(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021510
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】熱中性子吸収膜の被覆装置、その方法及び溶融炉心物の回収方法
(51)【国際特許分類】
G21F 3/00 20060101AFI20161027BHJP
G21C 9/016 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
G21F3/00 Z
G21C9/00 H
G21F3/00 E
G21F3/00 N
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-177449(P2012-177449)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-35297(P2014-35297A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石渡 裕
(72)【発明者】
【氏名】藤田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 研一
(72)【発明者】
【氏名】林 大和
【審査官】
山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−298191(JP,A)
【文献】
特開2003−139892(JP,A)
【文献】
特開2006−177697(JP,A)
【文献】
特開2007−139605(JP,A)
【文献】
特開平08−225916(JP,A)
【文献】
特開平08−319553(JP,A)
【文献】
特開2007−191780(JP,A)
【文献】
特公昭39−018481(JP,B1)
【文献】
実開昭61−024695(JP,U)
【文献】
特開平08−292284(JP,A)
【文献】
特開2013−205359(JP,A)
【文献】
特表2009−520876(JP,A)
【文献】
特開2012−225749(JP,A)
【文献】
特開2013−234918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 3/00
G21C 9/016
G21C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱中性子吸収断面積が100バーン以上の元素を主成分とする粒状物質及びこの粒状物質を冷却水で覆われている溶融炉心の表面に固定化させる無機バインダの混合物を供給する供給手段と、
前記供給された混合物を前記冷却水で覆われている溶融炉心の表面に放出させるノズルと、を備え、
前記供給手段は、前記無機バインダを硬化させる硬化手段を供給する硬化部を有し、
前記無機バインダは、珪酸ソーダを主成分とした物質が用いられていることを特徴とする熱中性子吸収膜の被覆装置。
【請求項2】
前記ノズルは、圧力ガスにより前記混合物を前記溶融炉心の表面に噴霧させる請求項1に記載の熱中性子吸収膜の被覆装置。
【請求項3】
前記供給手段は、前記粒状物質及び前記無機バインダを混練して前記混合物にする混練部を有する請求項1又は請求項2に記載の熱中性子吸収膜の被覆装置。
【請求項4】
前記溶融炉心の表面に形成された熱中性子吸収膜の表面に耐環境性物質を含む保護被膜を形成させる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱中性子吸収膜の被覆装置。
【請求項5】
前記粒状物質の主成分は、ガドリニウム、ガドリニウム化合物、ホウ素、ホウ素化合物の群の中から少なくとも一つ選択されたものである請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱中性子吸収膜の被覆装置。
【請求項6】
前記ガドリニウム化合物は酸化ガドリニウムであり前記ホウ素化合物は炭化ホウ素である請求項5に記載の熱中性子吸収膜の被覆装置。
【請求項7】
前記硬化手段はセメントである請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の熱中性子吸収膜の被覆装置。
【請求項8】
前記ノズルは、前記溶融炉心側に開口を有するチャンバの内側に設けられている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の熱中性子吸収膜の被覆装置。
【請求項9】
前記供給手段は、前記チャンバの内側をパージするパージガスも供給する請求項8に記載の熱中性子吸収膜の被覆装置。
【請求項10】
熱中性子吸収断面積が100バーン以上の元素を主成分とする粒状物質及びこの粒状物質を冷却水で覆われている溶融炉心の表面に固定化させる無機バインダの混合物を供給するステップと、
前記供給された混合物を前記冷却水で覆われている溶融炉心の表面に放出させるステップと、
前記無機バインダを硬化させる硬化手段を供給するステップと、を含み、
前記無機バインダは、珪酸ソーダを主成分とした物質が用いられていることを特徴とする熱中性子吸収膜の被覆方法。
【請求項11】
請求項10に記載の熱中性子吸収膜の被覆方法を用いて再臨界を防止することを特徴とする溶融炉心物の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、熱中性子を吸収すると核分裂を生じさせる対象物の表面に熱中性子吸収膜を被覆する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所においてシビアアクシデントが発生すると、炉心の冷却が不充分となり、炉心溶融に至る場合がある。炉心溶融により燃料形状が変化すると、原子炉が停止した状態であっても再臨界が起きる可能性が否定できない。この再臨界が起きると、原子炉圧力容器、格納容器、原子炉建屋の損傷を引き起こし、放射性物質が環境に放出される恐れがある。したがって、シビアアクシデントの発生後に再臨界の防止策をとることは、放射性物質の封じ込めの観点から重要である。
【0003】
一方、炉心溶融が生じた場合は、冷温停止させた後に溶融炉心を圧力容器及び格納容器から搬出し、キャスク等の長期保管容器内に密閉する必要がある。しかし、この溶融炉心は、圧力容器や格納容器と溶融・反応して一体化していることが想定され、搬出のために炉内で切断・分割する必要のある場合がある。
【0004】
ところで、冷温停止状態であっても、溶融炉心内において極小規模の核分裂は起こっていると考えられる。この核分裂で発生する高速中性子は水によって減速され、次の核分裂を引き起こす熱中性子になる。
通常、圧力容器や格納容器の内部には、冷却水が存在しているために、溶融炉心の切断作業は、水に浸された状態で行うことが考えられる。
したがって、溶融炉心を切断・分割すると、切断面に水が接触し、核分裂反応が活発化して再臨界に達する想定が成り立つ。
【0005】
そこで、切断・分割した溶融炉心の切断面を熱中性子吸収膜で被覆することが考えられる。切断面はもとより複雑な形状の溶融炉心を広範囲に亘り被覆することで、核分裂反応を効果的に抑制することが可能になる。
放射線を吸収し遮蔽する技術として、表面にホウ化物をコーティングした直径0.2〜2mmの球状の鉛粉を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、金属アルミニウム粉末と炭化ホウ素(B
4C)粉末とを溶射により金属基材の表面にコーティングしておく技術が提案されている(例えば、特許文献2)。
さらに、無機コア粒子(放射線の吸収・遮蔽材)の表面を有機ポリマーで被覆した複合微粒子を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−7510号公報
【特許文献2】特開2007−290017号公報
【特許文献3】特開2008−81728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記した特許文献1の遮蔽材では、主成分の鉛粉により熱中性子を遮蔽・吸収できず、熱中性子の遮蔽効果を有するホウ化物は、鉛粉を被覆する程度なので、中性子吸収効果を得るのには量的に不十分である。
また、前記した特許文献2の技術では、炭化ホウ素は炉心溶融温度に到達する以前に熱分解してしまい、また溶射によりホウ素単体を金属表面にコーティングすることは不可能である。
さらに、前記した特許文献3の技術では、ポリマー粒子を固めてブロック形状やシート形状の製品を作ることは容易であるが、溶融炉心の表面を被覆することは困難である。
【0008】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、水中環境であっても複雑な表面形状を有する対象物に熱中性子吸収膜を被覆する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
熱中性子吸収膜の被覆装置において、熱中性子吸収断面積が100バーン以上の元素を主成分とする粒状物質及びこの粒状物質を冷却水で覆われている溶融炉心の表面に固定化させる無機バインダの混合物を供給する供給手段と、前記供給された混合物を前記冷却水で覆われている溶融炉心の表面に放出させるノズルと、を備え、前記供給手段は、前記無機バインダを硬化させる硬化手段を供給する硬化部を有
し、前記無機バインダは、珪酸ソーダを主成分とした物質が用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る熱中性子吸収膜の被覆装置の第1実施形態を示すブロック図。
【
図2】(A)熱中性子を吸収すると核分裂を生じさせる対象物の表面に熱中性子吸収膜を被覆した状態を示す断面図、(B)熱中性子吸収膜の表面にさらに耐環境性物質を含む保護被膜を形成させた状態を示す断面図。
【
図3】各実施形態において粒状物質の主成分として採用することができる元素の一覧表。
【
図4】第2実施形態に係る熱中性子吸収膜の被覆装置に適用されるノズルの部分拡大図。
【
図5】本発明に係る溶融炉心物の回収方法の実施形態を説明する説明図。
【
図6】本発明に係る溶融炉心物の回収方法の実施形態を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように第1実施形態に係る熱中性子吸収膜の被覆装置10は、熱中性子吸収断面積が100バーン以上の元素を主成分とする粒状物質31及びこの粒状物質31を対象物30の表面に固定化させるバインダ32の混合物15を供給する供給手段20と、供給された混合物15を対象物30の表面に放出させるノズル11と、を備えている。
【0012】
図2(A)は、熱中性子を吸収すると核分裂を生じさせる対象物30の表面に熱中性子吸収膜33を被覆した状態を示す断面図である。
図2(B)は、熱中性子吸収膜33の表面にさらに耐環境性物質を含む保護被膜34を形成させた状態を示す断面図である。
【0013】
ノズル11は、例えばスプレイガンであって、圧力ガスにより粒状物質31とバインダ32の混合物15を対象物30の表面に噴霧させる。これにより、対象物30の表面に空隙の少ない良好な熱中性子吸収膜33を形成すことができる。
また混合物15は、圧力ガス等の圧力により噴霧されることに限定されるものでなく、重力によりノズル11から放出されても良い。
【0014】
供給手段20は、粒状物質31とバインダ32の混合物15を収容する収容部21と、この混合物15を噴霧させるガスコンプレッサ26と、バインダ32を硬化させる硬化手段を供給する硬化部27とを有している。
なお、収容部21には、収容されている混合物15をノズル11に導くホース12が接続され、ガスコンプレッサ26には圧力ガスをノズル11に導くホース13が接続され、硬化部27には硬化手段をノズル11に導くホース14が接続されている。
【0015】
この硬化手段は、バインダ32の種類に応じて種々のものが適用される。
例えば、バインダ32として珪酸ソーダ系(Na
2O・nSiO
2・mH
2O)の無機化合物が用いられる場合は、炭酸ガス、紫外線、セメント等の硬化手段を用いることができる。
また、水分により硬化するバインダである場合、硬化部27は、加湿気体を供給するものであり、UV硬化性のバインダである場合、硬化部27は、UVランプ等である。
このような硬化手段が供給されることにより、無機または有機バインダ32の硬化反応を制御して被覆と同時に熱中性子吸収膜33を対象物30の表面に固定化することができ、施工時間を著しく短縮し施工コストを抑えることができる。
【0016】
供給手段20はさらに、粒状物質31及びバインダ32を混練して混合物にする混練部23を備えることができる。
この場合、粒状物質31及びバインダ32は、それぞれ別々の容器24,25に保持され、適時、混練部23により攪拌混合しスラリー状にして収容部21に収容される。
この混練部23における攪拌混合は、対象物30の表面形状に応じて、混合物15が適正な粘度範囲となるように調整する。
【0017】
すなわち、対象物30の表面が入り組んでいる場合は、スラリーを低粘度に調整して、細部まで混合物15が浸透するようにする。逆にフラットに近い場合は、スラリーを高粘度に調整して、表面張力により混合物15が周囲に流動することを防止する。
これにより、
図2(A)に示すように、ほぼ一様な厚さで熱中性子吸収膜33が対象物30の表面に形成されるようにする。そして、この熱中性子吸収膜33には、バインダ32に粒状物質31が均一状態に分散している。
【0018】
図2(B)に示すように、対象物30の表面に形成された熱中性子吸収膜33の表面に対し、耐環境性物質を含む保護被膜34を形成する場合がある。
熱中性子吸収膜33を構成するバインダ32の成分によっては、水や温水と反応して溶出する物質があり、また溶融炉心から放出される中性子により劣化する物質もある。そこで、表面に保護被膜34を形成することにより、熱中性子吸収膜33の長期健全性を確保したり冷却水の汚染防止等を図ったりする。
【0019】
図3は、各実施形態において粒状物質31の主成分として採用することができる元素の一覧を示している。
熱中性子吸収断面積の大きい元素を含む粒状物質31が分散する熱中性子吸収膜33を溶融炉心等の対象物30の表面に形成することにより、少量でも効果的に熱中性子を吸収することができる。
これにより、熱中性子吸収膜33の厚さを増さなくても再臨界を防止でき、また施工コスト面も大きな効果が得られる。
【0020】
粒状物質31の主成分は、熱中性子吸収断面積、化学的安定性、入手性およびコスト等の観点から、酸化ガドリニウムまたは炭化ホウ素が好適である。
また、ガドリニウムとホウ素では、吸収する熱中性子のスペクトルが異なるために、溶融炉心から放出される熱中性子のスペクトルに応じて両者の組成を最適化することにより、再臨界を効果的に防止することができる。
【0021】
なお、酸化ガドリニウム及び炭化ホウ素は、2000℃以上の高融点であるために、溶融、溶射、焼結等の熱プロセスで対象物30の表面に固定化することが困難である。このために、バインダ32とともにノズル11から放出することにより、粒状物質31を対象物30の表面に安定的に固定する。
【0022】
粒状物質31の主成分は、酸化ガドリニウム、炭化ホウ素又はこれらの組み合わせに限定されるものではなく、ガドリニウム、ガドリニウム化合物、ホウ素、ホウ素化合物の群の中から選択して採用することができる。
さらに、本発明に適用できる中性子吸収元素としては、ボロン(B)、ガドリニウム(Gd)、ハフニウム(Hf)、エルビウム(Er)、銀(Ag)、インジウム(In)、カドミウム(Cd)、ユーロピウム(Eu)等の熱中性子吸収断面積が100バーン以上のものを例示することができる。
そして、これらの単体および化合物を複数組合せたものを主成分とした粒状物質31を適宜採用することができる。
【0023】
なお、粒状物質31は、10〜100μm範囲の粒子径の球状粒子が好ましい。この範囲を逸脱すると、バインダ32との混合物15の流動性、分散性、均質性、充填性等の諸性質のいずれかが、低下する場合がある。
【0024】
バインダ32は、水分と反応して硬化するシアノアクリレートや、紫外線で硬化する変性アクリレート等のビニルモノマーのような有機化合物を主成分とすることができる。
なお、有機化合物系のバインダ成分は、環境中の水分やUV照射により反応し、熱中性子吸収膜33が対象物30の表面に馴染む前に硬化する可能性があるので、外部環境と遮断して施工することが好ましい。
またバインダ32は、炭酸ガス、紫外線、セメント等で硬化する珪酸ソーダ系(Na
2O・nSiO
2・mH
2O)の無機化合物を主成分とすることができる。
【0025】
このようなバインダ32によれば、対象物30に被覆した直後は変形性に富むゲル状態であるため、複雑な表面形状に対し均一な熱中性子吸収膜33を形成することができる。
そして、このゲル状態が対象物30の表面に馴染んできたところで、熱プロセスを用いずに硬化させ、密着力が強固な熱中性子吸収膜33を得ることができる。
【0026】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る熱中性子吸収膜の被覆装置のノズル11の部分拡大図である。なお、
図4において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0027】
第2実施形態においてノズル11は、対象物30側に開口を有するチャンバ16の内側に設けられている。
対象物30が溶融炉心物である場合は、周辺が冷却水で覆われている。このように、対象物30の表面が濡れている場合は、熱中性子吸収膜33は、十分な密着力が得られないこともある。そのような場合の対処として、被覆施工に際し、チャンバ16を用い対象物30の表面の水分を除去する。
【0028】
そして、供給手段20(
図1)のガスコンプレッサ26は、このチャンバ16の内側をパージするパージガス17も供給する。
大気中における施工の場合は特に問題ないが、水中における施工の場合は、ノズル11から噴霧した混合物15の運動エネルギーが水の抵抗により減衰し、熱中性子吸収膜33の密着性や緻密性を損なうおそれがある。
チャンバ16の内側がガスでパージされることにより、ノズル11から混合物15が対象物30の表面に直接的に放出されるので、良好な熱中性子吸収膜33が形成される。
【0029】
図5及び
図6を参照して溶融炉心物の回収方法を説明する。
図5に示すように、原子力発電所においてシビアアクシデントが発生し、炉心溶融が生じた場合は、溶融・反応して原子炉構造物36と一体化した溶融炉心(対象物30)を冷温停止させた後に、搬出のために炉内で切断・分割する。
ところで、冷温停止状態であっても、溶融炉心(対象物30)の内部において極小規模の核分裂は起こっていると考えられる。このために溶融炉心(対象物30)を切断・分割した際の切断面35に冷却水18が接触すると、核分裂反応が活発化し再臨界に達するという想定が成り立つ。
【0030】
そこで、
図6に示すように、切断・分割した溶融炉心(対象物30)の切断面はもとより複雑な形状の溶融炉心を広範囲に亘り熱中性子吸収膜33で被覆し、核分裂反応を効果的に抑制する。
さらに溶融炉心に限らず、核燃料保管用のキャスクや、原子炉燃料の解体工事用機器・器具等を対象物30として熱中性子吸収膜33を形成することにより、再臨界の防止を強化することができる。
【0031】
なお熱中性子吸収膜33の厚さは、再臨界を防止するのに十分な厚さを確保する必要がある。この熱中性子吸収膜33の厚みが増すと表面張力により膜厚の維持が困難になるので、混合物15を放出と同時に硬化させる施工を実施することが好ましい。
もしくは、硬化させた熱中性子吸収膜33の上に積層させるように複数回にわたり施工を実施してもよい。
【0032】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の熱中性子吸収膜の被覆装置によれば、熱中性子吸収断面積が100バーン以上の元素を主成分とする粒状物質をバインダとともにノズルから対象物の表面に放出させることにより、複雑な表面形状を有する対象物であってもその再臨界を確実に防止することができる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0034】
10…被覆装置、11…ノズル、12,13,14…ホース、15…混合物、16…チャンバ、17…パージガス、18…冷却水、20…供給手段、21…収容部、23…混練部、24…粒状物質の容器、25…バインダの容器、26…ガスコンプレッサ、27…硬化部、30…対象物、31…粒状物質、32…バインダ、33…熱中性子吸収膜、34…保護被膜、35…切断面、36…原子炉構造物。