(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イソシアネート化合物(C)の含有量が、前記単量体化合物(A)、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)、及び前記光重合開始剤(D)の合計100質量部に対して、1質量部〜5質量部であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性粘着剤組成物。
前記分子内に窒素原子を有する重合性単量体(b)が、N−ビニルピロリドン及びメタクリル酸ジメチルアミノエチルの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光硬化性粘着剤組成物。
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、重量平均分子量(Mw)が200,000〜400,000であり、該重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表される分散度が2.0〜5.0であり、かつ側鎖に共重合体分子1molあたり重合性二重結合を3mol〜10mol有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光硬化性粘着剤組成物。
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の側鎖の重合性二重結合が、アクリル酸グリシジル又はメタクリル酸グリシジルを、前記単量体混合物(A)における前記単量体(a)、(b)及び(c)を含む単量体の共重合体に反応させることによって導入したものである請求項4に記載の光硬化性粘着剤組成物。
前記光硬化性粘着剤組成物が、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む重合性単量体の重合体であり、重量平均分子量(Mw)が20,000超150,000以下である粘着付与性樹脂(F)をさらに含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光硬化性粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(光硬化性粘着剤組成物)
本発明の光硬化性粘着剤組成物は、少なくとも、単量体混合物(A)と、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)と、イソシアネート化合物(C)と、光重合開始剤(D)と、を含んでなり、さらに必要に応じて、その他の成分、を含んでなる。
【0018】
<単量体混合物(A)>
単量体混合物(A)は、後述する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)と共にベースポリマーを構成するものであり、少なくとも、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a)と、分子内に窒素原子を有する重合性単量体(b)と、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)とを含んでなり、さらに必要に応じて、その他の単量体を含んでなる。
【化1】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基、nは0〜6の整数を表し、複数のnが混在してもよい。)
【0019】
−(メタ)アクリル酸エステル単量体(a)−
(メタ)アクリル酸エステル単量体(a)としては、炭素数4以上のアルキル基を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ターシャリーブチル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが、入手し易さ、重合性、得られるポリマーの特性などの点で、好ましい。
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(a)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記単量体混合物(A)に対して、60質量%〜95質量%が好ましく、70質量%〜95質量%がより好ましく、80質量%〜95質量%が特に好ましい。前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(a)の含有量が、60質量%未満であると、光硬化性粘着剤組成物のガラス転移温度が上昇し、発泡基材への粘着性が減じられることがあり、95質量%超であると、光硬化性粘着剤組成物の凝集力が不足し、保持力等の粘着性能が減じられることがある。
【0020】
−重合性単量体(b)−
重合性単量体(b)としては、分子内に窒素原子を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル等)、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、3−メタクリロイルオキシエチルエチレンウレア、N−ビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドン等)、N−ビニルカプロラクタム、アクリロニトリル、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、エチルメタクリルアミド、イソプロピルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、N−ビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドン等)及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル(メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル等)の少なくともいずれかが、入手し易さ、重合性、得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の特性などの点で、好ましい。
前記重合性単量体(b)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記単量体混合物(A)に対して、3質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜25質量%がより好ましく、5質量%〜20質量%が特に好ましい。前記重合性単量体(b)の含有量が、3質量%未満であると、凝集力が不足し、保持力等の粘着性能が減じられることがあり、30質量%超であると、ガラス転移温度が上昇し、発泡基材への粘着性が減じられることがある。
【0021】
−(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)−
(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)としては、下記一般式(1)で表される限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレートオリゴマー、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、アクリル酸及びメタクリル酸(即ち、(メタ)アクリル酸(下記一般式でn=0である場合))についても、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)に含まれるものとする。
【化2】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基、nは0〜6の整数を表し、複数のnが混在してもよい。)
入手し易さの点では、アクリル酸、メタクリル酸、が好ましく、また、その後の変性の反応性の点では、2−カルボキシエチルアクリレートオリゴマーが好ましい。
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記単量体混合物(A)に対して、1質量%〜30質量%が好ましく、3質量%〜25質量%がより好ましく、5質量%〜20質量%が特に好ましい。前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)の含有量が、1質量%未満であると、凝集力が不足し、保持力等の粘着性能が減じられることがあり、30質量%超であると、ガラス転移温度が上昇し、発泡基材への粘着性が減じられることがある。
【0022】
−その他の単量体−
前記その他の単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体;ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート等のジシクロペンタジエンから誘導されるアクリル単量体;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
<(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)>
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、前記単量体混合物(A)と共にベースポリマーを構成するものであり、前記単量体混合物(A)における前記単量体(a)、(b)及び(c)を含む単量体の共重合体である。即ち、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、少なくとも、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a)と、重合性単量体(b)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)との共重合体であって、任意のその他の単量体があった場合は、共重合体成分に含まれてもよいし、含まれていなくてもよい。
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200,000〜400,000が好ましく、200,000〜350,000がより好ましく、200,000〜300,000が特に好ましい。
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)が、200,000未満であると、凝集力が不足し、保持力等の粘着性能が減じられることがあり、400,000超であると、粘度が増大し、塗工が困難となることがある。
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2.0〜5.0が好ましく、2.0〜4.0がより好ましく、2.0〜3.5が特に好ましい。
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の分散度(Mw/Mn)が、2.0未満であると、タック性(初期粘着性)が減じられることがあり、5.0超であると、凝集力が不足し、保持力等の粘着性能が減じられることがある。
【0024】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、共重合体側鎖に重合性二重結合を有することが好ましい。この場合、共重合体部分にも、硬化時における重合反応性を付与することができ、硬化反応時に、少ないエネルギーで硬化させることが可能となり、高分子量化による凝集力増大によって粘着性能をより向上することも可能となる。
前記共重合体側鎖に重合性二重結合を導入する変性方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基等の官能基を有する単量体を共重合した後(前記単量体混合物(A)における前記単量体(a)、(b)及び(c)を含む単量体の共重合体を得た後)、それら官能基と反応しうる官能基と重合性二重結合とを有する化合物を付加反応させることによって、共重合体側鎖に導入する方法、などが挙げられる。ここで、前述の一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)を共重合することにより共重合体側鎖に導入したカルボキシル基を利用し、カルボキシル基と反応する化合物を付加させることが好ましい。このカルボキシル基と反応する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エポキシ基を有するアクリル酸グリシジル又はメタクリル酸グリシジルが、入手の容易さ、コストの点で、好ましい。
前記共重合体側鎖における重合性二重結合のmol数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、共重合体(B)分子1molあたり、3mol〜10molが好ましく、4mol〜10molがより好ましく、5mol〜10molが特に好ましい。前記共重合体側鎖における重合性二重結合のmol数が、3mol未満であると、硬化させた場合に十分な硬化性が得られないことがあり、10mol超であると、発泡基材への粘着性能が減じられることがある。
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、重量平均分子量(Mw)が200,000〜400,000であり、かつ、該重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表される分散度が2.0〜5.0であり、かつ、側鎖に共重合体分子1molあたり重合性二重結合を3mol〜10mol有することが好ましい。
【0025】
−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の製造方法−
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の製造方法としては、特に制限はなく、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)並びに側鎖に有する重合性二重結合の量に応じて適宜選択することができるが、単量体混合物(A)と(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)と混合物を安全、かつ簡便に得ることができる点で、リビングラジカル重合を用いた塊状重合が好ましい。具体的には、炭素数が4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a)、分子内に窒素原子を有する重合性単量体(b)、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)が含まれる混合物Xを調製し(調製ステップ)、この調製された混合物Xの総量の内、好ましくは20質量%〜60質量%、より好ましくは30質量%〜55質量%、さらに好ましくは30質量%〜50質量%を、リビングラジカル重合を用いた塊状重合する(転化する)ことによって(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とし(重合ステップ)、前記単量体混合物(A)と前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)との混合物を得ることができる。前記混合物Xを重合体に転化する割合が、20質量%未満であると、重合体部分が担う粘着及び硬化機能を十分に発揮できないことがあり、60質量%超であると、前記単量体混合物(A)と前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)との混合物の粘度が増大し、塗工が困難となることがある。
【0026】
また、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の製造方法では、通常の塊状重合では困難である発熱の制御を目的として、反応速度がコントロール可能なリビングラジカルを用いた塊状重合(リビングラジカル塊状重合)を適用することが好ましい。
前記リビングラジカル重合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、不安定ラジカル重合、原子移動重合、付加開列型連鎖移動重合、などが挙げられる。
これらの中でも、付加開列型連鎖移動重合が、使用する触媒の入手の容易さ、コストの点で、好ましい。
前記単量体混合物(A)と前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)との混合物を得るリビングラジカル塊状重合において、付加開列型連鎖移動剤(d)を、10時間半減期温度が30℃〜50℃である重合開始剤(e)の2mol倍以上使用して、50℃以下で第1の重合反応をした後、60℃〜100℃で第2の重合反応をする方法により製造することが好ましい。これにより、分子量及び分散度が上記範囲を満たす(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を効率的に得ることができる。
【0027】
前記付加開列型連鎖移動剤(d)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α−メチルスチレンダイマー、2−シアノ−2−プロピルベンゾジチオネート、シアノメチルドデシルトリチオカーボネート、ビス(チオベンゾイル)ジスルフィド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、下記構造式で示すα−メチルスチレンダイマー、即ち、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンが、入手も容易で安価である点で、好ましい。
【化3】
【0028】
前記重合開始剤(e)の10時間半減期温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃〜50℃が好ましく、30℃〜45℃がより好ましく、30℃〜40℃がさらに好ましく、30℃〜35℃が特に好ましい。
前記重合開始剤(e)の10時間半減期温度が30℃未満であると、前記重合開始剤(e)の投入直後に一時的に大きな発熱が起こることがあり、前記重合開始剤(e)の10時間半減期温度が50℃超であると、前記重合開始剤(e)の投入直後の急な発熱は抑制できるが反応が進行しない場合や、反応時間が長い場合や、またその後重合温度を高くした際に一時的に大きな発熱が起こる場合があるため安全な塊状重合ができないことがある。ここで、前記10時間半減期温度は、重合開始剤濃度が10時間で半減する温度を指し、重合開始剤の生産メーカーが公表している値を採用した。
【0029】
前記重合開始剤(e)の10時間半減期温度が30℃〜50℃である重合開始剤(e)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−70」)(10時間半減期温度30℃)、ジイソブチルパーオキサイド(日油社製「パーロイルIB」)(10時間半減期温度33℃)、クミルパーオキシネオデカエート(日油社製「パークミルND」)(10時間半減期温度37℃)、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート(日油社製「パーロイルNPP」)(10時間半減期温度40℃)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(日油社製「パーロイルIPP」)(10時間半減期温度41℃)、ジセカンダリブチルパーオキシジカーボネート(日油社製「パーロイルSBP」)(10時間半減期温度41℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(日油社製「パーオクタND」)(10時間半減期温度41℃)、ジ(4−ターシャリブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート(日油社製「パーロイルTCP」)(10時間半減期温度41℃)、1−シクロへキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカエート(日油社製「パーシクロND」)(10時間半減期温度41℃)、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート(日油社製「パーロイルEEP」)(10時間半減期温度43℃)、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(日油社製「パーロイルOPP」)(10時間半減期温度44℃)、ターシャリへキシルパーオキシネオデカエート(日油社製「パーヘキシルND」)(10時間半減期温度45℃)、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート(日油社製「パーロイルNBP」)(10時間半減期温度46℃)、ターシャリブチルパーオキシネオデカノエート(日油社製「パーブチルND」)(10時間半減期温度46℃)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−70」)(10時間半減期温度30℃)、ジイソブチルパーオキサイド(日油社製「パーロイルIB」)(10時間半減期温度33℃)、クミルパーオキシネオデカエート(日油社製「パークミルND」)(10時間半減期温度37℃)が、重合温度制御が容易で、重合速度が速く、製造時間が短縮できる点で、好ましい。
【0030】
前記付加開列型連鎖移動剤(d)の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記10時間半減期温度が30℃〜50℃である重合開始剤(e)の添加量に対して、2mol倍以上が好ましく、2mol倍〜50mol倍がより好ましく、2mol倍〜35mol倍がさらに好ましく、2mol倍〜20mol倍が特に好ましい。
前記付加開列型連鎖移動剤(d)の添加量が、前記10時間半減期温度が30℃〜50℃である重合開始剤(e)の添加量に対して、2mol倍以上であると、重合速度が適性に制御され、製造時の発熱量制御が容易となって、アクリル酸エステル共重合体の製造を安全に行うことが可能となり、安全な塊状重合が可能となる。
一方、前記前記付加開列型連鎖移動剤(d)の添加量が、前記10時間半減期温度が30℃〜50℃である重合開始剤(e)の添加量に対して、2mol倍未満であると、アクリル酸エステル単量体からのアクリル酸エステル共重合体の製造中に急激で激しい発熱が起こり、反応暴走につながることがあり、50mol倍超であると、塊状重合は安全に実施可能だが、重合速度が遅くなり、製造時間が長時間となることがある。
【0031】
前記第1の重合反応における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃以下が好ましく、25℃〜50℃がより好ましい。
前記第2の重合反応における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃〜100℃が好ましく、60℃〜90℃がより好ましく、60℃〜80℃が特に好ましい。
【0032】
上述したような好ましい温度で重合を行うことにより、第1の重合反応で重合中間物を得、次いで第2の重合反応でリビング重合を行うことで、複数のピークを有する共重合体が得られ、その結果、所望の分子量(Mw)のみでなく、通常リビング重合では小さくなりやすい分散度(Mw/Mn)を2.0〜5.0の範囲で効率的に得ることができる。
【0033】
<単量体混合物(A)及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の合計含有量>
前記単量体混合物(A)及び前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の合計含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光硬化性粘着剤組成物全体に対して、80質量%〜99.3質量%が好ましく、85質量%〜95質量%がより好ましく、90質量%〜95質量%が特に好ましい。前記合計含有量が、80質量%未満であると、硬化性、粘着物性の効果が低下することがあり、99.3質量%超であると、硬化性、粘着物性の効果は得られるものの、単量体混合物(A)やその他の成分の効果が十分に発揮されないことがある。
【0034】
<イソシアネート化合物(C)>
イソシアネート化合物(C)は、下記一般式(2)で表される化合物であり、該化合物は、両末端にイソシアネート(NCO)基を有する2官能のプレポリマー型のイソシアネート硬化剤である。
(化2)
O=C=N−R2−NHCOO−P−OOCHN−R3−N=C=O (2)
(式中、R
2は分子内にNCO基を2個有するジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を表し、R
3は分子内にNCO基を2個有するジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を表し、Pは分子内にOH基を2個有するジオール化合物からOH基を除いた残基を表す。)
前記イソシアネート化合物(C)を用いることにより、光硬化性粘着剤組成物において、アクリル酸エステル共重合体(B)の側鎖に存在する活性水素基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等)と架橋構造を形成して、光硬化性粘着剤の凝集力を向上させることができる。
【0035】
前記イソシアネート化合物(C)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記単量体化合物(A)、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)、及び前記光重合開始剤(D)の合計100質量部に対して、1質量部〜5質量部が好ましく、3質量部〜5質量部がより好ましい。
前記イソシアネート化合物(C)の含有量が、1質量部未満であると、光硬化性粘着剤組成物の凝集力が向上しないため、粘着性能(保持力)が低下することがあり、5質量部超であると、光硬化性粘着剤組成物の発泡基材への転写性が低下することがある。一方、より好ましい範囲内である場合、光硬化性粘着剤組成物の粘着性能(保持力)及び発泡基材への転写性の低下をより防止することができる点で、有利である。
【0036】
前記イソシアネート化合物(C)の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200〜1,300が好ましく、400〜1,300がより好ましい。
前記イソシアネート化合物(C)の重量平均分子量(Mw)が、200未満であると、高温時の凝集力が低下することがある。一方、前記イソシアネート化合物(C)の重量平均分子量(Mw)が、前記より好ましい範囲内であると、前記特性がより発現する点で、有利である。
なお、重量平均分子量(Mw)は、以下の計算式から算出される。
重量平均分子量(Mw)=4200/NCO%
ここで、NCO%は、JIS K1603−1 B法で測定される。
【0037】
前記イソシアネート化合物(C)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、などが挙げられる。
前記トリレンジイソシアネート(TDI)の市販品の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、デスモジュールE−14(住化バイエルウレタン株式会社製)、デスモジュールE−15(住化バイエルウレタン株式会社製)などが挙げられる。
前記ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の市販品の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スミジュールE−21(住化バイエルウレタン株式会社製)、SBUイソシアネート0620(住化バイエルウレタン株式会社製)、デスモジュールE−23(住化バイエルウレタン株式会社製)、などが挙げられる。
【0038】
前記イソシアネート化合物(C)を使用する場合、実質的に溶媒を含有していないものであることが好ましい。
【0039】
<光重合開始剤(D)>
光重合開始剤(D)は、紫外線等の光を吸収してラジカルを発生する働きを有する。この光重合開始剤(D)を含有することにより、紫外線等の光の照射により硬化反応を開始させることができる。
前記光重合開始剤(D)としては、特に制限はなく、目的(硬化時に照射する紫外線の波長、硬化膜厚等)に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾフェノン、2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル)フェニル)−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォルノフェニル)−ブタノン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルーフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ベンゾフェノン、2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトンが、入手の容易さ、コストの点で、好ましく、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドが、厚膜硬化の点で、好ましい。
【0040】
前記光重合開始剤(D)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光硬化性粘着剤組成物全体に対して、0.2質量%〜10質量%が好ましく、0.5質量%〜8質量%がより好ましく、1質量%〜6質量%が特に好ましい。前記光重合開始剤(D)の含有量が、0.2質量%未満であると、硬化率が低下し、残存した未反応単量体により臭気が悪化することがあり、10質量%超であると、溶解性が悪くなり、成形品に濁りやブツ、黄変が発生することがある。
【0041】
前記光重合開始剤(D)の混合方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、溶解性を考慮して単量体に溶解して混合することが好ましい。混合後は、紫外線によって硬化反応が起こり、遮光を必要とするため、前記単量体混合物(A)と、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)と、前記粘着付与性樹脂(C)との混合物に最後に混合することが好ましい。
【0042】
なお、前記光重合開始剤(D)を使用する場合、実質的に溶媒を含有していないものであることが好ましい。
【0043】
<その他の成分>
本発明の光硬化性粘着剤組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて、塩素化ポリプロピレン(E);粘着付与性樹脂(F);炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、タルク、酸化チタン等の無機物;ガラスバルーン、シラスバルーン、セラミックバルーン等の無機中空体;ナイロンビーズ、アクリルビーズ、シリコンビーズ等の有機物;塩化ビニリデンバルーン、アクリルバルーン等の有機中空体;発泡剤;染料;顔料;重合禁止剤;安定剤;などを含有させることができる。
【0044】
−塩素化ポリプロピレン(E)−
本発明の光硬化性粘着剤組成物は、塩素化ポリプロピレン(E)を含有することにより、通常粘着が難しいポリプロピレン基材への良好な粘着性を発現することができる。
前記塩素化ポリプロピレン(E)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハードレン(東洋紡社製)、スパークロン(日本製紙ケミカル社製)など市販されているもの、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、溶剤で希釈されていないペレットタイプのものが、溶剤を含まない材料である点で、好ましい。
前記ハードレンのシリーズとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、13−LP、13−LLP、14LWP、15−LLP、16−LP、DX−523P、DX−526P、DX−530P、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの違いは、分子量及び塩素化度が異なるものであるため、溶解性、相溶性に見合う塩素化度のグレードを任意に選択することができる。
これらの中でも、DX−523P、DX−526P、DX−530Pが、溶解性、相溶性の点で、好ましい。
【0045】
前記塩素化ポリプロピレン(E)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光硬化性粘着剤組成物全体に対して、0.5質量%〜10質量%が好ましく、1質量%〜8質量%がより好ましく、2質量%〜6質量%が特に好ましい。前記塩素化ポリプロピレン(E)の含有量が、0.5質量%未満であると、ポリプロピレン基材への粘着性向上が不足することがあり、10質量%超であると、光硬化性粘着剤組成物の粘度が増大し、塗工が困難となることがある。
【0046】
前記塩素化ポリプロピレン(E)の混合方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、溶解性を考慮し、単量体に溶解して混合することが好ましい。ここで、塊状重合前の単量体混合物(A)に溶解してもよく、単量体混合物(A)と(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)との混合物に混合してもよい。
【0047】
−粘着付与性樹脂(F)−
粘着付与性樹脂(F)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む重合性単量体の重合体である。ここで、前記粘着付与性樹脂(F)が、硬化阻害防止の点で、重合性二重結合を有さない重合体(重合連鎖を停止させる能力を有する二重結合を有さない重合体)であることが好ましい。
【0048】
前記粘着付与性樹脂(F)の重量平均分子量(Mw)としては、20,000超150,000以下である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30,000〜137,000が好ましく、37,000〜137,000がより好ましく、37,000〜60,000が特に好ましい。前記粘着付与性樹脂(F)の重量平均分子量(Mw)が、20,000以下であると粘着性が低下し、150,000超であると含有成分の相溶性が低下する。一方、好ましい範囲内、より好ましい範囲内、又は、特に好ましい範囲内である場合、粘着付与性樹脂(F)の分子量が適当な値であるため、粘着付与性樹脂(F)の分子量が小さ過ぎることにより、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)と粘着付与性樹脂(F)との絡み合いがほどけやすくなって、粘着特性が低下してしまうのを確実に防止すると共に、また、粘着付与性樹脂(F)の分子量が大き過ぎることにより、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)と粘着付与性樹脂(F)とが絡みにくくなって、粘着特性が低下してしまうのを確実に防止することができる点で、有利である。
【0049】
前記粘着付与性樹脂(F)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記単量体混合物(A)、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)、及び前記光重合開始剤(D)の合計100質量部に対して、0.5質量部〜40質量部が好ましく、1質量部〜9質量部がより好ましく、2.8質量部〜4.8質量部が特に好ましい。前記粘着付与性樹脂(F)の含有量が、0.5質量部未満であると、粘着性能(投錨性)、発泡基材との転写性が低減することがあり、40質量部超であると、含有成分の相溶性が低下することがある。一方、前記粘着付与性樹脂(F)の含有量が、より好ましい範囲内、又は、特に好ましい範囲内であると、粘着付与性樹脂(F)の効果をより高く発現させることができる点で、有利である。
【0050】
前記粘着付与性樹脂(F)のガラス転移温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光硬化性粘着剤組成物のガラス転移温度を目的の温度範囲に制御して、所定温度範囲で発現するタック性等を制御できる点で、40℃以上が好ましく、40℃〜180℃がより好ましい。
【0051】
−(メタ)アクリル酸エステル単量体−
前記粘着付与性樹脂(F)を構成するための(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20、好ましくは1〜4のアルキル基を有するアルコールとの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステル、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、(i)(メタ)アクリル酸と炭素数1〜4のアルキル基を有するアルコールとの(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(ii)(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル及び/又は(iii)(メタ)アクリル酸とベンジルアルコール(炭素数6〜14の芳香族アルコールの一種)とのエステルが好ましい。
【0052】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル(例えば、メチルメタクリレート)、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル(例えば、tert−ブチルメタクリレート)、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロへキシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、シクロへキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、メチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートが、光硬化性粘着剤組成物のガラス転移温度を目的の温度範囲へ制御する際、少量の添加で可能であり、かつ、高温での粘着特性を向上させることができる点で、好ましい。
【0053】
前記粘着付与性樹脂(F)は、重合性不飽和結合を有するモノマーとして、上記(メタ)アクリル酸エステル単量体を主成分として用いて調製され得る。従って、前記粘着付与性樹脂(F)は、上記のような(メタ)アクリル酸エステル単量体から誘導される繰り返し単位((メタ)アクリル酸エステル成分単位)を、単量体換算で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上の量で有している。
【0054】
前記粘着付与性樹脂(F)は、上記の(メタ)アクリル酸エステル成分単位のほかに、(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合可能な単量体から誘導される繰り返し単位を有していてもよい。
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合可能な単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩等の塩;エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、プロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル等の(ポリ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル等の多価(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニリデン;(メタ)アクリル酸−2−クロロエチル等のハロゲン化ビニル化合物;2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有重合性化合物;(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸−2−アジリジニルエチル等のアジリジン基含有重合性化合物;アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリコール又はポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの付加物等のヒドロキシル基含有ビニル化合物;フッ素置換メタクリル酸アルキルエステル、フッ素置換アクリル酸アルキルエステル等の含フッ素ビニル単量体;イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸(ただし(メタ)アクリル酸を除く)、これらの塩並びにこれらの(部分)エステル化合物及び酸無水物;2−クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニル等の反応性ハロゲン含有ビニル単量体;メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシエチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等のアミド基含有ビニル単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2−メトキシエトキシトリメトキシシラン等の有機ケイ素基含有ビニル化合物単量体;その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類等(例えば、フッ素系モノマー、シリコン含有モノマー、マクロモノマー、スチレン、シリコン等);などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
前記粘着付与性樹脂(F)には、イソシアネート基と反応性を有する官能基が導入されていることが、イソシアネート化合物(C)と反応しやすくできる点、又は、凝集力を向上させることができる点で、好ましい。
前記官能基の具体例としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メルカプト基、などが挙げられる。
前記粘着付与性樹脂(F)を製造する際に、前記官能基を有するモノマーを使用することが好ましい。前記粘着付与性樹脂(F)は、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とは異なるものである。
また、前記粘着付与性樹脂(F)を形成する単量体は、前記単量体混合物(A)における単量体とは異なることが好ましい。前記粘着付与性樹脂(F)と、前記単量体混合物(A)における単量体((メタ)アクリル酸エステル単量体(a)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c))とは、(メタ)アクリル酸エステルという共通ユニットを有しているので、前記単量体混合物(A)における単量体((メタ)アクリル酸エステル単量体(a)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c))に対して良好に溶解する。
【0056】
前記粘着付与性樹脂(F)の具体例としては、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリトリシクロデカニルメタクリレート、ポリイソボルニルメタクリレート、イソブチルメタクリレートとメタクリル酸との共重合体、などが挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0058】
<分析値及び特性の測定方法>
表1〜表7中に示す分析値及び特性は、次の方法により測定した。
【0059】
−重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)((メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)、イソシアネート化合物(C)、粘着付与性樹脂(F))−
イソシアネート化合物(C)におけるNCO%(JIS K1603−1B法により測定)に基づいて、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を算出した。
なお、分散度(Mw/Mn)は、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除して求めた。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)を表1に示し、粘着付与性樹脂(F)の重量平均分子量(Mw)を表2に示す。
なお、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、以下の計算式から算出される。
重量平均分子量(Mw)=4200/NCO%
ここで、NCO%は、JIS K1603−1 B法で測定される。
【0060】
−重合状態(主に発熱状態)((メタ)アクリル酸エステル共重合体(B))−
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を重合するときの発熱状態を以下の基準で判定した。結果を表1に示す。
○(合格):急激な発熱がみられず、全反応工程において設定温度±2℃を維持できた
場合
×(不合格):10秒間で3℃を超える発熱があった場合、又は全反応工程において発熱又は吸熱由来で設定温度±2℃を維持できなかった場合。
【0061】
−重合体転化率(単位:質量%)(単量体混合物(A)及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の混合物)−
JIS K5407:1997にしたがって加熱残分(質量%)を測定し、これを重合体転化率(質量%)とした。ただし、加熱条件は温度140℃、時間は30分間とした。結果を表1に示す。
【0062】
−(メタ)アクリル酸グリシジルの反応率(単位:質量%)((メタ)アクリル酸エステル共重合体(B))−
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(島津製作所の試験装置)を使用し、蒸留水とアセトニトリルを溶離液として、逆相カラム、紫外線検出器を使用して内部標準法(標準物質アニソール)で残存(メタ)アクリル酸グリシジルを定量した。この値を使用し、次式から(メタ)アクリル酸グリシジルの反応率を算出した。
【数1】
【0063】
−重合体(ポリマー)1molあたりの二重結合mol数(単位:mol)((メタ)アクリル酸エステル共重合体(B))−
次式によって算出した。結果を表1に示す。
【数2】
【0064】
−ガラス転移温度(Tg)(粘着付与性樹脂(F))−
粘着付与性樹脂(F)のガラス転移温度を、粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ製)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0065】
−相溶性(光硬化性粘着剤組成物)−
目視確認により、光硬化性粘着剤組成物の相溶性を評価した。なお、評価基準は以下の通りである。結果を表3〜7に示す。
−−評価基準−−
○:粘着付与樹脂相溶
×:粘着付与樹脂非相溶
−:粘着付与樹脂非含有
【0066】
−粘着性(タック性)(光硬化性粘着剤組成物)−
図1に示すように、下記の
図2に示す作製方法により作製した25mm×25mm×10mmの評価サンプル100を、直径11.4mmの穴を有するステンレス支持板110に、該穴を完全に塞ぎ、且つ、離型紙200を剥がした状態で、硬化した粘着剤層230側がステンレス支持板110側となるように貼り付けた後、重さ10g、底面11.4φのステンレス分銅120の自重のみで支持板の穴(13φ)の中をくぐらせて、粘着剤層230に貼り付けて10秒間保持し、10秒間保持した後に300mm/分間の速度で分銅を引き上げたときの力の最大値を測定するプローブタック試験を下記条件で行うことにより、光硬化性粘着剤組成物の粘着性(タック性)を評価した。なお、評価基準は以下の通りである。結果を表3〜表7に示す。
−−評価サンプル作製方法−−
図2に示すように、離型紙200上に、各組成(表3〜表7)の光硬化性粘着剤組成物を可変式バーコーターを用いて、面積が100mm×150mm、膜厚が60μm±5μmとなるように塗工して粘着剤層(未硬化)210を形成し(粘着剤塗布)、粘着剤層(未硬化)210側から、窒素雰囲気(酸素濃度1,000ppm)下の照射環境で、照射強度が100mW/cm
2、積算光量が150mJ/cm
2となるようにUV220を照射して(UV照射)、粘着剤層を硬化させ粘着剤層(硬化)230を形成した。その後、厚さ10mmの発泡基材240を粘着剤層(硬化)230側に貼り合わせ(発泡基材貼り合わせ)、その後、厚み方向の圧縮率が50%となる圧着条件で1回圧着し(圧着)、圧着後、24時間室温で放置して、評価サンプル100を作製した。
−−プローブタック試験条件−−
使用機器:STA−1150(ORIENTEC社製)
サンプルサイズ:25mm×25mm
基材圧着後養生時間:24時間
荷重:ステンレス分銅
試験荷重:10g分銅
荷重底面直径:11.4mm
荷重接触時間:10秒間
引張速度:300mm/分間
試験環境:23℃、50%
測定値:引き上げる力の最大値
−−評価基準−−
☆:45N/mm
2超
◎:35N/mm
2超45N/mm
2以下
○:25N/mm
2超35N/mm
2以下
△:5N/mm
2超25N/mm
2以下
×:5N/mm
2以下
−:評価不可
【0067】
−粘着性(投錨性)(光硬化性粘着剤組成物)−
図3に示すように、下記の
図4に示す作製方法により作製した25mm×150mmの評価サンプル300を、ORIENTEC製STA−1150を用いて、一方のチャックAに前記評価サンプルの「発泡基材310」を挟み、他方のチャックBに前記評価サンプルの「芯材320+粘着剤層(1層)330+離型紙340」を挟み、300mm/分間で発泡基材310と粘着剤層350との界面で剥離させ、剥離挙動が安定したところから、150mmまでの積分平均値を測定値とすることにより、光硬化性粘着剤組成物の粘着性(投錨性)を評価した。なお、評価基準は以下の通りである。結果を表3〜7に示す。
−−評価サンプル作製方法−−
図4に示すように、離型紙340上に、各組成(表3〜表7)の光硬化性粘着剤組成物を可変式バーコーターを用いて、面積が100mm×150mm、膜厚が60μm±5μmとなるように塗工して粘着剤層(未硬化)345を形成し(1回目粘着剤塗布)、粘着剤層(未硬化)345側から、窒素雰囲気(酸素濃度1,000ppm)下の照射環境で、照射強度が100mW/cm
2、積算光量が150mJ/cm
2となるようにUV360を照射して(1回目UV照射)、粘着剤層(未硬化)345を硬化させ粘着剤層(硬化)330を形成した。その後、ローラー370を1往復させることにより、不織布からなる芯材320を貼り合わせ(芯材貼り合わせ)、貼り合わせた芯材320の上に各組成(表3〜表7)の光硬化性粘着剤組成物を可変式バーコーターを用いて、面積が100mm×150mm、膜厚が60μm±5μmとなるように塗工して粘着剤層(未硬化)390を形成し(2回目粘着剤塗布)、粘着剤層(未硬化)390側から、照射強度が100mW/cm
2、積算光量が150mJ/cm
2となるようにUV400を照射して(2回目UV照射)、粘着剤層(未硬化)390を硬化させ粘着剤層(硬化)350を形成した。その後、厚さ10mmの発泡基材310を粘着剤層(硬化)350側に貼り合わせ、その後、厚み方向の圧縮率が50%となる圧着条件で1回圧着し(圧着)、圧着後、24時間室温で放置して、評価サンプル300を作製した。
−−試験条件−−
使用機器:STA−1150(ORIENTEC社製)
サンプルサイズ:25mm×150mm
基材圧着後養生時間:24時間
剥離速度:300mm/分間
試験環境:23℃、50%
測定値:剥離挙動が安定したところから、150mmまでの積分平均値
−−評価基準−−
◎:4N/25mm超
○:3N/25mm超4N/25mm以下
△:1N/25mm超3N/25mm以下
×:1N/25mm未満
−:評価不可
【0068】
−硬化阻害の有無(光硬化性粘着剤組成物)−
下記の
図5に示す作製方法により作製した評価サンプルについて、FT-IRを用いた下記測定方法により、粘着剤の炭素間二重結合ピーク(810cm
-1)の減少率から硬化率を算出することによって、光硬化性粘着剤組成物の硬化阻害の有無を評価した。なお、評価基準は以下の通りである。結果を表3〜7に示す。
−−評価サンプル作製方法−−
図5に示すように、離型紙500上に、各組成(表3〜表7)の光硬化性粘着剤組成物を可変式バーコーターを用いて、面積が100mm×150mm、膜厚が60μm±5μmとなるように塗工して粘着剤層(未硬化)510を形成し(粘着剤塗布)、粘着剤層(未硬化)510側から、窒素雰囲気(酸素濃度1,000ppm)下の照射環境で、照射強度が100mW/cm
2、積算光量が150mJ/cm
2となるようにUV520を照射して(UV照射)、粘着剤層(未硬化)510を硬化させ粘着剤層(硬化)530を形成し、評価サンプルを作製した。
−−硬化率測定方法−−
表面数十ミクロンの硬化率測定にはサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製FT-IR Nicolet6700を使用した。測定方法・測定条件は以下の通りである。
・測定方法:ATR法(1回反射)
・分解能:8cm
−1
・積算回数:32回
硬化率は1720cm
−1付近のC=O対称伸縮振動を基準として810cm
−1のC=CH面外変角振動のピーク面積の変化量から、次式に従い算出した。
(数3)
硬化率(%)=(1−(硬化後の810cm
−1ピーク面積/硬化後の1720cm
−1ピーク面積)/(硬化前の810cm
−1ピーク面積/硬化前の1720cm
−1ピーク面積))×100
−−評価基準−−
○:硬化率95%超
△:硬化率90%超〜95%以下
×:硬化率90%以下
【0069】
−凝集力(保持力)(光硬化性粘着剤組成物)−
図6に示すように、粘着性(タック性)で用いた評価サンプルと同様に(
図2に示すように)作製したサンプルを25mm×50mmにカットする。次に、該カットした評価サンプル600の半分(25mm×25mm)を、被着体としての50mm×300mmのPP板610に粘着材620で貼りあわせる。次に、貼り合わせ部分(25mm×25mm)に5kgのローラーを1往復かけて、24時間室温に放置する。次に、治具630(100g)で評価サンプル600を挟み、治具630に1kgの荷重(おもり)640を吊り下げた。次に、荷重(おもり)640を吊り下げてから(
図6におけるA)、落下するまで(
図6におけるB)の時間を測定値とすることにより、JISZ0237に準拠して、光硬化性粘着剤組成物の凝集力(保持力)を評価した。なお、評価基準は以下の通りである。結果を表3〜7に示す。なお、試験環境は、温度23℃、湿度50%であった。
−−評価基準−−
◎:60分超
○:20分超60分以下
△:5分超20分以下
×:5分未満
−:評価不可
【0070】
−耐熱性(高温側の軟化点)(光硬化性粘着剤組成物)−
図7に示すように、粘着性(タック性)で用いた評価サンプルと同様に(
図2に示すように)作製したサンプルを25mm×50mmにカットする。次に、該カットした評価サンプル700の半分(25mm×25mm)を、被着体としての50mm×100mmのPP板710に粘着材720で貼りあわせる。次に、貼り合わせ部分(25mm×25mm)に5kgのローラーを1往復かけて、24時間室温に放置する。次に、治具730(100g)で評価サンプル700を挟み、治具730に500gの荷重(おもり)740を吊り下げた。次に、荷重(おもり)740を吊り下げてから(
図7におけるA)、落下するまで(
図7におけるB)の時間を測定値とすることにより、Cheminstruments製3D BANK SHEAR TESTERを用いて、光硬化性粘着剤組成物の耐熱性を評価した。なお、評価基準は以下の通りである。結果を表3〜7に示す。なお、試験環境は、温度23℃〜110℃であった。
−−評価基準−−
◎:70℃超
○:55℃超70℃以下
△:40℃超55℃以下
×:40℃未満
−:評価不可
【0071】
−耐水性(光硬化性粘着剤組成物)−
図8に示すように、粘着性(タック性)で用いた評価サンプルと同様に(
図2に示すように)作製したサンプルを25mm×350mmにカットする。次に、該カットした評価サンプル800の25mm×150mmの領域を、被着体としての50mm×300mmのPP板810に粘着材820で貼りあわせる。次に、貼り合わせ部分(25mm×150mm)に2kgのローラーを1往復かけて、24時間室温に放置する。次に、80℃の熱水に72時間、PP板810に貼り合わせた評価サンプル800を浸漬する。熱水を常温まで冷ます。次に、チャック830にPP板810を取付け、チャック840に未乾燥の評価サンプル800を取付けた(
図8におけるA)。次に、300mm/分で発泡基材/粘着剤界面を剥離させ、剥離挙動が安定したところから、100mmまでの積分平均値を測定値とすることにより、
ORIENTEC製STA−1150を用いて耐熱水剥離試験を行い、光硬化性粘着剤組成物の耐水性を評価した。なお、評価基準は以下の通りである。結果を表3〜7に示す。
−−評価基準−−
☆:5N/25mm超
◎:4N/25mm超5N/25mm以下
○:3N/25mm超4N/25mm以下
△:1N/25mm超3N/25mm以下
×:1N/25mm未満
−:評価不可
【0072】
−曲面追従性(光硬化性粘着剤組成物)−
図9に示すように、粘着性(タック性)で用いた評価サンプルと同様に(
図2に示すように)作製したサンプルを25mm×120mmにカットする。次に、該カットした評価サンプル900の15mm×120mmの領域を、被着体としてのL字型で各面が100mm×100mmのPP板910に貼りあわせる。次に、貼り合わせ部分(5mm×120mm)を指で押さえ圧着し、24時間室温に放置する。次に、80℃のオーブンに24時間、評価サンプル900を浸漬する。評価サンプル900の剥がれの有無を目視で判断する。なお、評価基準は以下の通りである。結果を表3〜7に示す。
−−評価基準−−
○:60分後剥がれなし
×:60分後剥がれ
−:評価不可
【0073】
<単量体混合物(A)及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の混合物の調製>
表1に示す組成及び物性の「単量体混合物(A)及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の混合物」を、下記のように調製した。
【0074】
−合成実施例1−
窒素ガス導入管、還流冷却器、攪拌装置、仕込み口を有する2L四つ口フラスコに、アクリル酸2−エチルヘキシル(炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a))830g、N−ビニルピロリドン(分子内に窒素原子を有する重合性単量体(b))120g、アクリル酸(前記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(c))50g、α−メチルスチレンダイマー(連鎖移動剤(d))1g(重合開始剤の6.5mol倍)を仕込み、窒素ガスでバブリングしながら攪拌し、混合物の温度を50℃に調節した。次に2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−70」、10時間半減期温度30℃)(重合開始剤(e))を0.2g投入した。温度を50℃に保ったまま2時間反応させた後、温度を70℃に昇温し、重合体転化率が約45質量%となる時点で、フラスコ内の給気を窒素から空気に切り替えると共にp−メトキシフェノールを0.5g投入して反応を停止させた。次に、メタクリル酸グリシジル(重合性基導入剤)3g、N,N’−ジメチルベンジルアミン4gを加え、空気でバブリングしたまま90℃で6時間反応させて、単量体混合物(A)及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の混合物P−1を調製した。
得られた混合物P−1は、全反応時間内において急激な発熱は観測されず、安全性に問題なく製造することができた。その他の評価結果は表1に示す。
【0075】
−合成実施例2−
合成実施例1と同様の装置を使用し、アクリル酸2−エチルヘキシル(炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a))250g、アクリル酸n−ブチル(炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a))550g、アクリルアミド(分子内に窒素原子を有する重合性単量体(b))150g、β−CEA(ローディア日華社製)(前記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(c))50g、α−メチルスチレンダイマー(連鎖移動剤(d))1g(重合開始剤の6.5mol倍)を仕込み、窒素ガスでバブリングしながら攪拌し、混合物の温度を50℃に調節した。次に2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−70」、10時間半減期温度30℃)(重合開始剤(e))を0.2g投入した。温度を50℃に保ったまま2時間反応させた後、温度を70℃に昇温し、重合体転化率が約45質量%となる時点で、合成実施例1と同様に反応を停止させた。次に、メタクリル酸グリシジル(重合性基導入剤)2.5gを反応させて、単量体混合物(A)及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の混合物P−2を調製した。
得られた混合物P−2は、全反応時間内において急激な発熱は観測されず、安全性に問題なく製造することができた。その他の評価結果は表1に示す。
【0076】
−合成実施例3−
合成実施例1と同様の装置を使用し、アクリル酸2−エチルヘキシル(炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a))440g、アクリル酸n−ブチル(炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a))400g、メタクリル酸メチル(他の単量体)100g、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(分子内に窒素原子を有する重合性単量体(b))30g、メタクリル酸(前記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(c))30g、α−メチルスチレンダイマー(連鎖移動剤(d))10g(重合開始剤の13.0mol倍)を仕込み、窒素ガスでバブリングしながら攪拌し、混合物の温度を25℃に調節した。次に2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−70」、10時間半減期温度30℃)(重合開始剤(e))を1g投入し、温度を2.5時間かけて50℃に昇温しながら反応させた後、温度を85℃に昇温し、重合体転化率が55質量%となる時点で合成実施例1と同様に反応を停止させた。次に、メタクリル酸グリシジル4.5gを反応させて、単量体混合物(A)及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の混合物P−3を調製した。
得られた混合物P−3は、全反応時間内において急激な発熱は観測されず、安全性に問題なく製造することができた。その他の評価結果は表1に示す。
【0077】
−合成実施例4−
合成実施例1において、メタクリル酸グリシジル3gをアクリル酸グリシジル3gに変更する以外は、合成実施例1と同様にして混合物P−4を得た。
得られた混合物P−4は、全反応時間内において急激な発熱は観測されず、安全性に問題なく製造することができた。その他の評価結果は表1に示す。
【0078】
−合成比較例1−
合成実施例3において、仕込み組成をメタクリル酸メチル(他の単量体)920g、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(分子内に窒素原子を有する重合性単量体(b))30g、アクリル酸(前記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(c))50gに変更した以外は、合成実施例3と同様に調製し、重合体転化率が約50質量%となる時点で反応を停止させた。次に、メタクリル酸グリシジル2.5gを反応させて、単量体混合物(A)及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の混合物P−5を調製した。
得られた混合物P−5は、全反応時間内において急激な発熱は観測されず、安全性に問題なく製造することができた。その他の評価結果は表1に示す。
【0079】
−合成比較例2−
合成実施例1において、仕込み組成をアクリル酸2−エチルヘキシル(炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a))950g、アクリル酸(前記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(c))50gに変更した以外は、合成実施例1と同様に調製し、重合体転化率が約45質量%となる時点で反応を停止させた。次に、メタクリル酸グリシジル2.5gを反応させて、単量体混合物(A)及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の混合物P−6を調製した。
得られた混合物P−6は、全反応時間内において急激な発熱は観測されず、安全性に問題なく製造することができた。その他の評価結果は表1に示す。
【0080】
−合成比較例3−
合成実施例1において、仕込み組成をアクリル酸2−エチルヘキシル(炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a))880g、N−ビニルピロリドン(分子内に窒素原子を有する重合性単量体(b))120gに変更した以外は、合成実施例1と同様に調製し、重合体転化率が約45質量%となる時点で反応を停止させた。次に、メタクリル酸グリシジル2.5gを反応させて、単量体混合物(A)及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の混合物P−7を調製した。
得られた混合物P−7は、全反応時間内において急激な発熱は観測されず、安全性に問題なく製造することができた。その他の評価結果は表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
<粘着付与性樹脂(F)の調製>
表2に示す組成及び物性の粘着付与性樹脂を、下記のように調製した部分重合シロップを用いてさらに重合させることにより重合率100%となるようにして調製した。
−部分重合シロップの調製−
攪拌機と温度計と窒素ガス導入管及び冷却管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、重合性単量体として、表2に示すモノマー組成のモノマー乃至モノマー混合物を投入し、また、分子量調整剤としてn−ドデシルメルカプタン(NDM)0.2gを投入して、窒素気流下で60℃になるまで昇温し加熱を停止した。
【0083】
次いで、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2gを攪拌下に投入し、30分間反応を行い、部分重合シロップを得た。
【0084】
【表2】
但し、表2中、「CHMA」は「シクロへキシルメタクリレート(Tg:66℃)」を示し、「IBOA」は「イソボルニルアクリレート(Tg:88℃)」を示し、「MMA」は「メチルメタクリレート(Tg:105℃)」を示し、「TBMA」は「tert−ブチルメタクリレート(Tg:107℃)」を示し、「TCDA」は「トリシクロデカニルアクリレート(Tg:120℃)」を示し、「TCDMA」は「トリシクロデカニルメタクリレート(Tg:175℃)」を示し、「IBOMA」は「イソボルニルメタクリレート(Tg:180℃)」を示す。
【0085】
表3〜表7に示す処方で各成分を配合し(各成分における値は質量部を表す)、光硬化性粘着剤組成物を調製した。そして、上述した方法により、相溶性、粘着性(タック性)、粘着性(投錨性)、硬化阻害の有無、凝集力(保持力)、耐熱性、耐水性、曲面追従性について測定、評価を行った。その結果を表3〜表7に示す。なお、表3〜表7において、「実」は実施例を示し(例えば、「実1」は実施例1を示し)、「比」は比較例を示す(例えば、「比1」は比較例1を示す)。
なお、表3〜表7において、「−」は、粘着付与性樹脂の相溶性が悪いため、”評価不可”を意味する。
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】
表3〜表7において、使用した材料は以下のとおりである。
(i)単量体混合物(A)及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の混合物
・混合物P−1〜P−7:上述した合成実施例1〜4及び合成比較例1〜3で得られたもの
(ii)イソシアネート化合物(C´)
・L−75C:デスモジュールL−75(C)(住化バイエルウレタン株式会社製:下記式(3)で表されるTMPアダクト体)
・HL:コロネートHL(日本ポリウレタン工業株式会社製:下記式(3)で表されるTMPアダクト体)
・N3200:デスモジュールN3200(住化バイエルウレタン株式会社製:下記式(4)で表されるビューレット体)
・IL1351:デスモジュールIL1351(住化バイエルウレタン株式会社製:下記式(5)で表されるイソシアヌレート体)
・HX:コロネートHX(日本ポリウレタン工業株式会社製:下記式(5)で表されるイソシアヌレート体)
(iii)イソシアネート化合物(C)
・E−14:デスモジュールE−14(住化バイエルウレタン株式会社製:上記式(2)で表されるプレポリマー型トリレンジイソシアネート(TDI)(芳香族系イソシアネート)、重量平均分子量(Mw):1100〜1300)
・E−15:デスモジュールE−15(住化バイエルウレタン株式会社製:上記式(2)で表されるプレポリマー型トリレンジイソシアネート(TDI)(芳香族系イソシアネート)、重量平均分子量(Mw):800〜1000)
・E−21−1:スミジュールE−21(住化バイエルウレタン株式会社製:上記式(2)で表されるプレポリマー型ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(芳香族系イソシアネート)、重量平均分子量(Mw):200〜300)
・SBU0620:SBUイソシアネート0620(住化バイエルウレタン株式会社製:上記式(2)で表されるプレポリマー型ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(芳香族系イソシアネート)、重量平均分子量(Mw):400〜500)
・E−23:デスモジュールE−23(住化バイエルウレタン株式会社製:上記式(2)で表されるプレポリマー型ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(芳香族系イソシアネート)、重量平均分子量(Mw):200〜300)
【0092】
【化4】
(式中、R
4は、分子内にNCO基を2個有するジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を表す。また、複数のR
4は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0093】
【化5】
(式中、R
5は、分子内にNCO基を2個有するジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を表す。また、複数のR
5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0094】
【化6】
(式中、R
6は、分子内にNCO基を2個有するジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を表す。また、複数のR
6は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
(iv)光重合開始剤(D)
・Lucirin TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、BASFジャパン社製
・IRGACURE 184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、chiba社製
(v)塩素化ポリプロピレン(E)
・DX−530P:東洋紡社製 塩素化ポリプロピレン
・DX−523P:東洋紡社製 塩素化ポリプロピレン
(vi)粘着付与性樹脂(F)
・粘着付与性樹脂T−1〜T−11:上述した合成実施例5〜15で得られたもの
【0095】
表3〜表7より、炭素数4以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a)と、分子内に窒素原子を有する重合性単量体(b)と、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)とを含む単量体混合物(A)と、前記単量体混合物(A)における前記単量体(a)、(b)及び(c)を含む単量体の共重合体である(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)と、上記一般式(2)で表されるイソシアネート化合物(C)と、光重合開始剤(D)と、を含む実施例1〜25の光硬化性粘着剤組成物は、凝集力及び耐熱性を向上させつつ、投錨性及び曲面追従性を向上させることができ、優れることが分かる。
【0096】
また、上記一般式(2)で表されるイソシアネート化合物(C)(プレポリマー型のイソシアネート化合物)を用いた実施例1〜25は、TMPアダクト体のイソシアネート化合物(C´)を用いた比較例1〜2、ビューレット体のイソシアネート化合物(C´)を用いた比較例3、及びイソシアヌレート体のイソシアネート化合物(C´)を用いた比較例4〜5とは異なり、長鎖の炭素結合部分(上記一般式(2)におけるP)を有するイソシアネート化合物(C)を用いているので、投錨性及び曲面追従性を向上させることができ、優れることが分かる。
【0097】
また、上記一般式(2)で表されるイソシアネート化合物(C)(プレポリマー型のイソシアネート化合物)を用いた実施例1〜25は、TMPアダクト体のイソシアネート化合物(C´)を用いた比較例1〜2、ビューレット体のイソシアネート化合物(C´)を用いた比較例3、及びイソシアヌレート体のイソシアネート化合物(C´)を用いた比較例4〜5と同様に、ベースポリマー(単量体混合物(A)と(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)との混合物)の活性水素基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等)と末端イソシアネート基(NCO基)が反応するため、凝集力及び耐熱性を向上させることができ、優れることが分かる。
【0098】
また、上記一般式(2)で表されるイソシアネート化合物(C)(プレポリマー型のイソシアネート化合物)及び粘着付与剤(F)を用いた実施例16〜25は、ベースポリマー(単量体混合物(A)と(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)との混合物)、イソシアネート化合物(C)及び粘着付与剤(F)の3成分を含むため、投錨性、凝集力(保持力)、耐熱性を向上させることができ、併せて、耐水性も向上させることができ、優れることが分かる。なお、凝集力(保持力)、耐熱性(軟化点)に関しては、イソシアネート化合物(C)の影響が大きく、投錨性及び耐水性に関しては、イソシアネート化合物(C)及び粘着付与剤(F)の両方の影響がある。