特許第6021645号(P6021645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021645
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】保護デバイス
(51)【国際特許分類】
   H02H 9/04 20060101AFI20161027BHJP
   H02H 9/02 20060101ALI20161027BHJP
   H02H 5/04 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   H02H9/04 Z
   H02H9/02 B
   H02H9/02 D
   H02H5/04 120
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-548829(P2012-548829)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(86)【国際出願番号】JP2011079018
(87)【国際公開番号】WO2012081659
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年11月26日
(31)【優先権主張番号】特願2010-280589(P2010-280589)
(32)【優先日】2010年12月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516119106
【氏名又は名称】Littelfuseジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】大平 雅之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克彰
(72)【発明者】
【氏名】田中 新
【審査官】 田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/125458(WO,A1)
【文献】 特表平11−512598(JP,A)
【文献】 特開平10−145964(JP,A)
【文献】 特開2006−296180(JP,A)
【文献】 特開2007−259656(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/114650(WO,A1)
【文献】 特開2001−006510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C7/02−7/22
H01H37/00−37/56
H02H5/00−6/00、9/00−9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1PTC素子とバイメタル素子とが相互に電気的に並列に接続されたバイメタルスイッチと、
第2PTC素子と、
第2PTC素子に対して直列に接続されるスイッチと
を有して成る電気回路であって、
バイメタル素子は、第2PTC素子がトリップすることによって動作するように配置され
第2PTC素子は、保護すべき電気要素において異常電位差が生じた場合に、第2PTC素子に電流を流すように閉じるスイッチに応じてトリップすること
を特徴とする電気回路
【請求項2】
バイメタルスイッチは、相互に並列に接続された第1PTC素子とバイメタル素子に共通する端子を両端に第1端子および第2端子として有し、第2PTC素子は、その両端に第3端子および第4端子を有し、バイメタルスイッチと第2PTC素子とは電気的に独立していることを特徴とする請求項1に記載の電気回路
【請求項3】
第1端子および第2端子は、所定の第1電気要素および所定の第2電気要素にバイメタルスイッチをそれぞれ電気的に直列に接続して主回路を構成し、第3端子および第4端子は、スイッチおよび起電力源にそれぞれ電気的に直列に接続して副回路を構成するようにこれらの端子を接続でき、そのように接続した回路は電気的に独立し、所定の第1電気要素および所定の第2電気要素の少なくとも一方は起電力源として作用することを特徴とする請求項2に記載の電気回路
【請求項4】
第1端子および第2端子は、所定の第1電気要素および所定の第2電気要素にバイメタルスイッチをそれぞれ電気的に直列に接続して主回路を構成し、第3端子および第4端子は、スイッチおよび所定の第1電気要素にそれぞれ電気的に直列に接続して副回路を構成するようにこれらの端子に接続でき、所定の第1電気要素を起電力源として利用することを特徴とする請求項2に記載の電気回路
【請求項5】
第2PTC素子はバイメタルスイッチに対して電気的に直列に接続され、バイメタルスイッチは、相互に並列に接続された第1PTC素子とバイメタル素子に共通する端子を両端に第1端子および第2端子として有し、また、第2PTC素子の一方の電極は、これらの端子の一方に接続され、バイメタルスイッチの端子に接続されていない、第2PTC素子の他方の電極は第3端子に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電気回路
【請求項6】
第2PTC素子のトリップ温度は回路保護デバイス、バイメタル素子の動作温度より少なくとも10℃高いことを特徴とする請求項1または2に記載の電気回路
【請求項7】
護すべき所定の電気要素を有して成る、請求項1〜6のいずれかに記載の電気回路。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の電気回路を有する電気装置。
【請求項9】
第1PTC素子とバイメタル素子とが相互に電気的に並列に接続されたバイメタルスイッチ、および
第2PTC素子
を有して成る回路保護デバイスであって、
バイメタル素子は、保護すべき電気要素において異常電位差が生じた場合に、第2PTC素子がトリップすることによって動作するように配置されていることと、バイメタルスイッチと第2PTC素子とは電気的に独立していることとを特徴とする回路保護デバイス。
【請求項10】
バイメタルスイッチは、相互に並列に接続された第1PTC素子とバイメタル素子に共通する端子を両端に第1端子および第2端子として有し、第2PTC素子は、その両端に第3端子および第4端子を有することを特徴とする請求項に記載の回路保護デバイス。
【請求項11】
第1端子および第2端子は、所定の第1電気要素および所定の第2電気要素にバイメタルスイッチをそれぞれ電気的に直列に接続して主回路を構成し、第3端子および第4端子は、スイッチおよび起電力源にそれぞれ電気的に直列に接続して副回路を構成するようにこれらの端子を接続でき、そのように接続した回路は電気的に独立し、所定の第1電気要素および所定の第2電気要素の少なくとも一方は起電力源として作用することを特徴とする請求項10に記載の回路保護デバイス。
【請求項12】
第1端子および第2端子は、所定の第1電気要素および所定の第2電気要素にバイメタルスイッチをそれぞれ電気的に直列に接続して主回路を構成し、第3端子および第4端子は、スイッチおよび所定の第1電気要素にそれぞれ電気的に直列に接続して副回路を構成するようにこれらの端子に接続でき、所定の第1電気要素を起電力源として利用することを特徴とする請求項10に記載の回路保護デバイス。
【請求項13】
第2PTC素子のトリップ温度は、バイメタル素子の動作温度より少なくとも10℃高いことを特徴とする請求項または10に記載の回路保護デバイス。
【請求項14】
請求項13のいずれかに記載の回路保護デバイスおよびそれによって保護すべき所定の電気要素を有して成る電気回路。
【請求項15】
請求項14に記載の電気回路を有する電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護デバイス、詳しくは電気回路内に配置されて、その回路を含む電気装置を構成する要素が過熱されることを防止し、および/またはそのような回路に過電流が流れるのを防止する保護デバイス、より詳しくは回路保護デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路内で閉じている接点間を開放する素子として、バイメタル素子とPTC素子とを近接させて一体に組み合わせたバイメタルスイッチが知られている。この素子では、バイメタル素子とPTC素子とが並列に接続されている。このようなバイメタルスイッチは、その周辺環境の温度が異常に高い場合、バイメタル素子が動作して接点を開くように構成され、それと同時に、バイメタル素子を経由して流れている電流はPTC素子を経由して流れるように転流される。
【0003】
例えば、回路を流れる電流が過剰となって回路を構成する要素が異常に高い温度になると、その高温によってバイメタルスイッチの周囲の温度が上昇してバイメタル素子が動作し接点が開く。そのように接点が開いても、転流によって、開放する接点間で大きな電位差が直ちに生じることがなくなり、接点間で溶着することが可及的に防止される。このようなバイメタルスイッチのバイメタル素子を動作させるのは、上述のようにバイメタルスイッチの周囲の高温である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/114650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなバイメタルスイッチを用いる場合、その周囲、特にバイメタル素子の周囲が高温になる必要がある。換言すれば、バイメタルスイッチは、異常時に所定の温度を越える温度になるであろう箇所に配置する必要がある。そのような箇所以外の箇所にはバイメタルスイッチを配置することができない。
【0006】
例えば、電池パックのような2次電池に充電する過程において、過充電状態になった場合、バイメタル素子が電池パックの異常な高温に基づいて動作して過充電状態を解消するには、バイメタルスイッチは、電池パックの高温を検知できるほどに近接して配置する必要がある。
【0007】
また、バイメタルスイッチの周囲温度は他の原因によって影響を受けることがあり、その結果、所定の温度を越えてもバイメタル素子が動作しないことがある。例えば、保護すべき要素が過剰高温になった場合であっても、その熱が速やかに散逸する場合には、バイメタルスイッチの周囲の温度が高温にならず、そのため、バイメタル素子が動作しないことになる。
【0008】
更に、上述のようなバイメタルスイッチを用いる場合、所定の過剰電流値に起因する発熱によって生じる異常温度にバイメタル素子が達した場合に回路が開いて流れている電流を転流させることができるのみであって、そのような過剰電流値は使用するバイメタル素子に固有の値である。従って、そのような固有の値より小さい電流値では、バイメタルスイッチのバイメタル素子は動作しない。
【0009】
従って、本発明が解決しようとする課題は、上述のようなバイメタルスイッチの配置に、より大きな自由度を与えると共に、バイメタルスイッチのバイメタル素子の動作をより正確に制御できる保護デバイスを提供することに存する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題は、上述のバイメタルスイッチを用いて、即ち、PTC素子とバイメタル素子とが電気的に並列に接続されたバイメタルスイッチを用いて、別のPTC素子によってバイメタル素子を動作させる構成を採用することによって解決されることが見出された。
【0011】
即ち、第1の要旨において、本発明は、
第1PTC素子とバイメタル素子とが相互に電気的に並列に接続されたバイメタルスイッチ、および
第2PTC素子
を有して成り、
バイメタル素子は、第2PTC素子がトリップすることによって動作するように配置されていることを特徴とする保護デバイス、より詳しくは回路保護デバイスを提供する。
【0012】
尚、「回路保護デバイス」なる用語は、それを組み込む回路自体および/または回路に組み込まれた電気要素(例えば電池パックのような2次電池)を保護するために用いることができることを意図して本明細書では用いる。
【0013】
本発明の回路保護デバイスが有するPTC素子は、いずれも、公知のPTC素子、好ましくはポリマーPTC素子である。そのようなポリマーPTC素子は、導電性フィラーが分散しているポリマーにより構成された導電性ポリマー組成物の層状のPTC要素およびその両側に配置された金属電極、好ましくは金属箔電極を有して成る。この金属電極には導電性リードが接続(例えばハンダ接続)されていてもよい。
【0014】
また、本発明の回路保護デバイスが有するバイメタル素子は、所定の温度に達するとその形状が別の形状になるように構成され、それによって閉じている回路が開く、あるいは開いている回路が閉じるように構成された周知の素子であり、従って、本発明の回路保護デバイスの1つの好ましい態様では、バイメタルスイッチは、上述の公知のバイメタルスイッチであってよい。この場合、バイメタル素子および第1PTC素子は通常相互に近接して一体である。尚、本明細書において、バイメタル素子が回路を開いてバイメタル素子を経由して電流が流れないようにする、バイメタル素子の動きを「動作」と呼ぶ。
【0015】
本発明の回路保護デバイスでは、バイメタル素子は、第2PTC素子がトリップすることによって動作するように配置されている。これは、トリップした第2PTC素子が発する熱によってバイメタル素子が加熱され、その熱がバイメタル素子に伝わる結果、バイメタル素子がその動作する温度、即ち、動作温度より高い温度になり、それによってバイメタル素子が動作するように配置されていることを意味する。トリップした第2PTC素子からバイメタル素子に熱が伝わって動作するには、第2PTC素子のトリップ温度はバイメタル素子の動作温度と同じであるか、それより高いことを必要とする。第2PTC素子のトリップ温度はバイメタル素子の動作温度より、少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃、より好ましくは少なくとも30℃高い。特に少なくとも40℃高く、例えば60℃高い。尚、本明細書では、トリップ温度とは、PTC素子が電流を遮断し始めてその抵抗値が増加した後に実質的に電流を遮断した時に達するPTC素子の温度を意味する。
【0016】
第1の好ましい態様において、本発明の回路保護デバイスにおいて、バイメタルスイッチは、相互に並列に接続された第1PTC素子とバイメタル素子に共通する端子を両端に第1端子および第2端子として有し、第2PTC素子は、その両端に第3端子および第4端子を有し、バイメタルスイッチと第2PTC素子とは電気的に独立している。
【0017】
この態様の回路保護デバイスを用いて、所定の第1電気要素(例えば2次電池の電池パック)および所定の第2電気要素(例えば所定の第1電気要素に印加する起電力源(または電源)として機能する充電器)にバイメタルスイッチを、それぞれ第1端子および第2端子を介して電気的に直列に接続し、主回路を構成する。また、第2PTC素子を、それがトリップすることによってバイメタル素子を動作することができるほどに、バイメタル素子に近接させた状態で、スイッチおよび起電力源(または電源)にそれぞれ第3端子および第4端子を介して電気的に直列に接続し、副回路を構成する。この態様では、主回路と副回路とは電気的に独立している。即ち、主回路は、バイメタルスイッチ、第1電気要素および第2電気要素によって構成され、また、副回路は、第2PTC素子、スイッチおよび起電力源(または電源)によって構成され、これらは独立して閉回路を構成する。1つのより好ましい態様では、このような本発明の回路保護デバイスは、これらの4つの端子だけが突出するように、所定のケーシング内に挿入されている。必要に応じて、挿入に用いられるケーシングの開口部は、適当な接着剤によって封止されていてもよい。尚、所定の第1電気要素および所定の第2電気要素の少なくとも一方は起電力源として作用する。
【0018】
尚、「所定の(第1または第2)電気要素」とは、回路保護デバイスと共に用いて主回路を構成すると共に、特定の意図する電気的機能(充電機能、放電機能等)を果たす、いずれかの適切な要素(例えば電気装置、電気部品、端子、パッド、配線等)であって、回路に異常電流が流れた場合および/または回路内で異常な電位差(または電圧、以下、これらを総称して「電位差」とも呼ぶ)が生じた場合に保護すべき要素を意味し、別の態様では、これらの要素のいずれかの組み合わせであってもよい。例えば、所定の第1電気要素が蓄電機能を果たす2次電池の電池パックであり、所定の第2電気要素が充電器である。
【0019】
また、「主回路」とは、所定の第1電気要素および所定の第2電気要素が組み込まれることによってこれらの電気要素が意図する電気的機能を果たすように構成された回路(例えば所定の第1電気要素が2次電池の電池パックであり、所定の第2電気要素が充電器である場合の充電回路)を意味する。また、「副回路」とは、第2PTC素子に電流を流してそれをトリップさせることができるように構成された回路であり、第2PTC素子、スイッチおよび起電力源(または電源)が電気的に直列に接続されている。
【0020】
上述の副回路を構成するスイッチは、保護すべき電気要素(例えば所定の第1電気要素)の所定の箇所の電位差が所定の値を越える(例えば充電中の2次電池の電池パックの電位差がある閾値を越える)と、開いた状態の回路を閉じて第2PTC素子に電流が流れるように作用するスイッチを意味する。尚、所定の第1電気要素を流れる電流が所定の値より大きくなって過剰となる場合には、従来通り、バイメタル素子付近の温度が高温になってバイメタル素子が動作して実質的に電流が遮断される。即ち、過剰電流が第1PTC素子に転流され、その後、第1PTC素子がトリップして電流が実質的に遮断される。
【0021】
このようなスイッチは種々知られており、上述のように電位差が所定の値を越える(即ち、異常状態になる)と、それを検知してスイッチが閉じて第2PTC素子に電流を流すことができる。このようなスイッチは、適当な起電力源(または電源)と第2PTC素子に対して直列に接続され、異常状態に応じて精度良く電流を流すことができる。例えば電磁リレー、、FET等をこのようなスイッチとして使用できる。尚、後述するように図3に、電池パック36の端部に位置する単位セル36−1の両端間の電位差を検知するIC、およびそれが異常である場合に副回路を閉じることができるFETによって構成されるスイッチ44を模式的に示している。
【0022】
上述の第1の好ましい態様の回路保護デバイスを用いて副回路を構成するに際して、スイッチに対して第3端子を電気的に直列に接続すると共に、所定の第1電気要素に印加されている電位差を利用するように、あるいは所定の第1電気要素自体が有する電位差を利用するように、所定の第1電気要素の端子に第4端子を電気的に直列に接続してよい。この場合、副回路は、第2PTC素子、スイッチおよび所定の第1電気要素またはその一部が電気的に直列に接続されるように構成される。従って、この副回路は、第1電気要素またはその一部分については、主回路と共有することになる。
【0023】
第2の好ましい態様において、本発明の回路保護デバイスの第2PTC素子はバイメタルスイッチに対して電気的に直列に接続されている。この回路保護デバイスにおいて、バイメタルスイッチは、相互に並列に接続された第1PTC素子とバイメタル素子に共通する端子を両端に第1端子および第2端子として有し、また、第2PTC素子の一方の電極は、これらの端子の一方に接続され、バイメタルスイッチの端子には接続されていない、第2PTC素子の他方の電極は第3端子に接続されているのが好ましい。1つのより好ましい態様では、このような本発明の回路保護デバイスは、これらの3つの端子だけが突出するように、所定のケーシング内に挿入されている。必要に応じて、挿入に用いられるケーシングの開口部は、適当な接着剤によって封止されていてもよい。尚、この態様は、上述の第1の好ましい態様において、第4端子が、回路保護デバイス内でバイメタルスイッチの端子と第1端子との間に接続されている場合に相当する。
【0024】
具体的な1つの態様では、所定の第1電気要素に対してバイメタルスイッチが直列に接続されるように第1端子を所定の第1電気要素の一方の端子に接続し、所定の第1の電気要素の他方の端子にスイッチを介して第3端子を電気的に直列に接続する。この態様では、第1の所定の電気要素の少なくとも一部分を主回路および副回路が共有する。
【0025】
容易に理解できるように、本発明は、上述のように本発明の回路保護デバイスを有する電気回路を更に提供し、また、そのような電気回路は主回路および副回路を有して成る。加えて、本発明は、そのような電気回路を有する電気装置をも提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の回路保護デバイスを組み込んだ電気回路では、保護すべき所定の電気要素における所定の箇所の電位差が所定の値を超える、即ち、異常状態になると、それを検知したスイッチが副回路を閉じて第2PTC素子に電流を流し、その結果、第2PTC素子をトリップさせることができ、それによってバイメタル素子を動作させることができる。
【0027】
換言すれば、所定の電位差を検知すれば、異常状態であると感知して閉じるように構成されたスイッチを用いることによって、第2PTC素子が確実にトリップし、その結果、バイメタル素子が動作する。従って、所定の電位差に達すると、回路を閉じるスイッチを選択することによって、主回路を流れる電流とは無関係に、第2PTC素子をトリップさせてバイメタル素子を動作させることができる。即ち、、第2PTC素子によってバイメタル素子が動作して、回路保護デバイスを流れる電流を遮断することができる。
【0028】
従来の回路保護デバイスでは、異常高温状態が生じ得る箇所に近接して配置する必要があったが、本発明の回路保護デバイスを用いる場合、スイッチが所定の箇所の電位差を検知して第2PTC素子に電流を流すように構成すればよいので、バイメタル素子を、従って、それを有する回路保護デバイスを、保護すべき電気要素から熱的に影響を受けないほどに離間して配置することができ、回路保護デバイスの組み込み箇所に関して自由度が大幅に向上する。
【0029】
また、異常高温状態の場合に回路保護デバイスが主回路を電流の遮断を開始する機能は、スイッチが異常電位差を検知する機能によってトリガーされることになる。従って、第1PTC素子がトリップしないような小さい電流が主回路を流れる場合であっても、例えば第1電気要素の所望の箇所の電位差が異常であるとスイッチが検知すれば、第2PTC素子がトリップしてバイメタル素子が動作する。従って、高感度で電位差を検知するスイッチを用いることによって、高精度で本発明の回路保護デバイスを使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の回路保護デバイス、およびそれを組み込んだ2次電池充電回路を模式的に回路図にて示す。
図2図2は、本発明のもう1つの態様の回路保護デバイス、およびそれを組み込んだ2次電池充電回路を模式的に回路図にて示す。
図3図3は、本発明の更にもう1つの態様の回路保護デバイス、およびそれを組み込んだ2次電池充電回路を模式的に回路図にて示す。
図4図4は、本発明の別の態様の回路保護デバイスを模式的に回路図にて示す。
図5図5は、本発明の回路保護デバイスの模式的断面図(バイメタル素子が接点間を接続している状態、即ち、回路を閉じている状態)を模式的に示す。
図6図6は、本発明の回路保護デバイスの模式的断面図(バイメタル素子が接点から離間している状態、即ち、回路を開いている状態)を模式的に示す。
図7図7は、実施例にて製造した本発明の回路保護デバイスを試験するために用いた回路図を模式的に示す。
図8図8は、実施例にて製造した本発明の回路保護デバイスを用いて、第2PTC素子によって第1PTC素子がトリップするまでの時間の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、図面を参照して本発明の回路保護デバイスを更に詳細に説明する。図1に示すように、本発明の回路保護デバイス10(点線で囲む部分)は、バイメタルスイッチ12を有して成り、バイメタルスイッチ12は、電気的に並列に接続された第1PTC素子14およびバイメタル素子16を有して成る。図示した態様において、本発明の回路保護デバイスのバイメタルスイッチは、相互に並列に接続された第1PTC素子14とバイメタル素子16に共通する端子を両端に第1端子24および第2端子26として有し、第2PTC素子は、その両端に、素子の一方の金属電極30に接続された第3端子32および素子の他方の金属電極28に接続された第4端子33を有し、バイメタルスイッチ12と第2PTC素子18とは電気的に独立している。
【0032】
この態様の回路保護デバイスを用いて保護回路を形成する場合、所定の第1電気要素36(例えば2次電池の電池パック)および所定の第2電気要素38(例えば所定の第1電気要素に印加する、起電力源(または電源)として機能する充電器)にバイメタルスイッチを、それぞれ第1端子24および第2端子26を介して電気的に接続し、主回路75を構成する。また、第2PTC素子18を、それがトリップすることによってバイメタル素子16を動作させることができるほどに、バイメタル素子16に近接させた状態で、スイッチ44(SW)および起電力源(または電源)35にそれぞれ第3端子32および第4端子33を介して電気的に直列に接続し、副回路85を構成する。
【0033】
この態様では、主回路75と副回路85とは電気的に独立している。即ち、主回路75は、バイメタルスイッチ12、第1電気要素36および第2電気要素38によって構成され、また、副回路85は、第2PTC素子18、スイッチ44および起電力源(または電源)35によって構成され、これらは独立して閉回路を構成する。1つのより好ましい態様では、このような本発明の回路保護デバイスは、これらの4つの端子24、26、32および33だけが突出するように、所定のケーシング34内に挿入されている。必要に応じて、挿入に用いられるケーシングの開口部は、適当な接着剤によって封止されていてもよい。
【0034】
尚、バイメタル素子16は、離間している接点20および22に対向し、バイメタル素子が変形することによって、両方向矢印Aで示すように、これらの接点20および22を接続したり(即ち、回路を閉じたり)、あるいはそのように接続した状態から離れる(即ち、バイメタル素子と接点が接触した状態からこれらが離間する)ことによって回路を開くことができる。尚、上述のように、本発明では、このように回路が閉じた状態から開くバイメタル素子の機能を特に動作と呼ぶ。図1に示す状態では、バイメタル素子16は、接点20および22から離れた状態であり、その結果、これらの接点を結ぶ回路は開いた状態、即ち、動作した状態にある。
【0035】
本発明の回路保護デバイスでは、バイメタル素子16は、第2PTC素子18がトリップすることによって動作するように配置されている。これは、トリップした第2PTC素子は、高温状態にあるので、それが発する熱が、矢印Bで示すように、バイメタル素子に伝わることによって、バイメタル素子が加熱され、その結果、バイメタル素子がその動作する温度(即ち、動作温度)以上の温度になり、それによってバイメタル素子が動作するように配置されることを意味する。バイメタル素子と第2PTC素子とは、熱的に直接的または間接的に接触状態または隣接状態にあるのが好ましいが、上述のようにバイメタル素子が動作する限り、バイメタル素子と第2PTC素子との間に空間部が存在してもよい。
【0036】
トリップした第2PTC素子18からバイメタル素子16に熱が伝わるには、即ち、熱的影響を及ぼすには、第2PTC素子のトリップ温度はバイメタル素子の動作温度と同じであるか、それより高いことを特徴とする。第2PTC素子のトリップ温度はバイメタル素子の動作温度より、少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃、より好ましくは少なくとも30℃高い。このようにバイメタル素子16が動作するには、バイメタル素子16が第2PTC素子18に熱的影響を及ぼすことができるほどに、近接している必要があり、好ましくはこれらは相互に直接接触している必要がある。別の態様では、熱伝導率の高い材料、例えば金属材料を介して間接的に接触していてもよい。
【0037】
上述のような本発明の回路保護デバイス10は、所定の第1電気要素36を含む所定の電気回路にバイメタルスイッチ12が組み込まれて主回路75を形成することができ、そのように組み込まれた状態も図1に示す。図1において、所定の第1電気要素36として複数の単位セルが直列接続された構造の2次電池の電池パックを図示する。主回路75は、電池パック36を充電する充電回路として機能し、その回路を構成するために、充電器38(所定の第2電気要素に相当)も含む。これは、所定の第1電気要素を機能させるための起電力源(または電源)としても機能する。
【0038】
より詳しくは、図示した態様では、所定の第1電気要素36に対してバイメタルスイッチ12が直列に接続されるように第1端子24を所定の電気要素の一方の端子40に接続し、所定の第1電気要素36の他方の端子42に所定の第2電気要素38を接続する。また、第2PTC素子の第3端子32は、スイッチ(SW)44に接続され、第4端子33は起電力源(または電源)35に接続されており、これらは副回路85を構成している。このスイッチ44は、所定の第1電気要素36の所定の箇所(例えば電池パックの一方の端子40と他方の端子42との間の単位セル)または端子40と42との間の電位差を検知すると共に、その電位差が所定の値より大きくなる(例えば充電中の2次電池の単位セルまたは電池パックの電位差がある閾値を越える)と、スイッチ44の接点間を閉じて第2PTC素子18に電流が流れるように作用するスイッチである。従って、そのような所定の箇所とスイッチ44との間はその箇所の電位差を検知して伝達するための電位差検知手段(例えばIC)および配線(図示せず)が存在する。
【0039】
図1に示す状態は、例えば、所定の要素36の電位差が過剰になったことをスイッチ44が検知することによって、スイッチ44が回路85を閉じて電流が流れて第2PTC素子18がトリップしてその熱がバイメタル素子16に伝わり、その結果、バイメタル素子16が動作した直後の状態を示す。この場合、バイメタル素子16が動作した瞬間に、バイメタルスイッチ12の接点20と22との間を流れていた電流が、第1PTC素子14に転流される。その後、第1PTC素子14がトリップし、その結果、第1PTC素子14を流れる電流が実質的に遮断され、よって、主回路を電流が流れることが回避される。第2PTC素子18は、起電力源(または電源)35によって印加されたままの状態であるので、そのトリップ状態のままで維持され、従って、バイメタル素子16は動作した状態のままで維持され、接点20と22とは開いた状態のままとなる。
【0040】
図2に別の態様の本発明の回路保護デバイス10(点線で囲む部分)を示す。この態様では、回路保護デバイス10は、バイメタルスイッチ12を有して成り、バイメタルスイッチ12は、電気的に並列に接続された第1PTC素子14およびバイメタル素子16を有して成る。図示した態様において、本発明の回路保護デバイスのバイメタルスイッチは、相互に並列に接続された第1PTC素子14とバイメタル素子16に共通する端子を両端に第1端子24および第2端子26として有し、第2PTC素子18は、その両端に、素子18の一方の金属電極30に接続された第3端子32および素子18の他方の金属電極28に接続された第4端子33を有する。
【0041】
図2に示す態様では、第4端子33が所定の第1電気要素36の端子40と端子42との間の箇所(点C)に接続され、所定の第1電気要素の一部を利用して、詳しくは所定の第1電気要素に印加される電圧の一部を起電力源(または電源)として利用できるように構成されている点において、図1に示す態様とは異なり、その他の点に関しては、図1に示す態様と実質的に同じである。その結果、図示した態様では、副回路85は、第2PTC素子18、第1電気要素36の一部、スイッチ44が直列に接続されることによって構成されている。従って、主回路75および副回路85は、第1電気要素36の一部およびそれからスイッチ44の手前までの部分を共有することになる。
【0042】
図3に更に別の態様の本発明の回路保護デバイス10(点線で囲む部分)を示す。この態様では、バイメタルスイッチ12は、相互に並列に接続された第1PTC素子14とバイメタル素子16に共通する端子を両端に第1端子24および第2端子26として有し、また、第2PTC素子18の一方の金属電極28は、これらの端子の一方(図示した態様では第1端子24)に実質的に接続され、その結果、バイメタルスイッチ12と第2PTC素子18は直列に接続されている。第2PTC素子18の他方の金属電極30は第3端子32に接続されている。従って、この態様においては、従って、主回路75および副回路85は、第1電気要素36の全部およびそれからスイッチ(FET)44の手前までの部分を共有することになる。1つの好ましい態様では、このような本発明の回路保護デバイスは、これらの3つの端子24、26および32だけが突出するように、所定のケーシング内に挿入されている。先と同様に、図3に示す態様では、点線がケーシング34に対応すると考えることができる。挿入に用いられるケーシングの開口部は、適当な接着剤によって封止されていてもよい。
【0043】
上述のような本発明の回路保護デバイス10を、本発明の所定の電気要素が組み込まれた所定の電気回路に組み込むことができ、そのように組み込まれた状態も図3に示す。図3において、所定の第1電気要素36として2次電池の電池パックを図示し、また、この2次電池の電池パックを充電する充電回路を所定の電気回路(主回路に相当)として示す。このような電気回路を構成するために、充電器38も図示し、これは、所定の第1電気要素を機能させるための所定の第2電気要素としての起電力源(または電源)として機能する。図3から分かるように、バイメタルスイッチ12は、所定の第1電気要素36に対して電気的に直列に接続され、また、第2PTC素子18は、所定の第1電気要素36と共に第2電気要素に対して並列に接続されている。
【0044】
より詳しくは、図示した態様では、所定の第1電気要素36に対してバイメタルスイッチ12が直列に接続されるように第1端子24を所定の電気要素の一方の端子40に接続し、所定の電気要素36の他方の端子42にスイッチ(FET)44を介して第3端子32を接続する。このスイッチ44は、例えば、図示するように、所定の第1電気要素36の所定の箇所45の電位差(厳密には、図示した態様では、電池パック36を構成する単位セルの内、一番端の単位セル36−1にわたる電位差)が所定の値より大きくなる(例えば充電中の2次電池の電位差がある閾値を越える)と、スイッチ(FET)44の接点間を閉じて第2PTC素子18に電流が流れるように作用する。図示した態様では、所定の第1電気要素36に印加される電圧を第2PTC素子18をトリップするための電流源としても利用するように構成されている。
【0045】
図3に示す状態は、所定の箇所45における電位差が過剰になったことをスイッチ44が検知することによって、スイッチ44が副回路85を閉じて第2PTC素子18がトリップしてその熱がバイメタル素子16に伝わり、その結果、バイメタル素子16が動作した直後の状態を示す。この場合、バイメタル素子16が動作した瞬間に、バイメタルスイッチ12の接点20と22との間を流れていた電流が、第1PTC素子14に転流される。その後、第1PTC素子14がトリップし、その結果、第1PTC素子14を流れる電流が実質的に遮断され、よって、充電回路を電流が流れることが回避される。第2PTC素子18は、電気要素36と実質的に同じ電圧が印加されているので、トリップ状態のままで維持され、従って、バイメタル素子16は動作した状態のままで維持され、接点20と22とは開いた状態のままとなる。
【0046】
尚、本明細書において、電気的に並列または直列に接続されていると言う場合は、接続されている要素同士が直接的に接続されている場合であっても、あるいは、接続されている要素同士の間に別の要素が存在することによって間接的に接続されている場合であってもよい。例えば、標準抵抗器が接続されている要素同士の間に存在してもよい。
【0047】
図4に本発明の回路保護デバイスの別の態様を模式的に回路図にて示す。この回路保護デバイス50は、並列に接続されたバイメタル素子52および第1PTC素子54により構成されるバイメタルスイッチ、ならびにそれに直列に接続された第2PTC素子56を有して成る。この回路保護デバイス50は、更にもう1つのバイメタルスイッチを有して成り、これは、更にもう1つのバイメタル素子58およびそれに直列に接続された、もう1つの第2PTC素子60により構成されている。後者のバイメタル素子58は第1PTC素子54に対して並列に接続されている。その結果、2つのバイメタル素子52および58が1つの第1PTC素子54を並列接続で共有している。即ち、図示した回路保護デバイス50には、並列に接続された2つのバイメタルスイッチが存在するが、唯一の第1PTCを有する。
【0048】
図示した態様では、2つのバイメタルスイッチのそれぞれ一端が第1端子62に接続され、他方の端部が第2端子64に接続され、第2PTC素子56および60のそれぞれの一方の電極がバイメタルスイッチの一方の端子に接続され、それぞれの他方の電極が第3端子66に接続されている。このようにバイメタルスイッチが並列で接続されていると、第1端子62と第2端子64の間を流れる電流の量、従って、所定の電気回路を流れることができる電流量を大きくすることができる利点がある。即ち、回路保護デバイスの電流容量を大きくすることができる。この場合、バイメタル素子52および58が動作した場合には、それを流れる電流を第1PTC素子54に転流することができる。尚、バイメタル素子52および58が実質的に同時に動作するように回路保護デバイスを構成することが好ましい。
【0049】
上述のように、バイメタルスイッチを複数並列に接続することによって、回路保護デバイスの電流容量を大きくできる。容易に理解できるように、バイメタル素子の接点間を流れる電流を転流すべき第1PTCデバイスの数は、転流される電流量に応じて、1つであっても、バイメタル素子の数と同数であっても、あるいはこれらの間の数であってもよい。図4に示す態様では、各バイメタル素子に対応して第2PTC素子を配置しているが、1つの第2PTC素子が2つのバイメタル素子を動作させるように配置してもよい。例えば、1つの第2PTC素子に近接して2つのバイメタル素子を配置してよい。
【0050】
図5に、本発明の回路保護デバイスの1つの態様を断面図を模式的に示す。尚、この態様は図3に示すデバイスに対応する。図示した回路保護デバイス70は、バイメタルスイッチ72を有して成り、これは、バイメタル素子74および第1PTC素子76により構成されている。回路保護デバイスは、第2PTC素子78を更に有して成り、また、第1端子80、第2端子82および第3端子84を有する。
【0051】
この回路保護デバイスを所定の電気回路に配置して、回路が正常に機能している場合、矢印で示すように、第2端子82から電流が入り、バイメタル素子74を経由して第1端子80から出ように接続する。図5に示した状態は、回路が正常に機能している状態である。
【0052】
電気回路に配置された所定の電気要素に異常が生じた場合、それを検知したスイッチ(図示せず)が、矢印(図5の上方の矢印)で示すように、第3端子84を経由して第2PTC素子78に電流を流してトリップさせる。図示した態様では、バイメタル素子74に隣接して第2PTC素子78を配置している。但し、これらの間には、第2端子につながるリード部分が存在する。即ち、バイメタル素子74は、リード部分86を介して間接的に第2PTC素子78に接触している。リード部分および端子は、導電性金属材料で構成され、これは熱的にも良好な導伝性を有する。
【0053】
その結果、トリップした第2PTC素子78が高温になり、その熱によってバイメタル素子74が変形して動作し、回路を開く。このように回路が開いた状態を図6に模式的に示す。開いた瞬間に、矢印で示すように、バイメタル素子74を流れていた電流は、第1PTC素子76を経て流れるように転流される。
【0054】
図示した態様では、バイメタル素子74、第1PTC素子76および第2PTC素子78は、リードとして機能する導電性材料で接続されており、これらの端部分が端子を構成する。また、図5および図6において破線88は、バイメタルスイッチおよび第2PTC素子を収容する、回路保護デバイスのケーシングに対応する。尚、バイメタル素子はその先端部に接点90を有する。
【実施例1】
【0055】
下記の市販のバイメタル素子およびPTC素子を用いて、図3に示す回路保護デバイス10を製造した:
バイメタル素子:スナップアクション型(Cu-Ni-Mn合金とNi-Fe合金のクラッドシートから作成、動作温度100℃)
第1PTC素子:ポリエチレン系PTC素子(タイコエレクトロニクスジャパン製、トリップ温度:120℃)
第2PTC素子:PVDF系PTC素子(タイコエレクトロニクスジャパン製、トリップ温度:160℃)
【0056】
上記素子を図3に示すように接続した後、樹脂製ケーシング内に配置し、第1端子、第2端子および第3端子のみがケーシングの端部から突出するようにして、図1の本発明の保護回路デバイス10を得た。
【0057】
得られた回路保護デバイスを図7の試験回路に組み込み、第1端子24と第2端子26の間に1.0〜60Aの電流を主回路75の電流として180秒間流した。その後、スイッチ44を閉じて第2PTC素子に100Aの電流を副回路85の電流として流してトリップさせた。尚、試験環境の温度を室温(25℃)、0℃および−40℃とした。
【0058】
スイッチ44を閉じた時間をゼロとして、第1端子24と第2端子26との間を流れる電流値が実質的に遮断されるまでの時間(即ち、強制遮断時間)、即ち、第1PTC素子がトリップするまでの時間を測定した。測定結果を図8に示す。
【0059】
この結果から、主回路電流が小さいほど、また、低温環境であるほど遮断時間は長くなる。例えば、過充電保護の場合の目標遮断時間は20秒以下であるといわれており本発明の回路保護デバイスは、低温環境であっても、その目標値を十分に達成している。
【符号の説明】
【0060】
10…回路保護デバイス、12…バイメタルスイッチ、
14…第1PTC素子、16…バイメタル素子、
18…第2PTC素子、20,22…接点、
24…第1端子、 26…第2端子、
28,30…電極、32…第3端子、
33…第4端子、35…起電力源(または電源)、
36…第1電気要素、38…第2電気要素、
40,42…端子、44…スイッチ、
50…回路保護デバイス、52…バイメタル素子、
54…第1PTC素子、56…第2PTC素子、
58…バイメタル素子、60…第2PTC素子、
62…第1端子、64…第2端子、
66…第3端子、70…回路保護デバイス、
74…バイメタル素子、75…主回路、
76…第1PTC素子、78…第2PTC素子、
80…第1端子、82…第2端子、
84…第3端子、85…副回路、
88…ケーシング、90…接点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8