特許第6021585号(P6021585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021585
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】熱媒体循環システムの施工方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20161027BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20161027BHJP
   F25B 41/00 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   F24F5/00 101Z
   E04B1/76 500K
   F25B41/00 F
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-238953(P2012-238953)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-88992(P2014-88992A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】櫻場 一郎
(72)【発明者】
【氏名】大木 茂生
(72)【発明者】
【氏名】前川 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 一真
(72)【発明者】
【氏名】高井 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】植村 聡
(72)【発明者】
【氏名】中岡 将士
(72)【発明者】
【氏名】東 克彦
(72)【発明者】
【氏名】貴志 浩平
【審査官】 岡澤 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−241507(JP,A)
【文献】 実開昭60−045705(JP,U)
【文献】 特開2006−316908(JP,A)
【文献】 実公昭31−17672(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
E04B 1/76
F25B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の地下階又は低層階に設けられた冷凍機と、建物の屋上階に設けられた冷却塔と、建物内の空調の対象とされる場所に設けられた空調機と、前記冷凍機で冷却された冷媒を前記各空調機へ循環させる第1循環経路と、前記冷凍機と前記冷却塔との間に冷却水を循環させる少なくとも一対の縦配管よりなる第2循環経路とを具備する既設の熱媒体循環システムに代替して設置され、
空冷式ヒートポンプチラーを具備する熱媒体循環システムの施工方法であって、
建物の屋上階に前記空冷式ヒートポンプチラーを設置する工程と、
前記建物の地階または低層階に往きヘッダと還りヘッダを設置するか、または既設の往きヘッダと還りヘッダと前記第2循環経路との接続管を設置する工程と、
前記第2循環経路の前記各縦配管の上部及び下部を開口させる工程と、
前記各縦配管に対して、断熱性を有するホースを挿通させる工程と、
前記縦配管の開口された上端部に対して、前記縦配管に連結される略円筒状のメス金具と、前記メス金具の内側に挿入される挿入部を有し前記空冷式ヒートポンプチラーに連結される略円筒状のオス金具とからなる第1接続金具を、前記縦配管に挿通された前記ホースが前記メス金具にも挿通されるとともに、当該メス金具に挿通された前記ホースの内側に前記オス金具の前記挿入部が挿入された状態で、前記メス金具と前記オス金具とが連結されるよう取付ける工程と、
前記縦配管の開口された下端部に対して、前記縦配管に連結される略円筒状のメス金具と、前記メス金具の内側に挿入される挿入部を有し前記第1循環経路に連結される略円筒状のオス金具とからなる第2接続金具を、前記縦配管に挿通された前記ホースが前記メス金具にも挿通されるとともに、当該メス金具に挿通された前記ホースの内側に前記オス金具の前記挿入部が挿入された状態で、前記メス金具と前記オス金具とが連結されるよう取付ける工程と、
前記第1接続金具及び前記第2接続金具に対して、前記ホースの上端部及び下端部を固定する工程と、
前記第1接続金具に対して、前記空冷式ヒートポンプチラーを連結し、前記ホースと前記空冷式ヒートポンプチラーとを連通させる工程と、
前記第2接続金具に対して、前記第1循環経路を往きヘッダ及び還りヘッダを介して連結し、前記ホースと前記第1循環経路とを連通させる工程と
を備えていることを特徴とする熱媒体循環システムの施工方法。
【請求項2】
前記メス金具は、円筒状のメス金具本体と、前記メス金具本体の両端の開口周縁部からそれぞれ外方に延出する雌フランジとを備え、
前記オス金具は、円筒状のオス金具本体と、前記オス金具本体の両端の開口周縁部からそれぞれ外方に延出する雄フランジとを備えるとともに、前記オス金具本体の一端部を延長させるようにして前記挿入部が形成され、
前記雌フランジに形成された接続孔にスタッドボルトを挿通し、当該スタッドボルトに螺合されているナットを前記雌フランジの表裏両面において締めることで、前記スタッドボルトが前記メス金具に固定されるとともに、当該スタッドボルトを前記オス金具の前記雄フランジに形成された接続孔に挿通し、当該スタッドボルトに螺合されているナットを前記雄フランジの表裏両面において締めることで、前記オス金具が前記スタッドボルトに固定されることを特徴とする請求項に記載の熱媒体循環システムの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設設備における熱媒体循環システムの施工方法、特に、改修時の配管種変更を伴う施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビル等の建物において行われる中央方式の空調として、例えば、地下階機械室に冷凍機を設け、冷凍機の冷凍サイクルの一部を構成する蒸発器により冷却された冷媒を、各階に設置された各空調機の冷却コイルと通じる配管に送り、冷却コイルを介して冷熱を空気に与え昇温した冷媒を再び蒸発器に戻すよう循環させて、建物内の冷房を行うといった設備がある(例えば、特許文献1参照。)。この場合、建物の屋上階には、冷凍機の凝縮器と熱交換された冷却水を冷却する冷却塔が設けられている。
【0003】
さらに、冬期の暖房に対応するための温水加熱機能を有する、冷凍サイクルでの圧力を上げる仕組みとして冷媒の溶液への吸収及び溶液からの放出によって圧力を上げるためフロン冷媒を使わず、冷媒である水と吸収液とによってサイクルを構成する、ガスなどを駆動エネルギーとして動く吸収式冷温水機を熱源とする中央方式の空調設備がある。この場合、空調機のコイルと吸収式冷温水機とを循環する熱媒体は冷水または温水とするものである。
【0004】
この場合も、地中に埋設配設されるガス配管とのアクセス、重量のある吸収式冷温水機の設置などにより、地階や低層階に吸収式冷温水機を設け、夏期に吸収式冷温水機の凝縮器で熱交換された冷却水を冷却する冷却塔は、屋上設置することがほとんどである。この場合に吸収式冷温水機と冷却塔との間の冷却水配管は、建物を縦に貫通し、途中で分岐しない形で設けられることとなる。
【0005】
これに対し、屋上階に空冷式ヒートポンプチラーを設け、内蔵する四方弁によりフロン冷媒の冷凍サイクルの蒸発器・凝縮器を切り換えて、当該空冷式ヒートポンプチラーにて冷却又は加熱された熱媒体を各階各ゾーンに設置された各空調機と通じる配管に循環させて、建物内の冷暖房を行うといったものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
1990年代に、当時のフロンによるオゾン層破壊の問題に対応するため、フロン冷媒不使用の吸収式冷温水機が採用されることが多かったが、CO2排出量やエネルギー資源の枯渇が問題となる近年では、オゾン層破壊係数がゼロとなる代替フロンが開発され、空冷式ヒートポンプチラーの運転電力に対する冷凍能力の割合(成績係数)が飛躍的に改善している。1次エネルギーを換算し電力量に置き換えた場合の成績係数において、ガスと電気とを比較して、吸収式冷温水機と空冷式ヒートポンプチラーとでは後者が優位になる場合もあり、省エネルギー化等を図ることができる上、二酸化炭素の排出量削減等を図ることができる。
【0007】
また、吸収式冷温水機の臭化リチウム結晶化防止のための起動準備やメンテナンスにかかる手間や、冷却塔での冷却水水質管理などわずらわしさが、空冷式ヒートポンプチラー熱源の場合、省略でき、且つ使用勝手の良いシステムである。
【0008】
このため、近年、冷凍機の更新時期を契機として、既存の冷却塔を伴う熱媒体循環システムから、空冷式ヒートポンプチラーを用いた熱媒体循環システムに代替したいといった要望が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−63746号公報
【特許文献2】特開2011−58676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、従来の冷却水循環システムの冷凍機と冷却塔との間を結ぶ配管(以下、「冷却水配管」と言う)については、基本的に外気温以上の温度の冷却水が循環するだけであり、また、当該「冷却水配管」にて冷却水が循環するだけなので管表面の結露のおそれがなく、また、当該「冷却水配管」にて冷却水の放熱がなされても問題がなかった(むしろ都合がよかった)。このため、一般に、「冷却水配管」には断熱加工が施されていない。
【0011】
既設の吸収式冷温水機と冷却塔の熱媒体循環システムを、使い勝手の良い空冷式ヒートポンプチラー熱源に代替する場合は、既設の熱媒体循環配管が、地階または低層階を元側、各階特に高層階側を先側として配管されていることから、吸収式冷温水機が設置されていた機械室に、往きヘッダ、還りヘッダを設置して熱媒体を供給返還することが有利である。その場合、屋上にある空冷式ヒートポンプチラーから、往きヘッダ、還りヘッダに一本縦配管とする往本管・還本管を配したくなる。それには、吸収式冷温水機と屋上の冷却塔とを結ぶ「冷却水配管」の再利用がとても合理的である。
【0012】
ところが上記のように「冷却水配管」には断熱加工が施されていないと、空冷式ヒートポンプチラーを用いた熱媒体循環システムに代替する場合において、既設の「冷却水配管」をそのまま利用しようとした場合、当該「冷却水配管」において外気温よりも低温度の熱媒体を循環させたときに、管表面に結露が生じてしまうおそれがある。さらには、「冷却水配管」において熱効率を著しく低下させてしまうことが懸念される。
【0013】
これに対し、既設の「冷却水配管」に断熱加工を施すことが考えられる。しかしながら、「冷却水配管」は、建物内において接触困難な場所や接触不可能な場所に存在することも多く、この場合には、断熱加工を施す作業が非常に困難なものとなったり、断熱加工を施すことが事実上不可能となったりおそれがある。
【0014】
また、上記「冷却水配管」とは別に、断熱加工されている配管を新設することが考えられる。しかしながら、新設配管の設置スペースを確保することが困難である上、設置スペースを確保できたとしても、作業スペースがなく、配管設置作業が非常に困難なものとなるおそれがある。特に、建物内に配管の設置スペースを確保できずに、配管を建物外部にまで延設させる場合には、かかる不具合がより一層顕著なものとなるだけでなく、建物自体の資産価値を低下させてしまうこと等が懸念される。
【0015】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、既存の配管スペースを利用しつつ、空冷式ヒートポンプチラーを用いた熱媒体の循環を実施可能とする熱媒体循環システムの施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0017】
手段1.建物の地下階又は低層階に設けられた冷凍機と、建物の屋上階に設けられた冷却塔と、建物内の空調の対象とされる場所に設けられた空調機と、前記冷凍機で冷却された冷媒を前記各空調機へ循環させる第1循環経路と、前記冷凍機と前記冷却塔との間に冷却水を循環させる少なくとも一対の縦配管よりなる第2循環経路とを具備する既設の熱媒体循環システムに代替して設置され、
空冷式ヒートポンプチラーを具備する熱媒体循環システムの施工方法であって、
建物の屋上階に前記空冷式ヒートポンプチラーを設置する工程と、
前記建物の地階または低層階に往きヘッダと還りヘッダを設置するか、または既設の往きヘッダと還りヘッダと前記第2循環経路との接続管を設置する工程と、
前記第2循環経路の前記各縦配管の上部及び下部を開口させる工程と、
前記各縦配管に対して、断熱性を有するホースを挿通させる工程と、
前記縦配管の開口された上端部に対して、前記縦配管に連結される略円筒状のメス金具と、前記メス金具の内側に挿入される挿入部を有し前記空冷式ヒートポンプチラーに連結される略円筒状のオス金具とからなる第1接続金具を、前記縦配管に挿通された前記ホースが前記メス金具にも挿通されるとともに、当該メス金具に挿通された前記ホースの内側に前記オス金具の前記挿入部が挿入された状態で、前記メス金具と前記オス金具とが連結されるよう取付ける工程と、
前記縦配管の開口された下端部に対して、前記縦配管に連結される略円筒状のメス金具と、前記メス金具の内側に挿入される挿入部を有し前記第1循環経路に連結される略円筒状のオス金具とからなる第2接続金具を、前記縦配管に挿通された前記ホースが前記メス金具にも挿通されるとともに、当該メス金具に挿通された前記ホースの内側に前記オス金具の前記挿入部が挿入された状態で、前記メス金具と前記オス金具とが連結されるよう取付ける工程と、
前記第1接続金具及び前記第2接続金具に対して、前記ホースの上端部及び下端部を固定する工程と、
前記第1接続金具に対して、前記空冷式ヒートポンプチラーを連結し、前記ホースと前記空冷式ヒートポンプチラーとを連通させる工程と、
前記第2接続金具に対して、前記第1循環経路を往きヘッダ及び還りヘッダを介して連結し、前記ホースと前記第1循環経路とを連通させる工程と
を備えていることを特徴とする熱媒体循環システムの施工方法。
【0018】
手段1によれば、第2循環経路を構成していた一対の縦配管に対して断熱性を有するホースを挿通させ、当該ホースによって、建物の屋上階に新設された空冷式ヒートポンプチラーと、既設の第1循環経路とを連通させている。このように、空冷式ヒートポンプチラーと第1循環経路との間を、断熱性を有するホースで連通させることができることから、この間の熱損失を抑制することができ、冷暖房に要するエネルギーやコストの低減を図ることができる上、結露の発生を防止することができる。
【0019】
また、第2循環経路の縦配管の内側のスペースを活用してホースを延設させているため、熱媒体循環システムを、空冷式ヒートポンプチラーを具備するものへと代替する際に、第2循環経路とは別の場所に、空冷式ヒートポンプチラーと第1循環経路とを連通させる配管を新設するためのスペースを確保しなくても済む。従って、新たな熱媒体循環システムの配管を設置する作業性の向上を図ることができ、工期短縮(ひいては熱媒体循環システムの停止期間の短縮)、省資源化(ひいては、改修工事に伴って生じる産業廃棄物の低減)、及び工費の低減等を図ることができる。さらに、配管が増えることに起因して、建物内が手狭になってしまったり、配管を建物の外にまで延設することに起因して、建物自体の資産価値を低下させてしまったりする等の不具合を回避することができる。
【0020】
さらに、既設の第1循環経路をそのまま使用することができる。このため、工期短縮や工費の低減等をより一層図ることができる。尚、第1循環経路については、元々、冷凍機で冷却された冷媒を循環させる配管であったため、当初から断熱加工が施されている。
【0022】
また、ホースの外周側に位置するメス金具と、ホースの内周側に位置するオス金具(挿入部)とによってホースを挟持固定することができる。従って、ホースの全周にわたって隙間なくシールを行うことができ、熱媒体の漏れをより確実に防止することができる。
【0023】
手段.前記メス金具は、円筒状のメス金具本体と、前記メス金具本体の両端の開口周縁部からそれぞれ外方に延出する雌フランジとを備え、
前記オス金具は、円筒状のオス金具本体と、前記オス金具本体の両端の開口周縁部からそれぞれ外方に延出する雄フランジとを備えるとともに、前記オス金具本体の一端部を延長させるようにして前記挿入部が形成され、
前記雌フランジに形成された接続孔にスタッドボルトを挿通し、当該スタッドボルトに螺合されているナットを前記雌フランジの表裏両面において締めることで、前記スタッドボルトが前記メス金具に固定されるとともに、当該スタッドボルトを前記オス金具の前記雄フランジに形成された接続孔に挿通し、当該スタッドボルトに螺合されているナットを前記雄フランジの表裏両面において締めることで、前記オス金具が前記スタッドボルトに固定されることを特徴とする手段に記載の熱媒体循環システムの施工方法。
【0024】
手段によれば、スタッドボルトと、雄フランジ及び雌フランジをそれぞれ挟み込むようにして取着されるナットを用いてオス金具とメス金具との間を固定することで、雄フランジと雌フランジとの間の距離を一定でなく変化させても、スタッドボルトを介してオス金具とメス金具とを固定することができる。従って、オス金具の挿入部をメス金具の内側に挿通されたホースの内側へできる限り奥まで挿入し、オス金具の挿入部の外面と、メス金具の内側に挿通されたホースの内側面とを強固に圧接させた状態で、オス金具とメス金具とを確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】新設される熱媒体循環システムの概略構成を示す説明図である。
図2】既設の熱媒体循環システムの概略構成を示す説明図である。
図3】ホースの概略構成を示す一部断面を含む斜視図である。
図4】メス金具の断面図である。
図5】オス金具の断面図である。
図6】ホースのメス金具への固定作業を説明するための説明図である。
図7】接続金具等を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1に示す熱媒体循環システム(以下、「新設システム11」と言う)は、図2に示す既設の熱媒体循環システム(以下、「旧システム2」と言う)に代替して設置されるものである。すなわち、旧システム2は、建物1の地下階に設けられた冷凍機3と、建物1の屋上階に設けられた冷却塔4と、建物1内の空調の対象とされる場所に設置される空調機5(ファンコイルユニット等)と、冷凍機3と各空調機5との間で冷媒を循環させる第1循環経路6と、冷凍機3と冷却塔4との間で冷却水を循環させる一対の縦配管8よりなる第2循環経路7とを備えている。
【0027】
これに対し、新設システム11は、冷凍機3に代えて、空冷式ヒートポンプチラー12を熱源とするものである。但し、旧システム2から全てを一新するのではなく、第1循環経路6については、新設システム11でも引き続き使用する。また、第1循環経路6の接続口は建物1の地下階に存在するのに対し、空冷式ヒートポンプチラー12は建物1の屋上階に設置される。このため、空冷式ヒートポンプチラー12と第1循環経路6とを連通させる配管を建物1の地下階から屋上階まで延在させる必要がある。本実施形態では、かかる配管として、断熱性を有するホース13等が用いられる。
【0028】
図3に示すように、ホース13は、内周側から、破断強度の高い耐圧層13aと、断熱層13bと、保護層13cとを備え、可撓性を有している。本実施形態では、旧システム2において第2循環経路7を構成していた各縦配管8の上部及び下部を開口させるとともに、各縦配管8にそれぞれホース13を挿通することで、建物1の床スラブ等に対して新たに孔を開ける(スリーブを設ける)等することなく、ホース13を建物1の地下階から屋上階(或いは最上階)まで延在させている。
【0029】
そして、ホース13の上端部と空冷式ヒートポンプチラー12とが連通されるとともに、ホース13の下端部と第1循環経路6とが連通されることで、空冷式ヒートポンプチラー12と第1循環経路6とが連通されている。これにより、空冷式ヒートポンプチラー12で温度調節された熱媒体を各空調機5へと供給したり、各空調機5から排出された熱媒体を空冷式ヒートポンプチラー12へと供給したりすること、すなわち、空冷式ヒートポンプチラー12と各空調機5との間の熱媒体の循環が可能となる。
【0030】
尚、図示は省略するが、各ホース13と第1循環経路6との間には、空冷式ヒートポンプチラー12で温度調節された熱媒体を各空調機5へと通じる第1循環経路6の複数の配管に分岐させたり、各空調機5から排出された熱媒体を合流させたりするヘッダ装置が既設に設けられていることが常であるが、冷却水管を冷温水管に変更し接続するため、往き・還りとももう1基ずつヘッダを新設したり、或いは新設しなくても横引き鋼管は新設して設けられる。また、新設システム11では旧システム2の空調機5を新たなものに代替するが、便宜上、新設システム11の空調機についても「空調機5」と記載して説明する。
【0031】
次に、新設システム11の施工方法について説明する。まず、旧システム2の冷凍機3及び冷却塔4を撤去するとともに、建物1の屋上階に空冷式ヒートポンプチラー12を設置する。続いて、旧システム2の第2循環経路7を構成していた一対の縦配管8の上部及び下部をそれぞれ開口させる。本実施形態では、縦配管8の上部及び下部を延在方向に対して直交する方向に切断することによって、縦配管8の上部は鉛直方向上向きに開口し、縦配管8の下部は鉛直方向下向きに開口するようになっている。さらに、縦配管8の各開口周縁にフランジ17(図7参照)を形成する。
【0032】
その後、各縦配管8に対してそれぞれホース13を挿通させる作業を行う。当該作業工程にあっては、先ず、縦配管8の下端部からそれほど遠く離れていない場所(例えば、建物1の脇のグラウンド)において、前記ホース13が巻き付けられているドラムを設置するとともに、縦配管8の下端部の下方にガイドローラを設置する。さらに、屋上階にウインチを設置する。
【0033】
また、ドラムから引き出したホース13の先端部を巻4つ折りにするとともに、当該先端部に対して保持金具(図示略)を取付ける。保持金具は、ホース13の先端部を挟む一対の金属片と、一対の金属片の間を締め付ける複数のボルト及びナットとを具備し、いくつかのボルトはホース13の先端部を貫通して設けられている。このため、ホース13の保持金具からの脱落を確実に防止することができる。さらに、保持金具とウインチとにかけて、縦配管8を挿通させたワイヤを装着する。そして、ウインチでワイヤを巻き上げることによって、ホース13が、ガイドローラにガイドされつつ、縦配管8に挿通されていく。
【0034】
ホース13が縦配管8に挿通状態とされた後、ホース13の先端部から保持金具を取外すとともに、ホース13の上端部及び下端部を塞いでホース13内の空気が外部へ逃げられない状態としてから、コンプレッサーでホース13の内部に空気を注入することで、ホース13の内側の気圧を高める。これにより、ホース13を長手方向全域にわたって確実に断面円環状に広げることができる。さらに、ホース13の外径は、縦配管8の内径と同じに構成されており、ホース13を断面円環状の状態とすることで、ホース13の外面と縦配管8の内面とが密接することとなる(図3参照)。
【0035】
また、本実施形態では、ホース13の先端部を縦配管8から所定長さだけ(後述するメス金具22の長さよりも長く)引き出しておくとともに、ホース13のうち縦配管8から突出した部位の断熱層13bと保護層13cとを除去することとしている。
【0036】
続いて、縦配管8に挿通されたホース13の上端部及び下端部をそれぞれ縦配管8に対して相対変位不可能に固定する作業を行う。当該ホース13の固定には、図4図5図7に示す接続金具21が使用される。すなわち、接続金具21は、縦配管8に連結される略円筒状のメス金具22と、メス金具22に固定されるオス金具25とを備えている。図4に示すように、メス金具22は、円筒状のメス金具本体23と、メス金具本体23の両端の開口周縁部からそれぞれ外周側に延出する円環状の雌フランジ24とを備えている。
【0037】
また、図5に示すように、オス金具25は、円筒状のオス金具本体26と、オス金具本体26の両端の開口周縁部からそれぞれ外周側に延出する円環状の雄フランジ27と、オス金具本体26の一方の端部を延長させるようにして突出する挿入部28とを備えている。挿入部28の外面側は、先端側に向けて先細るテーパ状になっているのに対し、挿入部28の内径はほぼ一定となっている。さらに、各雌フランジ24及び雄フランジ27には接続孔29が複数形成されている。
【0038】
そして、メス金具22の雌フランジ24と、縦配管8のフランジ17とを当接させてボルト31(六角ボルト)及びナット32で固定することにより、メス金具22と縦配管8とが連結される。また、縦配管8に挿通されたホース13は、メス金具22にも挿通させた状態とする。尚、上記のように、ホース13のうち縦配管8から突出した先端部位については、断熱層13b及び保護層13cが除去されているため、メス金具22には、耐圧層13aのみとされた部位が挿通される。さらに、メス金具22の内径は、縦配管8の内径よりも一回り大きく(本例では、断熱層13b及び保護層13cの厚み分大きく)なっている。また、縦配管8にメス金具22を取付ける工程については、ホース13の内側に空気を注入して膨らませる工程の前段階や、縦配管8にホース13を挿通させる工程の前段階で行うこととしてもよい。
【0039】
その後、ホース13のうち、メス金具22から突出した耐圧層13aのみとされた部位に切り込みを入れて、図6に示すように、花弁状に広げる。本実施形態では、花弁が6枚となるように、さらには、開いたときに各花弁が雌フランジ24の接続孔29に重なるように切込みが形成される。
【0040】
続いて、雌フランジ24の各接続孔29に対してスタッドボルト33を挿通し、スタッドボルト33に螺合されているナット34を当該雌フランジ24の表裏両面において締めることで、スタッドボルト33がナット34に固定される。また、当該作業によって、ホース13(耐圧層13a)の花弁状に広げられた各片部にスタッドボルト33が貫通するとともに、当該ホース13の各片部がナット34と雌フランジ24との間に挟み込まれる。これにより、ホース13が、メス金具22、ひいては、縦配管8の端部に固定されることとなる。
【0041】
次に、メス金具22(メス金具本体23)の内側に、オス金具25の挿入部28を挿入させる(図7参照)。上記のように、メス金具22の内側には、ホース13(耐圧層13a)が挿通されているため、オス金具25の挿入部28は、ホース13の内側に挿入されることとなる。換言すれば、ホース13がオス金具25の外面とメス金具22の内面とで挟持される。これにより、ホース13の全周にわたって、ホース13とオス金具25との間のシールが行われ、熱媒体の漏れが防止される上、ホース13がより確実に固定されることとなる。
【0042】
また、ホース13のメス金具22への固定に用いられるスタッドボルト33は比較的長尺状のものであり、オス金具25の挿入部28をメス金具22に挿入させるためには、雄フランジ27の接続孔29にスタッドボルト33を挿通させる必要がある。そして、スタッドボルト33に螺合されているナット34を当該雄フランジ27の表裏両面において締めることで、雄フランジ27が、スタッドボルト33、ひいては、メス金具22に固定される。
【0043】
以上のように、縦配管8に接続金具21を取付ける作業を縦配管8の上端部及び下端部の両方において行った後は、縦配管8の上端部に連結された接続金具21のオス金具25と空冷式ヒートポンプチラー12とをスペーサー39(両端にフランジのあるダクト)を介して連結するとともに、縦配管8の下端部側に連結された接続金具21のオス金具25と第1循環経路6とを、前述の新設横引き管及びヘッダを介し、更にスペーサー39を介して連結する。以上のようにして、第1循環経路6と、空冷式ヒートポンプチラー12とが連通されることとなる。
【0044】
尚、本実施形態では、縦配管8の上端部に取付けられる接続金具21が第1接続金具を構成し、縦配管8の下端部に取付けられる接続金具21が第2接続金具を構成する。また、図示は省略するが、ホース13と空冷式ヒートポンプチラー12との間の配管や、ホース13と第1循環経路6との間の配管(スペーサー39や、オス金具25のうちメス金具22に挿入されていない部位)に対しては、外側に断熱加工(断熱材を巻く等)が施されている。
【0045】
以上詳述したように、本実施形態では、旧システム2の第2循環経路7を構成していた一対の縦配管8に対して断熱性を有するホース13を挿通させ、当該ホース13によって、建物1の屋上階に新設された空冷式ヒートポンプチラー12と、既設の第1循環経路6とを連通させている。このように、空冷式ヒートポンプチラー12と第1循環経路6との間を、断熱性を有するホース13で連通させることができることから、この間の熱損失を抑制することができ、冷暖房に要するエネルギーやコストの低減を図ることができる上、結露の発生を防止することができる。
【0046】
また、第2循環経路7の縦配管8の内側のスペースを活用してホース13を延設させているため、熱媒体循環システムを、冷凍機3を具備する旧システム2から空冷式ヒートポンプチラー12を具備する新設システム11へと代替する際に、第2循環経路7とは別の場所に、空冷式ヒートポンプチラー12と第1循環経路6とを連通させる配管を新設するためのスペースを確保しなくても済む。従って、新設システム11の配管を設置する作業性の向上を図ることができ、工期短縮(ひいては熱媒体循環システムの停止期間の短縮)、省資源化(ひいては、改修工事に伴って生じる産業廃棄物の低減)、及び工費の低減等を図ることができる。さらに、配管が増えることに起因して、建物1内が手狭になってしまったり、配管を建物1の外にまで延設することに起因して、建物1自体の資産価値を低下させてしまったりする等の不具合を回避することができる。さらに、既設の第1循環経路6をそのまま使用することができる。このため、工期短縮や工費の低減等をより一層図ることができる。
【0047】
また、本実施形態では、縦配管8の開口端部に連結される略円筒状のメス金具22と、空冷式ヒートポンプチラー12又は第1循環経路6(に接続されたスペーサー39)に連結される略円筒状のオス金具25とを具備する接続金具21によって、縦配管8と空冷式ヒートポンプチラー12及び第1循環経路6との間が連通されるようになっている。すなわち、メス金具22を縦配管8の開口端部に接続するとともに、縦配管8に挿通されたホース13をメス金具22にも挿通させてから、メス金具22に挿通されたホース13の内側に挿入される挿入部28を備えるオス金具25をメス金具22に連結するように構成されている。これによって、ホース13の外周側に位置するメス金具22と、ホース13の内周側に位置するオス金具25(挿入部28)とによってホース13を挟持固定することができ、縦配管8の開口端部においてホース13をより確実に固定することができる上、ホース13の全周にわたって隙間なくシールを行うことができ、熱媒体の漏れをより確実に防止することができる。
【0048】
さらに、メス金具22の雌フランジ24に形成された接続孔29にスタッドボルト33を挿通して、雌フランジ24を表裏両面側から挟み込むようにしてナット34を締め付けるとともに、当該スタッドボルト33をオス金具25の雄フランジ27に形成された接続孔29に挿通し、雄フランジ27を表裏両面側から挟み込むようにしてナット34を締め付けることで、オス金具25がスタッドボルト33を介してメス金具22に固定されている。このため、雄フランジ27と雌フランジ24との間の距離を一定でなく変化させても、スタッドボルト33を介してオス金具25とメス金具22との間を固定することができる。従って、オス金具25の挿入部28をメス金具22の内側に挿通されたホース13の内側へできる限り奥まで挿入し、オス金具25の挿入部28の外面と、メス金具22の内側に挿通されたホース13の内側面とを強固に圧接させた状態で、オス金具25とメス金具22とを確実に固定することができる。
【0049】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0050】
(a)上記実施形態では、メス金具22の雌フランジ24と、オス金具25の雄フランジ27とが離間した状態でメス金具22とオス金具25とが連結されているが、例えば、雌フランジ24と雄フランジ27とでホース13の端部に切れ込みを入れて形成した片部を挟んで固定してもよい。但し、製造誤差等が生じ、雌フランジ24と雄フランジ27とでホース13の片部を挟んだ状態としても、オス金具25の挿入部28の外面と、ホース13の内面とを全周にわたって好適に圧接させることができないような場合、シール性の低下等を招くおそれがある。このため、たとえ製造誤差が生じたとしても、必ずオス金具25の挿入部28をメス金具22にできるだけ押し込んだ状態で、オス金具25とメス金具22とを接続できるように、上記実施形態のように、スタッドボルト33及びナット34を用いて、雄フランジ27と雌フランジ24とを固定することが望ましい。
【0051】
また、上記実施形態では、メス金具22には、ホース13のうち断熱層13b及び保護層13cが除去されて耐圧層13aのみとされた部位が挿通されているため、メス金具22の外側にも断熱加工(断熱材を巻く等)を施すこととしてもよい。
【0052】
(b)また、縦配管8の端部にフランジ17を形成する方法については特に限定されるものではなく、例えば、フランジ17を備えるダクトを縦配管8に接続してもよい。さらに、既設の縦配管8が両端部にフランジを有するダクトを連結することで構成され、当該ダクトを切断することなく縦配管8の上部や下部を開口させた場合には、新たにフランジ17を形成することなく既存のフランジで対応したり、メス金具22の雌フランジ24の接続孔29と位置を合わせるために、フランジ付きのダクトを介在させたりしてもよい。
【0053】
(c)上記実施形態において、旧システム2の第2循環経路7の縦配管8の上部及び下部を開口させる位置については特に限定されるものではなく、既設の縦配管8がどのように延在しているかによって、適宜開口位置を変更することとする。例えば、縦配管8を建物1の屋上階で開口させてもよいし、建物1の最上階で開口させてもよい。
【0054】
加えて、上記実施形態では、縦配管8の上部は鉛直方向上向きに開口し、縦配管8の下部は鉛直方向下向きに開口するようになっているが、縦配管8の開口面が縦配管8の延在方向に対して直交していればよく、例えば、縦配管8の上部が水平方向に開口していてもよい。
【0055】
(d)上記実施形態では、新設システム11において空調機5を新調しているが、旧システム2の空調機5がそのまま使えるものであれば、引き続き使用することとしてもよい。また、上記実施形態では、旧システム2の冷凍機3が地下階にあるが、例えば、1階にあってもよい。加えて、上記実施形態の建物1において、空冷式ヒートポンプチラー12で温度調節された熱媒体を貯留しておく蓄熱層を併設してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…建物、2…旧システム、3…冷凍機、4…冷却塔、5…空調機、6…第1循環経路、7…第2循環経路、8…縦配管、11…新設システム、12…空冷式ヒートポンプチラー、13…ホース、21…接続金具、22…メス金具、25…オス金具、28…挿入部、33…スタッドボルト、34…ナット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7