(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021588
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】架台
(51)【国際特許分類】
H02S 20/10 20140101AFI20161027BHJP
【FI】
H02S20/10 F
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-239691(P2012-239691)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-88718(P2014-88718A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤永 直樹
(72)【発明者】
【氏名】安川 真知子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 宜伸
(72)【発明者】
【氏名】西山 正三
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−204301(JP,A)
【文献】
特開2000−101123(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/136350(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 20/00 − 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光パネルを支持する架台であって、
前記太陽光パネルが載置される面状の枠部と、
地表面から上方に略鉛直に延びて前記枠部を支持する4本の支柱と、
当該支柱の内側の地表面に設けた基礎と、
当該基礎を頭頂点とし前記枠部を底面とする四角錐において、当該頭頂点から延びる4つの辺となる4本の斜材と、を備え、
前記枠部は、桁行方向に延びる複数の桁行部材と、
当該桁行部材に略直交して梁間方向に延びる複数の梁間部材と、
を備えることを特徴とする架台。
【請求項2】
前記各斜材は、前記桁行部材と前記梁間部材との交点に連結されることを特徴とする請求項1に記載の架台。
【請求項3】
前記斜材の断面形状は略同一であり、その長さは略等しいことを特徴とする請求項1または2に記載の架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架台に関する。詳しくは、太陽光パネルを支持する架台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、太陽光の光エネルギを用いて電気を発生させる太陽光パネルが知られている。この太陽光パネルは、広大な土地に最も発電効率のよい角度で傾斜して設置される。
【0003】
このような太陽光パネルを支持するため、例えば、
図5〜
図7に示す架台が提案されている。
【0004】
架台100は、太陽光パネル2を支持するものであり、太陽光パネル2が載置される面状の枠部10と、地表面から略鉛直に延びて枠部10を支持する少なくとも2本の支柱40と、を備える。
【0005】
枠部10は、桁行方向(
図5〜
図7中X方向)に延びる複数の桁行部材11と、これら桁行部材11に略直交して梁間方向(
図5〜
図7中Y方向)に延びる複数の梁間部材12と、を備える。
また、支柱40と枠部10との連結箇所を連結点13とすると、連結点13は、桁行部材11と梁間部材12との交点となっている。
【0006】
しかしながら、このような架台100に重量が大きくかつ風を通さない平面状の太陽光パネルを載せると、地震や風などによる荷重に対して、太陽光パネルを安定的に支持するのは困難である。安定的に支持するためには、各部材断面を大きくしたり補強材・連結材などで補強したりすることにより架台の強度を上げることや、基礎の固定度を上げることが考えられる。例えば、特許文献1に示す架台が提案されている。
【0007】
すなわち、架台は、太陽光パネルが搭載される矩形状の桟と、この桟を支持する複数の支持部と、を備える。
桟は、桁行方向に延びる複数本の横桟と、梁間方向に延びる複数本の縦桟とを格子状に組み合わせて構成される。また、この桟は、桁行方向の横桟が略水平で、かつ、梁間方向の縦桟の一端側が他端側よりも低くなるように傾斜している。
【0008】
各支持部は、略鉛直に延びて上端で桟に接続されるH鋼からなる1本の支柱と、この支柱を挟んで設けられて支柱の下端側から斜めに延びて桟に接続される断面ハット形状の鋼材からなる一対のアームと、を備える。ここで、各支持部の支柱および一対のアームは、1本の縦桟に連結される。
【0009】
この架台では、各支持部の支柱および一対のアームならびにこれらが接続される1本の縦残とでトラスが構成されるため、太陽光パネルを安定的に支持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−220096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、以上の架台では、支柱とアームとで異なる種類の鋼材を使用しており、材料費が増大する、という問題があった。
また、支柱および一対のアームが縦桟に一直線上に配置されるため、風や地震による梁間方向の荷重にはトラス構造により抵抗できるが、桁行方向の荷重に対して十分に抵抗できない、という問題があった。
ただ、トータルの安定性を上げるためには、架台の強度を上げるだけでなく、基礎の固定度を上げる対策も併せて施さなければならない。特に、風による引き抜き力に対しては、基礎を大きくしたり杭基礎にしたりすることが効果的であるが、全ての支柱脚部基礎の固定度を上げることはコストがかかる。
【0012】
本発明は、材料費を低減しつつ、桁行方向を含めた全ての方向の荷重に対しても十分に抵抗できるのに加えて、特に風による引き抜き力に対しても太陽光パネルを安定的に支持できる架台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の架台(例えば、後述の架台1)は、太陽光パネル(例えば、後述の太陽光パネル2)を支持する架台であって、前記太陽光パネルが載置される面状の枠部(例えば、後述の枠部10)と、地表面から上方に略鉛直に延びて前記枠部を支持する少なくとも4本の支柱(例えば、後述の支柱40)と、
当該支柱の内側の地表面に設けた基礎(例えば、後述の基礎21)と、当該基礎を頭頂点とし前記枠部を底面とする四角錐において、当該頭頂点から延びる4つの辺となる4本の斜材(例えば、後述の斜材22)と、を備え、前記枠部は、桁行方向に延びる複数の桁行部材(例えば、後述の桁行部材11)と、当該桁行部材に交差して梁間方向に延びる複数の梁間部材(例えば、後述の梁間部材12)と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、枠部および斜材で立体トラスを構成する。すなわち、この立体トラスは、基礎を頭頂点とし、斜材をこの頭頂点から延びる辺とする多角錐を構成し、この多角錐を上下逆さにした形状となる。よって、太陽光パネルを安定的に支持できるとともに、梁間方向の荷重のみならず、桁行方向を含めた全ての方向の荷重に対しても、十分に抵抗できる。また、風による引き抜き力に対して、斜材を介して基礎に均一に伝わるので、細い斜材と少ない基礎で効率的に引き抜き力に抵抗できる。
【0015】
請求項2に記載の架台は、前記各斜材は、前記桁行部材と前記梁間部材との交点に連結されることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、各斜材を桁行部材と前記梁間部材との交点に連結したので、架台の剛性を向上できる。
【0017】
請求項3に記載の架台は、前記斜材の断面形状は略同一であり、その長さは略等しいことを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、各斜材の断面形状を略同一とし、その長さを略等しくした。よって、斜材の部材の種類を少なくできるから、施工コストを低減できるうえに、斜材に用いる部材の品質管理が容易となる。
また、4本の斜材について、枠部に連結される仕口の形状を統一でき、製作コストをさらに低減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、枠部および斜材で立体トラスを構成する。すなわち、この立体トラスは、基礎を頭頂点とし、斜材をこの頭頂点から延びる辺とする多角錐を構成し、この多角錐を上下逆さにした形状となる。よって、太陽光パネルを安定的に支持できるとともに、梁間方向の荷重のみならず、桁行方向を含めた全ての方向の荷重に対しても、十分に抵抗できる。また、風による引き抜き力に対して、斜材を介して基礎に均一に伝わるので、細い斜材と少ない基礎で効率的に引き抜き力に抵抗できる。
更に、各斜材を単一の鋼材で形成することで、材料費を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る架台の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る架台1の斜視図である。
図2は、架台1の側面図であり、
図3は、架台1の平面図である。なお、
図1〜
図3は架台1の一部であり、この架台1を桁行方向(
図1〜
図3中X方向)に連続して設置することが可能である。
【0022】
架台1は、太陽光パネル2を支持するものであり、太陽光パネル2が載置される面状の枠部10と、地表面から上方に略鉛直に延びて枠部10を支持する少なくとも4本の支柱40と、杭23に支持された地表面の基礎21と前記枠部と前記支柱との交点とを繋ぐ少なくとも4本の斜材22と、を備える。
【0023】
枠部10は、桁行方向(
図1〜
図3中X方向)に延びる複数の桁行部材11と、これら桁行部材11に略直交して梁間方向(
図1〜
図3中Y方向)に延びる複数の梁間部材12と、を備える。
桁行部材11は、例えば、背中合わせに配置された100×40×2.3のチャンネル鋼材である。また、梁間部材12は、例えば、100×50×3.2のチャンネル鋼材である。
【0024】
斜材22は、地表面に露出した基礎21と、この基礎21から上方に延びて枠部10の4箇所の連結点13に連結される。連結点13は、それぞれ、桁行部材11と梁間部材12と支柱40との交点であり、これら4つの連結点13は、2本の桁行部材11および2本の梁間部材12で構成される長方形の頂点に位置している。
【0025】
4本の斜材22は、同一の断面形状であり、例えば、建築用のM16ねじボルトとターンバックル24からなる。ターンバックル24により長さや張力を容易に調節できるので、基礎位置が設計時と異なっても、現場で加工することなく設置できる。
4本の斜材22の長さは略等しくなっており、桁行部材11、梁間部材12、およびこれら4本の斜材22で立体トラスを構成する。すなわち、この立体トラスは、地表面に露出した基礎21を頭頂点とし、斜材22をこの頭頂点から延びる4つの辺とする底面が長方形の四角錐を構成して、この四角錐を上下逆さにした形状となる。
【0026】
よって、基礎21の梁間方向(Y方向)の位置は、
図2に示すように、1本の梁間部材12上の2つの連結点13同士を結ぶ線分の垂直二等分線A上である。
また、基礎21の桁行方向(X方向)の位置は、
図3に示すように、1本の桁行部材11上の2つの連結点13同士を結ぶ線分の垂直二等分線B上である。
【0027】
以上の架台1は、例えば以下の手順で構築される。
まず、
図3の基礎21の位置に、杭23を打設する。
図2に示すように、杭23の頭部に基礎21を構築する。この基礎21には斜材22を接続できるアンカーを打ち込んでおく。
次に、支柱30に枠部10を載せて接合し、従来と同じ方法で架台を構築し、斜材22を地表面の基礎21と前記枠部と前記支柱との交点とを繋ぐ。その後、枠部10上に太陽光パネル2を設置する。
【0028】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)枠部10および4本の斜材22で立体トラスを構成する。よって、太陽光パネルを安定的に支持できるとともに、梁間方向の荷重のみならず、桁行方向を含む全ての方向の荷重に対しても、十分に抵抗できる。また、風による引き抜き力に対して、斜材を介して基礎に均一に伝わるので、支柱40を太くしたり支柱脚部基礎の固定度を上げたりせずに、細い斜材と少ない基礎で効率的に引き抜き力に抵抗できる。
更に、4本の斜材22を単一の鋼材で形成することで、材料費を低減できる。
【0029】
(2)各斜材22を桁行部材11と梁間部材12と支柱40の交点である連結点13に連結したので、架台1の剛性を向上できる。
【0030】
(3)4本の斜材22の断面形状を略同一とし、その長さを略等しくした。よって、斜材22の部材の種類を少なくできるから、施工コストを低減できるうえに、斜材に用いる部材の品質管理が容易となる。
また、4本の斜材22について、枠部10に連結される仕口の形状を統一でき、製作コストをさらに低減できる。更に、ターンバックル24により長さや張力を容易に調節できるので、基礎位置が設計時と多少異なっても、現場で加工することなく設置できる。
【0031】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、斜材22の本数を4本としたが、これに限らず、3本としてもよいし、あるいは5本以上としてもよい。
また、本実施形態では、桁行部材11、梁間部材12、および斜材22を鋼材で形成したが、これに限らず、木製や鉄筋コンクリート製としてもよく、桁行部材、梁間部材、および斜材に用いる材料は特に限定されない。
また、本実施形態では、斜材22をねじボルトとターンバックル、枠部10をチャンネル鋼としたが、これに限らず、断面矩形環状やH形状や単管パイプとしてもよく、枠部や斜材の断面形状は特に限定されない。
また、本実施形態では、基礎21を杭基礎としたが、これに限らず、プレキャストコンクリート部材を地面に設置するだけでもよく、基礎の形状は特に限定されない。
【符号の説明】
【0032】
1…架台
2…太陽光パネル
10…枠部
11…桁行部材
12…梁間部材
13…連結点
21…基礎
22…斜材
23…杭
24…ターンバックル