【実施例】
【0034】
以下に、本発明の実施例を挙げて、本発明について更に具体的に説明するが、ここでの例示及び説明により、何ら限定されるものではない。
【0035】
[実施例1]
本発明の化合物[2]である1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−クロロフェニル)−ピペリジニル〕プロパンを次の反応経路にしたがって製造した。
【0036】
【化5】
【0037】
(1)1−(ジフェニルメチル)ピペラジン(18.49g)をアセトン(5v/w)に溶かし、炭酸カリウム(1.0eq.)及び1−ブロモ−3−クロロプロパン(2.0eq.)を加え、3.0時間加熱還流した。反応で生成した塩を濾別後、濾液を減圧濃縮した。1−(ジフェニルメチル)−3−クロロプロパン(13.8g)の粗生成物を得た。
1H−NMR(CDCl
3、400MHz)δ:
1.9(2H, m), 2.35(10H, m), 3.45(2H, t), 4.15(1H, s), 7.2(10H, m)
【0038】
(2)1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−クロロフェニル)−ピペリジニル〕プロパン(化合物[2])の製造:
上記(1)で製造した1−(ジフェニルメチル)−3−クロロプロパン(9.0g)と、4−ヒドロキシ−4−(4−クロロフェニル)−ピペリジン(2.0eq.)をDMF(2.0v/w)に溶解し、80℃で6時間加熱還流した。放冷後濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、100g)にて精製し、目的の1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−クロロフェニル)−ピペリジニル〕プロパンを白色固体(収量8.3g、総収率60.1%)として得た。
IR νmax(cm
−1)KBr:
3166, 2946, 2809, 1596, 1492, 1450, 1143, 758, 706
1H−NMR(CDCl
3、400MHz)δ:
1.60-1.70(4H, m), 1.90-2.20(3H, m), 2.30-2.70(14H, m), 2.80-2.90(2H, D), 4.20(1H, s), 7.10-7.50(14H, m)
C
31H
38N
3OCl として実測値503(M
+)
【0039】
[実施例2]
本発明の化合物[3]である1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−メチルフェニル)−ピペリジニル〕−2−プロパノールを次の反応経路にしたがって製造した。
【0040】
【化6】
【0041】
(1)エポキシ体の製造:
1−(ジフェニルメチル)ピペラジン(22.0g)をアセトン(20v/w)に溶かし、炭酸カリウム(1.5eq.)及びエピブロモヒドリン(2.0eq.)を加え、3.5時間加熱還流した。反応で生成した塩を濾別後、濾液を減圧濃縮した。1−(ジフェニルメチル)−4−(1−(2,3−エポキシ)プロピル)ピペラジンの粗生成物を得た。
【0042】
1H−NMR(CDCl
3、400MHz)δ:
2.27-2.74(12H, m), 3.06(1H, m), 4.21(1H, s), 7.15(2H, t), 7.23(4H, t), 7.39(4H, d)
【0043】
(2)1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−メチルフェニル)−ピペリジニル〕−2−プロパノール(化合物[3])の製造:
上記(1)で製造した1−(ジフェニルメチル)−4−(1−(2,3−エポキシ)プロピル)ピペラジン(14.0g)と、4−ヒドロキシ−4−(4−メチルフェニル)−ピペリジン(13.0g)をDMF(140mL)に溶解し、100℃で3時間加熱還流した。放冷後濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、100g)にて精製し、目的の1−〔4−(ジフェニルメチル)ピペラジニル〕−3−〔4−ヒドロキシ−4−(4−メチルフェニル)−ピペリジニル〕−2−プロパノール15.7gを白色固体(総収率69.0%)として得た。
【0044】
IR ν max(cm
−1)KBr:
3438, 2942, 2815, 1639, 1492, 1451, 1137, 1007, 816, 746, 706
1H−NMR(CDCl
3、400MHz)δ:
1.64-2.85(21H, m), 2.33(3H, s), 3.89(2H, m), 4.21(1H, s), 7.15-7.42(14H)
【0045】
[試験例1]ラット膀胱における化合物[2]によるカルバコール収縮の抑制試験
「方法」
ラット膀胱平滑筋を10×2mmの切片にし、37℃、95%O
2:5%CO
2の気相下にてクレブス・ヘンゼライト液で平衡化した。自動給排水式オーガンバスシステム(AD Instruments社製)のチャンパー内に切片をつるし、1gの張力になるように調整した。
クレブス・ヘンゼライト液を3回交換し洗浄後、カルバコール10
−8〜10
−3Mによる累積投与を行い、化合物[2]をそれぞれ0(対照)、3、及び10μM投与した際の収縮率をPower Lab data acquisition systemを用いて解析した。各群n=3で行った。
【0046】
「結果」
ラット膀胱平滑筋において、被検薬化合物[2]は濃度依存的にカルバコール収縮を抑制した(
図1参照)。10
−3Mカルバコールの最大収縮に対し3μM、10μMを投与した化合物[2]はそれぞれ13.9%、57.0%抑制した。このことから化合物[2]はカルバコールによる膀胱平滑筋収縮を抑制することが明らかとなった(
図1)。
【0047】
[試験例2]本発明の化合物[3]投与によるラットの尿回数、尿量、膀胱内圧に対する作用
ウイスターラット(週齢6週、n=4)を用いウレタン0.6g/kgを腹腔内投与し、さらに0.6g/kgで筋肉内投与を行い、全身麻酔を行った。右大腿静脈に薬物注入用のカテーテルを挿入した。下腹部を切開し、膀胱に2Fのカテーテルを挿入し、約37.0℃に温めた生理食塩水を1時間あたり4mlで膀胱内に持続的に注入した。また、カテーテルに圧トランスジューサーを接続し、膀胱内圧を測定した。一定頻度の膀胱収縮が得られた後に、化合物[3]を1.0mg/kgで5分間(200μg/kg/分)右大腿静脈から注入し、注入前後の膀胱内圧、排尿回数、各尿量を測定した。一定頻度の膀胱収縮を得られないラットは除外した。
その結果、
図2に示すように化合物[3]を注入後、排尿回数は減少した。また、
図3に示すように、注入前後の20分間あたりの排尿総量(
図3左側参照)は有意に増加し、排尿回数(
図3右側参照)は有意に減少した(n=4)。
図3中の*印は、p<0.05で有意差があったことを示す。
【0048】
以上の試験例から本発明の一般式[I]で表される化合物は、膀胱平滑筋収縮を抑制し、頻尿、夜間頻尿、過活動膀胱、残尿などの排尿障害を改善する作用があることが明らかとなった。
また、これらの試験例は膀胱平滑筋に作用したと考えられることから、気管支、消化管、子宮などの平滑筋にも同様に作用すると考えられる。