特許第6021525号(P6021525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6021525筆記具用クリップ、筆記具用部品及び筆記具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021525
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】筆記具用クリップ、筆記具用部品及び筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 25/02 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
   B43K25/00 H
   B43K25/00 K
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-189142(P2012-189142)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-46482(P2014-46482A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】桐竹 雅宜
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 鉄也
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0260453(US,A1)
【文献】 実開平04−058388(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 25/02
B29C 33/22
B29C 33/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記具用クリップであって、
クリップ本体と、
前記クリップ本体の下面に設けられた玉部と
を備え、
前記クリップ本体の側面並びに前記クリップ本体及び前記玉部の下面にパーティングラインが形成されており、
前記クリップ本体又は前記玉部は、その幅方向又は長手方向の長さが下方に向かって増大する逆テーパー状のテーパー部を有する、筆記具用クリップ。
【請求項2】
前記クリップ本体の上面の一部に凹部又は貫通孔が設けられる、請求項1に記載の筆記具用クリップ。
【請求項3】
請求項1に記載の筆記具用クリップを備えた、筆記具用部品。
【請求項4】
請求項1に記載の筆記具用クリップを備えた、筆記具。
【請求項5】
上面の一部に凹部又は貫通孔が設けられたクリップ本体と、前記クリップ本体の下面に設けられた玉部とを備えた筆記具用クリップを成形するための金型において、
前記筆記具用クリップの成形後に上方に移動する第1ブロックと、前記第1ブロックの移動後に前記第1ブロックの移動方向に対して垂直な方向で且つ互いに反対方向に開く第2ブロック及び第3ブロックとを備え、
前記玉部を形成するための第1空洞部が前記第2ブロック及び第3ブロックによって形成され、前記クリップ本体を形成するための第2空洞部が前記第1ブロック、第2ブロック及び第3ブロックによって形成され、
前記第1空洞部は前記玉部の幅方向又は長手方向の長さが下方に向かって増大するように逆テーパー状に形成され、又は前記第2空洞部は前記クリップ本体の幅方向又は長手方向の長さが下方に向かって増大するように逆テーパー状に形成されることを特徴とする、金型。
【請求項6】
上面の一部に凹部又は貫通孔が設けられたクリップ本体と、前記クリップ本体の下面に設けられた玉部とを備えた筆記具用クリップを、第1ブロック、第2ブロック及び第3ブロックを備えた金型によって製造する、筆記具用クリップの製造方法において、
前記玉部を形成するための第1空洞部が前記第2ブロック及び第3ブロックによって形成され、前記クリップ本体を形成するための第2空洞部が前記第1ブロック、第2ブロック及び第3ブロックによって形成され、
前記第1空洞部は前記玉部の幅方向又は長手方向の長さが下方に向かって増大するように逆テーパー状に形成され、又は前記第2空洞部は前記クリップ本体の幅方向又は長手方向の長さが下方に向かって増大するように逆テーパー状に形成され、
前記筆記具用クリップの成形後に前記第1ブロックを上方に移動させ、前記第1ブロックの移動後に前記第2ブロック及び第3ブロックを前記第1ブロックの移動方向に対して垂直な方向で且つ互いに反対方向に開くことを特徴とする、筆記具用クリップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用クリップに関し、特に、三方割の金型によって成形された筆記具用クリップに関する。さらに、本発明は、その筆記具用クリップを備えた筆記具用部品及び筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールペン等の筆記具にはクリップが備えられることが多い。クリップは、筆記具の転がりを防止し且つ紙や衣服等を軸筒とクリップとの間に狭持する役割を有する。クリップは典型的には金属又は樹脂製である。
【0003】
特許文献1は金属製のクリップを開示する。クリップは、プレス加工等によって成形され、その後、筆記具の樹脂製の軸体に取り付けられる。
【0004】
特許文献2は樹脂製のクリップを開示する。クリップは、射出成形等によって成形され、その後、筆記具の樹脂製のキャップに取り付けられる。
【0005】
安価な筆記具を実現するためには、クリップを安価な樹脂から製造することが望ましい。さらに、後軸筒、軸筒、キャップ等の筆記具部品とクリップとを一体成形することによって、これら筆記具部品にクリップを取り付けるための製造工程を省くことができるので、更なるコストの削減が実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4280858号公報
【特許文献2】特開2000−318374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、筆記具部品とクリップとの一体成形は、より複雑な金型構造を必要とする。特許文献2の発明では、樹脂製のクリップには、キャップの突出部と係合するための貫通孔が形成されている。しかしながら、クリップがキャップと一体成形されないため、上下に開く単純な構造の金型を用いてクリップを成形することができる。
【0008】
一方、クリップが筆記具部品と一体成形される場合、筆記具部品は、金型内でコアピンの周りに成形され、長手方向においてクリップと略平行に延びる。このため、クリップを成形する部分の金型は構造が制約される。この場合も、クリップが、平坦なクリップ本体と、クリップ本体の下面に設けられた玉部とを備えた単純な構造を有すれば、左右に開く単純な構造の金型を用いてクリップを成形することができる。
【0009】
ところで、誤飲時の窒息防止のための通気性の確保といった機能又は外観上のデザイン性を高めるために、クリップ上面に貫通孔又は凹部を設けることがある。この場合、左右及び上の三方向に開く三方割の金型を用いてクリップを成形する必要がある。
【0010】
三方割の金型を用いた成形では、成形後にクリップを離型するために、クリップ上面の貫通孔又は凹部を形成するためのブロックが最初に上に移動する。このとき、離型抵抗によって、上向きの力がクリップ全体に作用する。このことは、成形直後のクリップの強度が弱いので、クリップの変形を引き起こす場合がある。特に、筆記具部品に接続されていないクリップ本体の自由端部が上方向に反る不具合が生じやすい。斯かるクリップを備えた筆記具では、クリップの玉部が軸筒から浮くため、クリップは、軸筒との間に紙等を狭持するという本来の機能を果たすことができない。
【0011】
また、最悪の場合、成形されたクリップの一部が離型後も金型の内部に残されたまま次の成形が行われる、いわゆる金型の二度押し、ひいては金型の破損が生じうる。このことは、自動的な連続成形による製造を妨げ、ひいては製造コストの増大をもたらす。
【0012】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、三方割の金型によって成形されたクリップの自由端部の反りを防止するクリップを提供することを目的とする。さらに、本発明は、機能性及びデザイン性の高い安価な筆記具を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1態様では、筆記具用クリップであって、クリップ本体と、クリップ本体の下面に設けられた玉部とを備え、クリップ本体の側面並びにクリップ本体及び玉部の下面にパーティングラインが形成されており、クリップ本体又は玉部は、その幅方向又は長手方向の長さが下方に向かって増大する逆テーパー状のテーパー部を有する、筆記具用クリップが提供される。なお、クリップの玉部側をクリップの「下」側と定義する。
【0014】
本発明の第1態様では、クリップ本体の上面の一部に凹部又は貫通孔が設けられることが好ましい。
【0016】
本発明の第2態様では、本発明の第1態様の筆記具用クリップを備えた、筆記部用部品が提供される。
【0017】
本発明の第3態様では、本発明の第1態様の筆記具用クリップを備えた、筆記具が提供される。
本発明の第4態様では、上面の一部に凹部又は貫通孔が設けられたクリップ本体と、クリップ本体の下面に設けられた玉部とを備えた筆記具用クリップを成形するための金型において、筆記具用クリップの成形後に上方に移動する第1ブロックと、第1ブロックの移動後に第1ブロックの移動方向に対して垂直な方向で且つ互いに反対方向に開く第2ブロック及び第3ブロックとを備え、玉部を形成するための第1空洞部が第2ブロック及び第3ブロックによって形成され、クリップ本体を形成するための第2空洞部が第1ブロック、第2ブロック及び第3ブロックによって形成され、第1空洞部は玉部の幅方向又は長手方向の長さが下方に向かって増大するように逆テーパー状に形成され、又は第2空洞部はクリップ本体の幅方向又は長手方向の長さが下方に向かって増大するように逆テーパー状に形成されることを特徴とする、金型が提供される。
本発明の第5態様では、上面の一部に凹部又は貫通孔が設けられたクリップ本体と、クリップ本体の下面に設けられた玉部とを備えた筆記具用クリップを、第1ブロック、第2ブロック及び第3ブロックを備えた金型によって製造する、筆記具用クリップの製造方法において、玉部を形成するための第1空洞部が第2ブロック及び第3ブロックによって形成され、クリップ本体を形成するための第2空洞部が第1ブロック、第2ブロック及び第3ブロックによって形成され、第1空洞部は玉部の幅方向又は長手方向の長さが下方に向かって増大するように逆テーパー状に形成され、又は第2空洞部はクリップ本体の幅方向又は長手方向の長さが下方に向かって増大するように逆テーパー状に形成され、筆記具用クリップの成形後に第1ブロックを上方に移動させ、第1ブロックの移動後に第2ブロック及び第3ブロックを第1ブロックの移動方向に対して垂直な方向で且つ互いに反対方向に開くことを特徴とする、筆記具用クリップの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、三方割の金型によって成形されたクリップの自由端部の反りが防止される。さらに、本発明によれば、機能性及びデザイン性の高い安価な筆記具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るクリップを備えた筆記具の正面図である。
図2図2は、図1の筆記具の平面図である。
図3図3は、図1のクリップ及び後軸筒の正面図である。
図4図4は、図3のクリップ及び後軸筒の平面図である。
図5図5は、図3のクリップ及び後軸筒の縦断面図である。
図6図6は、図3のA−A方向から見たクリップの断面図である。
図7図7は、本発明の第1実施形態に係るクリップの概略図である。
図8図8は、図7のクリップの底面図である。
図9図9は、図8のB−B方向から見た、クリップを成形するための金型の断面図である。
図10図10は、図8のB−B方向から見たクリップの断面図である。
図11図11は、図8のC−C方向から見た、クリップを成形するための金型の断面図である。
図12図12は、本発明の第2実施形態に係るクリップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明を説明する。また、添付図面において同一又は類似の構成要素には同一の参照符号が付される。
【0021】
以下、図1及び図2を参照して、筆記具1の構成について簡単に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るクリップ2を備えた筆記具1の正面図である。図2は、図1の筆記具1の平面図である。この実施形態では、筆記具1はノック式ボールペンである。なお、図1及び図2に示されるように、本明細書において、筆記具1の先端すなわちペン先側を筆記具1の「前」側と定義し、筆記具1の長手方向に沿って筆記具1のペン先とは反対側を筆記具1の「後」側と定義する。
【0022】
筆記具1は、クリップ2と、クリップ2と一体である後軸筒3と、前軸筒4と、前軸筒4の外面上に形成されたグリップ5と、ノック部6と、前軸筒4の内部に収容されたレフィル(図示せず)とを備える。クリップ2及び後軸筒3と、前軸筒4及びグリップ5と、ノック部6と、レフィルとは、それぞれ別々に製造され、その後、互いに組み立てられる。
【0023】
レフィルは、インキを収容したインキ収容管の前端部にボールペンチップを装着して構成される。ノック部6は、指で前後に移動せしめられることによってレフィルの前端部(ボールペンチップ)を前軸筒4の前端部から出入させる。クリップ2は、筆記具1の転がりを防止し且つ紙や衣服等を前軸筒4とクリップ2との間に狭持する役割を有する。グリップ5は使用時に人の指によって把持される。
【0024】
グリップ5は典型的には二色成形によって前軸筒4の外面上に形成される。前軸筒4はポリプロピレン又はポリカーボネート等の硬質の樹脂材料によって構成され、一方、グリップ5は熱可塑性エラストマー(TPE)等の軟質の樹脂材料によって構成される。
【0025】
以下、図3図6を参照して、クリップ2及び後軸筒3の構成について説明する。図3は、図1のクリップ2及び後軸筒3の正面図である。図4は、図3のクリップ2及び後軸筒3の平面図である。図5は、図3のクリップ2及び後軸筒3の縦断面図である。
【0026】
クリップ2及び後軸筒3は、一体であり、接続部21を介して互いに接続される。クリップ2はクリップ本体22及び玉部23を備える。玉部23は、接続部21とは反対側のクリップ本体22の自由端部24において、クリップ本体22の下面に設けられる。ただし、玉部23は、クリップ本体22の下面の他の位置に設けられてもよい。なお、図3図7及び図12に示されるように、本明細書において、クリップ2の玉部23側をクリップ2の「下」側と定義し、クリップ2の短手方向に沿ってクリップ2の玉部23とは反対側をクリップ2の「上」側と定義する。
【0027】
図6は、図3のA−A方向から見たクリップ2の断面図である。図6に示されるように、玉部23は、後述する効果を得るために、その幅方向の長さが下方に向かって増大する逆テーパー状のテーパー部26を有する。
【0028】
図4及び図5に示されるように、クリップ本体22の上面には、二つの楕円の間に画成された貫通孔25が設けられる。このことによって、クリップ2ひいては筆記具1のデザイン性が高められる。また、クリップ2は、後軸筒3の代わりに、通気性を有さない取外し可能なキャップ(図示せず)と一体成形されてもよい。この場合、クリップ2の貫通孔25は、誤飲時の窒息防止のための通気性を確保するという役割も果たす。
【0029】
後軸筒3は後端部31及び内筒部32を備える。内筒部32は、クリップ2及び後軸筒3と前軸筒4とが互いに組み立てられるとき、前軸筒4内に挿入されて前軸筒4と係合する。
【0030】
次に、クリップ2及び後軸筒3の成形方法について説明する。
【0031】
クリップ2は射出成形によって後軸筒3と一体成形される。クリップ2及び後軸筒3は典型的にはポリプロピレン又はポリカーボネート等の硬質の樹脂材料によって構成される。後軸筒3は、後軸筒3の内部と相補的な形状のコアピンの周りに成形される。
【0032】
以下、図7図11を参照して、クリップ2の成形方法について説明する。図7は、本発明の第1実施形態に係るクリップ2の概略図である。図8は、図7のクリップ2の底面図である。簡略化のために、接続部21及び後軸筒3は図から省かれる。また、図8に示されるように、貫通孔25は単純な楕円形状として示される。
【0033】
クリップ2及び後軸筒3を成形するための金型構造において、クリップ2を成形するための金型の下には、後軸筒3を成形するためのコアピンが延びている。このため、上下に開く金型を構成することはできない。一方、左右に開く金型ではクリップ2の貫通孔25を形成することができない。このため、クリップ2が後軸筒3と一体成形され且つクリップ2に貫通孔25が設けられる場合、左右及び上の三方向に開く三方割の金型を用いてクリップ2を成形する必要がある。貫通孔25の代わりに凹部がクリップ2の上面に設けられる場合も同様である。
【0034】
図9は、図8のB−B方向から見た、クリップ2を成形するための金型10の断面図である。図10は、図8のB−B方向から見たクリップ2の断面図である。金型10は、三方向に開く三つのブロック11、12、13から構成される。成形後の離型時には、第1ブロック11が最初に上に移動し、その後、第2ブロック12及び第3ブロック13が左右に開く。図9及び図10から分かるように、離型後には金型10の空洞部14と相補的な形状が形成される。
【0035】
従来の左右に開く金型では、パーティングラインがクリップ本体22の上面並びにクリップ本体22及び玉部23の下面に形成される。クリップ本体22の上面は外観上目立つ部分であり且つ指で触れられることが多い。このため、クリップ本体22の上面に形成されたパーティングラインは、クリップ本体22に指で触れたときに不快感を生じさせ又は外観上のデザイン性を低下させる。また、成形後にクリップ本体22の上面に印刷等の加飾が行われる場合、パーティングラインは加飾処理の妨げとなる。一方、三方割の金型では、図9から分かるように、第1ブロック11がクリップ本体22の上面全体を覆うように金型10を構成することで、パーティングラインはクリップ本体22の側面並びにクリップ本体22及び玉部23の下面に形成されるようになる。このため、クリップ本体22の上面にパーティングラインが形成されないので、上記問題点が解消される。
【0036】
図11は、図8のC−C方向から見た、クリップ2を成形するための金型10の断面図である。図11では、玉部23を形成するための第1空洞部15と、クリップ本体22を形成するための第2空洞部16とが示される。第1空洞部15は、その幅方向の長さが下方に向かって増大するように逆テーパー状に形成される。このため、成形された玉部23は、その幅方向の長さが下方に向かって増大する逆テーパー状のテーパー部を26有する。テーパー角度は例えば片側約3°〜8°である。
【0037】
クリップ2を離型するために第1ブロック11が上に移動すると、離型抵抗によって、上向きの力がクリップ2全体に作用する。このとき、成形された玉部23は、テーパー部26が第2ブロック12及び第3ブロック13の逆テーパー面と接触するため、逆テーパー面から下向きの分力を受ける。言い換えれば、第1ブロック11が上に移動すると、テーパー部26は第2ブロック12及び第3ブロック13と係合する。このため、クリップ2が第1ブロック11と共に上に持ち上げられないので、離型後にクリップ2の自由端部24が上に反ることが防止される。
【0038】
図示しないが、第1空洞部15に加えて又は第1空洞部15の代わりに、第2空洞部16が、その幅方向の長さが下方に向かって増大するように逆テーパー状に形成されてもよい。この場合、成形されたクリップ本体22は、その幅方向の長さが下方に向かって増大する逆テーパー状のテーパー部を有する。テーパー角度は例えば片側約3°〜8°である。この構成では、第1ブロック11が上に移動すると、クリップ本体22が第2ブロック12及び第3ブロック13の逆テーパー面から下向きの分力を受ける。言い換えれば、第1ブロック11が上に移動すると、クリップ本体22のテーパー部は第2ブロック12及び第3ブロック13と係合する。このため、離型後にクリップ2の自由端部24が上に反ることが防止される。
【0039】
図12は、本発明の第2実施形態に係るクリップ20の概略図である。簡略化のために、接続部及び後軸筒は図から省かれる。図12において示されるように、成形された玉部230及びクリップ本体220は、それぞれ、その長手方向の長さが下方に向かって増大する逆テーパー状のテーパー部260、270を有する。テーパー角度は例えば片側約3°〜8°である。この場合も、第1ブロック(図示せず)が上に移動すると、玉部230及びクリップ本体220が第2ブロック及び第3ブロック(図示せず)の逆テーパー面から下向きの分力を受ける。言い換えれば、第1ブロックが上に移動すると、玉部230のテーパー部260及びクリップ本体220のテーパー部270はそれぞれ第2ブロック及び第3ブロックと係合する。このため、離型後にクリップ20の自由端部240が上に反ることが防止される。なお、玉部230及びクリップ本体220のいずれか一方が、その長手方向の長さが下方に向かって増大する逆テーパー状のテーパー部を有してもよい。
【0040】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、筆記具は、シャープペン等の他の筆記具であってもよい。また、クリップは、三方割の金型によって成形されるのであれば、一体成形ではなく単体で成形され、その後、筆記具部品に取り付けられてもよい。さらに、クリップは、キャップや軸筒等の他の筆記具部品と一体成形されてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 筆記具
2、20 クリップ
3 後軸筒
4 前軸筒
5 グリップ
6 ノック部
10 金型
11 第1ブロック
12 第2ブロック
13 第3ブロック
14 空洞部
15 第1空洞部
16 第2空洞部
21 接続部
22、220 クリップ本体
23、230 玉部
24、240 自由端部
25 貫通孔
26、260 玉部のテーパー部
270 クリップ本体のテーパー部
31 後端部
32 内筒部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12