(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動式の車高調整装置は、車高調整モータと、油圧ポンプとを備えている。しかしながら、一般的な自動二輪車には、車高調整モータおよび油圧ポンプなどの部品を配置する余分なスペースが車両の内部に殆どない。特に、ツアラータイプの自動二輪車では、エンジンが大きく、シートの高さが低いため、これらの部品を配置することが他の形式の自動二輪車よりも難しい。
【0005】
特許文献1の車高調整用ポンプは、車両の内部ではなく、シートフレームの側方に車高調整モータを配置している。しかしながら、車高調整モータがシートフレームの側方に配置されている場合、車高調整モータが運転中および停車中の運転者の足の邪魔になる場合がある。さらに、車高調整モータがむき出しになるので、水や埃からモータを十分に保護できない場合がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、車高調整モータを確実に保護でき、車両の大型化を抑制できる自動二輪車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、車体フレームと、シートと、後輪と、ダンパと、ポンプユニットとを含む、自動二輪車を提供する。前記車体フレームは、間隔を空けて左右方向に対向する一対のシートフレームを含む。前記シートは、前記一対のシートフレームに支持されている。前記後輪は、側面視で前記一対のシートフレームの下方に配置されており、前記車体フレームに対して上下方向に揺動可能である。前記ダンパは、前記車体フレームと前記後輪との間の衝撃を吸収する。前記ダンパは、車高を調整する油圧ジャッキを含む。前記ポンプユニットは、前記油圧ジャッキにオイルを送る油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する車高調整モータとを含む。前記車高調整モータは、前記シートの下方に位置しており、平面視で前記一対のシートフレームの間に配置されている。
前記ポンプユニットの少なくとも一部は、側面視で前記後輪の揺動領域に重なっている。
【0008】
この構成によれば、ポンプユニットに設けられた油圧ポンプが、車高調整モータによって駆動される。油圧ポンプによって送られたオイルは、ダンパに設けられた油圧ジャッキに供給される。これにより、自動二輪車の車高が調整される。車高調整モータは、一対のシートフレームに支持されたシートの下方に配置されている。さらに、車高調整モータは、自動二輪車の平面視で一対のシートフレームの間に配置されている。すなわち、車高調整モータの上方にシートが配置されており、車高調整モータの右方および左方にシートフレームが配置されている。したがって、車高調整モータをシートおよびシートフレームによって保護できる。さらに、車高調整モータが平面視で一対のシートフレームの間に配置されているので、車幅方向(左右方向)への自動二輪車の大型化を抑制できる。
後輪は、車体フレームに対して揺動領域内で上下方向に揺動可能である。この構成によれば、ポンプユニットの全体または一部が、揺動領域の一部と同じ高さに配置されており、ポンプユニットの少なくとも一部と揺動領域の一部とが左右方向に並んでいる。すなわち、自動二輪車の側面視でポンプユニットの少なくとも一部が揺動領域に重なるように、ポンプユニットの高さが抑えられている。これにより、車高の増加を抑制できる。したがって、自動二輪車の大型化を抑制できる。さらに、重心の高さを抑えられるので、自動二輪車の安定性を高めることができる。
【0009】
本発明の一態様において、前記油圧ポンプは、平面視で前後方向に対して傾いた方向に延びていてもよい。
この構成によれば、前後方向と平行な直線に沿って油圧ポンプが延びており、油圧ポンプが前後方向に対して傾いていない場合よりも、前後方向および左右方向への油圧ポンプの長さを低減できる。したがって、自動二輪車の大型化を抑制できる。
【0011】
本発明の一態様において、前記ポンプユニット全体が、平面視で前記車体フレームの右端縁および左端縁の間に配置されていてもよい。
この構成によれば、ポンプユニット全体が、平面視で車体フレームの右端縁および左端縁の間に配置されている。したがって、自動二輪車の幅を低減できる。これにより、自動二輪車の大型化を抑制できる。さらに、ポンプユニットがシートフレームの側方に配置されている場合よりも、ポンプユニットが乗車中および停車中の運転者の足の邪魔になり難いので、運転者の快適性を高めることができる。
【0012】
本発明の一態様において、前記ポンプユニットの少なくとも一部は、側面視で前記一対のシートフレームに重なっていてもよい。
この構成によれば、ポンプユニットの全体または一部が、一対のシートフレームと同じ高さに配置されており、ポンプユニットの少なくとも一部と一対のシートフレームとが左右方向に並んでいる。したがって、ポンプユニット全体が、一対のシートフレームよりも上方または下方に配置されている場合よりも、車高の増加を抑えることができる。これにより、自動二輪車の大型化を抑制できる。
【0013】
本発明の一態様において、前記ポンプユニットの少なくとも一部は、平面視で前記後輪の側方に配置されていてもよい。
前述のように、ポンプユニットの一部である車高調整モータは、平面視で一対のシートフレームの間に配置されている。さらに、この構成によれば、ポンプユニットの全体または一部が、平面視で後輪の側方に配置されている。したがって、ポンプユニットの少なくとも一部は、平面視でシートフレームと後輪との間に配置されている。これにより、自動二輪車の内部空間が効率的に利用されている。そのため、自動二輪車の大型化を抑制できる。
【0014】
本発明の一態様において、前記ポンプユニットは、前記車高調整モータを覆う保護カバーをさらに含んでいてもよい。
この構成によれば、車高調整モータが保護カバーによって覆われているので、車高調整モータに対する水や埃の付着を確実に防止できる。これにより、車高調整モータの耐久性を高めることができる。すなわち、車高調整モータの寿命を延ばすことができる。
【0015】
本発明の一態様において、前記車体フレームは、前記一対のシートフレームの一方から他方まで左右方向に延びるクロスメンバをさらに含んでいてもよい。この場合、前記ポンプユニットは、前記クロスメンバを上下方向に貫通する貫通孔を通じて、前記クロスメンバの下方から前記クロスメンバの上方まで延びていてもよい。
この構成によれば、ポンプユニットが、クロスメンバを上下方向に貫通する貫通孔を通じて、クロスメンバの下方からクロスメンバの上方まで延びている。したがって、自動二輪車の内部空間が効率的に利用されている。そのため、自動二輪車の大型化を抑制できる。
【0016】
本発明の一態様において、前記ポンプユニットは、前記車高調整モータの回転を前記油圧ポンプに伝達する歯車機構をさらに含んでいてもよい。この場合、前記歯車機構は、前記車高調整モータよりも下方に配置されていることが好ましい。
この構成によれば、車高調整モータの回転が、歯車機構を介して油圧ポンプに伝達される。車高調整モータは、歯車機構よりも上方に配置されている。したがって、歯車機構を潤滑する潤滑剤が重力によって車高調整モータの方に流れて、車高調整モータの内部に進入することを防止できる。そのため、車高調整モータを潤滑剤から保護できる。これにより、車高調整モータの耐久性を高めることができる。
【0017】
本発明の一態様において、前記ダンパは、オイルが充填されたシリンダを含んでいてもよい。この場合、前記自動二輪車は、前記シリンダの内部に接続されたオイル室とガスが充填されたガス室とに内部が仕切られたサブタンクをさらに含んでいてもよい。前記サブタンクは、左右方向において前記シリンダに対して前記ポンプユニットとは反対の方に配置されていてもよい。
【0018】
この構成によれば、サブタンクとポンプユニットとが、シリンダに対して互いに反対の方に配置されている。したがって、サブタンクとポンプユニットとが同じ側に配置されている場合よりも、シリンダに対するサブタンクおよびポンプユニットの重心の偏りが小さい。すなわち、これらの機器全体の重心がシリンダの中心線に近づく。したがって、自動二輪車の安定性を高めることができる。特に、シリンダが車両中心(車体フレームを平面視で左右方向に二等分する二等分線を含む鉛直面)に配置されている場合には、重心が車両中心に近づくので、自動二輪車の直進安定性を高めることができる。
【0019】
本発明の他の態様は、車体フレームと、シートと、後輪と、ダンパと、ポンプユニットとを含む、自動二輪車を提供する。前記車体フレームは、間隔を空けて左右方向に対向する一対のシートフレームを含む。前記シートは、前記一対のシートフレームに支持されている。前記後輪は、側面視で前記一対のシートフレームの下方に配置されており、前記車体フレームに対して上下方向に揺動可能である。前記ダンパは、前記車体フレームと前記後輪との間の衝撃を吸収する。前記ダンパは、車高を調整する油圧ジャッキを含む。前記ポンプユニットは、前記油圧ジャッキにオイルを送る油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する車高調整モータとを含む。前記車高調整モータは、前記シートの下方に位置しており、平面視で前記一対のシートフレームの間に配置されている。前記ダンパは、オイルが充填されたシリンダを含
む。前記自動二輪車は、前記自動二輪車に制動力を与える油圧式のブレーキと、ABS(アンチロックブレーキシステム)とをさらに含
む。前記ABSは、前記ブレーキに接続されたハイドロリックユニットを含み、前記ハイドロリックユニットによって前記ブレーキに加わる油圧を制御する。前記ハイドロリックユニットの少なくとも一部は、左右方向において前記シリンダに対して前記ポンプユニットとは反対の方に配置されてい
る。
【0020】
この構成によれば、ハイドロリックユニットとポンプユニットとが、シリンダに対して互いに反対の方に配置されている。したがって、ハイドロリックユニットとポンプユニットとが同じ側に配置されている場合よりも、シリンダに対するハイドロリックユニットおよびポンプユニットの重心の偏りが小さい。したがって、自動二輪車の安定性を高めることができる。特に、シリンダが車両中心に配置されている場合には、自動二輪車の直進安定性を高めることができる。
【0021】
本発明のさらに他の態様は、車体フレームと、シートと、後輪と、ダンパと、ポンプユニットとを含む、自動二輪車を提供する。前記車体フレームは、間隔を空けて左右方向に対向する一対のシートフレームを含む。前記シートは、前記一対のシートフレームに支持されている。前記後輪は、側面視で前記一対のシートフレームの下方に配置されており、前記車体フレームに対して上下方向に揺動可能である。前記ダンパは、前記車体フレームと前記後輪との間の衝撃を吸収する。前記ダンパは、車高を調整する油圧ジャッキを含む。前記ポンプユニットは、前記油圧ジャッキにオイルを送る油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する車高調整モータとを含む。前記車高調整モータは、前記シートの下方に位置しており、平面視で前記一対のシートフレームの間に配置されている。前記ダンパは、オイルが充填されたシリンダを含
む。前記自動二輪車は、前記シリンダの内部に接続されたオイル室とガスが充填されたガス室とに内部が仕切られたサブタンクと、前記自動二輪車に制動力を与える油圧式のブレーキと、ABS(アンチロックブレーキシステム)とをさらに含
む。前記ABSは、前記ブレーキに接続されたハイドロリックユニットを有し、前記ハイドロリックユニットによって前記ブレーキに加わる油圧を制御する。前記サブタンクは、左右方向における車両中心に対して前記ポンプユニットとは反対の方に配置されてい
る。さらに、前記ハイドロリックユニットの少なくとも一部は、前記車両中心に対して前記ポンプユニットとは反対の方に配置されてい
る。
【0022】
この構成によれば、サブタンクが、左右方向における車両中心(車体フレームを平面視で左右方向に二等分する二等分線を含む鉛直面)に対してポンプユニットとは反対の方に配置されている。同様に、ハイドロリックユニットの少なくとも一部が、車両中心に対してポンプユニットとは反対の方に配置されている。ポンプユニットは、油圧ポンプと車高調整モータとを含む重量物である。したがって、サブタンクおよびハイドロリックユニットをポンプユニットとは反対の方に配置することにより、自動二輪車の重心を車両中心に近づけることができる。これにより、自動二輪車の安定性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
以下の説明における前後、上下および左右の各方向は、自動二輪車1が水平面を直進走行している状態に相当する基準姿勢にあり、かつ運転者が前方を向いているときの当該運転者の視点を基準とする。左右方向は、車幅方向に相当する。
図1は、本発明の一実施形態に係る自動二輪車1の左側面図である。
図2は、車体フレーム2の左側面図である。
図3は、車体フレーム2の平面図である。
図4は、ABS15について説明するための概念図である。
【0025】
図1および
図2に示すように、自動二輪車1は、前輪Wfおよび後輪Wrと、前輪Wfおよび後輪Wrを支持する車体フレーム2と、車体フレーム2の上方に配置されたシート3とを含む。自動二輪車1は、さらに、自動二輪車1を走行させる動力を発生するエンジン4(内燃機関)と、エンジン4の動力を後輪Wrに伝達する駆動機構とを含む。
図2および
図3に示すように、車体フレーム2は、斜め上に後方に延びるヘッドパイプ5と、ヘッドパイプ5から斜め下に後方に延びるメインフレーム6と、メインフレーム6から後方に延びる左右一対のシートフレーム7と、一対のシートフレーム7を連結するクロスメンバ8と含む。
図3に示すように、一対のシートフレーム7は、前後方向に延びており、車幅方向に間隔を空けて配置されている。クロスメンバ8は、一方のシートフレーム7から他方のシートフレーム7に延びている。
図2に示すように、各シートフレーム7は、側面視で前向きに開いたY字状であり、メインフレーム6から後方に延びる上フレーム7aと、上フレーム7aよりも下方でメインフレーム6から上フレーム7aまで後方に延びる下フレーム7bとを含む。
【0026】
図1に示すように、シート3は、一対のシートフレーム7の上方に配置されている。シート3は、一対のシートフレーム7によって支持されている。シート3は、前後方向に延びている。シート3は、一人乗り用であってもよいし、二人乗り用であってもよい。
図1は、運転者が座るドライバーシート3aと同乗者が座るタンデムシート3bとを含む二人乗り用のシートが、シート3として用いられている例を示している。自動二輪車1は、運転者の足が載せられるステップS1と、同乗者の足が載せられるステップS2と、同乗者によって握られるグリップG1とを含む。グリップG1は、シート3後部の縁部に沿って配置されている。グリップG1は、シートフレーム7に固定されている。
【0027】
図1に示すように、自動二輪車1は、運転者によって操作されるハンドルH1と、ステアリングシャフトの中心軸線まわりにハンドルH1および前輪Wfと共に回転するフロントフォーク9とを含む。
図1に示すように、フロントフォーク9は、前輪Wfを回転可能に支持している。フロントフォーク9は、ヘッドパイプ5に支持されている。したがって、前輪Wfは、フロントフォーク9を介して車体フレーム2に支持されている。フロントフォーク9のステアリングシャフトは、車体フレーム2のヘッドパイプ5内に挿入されている。ステアリングシャフトは、ヘッドパイプ5に対して、ステアリング軸線(ステアリングシャフトの中心軸線)まわりに回転可能である。ハンドルH1は、ヘッドパイプ5よりも上方でフロントフォーク9に取り付けられている。ハンドルH1は、シート3よりも上方の高さでシート3よりも前方に配置されている。ハンドルH1が操作されると、前輪Wfおよびフロントフォーク9は、ハンドルH1と共に左右に回動する。これにより、自動二輪車1が操舵される。
【0028】
図1に示すように、自動二輪車1は、エンジン4の後方で車幅方向に延びるピボットシャフト10と、ピボットシャフト10の中心軸線(ピボット軸線Ap)まわりに後輪Wrと共に上下方向に揺動する左右一対のスイングアーム11と、後輪Wrと車体フレーム2との間の振動を吸収するリアサスペンション12とを含む。
図1に示すように、ピボットシャフト10は、側面視でエンジン4の後方に配置されている。ピボットシャフト10は、車体フレーム2に取り付けられている。スイングアーム11は、ピボットシャフト10から後方に延びている。スイングアーム11は、ピボットシャフト10を介して車体フレーム2に取り付けられている。スイングアーム11は、ピボット軸線Apまわりに車体フレーム2に対して上下方向に揺動可能である。
【0029】
図1に示すように、後輪Wrは、スイングアーム11の後端部に回転可能に支持されている。後輪Wrは、ピボットシャフト10およびスイングアーム11を介して車体フレーム2に支持されている。したがって、後輪Wrは、上位置と下位置との間の揺動領域内で、車体フレーム2に対して上下方向に揺動可能である。後輪Wrは、エンジン4の後方でシート3の下方に配置されている。後輪Wrは、側面視で一対のシートフレーム7の下方に配置されている。
【0030】
図4に示すように、自動二輪車1は、前輪Wfおよび後輪Wrに制動力を与える油圧式のフロントブレーキ13およびリアブレーキ14と、フロントブレーキ13およびリアブレーキ14に加わる油圧を制御することにより、前輪Wfおよび後輪Wrのロックを防止するABS15とを含む。
図4に示すように、フロントブレーキ13およびリアブレーキ14は、それぞれ、前輪Wfおよび後輪Wrに取り付けられている。フロントブレーキ13は、ハンドルH1に設けられたブレーキレバーに接続されている。フロントブレーキ13は、ブレーキレバーを用いて操作される。リアブレーキ14は、右方のステップS1の前方に設けられたブレーキペダル16に接続されている。リアブレーキ14は、ブレーキペダル16を用いて操作される。
【0031】
図4に示すように、ABS15は、前輪Wfの回転速度を検出する前輪速度検出装置17と、後輪Wrの回転速度を検出する後輪速度検出装置18と、前輪速度検出装置17および後輪速度検出装置18の検出値に基づいてフロントブレーキ13およびリアブレーキ14に加わる油圧を制御するコントロールユニット19とを含む。前輪速度検出装置17および後輪速度検出装置18は、それぞれ、前輪Wfおよび後輪Wrに取り付けられており、コントロールユニット19は、車体フレーム2に取り付けられている。
【0032】
図4に示すように、コントロールユニット19は、フロントブレーキ13およびリアブレーキ14に接続されたハイドロリックユニットHUと、前輪速度検出装置17および後輪速度検出装置18に基づいてハイドロリックユニットHUを制御するECU20(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)とを含む。ハイドロリックユニットHUは、車体フレーム2に取り付けられており、ECU20は、ハイドロリックユニットHUに取り付けられている。
【0033】
ハイドロリックユニットHUは、フロントブレーキ13およびリアブレーキ14に接続された油路を形成する本体と、本体に内蔵されたバルブと、本体の油路を介してフロントブレーキ13およびリアブレーキ14にブレーキオイルを送るポンプと、ポンプを駆動するモータとを含む。ECU20は、前輪速度検出装置17および後輪速度検出装置18の検出値に基づいて、ハイドロリックユニットHUのバルブおよびモータを制御する。これにより、前輪Wfおよび後輪Wrに加わる制動力が調整され、前輪Wfおよび後輪Wrのロックが防止される。
【0034】
図5は、後輪Wrとリアサスペンション12との位置関係を示す左側面図である。
図6は、車体フレーム2に取り付けられた状態のリアサスペンション12の左側面図である。
図7は、車体フレーム2に取り付けられた状態のリアサスペンション12の平面図である。
図8は、リアサスペンション12の左側面図である。
図9は、リアサスペンション12の平面図である。
【0035】
リアサスペンション12は、ハンドルH1に設けられたスイッチSw1(
図1参照)を用いて遠隔操作される電動式の車高調整機構(プリロード調整機構)および減衰力調整機構を備える電動サスペンション装置である。
図5に示すように、リアサスペンション12は、ダンパ21およびスプリング22を含む軸方向に伸縮可能なクッションユニットを備えている。
【0036】
図5に示すように、ダンパ21は、ダンパ21の一端部がダンパ21の他端部よりも上方に位置するように起立した姿勢で保持されている。スプリング22は、金属製の圧縮コイルバネであり、ダンパ21の中心線L1まわりにダンパ21を取り囲んでいる。スプリング22は、ダンパ21を同軸的に取り囲む筒状のケーシング23(
図8参照)内に配置されている。ダンパ21は、軸方向に伸縮可能である。スプリング22は、ダンパ21によって軸方向に圧縮されている。したがって、ダンパ21は、スプリング22の復元力によって伸長方向に押されている。
【0037】
図5に示すように、リアサスペンション12は、オイルおよびガスが充填されたサブタンク24と、クッションユニットの軸方向長さを調整するポンプユニット25と、サブタンク24およびポンプユニット25のそれぞれをダンパ21に接続する複数の配管Pi1とを含む。
図5に示すように、サブタンク24およびポンプユニット25は、ダンパ21の下端部よりも上方に配置されている。
図7に示すように、サブタンク24は、平面視でダンパ21よりも右方に配置されており、ポンプユニット25の一部は、平面視でダンパ21よりも左方に配置されている。クロスメンバ8は、ダンパ21の後方に配置されている。クロスメンバ8は、ポンプユニット25の上方に配置されている。ポンプユニット25は、クロスメンバ8を上下方向に貫通する貫通孔8aを通じて、クロスメンバ8の下方からクロスメンバ8の上方まで延びている。したがって、車高調整モータ39などのポンプユニット25の一部は、クロスメンバ8よりも上方に配置されている。
【0038】
図7に示すように、ダンパ21は、平面視で一対のシートフレーム7の間に配置されている。ダンパ21は、車両中心C1(車体フレーム2を平面視で左右方向に二等分する二等分線を含む鉛直面)に重なる位置に配置されている。ダンパ21の中心線L1は、車両中心C1の側方(車両中心C1から車幅方向に離れる方向)に配置されている。
図6に示すように、ダンパ21の中心線L1は、ダンパ21の上端に近づくほど前方に位置するように前後方向に傾いている。したがって、ダンパ21は、斜め上に前方に延びている。ダンパ21の中心線L1は、平面視で前後方向に延びている。
【0039】
図6に示すように、ダンパ21は、車体フレーム2に連結された上マウント26と、スイングアーム11を介して車体フレーム2に連結された下マウント27と、上マウント26および下マウント27の間で軸方向に伸縮するシリンダ28とを含む。
図6に示すように、上マウント26は、ダンパ21の上端部に設けられており、下マウント27は、ダンパ21の下端部に設けられている。シリンダ28は、上マウント26および下マウント27の間に配置されている。シリンダ28は、上マウント26および下マウント27に結合されている。シリンダ28は、シリンダチューブ41と、シリンダチューブ41内に配置されたピストン42と、シリンダチューブ41の下端部から軸方向に突出するピストンロッド43とを含む。上マウント26は、シリンダチューブ41に連結されており、下マウント27は、ピストンロッド43に連結されている。下マウント27は、ピストンロッド43と共に軸方向に移動する。したがって、上マウント26および下マウント27が軸方向に相対移動すると、シリンダ28が伸長または収縮する。
【0040】
図5に示すように、自動二輪車1は、上マウント26と車体フレーム2とを連結する上ブラケット29と、下マウント27とスイングアーム11とを連結するリンク機構30とを含む。
図5に示すように、上マウント26は、メインフレーム6およびピボットシャフト10よりも後方で上ブラケット29に連結されている。上マウント26は、側面視でシートフレーム7の下フレーム7bに重なっている。上マウント26の上端部は、側面視で下フレーム7bよりも上方に配置されており、上マウント26の下端部は、側面視で下フレーム7bよりも下方に配置されている。上マウント26は、側面視でスイングアーム11の上方に配置されている。スイングアーム11は、側面視で下マウント27の上方に配置されており、側面視でシリンダ28に重なっている。
【0041】
図5に示すように、リンク機構30は、第1リンク31および第2リンク32を含む複数のリンクと、複数のリンクを相対回転可能に連結する複数の連結ピン33とを含む。第1リンク31は、ダンパ21よりも側方に配置されている。第1リンク31は、側面視でダンパ21に重なっている。第1リンク31は、ピボット軸線Apよりも後方でスイングアーム11に連結されている。第1リンク31は、スイングアーム11を第2リンク32に連結している。第2リンク32は、側面視で下マウント27から前方に延びている。第2リンク32は、第1リンク31を下マウント27に連結している。これにより、下マウント27が、スイングアーム11に連結されている。したがって、ダンパ21は、リンク機構30、スイングアーム11、およびピボットシャフト10を介して車体フレーム2に連結されている。
【0042】
図5に示すように、上マウント26は、左右方向に延びる上取付軸線A1まわりに車体フレーム2に対して回転可能である。下マウント27は、左右方向に延びる下取付軸線A2まわりに車体フレーム2に対して回転可能である。したがって、シリンダ28は、上取付軸線A1および下取付軸線A2まわりに回転可能に車体フレーム2に支持されている。下取付軸線A2は、上取付軸線A1と平行であり、上取付軸線A1よりも後方に配置されている。上取付軸線A1は、側面視で下フレーム7bおよびスイングアーム11の上方に配置されており、下取付軸線A2は、側面視で下フレーム7bおよびスイングアーム11の下方に配置されている。ピボット軸線Apは、上取付軸線A1および下取付軸線A2よりも前方で、上取付軸線A1および下取付軸線A2の間の高さに配置されている。
【0043】
図9に示すように、サブタンク24は、車幅方向においてシリンダ28に対してポンプユニット25とは反対の方に配置されている。より具体的には、サブタンク24は、基準面R1の右方に配置されており、ポンプユニット25は、基準面R1の左方に配置されている。基準面R1は、上取付軸線A1に直交し、かつ、シリンダ28の中心線L1を含む平面である。シリンダ28の中心線L1は、ダンパ21の中心線L1に相当する。さらに、サブタンク24は、車両中心C1の右方に配置されており、ポンプユニット25は、車両中心C1の左方に配置されている。したがって、サブタンク24およびポンプユニット25は、基準面R1に対して互いに反対の方に配置されていると共に、車両中心C1に対して互いに反対の方に配置されている。
【0044】
図8に示すように、サブタンク24およびポンプユニット25は、上取付軸線A1を含む水平面と重なる高さで、上取付軸線A1よりも後方に配置されている。
図5に示すように、後輪Wrは、上位置(二点鎖線の位置)と下位置(一点鎖線の位置)との間の揺動領域内で、車体フレーム2に対して上下方向に揺動可能である。サブタンク24は、上位置に位置する後輪Wrに側面視で重なっており、下位置に位置する後輪Wrに側面視で重なっている。したがって、後輪Wrが揺動領域内にいずれの位置に位置しているときでも、サブタンク24は、側面視で後輪Wrに重なっている。
【0045】
図5に示すように、ハイドロリックユニットHUは、上取付軸線A1よりも後方に配置されている。ハイドロリックユニットHUは、サブタンク24よりも前方に配置されている。したがって、ハイドロリックユニットHUは、前後方向において上取付軸線A1とサブタンク24との間に配置されている。
図9に示すように、ハイドロリックユニットHUの前端部は、ダンパ21の上方に配置されており、平面視でダンパ21に重なっている。
図8に示すように、ポンプユニット25の一部とハイドロリックユニットHUは、車幅方向に並んでおり、ポンプユニット25の一部は、側面視でハイドロリックユニットHUに重なっている。
【0046】
図9に示すように、コントロールユニット19の一部は、基準面R1および車両中心C1の右方に配置されている。具体的には、ハイドロリックユニットHUの一部は、車幅方向においてシリンダ28に対してポンプユニット25とは反対の方に配置されている。ハイドロリックユニットHUは、基準面R1の右方に配置されている。ECU20は、基準面R1に重なる位置に配置されている。ハイドロリックユニットHUは、基準面R1および車両中心C1に対してポンプユニット25とは反対の方に配置されている。
【0047】
図6に示すように、ダンパ21は、スプリング22を軸方向に挟む2つのバネ受け(上バネ受け34および下バネ受け35)を含む。
図6に示すように、上バネ受け34は、下バネ受け35よりも上方に配置されている。上バネ受け34は、シリンダチューブ41に対する位置が固定されており、下バネ受け35は、シリンダチューブ41に対して軸方向に移動可能なピストンロッド43に連結されている。下バネ受け35は、ピストンロッド43と共に軸方向に移動する。したがって、上バネ受け34および下バネ受け35は、軸方向に相対移動可能である。スプリング22は、上バネ受け34および下バネ受け35の間に配置されている。スプリング22は、上バネ受け34および下バネ受け35による圧縮によって弾性域内で軸方向に弾性変形している。上バネ受け34および下バネ受け35がダンパ21の軸方向に相対移動すると、軸方向へのスプリング22の弾性変形量が変化し、ダンパ21が伸長または収縮する。そのため、ダンパ21の軸方向長さが変化する。
【0048】
図6に示すように、リアサスペンション12は、ダンパ21に設けられた油圧ジャッキ部36を含む。油圧ジャッキ部36は、シリンダ28の周囲に設けられている。油圧ジャッキ部36は、オイルが充填されたジャッキ室Cjをシリンダチューブ41の周囲に形成している。ジャッキ室Cjは、筒状であり、シリンダチューブ41を取り囲んでいる。ジャッキ室Cjは、上バネ受け34の上方に配置されている。上バネ受け34は、シリンダチューブ41に対して軸方向に移動可能である。上バネ受け34は、油圧ジャッキ部36によって一定の位置に保持されている。
【0049】
図6に示すように、ポンプユニット25は、複数のボルトB1によりクロスメンバ8に取り付けられている。ポンプユニット25は、油圧ジャッキ部36にオイルを送る油圧ポンプ37と、油圧ポンプ37に動力を伝達する歯車機構38と、歯車機構38を介して油圧ポンプ37を駆動する車高調整モータ39とを含む。ポンプユニット25は、さらに、歯車機構38および車高調整モータ39を覆う保護カバー40を含む。
【0050】
図6に示すように、油圧ポンプ37は、上取付軸線A1を含む水平面と重なる高さで、上取付軸線A1よりも後方に配置されている。
図7に示すように、油圧ポンプ37は、油圧ポンプ37の前端が油圧ポンプ37の後端よりも基準面R1および車両中心C1の方に位置するように、平面視で前後方向に対して傾いた方向に延びている。油圧ポンプ37の後端部は、平面視で後輪Wrの側方に配置されている。したがって、ポンプユニット25の一部は、平面視で後輪Wrの側方に配置されている。
図5に示すように、油圧ポンプ37は、上位置に位置する後輪Wrに側面視で重なっており、下位置に位置する後輪Wrとは側面視で重なっていない。したがって、揺動領域の一部は、側面視でポンプユニット25に重なっている。
【0051】
車高調整モータ39は、ロータおよびステータを含む電動モータである。
図6に示すように、車高調整モータ39(ロータおよびステータ)は、油圧ポンプ37よりも上方に配置されている。車高調整モータ39は、上取付軸線A1よりも上方に配置されている。
図7に示すように、車高調整モータ39は、平面視で油圧ポンプ37の前方に配置されている。同様に、歯車機構38は、平面視で油圧ポンプ37の前方に配置されている。歯車機構38は、油圧ポンプ37の前端部に連結されており、車高調整モータ39は、歯車機構38に連結されている。車高調整モータ39は、歯車機構38の上方に配置されている。したがって、歯車機構38を潤滑するグリースなどの潤滑剤が、歯車機構38から車高調整モータ39の方に流れ難い。
【0052】
図7に示すように、車高調整モータ39は、平面視で一対のシートフレーム7の間に配置されている。したがって、車高調整モータ39は、シート3の下方に配置されている。ポンプユニット25の全体は、平面視で車体フレーム2の右端縁2Rおよび左端縁2Lの間に配置されている。
図7では、右端縁2Rおよび左端縁2Lを太線で示している。
図6に示すように、車高調整モータ39および歯車機構38は、側面視でシートフレーム7の下フレーム7bと重なっている。したがって、ポンプユニット25の一部は、側面視でシートフレーム7に重なっている。車高調整モータ39は、側面視でシートフレーム7に重ならないように、上フレーム7aと下フレーム7bとの間の高さに配置されていてもよい。
【0053】
油圧ポンプ37は、容積式ポンプの一例であるピストンポンプである。油圧ポンプ37は、歯車ポンプなどの他の形式のポンプであってもよい。本実施形態に係る油圧ポンプ37は、筒状のポンプハウジング37aと、ポンプハウジング37a内でポンプハウジング37aの軸方向に延びるネジ軸と、ポンプハウジング37a内でネジ軸の外周に取り付けられたナットと、ポンプハウジング37a内に配置されたピストンとを含む。
図8に示すように、油圧ポンプ37の中心線Lp(筒状のポンプハウジング37の中心線)は、側面視で車高調整モータ39の回転軸線Amに交差している。したがって、車高調整モータ39および油圧ポンプ37は、互いに異なる直線上に配置されている。
【0054】
ポンプハウジング37aの内部は、配管Pi1によってジャッキ室Cjに接続されている。ネジ軸がその中心軸線まわりに回転すると、ネジ軸の回転が、ポンプハウジング37aの軸方向へのナットの直線運動に変換される。ピストンは、ナットと共にポンプハウジング37aの軸方向に移動する。したがって、ネジ軸が回転駆動されると、ピストンがポンプハウジング37a内をポンプハウジング37aの軸方向に移動し、オイルが吐出または吸引される。
【0055】
歯車機構38は、潤滑剤が塗布された複数の歯車を含む。本実施形態に係る歯車機構38は、互いに噛み合うウォームおよびウォームホイールを含む。歯車は、ウォームおよびウォームホイールに限らず、平歯車やはすば歯車などの他の形式の歯車であってもよい。ウォームは、車高調整モータ39の回転軸に連結されており、ウォームホイールは、油圧ポンプ37のネジ軸に連結されている。車高調整モータ39の回転は、減速機構としての歯車機構38によって減速された後、油圧ポンプ37のネジ軸に伝達される。これにより、油圧ポンプ37のピストンが軸方向に移動する。
【0056】
ポンプユニット25からのオイルが、油圧ジャッキ部36の内部(ジャッキ室Cj)に供給されると、ジャッキ室Cj内の油圧が上バネ受け34に加わり、上バネ受け34が下バネ受け35の方に移動する。したがって、上バネ受け34および下バネ受け35の間の軸方向の距離が縮まり、スプリング22が軸方向にさらに圧縮される。そのため、ダンパ21が軸方向に収縮し、車高(シート3の座面の高さ)が低くなる。その一方で、油圧ジャッキ部36内のオイルが、ポンプユニット25によって吸引されると、スプリング22の弾性復元力が、上バネ受け34を下バネ受け35から離れる方向に移動させる。これにより、ダンパ21が伸長し、車高が高くなる。
【0057】
図10は、ダンパ21の圧縮(compression)時のシリンダ28、サブタンク24、減衰力調整バルブ50、および減衰力調整モータ51を示す模式図である。
図11は、ダンパ21の反発(rebound)時のシリンダ28、サブタンク24、減衰力調整バルブ50、および減衰力調整モータ51を示す模式図である。
図12は、ダンパ21、減衰力調整バルブ50、および減衰力調整モータ51の平面図である。
図13は、ダンパ21を
図12の矢印XIIIの方向に見た図である。
【0058】
図10および
図11に示すように、シリンダ28は、内筒44および外筒45を含む複筒型のシリンダである。シリンダ28は、複筒型のシリンダチューブ41と、シリンダチューブ41内に配置されたピストン42と、シリンダチューブ41の下端部から軸方向に突出するピストンロッド43とを含む。シリンダチューブ41は、ダンパ21の軸方向に延びる内筒44と、径方向に間隔を空けて内筒44を同軸的に取り囲む外筒45とを含む。ピストン42は、内筒44内に配置されている。
【0059】
図10および
図11に示すように、内筒44は、閉じられた上端と開かれた下端とを含む断面円形の筒状部材である。外筒45は、閉じられた上端および下端を含む断面円形の筒状部材である。内筒44の一部は、外筒45内に収容されており、内筒44の残りの部分(上端部)は、外筒45の上端から軸方向に突出している。内筒44の内部は、ピストン42によって軸方向に2つに仕切られている。内筒44の内周面とピストン42との間の隙間は、シールによって密閉されている。ピストンロッド43は、ダンパ21の中心線L1に沿ってピストン42から下方に延びている。ピストンロッド43およびピストン42は、シリンダチューブ41に対して軸方向に移動可能である。ピストンロッド43は、ピストン42と共に軸方向に移動する。
【0060】
図10および
図11に示すように、内筒44およびピストン42は、ピストン42によって軸方向に仕切られた2つの内オイル室(第1内オイル室Cin1および第2内オイル室Cin2)を内筒44の内部に形成している。第1内オイル室Cin1は、ピストン42の上方の内筒44内の空間であり、第2内オイル室Cin2は、ピストン42の下方の内筒44内の空間である。内筒44および外筒45は、筒状の外オイル室Coutを内筒44の外周面と外筒45の内周面との間に形成している。第2内オイル室Cin2は、外オイル室Coutに繋がっている。第1内オイル室Cin1は、サブタンク24のオイル室Coilに接続されている。第1内オイル室Cin1、第2内オイル室Cin2、および外オイル室Coutは、オイル(作動油)で満たされている。
【0061】
図10および
図11に示すように、サブタンク24は、オイルおよびガスが充填されたタンク46と、オイルが充填されたオイル室Coilとガスが充填されたガス室Cgasとにタンク46の内部を仕切るブラダー47(bladder)とを含む。サブタンク24は、ブラダー47に代えて、フリーピストンを備えていてもよい。タンク46は、配管Pi1によってダンパ21に接続されている。サブタンク24のオイル室Coilは、後述する第2油路49を介して第1内オイル室Cin1に接続されている。オイル室Coilは、ブラダー47によって、ガス室Cgasから隔離されている。ブラダー47は、ゴムや樹脂などの弾性材料によって形成されている。オイル室Coilとガス室Cgasとの間に圧力差が生じると、ブラダー47が変位し、オイル室Coilの体積が変化する。
【0062】
図10および
図11に示すように、リアサスペンション12は、内筒44内に設けられた第1内オイル室Cin1を内筒44と外筒45との間に設けられた外オイル室Coutに接続する第1油路48と、第1内オイル室Cin1をサブタンク24のオイル室Coilに接続する第2油路49とを含む。リアサスペンション12は、さらに、第1油路48を流れるオイルに抵抗を与える減衰力調整バルブ50と、減衰力調整バルブ50の開度を調整する減衰力調整モータ51とを含む。
【0063】
図10および
図11に示すように、第1油路48および第2油路49は、内筒44および外筒45の外に配置されている。第1油路48の流路面積(流通方向に直交する断面積)は、内筒44の流路面積、すなわち、各内オイル室(第1内オイル室Cin1および第2内オイル室Cin2のそれぞれ)の流路面積よりも狭い。同様に、第2油路49の流路面積は、内筒44の流路面積よりも狭い。したがって、第1油路48および第2油路49は、各内オイル室よりも細い。
【0064】
図10および
図11に示すように、第1油路48は、第1内オイル室Cin1に接続された第1端部48aと、外オイル室Coutに接続された第2端部48bとを含む。第2油路49は、第1内オイル室Cin1に接続された第1端部48aと、オイル室Coilに接続された第2端部49bとを含む。第1油路48および第2油路49は、第1油路48内の分岐位置P1で互いに分岐している。第1油路48および第2油路49の第1端部48aから分岐位置P1までの油路(共有部分X1。ハッチングされた部分)は、第1油路48の一部であると共に、第2油路49の一部でもある。したがって、第1油路48および第2油路49は、互いの一部(共有部分X1)を共有している。
【0065】
図10および
図11に示すように、減衰力調整バルブ50は、弁体としてのニードル52を含むニードルバルブである。減衰力調整バルブ50は、ダイヤフラムバルブなどの他の形式のバルブであってもよい。ニードル52は、第1油路48内の減衰位置P2に配置されている。減衰力調整モータ51は、減衰力調整モータ51と上マウント26との間に配置されたインシュレータ53(
図12参照)を介してダンパ21に取り付けられている。減衰力調整モータ51は、減衰力調整バルブ50に接続されている。減衰力調整モータ51は、ステッピングモータである。減衰力調整モータ51は、ステッピングモータに限らず、その他の電動モータであってもよい。減衰力調整モータ51は、ニードル52をその軸方向に移動させることにより、減衰位置P2での流路面積を増減させる。これにより、第1油路48を流れるオイルに加わる抵抗が変化し、ダンパ21の減衰力が調整される。
【0066】
図10に示すように、ダンパ21の圧縮(compression)時には、ピストン42が上方に移動するので、第1内オイル室Cin1内のオイルが、第1油路48の第1端部48aを通じて第1油路48に押し出される。押し出されたオイルの一部は、第1油路48の第2端部48bを通じて外オイル室Coutに流入する。また、押し出された残りのオイルは、第2油路49を通ってサブタンク24のオイル室Coilに流入する。その一方で、
図11に示すように、ダンパ21の反発(rebound)時には、ピストン42が下方に移動するので、第2内オイル室Cin2内のオイルが、外オイル室Coutに押し出される。押し出されたオイルは、第1油路48の第2端部48bおよび第1端部48aをこの順番で通って第1内オイル室Cin1に流入する。それと共に、サブタンク24内のオイルが、第2油路49を通って第1内オイル室Cin1に流入する。
【0067】
図12および
図13に示すように、ダンパ21は、上マウント26の内部に設けられた複数の流路(第1流路54〜第4流路57)と、上マウント26に取り付けられたプラグ58およびジョイント59とを含む。
図13に示すように、第1流路54は、第1内オイル室Cin1に連なっており、第2流路55は、第1流路54に連なっている。第3流路56は、第2流路55に連なっており、第4流路57は、第3流路56に連なっている。第4流路57は、外オイル室Coutにも連なっている。後述するように、第2流路55は、サブタンク24のオイル室Coilと第1流路54との間に介在している。したがって、サブタンク24のオイル室Coilは、第2流路55と第1流路54の一部とを介して第1内オイル室Cin1に接続されている。
【0068】
図12および
図13に示すように、第1流路54〜第4流路57のそれぞれは、直線状に延びる円柱状の流路である。第1流路54〜第4流路57のそれぞれは、一端から他端まで直線状に延びている。第1流路54〜第4流路57のそれぞれは、ダンパ21の中心線L1に対して傾いた方向またはダンパ21の中心線L1に直交する方向に延びている。第1流路54〜第4流路57のそれぞれは、ドリル加工などの機械加工によって形成された連通孔である。
【0069】
図13に示すように、第1流路54および第4流路57は、ダンパ21の中心線L1に直交する方向に延びている。第1流路54および第4流路57は、互いに平行な流路である。第1流路54および第4流路57は、鉛直方向に間隔を空けて配置されている。
図12に示すように、第1流路54および第4流路57は、水平方向にも間隔を空けて配置されている。第1流路54の一端54aは、第1内オイル室Cin1で開口しており、第1流路54の他端54bは、ダンパ21(上マウント26)の外面で開口している。第4流路57の一端57aは、外オイル室Coutで開口しており、第4流路57の他端57bは、ダンパ21の外面で開口している。第1流路54の他端54bと第4流路57の他端57bとは、プラグ58によって塞がれている。
【0070】
図12に示すように、第2流路55は、第1流路54の下方に配置されており、平面視において第1流路54と重なっている。
図13に示すように、第2流路55は、第1流路54および第4流路57に対して傾いた方向に延びている。第2流路55は、下端に相当する第2流路55の他端55bが、上端に相当する第2流路55の一端55aよりもダンパ21の中心線L1に対して遠くに位置するように、ダンパ21の中心線L1に対して傾いている。第2流路55の一端55aは、第1流路54で開口しており、第2流路55の他端55bは、ダンパ21の外面で開口している。第2流路55の他端55bは、第1流路54および第4流路57よりも下方に配置されている。ジョイント59は、ボルトB1によって第2流路55の他端55bに接続されている。ダンパ21とサブタンク24とを繋ぐ配管Pi1(
図9参照)は、ジョイント59を介して上マウント26に取り付けられている。
【0071】
図13に示すように、第3流路56は、第2流路55に直交する方向(紙面の奥行方向)に延びている。さらに、
図12に示すように、第3流路56は、第1流路54および第4流路57に直交する方向に延びている。したがって、第3流路56は、第1流路54、第2流路55、および第4流路57に直交する方向に延びている。第3流路56の一端56a(
図13参照)は、第2流路55で開口しており、第3流路56の他端56b(
図12参照)は、ダンパ21の外面で開口している。第3流路56の他端56bは、第1流路54、第2流路55、および第4流路57よりも後方に配置されている。減衰力調整バルブ50は、第3流路56内に配置されている。第3流路56の他端56bは、減衰力調整モータ51およびインシュレータ53によって塞がれている。
【0072】
第1流路54〜第4流路57は、第1油路48および第2油路49を構成している。言い換えると、第1油路48および第2油路49は、第1流路54〜第4流路57を含む。
第1油路48は、第1流路54の一端54aと、第1流路54および第2流路55の交差部と、第2流路55および第3流路56の交差部と、第3流路56および第4流路57の交差部と、第4流路57の他端57bとをこの順番で通る、第1流路54の一端54aから第4流路57の他端57bまでの流路である。
【0073】
第2油路49は、第1流路54の一端54aと、第1流路54および第2流路55の交差部と、第2流路55と第3流路56との交差部と、第3流路56の他端56bとをこの順番で通る、第1流路54の一端54aから第3流路56の他端56bまでの流路である。
第1油路48および第2油路49に共有された共有部分X1は、第1流路54の一端54aと、第1流路54および第2流路55の交差部と、第2流路55および第3流路56の交差部とをこの順番で通る、第1流路54の一端54aから第2流路55および第3流路56の交差部までの流路である。
【0074】
第2流路55および第3流路56の交差部は、第1油路48および第2油路49が分岐した分岐位置P1であり、第3流路56と第4流路57との交差部は、減衰力調整バルブ50がオイルに抵抗を与える減衰位置P2である。
前述のように、第2流路55は、下端に相当する第2流路55の他端55bが、上端に相当する第2流路55の一端55aよりもダンパ21の中心線L1に対して遠くに位置するように、ダンパ21の中心線L1に対して傾いている。第2油路49は、第2流路55を含む。したがって、
図13に示すように、第2油路49の一部は、ダンパ21の中心線L1に対して傾いており、第2油路49の第1端部48aは、第2油路49の第2端部49bよりもダンパ21の中心線L1に対して遠くに配置されている。
【0075】
図12に示すように、第1油路48および第2油路49の全体は、基準面R1および車両中心C1の右方に配置されている。したがって、第1油路48および第2油路49の全体は、基準面R1および車両中心C1に対して、同じ側に配置されている。また、減衰力調整バルブ50は、基準面R1および車両中心C1の右方に配置されている。同様に、減衰力調整モータ51は、車両中心C1および車両中心C1の右方に配置されている。したがって、減衰力調整バルブ50および減衰力調整モータ51は、基準面R1および車両中心C1に対して、第1油路48および第2油路49と同じ側に配置されている。
【0076】
また、
図9に示すように、サブタンク24は、基準面R1および車両中心C1の右方に配置されている。これとは反対に、ポンプユニット25は、基準面R1および車両中心C1の左方に配置されている。したがって、サブタンク24は、基準面R1および車両中心C1に対して、第1油路48および第2油路49と同じ側に配置されており、ポンプユニット25は、基準面R1および車両中心C1に対して、第1油路48および第2油路49とは反対の方に配置されている。そのため、ポンプユニット25は、基準面R1および車両中心C1に対して、サブタンク24、減衰力調整バルブ50、および減衰力調整モータ51とは反対の方に配置されている。
【0077】
図9に示すように、減衰力調整モータ51は、平面視で基準面R1に対して傾いた方向に延びている。減衰力調整モータ51は、ハイドロリックユニットHUの下方に配置されている。
図8に示すように、減衰力調整モータ51の少なくとも一部は、シリンダ28と同じ高さに配置されている。減衰力調整モータ51は、上取付軸線A1よりも下方に配置されている。さらに、減衰力調整モータ51は、上取付軸線A1よりも後方に配置されている。前述のように、サブタンク24、油圧ポンプ37、および車高調整モータ39は、上取付軸線A1よりも後方に配置されている。したがって、減衰力調整モータ51、サブタンク24、油圧ポンプ37、および車高調整モータ39は、上取付軸線A1よりも後方に配置されている。
【0078】
以上のように本実施形態では、油圧ポンプ37を駆動する車高調整モータ39が、シート3の下方に配置されている。さらに、車高調整モータ39は、平面視で一対のシートフレーム7の間に配置されている。すなわち、車高調整モータ39の上方にシート3が配置されており、車高調整モータ39の右方および左方にシートフレーム7が配置されている。したがって、車高調整モータ39をシート3およびシートフレーム7によって保護できる。さらに、車高調整モータ39が平面視で一対のシートフレーム7の間に配置されているので、車幅方向(左右方向)への自動二輪車1の大型化を抑制できる。
【0079】
また本実施形態では、リアサスペンション12のダンパ21が、内筒44および外筒45を含む複筒型のシリンダ28を備えている。内筒44の第1内オイル室Cin1は、内筒44と外筒45との間に設けられた外オイル室Coutに第1油路48を介して接続されており、サブタンク24の内部に設けられたオイル室Coilに第2油路49を介して接続されている。第1油路48および第2油路49は、互いの一部を共有している。したがって、第1油路48および第2油路49が互いに独立した油路である場合よりも部品点数や加工工数を低減できる。しかも、第1油路48および第2油路49の全体が、基準面R1に対して同じ側に配置されているので、リアサスペンション12の幅を低減できる。これにより、リアサスペンション12を小型化できる。
【0080】
さらに本実施形態では、電動式の車高調整機構に備えられた車高調整モータ39が、バネ上部分と呼ばれるスプリング22よりも上流の部分に配置されている。同様に、電動式の減衰力調整機構に備えられた減衰力調整モータ51が、スプリング22よりも上流の部分に配置されている。バネ上部分は、バネ下部分と呼ばれるスプリングよりも下流の部分(路面の方の部分)よりも振動が小さい。したがって、車高調整モータ39および減衰力調整モータ51の振動を低減できる。これにより、車高調整モータ39および減衰力調整モータ51の耐久性を高めることができる。
【0081】
本発明の実施形態の説明は以上であるが、本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、前述の実施形態では、リアサスペンション12に備えられたダンパ21の数が、一本である場合について説明した。しかし、リアサスペンション12は、車両中心C1の右方および左方にそれぞれ配置される左右一対のダンパ21を備えていてもよい。この場合、ダンパ21の数に合わせて、サブタンク24やポンプユニット25がさらに備えられていてもよい。
【0082】
また、前述の実施形態では、サブタンク24が、配管Pi1によってダンパ21に取り付けられている場合について説明した。しかし、サブタンク24は、ダンパ21の上マウント26に直接接続されていてもよい。具体的には、サブタンク24の少なくとも一部が、上マウント26と一体であってもよい。
また、前述の実施形態では、油圧ポンプ37が、平面視で前後方向に対して傾いた方向に延びている場合について説明した。しかし、油圧ポンプ37は、平面視で前後方向に沿って延びていてもよい。
【0083】
また、前述の実施形態では、ポンプユニット25の一部が、側面視で後輪Wrの揺動領域に重なっている場合について説明した。しかし、ポンプユニット25は、側面視で後輪Wrの揺動領域に重なっていなくてもよい。
また、前述の実施形態では、ポンプユニット25全体が、平面視で車体フレーム2の右端縁2Rおよび左端縁2Lの間に配置されている場合について説明した。しかし、ポンプユニット25の一部が、平面視で車体フレーム2の右端縁2Rおよび左端縁2Lよりも側方に配置されていてもよい。
【0084】
また、前述の実施形態では、ポンプユニット25の一部が、側面視で一対のシートフレーム7に重なっている場合について説明した。しかし、ポンプユニット25は、側面視で一対のシートフレーム7に重なっていなくてもよい。
また、前述の実施形態では、ポンプユニット25の一部が、平面視で後輪Wrの側方に配置されている場合について説明した。しかし、ポンプユニット25は、平面視で後輪Wrの側方に配置されていなくてもよい。
【0085】
また、前述の実施形態では、ポンプユニット25が、クロスメンバ8を上下方向に貫通する貫通孔8aを通じて、クロスメンバ8の下方からクロスメンバ8の上方まで延びている場合について説明した。しかし、ポンプユニット25は、クロスメンバ8を上下方向に貫通していなくてもよい。
また、前述の実施形態では、車高調整モータ39全体が、車高調整モータ39の回転を油圧ポンプ37に伝達する歯車機構38の上方に配置されている場合について説明した。しかし、車高調整モータ39の一部が、歯車機構38と同じ高さまたは歯車機構38よりも下方に配置されていてもよい。また、歯車機構38が省略され、油圧ポンプ37が、車高調整モータ39によって直接駆動されてもよい。
【0086】
また、基準面R1および車両中心C1に対するシリンダ28、サブタンク24、およびポンプユニット25の位置関係は、前述の実施形態における位置関係に限らず、適宜変更されてもよい。基準面R1および車両中心C1に対する第1油路48、第2油路49、減衰力調整バルブ50、および減衰力調整モータ51の位置関係についても同様である。
また、前述の実施形態では、減衰力調整モータ51は、平面視で基準面R1に対して傾いた方向に延びている場合について説明した。しかし、減衰力調整モータ51は、平面視で基準面R1と平行な直線に沿って延びていてもよい。すなわち、減衰力調整モータ51は、平面視で前後方向に沿って延びていてもよい。
【0087】
また、前述の実施形態では、サブタンク24の方の第2油路49の第2端部49bが、シリンダ28の方の第2油路49の第1端部48aよりもシリンダ28の中心線L1に対して遠くに配置されている場合について説明した。しかし、シリンダ28の中心線L1から第2端部49bまでの距離(最短距離)は、シリンダ28の中心線L1から第1端部48aまでの距離と等しくてもよいし短くてもよい。
【0088】
また、前述の実施形態では、第1油路48および第2油路49が折れ線状である場合について説明した。しかし、第1油路48および第2油路49の形状は、これに限られない。例えば、第1油路48は、直線状または曲線状であってもよい。同様に、第2油路49は、直線状または曲線状であってもよい。当然、第1油路48は、1つ以上の直線状の流路と1つ以上の曲線状の流路とを含んでいてもよい。第2油路49についても同様である。
【0089】
また、前述の実施形態では、ダンパ21の減衰力を調整する減衰力調整バルブ50が、シリンダ28の外に配置されている場合について説明した。しかし、リアサスペンション12は、減衰力調整バルブ50に加えて、シリンダ28の内部に配置された減衰力調整バルブをさらに備えていてもよい。具体的には、第1内オイル室Cin1と第2内オイル室Cin2とを繋ぐ貫通孔が、ピストン42に設けられており、この貫通孔に対して一方の方向だけにオイルを通過させる逆止め弁(check valve)がピストン42に取り付けられていてもよい。
【0090】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。