(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
船体に設けられて荷を積載する乗込甲板と、前記船体の船尾部に設けられて前記乗込甲板に対してヒンジ部を介して上下に揺動可能に設置されて下方に揺動した場合に前記乗込甲板の上面に連続するショアランプと、前記船尾部に設けられて前記船体の進行方向を変更する旋回型推進電動機と、を含む船舶において、
前記旋回型推進電動機の駆動源を出力軸が上下方向に延在するように配置し、前記駆動源が配置される機械室を前記乗込甲板よりも上方に隆起させるとともに、前記機械室の位置を避けて前記ショアランプを配置することを特徴とする船舶。
前記機械室を前記船尾部の左右両側にそれぞれ配置し、前記ショアランプを前記船尾部の中央や左右舷の少なくとも一方に配置することを特徴とする請求項1または2に記載の船舶。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0019】
[実施形態1]
図1は、本実施形態に係る船舶の船尾部を示す側面図であり、
図2は、平面図であり、
図3は、背面図である。
【0020】
本実施形態の船舶は、車両などを運搬するもので、自動車運搬船やフェリー、車両を混載する貨物船などの船舶を含む。この船舶において、
図1に示すように、船体1は、乗込甲板(乾舷甲板)2Aが設けられている。乗込甲板2Aは、船体1が水面に浮かんだ状態で船体1の船尾部から船首部に向けて水平に配置され、車両などの荷を積載するものである。また、船体1は、乗込甲板2Aの上方に、上部車両甲板2Bが設けられている。上部車両甲板2Bは、乗込甲板2Aと同様に船体1が水面に浮かんだ状態で船体1の船尾部から船首部に向けて水平に配置され、車両などの荷を積載するものであって、乗込甲板2Aに対してスロープ(図示せず)で連結され、双方で車両が行き来できるように構成されている。
【0021】
また、船体1は、船尾部にショアランプ3が設けられている。ショアランプ3は、
図1〜
図3に示すように、その基端が乗込甲板2Aに対してヒンジ部3aを介して連結され、上下に揺動可能に設置されている。
図1では、ショアランプ3が上方に揺動した形態を示し、
図2では、ショアランプが下方に揺動した形態を示している。そして、ショアランプ3は、
図2に示すように下方に揺動した場合に、乗込甲板2Aの上面に連続するように配置される。
【0022】
また、船体1は、船尾部に、方向変更機4としてアジマス推進器(旋回型推進電動機)41が設けられている。アジマス推進器41は、船体1の下方に突出して水中に配置されるもので、ポッド部41aおよびポッド部41aの側部に設けられたプロペラ41bを有している。ポッド部41aは、上下方向に延在する駆動軸41cの回りに水平方向に360度回転する。そして、アジマス推進器41は、ポッド部41aの回転移動およびプロペラ41bの駆動により船体1を任意の方向に移動させたり、船体1の現在位置を正確に維持したりする。この方向変更機4としてのアジマス推進器41は、船尾部の左右両側にそれぞれ配置されている。なお、本実施形態において、アジマス推進器41は、ポッド部41aにプロペラ41bを駆動する電動機が配置されているものとする。また、船体1は、船体1に対して軸位置が固定された固定軸プロペラ5が設けられている。
【0023】
このような船舶において、アジマス推進器41は、その駆動源43が船体1の内部に配置されている。駆動源43は、電動機が適用される。駆動源43は、
図3に示すように、その出力軸43aがアジマス推進器41の駆動軸41cに直線状に連結されるように出力軸43aを上下方向に延在して配置されている。この駆動源43は、船体1に設けられた機械室44に収容される。
【0024】
機械室44は、その天板44aが乗込甲板2Aの位置よりも上方に位置するように、乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられている。本実施形態においてアジマス推進器41は、船尾部の左右両側にそれぞれ配置されているため、このアジマス推進器41の駆動源43を収容する機械室44は、船尾部の左右両側にて乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられている。また、機械室44は、その天板44aの下面に、当該天板44aを船体1に対して支持する鉄骨梁材6が設けられている。鉄骨梁材6は、船体1の前後方向(船首−船尾の方向)に沿って延在して、船体1の左右方向(船幅方向)に並んで設けられたロンジ材6Aと、船体1の左右方向(船幅方向)に沿って延在して、船体1の前後方向(船首−船尾の方向)に並んで設けられたウェブフレーム6Bとで構成されている。すなわち、機械室44は、その天板44aの高さが、出力軸43aを鉛直にした駆動源43の高さと、鉄骨梁材6の高さとを考慮した高さに設定されることで、乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられている。なお、機械室44は、天板44aと乗込甲板2Aとの間に側板44bが設けられて、乗込甲板2Aの下側の空間と連通する空間として構成されている。また、乗込甲板2Aの下面にも、当乗込甲板2Aを船体1に対して支持する鉄骨梁材6(ロンジ材6A,ウェブフレーム6B)が設けられている。
【0025】
また、機械室44は、
図2および
図3に示すように、天板44aにおいてアジマス推進器41の真上となる部分に開口部7aが形成されている。そして、開口部7aは、水密蓋であるボルテッドハッチ7により開閉可能に構成されている。また、機械室44の天板44aは、
図1に示すように、その上方に上部車両甲板2Bが配置されている。そして、上部車両甲板2Bにおけるボルテッドハッチ7の真上に位置する下面に、吊りピース(図示せず)が設けられている。このような構成とすることで、アジマス推進器41のメンテナンスを行う場合、ボルテッドハッチ7を開けて開口部7aを開放すると、天板44aの上からアジマス推進器41を臨むことができ、吊りピースを用いてアジマス推進器41を吊り上げることができる。
【0026】
また、乗込甲板2Aに設けられるショアランプ3は、乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられた機械室44の天板44a位置(上方位置)を避けて配置される。本実施形態では、ショアランプ3は、機械室44が船尾部の左右両側に設けられているため、
図2に示すように、船体1の船尾部の中央に配置された船尾ショアランプ3Aと、船尾部の右舷(左舷であってもよい)に配置された舷側ショアランプ3Bとを有する。
【0027】
このように、本実施形態の船舶は、船体1に設けられて荷を積載する乗込甲板2Aと、船体1の船尾部に設けられて乗込甲板2Aに対してヒンジ部3aを介して上下に揺動可能に設置されて下方に揺動した場合に乗込甲板2Aの上面に連続するショアランプ3(3A,3B)と、船尾部に設けられて船体1の進行方向を変更するアジマス推進器41(方向変更機4)と、を含む船舶において、アジマス推進器41の駆動源43を出力軸43aが上下方向に延在するように配置し、駆動源43が収容される機械室44を乗込甲板2Aよりも上方に隆起させるとともに、機械室44の上方位置を避けてショアランプ3(3A,3B)を配置する。
【0028】
この船舶によれば、機械室44を乗込甲板2Aよりも上方に隆起させることで、当該機械室44の高さ寸法を乗込甲板2Aの高さに合わせることなく、必要十分に確保することが可能になる。このため、寄航する港の岸壁高さに対応する高さに合うように、船体1に対する乗込甲板2Aの高さが低く設計される場合であっても、機械室44の高さを小さくする必要がない。この結果、アジマス推進器41の駆動源43を出力軸43aが上下方向に延在する縦置きとすることができ、駆動軸41cに対して軸心の方向を変えるギア部を配置する必要がないことから、駆動源43から駆動軸41cへの動力の伝達効率が低下する事態を防ぐことが可能になる。
【0029】
また、本実施形態の船舶は、乗込甲板2Aの下面に、鉄骨梁材6が配置され、当該鉄骨梁材6のロンジ材6Aがショアランプ3の配置位置まで連続して延設される。この船舶によれば、乗込甲板2Aが振動し難くなるなどの乗込甲板2Aへの影響を低減することが可能になる。
【0030】
また、本実施形態の船舶は、機械室44を船尾部の左右両側にそれぞれ配置し、ショアランプ3を、船尾部の中央(船尾ショアランプ3A)や左右舷(舷側ショアランプ3B)の少なくとも一方に配置する。このように、機械室44を船尾部の左右両側にそれぞれ配置した場合、この機械室44の位置を避けるようにショアランプ3を船尾部の中央や左右舷の少なくとも一方に配置することが好ましい。
【0031】
[実施形態2]
図4は、本実施形態に係る船舶の船尾部を示す側面図であり、
図5は、平面図であり、
図6は、背面図である。なお、以下に説明する実施形態2において、上述した実施形態1と同等部分には同一の符号を付して説明する。
【0032】
本実施形態の船舶は、車両などを運搬するもので、自動車運搬船やフェリー、車両を混載する貨物船などの船舶を含む。この船舶において、
図4に示すように、船体1は、乗込甲板(乾舷甲板)2Aが設けられている。乗込甲板2Aは、船体1が水面に浮かんだ状態で船体1の船尾部から船首部に向けて水平に配置され、車両などの荷を積載するものである。また、船体1は、乗込甲板2Aの上方に、上部車両甲板2Bが設けられている。上部車両甲板2Bは、乗込甲板2Aと同様に船体1が水面に浮かんだ状態で船体1の船尾部から船首部に向けて水平に配置され、車両などの荷を積載するものであって、乗込甲板2Aに対してスロープ(図示せず)で連結され、双方で車両が行き来できるように構成されている。
【0033】
また、船体1は、船尾部にショアランプ3が設けられている。ショアランプ3は、
図4〜
図6に示すように、その基端が乗込甲板2Aに対してヒンジ部3aを介して連結され、上下に揺動可能に設置されている。
図4では、ショアランプ3が上方に揺動した形態を示し、
図5では、ショアランプが下方に揺動した形態を示している。そして、ショアランプ3は、
図5に示すように下方に揺動した場合に、乗込甲板2Aの上面に連続するように配置される。
【0034】
また、船体1は、船尾部に、方向変更機4としてアジマス推進器(旋回型推進電動機)41、および方向変更機4として舵取機42が設けられている。アジマス推進器41は、船体1の下方に突出して水中に配置されるもので、ポッド部41aおよびポッド部41aの側部に設けられたプロペラ41bを有している。ポッド部41aは、上下方向に延在する駆動軸41cの回りに水平方向に360度回転する。そして、アジマス推進器41は、ポッド部41aの回転移動およびプロペラ41bの駆動により船体1を任意の方向に移動させたり、船体1の現在位置を正確に維持したりする。この方向変更機4としてのアジマス推進器41は、船尾部の左右両側にそれぞれ配置されている。なお、本実施形態において、アジマス推進器41は、ポッド部41aにプロペラ41bを駆動する電動機が配置されているものとする。舵取機42は、船体1の下方に突出して水中に配置されるもので、船体1の前後方向(船首−船尾の方向)に沿う板状のラダー42aを有し、このラダー42aが、上下方向に延在する舵軸43b(
図6参照)の回りに水平方向に左右所定角度で回転可能にラダーストック42c(
図4参照)により支持され、その回転移動により船体1の進行方向を自在に定めるものである。また、船体1は、船体1に対して軸位置が固定された固定軸プロペラ5が設けられている。
【0035】
このような船舶において、アジマス推進器41は、その駆動源43が船体1の内部に配置されている。駆動源43は、電動機が適用される。駆動源43は、
図6に示すように、その出力軸43aがアジマス推進器41の駆動軸41cに直線状に連結されるように出力軸43aを上下方向に延在して配置されている。この駆動源43は、船体1に設けられた機械室44に収容される。
【0036】
機械室44は、その天板44aが乗込甲板2Aの位置よりも上方に位置するように、乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられている。本実施形態においてアジマス推進器41は、船尾部の左右両側にそれぞれ配置されているため、このアジマス推進器41の駆動源43を収容する機械室44は、船尾部の左右両側にて乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられている。また、機械室44は、その天板44aの下面に、当該天板44aを船体1に対して支持する鉄骨梁材6が設けられている。鉄骨梁材6は、船体1の前後方向(船首−船尾の方向)に沿って延在して、船体1の左右方向(船幅方向)に並んで設けられたロンジ材6Aと、船体1の左右方向(船幅方向)に沿って延在して、船体1の前後方向(船首−船尾の方向)に並んで設けられたウェブフレーム6Bとで構成されている。すなわち、機械室44は、その天板44aの高さが、出力軸43aを鉛直にした駆動源43の高さと、鉄骨梁材6の高さとを考慮した高さに設定されることで、乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられている。なお、機械室44は、天板44aと乗込甲板2Aとの間に側板44bが設けられて、乗込甲板2Aの下側の空間と連通する空間として構成されている。また、乗込甲板2Aの下面にも、当乗込甲板2Aを船体1に対して支持する鉄骨梁材6(ロンジ材6A,ウェブフレーム6B)が設けられている。
【0037】
また、機械室44は、
図5および
図6に示すように、天板44aにおいてアジマス推進器41の真上となる部分に開口部7aが形成されている。そして、開口部7aは、水密蓋であるボルテッドハッチ7により開閉可能に構成されている。また、機械室44の天板44aは、
図4に示すように、その上方に上部車両甲板2Bが配置されている。そして、上部車両甲板2Bにおけるボルテッドハッチ7の真上に位置する下面に、吊りピース(図示せず)が設けられている。このような構成とすることで、アジマス推進器41のメンテナンスを行う場合、ボルテッドハッチ7を開けて開口部7aを開放すると、天板44aの上からアジマス推進器41を臨むことができ、吊りピースを用いてアジマス推進器41を吊り上げることができる。
【0038】
また、乗込甲板2Aに設けられるショアランプ3は、乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられた機械室44の天板44a位置(上方位置)を避けて配置される。本実施形態では、ショアランプ3は、機械室44が船尾部の左右両側に設けられているため、
図5に示すように、船体1の船尾部の中央に配置された船尾ショアランプ3Aと、船尾部の右舷(左舷であってもよい)に配置された舷側ショアランプ3Bとを有する。
【0039】
また、舵取機42は、船体1の船尾部の中央であって、その駆動源43が乗込甲板2Aの下方であって船体1の内部に配置されている。駆動源43は、電動機が適用される。舵取機42の駆動源43は、
図6に示すように、その出力軸43aが舵取機42の舵軸42bに直線状に連結されるように出力軸43aを上下方向に延在して配置されている。本実施形態において、舵取機42は、その駆動源43は、比較的小型のものが適用されている。従って、舵取機42の駆動源43は、乗込甲板2Aを船体1に対して支持する鉄骨梁材6(ロンジ材6A,ウェブフレーム6B)に干渉することなく、出力軸43aを上下方向に延在して配置することが可能である。なお、
図5および
図6に示すように、乗込甲板2Aにおいて、舵取機42の真上となる部分に開口部7aが形成されている。そして、開口部7aは、水密蓋であるボルテッドハッチ7により開閉可能に構成されている。また、乗込甲板2Aは、
図7に示すように、その上方に上部車両甲板2Bが配置されている。そして、上部車両甲板2Bにおけるボルテッドハッチ7の真上に位置する下面に、吊りピース(図示せず)が設けられている。このような構成とすることで、舵取機42のメンテナンスを行う場合、ボルテッドハッチ7を開けて開口部7aを開放すると、天板44aの上から舵取機42を臨むことができ、吊りピースを用いて舵取機42を吊り上げることができる。
【0040】
このように、本実施形態の船舶は、船体1に設けられて荷を積載する乗込甲板2Aと、船体1の船尾部に設けられて乗込甲板2Aに対してヒンジ部3aを介して上下に揺動可能に設置されて下方に揺動した場合に乗込甲板2Aの上面に連続するショアランプ3(3A,3B)と、船尾部に設けられて船体1の進行方向を変更するアジマス推進器41(方向変更機4)と、を含む船舶において、アジマス推進器41の駆動源43を出力軸43aが上下方向に延在するように配置し、駆動源43が収容される機械室44を乗込甲板2Aよりも上方に隆起させるとともに、機械室44の上方位置を避けてショアランプ3(3A,3B)を配置する。
【0041】
この船舶によれば、機械室44を乗込甲板2Aよりも上方に隆起させることで、当該機械室44の高さ寸法を乗込甲板2Aの高さに合わせることなく、必要十分に確保することが可能になる。このため、寄航する港の岸壁高さに対応する高さに合うように、船体1に対する乗込甲板2Aの高さが低く設計される場合であっても、機械室44の高さを小さくする必要がない。この結果、アジマス推進器41の駆動源43を出力軸43aが上下方向に延在する縦置きとすることができ、駆動軸41cに対して軸心の方向を変えるギア部を配置する必要がないことから、駆動源43から駆動軸41cへの動力の伝達効率が低下する事態を防ぐことが可能になる。
【0042】
また、本実施形態の船舶は、乗込甲板2Aの下面に、鉄骨梁材6が配置され、当該鉄骨梁材6のロンジ材6Aがショアランプ3の配置位置まで連続して延設される。この船舶によれば、乗込甲板2Aが振動し難くなるなどの乗込甲板2Aへの影響を低減することが可能になる。
【0043】
また、本実施形態の船舶は、機械室44を船尾部の左右両側にそれぞれ配置し、ショアランプ3を、船尾部の中央(船尾ショアランプ3A)や左右舷(舷側ショアランプ3B)の少なくとも一方に配置する。このように、機械室44を船尾部の左右両側にそれぞれ配置した場合、この機械室44の位置を避けるようにショアランプ3を船尾部の中央や左右舷の少なくとも一方に配置することが好ましい。
【0044】
[実施形態3]
図7は、本実施形態に係る船舶の船尾部を示す側面図であり、
図8は、平面図であり、
図9は、背面図である。なお、以下に説明する実施形態3において、上述した実施形態1や実施形態2と同等部分には同一の符号を付して説明する。
【0045】
本実施形態の船舶は、車両などを運搬するもので、自動車運搬船やフェリー、車両を混載する貨物船などの船舶を含む。この船舶において、
図7に示すように、船体1は、乗込甲板(乾舷甲板)2Aが設けられている。乗込甲板2Aは、船体1が水面に浮かんだ状態で船体1の船尾部から船首部に向けて水平に配置され、車両などの荷を積載するものである。また、船体1は、乗込甲板2Aの上方に、上部車両甲板2Bが設けられている。上部車両甲板2Bは、乗込甲板2Aと同様に船体1が水面に浮かんだ状態で船体1の船尾部から船首部に向けて水平に配置され、車両などの荷を積載するものであって、乗込甲板2Aに対してスロープ(図示せず)で連結され、双方で車両が行き来できるように構成されている。
【0046】
また、船体1は、船尾部にショアランプ3が設けられている。ショアランプ3は、
図7〜
図9に示すように、その基端が乗込甲板2Aに対してヒンジ部3aを介して連結され、上下に揺動可能に設置されている。
図7では、ショアランプ3が上方に揺動した形態を示し、
図8では、ショアランプが下方に揺動した形態を示している。そして、ショアランプ3は、
図8に示すように下方に揺動した場合に、乗込甲板2Aの上面に連続するように配置される。
【0047】
また、船体1は、船尾部に、方向変更機4として舵取機42が設けられている。舵取機42は、船体1の下方に突出して水中に配置されるもので、船体1の前後方向(船首−船尾の方向)に沿う板状のラダー42aを有し、このラダー42aが、上下方向に延在する舵軸43b(
図7および
図9参照)の回りに水平方向に左右所定角度で回転可能にラダーストック42c(
図7参照)により支持され、その回転移動により船体1の進行方向を自在に定めるものである。この舵取機42は、船尾部の左右両側にそれぞれ配置されている。また、船体1は、船体1に対して軸位置が固定された固定軸プロペラ5が設けられている。
【0048】
このような船舶において、舵取機42は、その駆動源43が船体1の内部に配置されている。駆動源43は、電動機が適用される。駆動源43は、
図9に示すように、その出力軸43aが舵取機42の舵軸42bに直線状に連結されるように出力軸43aを上下方向に延在して配置されている。この駆動源43は、船体1に設けられた機械室44に収容される。
【0049】
機械室44は、その天板44aが乗込甲板2Aの位置よりも上方に位置するように、乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられている。本実施形態において舵取機42は、船尾部の左右両側にそれぞれ配置されているため、この舵取機42の駆動源43を収容する機械室44は、船尾部の左右両側にて乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられている。また、機械室44は、その天板44aの下面に、当該天板44aを船体1に対して支持する鉄骨梁材6が設けられている。鉄骨梁材6は、船体1の前後方向(船首−船尾の方向)に沿って延在して、船体1の左右方向(船幅方向)に並んで設けられたロンジ材6Aと、船体1の左右方向(船幅方向)に沿って延在して、船体1の前後方向(船首−船尾の方向)に並んで設けられたウェブフレーム6Bとで構成されている。すなわち、機械室44は、その天板44aの高さが、出力軸43aを鉛直にした駆動源43の高さと、鉄骨梁材6の高さとを考慮した高さに設定されることで、乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられている。なお、機械室44は、天板44aと乗込甲板2Aとの間に側板44bが設けられて、乗込甲板2Aの下側の空間と連通する空間として構成されている。また、乗込甲板2Aの下面にも、当乗込甲板2Aを船体1に対して支持する鉄骨梁材6(ロンジ材6A,ウェブフレーム6B)が設けられている。
【0050】
また、機械室44は、
図8および
図9に示すように、天板44aにおいて舵取機42の真上となる部分に開口部7aが形成されている。そして、開口部7aは、水密蓋であるボルテッドハッチ7により開閉可能に構成されている。また、機械室44の天板44aは、
図7に示すように、その上方に上部車両甲板2Bが配置されている。そして、上部車両甲板2Bにおけるボルテッドハッチ7の真上に位置する下面に、吊りピース(図示せず)が設けられている。このような構成とすることで、舵取機42のメンテナンスを行う場合、ボルテッドハッチ7を開けて開口部7aを開放すると、天板44aの上から舵取機42を臨むことができ、吊りピースを用いて舵取機42を吊り上げることができる。
【0051】
また、乗込甲板2Aに設けられるショアランプ3は、乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられた機械室44の天板44a位置(上方位置)を避けて配置される。本実施形態では、ショアランプ3は、機械室44が船尾部の左右両側に設けられているため、
図8に示すように、船体1の船尾部の中央に配置された船尾ショアランプ3Aと、船尾部の右舷(左舷であってもよい)に配置された舷側ショアランプ3Bとを有する。
【0052】
このように、本実施形態の船舶は、船体1に設けられて荷を積載する乗込甲板2Aと、船体1の船尾部に設けられて乗込甲板2Aに対してヒンジ部3aを介して上下に揺動可能に設置されて下方に揺動した場合に乗込甲板2Aの上面に連続するショアランプ3(3A,3B)と、船尾部に設けられて船体1の進行方向を変更する舵取機42(方向変更機4)と、を含む船舶において、舵取機42の駆動源43を出力軸43aが上下方向に延在するように配置し、駆動源43が収容される機械室44を乗込甲板2Aよりも上方に隆起させるとともに、機械室44の上方位置を避けてショアランプ3(3A,3B)を配置する。
【0053】
この船舶によれば、機械室44を乗込甲板2Aよりも上方に隆起させることで、当該機械室44の高さ寸法を乗込甲板2Aの高さに合わせることなく、必要十分に確保することが可能になる。このため、寄航する港の岸壁高さに対応する高さに合うように、船体1に対する乗込甲板2Aの高さが低く設計される場合であっても、機械室44の高さを小さくする必要がない。この結果、舵取機42の駆動源43を出力軸43aが上下方向に延在する縦置きとすることができ、舵軸42bに対して軸心の方向を変えるギア部を配置する必要がないことから、駆動源43から舵軸42bへの動力の伝達効率が低下する事態を防ぐことが可能になる。
【0054】
また、本実施形態の船舶は、乗込甲板2Aの下面に、鉄骨梁材6が配置され、当該鉄骨梁材6のロンジ材6Aがショアランプ3の配置位置まで連続して延設される。この船舶によれば、乗込甲板2Aが振動し難くなるなどの乗込甲板2Aへの影響を低減することが可能になる。
【0055】
また、本実施形態の船舶は、機械室44を船尾部の左右両側にそれぞれ配置し、ショアランプ3を、船尾部の中央(船尾ショアランプ3A)や左右舷(舷側ショアランプ3B)の少なくとも一方に配置する。このように、機械室44を船尾部の左右両側にそれぞれ配置した場合、この機械室44の位置を避けるようにショアランプ3を船尾部の中央や左右舷の少なくとも一方に配置することが好ましい。
【0056】
[実施形態4]
図10は、本実施形態に係る船舶の船尾部を示す側面図であり、
図11は、平面図である。なお、以下に説明する実施形態4において、上述した実施形態3と同等部分には同一の符号を付して説明する。
【0057】
本実施形態の船舶は、車両などを運搬するもので、自動車運搬船やフェリー、車両を混載する貨物船などの船舶を含む。この船舶において、
図10に示すように、船体1は、乗込甲板(乾舷甲板)2Aが設けられている。乗込甲板2Aは、船体1が水面に浮かんだ状態で船体1の船尾部から船首部に向けて水平に配置され、車両などの荷を積載するものである。また、船体1は、乗込甲板2Aの上方に、上部車両甲板2Bが設けられている。上部車両甲板2Bは、乗込甲板2Aと同様に船体1が水面に浮かんだ状態で船体1の船尾部から船首部に向けて水平に配置され、車両などの荷を積載するものであって、乗込甲板2Aに対してスロープ(図示せず)で連結され、双方で車両が行き来できるように構成されている。
【0058】
また、船体1は、船尾部にショアランプ3が設けられている。ショアランプ3は、
図10および
図11に示すように、その基端が乗込甲板2Aに対してヒンジ部3aを介して連結され、上下に揺動可能に設置されている。
図10では、ショアランプ3が上方に揺動した形態を示し、
図11では、ショアランプが下方に揺動した形態を示している。そして、ショアランプ3は、
図11に示すように下方に揺動した場合に、乗込甲板2Aの上面に連続するように配置される。
【0059】
また、船体1は、船尾部に、方向変更機4として舵取機42が設けられている。舵取機42は、
図10に示すように、船体1の下方に突出して水中に配置されるもので、船体1の前後方向(船首−船尾の方向)に沿う板状のラダー42aを有し、このラダー42aが、上下方向に延在する舵軸43bの回りに水平方向に左右所定角度で回転可能にラダーストック42cにより支持され、その回転移動により船体1の進行方向を自在に定めるものである。この舵取機42は、船尾部の中央に配置されている。また、船体1は、船体1に対して軸位置が固定された固定軸プロペラ5が設けられている。
【0060】
このような船舶において、舵取機42は、その駆動源43が船体1の内部に配置されている。駆動源43は、電動機が適用される。駆動源43は、
図10に示すように、その出力軸43aが舵取機42の舵軸42bに直線状に連結されるように出力軸43aを上下方向に延在して配置されている。この駆動源43は、船体1に設けられた機械室44に収容される。
【0061】
機械室44は、その天板44aが乗込甲板2Aの位置よりも上方に位置するように、乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられている。本実施形態において舵取機42は、船尾部の中央に配置されているため、この舵取機42の駆動源43を収容する機械室44は、船尾部の中央にて乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられている。また、機械室44は、その天板44aの下面に、当該天板44aを船体1に対して支持する鉄骨梁材6が設けられている。鉄骨梁材6は、船体1の前後方向(船首−船尾の方向)に沿って延在して、船体1の左右方向(船幅方向)に並んで設けられたロンジ材6Aと、図には明示しないが、船体1の左右方向(船幅方向)に沿って延在して、船体1の前後方向(船首−船尾の方向)に並んで設けられたウェブフレームとで構成されている。すなわち、機械室44は、その天板44aの高さが、出力軸43aを鉛直にした駆動源43の高さと、鉄骨梁材6の高さとを考慮した高さに設定されることで、乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられている。なお、機械室44は、天板44aと乗込甲板2Aとの間に側板44bが設けられて、乗込甲板2Aの下側の空間と連通する空間として構成されている。また、乗込甲板2Aの下面にも、当乗込甲板2Aを船体1に対して支持する鉄骨梁材6(ロンジ材6A,ウェブフレーム)が設けられている。
【0062】
また、機械室44は、
図11に示すように、天板44aにおいて舵取機42の真上となる部分に開口部7aが形成されている。そして、開口部7aは、水密蓋であるボルテッドハッチ7により開閉可能に構成されている。また、機械室44の天板44aは、
図10に示すように、その上方に上部車両甲板2Bが配置されている。そして、上部車両甲板2Bにおけるボルテッドハッチ7の真上に位置する下面に、吊りピース(図示せず)が設けられている。このような構成とすることで、舵取機42のメンテナンスを行う場合、ボルテッドハッチ7を開けて開口部7aを開放すると、天板44aの上から舵取機42を臨むことができ、吊りピースを用いて舵取機42を吊り上げることができる。
【0063】
また、乗込甲板2Aに設けられるショアランプ3は、乗込甲板2Aよりも上方に隆起して設けられた機械室44の天板44a位置(上方位置)を避けて配置される。本実施形態では、機械室44が船尾部の中央に設けられているため、
図11に示すように、船体1の船尾部の左右舷(左右舷の少なくとも一方でもよい)に配置された舷側ショアランプ3Bを有する。
【0064】
このように、本実施形態の船舶は、船体1に設けられて荷を積載する乗込甲板2Aと、船体1の船尾部に設けられて乗込甲板2Aに対してヒンジ部3aを介して上下に揺動可能に設置されて下方に揺動した場合に乗込甲板2Aの上面に連続するショアランプ3(3B)と、船尾部に設けられて船体1の進行方向を変更する舵取機42(方向変更機4)と、を含む船舶において、舵取機42の駆動源43を出力軸43aが上下方向に延在するように配置し、駆動源43が収容される機械室44を乗込甲板2Aよりも上方に隆起させるとともに、機械室44の上方位置を避けてショアランプ3(3B)を配置する。
【0065】
この船舶によれば、機械室44を乗込甲板2Aよりも上方に隆起させることで、当該機械室44の高さ寸法を乗込甲板2Aの高さに合わせることなく、必要十分に確保することが可能になる。このため、寄航する港の岸壁高さに対応する高さに合うように、船体1に対する乗込甲板2Aの高さが低く設計される場合であっても、機械室44の高さを小さくする必要がない。この結果、舵取機42の駆動源43を出力軸43aが上下方向に延在する縦置きとすることができ、舵軸42bに対して軸心の方向を変えるギア部を配置する必要がないことから、駆動源43から舵軸42bへの動力の伝達効率が低下する事態を防ぐことが可能になる。
【0066】
また、本実施形態の船舶は、乗込甲板2Aの下面に、鉄骨梁材6が配置され、当該鉄骨梁材6のロンジ材6Aがショアランプ3の配置位置まで連続して延設される。この船舶によれば、乗込甲板2Aが振動し難くなるなどの乗込甲板2Aへの影響を低減することが可能になる。
【0067】
また、本実施形態の船舶は、機械室44を船尾部の中央に配置し、ショアランプ3を船尾部の左右舷(舷側ショアランプ3B)の少なくとも一方に配置する。このように、機械室44を船尾部の中央に配置した場合、この機械室44の位置を避けるようにショアランプ3を船尾部の左右舷の少なくとも一方に配置することが好ましい。
【0068】
なお、本実施形態において、方向変更機4として舵取機42を有する船舶について説明したが、方向変更機4として実施形態1にて説明したアジマス推進器41であってもよい。