特許第6021560号(P6021560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021560
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】部品検査方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20161027BHJP
   H05K 13/02 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   H05K13/08 A
   H05K13/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-217896(P2012-217896)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-72409(P2014-72409A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】中西 由佳
(72)【発明者】
【氏名】今野 貴史
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−245483(JP,A)
【文献】 特開2010−091298(JP,A)
【文献】 特開2007−007768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K3/30,13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアテープの部品収納部に収納された部品を吸着ノズルで吸着して所定の部品搭載位置に移載するにあたり、
現在の吸着位置と1つ前の吸着位置を含む画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像のうちの前記現在の吸着位置を含む第1のウインドウの輝度と、予め設定された第1の閾値と、を比較する第1の比較ステップと、
前記第1の比較ステップでの比較結果に基づき、前記部品収納部内の前記部品が表であるか又は前記部品収納部内の前記部品が表でないか、を判定する第1の判定ステップと、
前記第1の判定ステップで前記部品収納部内の前記部品が表でないと判定された場合に、前記第1のウインドウの輝度と、前記画像のうちの1つ前の吸着位置を含む第2のウインドウの輝度に基づき算出された第2の閾値と、を比較する第2の比較ステップと、
前記第2の比較ステップでの比較結果に基づき、前記部品収納部内の前記部品が裏であるか又は前記部品収納部内に前記部品が収納されていないか、を判定する第2の判定ステップと、
を備る部品検査方法。
【請求項2】
キャリアテープの部品収納部に収納された部品を吸着ノズルで吸着して所定の部品搭載位置に移載するにあたり、
現在の吸着位置と1つ前の吸着位置を含む画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像のうちの前記現在の吸着位置を含む第1のウインドウの輝度と、予め設定された第1の閾値と、を比較する第1の比較ステップと、
前記第1の比較ステップでの比較結果に基づき、前記部品収納部内の前記部品が表であるか又は前記部品収納部内の前記部品が表でないか、を判定する第1の判定ステップと、
前記第1の判定ステップで前記部品収納部内の前記部品が表でないと判定された場合に、前記第1のウインドウの輝度と、前記画像のうちの1つ前の吸着位置を含む第2のウインドウの輝度に基づき算出された第2の閾値と、を比較する第2の比較ステップと、
前記第2の比較ステップでの比較結果に基づき、前記部品収納部内の前記部品が裏であるか又は前記部品収納部内に前記部品が収納されていないか、を判定する第2の判定ステップと、
前記第2の判定ステップで前記部品収納部内に前記部品が収納されていないと判定された場合に、前記第1のウインドウの画像データを評価値として蓄積保存する蓄積保存ステップと、
記第1の判定ステップで前記部品収納部内の前記部品が表でないと判定された場合に、前記第1のウインドウの輝度と、前記蓄積保存ステップで蓄積保存された評価値に基づき算出される参考値と、を比較することにより、前記部品収納部内に前記部品が収納されていないか否かを判定する第3の判定ステップと、
を備える部品検査方法。
【請求項3】
キャリアテープの部品収納部に収納された部品を吸着ノズルで吸着して所定の部品搭載位置に移載するにあたり、
現在の吸着位置にある対象部品収納部と1つ前部品収納部とを含む画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像のうちの前記対象部品収納部を含むウインドウの輝度平均が、前記画像のうちの前記1つ前部品収納部を含むウインドウの輝度平均に一定の幅の値を持たせた範囲内に含まれるか否かを調べる第1ステップと、
前記第1ステップでの結果に基づき、前記対象部品収納部内に前記部品が収納されているか否かを判定する第2ステップと、
前記第2ステップで前記対象部品収納部内に前記部品が収納されていないと判定された場合に、前記キャリアテープを1コマ送り出す第1の送り出しステップと、
現在の吸着位置に前記部品が現れるまで前記画像取得ステップ、前記第1ステップ、前記第ステップ及び前記第1の送り出しステップを繰り返すことにより、部品頭出しを行う部品頭出しステップと、
を備える部品検査方法。
【請求項4】
前記第2の判定ステップで前記部品収納部内に前記部品が収納されていないと判定された場合に、前記吸着ノズルの軸線方向の位置が前記キャリアテープを送り出すことが可能であれば、前記キャリアテープを1コマ送り出す第2の送り出しステップを更に含む、請求項記載の部品検査方法。
【請求項5】
前記第2の判定ステップで前記部品収納部内の前記部品が表裏反転と判定された場合に、この部品に対して吸着動作を実施するとともに吸着している部品を廃棄するステップを含む、請求項記載の部品検査方法。
【請求項6】
キャリアテープの部品収納部に収納された部品を吸着ノズルで吸着して所定の部品搭載位置に移載するにあたり部品を検査する装置であって、
現在の吸着位置と1つ前の吸着位置を含む画像を撮像する撮像装置と、
前記画像のうちの前記現在の吸着位置を含む第1のウインドウの輝度と、予め設定された第1の閾値と、を比較し、前記部品収納部内の前記部品が表であるか又は前記部品収納部内の前記部品が表でないか、を判定する表判定処理部と、
前記表判定処理部で前記部品収納部内の前記部品が表でないと判定された場合に、前記第1のウインドウの輝度と、前記画像のうちの1つ前の吸着位置を含む第2のウインドウの輝度に基づき算出された第2の閾値と、を比較し、前記部品収納部内の前記部品が裏であるか又は前記部品収納部内に前記部品が収納されていないか、を判定する部品なし判定処理部と、
を備える部品検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装装置を用いて電子部品を基板に搭載するに際し、表面実装装置に備えた吸着ノズルにより吸着される前の電子部品の状態を判定する部品検査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品を基板に搭載する表面実装装置が用いられている。表面実装装置は、パーツフィーダに収納されたキャリアテープに保持されている電子部品を吸着ノズルにより吸着し、吸着ノズルを基板上の部品搭載位置に移動させ、電子部品を部品搭載位置に搭載する。
【0003】
このような表面実装装置を用いて電子部品を基板に搭載する際の、電子部品の装着状態の検査方法として、キャリアテープに保持されている吸着前の電子部品の状態(吸着前状態)を検査する方法がある。電子部品の吸着前状態としては、正しい位置に部品がある状態(正常)、部品の表裏が反転している状態(表裏反転)、吸着位置に部品がない状態(部品なし)が挙げられる。
【0004】
従来の表面実装装置は、現在実装対象となっている電子部品の吸着前状態が正常であれば、吸着、搭載動作を実施する。また、従来の表面実装装置は、現在実装対象となっている電子部品の吸着前状態が表裏反転であれば、その状態を保ったまま吸着、搭載動作を実施する。つまり、従来の表面実装装置は、表裏反転した部品を基板に搭載してしまうので、不良品を発生させることになる。
【0005】
また、従来の表面実装装置は、吸着前状態が部品なしであれば、吸着ノズルのエア吸引の圧力、もしくはレーザ等を利用した部品吸着なし状態の検知により、再度吸着動作(リトライ動作)を行う。従来の表面実装装置は、リトライ動作を複数回繰り返しても吸着ができなかった場合に、そこで初めて吸着エラーを出す。
【0006】
また、従来の表面実装装置では、キャリアテープのセッティングに際し、部品頭出しの作業をユーザが行っているため、使用するパーツフィーダ数が多ければ多いほど、ユーザへの負担が大きくなってしまう。
【0007】
また、従来の表面実装装置は、連続した部品なしの状態から2本のキャリアテープの継ぎ目(スプライシング)を検知し、テープフィーダにセットされている部品の残数をカウントするが、その場合、多くのリトライ動作が発生してしまう。
【0008】
関連する技術として、下記の特許文献1には、吸着ノズルによる部品吸着動作及び部品搭載動作のそれぞれの動作について少なくとも1回の撮像を行い、取得した画像をデータベースに保存することにより、部品の装着状態を確認する装着部品検査方法が記載されている。特許文献1記載の装着部品検査方法では、部品の装着状態が悪い場合には、不良の原因を確認できる。
【0009】
しかしながら、特許文献1記載の装着部品検査方法では、部品装着後に不良があれば、その不良が発生した部品の、データベースに保存されている吸着動作及び搭載動作の画像にアクセスし、ユーザなどが確認および解析を行うものであり、搭載点毎のリアルタイムの検査を行わないので、不良発生原因に対して即座に対処することができない。
【0010】
また、下記の特許文献2には、吸着動作に関する1枚もしくは複数の部品吸着位置の画像を取得し、エラー発生時に識別することにより、吸着動作を検査するピックアンドプレース機械が記載されている。特許文献2記載のピックアンドプレース機械では、エラー情報を検出して表示することにより、オペレータまたは機械は修正措置を取ることができる。
【0011】
しかしながら、特許文献2では、吸着前後の少なくとも1つの画像に、例として既知のエッジ検出および配置アルゴリズムといった画像分析技術を用い、部品の方向、位置、サイズ、部品の存在の情報を発生させることができると記述されているが、既知のエッジ検出および配置アルゴリズムを用いた実現手段については明確にされていない。さらに、特許文献2では、ぶれ検出技術というものを用いて、上述の情報を発生させる、もしくは発生の手助けをするとの記述があるが、ぶれ検出技術の例として挙げられているフーリエ変換分析や自動相関技術はどちらも部品自体を認識するものである。そのため、ティーチングが必要なことや、処理が重くタクトがかかるので、特許文献2記載のピックアンドプレース機械ではリアルタイムでの検査は行えないものと考えられる。なお、高速な検査を行うために、例えば強力なCPUを用いて複雑な処理に対応することも考えられるが、コストアップに繋がってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−098411号公報
【特許文献2】特表2008−516453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、吸着ノズルにより吸着される前の電子部品の状態について、簡易かつ高速に判定する部品検査方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の部品検査方法は、キャリアテープの部品収納部に収納された部品を吸着ノズルで吸着して所定の部品搭載位置に移載するにあたり、現在の吸着位置と1つ前の吸着位置を含む画像を取得する画像取得ステップと、前記画像のうちの前記現在の吸着位置を含む第1のウインドウの輝度と、予め設定された第1の閾値と、を比較する第1の比較ステップと、前記第1の比較ステップでの比較結果に基づき、前記部品収納部内の前記部品が表であるか又は前記部品収納部内の前記部品が表でないか、を判定する第1の判定ステップと、を備える。
【0015】
本発明の好ましい態様としては、前記第1の判定ステップで前記部品収納部内の前記部品が表でないと判定された場合に、前記第1のウインドウの輝度と、前記画像のうちの1つ前の吸着位置を含む第2のウインドウの輝度に基づき算出された第2の閾値と、を比較する第2の比較ステップと、前記第2の比較ステップでの比較結果に基づき、前記部品収納部内の前記部品が裏であるか又は前記部品収納部内に前記部品が収納されていないか、を判定する第2の判定ステップと、を更に備えることが好ましい。
【0016】
本発明の好ましい態様としては、前記第2の判定ステップで前記部品収納部内に前記部品が収納されていないと判定された場合に、前記第1のウインドウの画像データを評価値として蓄積保存する蓄積保存ステップを更に含み、前記第2の比較ステップは、前記第1の判定ステップで前記部品収納部内の前記部品が表でないと判定された場合に、前記第1のウインドウの輝度と、前記蓄積保存ステップで蓄積保存された評価値に基づき算出される参考値と、を比較することが好ましい。
【0017】
本発明の好ましい態様としては、前記第2の判定ステップで前記部品収納部内に前記部品が収納されていないと判定された場合に、前記キャリアテープを1コマ送り出す第1の送り出しステップと、現在の吸着位置に前記部品が現れるまで前記画像取得ステップ、前記第1の比較ステップ、前記第1の判定ステップ及び前記第1の送り出しステップを繰り返すことにより、部品頭出しを行う部品頭出しステップと、を備えることが好ましい。
【0018】
本発明の好ましい態様としては、前記第2の判定ステップで前記部品収納部内に前記部品が収納されていないと判定された場合に、前記吸着ノズルの軸線方向の位置が前記キャリアテープを送り出すことが可能であれば、前記キャリアテープを1コマ送り出す第2の送り出しステップを更に含むことが好ましい。
【0019】
本発明の好ましい態様としては、前記第2の判定ステップで前記部品収納部内の前記部品が表裏反転と判定された場合に、この部品に対して吸着動作を実施するとともに吸着している部品を廃棄するステップを更に含むことが好ましい。
【0020】
また、本発明の部品検査装置は、キャリアテープの部品収納部に収納された部品を吸着ノズルで吸着して所定の部品搭載位置に移載するにあたり部品を検査する装置であって、現在の吸着位置と1つ前の吸着位置を含む画像を撮像する撮像装置と、前記画像のうちの前記現在の吸着位置を含む第1のウインドウの輝度と、予め設定された第1の閾値と、を比較し、前記部品収納部内の前記部品が表であるか又は前記部品収納部内の前記部品が表でないか、を判定する表判定処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、吸着ノズルにより吸着される前の電子部品の状態について、簡易かつ高速に判定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施形態にかかる表面実装装置を示す斜視図である。
図2図2は、移載ヘッドの拡大斜視図である。
図3図3は、撮像装置の正面図である。
図4図4は、撮像装置で撮像された電子部品吸着位置の画像の一例を示す図である。
図5図5は、キャリアテープの巻き終わりの部分を示した上面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る電子部品の検査装置の構成を示すブロック図である。
図7-1】図7−1は、吸着対象部品の表面を示す図である。
図7-2】図7−2は、吸着対象部品の裏面を示す図である。
図8図8は、吸着前検査装置の吸着前検査動作を示すフローチャートである。
図9図9は、撮像装置で撮像された吸着前画像の一例を示す図である。
図10図10は、吸着位置輝度平均と、閾値との関係を示す図である。
図11図11は、吸着前検査装置の部品頭出し動作を示すフローチャートである。
図12図12は、キャリアテープの巻き終わり部分の画像の一例を示す図である。
図13図13は、メイン制御装置のキャリアテープ送り制御動作を示すフローチャートである。
図14-1】図14−1は、電子部品の表の画像を示す図である。
図14-2】図14−2は、電子部品が収納されていない空の部品収納部の画像を示す図である。
図14-3】図14−3は、電子部品の裏の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明にかかる部品吸着前検査方法及び装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0024】
図1は、本実施形態にかかる表面実装装置を示す斜視図である。図1に示すように、基台1の中央部には、搬送路2が水平の第1の方向(X軸方向)に延びるように配置されている。搬送路2は、基板3を搬送すると共に搬送路2上で基板3を保持し位置決めする。すなわち、搬送路2は、基板保持部を兼ねている。搬送路2の水平且つX軸方向と直交する方向(Y軸方向)両側には、電子部品の供給部4が配置されている。各供給部4には、複数のパーツフィーダ5がX軸方向に配列されている。パーツフィーダ5は、電子部品を保持したキャリアテープをテープ長方向がY軸方向又はY軸方向と逆方向となるように収納している。パーツフィーダ5は、このキャリアテープをテープ長方向、すなわちY軸方向またはY軸方向と逆方向に送ることにより、電子部品を順次供給する。
【0025】
搬送路2の一方の端部の垂直方向上方(Z軸方向)には、搬送路2の一方の端部を跨ぐように、略コの字状のY軸テーブル8Aが配置されている。搬送路2の他方の端部の垂直方向上方(Z軸方向)には、搬送路2の他方の端部を跨ぐように、略コの字状のY軸テーブル8Bが配置されている。Y軸テーブル8A、8B間には、X方向に延びるX軸テーブル6が架設されている。X軸テーブル6は、Y軸テーブル8A、8Bに両端部を支持されて架設されている。X軸テーブル6は、Y軸テーブル8A、8BによってY方向に移動可能である。
【0026】
X軸テーブル6の垂直方向下面には、電子部品を供給部4から基板3に移載する移載ヘッド7が装着されている。移載ヘッド7は、X軸テーブル6によってX軸方向に移動可能である。したがって、移載ヘッド7は、X軸テーブル6およびY軸テーブル8A、8Bによって水平(X−Y平面)移動可能である。つまり、X軸テーブル6およびY軸テーブル8A、8Bは移動手段となっている。
【0027】
図2は、移載ヘッド7の拡大斜視図である。本実施形態では、移載ヘッド7は、4個の吸着ノズルを有することとしているが、本発明はこれに限られない。移載ヘッド7は、1個のベース部材52と、4個のホルダ54と、を備える。
【0028】
ベース部材52は、X−Z平面方向に拡がる垂直部材52aと、垂直部材52aの上端にX軸方向に配列された4個の水平部材52bと、を有する。各水平部材52bは、X−Y平面方向に拡がる。各水平部材52bには、ホルダ54を昇降動作させるZ軸モータ13が、その出力軸が垂直方向下向きになるように配置されている。
【0029】
各ホルダ54は、X−Y平面方向に拡がる第1〜第3の水平部材54a〜54cと、X−Z平面方向に拡がり、第1〜第3の水平部材54a〜54cを連結する垂直部材54dと、を有する。第1の水平部材54aには、ノズルシャフト11をθ方向(Z軸を回る方向)に回転させるθ軸モータ12が、その出力軸が垂直方向下向きになるように配置されている。第2、第3の水平部材54b、54cには、孔54e、54fがそれぞれ形成されている。孔54e、54fを貫くように、ノズルシャフト11が設けられている。
【0030】
ノズルシャフト11の下端部には、電子部品を吸着する吸着ノズル10が着脱自在に設けられている。吸着ノズル10の下端部には、エアを吸引するための吸着孔が設けられている。吸着ノズル10は、この吸着孔からエアを吸引することにより、パーツフィーダ5から電子部品を吸着し、基板3上に移載する。ノズルシャフト11の上端部は、θ軸モータ12の出力軸に結合され、ノズルシャフト11は、θ軸モータ12を回転させることにより、各軸独立でθ方向(Z軸を回る方向)に回転可能である。
【0031】
ベース部材52の垂直部材52aのY軸方向側の側面には、凹部52cが垂直方向に延びるように形成されている。この凹部52cは、ホルダ54の垂直部材54dのY軸方向と反対方向の側面に垂直方向に延びるように形成された凸部54gと係合する。そして、Z軸モータ13の出力軸は、ボールねじ56を介してホルダ54に接続されている。そのため、ホルダ54ひいてはノズルシャフト11は、Z軸モータ13の出力軸を回転させることにより、各軸独立で昇降動作が可能である。
【0032】
再び図1を参照すると、搬送路2と供給部4との間の移載ヘッド7の移動経路には、カメラ9が配設されている。カメラ9は、移載ヘッド7ひいては吸着ノズル10を下方から撮像する。カメラ9が、電子部品を保持した状態の移載ヘッド7を撮像することにより、電子部品の識別、位置ずれ検出を行うことができる。また、移載ヘッド7は、吸着ノズル10の吸着位置を撮像する撮像装置14を備えている。
【0033】
図3は、撮像装置14の正面図である。移載ヘッド7に取り付けられた撮像装置14は、1つまたは複数のカメラ15を備える。撮像装置14は、部品レベルで吸着ノズル10の吸着位置を撮像するために、1つのノズルに対し1つ又は複数のノズルに対し1つのカメラ15を備える。1つのカメラ15で全ての吸着ノズル10の吸着位置を撮像可能な場合は、1つのカメラ15により全ての吸着ノズル10の吸着位置を一括で撮像しても良い。
【0034】
図4は、撮像装置14で撮像された電子部品吸着位置の画像の一例を示す図である。撮像装置14は、撮像装置14とパーツフィーダ5との位置関係により、図4に示すような電子部品吸着位置を斜め上方から捉えた画像を取得することになる。図4において、画像58の中央部には、電子部品が収納されているキャリアテープ16が撮像されている。キャリアテープ16は、部品種により様々な材質や色が存在するが、ここでは紙テープを例とする。図4中の矢印50は、キャリアテープ16のテープ長方向を示している。
【0035】
図4において、画像58には、キャリアテープ16上の2個の部品収納部19a、19bが撮像されている。部品収納部19aには、現在吸着及び搭載の対象となっているチップ部品17が収納されている。チップ部品17の略中央部には、チップ部品17の吸着位置18が位置する。部品収納部19bは、1つ前に既に実装が完了したチップ部品が収納されていた所であり、現在は空になっている。現在実装対象となっているチップ部品17が収納されている部品収納部19aより前の部品収納部は、吸着及び搭載が正常に完了していれば空の状態となっている。キャリアテープ16には送り穴20が形成されており、パーツフィーダ5はこの送り穴20を用いてキャリアテープ16を次の部品の吸着位置へと送る。
【0036】
図5は、図4と同様のキャリアテープ16の巻き終わりの部分を示した上面図である。ここで、パーツフィーダ5のリールに巻かれたキャリアテープ16の内側の端部分を巻き始め、パーツフィーダ5にかけられて先に実装が行われていく外側の端部分を巻き終わりと呼ぶ。図5中の矢印50は、キャリアテープ16のテープ長方向を示す。図5に示すように、キャリアテープ16の巻き終わりの部分には、複数個の空の状態の部品収納部19c〜19gが設けられている。よって、チップ部品の実装を開始するには、まず部品収納部19c〜19gが空の状態であることを判断し、吸着ノズル10の吸着位置にチップ部品の収納開始地点の部品収納部19hをセットするという、部品頭出しの作業が行われる。
【0037】
図6は、本発明の一実施形態に係る電子部品の検査装置の構成を示すブロック図である。図6に示すように、この検査装置60は、吸着位置を撮像する撮像装置14と、装置全体を制御するメイン制御装置20と、電子部品の吸着前検査を行う吸着前検査装置30と、を備える。メイン制御部20は、各種処理を実行するメインCPU21を備える。
【0038】
吸着前検査装置30は、撮像装置14で撮像された吸着前画像を記憶しておく書き換え可能メモリである吸着前画像記憶部31と、電子部品の吸着前状態を判定する吸着前状態判定処理部32と、吸着前状態判定処理部32による判定結果を記憶する書き換え可能メモリである判定結果記憶部33と、判定結果記憶部33に記憶された判定結果に基づき処理を行う吸着前検査結果処理部34と、を備える。
【0039】
吸着前状態判定処理部32は、吸着位置参照処理部32−1と、特徴量算出処理部32−2と、表判定処理部32−3と、部品ポケット参照処理部32−4と、部品なし判定処理部32−5と、部品なしパラメータ保存処理部32−6と、を備える。吸着前状態判定処理部32、吸着位置参照処理部32−1、特徴量算出処理部32−2、表判定処理部32−3、部品ポケット参照処理部32−4、部品なし判定処理部32−5、部品なしパラメータ保存処理部32−6、及び、吸着前検査結果処理部34は、CPU(Central Processing Unit)とソフトウェア(プログラム)で実現することもできるし、ハードワイヤード回路で実現することもできる。ソフトウェア(プログラム)は、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録しておいても良いし、LAN(Local Area Network)やインターネット経由でダウンロードしても良い。
【0040】
撮像装置14は、メイン制御装置20から撮像開始指令信号を受けると、吸着前画像の撮像を行う。吸着前検査装置30は、撮像装置14から部品レベルの吸着前画像を取得すると、吸着前画像記憶部31に記憶する。吸着前状態判定処理部32の吸着位置参照処理部32−1は、吸着前画像から得られる特徴量を利用し、吸着位置にウインドウを設定する。特徴量算出処理部32−2は、ウインドウ内の画像特徴量を算出する。表判定処理部32−3は、吸着位置の特徴量と予め設定されたパラメータとして持っている表判定特徴量とを比較し、電子部品が表と判定した場合は『正常』を吸着前状態として判定結果記憶部33に格納する。
【0041】
表判定処理部32−3が電子部品が表ではないと判定した場合、部品ポケット参照処理部32−4は、1つ前の部品の吸着位置(部品収納部に存在)である部品ポケット(部品収納部)にウインドウを設定し、特徴量算出処理部32−2は、ウインドウ内の画像特徴量を算出する。部品なし判定処理部32−5は、吸着位置の特徴量と部品ポケット(部品収納部)の特徴量とを比較し、部品ポケット(部品収納部)と判定した場合は『部品なし』、部品ポケット(部品収納部)ではないと判定した場合は『表裏反転』を吸着前状態として判定結果記憶部33に格納する。吸着前検査結果処理部34は、この判定結果を使用して検査結果をメイン制御装置20に出力する。部品なしパラメータ保存処理部32−6は、部品なし判定処理部32−5で『部品なし』と判定されたデータの特徴量を評価値として蓄積保存する。
【0042】
ここで、吸着前検査装置30の吸着前検査動作での吸着対象部品について説明する。図7−1は、吸着対象部品の表面を示す図であり、図7−2は、吸着対象部品の裏面を示す図である。ここでは、吸着対象部品として、図7−1に示すような、表面が黒色のボディ部分41と、ボディ部分41の両端に形成された電極部分42と、を持つチップ部品40を例にとる。このチップ部品40の裏面は、図7−2に示すように、ボディ部分41が白色である。
【0043】
図8は、吸着前検査装置30の吸着前検査動作を示すフローチャートである。以下、図8を参照しながら、吸着前検査装置30の吸着前検査動作について説明する。
【0044】
まず、吸着位置参照処理部32−1は、ステップS1において、撮像装置14で撮像された画像を取得し、吸着ノズルの吸着位置に第1のウインドウを設定する(画像取得ステップに対応)。
【0045】
図9は、撮像装置14で撮像された吸着前画像の一例を示す図である。吸着位置参照処理部32−1は、図9に示すようなチップ部品40の吸着前画像45を参照し、撮像位置の関係から算出した吸着ノズルの吸着位置に第1のウインドウを設定する。吸着前画像45には、少なくとも、現在実装対象となっているチップ部品40が収納されている部品ポケット(部品収納部)18aと、1つ前のチップ部品が収納されていた部品ポケット(部品収納部)18bと、が写っているものとする。ここでは理解の容易のため、吸着前画像45の背景は紙テープ(キャリアテープ)の白色とする。図9中の矢印50はテープ長方向を示している。部品ポケット(部品収納部)18bに収納されていたチップ部品は既に実装が完了しているので、部品ポケット(部品収納部)18bは空の状態である。
【0046】
吸着位置参照処理部32−1は、第1のウインドウのウインドウサイズを、チップ部品40のボディ部分41のみにウインドウがかかるよう電極部分42を除外したサイズにするため、例えば予め設定された部品サイズの値を利用し、幅、高さともに3分の1の長さに設定する。部品種によりパラメータ(幅、高さ)は可変としても良い。また、吸着位置参照処理部32−1は、エッジ抽出等の画像処理操作によりボディ部分41を認識し、その領域の中で第1のウインドウを設定しても良い。このようにして決定した第1のウインドウを吸着位置ウインドウ43とする。
【0047】
次に、特徴量算出処理部32−2は、ステップS2において、ステップS1で設定された吸着位置ウインドウ43の各画素の輝度値を参照し、それらの平均値を算出する。この平均値を吸着位置輝度平均とし、対象部品の吸着前状態の評価値とする。
【0048】
次に、表判定処理部32−3は、ステップS3において、ステップS2で算出された吸着位置輝度平均と、予め設定されたパラメータである表判定閾値と、を比較する(第1の比較ステップに対応)。
【0049】
図10は、吸着位置輝度平均と、閾値との関係を示す図である。図10において、第1の閾値は、同照明条件下で取得した、チップ部品40のボディ部分41の表面の輝度値を参考に予め設定されたパラメータである表判定閾値である。第2の閾値は、後述する、部品ポケット(部品収納部)の輝度平均を参考値として、参考値を高い方に一定の幅を持たせた閾値(部品なし判定の上限値)である。表判定処理部32−3は、ステップS2で算出された吸着位置輝度平均と、ステップS3で予め設定されたパラメータである表判定閾値と、を比較することにより、吸着位置輝度平均が表である(正常)か、表でない(異常)か、を判定する。
【0050】
表判定処理部32−3は、ステップS4において、吸着位置輝度平均が表判定閾値以下であり、判定結果が表であったら(Yes)、ステップS5に進み、検査対象となるチップ部品40の吸着前状態は『正常』と判定する(第1の判定ステップに対応)。
【0051】
一方、表判定処理部32−3は、ステップS4において、判定結果が表でなかったら(No)、ステップS6に進む。
【0052】
部品ポケット参照処理部32−4は、ステップS6において、ステップS1と同一の吸着前画像45を参照し、部品ポケット(部品収納部)18bに第2のウインドウを設定する。部品ポケット参照処理部32−4は、部品ポケット(部品収納部)18bの中心位置を、チップ部品40の吸着位置、撮像装置14と撮像対象との位置関係、部品データのパラメータとしての部品収納間隔という既知のパラメータより、算出可能である。部品ポケット参照処理部32−4は、算出した中心位置に、吸着位置ウインドウ43と同サイズの第2のウインドウを設定する。また、部品ポケット参照処理部32−4は、吸着位置ウインドウ43と同様に、エッジ抽出等の画像処理操作により部品ポケット(部品収納部)18bを認識し、その領域の中で第2のウインドウを設定しても良い。このようにして設定された第2のウインドウを前吸着位置ウインドウ44(図9参照)とする。
【0053】
部品ポケット参照処理部32−4は、ステップS7において、ステップS6で設定した前吸着位置ウインドウ44の各画素の輝度値を参照し、それらの平均値を算出する。この平均値を部品ポケット輝度平均とする。
【0054】
部品なし判定処理部32−5は、ステップS8において、部品ポケット参照処理部32−4は、吸着位置輝度平均と、部品ポケット輝度平均と、を比較し(第2の比較ステップ)、ステップS4で表でないと判定されたチップ部品40が、『表裏反転』であるのか、『部品なし』であるのかを判定する(第2の判定ステップ)。部品なし判定処理部32−5は、ステップS2で算出された吸着位置輝度平均がステップS7で算出された部品ポケット輝度平均付近であったら『部品なし』と判定し、そうでなかったら『表裏反転』であると判定する。詳細には、部品なし判定処理部32−5は、図10に示すように、下限に表判定閾値、上限に部品なし判定の上限値を設定した範囲内に、ステップS2で算出された吸着位置輝度平均が含まれたら『部品なし』と判定し、上記範囲内に吸着位置輝度平均が含まれなかったら『表裏反転』と判定する。部品なし判定の上限値の設定は、ユーザ入力により可変としても良く、自動設定として、例えば、部品ポケット輝度平均を算出した領域の平滑化処理(空間フィルタを使用)後の最大値を用いても良い。
【0055】
なお、先に説明したように、部品なしパラメータ保存処理部32−6は、部品なし判定処理部32−5で『部品なし』と判定されたデータの特徴量を評価値として蓄積保存している(蓄積保存ステップに対応)。そこで、部品なし判定処理部32−5は、吸着位置輝度平均と比較する値として、蓄積保存された評価値に基づき算出(例えば、算術平均)される参考値を用いることとし、この参考値と吸着位置輝度平均とを比較しても良い(第2の比較ステップに対応)。これにより、部品なし判定処理部32−5は、吸着前検査装置30の稼働時間が長くなればなるほど高精度に『部品なし』を判定することができる。
【0056】
部品なし判定処理部32−5は、ステップS8で吸着位置輝度平均が部品ポケット輝度平均付近であると判定したら、つまり吸着位置輝度平均が上記範囲内に入っていると判定したら(Yes)、ステップS9において、検査対象であるチップ部品40の吸着前状態は『部品なし』と判定する。一方、部品なし判定処理部32−5は、ステップS8で吸着位置輝度平均が部品ポケット輝度平均付近ではないと判定したら、つまり吸着位置輝度平均が上記範囲内に入っていないと判定したら(No)、ステップS10において、検査対象であるチップ部品40の吸着前状態は『表裏反転』と判定する。
【0057】
なお、部品なし判定処理部32−5が、検査対象であるチップ部品40の吸着前状態は『表裏反転』と判定したら、メイン制御装置20は、検査対象であるチップ部品40を吸着後、廃棄するように移載ヘッド7を制御するものとする。このようにすることで、検査対象の1つ前の部品ポケット(部品収納部)は空であるという前提が維持される。
【0058】
本実施形態に係る吸着前検査装置30によれば、吸着位置輝度平均と、予め設定されたパラメータである表判定閾値と、を比較することにより、吸着位置の電子部品が表である(正常)か、表でない(異常)か、を判定することができる。これにより、吸着前検査装置30は、高速かつ少ないメモリでリアルタイムの検査を行うことができる。
【0059】
また、吸着前検査装置30によれば、吸着位置の電子部品が表でない(異常)場合に、吸着位置輝度平均と、1つ前の部品ポケットの輝度に基づいて算出される部品ポケット輝度平均と、を比較することにより、吸着位置の電子部品が裏(表裏反転)であるか、部品なしであるか、を判定することができる。このように、吸着前検査装置30は、同一画像の中で部品がない部分である1つ前の部品ポケット部分の画像を参照することにより、高速かつ少ないメモリでリアルタイムの検査を行うことができる。
【0060】
また、吸着前検査装置30は、吸着前の部品状態の検査において、電子部品の表裏反転の状態を判定することにより、不良品(電子部品が裏のまま実装された基板)の発生を防ぐことができる。
【0061】
また、吸着前検査装置30は、吸着前の部品状態の検査において、部品がない状態を判定することにより、吸着エラーを出すことができ、無駄な吸着のリトライ動作を省くことができる。特に、連続して部品がない状態をつくることで2本のテープの継ぎ目を判断するスプライシング検知において有効である。
【0062】
また、吸着前検査装置30は、部品頭出しを行うこともできる。先に説明した図5に示すように、キャリアテープ16の巻き終わりの部分には、複数個の空の状態の部品収納部19c〜19gが設けられている。よって、チップ部品の実装を開始するには、まず部品収納部19c〜19gが空の状態であることを判断し、吸着ノズル10の吸着位置にチップ部品の収納開始地点の部品収納部19hをセットするという、部品頭出しの作業が必要である。
【0063】
図11は、吸着前検査装置30の部品頭出し動作を示すフローチャートである。以下、図11を参照しながら、吸着前検査装置30の部品頭出し動作について説明する。なお、吸着前検査装置30は、図11に示す部品頭出し動作を、複数のパーツフィーダに対して同時に行うようにしても良い。
【0064】
まず、撮像装置14は、ステップS21において、キャリアテープ16の巻き終わり部分(図5参照)の画像を取得する。
【0065】
図12は、キャリアテープ16の巻き終わり部分の画像の一例を示す図である。図12の矢印50はテープ長方向を示している。画像46には、少なくとも実装対象の位置にある部品収納部18dとその1つ前の部品収納部18cが写っているものとする。また、部品頭出しは、キャリアテープ16の部品が収納されている先頭までテープを送る動作であるので、部品頭出しを開始する時点では両者(部品収納部18c、18d)が空の状態であることを前提として説明する。
【0066】
次に、部品ポケット参照処理部32−4は、ステップS22において、ステップS21で取得した画像46を参照し、1つ前の部品収納部18cにウインドウを設定する。部品ポケット参照処理部32−4は、1つ前の部品収納部18cの中心位置を、実装対象位置にある部品収納部18dに対する吸着位置、撮像装置14と撮像対象との位置関係、部品データのパラメータとしての部品収納間隔という既知のパラメータより算出することができる。ウインドウサイズは、例えば予め設定された部品サイズの値を利用し、幅、高さともに3分の1の長さに設定する。部品種によりパラメータ(幅、高さ)は可変としても良い。また、エッジ抽出等の画像処理操作により部品収納部18cを認識し、その領域の中でウインドウを設定しても良い。このようにして決定したウインドウを1つ前部品収納部ウインドウ47とする。
【0067】
次に、特徴量算出処理部32−2は、ステップS23において、ステップS22で設定した1つ前部品収納部ウインドウ47の各画素の輝度値を参照し、それらの平均値を算出する。この平均値を1つ前部品収納部輝度平均とし、空の状態の部品収納部を示す評価値とする。
【0068】
次に、吸着位置参照処理部32−1は、ステップS24において、ステップS22と同様に画像46を参照し、実装対象位置にある部品収納部18dにウインドウを設定する。吸着位置参照処理部32−1は、ウインドウを、吸着位置を中心にステップS22と同じサイズとする。ここで決定したウインドウを対象部品収納部ウインドウ48とする。
【0069】
次に、特徴量算出処理部32−2は、ステップS25において、ステップS24で設定した対象部品収納部ウインドウ48の各画素の輝度値を参照し、それらの平均値を算出する。この平均値を対象部品収納部輝度平均とし、実装対象位置にある部品収納部の状態を示す評価値とする。
【0070】
次に、表判定処理部32−3は、ステップS26において、ステップS23、S25でそれぞれ求められた1つ前部品収納部輝度平均と対象部品収納部輝度平均とを比較し、1つ前部品収納部輝度平均と対象部品収納部輝度平均とが同じ付近の値であるか否かを判定する。詳細には、表判定処理部32−3は、対象部品収納部輝度平均が、1つ前部品収納部輝度平均に対して上下に一定の幅の値を持たせた範囲内に含まれるか否かを調べる。対象部品収納部輝度平均が上記範囲内に含まれると、対象部品収納部輝度平均と1つ前部品収納部輝度平均とは同じ付近の値であるといえる。この一定の幅は、ユーザ入力により可変としても良い。
【0071】
表判定処理部32−3は、ステップS27において、ステップS26での比較結果が対象部品収納部輝度平均と1つ前部品収納部輝度平均とが同じ付近の値であると判定したら(Yes)、ステップS28に進む。表判定処理部32−3は、ステップS28において、実装対象位置にある部品収納部18dの状態が『部品なし』であると判定し、メイン制御装置20は、キャリアテープ16を1コマ送り出す(第1の送り出しステップに対応)。
【0072】
次に、部品なしパラメータ保存処理部32−6は、ステップS29において、部品収納部の『部品なし』状態を示す評価値を参考値のパラメータとして保存する。パラメータとして、例えば蓄積した評価値から平均値や中央値を使用しても良い。あらかじめ複数の『部品なし』状態からパラメータを取得しておくことで、例えば画像46の1つ前の部品収納部19cに部品が残ってしまった場合に、1つ前の部品に対しては実装エラーを出すことができ、実装対象部品に対してはパラメータとの比較により検査を行うことができる。
【0073】
表判定処理部32−3は、ステップS27において、ステップS26での比較結果が対象部品収納部輝度平均と1つ前部品収納部輝度平均とが同じ付近の値ではないと判定したら(No)、ステップS30に進む。表判定処理部32−3は、ステップS30において、実装対象位置にある部品収納部18dの状態が『部品あり』であると判定する。
【0074】
部品頭出し動作では、吸着前検査装置30は、『部品あり』の状態が出現するまで、図11に示す処理を繰り返す(部品頭出しステップに対応)。よって、吸着前検査装置30は、図5に示すキャリアテープ16において、部品収納部19c、19dから比較検査を開始すると、次は部品収納部19d、19eの比較検査を行い、同様に進めていくと、部品収納部19g、19hの比較検査で初めて部品収納部19hの『部品あり』状態を検出し、部品頭出し動作が完了する。
【0075】
本実施形態に係る吸着前検査装置30によれば、部品頭出しを自動で行うことにより、ユーザの負担を減らすことができる。また、吸着前検査装置30は、部品頭出しを複数のパーツフィーダに対して同時に行うことにより、準備工程にかかる時間を短縮することができる。
【0076】
さらに、吸着前検査動作や部品頭出し動作の判定結果を利用して、メイン制御装置20はキャリアテープ送り制御を行うことができる。
【0077】
図13は、メイン制御装置20のキャリアテープ送り制御動作を示すフローチャートである。以下、図13を参照しながら、メイン制御装置20のキャリアテープ送り制御動作について説明する。
【0078】
まず、メイン制御装置20は、ステップS41において、部品の吸着前状態を捉えている画像を撮像装置14に撮像させる。次に、メイン制御装置20は、ステップS42において、部品の吸着前状態について『正常』か、『表裏反転』か、『部品なし』かを判定する。例えば、メイン制御装置20は、図8に示す吸着前検査を実施しても良い。
【0079】
次に、メイン制御装置20は、ステップS43において、ステップS42での判定結果を受け、部品が存在すると判定したら(Yes)、ステップS44に進む。メイン制御装置20は、ステップS44において、部品の吸着前状態が『正常』か否かの判定結果をチェックし、『正常』であると判定したら(Yes)、ステップS45に進む。メイン制御装置20は、ステップS45において、吸着動作を実施して完了となる。
【0080】
メイン制御装置20は、ステップS44において、部品の吸着前状態が『正常』か否かの判定結果をチェックし、『正常』ではないと判定したら(No)、ステップS46に進む。メイン制御装置20は、ステップS46において、吸着動作を実施する。なお、このとき部品の吸着前状態が『表裏反転』であるので、メイン制御装置20は、ステップS47において、吸着している部品を廃棄して完了となる。
【0081】
一方、メイン制御装置20は、ステップS43において、ステップS42での判定結果が部品が存在しない、つまり、『部品なし』状態であると判定したら(No)、ステップS48に進む。メイン制御装置20は、ステップS48において、Z軸モータ13によるノズルシャフト11の降下具合を示すZ位置をチェックする。メイン制御装置20は、ステップS49において、ノズルシャフト11の現在のZ位置においてパーツフィーダ5でキャリアテープを送ることが可能か判定し、パーツフィーダ5でキャリアテープを送ることが可能と判定したら(Yes)、ステップS50に進み、パーツフィーダ5でキャリアテープを送ることが可能ではないと判定したら(No)、ステップS53に進む。
【0082】
メイン制御装置20は、ステップS49でパーツフィーダ5がキャリアテープを送ることが可能ではないと判定したら(No)、ステップS53において、ノズルシャフト11をZ軸モータ13により降下続行させ、吸着動作を行って、ステップS50に進む。
【0083】
メイン制御装置20は、パーツフィーダ5でキャリアテープを送ることが可能と判定したら(Yes)又はステップS53で吸着動作を行ったら、ステップS50において、次の部品収納部まで1コマキャリアテープを送る(第2の送り出しステップに対応)。メイン制御装置20は、ステップS51において、『部品なし』判定(ステップS43)によりフィーダ送りが必要となった回数をリトライ回数としてカウントする。メイン制御装置20は、ステップS52において、リトライ回数がユーザにより可変とする上限回数を超えていれば(Yes)部品検査及び吸着動作を終了し、超えていなければ(No)ステップS41に進み、吸着前画像の撮像を実施する。リトライ回数の上限値として、スプライシングの目印にしている連続した空の部品収納部の個数をセットすることで、スプライシングを検知することもできる。
【0084】
このように、メイン制御装置20は、吸着前の部品状態の検査結果を利用してキャリアテープの送り動作を制御することにより、稼動効率の良い部品吸着動作を行うことができる。
【0085】
なお、吸着前検査装置30は、電子部品の正常状態と部品収納部が空の状態を同時に含む吸着前画像から、部品状態の評価値として特徴量を取得しても良い。
【0086】
図14−1は、電子部品の表の画像を示す図であり、図14−2は、電子部品が収納されていない空の部品収納部の画像を示す図であり、図14−3は、電子部品の裏の画像を示す図である。
【0087】
例えば、吸着前検査装置30は、図14−1に示すチップ部品40において、図14−1中の点線矢印51の方向に輝度パターンを見ていくと、チップ部品40が表(正常)であるので、白→黒→白という輝度パターンを特徴量として取得することができる。これに対し、吸着前検査装置30は、図14−2の空の部品収納部、つまり部品なし状態は灰色となることを特徴量として取得することができる。また、吸着前検査装置30は、図14−3に示すチップ部品40において、図14−3中の点線矢印51の方向に輝度パターンを見ていくと、チップ部品40が裏(表裏反転)であるので、白→白→白という輝度パターンを特徴量として取得することができる。このように、吸着前検査装置30は、『正常』、『部品なし』以外に、『表裏反転』の状態の特徴量を取得し、吸着前状態の判定に利用しても良い。これにより、吸着前検査装置30は、吸着前状態の判定を高精度に行うことができる。
【符号の説明】
【0088】
1 基台
2 搬送路
3 基板
4 供給部
5 パーツフィーダ
6 X軸テーブル
7 移載ヘッド
8A、8B Y軸テーブル
9 カメラ
10 吸着ノズル
11 ノズルシャフト
12 θ軸モータ
13 Z軸モータ
14 撮像装置
16 キャリアテープ
17、40 チップ部品
18a〜18d、19a〜19i 部品収納部
20 メイン制御装置
30 吸着前検査装置
31 吸着前画像記憶部
32 吸着前状態判定処理部
32−1 吸着位置参照処理部
32−2 特徴量算出処理部
32−3 表判定処理部
32−4 部品ポケット参照処理部
32−5 部品なし判定処理部
32−6 部品なしパラメータ保存処理部
33 判定結果記憶部
34 吸着前検査結果処理部
60 検査装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図14-3】