだ水や封緘後における外気との温度差による結露水などが、段ボールの表裏ライナーの間に浸入することを防ぐことができる。つまり、段ボールの強度低下が敬遠される波状中芯が水に濡れることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0057】
A 棺桶
A1 棺本体(段ボール製箱体)
A2 蓋体
a 展開シート
a1 表面ライナー
a2 裏面ライナー
a3 中間ライナー
a4 波状中芯
1 底板部
2 長辺側板部
3 短辺側板部
4 長辺折返し板部
5 短辺折返し板部
6 内曲げ単片板部
7a〜7e 曲げ溝
8 空洞部
9 強化梁材
10 長辺内コーナー押え部
11 短辺内コーナー押え部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10