【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代素材等レーザー加工技術開発プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、炭素繊維強化樹脂(CFRP:carbon fiber reinforced plastics)が航空機等の輸送機器の軽量化構造材料として利用されている。しかしながら、CFRPは難加工性複合材料であることから、このような複合材料(ワーク)を高速且つ高品位に加工可能なレーザ加工技術の開発が希求されている。
【0007】
前記ワークを高速且つ高品位に加工可能なレーザ加工方法の1つとして、波長の異なる複数のレーザ光を同軸に重畳させてワークに対し併せて走査する方法が考えられる。
【0008】
上述した特許文献1に係る従来技術では、波長補正がなされた特殊なf−θレンズを用いる必要があるため、波長補正がなされていないf−θレンズに比べて構成レンズの種類及び枚数が増加してレーザ加工システムの大型化及び高コスト化が懸念される。特に、紫外領域の波長を有するレーザ光(第2レーザ光)が含まれている場合には、前記レンズに使用することができるガラス材料が少ないため、f−θレンズの設計及び製造が困難である。
【0009】
一方、特許文献2に係る従来技術では、ガルバノスキャナーにて走査された第1レーザ光と第2レーザ光をダイクロイックミラーにて重畳させるため、該第1レーザ光と該第2レーザ光とをワークに対して同軸に重畳させて併せて走査することが容易でない。そのため、ワークを高速且つ高品位にレーザ加工することができないおそれがある。
【0010】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、ワークを高速且つ高品位にレーザ加工することができると共に、コストの低廉化及び小型化を図ることができるレーザ加工システム及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るレーザ加工システムは、第1レーザ光を発振する第1レーザ発振器と、前記第1レーザ光の波長とは異なる波長を有する第2レーザ光を発振する第2レーザ発振器と、前記第1レーザ光と前記第2レーザ光とを同軸に重畳させるための重畳光学系と、前記重畳光学系から導かれた
重畳された前記第1レーザ光と前記第2レーザ光とをワークに対し併せて走査する走査光学系と、前記第1レーザ発振器と前記重畳光学系との間の光路上に設けられ、且つ前記第1レーザ光を集光すると共に焦点距離を変更可能に形成された第1集光光学系と、前記第2レーザ発振器と前記重畳光学系との間の光路上に設けられ、且つ前記第2レーザ光を集光すると共に焦点距離を変更可能に形成された第2集光光学系と、
前記走査光学系の走査角度を取得する走査角度取得手段と、前記第1集光光学系及び前記第2集光光学系を制御する制御部と、を備え
、前記第1集光光学系は、前記第1レーザ光を拡径する第1拡径レンズと、前記第1拡径レンズにて拡径された前記第1レーザ光を集光する第1集光レンズと、前記第1拡径レンズを前記第1集光レンズの光軸に沿って変位可能に支持する第1レンズホルダと、を有し、前記第2集光光学系は、前記第2レーザ光を拡径する第2拡径レンズと、前記第2拡径レンズにて拡径された前記第2レーザ光を集光する第2集光レンズと、前記第2拡径レンズを前記第2集光レンズの光軸に沿って変位可能に支持する第2レンズホルダと、を有し、前記制御部は、加工データと補正曲線又はパラメータテーブルとが記憶された記憶部と、前記走査角度取得手段にて取得された前記走査角度と前記記憶部に記憶された前記補正曲線又は前記パラメータテーブルとに基づいて前記第1拡径レンズの第1変位量と前記第2拡径レンズの第2変位量とを算出する変位量算出部と、前記変位量算出部にて算出された前記第1変位量に基づいて前記第1レンズホルダを駆動制御することにより前記第1集光光学系の焦点距離を調整し、前記変位量算出部にて算出された前記第2変位量に基づいて前記第2レンズホルダを駆動制御することにより前記第2集光光学系の焦点距離を調整する焦点距離調整部と、前記記憶部に記憶されている前記加工データに基づいて前記走査光学系を制御する走査制御部とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るレーザ加工システムによれば、第1レーザ光を集光すると共に焦点距離を変更可能に形成された第1集光光学系を第1レーザ発振器と重畳光学系との間の光路上に設け、第2レーザ光を集光すると共に焦点距離を変更可能に形成された第2集光光学系を第2レーザ発振器と重畳光学系との間の光路上に設けているので、特殊なf−θレンズを設ける必要がない。これにより、レーザ加工システムの小型化及びコストの低廉化を図ることができる。また、重畳光学系にて同軸に重畳された第1レーザ光と第2レーザ光とを走査光学系にてワークに対し併せて走査可能であるので、該ワークを高速且つ高品位にレーザ加工することが可能である。
【0014】
また、第1集光光学系を構成する複数のレンズの間隔を変更することにより該第1集光光学系の焦点距離(合成焦点距離)を変更し、第2集光光学系を構成する複数のレンズの間隔を変更することにより該第2集光光学系の焦点距離(合成焦点距離)を変更するので、前記第1集光光学系と前記第2集光光学系の各々における焦点距離の調整を確実に行うことができる。
【0016】
さらに、第1レンズホルダを第1拡径レンズの光軸に沿って変位させることにより第1拡径レンズと第1集光レンズとの間隔を変更することができるので、第1集光光学系の焦点距離を簡単に調整することができる。また、第2レンズホルダを第2拡径レンズの光軸に沿って変位させることにより第2拡径レンズと第2集光レンズとの間隔を変更することができるので、第2集光光学系の焦点距離を簡単に調整することができる。
【0018】
さらにまた、走査角度取得手段にて取得された走査角度に基づいて第1集光光学系の焦点距離と第2集光光学系の焦点距離とを調整する焦点距離調整手段を備えているので、第1レーザ光の集光位置と第2レーザ光の集光位置とをワーク上に動的に一致させることができる。これにより、ワークを一層高速且つ高品位にレーザ加工することができる。
【0019】
上記のレーザ加工システムにおいて、前記ワークがCFRPで構成されており、前記第1レーザ光が赤外領域の波長を有すると共に、前記第2レーザ光が紫外領域の波長を有していてもよい。
【0020】
このようなシステムによれば、赤外領域の波長を有する第1レーザ光と紫外領域の波長を有する第2レーザ光とを同軸に重畳してCFRPに走査することができるので、CFRPを高速且つ高品位にレーザ加工することができる。
【0021】
本発明に係るレーザ加工方法は、
加工データと補正曲線又はパラメータテーブルとを記憶部に記憶させる記憶工程と、焦点距離を変更可能に形成された第1集光光学系に第1レーザ光を入射する第1入射工程と、焦点距離を変更可能に形成された第2集光光学系に前記第1レーザ光の波長とは異なる波長を有する第2レーザ光を入射する第2入射工程と、前記第1集光光学系から導かれた前記第1レーザ光と前記第2集光光学系から導かれた前記第2レーザ光とを重畳光学系にて同軸に重畳させる重畳工程と、
前記記憶部に記憶されている前記加工データに基づいて前記重畳工程にて重畳された前記第1レーザ光と前記第2レーザ光とを
走査光学系によりワークに対し併せて走査する走査工程と、
を行い、前記第1集光光学系は、前記第1レーザ光を拡径する第1拡径レンズと、前記第1拡径レンズにて拡径された前記第1レーザ光を集光する第1集光レンズと、前記第1拡径レンズを前記第1集光レンズの光軸に沿って変位可能に支持する第1レンズホルダと、を有し、前記第2集光光学系は、前記第2レーザ光を拡径する第2拡径レンズと、前記第2拡径レンズにて拡径された前記第2レーザ光を集光する第2集光レンズと、前記第2拡径レンズを前記第2集光レンズの光軸に沿って変位可能に支持する第2レンズホルダと、を有し、前記走査工程では、前記走査光学系の走査角度を取得する取得工程と、前記取得工程で取得された前記走査角度と前記記憶部に記憶されている前記補正曲線又は前記パラメータテーブルとに基づいて前記第1拡径レンズの第1変位量と前記第2拡径レンズの第2変位量とを算出する算出工程と、前記算出工程にて算出された前記第1変位量に基づいて前記第1レンズホルダを駆動制御することにより前記第1集光光学系の焦点距離を調整し、前記算出工程にて算出された前記第2変位量に基づいて前記第2レンズホルダを駆動制御することにより前記第2集光光学系の焦点距離を調整する焦点距離調整工程と、を行うことを特徴とする。
【0022】
本発明に係るレーザ加工方法によれば、焦点距離を変更可能に形成された第1集光光学系に第1レーザ光を入射し、焦点距離を変更可能に形成された第2集光光学系に前記第1レーザ光の波長とは異なる波長を有する第2レーザ光を入射するので、特殊なf−θレンズを設ける必要がない。これにより、レーザ加工システムの小型化及びコストの低廉化を図ることができる。また、重畳工程にて同軸に重畳された第1レーザ光と第2レーザ光とをワークに対し併せて走査するので、該ワークを高速且つ高品位にレーザ加工することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、ワークを高速且つ高品位にレーザ加工することができると共に、コストの低廉化及び小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るレーザ加工システム及びレーザ加工方法について、好適な実施形態を例示して添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
本発明の一実施形態に係るレーザ加工システム10は、波長の異なる第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2とを同軸に重畳してワークWに対し併せて走査することにより、該ワークWを高速且つ高品位にレーザ加工するためのシステムである。
【0027】
図1に示すように、ワークWは、任意の材料で構成可能であるが、例えば、炭素繊維強化樹脂(CFRP)等の難加工性複合材料の板材として構成されている。
【0028】
レーザ加工システム10は、第1レーザ光LB1を発振する第1レーザ発振器12と、第2レーザ光LB2を発振する第2レーザ発振器14と、第1レーザ光LB1を集光するための第1集光光学系16と、第2レーザ光LB2を集光するための第2集光光学系18と、第1集光光学系16から出射された第1レーザ光LB1と第2集光光学系18から出射された第2レーザ光LB2とを同軸に重畳させるためのダイクロイックミラー(重畳光学系)20と、ダイクロイックミラー20にて重畳された第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2とを支持台100に載置されたワークWに対し併せて操作するガルバノスキャナー(走査光学系)22と、制御部26とを備える。
【0029】
第1レーザ発振器12は、例えば、赤外領域(近赤外領域)の波長を有する第1レーザ光LB1を発振可能に構成されている。このような第1レーザ発振器12としては、例えば、ファイバーレーザ発振器等が挙げられる。
【0030】
第2レーザ発振器14は、例えば、紫外領域の波長を有する第2レーザ光LB2を発振可能に構成されている。このような第2レーザ発振器14としては、例えば、第3高調波レーザ発振器(Qスイッチ方式の固体レーザ発振器)等が挙げられる。
【0031】
第1集光光学系16は、第1レーザ発振器12とダイクロイックミラー20との間の光路上に配設されている。具体的には、第1集光光学系16は、第1レーザ光LB1を拡径する第1拡径レンズ28と、第1拡径レンズ28にて拡径された第1レーザ光LB1を集光する一対の第1集光レンズ30、32と、第1拡径レンズ28をその光軸に沿って変位可能に支持する第1レンズホルダ34とを有している。
【0032】
本実施形態では、第1拡径レンズ28として凹レンズが用いられ、各第1集光レンズ30、32として凸レンズが用いられている。なお、各第1集光レンズ30、32の焦点距離は異なっている。
【0033】
このように構成される第1集光光学系16は、第1拡径レンズ28と第1集光レンズ30との間隔を変更することにより、該第1集光光学系16の焦点距離(合成焦点距離)を容易に調整することが可能となっている。
【0034】
第2集光光学系18は、上述した第1集光光学系16と同様の構成を有しており、第2レーザ発振器14とダイクロイックミラー20との間の光路上に配設されている。すなわち、第2集光光学系18は、第2レーザ光LB2を拡径する第2拡径レンズ36と、第2拡径レンズ36にて拡径された第2レーザ光LB2を集光する一対の第2集光レンズ38、40と、第2拡径レンズ36をその光軸に沿って変位可能に支持する第2レンズホルダ42とを有している。
【0035】
本実施形態では、第2拡径レンズ36として凹レンズが用いられ、各第2集光レンズ38、40として凸レンズが用いられている。なお、各第2集光レンズ38、40の焦点距離は異なっている。
【0036】
このように構成される第2集光光学系18は、第2拡径レンズ36と第2集光レンズ38との間隔を変更することにより、該第2集光光学系18の焦点距離(合成焦点距離)を容易に調整することが可能となっている。
【0037】
ダイクロイックミラー20は、第1レーザ光LB1を背面側から透過すると共に第2レーザ光LB2を反射する。これにより、ダイクロイックミラー20は、第1集光光学系16から出射された第1レーザ光LB1と第2集光光学系18から出射された第2レーザ光LB2とを同軸に重畳させることができる。
【0038】
ガルバノスキャナー22は、ダイクロイックミラー20にて重畳された第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2とをX軸方向(ワークWの長さ方向)に沿って走査するためのガルバノミラー44と、ガルバノミラー44を回動させるためのモータ46と、ガルバノミラー44の走査角度を取得するためのエンコーダ(走査角度取得手段)48と、ガルバノミラー44から導かれた第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2とをY軸方向(ワークWの幅方向)に沿って走査するためのガルバノミラー50と、ガルバノミラー50を回動させるためのモータ52と、ガルバノミラー50の走査角度を取得するためのエンコーダ(走査角度取得手段)54とを含んでいる。
【0039】
このように構成されるガルバノスキャナー22は、第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2とをワークWのXY平面内で容易に走査することができる。
【0040】
図2に示すように、制御部26は、記憶部56、レーザ制御部58、走査制御部60、変位量算出部62、及び焦点距離調整部(焦点距離調整手段)64を有している。
【0041】
記憶部56は、図示しない入力装置によって入力された加工データを記憶する。また、記憶部56には、補正曲線又はパラメータテーブルが記憶されている。補正曲線又はパラメータテーブルは、例えば、各エンコーダ48、54にて取得された各ガルバノミラー44、50の走査角度と第1拡径レンズ28の位置との関係と、該走査角度と第2拡径レンズ36の位置との関係とを示したものが用いられる。
【0042】
レーザ制御部58は、第1レーザ発振器12に駆動電流を供給して該第1レーザ発振器12から第1レーザ光LB1を発振し、第2レーザ発振器14に駆動電流を供給して該第2レーザ発振器14から第2レーザ光LB2を発振する。
【0043】
走査制御部60は、記憶部56に記憶されている加工データに基づいて各モータ46、52を駆動制御する。変位量算出部62は、各エンコーダ48、54が取得した各ガルバノミラー44、50の走査角度に基づいて第1拡径レンズ28の変位量と第2拡径レンズ36の変位量とを算出する。
【0044】
焦点距離調整部64は、変位量算出部62にて算出された第1拡径レンズ28の変位量に基づいて第1レンズホルダ34を駆動制御し、前記変位量算出部62にて算出された第2拡径レンズ36の変位量に基づいて第2レンズホルダ42を駆動制御する。
【0045】
次に、以上のように構成されたレーザ加工システム10を用いたレーザ加工方法について
図3及び
図4を参照しながら説明する。
【0046】
先ず、作業者は図示しない入力装置を用いて加工データを入力する(
図3のステップS1)。これにより、記憶部56には加工データが記憶される。続いて、レーザ制御部58は、第1レーザ発振器12と第2レーザ発振器14を駆動制御して、第1レーザ発振器12から赤外領域の波長を有する第1レーザ光LB1を発振し、第2レーザ発振器14から紫外領域の波長を有する第2レーザ光LB2を発振する(ステップS2)。
【0047】
そうすると、第1レーザ発振器12から発振された第1レーザ光LB1は第1集光光学系16に入射する(ステップS3:第1入射工程)。このとき、第1レーザ光LB1は、第1拡径レンズ28にてそのビーム径が拡径された後、一対の第1集光レンズ30、32にて集光される。
【0048】
一方、第2レーザ発振器14から発振された第2レーザ光LB2は第2集光光学系18に入射する(ステップS4:第2入射工程)。このとき、第2レーザ光LB2は、第2拡径レンズ36にてそのビーム径が拡径された後、一対の第2集光レンズ38、40にて集光される。
【0049】
第1集光光学系16から出射した第1レーザ光LB1は背面側からダイクロイックミラー20を透過し、第2集光光学系18から出射した第2レーザ光LB2はダイクロイックミラー20にて反射される。その結果、第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2とが同軸に重畳されることになる(ステップS5:重畳工程)。
【0050】
その後、重畳された第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2とは、一対のガルバノミラー44、50に反射してワークWに照射される。そして、このとき、走査制御部60は、記憶部56に記憶されている加工データに基づいて第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2とをワークWに対し併せて走査する(ステップS6:走査工程)。これにより、ワークWのうち第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2が併せて照射された部位が加工されることになる。
【0051】
本実施形態では、このステップS6において、変位量算出部62が、各エンコーダ48、54にて取得された各ガルバノミラー44、50の走査角度と記憶部56に記憶されている補正曲線又はパラメータテーブルとに基づいて第1拡径レンズ28の変位量と第2拡径レンズ36の変位量を算出する(
図4のステップS10)。
【0052】
そして、焦点距離調整部64が、算出された第1拡径レンズ28の変位量に基づいて第1レンズホルダ34を変位し、算出された第2拡径レンズ36の変位量に基づいて第2レンズホルダ42を変位する(ステップS11)。これにより、第1レーザ光LB1の集光位置と第2レーザ光LB2の集光位置をワークW上に動的に一致させることができる。
【0053】
次に、制御部26は、ワークWの加工が終了したか否かを判断する(ステップS7)。ワークWの加工が終了していない場合には(ステップS7:NO)、ステップS6の処理を繰り返し行う。
【0054】
一方、ワークWの加工が終了した場合には(ステップS7:YES)、レーザ制御部58は、第1レーザ発振器12を制御して第1レーザ光LB1の発振を停止し、第2レーザ発振器14を制御して第2レーザ光LB2の発振を停止する(ステップS8)。この段階で今回のフローチャートが終了する。
【0055】
本実施形態によれば、第1レーザ光LB1を集光すると共に焦点距離を変更可能に形成された第1集光光学系16を第1レーザ発振器12とダイクロイックミラー20との間の光路上に設け、第2レーザ光LB2を集光すると共に焦点距離を変更可能に形成された第2集光光学系18を第2レーザ発振器14とダイクロイックミラー20との間の光路上に設けているので、特殊なf−θレンズを設ける必要がない。
【0056】
すなわち、第1集光光学系16と第2集光光学系18において、波長補正(色消し)処理を行う必要がないので、レンズ設計が容易である。言い換えれば、第1集光光学系16を構成する第1拡径レンズ28及び第1集光レンズ30、32と、第2集光光学系18を構成する第2拡径レンズ36及び第2集光レンズ38、40とを石英や硼珪酸ガラス(BK7)等といったレーザ用の一般的な光学ガラスで設計することができる。これにより、レーザ加工システム10の小型化及びコストの低廉化を図ることができる。
【0057】
また、ダイクロイックミラー20にて同軸に重畳された第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2とをガルバノスキャナー22にてワークWに対し併せて走査するので、該ワークWを高速且つ高品位にレーザ加工することできる。
【0058】
本実施形態では、第1集光光学系16を構成する第1拡径レンズ28と第1集光レンズ30の間隔を変更することにより該第1集光光学系16の焦点距離(合成焦点距離)を変更し、第2集光光学系18を構成する第2拡径レンズ36と第2集光レンズ38との間隔を変更することにより該第2集光光学系18の焦点距離(合成焦点距離)を変更するので、第1集光光学系16と第2集光光学系18の各々における焦点距離の調整を確実に行うことができる。
【0059】
また、第1レンズホルダ34を第1拡径レンズ28の光軸に沿って変位させることにより第1拡径レンズ28と第1集光レンズ30との間隔を変更することができるので、第1集光光学系16の焦点距離を簡単に調整することができる。
【0060】
さらに、第2レンズホルダ42を第2拡径レンズ36の光軸に沿って変位させることにより第2拡径レンズ36と第2集光レンズ38との間隔を変更することができるので、第2集光光学系18の焦点距離を簡単に調整することができる。
【0061】
本実施形態によれば、各エンコーダ48、54にて取得した各ガルバノミラー44、50の走査角度と補正曲線又はパラメータテーブルとに基づいて変位量算出部62が第1拡径レンズ28の変位量と第2拡径レンズ36の変位量を算出している。
【0062】
そして、焦点距離調整部64が、算出された第1拡径レンズ28の変位量に基づいて第1レンズホルダ34を変位し、算出された第2拡径レンズ36の変位量に基づいて第2レンズホルダ42を変位しているので、第1レーザ光LB1の集光位置と第2レーザ光LB2の集光位置とをワークW上に動的に一致させることができる。これにより、ワークWを一層高速且つ高品位にレーザ加工することができる。
【0063】
本実施形態では、赤外領域の波長を有する第1レーザ光LB1と紫外領域の波長を有する第2レーザ光LB2とを同軸に重畳してワークWとしてのCFRPに対し併せて走査しているので、該CFRPを高速且つ高品位にレーザ加工することができる。
【0064】
また、本実施形態に係るレーザ加工システム10は、第1拡径レンズ28と第2拡径レンズ36の位置を調整することにより、3次元形状のワークWの加工を行うことが可能である。
【0065】
本実施形態は、上記の構成に限定されず、例えば、第1レーザ発振器12が紫外領域の波長を有する第1レーザ光LB1を発振し、第2レーザ発振器14が赤外領域の波長を有する第2レーザ光LB2を発振するように構成してもよい。この場合、赤外領域の波長の光を透過し且つ紫外領域の波長の光を反射するダイクロイックミラー20を用いればよい。
【0066】
また、第1レーザ光LB1と第2レーザ光LB2は、可視領域の波長を有するレーザ光であっても構わない。さらに、第1集光光学系16は、焦点距離を変更可能に形成されて第1レーザ光LB1を集光する液晶レンズであってもよい。第2集光光学系18についても同様である。
【0067】
本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。例えば、本発明に係るレーザ加工システム及びレーザ加工方法では、波長の異なる3以上のレーザ光を同軸に重畳させてワークに対し併せて走査するようにしてもよい。