(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021495
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】水晶振動素子
(51)【国際特許分類】
H03H 9/19 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
H03H9/19 E
H03H9/19 F
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-169815(P2012-169815)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-30112(P2014-30112A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104722
【氏名又は名称】京セラクリスタルデバイス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笠原 慧
(72)【発明者】
【氏名】岩田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】白澤 仁
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 康平
【審査官】
鬼塚 由佳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−197913(JP,A)
【文献】
特開2010−028610(JP,A)
【文献】
特開2008−306594(JP,A)
【文献】
特開2010−074422(JP,A)
【文献】
特開2003−037470(JP,A)
【文献】
特開2009−065270(JP,A)
【文献】
特開2002−76825(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0036383(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面積が他の面と比べて大きな2つの面を主面としたとき、
平面視の主面形状が矩形であり、結晶軸のX軸方向に沿った辺を長辺とし、結晶軸のZ′軸方向に沿った辺を短辺としてなる平板状の水晶板と、
前記水晶板の両主面に設けられる平面視形状が楕円の励振電極とを備え、
前記水晶板の一方の主面の前記励振電極が設けられる位置、又は両方の主面の前記励振電極が設けられる位置には凸部が設けられており、
前記凸部の平面形状は楕円であり、
前記凸部の平面中心と前記水晶板の平面中心は同一であり、
前記凸部の平面の楕円短径側の縁が前記水晶板の平行する2つの長辺に接しており、
前記凸部の平面中心に対して、前記励振電極の平面中心が、15μm以下の範囲で前記水晶板の2つの長辺のどちらか側にズレて位置している
ことを特徴とする水晶振動素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる水晶振動素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子機器には圧電デバイスが用いられている。この圧電デバイスは、例えば、水晶振動子や水晶発振器などが含まれる。
これら水晶振動子や水晶発振器は、内部に気密封止されたATカットの水晶板に励振電極が設けられた水晶振動素子が用いられている。
この水晶振動素子は、例えば、四角形状で平板状に形成された水晶板が用いられている。この水晶板は、両主面に凸部が設けられ、その凸部の表面に励振電極が設けられている。
この励振電極は、水晶板の両主面に設けられ、水晶板を挟んで対向させて設けられる。
ここで、一般的な水晶振動素子は、水晶板の主面の平面中心と、凸部の平面中心と、対向する励振電極の平面中心とが同一直線上に位置し、かつ、その直線が、水晶の結晶軸と並行となるように設計される。
なお、励振電極は、例えば、水晶板を保持具に整列させて、励振電極のパターンが設けられたメタルマスクで固定して、金属材料を水晶板に付着させることで形成することができる。
また、例えば、励振電極は、水晶板にフォトレジストを設けて励振電極のパターンとなるようにフォトレジストを感光させて不要部分を除去し、金属材料を付着させた後にウェットエッチングでフォトレジストを除去することにより形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−267888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の水晶振動素子は、励振電極の形成の際に、位置ずれを起こす場合があった。そのため、励振電極が対向しない部分が生じて水晶板内で生じる電界を起こす領域が小さくなってしまい、
図3及び
図4に示すように、必要なCI値(クリスタルインピーダンス値)が得られないという課題があった。
また、励振電極が、水晶板の中心からズレてしまう場合があり、振動漏れが生じる恐れもあった。
【0005】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、CI値が高くなる現象を軽減し、振動漏れの発生を軽減する水晶振動素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は水晶振動素子であって、平面積が他の面と比べて大きな2つの面を主面としたとき、
平面視の主面形状が矩形であり、結晶軸のX軸方向に沿った辺を長辺とし、結晶軸のZ′軸方向に沿った辺を短辺としてなる平板状の水晶板と、
水晶板の両主面に設けられる平面視形状が楕円の励振電極とを備え、水晶板
の一方の主面の励振電極が設けられる位置、又は両方の主面の励振電極が設けられる位置
には凸部が設けられており、凸部の平面形状は楕円であり、凸部の平面中心と水晶板の平面中心は同一であり、凸部の平面の楕円短径側の縁が水晶板の平行する2つの長辺に接しており、凸部の平面中心に対して、励振電極の平面中心が、15μm以下の範囲で水晶
板の2つの長辺のどちらか側にズレて位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このような水晶振動素子によれば、凸部の平面中心に対して、励振電極の平面中心を15μm以下の範囲で前記水晶片の長辺側にズレて位置させたことによりCI値が高くなることが軽減され、CI値を所定の温度範囲で安定した値とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)は本発明の実施形態に係る水晶振動素子の一例を示す平面図であり、(b)は本発明の実施形態に係る水晶振動素子の他の一例を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る水晶振動素子におけるCI値と温度との関係を示すグラフである。
【
図3】凸部の平面中心と励振電極の平面中心との間隔と幅寸法との関係を示すグラフである。
【
図4】従来の水晶振動素子におけるCI値と温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各構成要素について、状態をわかりやすくするために、誇張して図示している。ここで、平面積が他の面と比べて大きな2つの面を主面とする。
【0010】
本発明の実施形態に係る水晶振動素子は、
図1(a)に示すように、水晶板1と励振電極3とから主に構成されている。
水晶板1は、例えば、ATカットの水晶片で平板状に形成されており、一方の主面に凸部2が設けられている。
この凸部2は、平面形状が例えば、楕円形状となっており、楕円の短径側の縁が水晶板1の平行する2つの長辺に接した状態となっている。
また、凸部2は、その平面中心が水晶板1の平面中心C1と一致した状態で形成されている。
【0011】
この水晶板1の両主面に後述する励振電極3が対向して設けられ、凸部2の平面中心を基準にして、水晶片1の一方の長辺側にズレて位置させて設けられている。
ここで、水晶板1の一方の主面の励振電極3が設けられる位置に凸部2が設けられる。
つまり、水晶板1の一方の主面に楕円形状の凸部2が設けられ、他方の主面が平面状態となって形成されている。この楕円形状の凸部2の平面内に励振電極3が形成される。
【0012】
励振電極3は、前記のとおり、水晶板1の凸部2の平面に形成されている。
この励振電極3は、その平面中心C2が、凸部2の平面中心C1に対して、水晶片1の長辺側に15μm以下の範囲内にズレた位置に設けられている。
言い換えると、
図1(a)及び(b)に示すように、励振電極3は、凸部2の平面中心を起点として、水晶片1の短辺と並行する軸方向とその反対方向のどちらかに15μm以下の範囲内に位置して設けられている。
また、励振電極3は、水晶板1の他方の主面にも設けられており、凸部2に設けられた励振電極3と対向した状態となっている。
【0013】
このような水晶振動素子は、以下のようにして概略、形成される。
ATカットの水晶ウェハ(図示せず)に耐食膜(図示せず)を設けた上にフォトレジスト(図示せず)を設ける。
凸部2とする部分と形成後に水晶板1を保持する部分(図示せず)以外の部分のフォトレジストを感光させ、感光させた部分を除去する。
露出した耐食膜を除去して水晶ウェハの表面を露出させ、ウェットエッチングにより露出した水晶ウェハに凹み部分を形成する。
凹み部分にフォトレジストを設けて、水晶板(図示せず)となる部分以外の部分を感光させ、感光させた部分を除去する。
【0014】
露出した水晶ウェハの表面を厚み方向に貫通するまでウェットエッチングを行う。
フォトレジストと耐食膜を除去して、水晶板1を形成する。
水晶板1が設けられた水晶ウェハに耐食膜を設けてフォトレジストを設ける。
水晶ウェハの一方の主面に設けられる凸部の平面部分とその反対側となる水晶ウェハの他方の主面とに励振電極3を設けるためのパターンをフォトレジストに感光させる。
【0015】
フォトレジストを感光させるパターンを例えばメタルマスクやガラスに遮光膜が設けられたマスクに形成して、水晶ウェハと重ねた状態で露光を行い、フォトレジストを感光させる。
このとき、水晶ウェハに設けた水晶板の形状と前記マスクとの重ね合わせにおいて、マスクに設けたパターンの平面形状の中心と凸部の平面中心とを用いる。
【0016】
ここで、励振電極3は、凸部2の平面中心を起点として、水晶板の短辺と並行する軸方向とその反対方向のどちらかに15μm以下の範囲内にマスクに設けたパターンの平面形状の中心を位置させている。
この状態で露光を行い、フォトレジストを感光させれば、凸部の平面中心を起点として、水晶板1の短辺と並行する軸方向とその反対方向のどちらかに15μm以下の範囲内に励振電極3の形成が可能となる。
例えば、1つ又は複数の水晶板の凸部の平面中心とマスクのパターンの平面中心とを観察して位置合わせを行うのが良い。
なお、この位置合わせは、素子の外形形状の向きと対応させて行われるのは言うまでもない。
【0017】
この状態で、励振電極3となる所定の金属膜を露出した凸部の表面に設ける。
これにより、本発明の実施形態に係る水晶振動素子を形成することができる。
【0018】
このように本発明の実施形態に係る水晶振動素子を構成したので、凸部2の平面中心に対して、励振電極3の平面中心を15μm以下の範囲内で前記水晶片の長辺側にズレて位置させたことにより、
図2及び
図3に示すように、CI値が高くなることが軽減され、所定の温度範囲として−40℃〜100℃の範囲においてCI値が40Ω〜60Ωの範囲内に収まり安定した値とすることができる。
【0019】
(変形例)
次に本発明の実施形態に係る水晶振動素子の変形例について説明する。
例えば、本発明の実施形態に係る水晶振動素子の変形例は、水晶板の両主面に凸部(図示せず)が設けられて構成されている。
【0020】
励振電極は、この水晶板の両方の主面の前記励振電極が設けられる位置に凸部が設けられている。
つまり、水晶板の両主面に設けられた凸部の平面上に励振電極がそれぞれ設けられている。
この励振電極は、凸部の平面中心を起点として、短辺と並行する軸方向とその反対方向のどちらかに15μm以下の範囲内に位置して設けられ、それぞれ対向している。
このように構成しても本発明の実施形態に係る水晶振動素子と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0021】
1 水晶板
2 凸部
3 励振電極