特許第6021616号(P6021616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許60216163−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体及びそれを含有してなる医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021616
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体及びそれを含有してなる医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20161027BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20161027BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   A61K31/496
   A61P13/00
   A61P13/10
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-264935(P2012-264935)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-108955(P2014-108955A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】504464667
【氏名又は名称】株式会社アエタスファルマ
(73)【特許権者】
【識別番号】599138320
【氏名又は名称】金子 昇
(74)【復代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【復代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(74)【復代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【復代理人】
【識別番号】100158872
【弁理士】
【氏名又は名称】牛山 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100102668
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 憲生
(72)【発明者】
【氏名】金子 昇
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5318938(JP,B2)
【文献】 国際公開第92/000962(WO,A1)
【文献】 特開2001−163785(JP,A)
【文献】 特表2003−516391(JP,A)
【文献】 特開平09−241241(JP,A)
【文献】 特開平03−118380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式[I]
【化1】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数1から10のアルコキシ基を表すか、R及びRと一緒になって隣接する炭素原子と共に置換基を有してもよいアリール環を形成してもよく、
は、置換基を有してもよいアリール基を表すか、又はR及びRと一緒になって隣接する炭素原子と共に置換基を有してもよいアリール環を形成してもよく、
は、水素原子を表すか、又はR及びRと一緒になって隣接する炭素原子と共に置換基を有してもよいアリール環を形成してもよく、
は、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数1から10のアルコキシ基を表し、
は、1つ又は2つ以上の置換基を有してもよいアリール基で置換された炭素数1から10のアルキル基を表す。)
で示される3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩、及び製薬学的に許容される担体を含有してなる排尿障害の治療及び/又は予防のための医薬組成物。
【請求項2】
一般式[I]におけるRが水酸基であり、Rが置換基を有してもよいアリール基であり、Rが水素原子であり、Rが水素原子又は水酸基であり、Rが置換基を有してもよいジフェニルメチル基である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
一般式[I]で表される3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体が、1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−クロロフェニル)−ピペリジニル〕プロパン、又は1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−メチルフェニル)−ピペリジニル〕−2−プロパノールである、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
排尿障害が、過活動膀胱、尿意切迫感、頻尿、又は尿失禁である、請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式[I]で表される3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩を用いた膀胱平滑筋弛緩剤に関する。
【背景技術】
【0002】
筋肉は横紋筋と平滑筋とに分類される。骨格筋や心筋は横紋筋であり、消化管、膀胱、子宮、大動脈、中小血管、肺動脈、気管、気管支の筋肉は平滑筋である。筋肉の収縮・弛緩機序は横紋筋と平滑筋とは異なる。横紋筋には三つの成分、トロポニンC、トロポニンI、トロポニンTからなる調節蛋白トロポニンが存在し、トロポニンCにCa2+が結合すると、収縮抑制として作用しているトロポニンIがアクチンから乖離し、その結果、アクチンとミオシン相互のスライディングにより収縮が起こる。トロポニンCからCa2+が外れると、トロポニンIの収縮抑制により、弛緩が起こる。
平滑筋ではカルモジュリンにCa2+が結合すると、ミオシン軽鎖のリン酸化が起こり、ミオシン頭部の運動によりアクチン・ミオシン相互の収縮が起こる。一方、リン酸化されているミオシンがホスファターゼにより脱リン酸化されると、平滑筋は弛緩する。
この様に横紋筋と平滑筋の収縮機構は異なる。また、平滑筋は交感神経と副交感神経の二重支配によりコントロールされている。さらに膀胱体部平滑筋ではこれに分布するコリン受容体の一つであるムスカリン受容体刺激により収縮が起こる。
【0003】
膀胱は蓄尿と排尿という2つの機能を有する。蓄尿は膀胱頸部の平滑筋に分布する交感神経α受容体を刺激することにより、膀胱頸部を収縮させ、他方、膀胱体部平滑筋に分布する交感神経β受容体により、膀胱体部を弛緩させることによって行われている。
排尿は主として副交感神経が関与し、膀胱体部平滑筋に分布するコリン受容体の一つであるムスカリン受容体を刺激し、膀胱体部を収縮させ行われる。
このように蓄尿と排尿は交感神経、副交感神経の働きと膀胱体部平滑筋、膀胱頸部平滑筋などの筋収縮ならびに筋弛緩により微妙に調節されているが、この調節が障害されると種々の排尿障害がおこる。
排尿障害には頻尿、残尿、尿失禁、膀胱の不随意の収縮による過活動膀胱などがある。中でも過活動膀胱は一般的によく見られる症状で、日本においては過活動膀胱の潜在患者はおよそ830万人と推定されている。
【0004】
排尿障害治療薬は大きく二つに分かれる。一つはムスカリン受容体を阻害する薬剤で、他の一つはα1阻害薬である。前者には塩酸プロピベリン、塩酸オキシブチニン、塩酸フラボキサート、ソリフェナシン、トルテロジンなどがあり、ムスカリン受容体を刺激するカルバコールによる膀胱平滑筋の収縮を阻害する働きがある。後者には、シロドシンやナフトピジル、タムスロシンなどがあり、膀胱頸部平滑筋を弛緩させ、排尿を促し尿閉や前立腺肥大や高齢者の排尿障害を治療する薬剤として使用される。
また、過活動膀胱治療剤としては、ニコランジル(特許文献1参照)、インドール誘導体(特許文献2参照)、ベンゾピラジン誘導体(特許文献3参照)などのカリウムチャネル開口剤を用いるもの、アミノチアゾリル酢酸アニリド誘導体(特許文献4参照)、ベンゾジオキシンカルボン酸誘導体(特許文献5参照)、アミノアルキルインドール誘導体(特許文献6参照)、ヒドロキシメチルピロリジン誘導体(特許文献7参照)などのβ3アドレナリン受容体刺激剤を用いるもの、PDE9阻害剤を用いるもの(特許文献8及び9参照)、ジアゼパムを用いるもの(特許文献10参照)、インドリルピペリジン誘導体を用いるもの(特許文献11参照)、三環式化合物を用いるもの(特許文献12参照)なども報告されている。
【0005】
ある種の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体が、心筋壊死の発生を予防すること、また、抗がん作用があることが報告されている(特許文献13及び14参照)。しかし、これらの化合物が、平滑筋を弛緩させることについては特許文献13及び14には全く記述されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/004115号
【特許文献2】特表2007−523873号公報
【特許文献3】特表2009−509928号公報
【特許文献4】国際公開第2004/041276号
【特許文献5】国際公開第2007/083640号
【特許文献6】特開2008−100916号公報
【特許文献7】特開2012−20961号公報
【特許文献8】国際公開第2008/072779号
【特許文献9】国際公開第2010/101230号
【特許文献10】特表2012−525402号公報
【特許文献11】国際公開第2005/108389号
【特許文献12】国際公開第2002/078710号
【特許文献13】国際公開第92/00962号
【特許文献14】国際公開第01/22968号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、平滑筋弛緩剤、特に、膀胱平滑筋を弛緩させ、尿回数を減らし、一回尿量を増やす作用により、排尿障害の治療薬および予防薬を提供するものである。本発明の化合物は特に膀胱平滑筋を弛緩させ、さらに他の平滑筋、例えば肺動脈や気管、気管支の平滑筋及び子宮平滑筋の収縮を抑制することから、本発明は、平滑筋の弛緩又は平滑筋の収縮抑制のための治療薬及び予防薬を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、下記の一般式[I]で表される3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体が膀胱平滑筋などの平滑筋を弛緩させることを見出した。さらに、一般式[I]で示される化合物は心筋などの横紋筋も弛緩させる作用を有していると考えられる。
本発明者は、一般式[I]で表される3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体について各種の薬理作用について検討してきた。その結果、これらの化合物が、特に低用量で膀胱平滑筋を弛緩させ、尿回数を減らし、一回尿量を増やす作用を有する薬剤として有用であることを見出した。
即ち、本発明は、次の一般式[I]、
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数1から10のアルコキシ基を表すか、R及びRと一緒になって隣接する炭素原子と共に置換基を有してもよいアリール環を形成してもよく、
は、置換基を有してもよいアリール基を表すか、又はR及びRと一緒になって隣接する炭素原子と共に置換基を有してもよいアリール環を形成してもよく、
は、水素原子を表すか、又はR及びRと一緒になって隣接する炭素原子と共に置換基を有してもよいアリール環を形成してもよく、
は、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数1から10のアルコキシ基を表し、
は、1つ又は2つ以上の置換基を有してもよいアリール基で置換された炭素数1から10のアルキル基を表す。)
で示される3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩に関する。
【0011】
また、本発明は、前記式[I]で表される3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩、及び製薬学的に許容される担体を含有してなる排尿障害の治療及び/又は予防のための医薬組成物、当該医薬組成物を用いた治療及び/又は予防方法、並びに当該医薬組成物の有効成分として使用するための3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体及びその薬学的に許容しうる塩に関する。
より詳細には、本発明は次の[1]から[25]に関する。
【0012】
[1]前記一般式[I]で示される3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩。
[2]前記一般式[I]におけるRが、置換基を有してもよいジフェニルメチル基である前記[1]に記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩。
[3]前記一般式[I]におけるRが、水酸基である、前記[1]又は[2]に記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩。[4]前記一般式[I]におけるRが、置換基を有してもよいアリール基である、前記[1]から[3]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩。
[5]前記一般式[I]におけるRが、水素原子である、前記[1]から[4]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩。
[6]前記一般式[I]におけるRが、水素原子又は水酸基である、前記[1]から[5]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩。
[7]前記一般式[I]におけるRが水酸基であり、Rが置換基を有してもよいアリール基であり、Rが水素原子であり、Rが水素原子又は水酸基であり、Rが置換基を有してもよいジフェニルメチル基である、前記[1]から[6]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩。
[8]前記一般式[I]で表される3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体が、下記の、
【0013】
【化2】
【0014】
で示される1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−クロロフェニル)−ピペリジニル〕プロパン(化合物[2])である、前記[1]から[7]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩。
[9]前記一般式[I]で表される3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体が、下記の、
【0015】
【化3】
【0016】
で示される1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−メチルフェニル)−ピペリジニル〕−2−プロパノール(化合物[3])である、前記[1]から[7]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩。
[10]前記一般式[I]で表される3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体の薬学的に許容される塩が、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、及び蓚酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩からなる群から選ばれる塩である、前記[1]から[9]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩。
【0017】
[11]前記一般式[I]で表される3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体において、R、R、及びRが一緒になって隣接する炭素原子と共に置換基を有してもよいアリール環を形成し、Rが水酸基で、かつRがジフェニルメチル基である場合、並びにR及びRが水酸基で、Rが水素原子、Rが4−クロロフェニル基で、かつRがジフェニルメチル基である場合が除かれた、前記[1]から[10]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩。
[12]前記[1]から[10]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体及びその薬学的に許容しうる塩から選ばれる少なくとも1種、及び製薬学的に許容される担体を含有してなる平滑筋の収縮を改善するための医薬組成物。
[13]平滑筋が、膀胱平滑筋、肺動脈の平滑筋、気管の平滑筋、気管支平滑筋、消化管の平滑筋、又は子宮の平滑筋である、前記[12]に記載の医薬組成物。
[14]平滑筋の収縮を改善するための医薬組成物が、膀胱、気管支、肺動脈、消化管、又は子宮における平滑筋弛緩障害の治療及び/又は予防のものである、前記[12]又は[13]に記載の医薬組成物。
【0018】
[15]前記[1]から[10]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体及びその薬学的に許容される塩から選ばれる少なくとも1種、及び製薬学的に許容される担体を含有してなる医薬組成物。
[16]前記[1]から[10]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体及びその薬学的に許容される塩から選ばれる少なくとも1種、及び製薬学的に許容される担体を含有してなる排尿障害の治療及び/又は予防のための医薬組成物。
[17]排尿障害が、過活動膀胱、尿意切迫感、頻尿、又は尿失禁である前記[16]に記載の医薬組成物。
[18]尿失禁が、切迫性尿失禁、反射性尿失禁、又は腹圧性尿失禁である、前記[17]に記載の医薬組成物。
[19]前記[1]から[10]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体及びその薬学的に許容される塩から選ばれる少なくとも1種、及び製薬学的に許容される担体を含有してなる過活動膀胱の治療及び/又は予防のための医薬組成物。
【0019】
[20]前記[1]から[10]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体及びその薬学的に許容しうる塩から選ばれる少なくとも1種を含有してなる有効成分の有効量を、平滑筋の収縮の改善を必要とする患者に投与することからなる、平滑筋の収縮の改善を必要とする疾患を治療及び/又は予防する方法。
[21]前記[1]から[10]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体及びその薬学的に許容しうる塩から選ばれる少なくとも1種を含有してなる有効成分の有効量を、排尿障害の治療及び/又は予防を必要とする患者に投与することからなる、排尿障害を治療及び/又は予防する方法。
[22]前記[1]から[10]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体及びその薬学的に許容しうる塩から選ばれる少なくとも1種を含有してなる有効成分の有効量を、過活動膀胱の治療及び/又は予防を必要とする患者に投与することからなる、過活動膀胱を治療及び/又は予防する方法。
[23]平滑筋の収縮を治療及び/又は予防するための医薬組成物の有効成分として使用するための、前記[1]から[10]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体及びその薬学的に許容しうる塩。
[24]排尿障害を治療及び/又は予防するための医薬組成物の有効成分として使用するための前記[1]から[10]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体及びその薬学的に許容しうる塩。
[25]過活動膀胱を治療及び/又は予防するための医薬組成物の有効成分として使用するための前記[1]から[10]のいずれかに記載の3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体及びその薬学的に許容しうる塩。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一般式[I]で表される化合物又はその塩は、膀胱、気管、気管支、肺動脈、消化管、子宮などの平滑筋の弛緩、又はこれらの平滑筋の収縮を抑制する作用を有し、平滑筋弛緩剤又は平滑筋収縮抑制剤として有用である。特に、本発明の一般式[I]で表される化合物又はその塩は、膀胱平滑筋の収縮を抑制し、膀胱平滑筋を弛緩する作用に優れ、排尿障害治療剤及び/又は予防剤、また過活動膀胱治療剤として有用である。
また、本発明の一般式[I]で表される3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩のなかのいくつかの化合物は、心拍を増加させず、血圧を増加させ、心筋の収縮・弛緩機能を促進することが知られており、心筋などの横紋筋の収縮・弛緩機能の改善剤としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、カルバコールを累積投与下におけるラット膀胱筋に対する、化合物[2]の0μM(対照)、3μM、10μM投与による、膀胱平滑筋収縮の抑制作用を調べたものである。カルバコール10−3M投与による収縮を100%とした。
図2図2は、化合物[3]の1.0mg/kg投与前後の膀胱内圧及び排尿回数の推移である。
図3図3は、化合物[3]の1.0mg/kgを投与した際の投与前、および投与後20分間の尿量、尿回数を比較したものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、次の一般式[I]
【0023】
【化4】
【0024】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数1から10のアルコキシ基を表すか、R及びRと一緒になって隣接する炭素原子と共に置換基を有してもよいアリール環を形成してもよく、
は、置換基を有してもよいアリール基を表すか、又はR及びRと一緒になって隣接する炭素原子と共に置換基を有してもよいアリール環を形成してもよく、
は、水素原子を表すか、又はR及びRと一緒になって隣接する炭素原子と共に置換基を有してもよいアリール環を形成してもよく、
は、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子、又は炭素数1から10のアルコキシ基を表し、
は、1つ又は2つ以上の置換基を有してもよいアリール基で置換された炭素数1から10のアルキル基を表す。)
で示される3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩に関する。
【0025】
本発明におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子などが挙げられる。
本発明における炭素数1から10のアルキル基としては、炭素数1から10、好ましくは炭素数1から5、より好ましくは炭素数1から3の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。本発明の好ましい炭素数1から5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基などが挙げられる。
本発明における炭素数1から10のアルコキシ基としては、炭素数1から10、好ましくは炭素数1から5、より好ましくは炭素数1又は2の前記したアルキル基で構成されるアルコキシ基が挙げられる。本発明の好ましい炭素数1から10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
【0026】
本発明におけるアリール基としては、炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式の炭素環式のアリール基が挙げられる。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントリル基、などが挙げられる。好ましいアリール基としてはフェニル基が挙げられる。
本発明における置換基を有してもよいアリール基とは、前記したアリール基に1つ又は2つ以上の置換基が置換していてもよいアリール基である。このような置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1から10のアルキル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1から10のアルコキシ基からなる群から選ばれる置換基が挙げられる。
本発明における「1つ又は2つ以上の置換基を有してもよいアリール基で置換された炭素数1から10のアルキル基」としては、1つ又は2つ以上の前記した「置換基を有してもよいアリール基」で置換された、前記した「炭素数1から10のアルキル基」が挙げられる。ここにおけるアリール基の置換基としては前記したものが挙げられる。本発明における好ましい「1つ又は2つ以上の置換基を有してもよいアリール基で置換された炭素数1から10のアルキル基」としては、例えば、ベンジル基、4−フルオロベンジル基、ジフェニルメチル基、ビス(4−フルオロフェニル)メチル基、ビス(4−クロロフェニル)メチル基などが挙げられる。
【0027】
本発明におけるR、R及びRが一緒になって隣接する炭素原子と共に置換基を有してもよいアリール環としては、前記したアリール基によるアリール環が挙げられる。形成されたアリール環は隣接するピペリジン環と縮合することになる。本発明における好ましい当該アリール環としてはベンゼン環が挙げられる。R、R及びRが一緒になって隣接する炭素原子と共にベンゼン環を形成した場合には、隣接するピペリジン環と共にテトラヒドロイソキノリン環を形成することになる。このようにして形成されたアリール環、好ましくはベンゼン環は、前記した置換基で置換されていてもよい。
【0028】
本発明の一般式[I]で表される3−ピペラジニル−1−ピペリジニル−プロパン誘導体又はその薬学的に許容しうる塩は、公知の方法に準じて製造することができる。具体的な製造としては後記する実施例の記載を参照されたい。一般的な方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。
【0029】
本発明の一般式[I]におけるRが水素原子又は炭素数1から10のアルキル基の化合物については、3位に脱離基を有するハロゲン化プロパン誘導体と、4−置換ピペラジン誘導体とを、好ましくは塩基の存在下で反応させて4−置換−1−(3−置換プロピル)ピペラジンとする。この場合の脱離基としてはハロゲン原子、保護された水酸基などの公知の脱離基が挙げられる。また、塩基としては炭酸カリウムなどの炭酸塩やアミン類などが挙げられる。
得られた4−置換−1−(3−置換プロピル)ピペラジン誘導体に置換ピペリジン誘導体を、塩基の存在下又は不存在下で反応させることにより目的の化合物を製造することができる。いずれも公知の置換反応の反応条件により適宜行うことができる。
本発明の一般式[I]におけるRが水酸基の化合物については、4−置換ピペラジン誘導体とエピハロヒドリンを、塩基の存在下で反応させることにより4−置換−1−(エポキシメチル)ピペラジン誘導体とする。ハロゲン原子としては臭素又は塩素が挙げられ、塩基としては炭酸カリウムなどの炭酸塩やアミン類が挙げられる。
得られたエポキシ体を、単離してもよいが、単離することなく置換ピペリジン誘導体と反応させてエポキシ基を開環させることにより目的の化合物を製造することができる。
本発明の一般式[I]におけるRがハロゲン又はアルコキシ基の化合物は、前記で得られたヒドロキシ体を公知の方法で処理することにより誘導することができる。
【0030】
本発明の一般式[I]で表される化合物の塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、蓚酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩などが挙げられる。これらの塩は公知の方法により製造することができる。
また、本発明の一般式[I]で表される化合物は、不斉炭素原子を有する場合があるが、この場合には、ラセミ体でもよいが、好ましくは光学活性体が挙げられる。光学分割は、公知の方法、例えば光学活性なカラムを用いた方法により光学分割することもできる。また、反応によっては立体選択的な反応とすることにより、光学活性体を直接製造することもできる。
本発明の一般式[I]で表される化合物は、水和物のような溶媒和物として使用することもできる。また、本発明の一般式[I]で表される化合物に結晶多形がある場合には、それらの多形の中の好ましい結晶形を用いることもできる。
【0031】
本発明の医薬組成物は、経口又は非経口、例えば舌下、口腔内、貼付、静脈内、点眼および眼内投与等ができる。
本発明の医薬組成物を経口投与のための製剤とする場合には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤等の剤形が可能である。このような剤形においては、一つ又はそれ以上の活性物質(有効成分)が、少なくとも一つの不活性な製薬学的に許容される担体、例えば希釈剤、分散剤又は吸着剤等、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微晶性セルロース、澱粉、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又は無水ケイ酸末等と混合され、常法にしたがって製剤化することができる。
錠剤又は丸剤に調製する場合は、必要により白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシメチルセルロースフタレート等の胃溶性あるいは腸溶性物質のフィルムで皮膜してもよいし、二以上の層で皮膜してもよい。さらに、ゼラチン又はエチルセルロースのような物質のカプセルにしてもよい。
経口投与のための液体組成物にする場合は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶解剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤等の剤形が可能である。用いる希釈剤としては、例えば精製水、エタノール、植物油又は乳化剤等がある。また、この組成物は希釈剤以外に浸潤剤、懸濁剤、甘味剤、風味剤、芳香剤又は防腐剤等のような補助剤を混合させてもよい。
【0032】
非経口のための注射剤に調製する場合は、無菌の水性若しくは非水性の溶液剤、可溶化剤、懸濁剤又は乳化剤を用いる。水性の溶液剤、可溶化剤、懸濁剤としては、例えば注射用水、注射用蒸留水、生理食塩水、シクロデキストリン及びその誘導体、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリエチルアミン等の有機アミン類あるいは無機アルカリ溶液等がある。
水溶性の溶液剤にする場合、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコールあるいはオリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類等を用いてもよい。また、可溶化剤として、例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、蔗糖脂肪酸エステル等の界面活性剤(混合ミセル形成)、又はレシチンあるいは水添レシチン(リポソーム形成)等も用いられる。また、植物油等の非水溶性の溶解剤と、レシチン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等からなるエマルジョン製剤にすることもできる。
【0033】
本発明の一般式[I]で表される化合物若しくはその塩は、遊離の化合物として、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常成人一人当たり0.001mg乃至1g/kgの範囲で、一日一回から数回に分けて経口あるいは非経口投与することができる。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明の実施例を挙げて、本発明について更に具体的に説明するが、ここでの例示及び説明により、何ら限定されるものではない。
【0035】
[実施例1]
本発明の化合物[2]である1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−クロロフェニル)−ピペリジニル〕プロパンを次の反応経路にしたがって製造した。
【0036】
【化5】
【0037】
(1)1−(ジフェニルメチル)ピペラジン(18.49g)をアセトン(5v/w)に溶かし、炭酸カリウム(1.0eq.)及び1−ブロモ−3−クロロプロパン(2.0eq.)を加え、3.0時間加熱還流した。反応で生成した塩を濾別後、濾液を減圧濃縮した。1−(ジフェニルメチル)−3−クロロプロパン(13.8g)の粗生成物を得た。
H−NMR(CDCl、400MHz)δ:
1.9(2H, m), 2.35(10H, m), 3.45(2H, t), 4.15(1H, s), 7.2(10H, m)
【0038】
(2)1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−クロロフェニル)−ピペリジニル〕プロパン(化合物[2])の製造:
上記(1)で製造した1−(ジフェニルメチル)−3−クロロプロパン(9.0g)と、4−ヒドロキシ−4−(4−クロロフェニル)−ピペリジン(2.0eq.)をDMF(2.0v/w)に溶解し、80℃で6時間加熱還流した。放冷後濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、100g)にて精製し、目的の1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−クロロフェニル)−ピペリジニル〕プロパンを白色固体(収量8.3g、総収率60.1%)として得た。
IR νmax(cm−1)KBr:
3166, 2946, 2809, 1596, 1492, 1450, 1143, 758, 706
H−NMR(CDCl、400MHz)δ:
1.60-1.70(4H, m), 1.90-2.20(3H, m), 2.30-2.70(14H, m), 2.80-2.90(2H, D), 4.20(1H, s), 7.10-7.50(14H, m)
3138OCl として実測値503(M
【0039】
[実施例2]
本発明の化合物[3]である1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−メチルフェニル)−ピペリジニル〕−2−プロパノールを次の反応経路にしたがって製造した。
【0040】
【化6】
【0041】
(1)エポキシ体の製造:
1−(ジフェニルメチル)ピペラジン(22.0g)をアセトン(20v/w)に溶かし、炭酸カリウム(1.5eq.)及びエピブロモヒドリン(2.0eq.)を加え、3.5時間加熱還流した。反応で生成した塩を濾別後、濾液を減圧濃縮した。1−(ジフェニルメチル)−4−(1−(2,3−エポキシ)プロピル)ピペラジンの粗生成物を得た。
【0042】
H−NMR(CDCl、400MHz)δ:
2.27-2.74(12H, m), 3.06(1H, m), 4.21(1H, s), 7.15(2H, t), 7.23(4H, t), 7.39(4H, d)
【0043】
(2)1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−メチルフェニル)−ピペリジニル〕−2−プロパノール(化合物[3])の製造:
上記(1)で製造した1−(ジフェニルメチル)−4−(1−(2,3−エポキシ)プロピル)ピペラジン(14.0g)と、4−ヒドロキシ−4−(4−メチルフェニル)−ピペリジン(13.0g)をDMF(140mL)に溶解し、100℃で3時間加熱還流した。放冷後濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、100g)にて精製し、目的の1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−メチルフェニル)−ピペリジニル〕−2−プロパノール15.7gを白色固体(総収率69.0%)として得た。
【0044】
IR ν max(cm−1)KBr:
3438, 2942, 2815, 1639, 1492, 1451, 1137, 1007, 816, 746, 706
H−NMR(CDCl、400MHz)δ:
1.64-2.85(21H, m), 2.33(3H, s), 3.89(2H, m), 4.21(1H, s), 7.15-7.42(14H)
【0045】
[試験例1]ラット膀胱における化合物[2]によるカルバコール収縮の抑制試験
「方法」
ラット膀胱平滑筋を10×2mmの切片にし、37℃、95%O:5%COの気相下にてクレブス・ヘンゼライト液で平衡化した。自動給排水式オーガンバスシステム(AD Instruments社製)のチャンパー内に切片をつるし、1gの張力になるように調整した。
クレブス・ヘンゼライト液を3回交換し洗浄後、カルバコール10−8〜10−3Mによる累積投与を行い、化合物[2]をそれぞれ0(対照)、3、及び10μM投与した際の収縮率をPower Lab data acquisition systemを用いて解析した。各群n=3で行った。
【0046】
「結果」
ラット膀胱平滑筋において、被検薬化合物[2]は濃度依存的にカルバコール収縮を抑制した(図1参照)。10−3Mカルバコールの最大収縮に対し3μM、10μMを投与した化合物[2]はそれぞれ13.9%、57.0%抑制した。このことから化合物[2]はカルバコールによる膀胱平滑筋収縮を抑制することが明らかとなった(図1)。
【0047】
[試験例2]本発明の化合物[3]投与によるラットの尿回数、尿量、膀胱内圧に対する作用
ウイスターラット(週齢6週、n=4)を用いウレタン0.6g/kgを腹腔内投与し、さらに0.6g/kgで筋肉内投与を行い、全身麻酔を行った。右大腿静脈に薬物注入用のカテーテルを挿入した。下腹部を切開し、膀胱に2Fのカテーテルを挿入し、約37.0℃に温めた生理食塩水を1時間あたり4mlで膀胱内に持続的に注入した。また、カテーテルに圧トランスジューサーを接続し、膀胱内圧を測定した。一定頻度の膀胱収縮が得られた後に、化合物[3]を1.0mg/kgで5分間(200μg/kg/分)右大腿静脈から注入し、注入前後の膀胱内圧、排尿回数、各尿量を測定した。一定頻度の膀胱収縮を得られないラットは除外した。
その結果、図2に示すように化合物[3]を注入後、排尿回数は減少した。また、図3に示すように、注入前後の20分間あたりの排尿総量(図3左側参照)は有意に増加し、排尿回数(図3右側参照)は有意に減少した(n=4)。図3中の*印は、p<0.05で有意差があったことを示す。
【0048】
以上の試験例から本発明の一般式[I]で表される化合物は、膀胱平滑筋収縮を抑制し、頻尿、夜間頻尿、過活動膀胱、残尿などの排尿障害を改善する作用があることが明らかとなった。
また、これらの試験例は膀胱平滑筋に作用したと考えられることから、気管支、消化管、子宮などの平滑筋にも同様に作用すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、膀胱平滑筋の弛緩作用を有し、排尿障害の治療薬および予防薬として製剤・製薬産業において有用な薬剤を提供するものであり、産業上の利用可能性を有している。
図1
図2
図3