特許第6021603号(P6021603)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021603
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】焼却設備
(51)【国際特許分類】
   F23C 9/08 20060101AFI20161027BHJP
   F23J 7/00 20060101ALI20161027BHJP
   F23G 5/00 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   F23C9/08 402
   F23C99/00 317
   F23G5/00 C
   F23J7/00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-253167(P2012-253167)
(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公開番号】特開2014-102020(P2014-102020A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 匡之
(72)【発明者】
【氏名】滑澤 幸司
(72)【発明者】
【氏名】澤本 嘉正
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−180989(JP,A)
【文献】 特開2005−106370(JP,A)
【文献】 特開平10−220720(JP,A)
【文献】 特開2012−93013(JP,A)
【文献】 特開2008−70103(JP,A)
【文献】 特開平4−217710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 9/08
F23G 5/00
F23J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼却物を搬送させながら燃焼させる燃焼部と、
被焼却物が燃焼することで発生する燃焼ガスを外部に導く燃焼ガス流路と、
前記燃焼部に対して一次燃焼空気を供給する一次燃焼空気供給部と、
前記燃焼ガス流路に対して二次燃焼空気を供給する二次燃焼空気供給部と、
前記燃焼ガス流路を流通した前記燃焼ガスを処理した後の排ガスを、前記一次燃焼空気供給部と前記二次燃焼空気供給部の間の前記燃焼ガス流路に還流させ、再循環排ガスとして供給する再循環排ガス供給部と、
前記二次燃焼空気供給部と前記再循環排ガス供給部の間の前記燃焼ガス流路に脱硝薬剤を供給する第1脱硝薬剤供給部とを備えていることを特徴とする焼却設備。
【請求項2】
請求項1記載の焼却設備において、
前記二次燃焼空気供給部よりも前記燃焼ガスの流通方向下流側に脱硝薬剤を供給する第2脱硝薬剤供給部を備えていることを特徴とする焼却設備。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の焼却設備において、
前記燃焼部と前記第1脱硝薬剤供給部の間、且つ前記燃焼部の被焼却物の搬送方向下流端側の内部ガスを抜き出し、前記二次燃焼空気供給部から前記二次燃焼空気とともに前記燃焼ガス流路に供給する内部ガス引抜供給部を備えていることを特徴とする焼却設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば都市ごみなどの被焼却物を焼却処理するためのストーカ式の焼却設備は、被焼却物を一時的に貯留するホッパと、ホッパからシュート部を通じて連続的にフィードテーブル上に供給された被焼却物を所定のストロークで進退移動して焼却炉内に押し出し投入するフィーダと、焼却炉(燃焼ガス流路)の底部側に、金属製の固定火格子とごみの流れ方向に往復運動する可動火格子を交互に配置してなるストーカ(燃焼部)と、ストーカの下方に設けられ、ストーカの各部に一次燃焼空気を供給するための風箱(一次燃焼空気供給部)とを備えて構成されている。
【0003】
また、この種の焼却設備においては、焼却炉内のストーカが、フィーダによって押し出されて焼却炉内に落下した被焼却物を受け、被焼却物の水分を蒸発させるとともに一部熱分解するための乾燥ストーカ部と、下方の風箱から供給される一次燃焼空気によって、乾燥ストーカ部で乾燥した被焼却物に着火させ、揮発分および固定炭素分を燃焼させる燃焼ストーカ部と、燃焼ストーカ部で燃焼されずに通過してきた固定炭素分等の未燃分を完全に灰になるまで燃焼させる後燃焼ストーカ部とを備えている。また、被焼却物の搬送方向上流端側から下流端側に順に乾燥ストーカ部、燃焼ストーカ部、後燃焼ストーカ部が配設されるとともに、前記搬送方向下流端側の後燃焼ストーカ部の出口に灰出し口が設けられ、この灰出し口を通じて焼却炉から灰を排出するように構成されている。
【0004】
また、焼却炉は、その内部が燃焼ガス流路を形成し、ストーカの上方の燃焼ガス流路が一次燃焼室、一次燃焼室のさらに上方が二次燃焼室とされている。そして、一次燃焼室で生じた燃焼ガスが、二次燃焼空気と混合されて二次燃焼室に送られ、この二次燃焼室で燃焼ガス中の未燃成分を燃焼させる。また、二次燃焼室の後流に熱回収ボイラが接続して配設され、焼却炉の排熱を回収して有効利用できるように構成されている。さらに、熱回収ボイラで熱回収された排ガスは、減温塔、除塵装置等の排ガス処理設備を通過して処理され、煙突から外部に排出される。
【0005】
一方、焼却設備には、焼却炉内の燃焼排ガス中にアンモニアや尿素などの脱硝薬剤を供給する手段(脱硝薬剤供給部)、いわゆる無触媒脱硝システムを備え、脱硝薬剤を供給することで、焼却過程で生成されて燃焼ガス(排ガス)中に含まれるNOxを還元して低減・無害化させるように構成したものがある。また、例えば、脱硝薬剤としてアンモニアを用いた場合、被焼却物を燃焼することで発生するNOとNHは800〜1000℃の温度範囲で好適に還元反応が生じ、また、被焼却物が十分に燃焼した後の領域に脱硝薬剤を供給することが必要になる。このため、一般に、この種の焼却設備では、二次燃焼空気の供給口(供給ノズル、二次燃焼空気供給部)よりも燃焼ガス流通方向下流側に脱硝薬剤を噴霧して供給するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、焼却設備には、排ガス処理設備で処理した排ガスの一部を再循環排ガスとして抽出し、この抽出した再循環排ガスを二次燃焼空気の供給口とストーカの間の一次燃焼室に還流させるようにしたものがある。このように再循環排ガスを供給すると、一次燃焼室の雰囲気を弱還元性の雰囲気にすることができ、さらに再循環排ガスの供給によって撹拌混合され、この部分のガス濃度や温度を均一化することができる。これにより、未燃ガス成分や未燃物を完全燃焼させることができ、NOxの発生を抑えることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−103381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、例えば特許文献1に開示された焼却設備では、焼却炉内の温度分布を計測あるいはシミュレーションにより推定し、800〜1000℃の温度範囲の領域に脱硝薬剤を噴霧するようにしている。このため、焼却炉内(燃焼ガス流路)の温度分布の計測手段やシミュレーション装置を組み込むことが必要になり、複雑かつ高価な装置構成になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の焼却設備は、被焼却物を搬送させながら燃焼させる燃焼部と、被焼却物が燃焼することで発生する燃焼ガスを外部に導く燃焼ガス流路と、前記燃焼部に対して一次燃焼空気を供給する一次燃焼空気供給部と、前記燃焼ガス流路に対して二次燃焼空気を供給する二次燃焼空気供給部と、前記燃焼ガス流路を流通した前記燃焼ガスを処理した後の排ガスを、前記一次燃焼空気供給部と前記二次燃焼空気供給部の間の前記燃焼ガス流路に還流させ、再循環排ガスとして供給する再循環排ガス供給部と、前記二次燃焼空気供給部と前記再循環排ガス供給部の間の前記燃焼ガス流路に脱硝薬剤を供給する第1脱硝薬剤供給部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の焼却設備においては、前記二次燃焼空気供給部よりも前記燃焼ガスの流通方向下流側に脱硝薬剤を供給する第2脱硝薬剤供給部を備えていることが望ましい。
【0011】
さらに、本発明の焼却設備においては、前記燃焼部と前記第1脱硝薬剤供給部の間、且つ前記燃焼部の被焼却物の搬送方向下流端側の内部ガスを抜き出し、前記二次燃焼空気供給部から前記二次燃焼空気とともに前記燃焼ガス流路に供給する内部ガス引抜供給部を備えていることがより望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の焼却設備においては、排ガス処理設備で処理された排ガスの一部を再循環排ガスとして一次燃焼空気供給部と二次燃焼空気供給部の間の燃焼ガス流路(一次燃焼室)に還流させることにより、再循環排ガスによってこの部分の燃焼ガスを撹拌混合し、ガス成分の濃度や温度を均一化させることができる。
【0013】
そして、このように再循環排ガスの供給によって撹拌混合され、例えば950〜1000℃前後の温度で、且つ1〜2vol%程度以下の酸素濃度で均一化された二次燃焼空気供給部と再循環排ガス供給部の間に、第1脱硝薬剤供給部から脱硝薬剤を供給すると、短時間で、効率的且つ効果的にNOxを低減することが可能になり、例えば70%を超える高脱硝率を実現することが可能になる。
【0014】
よって、本発明の焼却設備によれば、従来のように焼却炉内の温度分布の計測手段やシミュレーション装置を組み込むことを不要にし、再循環排ガス供給部を設けるとともに、二次燃焼空気供給部と再循環排ガス供給部の間に脱硝薬剤を供給する第1脱硝薬剤供給部を設けるという構成によって、効率的且つ効果的にNOxを低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る焼却設備を示す図である。
図2】燃焼ガスの酸素濃度の違いによる燃焼ガス温度と脱硝率の関係を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る焼却設備の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1及び図2を参照し、本発明の一実施形態に係る焼却設備について説明する。なお、本実施形態は、都市ごみなどの被焼却物を焼却処理するための焼却設備に関するものである。
【0017】
本実施形態の焼却設備(焼却プラント)Aは、図1に示すように、被焼却物1を一時的に貯留するホッパ(ホッパシュート)2と、被焼却物1を燃焼させる焼却炉3と、ホッパ2からシュート部2aを通じて連続的にフィードテーブル4上に供給された被焼却物1を所定のストロークで進退移動して焼却炉3内に押し出し投入するフィーダ5と、フィーダ5をフィードテーブル4上で進退移動させるためのフィーダ駆動装置6と、焼却炉3の底部側に、金属製の固定火格子とごみの流れ方向に往復運動する可動火格子を交互に配置してなるストーカ7と、送風機8から一次燃焼空気S1をストーカ7の各部に風箱9を通じて供給する一次燃焼空気供給部10とを備えて構成されている。
【0018】
また、ストーカ7は、本発明にかかる燃焼部であり、フィーダ5によって押し出されて焼却炉3内に落下した被焼却物1を受け、この被焼却物1の水分を蒸発させるとともに一部熱分解するための乾燥ストーカ部M1と、下方の風箱9から供給される一次燃焼空気S1によって、乾燥ストーカ部M1で乾燥した被焼却物1に着火させ、揮発分および固定炭素分を燃焼させる燃焼ストーカ部M2と、燃焼ストーカ部M2で燃焼されずに通過してきた固定炭素分等の未燃分を完全に灰になるまで燃焼させる後燃焼ストーカ部M3とを備えている。また、後燃焼ストーカ部M3の出口に灰出し口11が設けられ、この灰出し口11を通じて焼却炉3から灰を排出するように構成されている。
【0019】
また、焼却炉3は、その内部が燃焼ガス流路12とされ、さらに燃焼ガス流路12の焼却炉3内は、ストーカ7の上方が一次燃焼室13、一次燃焼室13の上方が二次燃焼室14とされ、燃焼ガスRがストーカ7から一次燃焼室13、一次燃焼室13から二次燃焼室14に向け、下方から上方に流通する。さらに、焼却炉3には、二次燃焼室14の燃焼ガスRの流通方向下流側に熱回収ボイラ15が接続して配設されている。さらに、焼却炉3には、焼却炉3の炉壁に取り付けた供給ノズル17を通じて送風機(不図示)から燃焼ガス流路12に二次燃焼空気S2を供給する二次燃焼空気供給部18が設けられている。
【0020】
また、熱回収ボイラ15で熱回収された排ガスR’は、減温塔19、除塵装置(バグフィルタ)20などの排ガス処理設備21を通過して処理され、煙突22から外部に排出される。
【0021】
さらに、本実施形態の焼却設備Aには、排ガス処理設備21で処理した後の排ガスR’を、一次燃焼空気供給部10と二次燃焼空気供給部18の間の燃焼ガス流路12、すなわち一次燃焼室13に送風機23によって還流させ、炉壁に設けられた供給ノズル24を通じ、再循環排ガスS3として供給する再循環排ガス供給部25を備えている。
【0022】
さらに、二次燃焼空気供給部18と再循環排ガス供給部25の間の燃焼ガス流路12(一次燃焼室13)に脱硝薬剤P1を供給する第1脱硝薬剤供給部26を備えている。さらに、二次燃焼空気供給部18よりも燃焼ガスRの流通方向下流側(二次燃焼室14)に脱硝薬剤P2を供給する第2脱硝薬剤供給部27を備えている。また、第1脱硝薬剤供給部26と第2脱硝薬剤供給部27はそれぞれ、アンモニア水や尿素水などの脱硝薬剤P1、P2の貯蔵タンク(不図示)、送液ポンプ(不図示)、炉壁に設けられた供給ノズル30、31を備えて構成されている。
【0023】
そして、上記構成からなる本実施形態の焼却設備Aで被焼却物1を焼却処理する際には、フィーダ5の駆動によって焼却炉3内のストーカ7上に落下した被焼却物1が、火格子の往復運動によって順次、乾燥ストーカ部M1、燃焼ストーカ部M2、後燃焼ストーカ部M3に搬送される。また、このとき、下方の風箱9から一次燃焼空気S1が、例えば空気比を0.8〜1.0程度として各ストーカ部M1、M2、M3に供給され、この一次燃焼空気S1によって被焼却物1が燃焼する。また、順次搬送されながら被焼却物1が燃焼し、後燃焼ストーカ部M3の出口に設けられた灰出し口11から灰が外部に排出される。
【0024】
ここで、往復運動するストーカ7の火格子上の被焼却物1に下方から供給されて、この被焼却物1を燃焼させるための一次燃焼空気S1はその流速がそれほど速くはない。また、一次燃焼空気S1で被焼却物1を燃焼させて発生した燃焼ガスRは、一次燃焼室13内において、そのガス成分の濃度や温度に分布が生じる。このため、一次燃焼空気S1と燃焼ガスRとの混合に時間を要し、その成分が燃焼しきるまでに時間がかかる。
【0025】
このため、本実施形態の焼却設備Aでは、従来と同様に、焼却炉3内の一次燃焼室13から上方に流れる燃焼ガスRに対して、焼却炉3の燃焼ガス流路12の途中で二次燃焼空気S2を例えば空気比0.2〜0.4程度で供給するようにし、燃焼ガスRの未燃ガス成分の燃焼を促進させる。
【0026】
一方、上記のように被焼却物1を燃焼させる過程で、未燃ガスや未燃物の発生・燃焼に伴いNOxが発生し、特に一次燃焼空気S1で被焼却物1を焼却した後の一次燃焼室13内で多く発生する。
【0027】
これに対し、本実施形態の焼却設備Aでは、まず、焼却炉3から熱回収ボイラ15に送られ、この熱回収ボイラ15で熱回収され、さらに排ガス処理設備21の減温塔19、除塵装置20などで順次処理された排ガスR’の一部、例えば全排ガス量の10〜30%程度の排ガスR’を、再循環排ガスS3として一次燃焼空気供給部10と二次燃焼空気供給部18の間の燃焼ガス流路12、すなわち一次燃焼室13に還流させる。そして、このように再循環排ガスS3を一次燃焼室13に供給すると、一次燃焼室13の燃焼ガスRが再循環排ガスS3によって撹拌混合される。これにより、一次燃焼室13内のガス成分の濃度や温度が均一化され、且つ還元雰囲気で未燃ガスや未燃物の燃焼が促進され、これに伴い、NOxの発生が抑制される。
【0028】
なお、フレッシュエアを一次燃焼室13に供給し、一次燃焼室13の燃焼ガスRを撹拌混合させることも考えられるが、フレッシュエア中の成分によってNOxが発生しやすくなる。
【0029】
次に、本実施形態の焼却設備Aでは、脱硝薬剤供給部26、27から焼却炉3内の燃焼ガスR中に、アンモニア水や尿素水などの脱硝薬剤P1、P2を供給する。このように脱硝薬剤P1、P2を供給すると、焼却過程で生成されて燃焼ガスR(排ガスR’)中に含まれるNOxに還元反応が生じ、排ガスR’中のNOxが低減する。
【0030】
ここで、本願の発明者らは、脱硝薬剤P1、P2によるNOx低減効果に関して種々検討を行い、図2に示す燃焼ガスR中の酸素濃度の違いによる燃焼ガス温度と脱硝率の関係の知見をその成果として得ることができた。すなわち、この図2に示すように、燃焼ガスRの酸素濃度が低くなるほど、脱硝率が高くなり、供給した脱硝薬剤P1、P2によって効率的にNOxを低減できることが確認された。さらに、900℃を超える高温域でも、やはり燃焼ガスRの酸素濃度が低くなるほどに脱硝率が高くなることが確認された。
【0031】
この知見を得た本願の発明者らは、本実施形態の焼却設備Aの焼却炉3内の温度や酸素濃度を調査し、二次燃焼空気供給部18よりも下流側の二次燃焼室14における燃焼ガスRの酸素濃度がドライベースで5〜6vol%程度を示し、二次燃焼空気供給部18と再循環排ガス供給部25の間の一次燃焼室13における燃焼ガスRの酸素濃度がドライベースで3vol%以下を示すことを確認した。
【0032】
そして、この知見に基づき、本実施形態の焼却設備Aでは、まず、二次燃焼空気供給部18と再循環排ガス供給部25の間の一次燃焼室13に脱硝薬剤P1を供給する第1脱硝薬剤供給部26を設けるようにした。すなわち、二次燃焼空気供給部18と再循環排ガス供給部25の間は、再循環排ガスS3が供給され、撹拌混合によってガス成分の濃度や温度が均一化するとともに燃焼が促進され、これにより、例えば950〜1000℃前後の温度で、且つ1〜2vol%程度の酸素濃度で均一化する。さらに、再循環排ガスS3の供給によって、この温度と酸素濃度の領域が広く形成される。
【0033】
よって、二次燃焼空気供給部18と再循環排ガス供給部25の間に第1脱硝薬剤供給部26から脱硝薬剤P1を供給すると、図2に示したように、確実に70%を超える高脱硝率で脱硝反応が生じ、短時間で、効率的且つ効果的にNOxが低減することになる。
【0034】
さらに、本実施形態の焼却設備Aにおいては、二次燃焼空気供給部18よりも燃焼ガスRの流通方向下流側に脱硝薬剤P2を供給する第2脱硝薬剤供給部27を備え、従来と同様、二次燃焼室14にも脱硝薬剤P2を供給する。この二次燃焼室14では、850〜950℃前後の温度で、且つ二次燃焼空気S2の供給により酸素濃度が5〜6vol%程度になっているため、図2に示したように、50%以上の脱硝効率で脱硝反応が生じることになる。
【0035】
そして、このとき、本実施形態の焼却設備Aでは、第1脱硝薬剤供給部26から脱硝薬剤P1を供給し、既に70%を超える脱硝率でNOxを低減させた燃焼ガスRが流通し、この燃焼ガスRに対して第2脱硝薬剤供給部27から脱硝薬剤P2供給することで、さらに50%以上の脱硝効率でNOxが低減することになる。このため、本実施形態では、第1脱硝薬剤供給部26による効率的なNOx低減に加え、さらに第2脱硝薬剤供給部27によるNOxを低減させる2段階の脱硝処理が行われるため、従来と比較し、燃焼ガスR(排ガスR’)中のNOxが確実に低濃度に抑えられる。
【0036】
また、従来のように二次燃焼室14にのみ脱硝薬剤P2を供給する場合には、アンモニアなどの脱硝薬剤P2の投入量を多くしてしまうと、未反応の脱硝薬剤P2が生じてしまい、排ガスR’とともに外部にリークすることになる。このため、従来、脱硝薬剤P2の投入量を制限することが必要であった。
【0037】
これに対し、本実施形態の焼却設備Aでは、第1脱硝薬剤供給部26によって二次燃焼空気供給部18と再循環排ガス供給部25の間の一次燃焼室13に脱硝薬剤P1を供給するようにしているため、すなわち、1000℃前後の高温場に脱硝薬剤P1を供給するようにしているため、脱硝薬剤P1を多く投入しても未反応になることがない。これにより、本実施形態の焼却設備Aにおいては、従来のようにリークを防止するために脱硝薬剤P1の投入量を抑制する必要がなく、従来よりも多くの脱硝薬剤P1を投入することも可能になり、この点からも確実にNOxの低減効果が得られることになる。
【0038】
したがって、本実施形態の焼却設備Aにおいては、排ガス処理設備21で処理された排ガスR’の一部を再循環排ガスS3として一次燃焼空気供給部10と二次燃焼空気供給部18の間の燃焼ガス流路12、すなわち一次燃焼室13に還流させることにより、この一次燃焼室13の燃焼ガスRを再循環排ガスS3によって撹拌混合することができ、これにより、一次燃焼室13内のガス成分の濃度や温度を均一化することができる。
【0039】
そして、本実施形態の焼却設備Aでは、燃焼ガスRの酸素濃度が低くなるほど、脱硝率が高くなり、また、900℃を超える高温域でも、燃焼ガスRの酸素濃度が低くなるほどに脱硝率が高くなるという本願の発明者らによる知見に基づいて、第1脱硝薬剤供給部26により、二次燃焼空気供給部18と再循環排ガス供給部25の間の一次燃焼室13に脱硝薬剤P1供給するようにしたことで、短時間で、効率的且つ効果的にNOxが低減することが可能になる。
【0040】
すなわち、二次燃焼空気供給部18と再循環排ガス供給部25の間が、再循環排ガスS3の供給によって撹拌混合され、且つ燃焼が促進されて、例えば950〜1000℃前後の温度で、且つ1〜2vol%程度の酸素濃度で均一化されるため、この二次燃焼空気供給部18と再循環排ガス供給部25の間に脱硝薬剤P1を供給するように第1脱硝薬剤供給部26を設けることで、例えば70%を超える高脱硝率で脱硝反応が生じ、短時間で、効率的且つ効果的にNOxを低減することが可能になる。
【0041】
また、従来のように二次燃焼空気供給部18よりも燃焼ガスRの流通方向下流側にのみ(二次燃焼室14にのみ)脱硝薬剤P2を供給する場合には、未反応の脱硝薬剤P2のリークを防止するため、脱硝薬剤P2の投入量を抑える必要があるが、本実施形態の焼却設備Aでは、第1脱硝薬剤供給部26によって二次燃焼空気供給部18と再循環排ガス供給部25の間に脱硝薬剤P1を供給するようにしているため、すなわち、1000℃前後の高温場に脱硝薬剤P1を供給するようにしているため、脱硝薬剤P1を多く投入しても未反応になることがない。このため、多くの脱硝薬剤P1を投入することも可能になり、この点からも、確実にNOxの低減効果を得ることが可能になる。
【0042】
よって、本実施形態の焼却設備Aによれば、従来のように焼却炉3内の温度分布の計測手段やシミュレーション装置を組み込むことを不要にし、再循環排ガス供給部25に加え、二次燃焼空気供給部18と再循環排ガス供給部25の間に脱硝薬剤P1を供給する第1脱硝薬剤供給部26を設けるという簡易な構成で、効率的且つ効果的にNOxを低減させることが可能になる。
【0043】
また、本実施形態の焼却設備Aにおいては、第1脱硝薬剤供給部26に加え、二次燃焼空気供給部18よりも燃焼ガスRの流通方向下流側に脱硝薬剤P2を供給する第2脱硝薬剤供給部27を備えることにより、第1脱硝薬剤供給部26から供給した脱硝薬剤P1によってNOxを低減させた燃焼ガスRに対し、第2脱硝薬剤供給部27から脱硝薬剤P2を供給し、さらにNOxを低減させることができる。すなわち、第1脱硝薬剤供給部26によって効率的にNOxを低減させることに加え、さらに第2脱硝薬剤供給部27によってNOxを低減させる2段階の処理を施すことで、従来と比較し、燃焼ガスR(排ガスR’)中のNOxを確実に低濃度に抑えることが可能になる。
【0044】
以上、本発明に係る焼却設備の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0045】
例えば、本実施形態では、第1脱硝薬剤供給部26に加え、二次燃焼空気供給部18よりも下流側に脱硝薬剤P2を供給する第2脱硝薬剤供給部27を備えて焼却設備Aが構成されているものとしたが、本発明にかかる焼却設備は、二次燃焼空気供給部18と再循環排ガス供給部25の間にのみ脱硝薬剤P1を供給するように、第1脱硝薬剤供給部26の一つの脱硝薬剤供給部を備えて構成してもよく、この場合においても、従来と比較し、十分に、効率的且つ効果的にNOxを低減させることが可能である。
【0046】
また、図3に示すように、ストーカ(燃焼部)7と第1脱硝薬剤供給部26の間で、且つストーカ7の被焼却物1の搬送方向下流側(図中:破線領域G)の内部ガス(燃焼ガス)S4の一部を抜き出し、二次燃焼空気供給部18から二次燃焼空気S2とともに焼却炉3内の燃焼ガス流路12に供給する内部ガス引抜供給部32を備えていてもよい。
【0047】
より具体的に、ストーカ7は、被焼却物1の搬送方向上流側から乾燥ストーカ部M1、燃焼ストーカ部M2、後燃焼ストーカ部M3が設けられ、搬送方向下流端側の後燃焼ストーカ部M3では、燃焼がある程度完了しているため、風箱9から供給した一次燃焼空気S1の酸素が消費されずに流通することになる。このため、ストーカ7の被焼却物1の搬送方向下流端側の燃焼ガスRは、例えば酸素濃度が18〜20vol%程度であり、この酸素があまり消費されていない燃焼ガス(領域Gの内部ガスS4)を引き抜き、二次燃焼空気供給部18から二次燃焼空気S2とともに焼却炉3内に供給することで、この内部ガスS4の酸素を二次燃焼に利用することが可能になる。これにより、二次燃焼空気供給部18から供給するフレッシュエア(二次燃焼空気S2)の量を減らすことができ、結果として排ガス量を減らすことができる。よって、排ガスR’を処理する排ガス処理設備21などに対する負荷を軽減することが可能になる。
【符号の説明】
【0048】
1 被焼却物
2 ホッパ
2a シュート部
3 焼却炉
4 フィードテーブル
5 フィーダ
6 フィーダ駆動装置
7 ストーカ
8 送風機
9 風箱
10 一次燃焼空気供給部
11 灰出し口
12 燃焼ガス流路
13 一次燃焼室
14 二次燃焼室
15 熱回収ボイラ
17 供給ノズル
18 二次燃焼空気供給部
19 減温塔
20 除塵装置
21 排ガス処理設備
22 煙突
23 送風機
24 供給ノズル
25 再循環排ガス供給部
26 第1脱硝薬剤供給部
27 第2脱硝薬剤供給部
30 供給ノズル
31 供給ノズル
32 内部ガス引抜供給部
A 焼却設備(焼却プラント)
M1 乾燥ストーカ部
M2 燃焼ストーカ部
M3 後燃焼ストーカ部
P1 脱硝薬剤
P2 脱硝薬剤
R 燃焼ガス
R’ 排ガス
S1 一次燃焼空気
S2 二次燃焼空気
S3 再循環排ガス
S4 内部ガス
図1
図2
図3