(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021577
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/04 20120101AFI20161027BHJP
B24B 37/24 20120101ALI20161027BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20161027BHJP
B24B 37/14 20120101ALI20161027BHJP
【FI】
B24B37/04 Z
B24B37/00 Q
B24B37/00 H
B24B37/04 W
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-230823(P2012-230823)
(22)【出願日】2012年10月18日
(65)【公開番号】特開2014-79865(P2014-79865A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】川戸 博之
【審査官】
大山 健
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−270286(JP,A)
【文献】
特開2010−151679(JP,A)
【文献】
特開2009−014470(JP,A)
【文献】
特開2000−042914(JP,A)
【文献】
特開昭58−033150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00−37/34
G01N 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材である超低硬度材と超高硬度材とからなる複合材の研磨方法であって、
セラミック系研磨ディスクの表面にダイヤモンド砥粒を吹き付けて前記セラミック系研磨ディスクで前記複合材を研磨する精研磨工程と、
該精研磨工程の後に、第一合成繊維系バフの表面にダイヤモンド砥粒を供給しながら前記第一合成繊維系バフで前記複合材を琢磨する予備琢磨工程と、
該予備琢磨工程の後に、前記第一合成繊維系バフよりも弾性の小さい第二合成繊維系バフの表面に酸化物研磨剤を供給しながら前記第二合成繊維系バフで前記複合材を琢磨する琢磨工程と、
を備えることを特徴とする複合材の研磨方法。
【請求項2】
前記琢磨工程の後に、0.25μm〜1μmの粒径のダイヤモンド砥粒を供給しながら、前記第一合成繊維系バフよりも弾性の高い第三合成繊維系バフで前記複合材を琢磨する仕上工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。
【請求項3】
前記精研磨工程の前に、砥石で前記複合材の表面を平面とする面出工程を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材の研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、材料の表面組織を評価する方法として光学顕微鏡や電子顕微鏡を使用して観察する方法が広く知られている。光学顕微鏡や電子顕微鏡によって金属材料の試料を組織観察する際には、正確な観察を行うために試料の観察面は鏡面となるまで、微視的に確認しても極めて平坦となるように研磨をする必要がある。研磨方法には、観察する対象や観察が必要とする精度によって様々な方法が用いられており、例えば、化学的な反応によって加工した表面を溶かしていく化学研磨や、加工する対象の表面を電気的な力で溶かしていく電解研磨、回転研磨機を使ってダイヤモンドなどの砥粒とともに表面を磨く機械研磨などが挙げられる。
【0003】
研磨方法の一つである電解研磨は、電子顕微鏡による表面組織の観察を行う場合に試料を研磨するために用いられる。電子顕微鏡では、電解研磨にて表面を平坦に加工した後にエッチングを行い試料の組織を浮き出させる方法が用いられている。電子顕微鏡による表面組織の評価に用いる試料の研磨方法としては、例えば特許文献1に記載の方法が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の方法では、電解研磨を途中で一旦停止し、エッチングを行って金属組織を露呈させ、その後電解研磨を再開する。これにより、透過電子顕微鏡や走査電子顕微鏡で観察可能となるだけでなく、同じ試料を光学顕微鏡での観察にも用いることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−33150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光学顕微鏡による観察に用いられる試料の研磨方法としては、回転研磨機を使用する機械研磨が用いられる。この機械研磨は、研磨工程と琢磨工程とから構成される。前者の研磨工程は、ダイヤモンド砥粒などで固めた砥石を用いて表面の凹凸を徐々に平坦にする工程である。また、後者の琢磨工程は、砥石よりも柔らかく様々な材料で形成されるバフを用いて表面の微細な凹凸を除去することで光沢を出す工程である。
【0007】
しかしながら、従来用いられる機械研磨では同程度の硬度を有する材料を対象とした研磨方法しか存在していない。そのため、例えば、硬度の大きく異なる材料で構成された複合材を、硬度の低い材料に合わせて研磨すると、研磨剤が柔らかすぎて硬度の高い材料を研磨することができない。
一方、
図4の光学顕微鏡による写真に示すように、硬度の高い材料に合わせて研磨すると、研磨剤が硬すぎて硬度の低い材料に研磨剤が埋没してしまう。そのため、観察対象と研磨剤が混在してしまい観察対象が判別できず観察をすることができない。
また、
図5の光学顕微鏡による写真に示すように、研磨剤の埋没を防止するために、弾力のあるバフを用いて研磨すると、研磨剤の埋没は防止できるが硬度の高い材料の周辺の硬度の低い材料が深く削られてしまう。そのため、硬度の高い材料の輪郭が観察できなくなり正確な観察ができない。このように、硬度の大きく異なる材料で構成された複合材について研磨を行うと、平滑に研磨ができず正確な観察をすることができないという問題を有している。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、硬度の大きく異なる材料で構成された複合材を平滑に研磨することが可能な研磨方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の一態様に係る研磨方法は、母材である超低硬度材と超高硬度材とからなる複合材の研磨方法であって、セラミック系研磨ディスクの表面にダイヤモンド砥粒を吹き付けて前記セラミック系研磨ディスクで前記複合材を研磨する精研磨工程と、該精研磨工程の後に、第一合成繊維系バフの表面にダイヤモンド砥粒を供給しながら前記第一合成繊維系バフで前記複合材を琢磨する予備琢磨工程と、該予備琢磨工程の後に、前記第一合成繊維系バフよりも弾性の小さい第二合成繊維系バフの表面に酸化物研磨剤を供給しながら前記第二合成繊維系バフで前記複合材を琢磨する琢磨工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、まず、精研磨工程によって、ダイヤモンド砥粒と弾性が低く硬度の高いセラミック系研磨ディスクで長時間にわたって研磨することで、僅かなダイヤモンド砥粒によって効率的に超高硬度材を研磨することができる。次に、予備琢磨工程によって、第一合成繊維系バフを用いて琢磨することで、ダイヤモンド砥粒が超低硬度材を研磨する際に第一合成繊維系バフが撓み、超低硬度材の表面に強く押し付けられることなく研磨される。一方、超高硬度材が簡単に削れないほど固いため、超高硬度材の表面では撓んでもダイヤモンド砥粒を押し付けながら研磨される。そのため、ダイヤモンド砥粒を供給しても超低硬度材にダイヤモンド砥粒がほとんど埋没することなく超高硬度材を研磨することが可能となる。そして、琢磨工程によって、酸化物研磨剤を使用して琢磨することで、化学研磨が行なわれ超高硬度材の表面の小さな凹凸を除去し平滑な状態にすることができる。一方、酸化物研磨材は、ダイヤモンド砥粒よりも硬度が低く、粒径が小さく角の少ない形状の粒子で構成されているため、第一合成繊維系バフよりも弾性の小さい第二合成繊維系バフと合わせて琢磨することで、超低硬度材の表面に押し付けながら研磨しても埋没することなく、僅かに埋没しているダイヤモンド砥粒を除去しながら凹凸を除去することが可能となる。これらの精研磨工程から琢磨工程まで実施することで、硬度の大きく異なる材料で構成された複合材を平滑に研磨することが可能となる。
【0011】
また、本発明の他の態様に係る研磨方法は、前記琢磨工程の後に、
0.25μm〜1μmの粒径のダイヤモンド砥粒を供給しながら、前記第一合成繊維系バフよりも弾性の高い第三合成繊維系バフで前記複合材を琢磨する仕上工程を備えることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、仕上工程によって第一合成繊維系バフよりも弾性の高い第三合成繊維系バフの表面にダイヤモンド砥粒を用いて琢磨することで、ダイヤモンド砥粒を超低硬度材の表面に埋没させることなく、僅かな時間でも超低硬度材の表面を容易により平滑にすることが可能となる。
【0013】
さらに、本発明の他の態様に係る研磨方法は、前記精研磨工程の前に、砥石で前記複合材の表面を平面とする面出工程を備えることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、複合材の表面に凹凸や大きな傷による歪みや変質している部分があった場合でも、精研磨工程が開始される前に面出工程によって事前に除去し平面とすることで、精研磨工程等で複合材の表面とセラミック系研磨ディスク等とを均一に接するようにすることができ、精度の高い平面を形成し易くなる。これにより、精研磨工程以降の工程で、容易に複合材の表面を鏡面に仕上げることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の研磨方法によれば、精研磨工程から琢磨工程までを実施することで、硬度の大きく異なる材料で構成された複合材を平滑に研磨することが可能な研磨方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る研磨方法の工程を説明するフローチャートである。
【
図2】本発明の実施形態に係る研磨方法の工程毎の試料表面の様子を説明する模式図である。
【
図3】本発明の研磨方法で作成した試料表面を光学顕微鏡によって100倍にした写真図である。
【
図4】従来の超高硬度材に合わせた研磨方法で作成した試料表面を光学顕微鏡によって100倍にした写真図である。
【
図5】従来の超高硬度材に合わせた埋没を防ぐ研磨方法で作成した試料表面を光学顕微鏡によって100倍にした写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1及び
図2を参照し、本実施形態に係る複合材1の研磨成方法について説明する。
本実施形態の研磨方法は、超低硬度材11であるアルミニウムと超高硬度材12であるボロンカーバイト(B4C)が混在している複合材1を光学顕微鏡で観察可能とするように表面を鏡面となるまで研磨される試料の作成に用いられる。
複合材1は、母材として超低硬度材11であるアルミニウムを有し、アルミニウム中に超高硬度材12であるボロンカーバイトの粒子が混在するように硬度の大きく異なった二種の材料で構成された材料である。
超低硬度材11であるアルミニウムは、非常に柔らかく展性の高い金属であり、ビッカース硬さが約50HV程度である。
超高硬度材12であるボロンカーバイトは、研磨剤として使用されることもあるセラミックで、ダイヤモンドに次ぐ高い高度を有し、そのビッカース硬さは約2000HV程度である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の研磨方法は、複合材1の表面を平面に切削するよう研磨する面出工程S10と、超高硬度材12の表面を粗削りするよう研磨する精研磨工程S20と、超低硬度材11の表面を粗削りするよう琢磨する予備琢磨工程S30と、超高硬度材12の表面を鏡面とするよう琢磨する琢磨工程S40と、超低硬度材11の表面を鏡面とするよう琢磨する仕上工程S50とを備える。
【0019】
面出工程S10は、冷却材として循環水を用いてダイヤモンド砥粒で固めた砥石を回転研磨機に設置し、複合材1の表面を切削するよう研磨する。面出工程S10を開始する前から複合材1の表面にある視認できる非常に大きな凹凸や傷、及び、変質している部分を除去し、砥石と均一に接触するような平面と複合材1の表面がなった段階で面出工程S10を終了する。
【0020】
精研磨工程S20は、面出工程S10を実施後に、冷却材として水道水を用いて弾性の低く硬いセラミック系研磨ディスクを回転研磨機に設置し、複合材1の表面を研磨する。砥粒には粒径9μmのダイヤモンド砥粒を使用し、精研磨工程S20開始前にのみセラミック系研磨ディスクに吹き付けて研磨する。なお、ダイヤモンド砥粒の粒径は9μmに限られず、例えば9〜15μmの粒径のものを使用しても良い。
研磨時間は30分以上とし、面出工程S10の生じた視認できる傷を除去し、次工程である予備琢磨工程S30以降で除去できる程度の僅かな傷が残った面を形成する。
【0021】
予備琢磨工程S30は、精研磨工程S20を実施後に、冷却材としてアルコール系潤滑剤であるルーブリカントを用いて、ポリエステル織布で形成された第一合成繊維系バフを回転研磨機に設置し、複合材1の表面を琢磨する。砥粒には粒径9μmのダイヤモンド砥粒を使用し、アルコール系潤滑剤と共に第一合成繊維系バフが乾かないように供給し続けながら琢磨する。なお、上記同様、ダイヤモンド砥粒の粒径は9μmに限られず、例えば6〜9μmの粒径のものを使用しても良い。
琢磨時間は30分以上とし、精研磨工程S20で生じた僅かな傷を除去し、次工程である琢磨工程S40以降で除去できる程度に表面が曇った均一な面を形成する。
【0022】
琢磨工程S40は、予備琢磨工程S30を実施後に、ポリエステル織布で形成された第一合成繊維系バフよりも弾性の小さいナイロン系織布で形成された第二合成繊維系バフを回転研磨機に設置し、複合材1の表面を琢磨する。砥粒にはコロイダルシリカ系の酸化物研磨剤を使用し、供給し続けながら琢磨する。琢磨時間は30分以上60分以内とし、予備琢磨工程S30で生じた曇りが低減され、次工程である仕上工程S50以降で鏡面とできる程度に表面が僅かにくすみのある面を形成する。
コロイダルシリカ系の酸化物研磨剤は、硬度がダイヤモンド砥粒よりも低く、粒径が数十nmと小さく、角の少ない形状の粒子を有機溶媒に安定的に分散させて構成されており、有機溶媒によって化学反応も生じることで化学研磨としての効果も有する。
【0023】
仕上工程S50は、琢磨工程S40を実施後に、冷却材として予備琢磨工程S30と同じアルコール系潤滑剤であるルーブリカントを用いて、第一合成繊維系バフよりも弾性の大きい起毛した柔らかな織布で形成された第三合成繊維系バフを回転研磨機に設置し、複合材1の表面を琢磨する。砥粒には粒径1μmのダイヤモンド砥粒を使用し、アルコール系潤滑剤と共に第一合成繊維系バフが乾かないように供給し続けながら琢磨する。なお、ダイヤモンド砥粒の粒径は1μmに限られず、例えば、0.25〜1μmの粒径のものを用いても良い。
琢磨時間は5分以内とし、表面が鏡面となるまで琢磨する。
【0024】
次に、各工程実施後の複合材1の表面の状態について説明する。
図2(a)に示すように、面出工程S10を実施前の複合材1の表面は微視的に確認すると、母材であるアルミニウムの面が大きく波うち、さらに大きな傷がある状態となっている。また、混在するボロンカーバイトは母材であるアルミニウムの表面に対して埋没したり突出したりと均一な状態ではない。巨視的に確認しても大きな傷や変形が視認できる状態となっている。そのため、この状態では、回転研磨機に研磨ディスクやバフを設置しても複合材1の表面に対して均一に接触させることができず、研磨しても正確な観察に適した平面を形成できない。
【0025】
図2(b)に示すように、面出工程S10を実施後の複合材1の表面を微視的に確認すると、母材であるアルミニウムの表面とボロンカーバイトの表面には大きな凹凸が残っており荒れているものの、一様な面を形成しており巨視的に確認すると平面を形成している。
【0026】
図2(c)に示すように、精研磨工程S20を実施後の複合材1の表面を微視的に確認すると、母材であるアルミニウムの表面には大きな凹凸が残り精研磨工程S20前と比較しても荒れ具合が僅かに改善された程度の状態に留まっている。一方、ボロンカーバイトの表面には大きな凹凸は残っておらず、アルミニウムよりも荒れ具合が改善されている状態となっている。巨視的に確認すると複合材1の表面は僅かな傷が残った面となっている。
【0027】
図2(d)に示すように、予備琢磨工程S30を実施後の複合材1の表面を微視的に確認すると、母材であるアルミニウムの表面には大きな凹凸は残っておらず荒れ具合がさらに改善している状態となっている。さらに、ボロンカーバイトの表面には、小さな凹凸しか存在せず、荒れ具合もより一層改善している状態となっている。巨視的に確認すると複合材1の表面は曇った均一な面となっている。
【0028】
図2(e)に示すように、琢磨工程S40を実施後の複合材1の表面を微視的に確認すると、母材であるアルミニウムの表面には小さな凹凸しか存在せず荒れ具合がより一層改善している状態となっている。さらに、ボロンカーバイトの表面には、小さな凹凸もほぼ存在せず、荒れが改善された状態となっている。巨視的に確認すると複合材1の表面は僅かにくすみのある面となっている。
【0029】
図2(f)に示すように、仕上工程S50を実施後の複合材1の表面を微視的に確認すると、母材であるアルミニウムの表面には小さな凹凸もほぼ存在せず、荒れが改善された状態となっている。さらに、ボロンカーバイトの表面も前工程の時点で、荒れが改善された状態となっている。巨視的に確認すると複合材1の表面は鏡面となっている。
このような状態で光学顕微鏡を用いて複合材1の表面を観察すると、
図3の光学顕微鏡による写真に示すように、超低硬度材11に研磨剤が埋没することなく、超高硬度材12の輪郭を明瞭に観察することが可能となる。
【0030】
上記のような研磨方法によれば、面出工程S10によって複合材1の表面にある凹凸や大きな傷による歪みや変質している部分を事前に除去し、研磨ディスクやバフと均一に接触させることができる平面とすることで、精研磨工程S20以降の工程で正確に研磨・琢磨することができ、精度の高い平面を形成し易くなる。これにより、精研磨工程S20以降の工程で、容易に複合材1の表面を鏡面に仕上げることが可能となる。
【0031】
また、精研磨工程S20によって、ダイヤモンド砥粒の研磨剤と弾性が低く硬度の高いセラミック系研磨ディスクで30分以上と長時間にわたって研磨することで、僅かなダイヤモンド砥粒によって効率的に超高硬度材12を研磨することができる。さらに、ダイヤモンド砥粒の使用量を抑え精研磨工程S20のみに供給することで、研磨剤であるダイヤモンド砥粒を超低硬度材11の表面にほとんど埋没させることなく研磨することができる。
【0032】
さらに、予備琢磨工程S30によって、ポリエステル織布で形成された第一合成繊維系バフを用いて琢磨することで、ダイヤモンド砥粒が超低硬度材11を研磨する際に第一合成繊維系バフが撓み、超低硬度材11の表面に強く押し付けられることなく研磨される。一方、ポリエステル織布で形成された第一合成繊維系バフの弾性はそれほど高くない上に超高硬度材12が簡単に削れないほど固いため、超高硬度材12の表面では撓んでもダイヤモンド砥粒を押し付けながら研磨される。そのため、ダイヤモンド砥粒を供給し続けても超低硬度材11にダイヤモンド砥粒がほとんど埋没することなく超高硬度材12を研磨することが可能となる。
【0033】
また、琢磨工程S40によって、コロイダルシリカ系の酸化物研磨剤を使用して30分以上と長時間にわたって琢磨することで、化学研磨を行なわれ超高硬度材12の表面の小さな凹凸を除去し平滑な状態にすることができる。一方、コロイダルシリカ系の酸化物研磨材は、ダイヤモンド砥粒よりも硬度が低く、粒径が小さく角の少ない形状の粒子で構成されているため、ポリエステル織布で形成された第一合成繊維系バフよりも弾性の小さいナイロン系織布で形成された第二合成繊維系バフと合わせて研磨することで、超低硬度材11の表面に押し付けながら琢磨しても埋没することなく、僅かに埋没しているダイヤモンド砥粒を除去しながら凹凸を除去することが可能となる。
これらの精研磨工程S20から琢磨工程S40まで実施することで、超低硬度材11と超高硬度材12との硬度の大きく異なる材料で構成された複合材1を平滑に研磨することが可能となる。
【0034】
そして、仕上工程S50によって、第一合成繊維系バフよりも弾性の高い起毛した柔らかな織布で形成された第三合成繊維系バフと粒径が1μmのダイヤモンド砥粒とを用いて5分間と短時間で琢磨することで、ダイヤモンド砥粒を超低硬度材11の表面に埋没させることなく、僅かに超低硬度材11の表面に残る凹凸を除去することができる。これにより、より平滑にすることができ、複合材1の表面を精度の高い鏡面とすることが可能となる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【0036】
なお、本実施形態で使用したダイヤモンド砥粒の粒径、冷却材、バフの種類、酸化物研磨剤などは、本時実施形態で使用した道具に限定されるものではなく、使用環境に合わせて適宜選択されれば良い。例えば、セラミック材料や金属材料等の高硬度材の研磨に使用される公知の道具を適宜選択して使用すれば良い。
【符号の説明】
【0037】
1…複合材 11…超低硬度材 12…超高硬度材 S10…面出工程 S20…精研磨工程 S30…予備琢磨工程 S40…琢磨工程 S50…仕上工程