(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予め規定された開始条件が満たされたときに、測定対象についての物理量としての抵抗値を測定して抵抗値データを生成すると共に、前記抵抗値データの値を表示部に表示させる第1の処理、および前記抵抗値データの値と第1の比較値とを比較して比較結果を報知する第2の処理を実行する測定処理部を備えた抵抗測定装置であって、
前記測定処理部は、予め規定された第1の時間毎に生成した前記抵抗値データを用いての前記第1の処理の実行に先立ち、当該第1の時間よりも短い第2の時間内で生成した前記抵抗値データを用いて前記第2の処理を実行し、当該第2の処理において、前記抵抗値データの値が前記第1の比較値未満のときには、不良の旨を表示させずに、前記抵抗値データの値が前記第1の比較値以上のときには、前記測定対象が良好である旨を表示し、前記第1の処理の実行後に、当該第1の処理において前記表示部に表示させた前記抵抗値データの値と前記第1の比較値よりも小さな値に規定されている第2の比較値とを比較し、前記抵抗値データの値が前記第2の比較値以上のときには、前記測定対象が良好である旨を報知し、前記抵抗値データの値が前記第2の比較値未満のときには、前記測定対象が不良である旨を報知する第3の処理を実行する抵抗測定装置。
前記測定処理部は、前記第3の処理の実行に先立ち、前記測定対象が有する容量に対する充電を完了しているか否かを判定する充電状態判定処理を実行し、当該充電状態判定処理において前記容量に対する充電を完了していないと判定したときには、前記第3の処理を実行せずに、当該充電状態判定処理において前記容量に対する充電を完了していると判定したときには、前記第3の処理を実行する請求項1記載の抵抗測定装置。
前記測定処理部は、前記充電状態判定処理において前記第1の時間毎に生成したN番目(Nは、2以上の自然数)の前記抵抗値データの値と前記第1の時間毎に生成した(N−1)番目の前記抵抗値データの値とを比較し、前記N番目の前記抵抗値データの値が前記(N−1)番目の前記抵抗値データの値未満とする第1条件、および前記(N−1)番目の前記抵抗値データの値に対して前記N番目の前記抵抗値データの値の増加率が予め規定された所定率以下とする第2条件のうちの予め規定された少なくとも一方の条件を満たしたときには、前記容量に対する充電が完了していると判定し、前記少なくとも一方の条件を満たしていないときには、前記容量に対する充電が完了していないと判定する請求項2記載の抵抗測定装置。
前記測定処理部は、前記充電状態判定処理において前記容量に対する充電を完了しない状態が予め規定した時間を継続したと判定したときには、当該充電状態判定処理を終了して前記第3の処理を実行する請求項2または3記載の抵抗測定装置。
前記測定処理部は、前記第2の処理時に前記第1の比較値と比較した前記抵抗値データの値を前記表示部に表示させずに、前記第1の処理によって前記抵抗値データの値を表示させるまで当該抵抗値データの値の非表示状態を維持する請求項1から4のいずれかに記載の抵抗測定装置。
予め規定された開始条件が満たされたときに、測定対象についての物理量としての抵抗値を測定して抵抗値データを生成すると共に、前記抵抗値データの値を表示部に表示させる第1の処理、および前記抵抗値データの値と第1の比較値とを比較して比較結果を報知する第2の処理を実行する抵抗測定方法であって、
予め規定された第1の時間毎に生成した前記抵抗値データを用いての前記第1の処理の実行に先立ち、当該第1の時間よりも短い第2の時間内で生成した前記抵抗値データを用いて前記第2の処理を実行し、当該第2の処理において、前記抵抗値データの値が前記第1の比較値未満のときには、不良の旨を表示させずに、前記抵抗値データの値が前記第1の比較値以上のときには、前記測定対象が良好である旨を表示し、前記第1の処理の実行後に、当該第1の処理において前記表示部に表示させた前記抵抗値データの値と前記第1の比較値よりも小さな値に規定されている第2の比較値とを比較し、前記抵抗値データの値が前記第2の比較値以上のときには、前記測定対象が良好である旨を報知し、前記抵抗値データの値が前記第2の比較値未満のときには、前記測定対象が不良である旨を報知する第3の処理を実行する抵抗測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、出願人が開示している絶縁抵抗計およびその抵抗測定方法には、以下の改善すべき課題が存在する。すなわち、出願人が開示している絶縁抵抗計およびその抵抗測定方法では、コンパレータ処理に際して、被測定電気機器の絶縁抵抗値を測定するための測定処理と同様の手順に従って測定した絶縁抵抗値(測定値)と基準値との大小関係を比較している。この場合、この種の絶縁抵抗計において被測定電気機器の絶縁抵抗値を正確に測定するためには、被測定電気機器に印加する定格測定電圧のふらつきや、測定される電流のふらつきなどの影響を排除するために様々な処理を実行する必要がある。このため、処理を開始してから、比較すべき測定値の基となる電圧データおよび電流データがA/D変換部から出力されるまでにある程度長い時間を要する。したがって、単に、被測定電気機器が所望の絶縁状態となっているかを知りたいだけであっても、コンパレータ処理の結果(判定結果)が報知されるまでに長い時間を要するため、この点を改善するのが好ましい。
【0006】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、抵抗値データの値と予め規定された比較値との比較結果を短時間で報知し得る抵抗測定装置および抵抗測定方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の抵抗測定装置は、予め規定された開始条件が満たされたときに、測定対象についての物理量としての抵抗値を測定して抵抗値データを生成すると共に、前記抵抗値データの値を表示部に表示させる第1の処理、および前記抵抗値データの値と第1の比較値とを比較して比較結果を報知する第2の処理を実行する測定処理部を備えた抵抗測定装置であって、前記測定処理部は、予め規定された第1の時間毎に生成した前記抵抗値データを用いての前記第1の処理の実行に先立ち、当該第1の時間よりも短い第2の時間内で生成した前記抵抗値データを用いて前記第2の処理を実行し、当該第2の処理において、前記抵抗値データの値が前記第1の比較値未満のときには、不良の旨を表示させずに、前記抵抗値データの値が前記第1の比較値以上のときには、前記測定対象が良好である旨
を表示
し、前記第1の処理の実行後に、当該第1の処理において前記表示部に表示させた前記抵抗値データの値と前記第1の比較値よりも小さな値に規定されている第2の比較値とを比較し、前記抵抗値データの値が前記第2の比較値以上のときには、前記測定対象が良好である旨を報知し、前記抵抗値データの値が前記第2の比較値未満のときには、前記測定対象が不良である旨を報知する第3の処理を実行する。
【0009】
また、請求項
2記載の抵抗測定装置は、請求項
1記載の抵抗測定装置において、前記測定処理部は、前記第3の処理の実行に先立ち、前記測定対象が有する容量に対する充電を完了しているか否かを判定する充電状態判定処理を実行し、当該充電状態判定処理において前記容量に対する充電を完了していないと判定したときには、前記第3の処理を実行せずに、当該充電状態判定処理において前記容量に対する充電を完了していると判定したときには、前記第3の処理を実行する。
【0010】
また、請求項
3記載の抵抗測定装置は、請求項
2記載の抵抗測定装置において、前記測定処理部は、前記充電状態判定処理において前記第1の時間毎に生成したN番目(Nは、2以上の自然数)の前記抵抗値データの値と前記第1の時間毎に生成した(N−1)番目の前記抵抗値データの値とを比較し、前記N番目の前記抵抗値データの値が前記(N−1)番目の前記抵抗値データの値未満とする第1条件、および前記(N−1)番目の前記抵抗値データの値に対して前記N番目の前記抵抗値データの値の増加率が予め規定された所定率以下とする第2条件のうちの予め規定された少なくとも一方の条件を満たしたときには、前記容量に対する充電が完了していると判定し、前記少なくとも一方の条件を満たしていないときには、前記容量に対する充電が完了していないと判定する。
【0011】
また、請求項
4記載の抵抗測定装置は、請求項
2または
3記載の抵抗測定装置において、前記測定処理部は、前記充電状態判定処理において前記容量に対する充電を完了しない状態が予め規定した時間を継続したと判定したときには、当該充電状態判定処理を終了して前記第3の処理を実行する。
【0012】
また、請求項
5記載の測定装置は、請求項1から
4のいずれかに記載の抵抗測定装置において、前記測定処理部は、前記第2の処理時に前記第1の比較値と比較した前記抵抗値データの値を前記表示部に表示させずに、前記第1の処理によって前記抵抗値データの値を表示させるまで当該抵抗値データの値の非表示状態を維持する。
【0013】
また、請求項6記載の抵抗測定方法は、予め規定された開始条件が満たされたときに、測定対象についての物理量としての抵抗値を測定して抵抗値データを生成すると共に、前記抵抗値データの値を表示部に表示させる第1の処理、および前記抵抗値データの値と第1の比較値とを比較して比較結果を報知する第2の処理を実行する抵抗測定方法であって、予め規定された第1の時間毎に生成した前記抵抗値データを用いての前記第1の処理の実行に先立ち、当該第1の時間よりも短い第2の時間内で生成した前記抵抗値データを用いて前記第2の処理を実行し、当該第2の処理において、前記抵抗値データの値が前記第1の比較値未満のときには、不良の旨を表示させずに、前記抵抗値データの値が前記第1の比較値以上のときには、前記測定対象が良好である旨
を表示
し、前記第1の処理の実行後に、当該第1の処理において前記表示部に表示させた前記抵抗値データの値と前記第1の比較値よりも小さな値に規定されている第2の比較値とを比較し、前記抵抗値データの値が前記第2の比較値以上のときには、前記測定対象が良好である旨を報知し、前記抵抗値データの値が前記第2の比較値未満のときには、前記測定対象が不良である旨を報知する第3の処理を実行する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の抵抗測定装置、および請求項
6記載の抵抗測定方法によれば、予め規定された第1の時間毎に生成した抵抗値データを用いてその値を表示部に表示させる第1の処理の実行に先立ち、第1の時間よりも短い第2の時間内で生成した抵抗値データを用いてその値と第1の比較値とを比較して比較結果を報知する第2の処理を実行することにより、正確な抵抗値を表示させるために長い測定時間を要する第1の処理を開始する前に、十分に短い測定時間内に生成した抵抗値データと第1の比較値との比較結果が表示部に短時間で表示されるため、比較結果を短時間で認識させることができる。この場合、例えば、測定対象が容量を有する容量性負荷のときには、測定対象自体が良品であったとしても、その容量が充電されるまでの間は測定対象の抵抗値を正確に測定することができないこともある。したがって、この抵抗測定装置およびこの抵抗測定方法によれば、第2の処理において、抵抗値データの値が第1の比較値未満のときに不良の旨を表示しないことにより、測定時間が短いことに起因して良品の測定対象を不良判定とする誤った比較結果が表示部に表示されることを回避することができる結果、オペレータに対して正確な比較結果を認識させることができる。
【0015】
また、
この抵抗測定装置
およびこの抵抗測定方法によれば、第1の処理において表示部に表示させた抵抗値データの値と第2の比較値とを比較して比較結果を報知する第3の処理を第1の処理の後に実行することにより、十分に長い測定時間内に測定された正確な抵抗値データを用いた正確な比較結果をオペレータに認識させることができる。
【0016】
また、請求項
2記載の抵抗測定装置によれば、測定処理部が、充電状態判定処理において、測定対象が有する容量に対する充電を完了しているか否かを判定し、容量に対する充電を完了していると判定したときに第3の処理を実行することにより、仮に、測定対象が容量性負荷であって、その容量が大きいときであっても、その容量に対する充電の未完了に起因する不良判定を行うことを回避することができる結果、正確な判定を行うことができる。
【0017】
また、請求項
3記載の抵抗測定装置によれば、第1の時間毎に生成したN番目の抵抗値データの値と第1の時間毎に生成した(N−1)番目の抵抗値データの値とを比較することにより、測定対象が有する容量に対して充電が完了しているか否かを確実に判定することができる。
【0018】
さらに、請求項
4記載の抵抗測定装置によれば、測定処理部が、充電状態判定処理において測定対象が有する容量に対する充電を完了しない状態が予め規定した時間を継続したと判定したときには、充電状態判定処理を終了して第3の処理を実行することにより、長時間に亘って比較結果が表示されないという事態を回避することができる。
【0019】
また、請求項
5記載の抵抗測定装置によれば、第2の処理時に第1の比較値と比較した抵抗値データの値を表示部に表示させずに第1の処理によって抵抗値データの値を表示させるまで抵抗値データの値の非表示状態を維持することにより、測定時間が短いことに起因して不正確となる可能性がある抵抗値データの値が表示部に表示されて不正確な値がオペレータによって認識される事態を好適に回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、抵抗測定装置および抵抗測定方法の実施の形態について説明する。
【0022】
図1に示す絶縁抵抗計1は、「抵抗測定装置」の一例であって、測定対象Xにおける任意の2点間の絶縁抵抗値を測定可能に構成されている。具体的には、絶縁抵抗計1は、測定部2、操作部3、表示部4、記憶部5および処理部6を備えて構成されている。測定部2は、処理部6と相まって「測定処理部」を構成する。この測定部2は、コンタクトプローブ2a,2bを介して測定対象Xに測定用電圧を印加する測定電圧発生部(図示せず)や、測定対象Xに印加している測定用電圧や測定対象Xに流れる電流を検出して測定データDa(電圧値データ)および測定データDb(電流値データ)を出力するA/D変換部(図示せず)などを備えて構成されている。
【0023】
操作部3は、図示しない測定開始/停止スイッチや、絶縁抵抗計1の動作条件(測定条件)を設定するための各種操作スイッチを備え、スイッチ操作に応じて操作信号を出力する。表示部4は、一例として、LEDバックライトを有する液晶表示器で構成されて、処理部6の制御に従って、測定結果や、後述する比較処理の結果を表示する。なお、表示部4を備えた「抵抗測定装置」の例について説明するが、「表示部」を備えずに、外部装置としての「表示部」に測定結果等を表示させる構成を採用することもできる。記憶部5は、後述する比較処理に際して処理部6が使用する判定値Ra,Rb(「第1の比較値」および「第2の比較値」の一例)、処理部6の動作プログラム、および処理部6によって演算された抵抗値データDcなどを記憶する。
【0024】
処理部6は、絶縁抵抗計1を総括的に制御する。具体的には、処理部6は、操作部3の測定開始/停止スイッチが操作されたとき(「予め規定された開始条件が満たされたとき」の一例)に、測定部2を制御して、測定対象Xに対する測定用電圧の印加、および測定データDa,Dbの生成を開始させる。また、処理部6は、測定部2から出力された測定データDa,Dbに基づいて測定対象Xにおいてコンタクトプローブ2a,2bが接触させられている2点間の絶縁抵抗値を演算して抵抗値データDc(「抵抗値データ」の一例)を生成し(後述する絶縁抵抗測定処理10におけるステップ13,15:
図2参照)、生成した抵抗値データDcを記憶部5に記憶させる。
【0025】
さらに、処理部6は、生成した抵抗値データDcの値を数値やグラフによって表示部4に表示させる測定結果表示処理(「第1の処理」の一例:絶縁抵抗測定処理10におけるステップ16)を実行する。また、処理部6は、生成した抵抗値データDcの値と、記憶部5に記憶されている判定値Raとを比較して、その比較結果に応じて表示部4に測定対象Xが良好である旨を表示することで比較結果を報知する比較結果報知処理(「第2の処理」の一例:絶縁抵抗測定処理10における比較処理A20:
図3参照)を実行すると共に、生成した抵抗値データDcの値と、記憶部5に記憶されている判定値Rbとを比較して、その比較結果に応じて表示部4に測定対象Xが良好である旨または不良の旨を表示することで比較結果を報知する比較結果報知処理(「第3の処理」の一例:絶縁抵抗測定処理10における比較処理B30:
図4参照)を実行する。
【0026】
この絶縁抵抗計1の使用に際しては、まず、コンタクトプローブ2a,2bを測定対象X,X上の任意の各点にそれぞれ接触させると共に、図示しない電源スイッチを投入する。この際には、処理部6が記憶部5に記憶されている動作プログラムに従い、
図2に示す絶縁抵抗測定処理10を開始する。この絶縁抵抗測定処理10では、処理部6は、まず、操作部3の測定開始/停止スイッチが操作されたか否かの監視を開始する(ステップ11)。
【0027】
また、処理部6は、操作部3からの操作信号に基づいて測定開始/停止スイッチが操作されたと判別したときに、測定部2を制御して、測定対象Xに対する測定用電圧の印加を開始してから測定データDa,Dbが出力されるまでの時間(以下、「測定時間」ともいう)を時間Ta(「第2の時間」の一例:例えば、10ms)に設定して、測定データDa,Dbを生成する処理を開始させる(ステップ12)。この際に、測定部2は、処理部6の制御に従い、コンタクトプローブ2a,2bを介して測定対象Xへの測定用電圧の印加を開始すると共に、印加している測定用電圧、および測定用電圧を印加している状態において測定対象X,X間を流れる電流を検出して測定データDa,Dbを生成し、生成した測定データDa,Dbを処理部6に出力する。
【0028】
この場合、この種の「測定装置」では、測定対象Xが容量を有している容量性負荷のときには、測定用電圧の印加を開始してから、その電圧値が所望の電圧値(定格の電圧値)に達するまでには、その容量が充電される必要があるため、ある程度の時間を要する。したがって、この絶縁抵抗計1では、一例として、測定用電圧の印加を開始してから数十ms程度の時間が経過して測定用電圧の電圧値がある程度上昇した時点において、A/D変換部が測定データDa,Dbの生成を開始する構成が採用されている。また、A/D変換部は、測定用電圧の電圧値が規定の電圧値に達した後に、処理部6によって設定された上記の「測定時間」内に複数回のサンプリング処理を実行すると共に、各サンプリング値の平均化処理やフィルタリング処理等を行うことにより、設定された「測定時間」内に、1つの測定データDaおよび1つの測定データDbを生成して出力する。
【0029】
一方、処理部6は、測定部2から出力された測定データDa,Dbに基づき、コンタクトプローブ2a,2bが接触させられている2点間の絶縁抵抗値を演算して抵抗値データDc(「抵抗値データ」の一例)を生成して(ステップ13)、記憶部5に記憶させる。次いで、処理部6は、
図3に示す比較処理A20を開始する。この比較処理A20では、処理部6は、まず、生成した抵抗値データDcの値(上記の2点間の絶縁抵抗値)が、記憶部5に記憶されている判定値Ra(「第1の比較値」の一例)以上であるか否かを判別する(ステップ21)。
【0030】
この際に、抵抗値データDcの値が判定値Ra以上のとき(判定値Raが抵抗値データDcの値以下のとき)には、処理部6は、表示部4にPASS判定表示をさせる(「測定対象Xが良好であるとの比較結果」を報知する一例であって、表示部4にPASS判定を表示させることで比較結果(判定結果)を報知する例:ステップ22)。これにより、PASS判定が表示された画面を視認したオペレータは、コンタクトプローブ2a,2bを接触させている2点間が、規定された絶縁抵抗値以上の絶縁状態で良好に絶縁されているのを直感的に認識する。
【0031】
一方、抵抗値データDcの値が判定値Raよりも小さかったとき(判定値Raが抵抗値データDcの値よりも大きかったとき)には、この時点では、処理部6は、測定対象Xが不良である旨を表示部4に表示させずに、この比較処理A30を終了する。これにより、例えば、測定対象Xが容量性負荷である場合において、測定対象X自体が良品であったときに、その容量が充電されるまでの間は、測定対象Xが不良である旨の比較結果が表示されることを避けることができるため、測定対象Xの良否に関しての誤判定を回避することができる結果、正確な判定を行うことができる。
【0032】
なお、この例では、上記の比較処理A20におけるステップ21,22の処理が「第2の処理」に相当する。この場合、短い「測定時間」内に測定された測定データDa,Dbに基づいて算出された絶縁抵抗値は、容量性負荷を測定対象Xとしたとき、および測定用電圧の電圧値や測定対象Xを流れる電流の電流値にふらつきが生じているときなどの原因に起因して、十分に正確な値ではない可能性がある。したがって、この絶縁抵抗計1では、上記のステップ13において演算された絶縁抵抗値については、その値を表示部4に表示させずに、後述するステップ16(
図2参照)において正確な絶縁抵抗値を表示するまで、絶縁抵抗値の非表示状態を維持する構成が採用されている。
【0033】
一方、絶縁抵抗値等を正確に測定するには、上記の原因に起因して不正確な測定値が演算されることのないように、「測定時間」を十分に長く規定する必要がある。したがって、この絶縁抵抗計1では、上記したように、2点間の絶縁状態を報知するための上記の各ステップにおいては、「良品」との比較結果(判定結果)を迅速に報知するために、「測定時間」をある程度短い時間Ta(この例では、10ms)に設定して測定処理を実行するのに対して、正確な絶縁抵抗値を表示させるための以降のステップにおいては、「測定時間」を、時間Taよりも長い時間Tb(一例として、300ms:「第1の時間」の一例)に設定して測定処理を実行する。
【0034】
具体的には、処理部6は、比較結果(判定結果)を報知して上記の比較処理A20を終了した後に、「測定時間」を300msの時間Tbに設定して、測定データDa,Dbを生成する処理を開始させる(ステップ14)。具体的には、測定部2は、処理部6の制御に従い、コンタクトプローブ2a,2bを介して測定対象Xの2点間に測定用電圧を印加すると共に、印加している測定用電圧、および測定用電圧を印加している状態において測定対象Xを流れる電流を検出して測定データDa,Dbを生成し、生成した測定データDa,Dbを処理部6に出力する。
【0035】
この際には、上記の比較結果(判定結果)の報知に際して実行される測定処理時よりも十分に長い時間に亘って複数回のサンプリング処理が実行されると共に、各サンプリング値の平均化処理やフィルタリング処理等が実行されて、300ms毎に各1つの測定データDa,Dbが生成されて出力される。また、処理部6は、測定部2から出力された測定データDa,Dbに基づき、コンタクトプローブ2a,2bが接触させられている2点間の絶縁抵抗値を演算して抵抗値データDc(「抵抗値データ」の一例)を生成して(ステップ15)、記憶部5に記憶させる。次いで、処理部6は、表示部4を制御して、生成した抵抗値データDcの値を表示させる(「第1の処理」の一例:ステップ16)。これにより、十分に正確な測定結果が表示される。
【0036】
次いで、処理部6は、
図4に示す比較処理B30を開始する。この比較処理B30では、処理部6は、まず、N番目に生成した抵抗値データDcの値(300msの「測定時間」内に測定された測定データDa,Dbに基づく絶縁抵抗値:「第1の処理において表示部に表示させた抵抗値データの値」の一例)と(N−1)番目に生成した抵抗値データDcの値を比較し、測定対象Xが有する容量の充電を完了しているかを判定する充電状態判定処理(ステップ31)を行う。ここで、測定対象Xが容量性負荷であり、その容量が大きい場合、測定開始からの時間が短いときには、その容量の充電が完了する前に良否判定が行われることになり、測定対象Xが充電を完了する前に不良判定を行うこととなる。したがって、測定対象Xの良否判定を行う前に、上記した充電状態判定処理(ステップ31)を行う必要がある。
【0037】
この場合、一般的に、容量を充電しているときは、生成される抵抗値データDcの値(絶縁抵抗値)は常に上昇するため、N番目の測定値が(N−1)番目の測定値よりも大きくなる。したがって、処理部6は、この充電状態判定処理(ステップ31)において、N番目の抵抗値データDcの値が(N−1)番目の抵抗値データDc未満とする第1条件、および(N−1)番目の抵抗値データDcの値に対してN番目の抵抗値データDcの値の増加率が予め規定された所定率以下(一例として、数%程度)とする第2条件の両方を共に満たさないときには、測定対象Xの容量が充電を完了していないと判定して、比較処理B30を終了する。なお、本例では、第2条件を「(N−1)番目の抵抗値データDcの値に対してN番目の抵抗値データDcの値の増加率が予め規定された所定率以下」と定めているが、これに代えて、「(N−1)番目の抵抗値データDcの値に対してN番目の抵抗値データDcの値の変動率が予め規定された所定率以下」若しくは「(N−1)番目の抵抗値データDcの値に対してN番目の抵抗値データDcの値の減少率が予め規定された所定率以上」などと規定することもできる。
【0038】
また、処理部6は、充電状態判定処理(ステップ31)において測定対象Xの容量に対する充電を完了しない状態が予め規定した時間を継続(以下、「規定時間」ともいう。一例として、5秒間等)したと判定したときには、充電状態判定処理(ステップ31)を終了して、後述するステップ32を実行する。
【0039】
一方、処理部6は、上記の第1条件および第2条件のうちの少なくとも一方の条件を満たしたときには、測定対象Xの容量に対する充電が完了していると判定する。
【0040】
次いで、処理部6は、測定対象Xの容量に対する充電が完了していると判定したとき、およびその充電を完了しない状態が規定時間を継続したと判定したときには、生成した抵抗値データDcの値が、記憶部5に記憶されている判定値Rb(「第2の比較値」の一例)以上であるか否かを判別する(ステップ32)。この際に、処理部6は、抵抗値データDcの値が判定値Rb以上のとき(判定値Rbが抵抗値データDcの値以下のとき)には、比較結果の報知の一例として、PASS判定を表示部4に表示する(ステップ33)。これにより、オペレータは、PASS判定表示画面を視認してコンタクトプローブ2a,2bを接触させている2点間が、規定された絶縁抵抗値以上の絶縁状態で良好に絶縁されていることを認識する。
【0041】
一方、処理部6は、抵抗値データDcの値が判定値Rbよりも小さかったとき(判定値Rbが抵抗値データDcの値よりも大きかったとき)には、比較結果の報知の一例として、FAIL判定を表示部4に表示する(ステップ34)。これにより、オペレータは、FAIL判定表示画面を視認して、コンタクトプローブ2a,2bを接触させている2点間が規定された絶縁抵抗値未満の絶縁状態で、絶縁状態が不良であることを認識する。
【0042】
この場合、前述したように、短い「測定時間」内に測定された測定データDa,Dbに基づいて算出された絶縁抵抗値は、十分に正確な値ではない可能性がある。したがって、この絶縁抵抗計1では、上記の比較処理A20において、上記の比較処理B30時に使用する判定値Rb(2点間の絶縁状態に応じた絶縁抵抗値として好ましい値)よりも十分に大きな値(一例として、判定値Rbの2倍から5倍程度大きい値)に規定されている判定値Raと抵抗値データDcの値と比較することで、2点間の絶縁状態を判定する構成が採用されている。これにより、「測定時間」が短いことに起因して、仮に、絶縁状態が良好ではない2点間の絶縁抵抗値が実際の絶縁抵抗値よりも大きな値であると測定されたとしても、十分に大きな値に規定されている判定値Raとの比較結果を報知することで、絶縁状態が良好であると誤って報知される事態が回避されている。
【0043】
一方、上記の比較処理B30では、十分に長い「測定時間」内に測定された正確な測定データDa,Dbに基づいて演算された絶縁抵抗値を比較対象としているため、比較の基準となる判定値Rbは、2点間の絶縁状態に応じた絶縁抵抗値として好ましい値(絶縁状態が良好であるか否かを正確に比較(判定)し得る値)に規定されている。これにより、絶縁状態が良好であるにも拘わらず、過剰に大きな値に規定された判定値と比較されることで絶縁状態が良好ではないと誤って報知される事態が回避されている。なお、この例では、上記の比較処理B30におけるステップ32,33、またはステップ32,34の処理が「第3の処理」に相当する。
【0044】
続いて、処理部6は、終了条件(一例として、測定開始/停止スイッチの操作によって測定終了を指示されたとき、または、予め設定された時間に亘って絶縁抵抗値の測定を実行したとき)が満たされたか否かを判別する(ステップ17)。この際に、終了条件が満たされていないと判別したときには、処理部6は、上記のステップ15に戻って、測定データDa,Dbに基づく絶縁抵抗値の演算(ステップ15)、演算した絶縁抵抗値の表示(ステップ16:「第1の処理」)および比較処理B30(「第3の処理」)をこの順で実行すると共に、終了条件が満たされたか否かを再び判別する(ステップ17)。また、終了条件が満たされたとき(例えば、測定開始/停止スイッチの操作されたとき)に、処理部6は、この絶縁抵抗測定処理10を終了する。
【0045】
このように、この絶縁抵抗計1、および絶縁抵抗計1による抵抗測定方法によれば、予め規定された「第1の時間(この例では、時間Tb=300ms)」毎に生成した抵抗値データDcを用いてその値を表示部4に表示させる「第1の処理(この例では、上記の絶縁抵抗測定処理10におけるステップ16)」の実行に先立ち、「第1の時間(この例では、300ms)」よりも短い「第2の時間(この例では、時間Ta=10ms)」内で生成した抵抗値データDcを用いてその値と予め規定された判定値Raとを比較して比較結果(良好である旨)を報知する「第2の処理(この例では、上記の絶縁抵抗測定処理10における比較処理A20)」を実行することにより、正確な絶縁抵抗値を表示させるために長い「測定時間」を要する「第1の処理」を開始する前に、十分に短い「測定時間」内に生成した抵抗値データDcと判定値Raとの比較結果(判定結果)が表示部4に短時間で表示されるため、比較結果を短時間で認識させることができる。
【0046】
また、測定対象Xが容量を有する容量性負荷のときには、測定対象X自体が良品であったとしても、その容量が充電されるまでの間は測定対象Xの絶縁抵抗値を正確に測定することができないこともある。したがって、この絶縁抵抗計1、および絶縁抵抗計1による抵抗測定方法によれば、第2の処理において、抵抗値データDcの値が第1の比較値未満のときに不良の旨を表示しないことにより、測定時間が短いことに起因して良品の測定対象Xを不良判定とする誤った比較結果が表示部4に表示されることを回避することができる結果、オペレータに対して正確な比較結果を認識させることができる。
【0047】
さらに、この絶縁抵抗計1、および絶縁抵抗計1による抵抗測定方法によれば、「第1の処理」において表示部4に表示させた抵抗値データDcの値と予め規定された判定値Rbとを比較して比較結果を報知する「第3の処理(この例では、上記の絶縁抵抗測定処理10における比較処理B30)」を「第1の処理」の後に実行することにより、十分に長い「測定時間」内に測定された正確な抵抗値データDcを用いた正確な比較結果(判定結果)をオペレータに認識させることができる。
【0048】
また、この絶縁抵抗計1、および絶縁抵抗計1による抵抗測定方法によれば、「第2の処理」において判定値Rbよりも大きな値に規定されている判定値Raと抵抗値データDcの値とを比較することにより、つまり、「測定時間」が短いことに起因して不正確となる可能性がある抵抗値データDcと比較する「第2の処理」においては、測定対象Xの状態とは相違する比較結果とならないように、余裕(マージン)を持った判定値Raを用いると共に、「測定時間」が長いことで十分に正確である抵抗値データDcと比較する「第3の処理」においては、比較結果に基づいて測定対象Xの状態を正確に把握できるように余裕が小さい判定値Rbを用いることにより、「第2の処理」および「第3の処理」の双方において、誤った比較結果(判定結果)が報知される事態を好適に回避することができる。
【0049】
さらに、この絶縁抵抗計1、および絶縁抵抗計1による抵抗測定方法によれば、充電状態判定処理(ステップ31)において、測定対象Xが有する容量が充電を完了しているか否かを判定し、容量に対する充電を完了していると判定したときに第3の処理を実行することにより、仮に、測定対象Xが容量性負荷であって、その容量が大きいときであっても、その容量に対する充電の未完了に起因する不良判定を行うことを回避することができる結果、正確な判定を行うことができる。
【0050】
また、この絶縁抵抗計1、および絶縁抵抗計1による抵抗測定方法によれば、時間Tb(第1の時間)毎に生成したN番目の抵抗値データDcの値と時間Tb(第1の時間)毎に生成した(N−1)番目の抵抗値データDcの値とを比較することにより、測定対象Xが有する容量に対して充電が完了しているか否かを確実に判定することができる。
【0051】
さらに、この絶縁抵抗計1、および絶縁抵抗計1による抵抗測定方法によれば、充電状態判定処理(ステップ31)において、測定対象Xが有する容量に対する充電を完了しない状態が規定時間を継続したと判定したときには、充電状態判定処理を終了して「第3の処理(この例では、上記の絶縁抵抗測定処理10における比較処理B30)」を実行(規定時間経過時の抵抗値データDcの値を表示部4に表示)することにより、長時間に亘って比較結果が表示されないという事態を回避することができる。
【0052】
また、この絶縁抵抗計1、および絶縁抵抗計1による抵抗測定方法によれば、「第2の処理」時に判定値Raと比較した抵抗値データDcの値を表示部4に表示させずに「第1の処理」によって抵抗値データDcの値を表示させるまで抵抗値データDcの値の非表示状態を維持することにより、「測定時間」が短いことに起因して不正確となる可能性がある抵抗値データDcの値が表示部4に表示されて不正確な絶縁抵抗値がオペレータによって認識される事態を好適に回避することができる。
【0053】
なお、上記の例では、測定対象Xの良否判定の結果をオペレータに報知する方法として、表示部4にPASS判定表示若しくはFAIL判定表示を行う構成および方法を採用しているが、表示部4にバックライトを点灯させ、その色の差異によって良否判定の結果をオペレータに報知する構成および方法を採用することもできる。
【0054】
また、上記の例では、測定対象X,Xにおける任意の2点間の絶縁抵抗値の測定および、その良否判定について例示しているが、容量性負荷単体の抵抗測定および、その良否判定を行うこともできる。