(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ウェブ基材間の隙間への前記気体の供給量と前記チャンバ内部の復圧のための気体の供給量とを調整することで、チャンバ内部の圧力がウェブ基材間の隙間の圧力より高くならないように制御する復圧制御部を備えることを特徴とする請求項2に記載のウェブ基材搬送装置。
【背景技術】
【0002】
近年、映像等を表示する表示デバイス用の基板材料として、ガスバリア性や透光性などに優れる薄膜ガラス(ガラスフィルム)が用いられるようになってきた。通常、ガラスフィルムの厚さは200μm程度であるが、最近では、200μmより薄い、厚さ30μm〜150μmほどの極めて薄いガラスフィルムが開発されている。
このような極めて薄いガラスフィルムは、その薄さゆえに可撓性を有するので、ガラスフィルムをウェブ基材としてロール状に巻き取ったウェブ基材ロールとして扱うことが可能である。ウェブ基材ロールには、ロール状に巻かれたガラスフィルムが内周側及び外周側に隣接するガラスフィルムと接触して破損するのを防ぐ目的で、互いに隣接するガラスフィルム間に保護シート(保護フィルム)を挟み込んだものがある。
【0003】
保護シートを不要としつつ、ガラスフィルムをロール状に巻き取る技術、言い換えれば、保護シートを用いずに巻き取り可能なガラスフィルムも開発されている。
例えば、非特許文献1には、ガラスフィルムの幅方向両端部に保護部材を取り付けてガラスフィルムを搬送し、このガラスフィルムを巻き取りローラなどに巻回することで、保護フィルムを用いずにガラスフィルムを保護するガラスフィルム保護方法が開示されている。
【0004】
非特許文献1に開示のガラスフィルム保護方法は、ガラスフィルムの幅方向両端部にエッジタブと呼ばれる保護部材を取り付けて、搬送時のガラスフィルムの破損を防いでいる。
非特許文献1に開示のエッジタブの厚みは、図面よりガラスフィルムの厚みに対して、およそ50%程度である。例えば、ガラスフィルムの厚みがおよそ200μmとすると、エッジタブの厚みはおよそ100μmとなる。非特許文献1には、厚み50μmのガラスフィルムの曲げ強度の試算値が開示されていることから、ガラスフィルムの厚みが50μm〜200μm程度の範囲と考えられ、エッジタブの厚みは25μm〜100μm程度の範囲と考えられる。
【0005】
また、非特許文献1に開示のエッジタブの幅は、図面よりガラスフィルム基材の幅に対しておよそ5%程度である。例えば、一般的な試験用のロール処理が200〜300mm程度の幅で行なわれることからすると、エッジタブの幅が10mm〜15mm程度の範囲と考えられる。
次に、特許文献1には、ガラス基板(ガラスフィルム)の幅方向両端部に保護部材が取り付けられたガラスリボンが開示されている。このガラスリボンに取り付けられた保護部材は、上述した非特許文献1のエッジタブと類似したものであり、保護フィルムを用いずにガラスフィルムを保護することができる。なお、この保護部材の厚みは、50μm〜100μm程度であると開示されている。
【0006】
特許文献1に開示されたエッジタブ及び非特許文献1に開示された保護部材は、25μm〜100μm程度の厚みを有しており、巻回時におけるガラスフィルム間のスペーサーとしての役割を担っている。エッジタブがスペーサーとして働くことによってガラスフィルム間に空間(隙間又は空隙)が形成される。このガラスフィルム間の隙間によって、搬送時におけるガラスフィルムとローラとの接触を防ぐことができ、また巻回時における互いに隣接するガラスフィルム間の接触を防ぐことができる。このように、エッジタブによってガラスフィルムの接触を回避して、ガラスフィルムの破損を防いでいる。なお、この技術は、樹脂フィルムや金属箔の搬送方法としても有効と考えられる。
【0007】
このようなエッジタブを有するガラスフィルムを巻き取ったガラスロールを真空中又は減圧下で成膜などの処理を行う場合に問題になるのは、ガラスロールを大気中で装置にセ
ットして真空に減圧する場合と、処理が完了した後に、装置の内部を大気に開放する場合である。
まずエッジタブ付きガラスフィルムが巻回されたウェブ基材ロールを大気圧のチャンバ内に装入して密閉し、チャンバ内部を減圧する。このとき、ウェブ基材ロール内部では、エッジタブによってガラスフィルム間に形成された非常に薄い隙間に空気が含まれているので、チャンバ内部をある一定以上の速度で減圧すると、チャンバ内部の圧力とウェブ基材ロール内部の圧力との間に減圧の速度差が生じて圧力差が生まれる。
【0008】
つまり、このウェブ基材ロール内部の渦巻き状の隙間はウェブ基材ロールの全長に対して非常に薄く形成されているため、ウェブ基材ロール内部の空気がチャンバ内部の減圧によってウェブ基材ロール外に流出するには長い時間が必要となる。そのため、チャンバ内部の減圧速度よりもウェブ基材ロールの内部の減圧速度が低くなり、ウェブ基材ロールの内部の圧力がチャンバ内部の圧力よりも高くなる。このような圧力差によって、ウェブ基材ロールが変形し、巻回されたガラスフィルムが破損する可能性がある。
【0009】
また、真空中でのガラスフィルムの表面処理が完了した後のウェブ基材ロールを大気圧に復圧する場合でも、チャンバ内部の圧力(大気圧)とウェブ基材ロール内部の圧力との間に、減圧の場合とは逆向きの圧力差が生じる。
チャンバ内部の圧力を真空から大気圧に復圧すると、チャンバ内部からウェブ基材ロール内部の非常に薄い隙間へ空気が流入するのに比較的長い時間が必要となり、チャンバ内部とウェブ基材ロール内部の間に圧力差が生じる。つまり、ウェブ基材ロール内部の復圧速度がチャンバ内部の復圧速度よりも低くなって、ウェブ基材ロールの内部の圧力がチャンバ内部の圧力よりも低くなる。このような圧力差によって、ウェブ基材ロールの内部が押しつぶされるように変形し、巻き取りローラなどに巻かれたガラスフィルムが破損する可能性がある。
【0010】
このような問題は、チャンバ内部の減圧や復圧を極めてゆっくり長時間かけて行なうことによって解決は可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るウェブ基材搬送装置1について、図を基に説明する。なお、以下に説明する各実施形態及び図面において、ウェブ基材搬送装置1における同一の構成部材には、同一の符号及び同一の名称を付すこととする。従って、同一の符号及び同一の名称が付された構成部材については、同じ説明を繰り返さない。
また、
図1の紙面に向かって紙面の上下方向を、本発明の実施形態に係るウェブ基材搬送装置1の上下方向とし、同様に紙面に向かって紙面の左右方向を、ウェブ基材搬送装置1の左右方向とする。
[第1実施形態]
図1に示すように、ウェブ基材搬送装置1は、薄膜で長尺のウェブ基材21がロール状に巻かれたウェブ基材ロール24からウェブ基材21を巻き出して、この巻き出されたウェブ基材21にスパッタリングや蒸着などの表面処理を施し、その後表面処理されたガラスフィルム21を別のロールに巻き取ってウェブ基材21を搬送する装置である。ウェブ基材搬送装置1は、いわゆる、ロール・ツー・ロール方式でウェブ基材21を搬送する装置である。
【0022】
ウェブ基材21は、背景技術で示した非特許文献1が開示する薄膜ガラスと同様の構成であり、例えば、長さが100m以上、幅が1メートルほどで、厚さが50μm〜200
μm程度の極めて薄いシート状に成形されたものである。ウェブ基材21としては、薄膜ガラス(ガラスフィルム)、樹脂フィルム、金属箔及び紙などが挙げられる。樹脂フィルムは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタラート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などの樹脂で成形されたものである。ウェブ基材21は、その薄さゆえに可撓性を有するので、ウェブ基材21をロール状に巻き取ったウェブ基材ロール24として扱うことが可能である。
【0023】
なお、本実施形態で用いられているウェブ基材21は、薄膜で長尺のガラスフィルムを例に取り、ガラスフィルム21として説明される。
図1を参照し、本実施形態のウェブ基材搬送装置1は、薄膜で長尺のガラスフィルム21がロール状に巻かれたウェブ基材ロール24からガラスフィルム21を巻き出す巻出し部2と、巻き出されたガラスフィルム21に表面処理を施す成膜部3と、表面処理が施されたガラスフィルム21を再びロール状のウェブ基材ロール23として巻き取る巻取り部4とを含んで構成されている。
【0024】
巻出し部2は、回転自在の巻出しコア(巻き芯)12であって、ガラスフィルム21の幅よりも長い円筒形状又は円柱形状をしたローラである。巻出しコア12には、エッジタブが装着されたガラスフィルム21が巻回されているので、巻出しコア12の回転とともにガラスフィルム21が巻き出される。
成膜部3は、ガラスフィルム21にスパッタ法や蒸着、CVD等の表面処理を施す成膜装置6を備えている。成膜装置6には、円筒状又は円柱状に形成された成膜ロール7が備えられ、この成膜ロール7がガラスフィルム21の搬送を行っている。つまり成膜装置6は、成膜ロール7にて搬送中のガラスフィルム21に表面処理を実施するものである。
【0025】
巻取り部4は、巻出し部2と同様の構成を有する回転自在の巻取りコア13であって、回転駆動するものである。この巻取りコア13は、回転駆動することによって、成膜装置6で表面処理されたガラスフィルム21と後述する充填フィルム20とが積層された積層フィルム22を巻き取る。
後に詳しく説明するが、充填フィルム20は、樹脂製の固体部材であって、長尺のシート状に成形されたフィルムである。
【0026】
図1に示すように、上述の構成を有するウェブ基材搬送装置1は、真空チャンバ5内に収容されている。真空チャンバ5は、内部が真空状態に減圧可能なチャンバである。真空チャンバ5は、内部が空洞の筺状に形成されており、内部を気密に保持するものである。この真空チャンバ5の下側には、真空ポンプが設けられており、この真空ポンプによって、真空チャンバ5の内部を真空状態または低圧状態にまで減圧することができる。
【0027】
ここで、ウェブ基材搬送装置1で用いられるガラスフィルム21と、このガラスフィルム21が巻回されたウェブ基材ロール24について説明する。
図2は、保護部材であるエッジタブ14が薄膜のガラスフィルム21の長手方向に沿った両端に装着された薄膜のガラスフィルム21を示している。エッジタブ14は、長尺のテープ状に形成された部材であり、ガラスフィルム21の長手方向に沿った両端の長さと略同じ長さである。また、エッジタブ14は、フレキシブルな樹脂材料などで成形されている。そのため、エッジタブ14はガラスフィルム21と共に巻取りコア13(ローラ)に巻き取られることが可能となっている。
【0028】
以下、エッジタブ14の構成を詳しく説明する。なお、
図2の紙面に向かって紙面の上下方向を、エッジタブ14の上下方向とし、同様に紙面に向かって紙面の左右方向を、エッジタブ14の左右方向とする。なお、説明を判り易くするため、
図2は紙面の左右方向にくらべて、上下方向は大きく拡大して表記してある。
図2に示すように、エッジタブ14が装着されたガラスフィルム21をエッジタブ14の長手方向に対して垂直に切断すると、ガラスフィルム21の両端部にエッジタブ14が装着された切断面が得られる。この切断面(断面)のうち、右側のエッジタブ14の断面に注目して、エッジタブ14の構成を説明する。
【0029】
エッジタブ14は、ガラスフィルム21の長手方向に沿った両端を支持する支持部15と、この支持部15から突出する突出部17とで構成されている。エッジタブ14の幅(
左右方向)は、特に限定されないが、10〜20mm程度とする。
まず、支持部15は、ガラスフィルム21の右側端部の上面と下面を支持する2本のアーム状の部材(スペーサー部16)を有している。2つのスペーサー部16は、ガラスフィルム21の上面と下面にそれぞれ接している。スペーサー部16の上下方向の高さ(肉厚)は、ロールに巻けるだけの柔軟性が確保でき、且つロールに巻いた際のガラスフィルム21相互の接触を防止できる厚みであれば良い。例えば、ガラスフィルム21の厚さが50μm〜200μm程度であれば、スペーサー部16の厚みは25μm〜100μm程度の範囲である。このように形成された2つのスペーサー部16は、ガラスフィルム21の右端部の上下面及び側面に密着するように接して、ガラスフィルム21の右端部を覆っている。また、これら2つのスペーサー部16は、右側で互いに連結されている。
【0030】
次に、突出部17は、支持部15が形成する開口の反対側に形成されている。
図2に示すように、突出部17は、ガラスフィルム21の幅方向に沿って延びるように、支持部15から右方向に突出している。
このように、エッジタブ14の断面形状は、Y字形状又はスパナといった、一端が枝分かれして開口を形成しており、支持部15がガラスフィルム21の右端部を支持することとなる。
【0031】
図2に示すような断面形状を有する、エッジタブ14は、ガラスフィルム21の長手方向に沿って端部を挟むように、長尺な薄い樹脂製のテープをガラスフィルム21の上面と下面に貼り合わせることで形成されている。例えば、ガラスフィルム21の長手方向に沿って、長尺な樹脂製テープの幅の約半分をガラスフィルム21の端部の下面側貼り付ける。その後、同じくガラスフィルム21の長手方向に沿って、別の長尺な樹脂製テープの幅の約半分をガラスフィルム21の端部の上面側貼り付ける。この2本の長尺な樹脂テープのうちガラスフィルム21に貼り付けられていない残りの半分を互いに貼り合わせる。こうすることで、2本のテープが互いの幅の約半分でガラスフィルムの端部の上下面を挟む支持部15と、2本のテープの残りの幅が一体となった突出部17とが形成される。従って、エッジタブ14は、2本のテープといった複数の部材が一体となって構成されるものとなる。エッジタブ14の支持部15と突出部17とが単一の部材で一体に形成されていてもよい。
【0032】
なお、
図2の断面図において左側に示すエッジタブ14の構成は、既に説明した右側のエッジタブ14の構成と同じであるので、その説明を省略する。
左右端部にエッジタブ14が装着されたガラスフィルム21を巻回してウェブ基材ロール24を形成すると、エッジタブ14は、ガラスフィルム21の巻回によって渦巻き状に重ね合わされる。このとき、エッジタブ14は、支持部15のスペーサー部16が互いに重なり合うので、重なり合ったスペーサー部16の厚みが隣接するガラスフィルム21間に形成される空間(隙間又は空隙)となる。この隙間が形成されることによって、隣接するガラスフィルム21間の接触が無くなり、該ガラスフィルム21ひいては、ウェブ基材ロール24の破損を防ぐことができる。
【0033】
なお、ここまではエッジタブ14を長尺のものとして説明したが、このエッジタブ14をガラスフィルム21の左右端部の長さよりも短い寸法となるように形成してもよい。例えば、エッジタブ14をガラスフィルム21の端部の全長の半分よりも若干短いものとして形成し、この短いエッジタブ14を2本ずつ、ガラスフィルム21の長手方向に並べてガラスフィルム21の左右端部に装着してもよい。また、さらに短く形成されたエッジタブ14を、ガラスフィルム21の左右端部に所定の間隔を空けて複数個装着してもよい。
【0034】
短いエッジタブ14を用いた場合でも、ガラスフィルム21の巻回によってエッジタブ14が重ね合わされて支持部15のスペーサー部16が重なり合い、この重なり合ったスペーサー部16の厚みが隣接するガラスフィルム21間に隙間を形成するので、長尺のエッジタブ14を用いた場合と同様の作用効果が期待できる。この隙間によって、隣接するガラスフィルム21間の接触が無くなり、該ガラスフィルム21ひいては、ウェブ基材ロール24の破損を防ぐことができる。
【0035】
しかしながら、エッジタブ14を装着したウェブ基材ロール24を真空チャンバ5のガ
ラスフィルム21搬送装置1に取り付けて復圧を行うと、復圧時の気流の流れによって、ガラスフィルム21間の隙間にパーティクルなどが侵入するトラブル(以降、異物侵入又はコンタミの混入と呼ぶこともある)が発生したりする。これらは、「発明が解決しようとする課題」で説明したとおりである。
【0036】
そこで、
図3に示すように、本実施形態によるウェブ基材搬送装置1で用いるウェブ基材ロール23は、ガラスフィルム21を保護し、ひいてはウェブ基材ロール23を保護する充填フィルム20を、エッジタブ14によってガラスフィルム21間に形成された隙間に有することを特徴としている。
本実施形態において、ガラスフィルム21間の隙間に介在する充填フィルム20は樹脂製の固体部材であって、長尺のシート状に成形された充填フィルム20である。充填フィルム20の長さは、ガラスフィルム21とほぼ同様の長さ(例えば100m以上)である。充填フィルム20の幅は、ガラスフィルム21の幅より若干狭い。
【0037】
図3に示すように、充填フィルム20の幅(h)は、ガラスフィルム21の左右両端部に装着された一対のエッジタブ14と重なることなく、該一対のエッジタブ14の間に嵌り込むように積層可能な幅(H)以下である(H≧h)。充填フィルム20の幅がHより大幅に狭いと、当該箇所には隙間ができ、パーティクル等が侵入することになる。この隙間の幅は2.5mm未満、より好ましくは1mm未満にする。このため、充填フィルムの幅hは、エッジタブの間のスペースHに対して、H−hが5mm未満、好ましくは2mm未満であることが必要である。
【0038】
充填フィルム20の肉厚は、エッジタブ14がガラスフィルムの表裏に貼り付けられた(積層された)スペーサー部の厚みの合計値と同等か、あるいは積層されたスペーサー部の厚みよりも肉厚とされる必要がある。例えば、50μmの厚みのスペーサー部を有するエッジタブ14の場合は、充填フィルム20の厚みは100μm以上となる。なお、
図3は、厚い肉厚を有する充填フィルム20を示している。
【0039】
この充填フィルム20は、ガラスフィルム21に重ね合わされて巻き取られるものであるため、柔軟性に富みつつ、外部からの衝撃に耐えられる材料である。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の高分子材料(樹脂フィルム)が用いられる。また、軟質の金属箔や紙などであってもよい。この充填フィルム20は、わずかな粘着性をその表面に有していると良い。これは、万一、パーティクルがガラスフィルムに付着して来た場合に、次にガラスフィルムが巻き出されるときに、充填フィルム側に当該パーティクルを吸着し、付着物のない状態でガラスフィルムを巻きだすことができるからである。
【0040】
エッジタブ14が装着されたガラスフィルム21に充填フィルム20を重ね合わせて巻回すれば、ガラスフィルム21と充填フィルム20が交互に重ね合わされたウェブ基材ロール23が形成される。言い換えれば、ウェブ基材ロール23は積層されたガラスフィルム21間に充填フィルムが介在されているものである。
このウェブ基材ロール23を側面から見ると、
図3のA−A断面図に示すようにガラスフィルム21が渦巻き状に巻回され、ウェブ基材ロール23が形成される。詳しくは、
図3の左側に示すように、巻取り部4に備えられた巻取りコア13が回転し、充填フィルム20が重ね合わされたガラスフィルム21が巻回される。このガラスフィルム21は、巻取りコア13を中心にして、内周方向から外周方向に向かって、充填フィルム20とガラスフィルム21が交互に重ね合わされて巻回される。
【0041】
図4は、
図3に示されているエッジタブ14が装着されたウェブ基材ロール23近傍の拡大図である。
図4に示すように、充填フィルム20の肉厚(t)は、上側のエッジタブ14のスペーサー部16の厚み(a)と下側のエッジタブ14のスペーサー部16の厚み(b)を合わせた厚み(a+b)よりも厚く成形されている(t>a+b)。これにより、隣接するエッジタブ14が離間している状態となり、エッジタブ14間に隙間が形成される。
【0042】
また、充填フィルム20の肉厚(t)は、上側のエッジタブ14のスペーサー部16の厚み(a)と下側のエッジタブ14のスペーサー部16の厚み(b)を合わせた厚み(a
+b)とほぼ同じ厚さに成形してもよい(t=a+b)。それにより、充填フィルム20が、ウェブ基材ロール23の内部に隙間なく充填される。
このように、ウェブ基材ロール23の内部におけるガラスフィルム21間の隙間は、固体の充填材20である充填フィルム20によって満たされるので、ウェブ基材ロール23の内部において空気を含む空間が殆ど存在しなくなる。本実施形態によるウェブ基材ロール23は、真空・減圧状態から復圧した場合にパーティクルを含む空気が流入する空間が存在しない、いわば稠密な構成となることで、パーティクル、コンタミが復圧時に大気とともにロール内部に流れ込むことを防止できるものとなっている。より厳密に言うと、充填フィルム幅が、エッジタブ間の間隔に比べてわずかに狭い場合には、エッジタブと充填フィルムの間に露出するガラスフィルムの前にはわずかに空間ができるため当該箇所は不可避に汚染されるのであるが、ガラスフィルのエッジタブの直近部は何れにしても健全な皮膜形成は難しい箇所であるため、実質的な問題には至らない。
【0043】
さらに副次的な効果として、ウェブ基材ロール23の内部におけるガラスフィルム21間の隙間は、固体の充填材20である充填フィルム20によって満たされるので、ウェブ基材ロールの外部の圧力が復圧により急速に上昇させても、ウェブ基材ロールが内外の圧力差によりダメージを受けることがなくなる。このためチャンバの復圧の速度を上げることも可能となる。
【0044】
以下、本発明のウェブ基材搬送装置1及びこのウェブ基材搬送装置1を用いたウェブ基材ロール23の形成方法を具体的に述べる。
上述したウェブ基材搬送装置1を用いたガラスフィルム21の搬送方法について説明する。なお、ウェブ基材搬送装置1にウェブ基材ロール24を設置するなど、ガラスフィルム21の搬送を実施するための前工程の説明は省略する。
【0045】
図1に示すように、真空チャンバ5内の左側上方には、回転自在の巻出しコア12で構成された巻出し部2が配置されている。巻出し部2には、上述したようなエッジタブ14が装着されたガラスフィルム21を巻回した巻出しコア12、すなわち、ウェブ基材ロール24が設置されている。巻出し部2のウェブ基材ロール24から、巻出しコア12の回転にともなってガラスフィルム21が巻き出される。巻出されたガラスフィルム21は、成膜部3に搬送される。
【0046】
搬送されたガラスフィルム21は、成膜部3に備えられた成膜ロール7の外周面に巻きかけられつつ、表面処理が施される。
本実施形態の成膜部3としては、真空チャンバ5内の中央より下側に、例えば、ガラスフィルム21の表面に対してスパッタ法による成膜を実施する成膜装置6が設けられている。スパッタ成膜部は、
図1に示すように、巻き出されたガラスフィルム21を搬送する成膜ロール7と、皮膜形成を行うスパッタ蒸発源8とを有している。スパッタ蒸発源8は、成膜ロール7で搬送されるガラスフィルム21と対向するように、図では2台配置されている。スパッタ蒸発源8は、ガラスフィルム21の表面に堆積させる成分で構成されたターゲットを装着しており、周知のとおりマグネトロン放電によって蒸発した成分がガラスフィルム21の表面へ導かれて堆積する。
【0047】
このように、成膜部3で表面処理されたガラスフィルム21は、成膜ロール7の右側上方にある充填フィルム供給部9(詳細は後述する)へ搬送される。充填フィルム供給部9では、積層ローラ10に巻き付けられた充填フィルム20上に成膜ロール7から搬送されたガラスフィルム21を重ね合わせて、積層フィルム22を形成している。この積層フィルム22は、積層ローラ10を経て、巻取り部4へ搬送される。
【0048】
巻取り部4は、真空チャンバ5内の右側上方に配置され、回転自在の巻取りコア13で構成されている。この巻取り部4は、アクチュエータなどによって、巻取りコア13の回転軸を中心に回転運動することで、エッジタブ14を装着した積層フィルム22を巻き取る。すなわち、搬送された積層フィルム22を巻取り部4の巻取りコア13で巻回し、エッジタブ14付きのウェブ基材ロール23が形成される。
【0049】
図3の断面A−Aに示すように、巻取り部4にて巻き取られた状態のウェブ基材ロール23の内部は、充填フィルム20によって満たされる。その結果、ガラスフィルム表面へ
のパーティクルの付着防止が実現できるようになっている。
ところで、本実施形態のウェブ基材搬送装置1は、ガラスフィルム21間に充填材20(充填フィルム)を介在させつつウェブ基材ロール23へと巻回するために、充填フィルム供給部9を有している。
【0050】
充填フィルム供給部9は、巻取り部4と成膜ロール7との間に配置され、積層ローラ10と充填フィルム供給ローラ11とで構成されている(
図1参照)。積層ローラ10は、円筒状又は円柱状に形成された部材であり、ガラスフィルム21と充填フィルム20とを積層させるものである。積層ローラ10は、真空チャンバ5の左右方向において、成膜ロール7の右端よりも真空チャンバ5の中央寄り、つまり、成膜ロール7の回転軸寄りに配置されている。充填フィルム供給ロール11は、巻芯に巻かれた充填フィルム20を供給するものである。充填フィルム供給ロール11は、真空チャンバ5の左右方向において、所定の間隔を空けて積層ローラ10の右側に配置されている。
【0051】
このように構成された充填フィルム供給部9では、充填フィルム供給ローラ11から巻き出された充填フィルム20と成膜処理後のガラスフィルム21を積層ローラ10上で積層している。このように充填フィルム20と重なり合ったガラスフィルム21は、積層フィルム22として巻取り部4へ搬送され、ウェブ基材ロール23として形成される。
ところで、上述の実施形態では、巻出し部2に、充填フィルム20を備えないウェブ基材ロール24を設置した場合を説明した。しかし、充填フィルム20を介在させたウェブ基材ロール23を巻出し部2に設置してもよい。その場合、ガラスフィルム21を成膜ロール7へ供給する前にガラスフィルム21から充填フィルム20を離脱させなければならない。この充填フィルム20の離脱のためには、本実施形態のウェブ基材搬送装置1に充填フィルム回収部を設ければよい。
【0052】
充填フィルム回収部は、巻出し部2と成膜ロール7との間に配置されたガイドローラ19に代わり同じ位置に配置した分離ローラ(図の位置、形状は同じで同じ19で表記する)と充填フィルム回収ローラ(図示せず)とで構成されている。分離ローラ19は、積層ローラ10とほぼ同様の構成を有する円柱状又は円筒状の部材であって、積層フィルム22をガラスフィルム21と充填フィルム20とに分離するものである。
【0053】
このように構成された充填フィルム回収部は、巻出し部2から巻出された積層フィルム22を、成膜部3に搬送する前にガラスフィルム21と充填フィルム20とに分離し、分離された充填フィルム20を充填フィルム回収ローラに巻回して回収すると共に、ガラスフィルム21を成膜部3へ搬送している。詳しくは、分離ローラ19では、巻出し部2から搬送された積層フィルム22を充填フィルム側で接するように分離ローラ19に巻き掛けて、充填フィルムを充填フィルム回収ローラで引っ張り、ガラスフィルム21を成膜ロール7で引っ張ることによって、ガラスフィルム21と充填フィルム20とを分離する。このようにして、分離されたガラスフィルム21は、成膜ロール7に搬送されて表面処理が施され、一方、分離された充填フィルム20は、充填フィルム回収ローラに搬送されて巻き取られる。
【0054】
以上より、本発明のウェブ基材搬送装置1では、巻出されたガラスフィルム21に表面処理が実施され、表面処理されたガラスフィルム21に充填フィルム20が積層される。このガラスフィルム21にはエッジタブ14が装着されているので、ガラスフィルム21間にエッジタブ14より肉厚の充填フィルム20を積層することで、復圧時のガラスフィルム21のパーティクルによる汚染を防ぐことができるウェブ基材ロール23が形成される。
[第2実施形態]
次に、図を参照して、本発明の第2実施形態によるウェブ基材搬送装置1及びチャンバ5について説明する。
【0055】
第2実施形態で用いられるウェブ基材搬送装置1及びチャンバ5は、
図1に示す第1実施形態の搬送装置1及びチャンバ5とほぼ同じ構成を有しているが、巻取り部4の構成が異なる。また、本実施形態によるウェブ基材搬送装置1は、チャンバ5内を復圧する際の復圧速度を制御する復圧制御部を有している。本実施形態によるウェブ基材ロール25の
構成も、第1実施形態で説明したウェブ基材ロール23の構成とは異なる。まず、本実施形態によるウェブ基材ロール25の構成から説明する。
【0056】
図5は、第2実施形態に係るウェブ基材搬送装置1で形成されたウェブ基材ロール25の断面を示している。
図5に示すように、第2実施形態で用いられるウェブ基材ロール25は、第1実施形態で用いられるガラスフィルム21の左右端部にエッジタブ14が装着されたウェブ基材ロール23と略同じであるが、このウェブ基材ロール25内部に形成される隙間に充填フィルム20が設けられていない点が大きく異なっている。
【0057】
このウェブ基材ロール25は、ガラスフィルム21の巻回によって、エッジタブ14が渦巻き状に重ね合わされる。このとき、ウェブ基材ロール25の径方向において隣り合うエッジタブ14は、支持部15のスペーサー部16で互いに重なり合うので、重なり合った支持部15の厚みによって、隣接するガラスフィルム21間に隙間が形成される。第2実施形態では、このように形成された隙間に供給する充填材20として、流体の一種である清浄な気体(例えば、空気、窒素、アルゴン等)を採用している。
【0058】
次に、本実施形態によるウェブ基材搬送装置1の構成を説明する。本実施形態では充填材20として気体を採用しているので、ウェブ基材搬送装置1には、表面処理されたガラスフィルム21に充填フィルム20を貼り合わせる充填フィルム供給部9が設けられていない。
本実施形態によるウェブ基材搬送装置1において、巻取り部4に設置される巻取りコア13は、円筒状のローラである。このローラの内部は、該ローラの軸心方向に沿って真っ直ぐに貫通する空洞となっている。この巻取りコア13の外周面には、このコア内の空洞に送られた気体の充填材(気体充填材)20を、コア外部(ウェブ基材ロール25の内部)に送出するスリット状又は孔状の開口部が備えられている。
【0059】
この巻取りコア13の空洞内に気体充填材20が送られると、気体充填材20は巻取りコア13の外周面に形成された開口部を通過して、ウェブ基材ロール25のガラスフィルム21間に形成された隙間に供給される。
また、本実施形態によるウェブ機材搬送装置1が有する復圧制御部は、真空チャンバ5の内又は外に設置されるものであり、真空チャンバ5の復圧の際に、真空チャンバ5内部の復圧のための気体の供給量と、ウェブ基材ロール25のガラスフィルム21間の隙間への巻取りコア13を介した気体の供給量と、を調整することで、真空チャンバ5内部の圧力が、ウェブ基材ロール25内部(ガラスフィルム21間の隙間)の圧力よりも高くならないように制御する。このようにすることで、ウェブ基材ロール25内部へ真空チャンバ側からの気体(大気)の流入を防ぐものである。
【0060】
このような巻取りコア13、巻出しコア12及び復圧制御部の構成と、エッジタブ14が装着されたウェブ基材ロール25内部の隙間に気体充填材20を充填する点が、第2実施形態の特徴である。
以下に、巻取り部4にガラスフィルム21を巻き取った場合に注目して、真空チャンバ5内の復圧過程について説明する。
【0061】
まず、真空状態の真空チャンバ5内で、表面処理されたガラスフィルム21を上述の開口部を備える巻取りコア13に巻回して、エッジタブ14が装着されたウェブ基材ロール25が形成される。このとき、ガラスフィルム21の巻回によってエッジタブ14が重ね合わされ、スペーサー部16の厚みに相当する隙間がガラスフィルム21間に形成される。
【0062】
次に、このウェブ基材ロール25を取り出すために、真空チャンバ5内に外部の空気を送り込み、真空チャンバ5内を大気圧に復圧する。外部から空気が送り込まれると真空チャンバ5内は復圧するが、真空チャンバ5内の復圧速度に対して、ウェブ基材ロール25内部の隙間の復圧速度が遅いため、そのままではウェブ基材ロール25内部は復圧しつつある真空チャンバ5内よりも低圧となる。このため、従来のエッジタブ14付きウェブ基材ロール25は真空チャンバ5内の空気を吸引し、空気中に含まれるパーティクルがウェブ基材ロールに侵入する。
【0063】
そこで、第2実施形態では、気体充填材20を巻取りコア13からウェブ基材ロール2
5内部の隙間へ供給し、ウェブ基材ロール25内の隙間を清浄な(パーティクルを含まない)気体充填材20で満たすようにする。
具体的には、気体充填材20が巻取りコア13内部の空洞に送られると、巻取りコア13に備えられたスリット状の開口部を通じて、ウェブ基材ロール25内部の隙間に気体充填材20が供給される。供給された気体充填材20は、渦巻き状に形成された隙間に沿って入り込む。このようにすると、ウェブ基材ロール25の隙間に気体充填材20が満たされる。
【0064】
このとき、復圧制御部は、ウェブ基材ロール25内部の復圧速度に応じて、真空チャンバ5内に送る気体(大気)の供給量を調整する。復圧制御部の制御に従って、巻取り部4は、巻取りコア13を介してウェブ基材ロール25内部の隙間に気体充填材20を供給する。このようにすると、ウェブ基材ロール25の内部に真空チャンバ5を復圧する気体(大気)は侵入せず、この気体に含まれるパーティクルがウェブ基材ロールの内部に侵入して、ガラスフィルム21の表面に付着することが無くなる。
【0065】
図5のB−B断面図は、上記のようにして復圧したウェブ基材ロール25の様子を示している。
なお、第2実施形態で用いられている気体充填材20は、気体内の微細なパーティクルなどが排除され、気体内が清浄された流体である。気体を清浄するには、例えば、ウェブ基材ロール25に吹き込む前の気体充填材20を清浄フィルタなどに通過させて、気体内に含有される微細なパーティクルなどを取り除く方法がある。
【0066】
真空チャンバ5内を復圧する際に、適切にウェブ基材ロール25内部の隙間に気体充填材20を供給することによって、ウェブ基材ロール25内部へのパーティクルなどの汚染侵入を防止することもできる。
[第3実施形態]
次に、図を参照して、本発明の第3実施形態によるウェブ基材搬送装置1について説明する。
【0067】
図6は、ウェブ基材搬送装置1に設けられたサブチャンバ18と、サブチャンバ18に包囲されたウェブ基材ロール25の側面を示している。
本実施形態によるウェブ基材搬送装置1は、第2実施形態によるウェブ基材搬送装置1に、巻取り部4を取り囲むように収容するサブチャンバ18を設けている。
なお、第2実施形態で用いられている巻取りコア13では、内部が空洞となって気体の充填材20が供給されるが、本実施形態で用いる巻取りコア13は、第1実施形態と同じく内部が中実の円柱状のローラであってもよい。
【0068】
図6に示すように、第3実施形態で用いられるウェブ基材ロール25は、第2実施形態で用いられたエッジタブ14付きのウェブ基材ロール25である。
このようなウェブ基材ロール25が形成される巻取り部4のそれぞれを包囲するように覆うサブチャンバ18が設けられている。
サブチャンバ18は、内部が空洞の筺状に形成されており、真空チャンバ5内においてサブチャンバ18内部を実質的に真空チャンバ5の他の部位から隔離できるものである。復圧時に、サブチャンバ18内部には清浄な充填気体が供給され、充填材20としてこの充填気体をウェブ基材ロール25の内部の隙間に供給する。同時にサブチャンバ18の内部の圧力を真空チャンバ5内部より高く維持することで、真空チャンバ5からのパーティクルを含む大気の侵入を防止する。
【0069】
また、サブチャンバ18は、内部に格納されたウェブ基材ロール25のガラスフィルム21が通過可能な開口としてスリットを有していて、スリットは、ガラスフィルム21は通過させると共に、サブチャンバ18と真空チャンバ内の空間との雰囲気の交わりを抑制することができる。
以下に、巻取り部4を覆うサブチャンバ18に注目して、真空チャンバ5内の復圧過程について説明する。
【0070】
巻取り部4に形成されたウェブ基材ロール25を取り出すために、真空チャンバ5内を大気圧に復圧する。この際にサブチャンバ18には、パーティクルを含まない清浄な気体
が供給される。と同時に真空チャンバ5内を大気圧に復圧するために、外部から真空チャンバ5内に空気が送り込まれるが、このとき、常にサブチャンバ18内の圧力が真空チャンバ5内の圧力より高くなるようにサブチャンバ18への清浄な気体の供給量と真空チャンバ5への大気導入量の何れか又は両方が制御される。サブチャンバ18内と真空チャンバ5を連通する箇所は、スリット部であるが、スリット部はガラスフィルムは通過させ一方で雰囲気の交わりを抑制するように狭く形成されており、真空チャンバ内のパーティクルを含む雰囲気はサブチャンバ18内には侵入しない。加えて、サブチャンバ18内の圧力が真空チャンバ5内の圧力より高くなっているので、スリット部にはサブチャンバ189から真空チャンバ5に向かう清浄気体の流れがあり、これがさらにサブチャンバ18への大気の流入を防ぐ。
【0071】
このようにサブチャンバ18内には、パーティクルを含む復圧過程の真空チャンバ内の大気が侵入することは無く、清浄な気体のみが供給される。サブチャンバ18内の清浄な気体は、ウェブ基材ロール25内の隙間に供給され、時間をかけ最終的には大気圧になる。つまり、サブチャンバ18内に導入された清浄な気体は、気体の充填材20としてウェブ基材ロール25内部に形成された渦巻き状の隙間に沿って入り込む。このようにウェブ基材ロール25内部の隙間に気体の充填材20が満たされると、この後ウェブ基材ロール25をサブチャンバ18から取り出しても、汚染物が侵入することはない。
【0072】
このように、サブチャンバ18は、真空チャンバ5内の雰囲気よりも、遥かに清浄な雰囲気に維持できる領域である。サブチャンバ18内には、真空チャンバ5内のように、パーティクルを発生させる成膜源などが存在しないことに加えて、実質的にウェブ基材ロール25のみが存在する狭い閉じた領域であるためである。この領域の存在によって、ウェブ基材ロール25内部に気体の充填材20が供給されるときに、パーティクルの侵入を防ぐことが可能である。ウェブ基材ロール25を取外す際には、内部には清浄な気体の充填材20が満たされており、内部にパーティクルが侵入する余地は無い。
【0073】
さらに、サブチャンバ18はウェブ基材ロール25を内部に保持したまま、組合せた状態で成膜装置1から取外し可能であることも好ましい実施の形態である。このようにするとウェブ基材ロール25は、清浄な気体でみたされたサブチャンバ内に収納された状態で、保管や移動が可能となる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、動作条件や測定条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。