特許第6021761号(P6021761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021761
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】ガスセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/18 20060101AFI20161027BHJP
   G01F 1/696 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   G01N27/18
   G01F1/696 Z
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-175449(P2013-175449)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-45515(P2015-45515A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中野 洋
(72)【発明者】
【氏名】松本 昌大
(72)【発明者】
【氏名】浅野 哲
(72)【発明者】
【氏名】田代 忍
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−151795(JP,A)
【文献】 特開2002−373694(JP,A)
【文献】 特開平05−273168(JP,A)
【文献】 特開平06−281607(JP,A)
【文献】 特開平10−197305(JP,A)
【文献】 特開2001−272370(JP,A)
【文献】 特開2011−123076(JP,A)
【文献】 特開2010−261846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/24
G01F 1/696
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の濃度を計測する濃度センサと気体の圧力を計測する圧力センサとを備えたガスセンサ装置において、
ハウジング内に空気流から遮蔽された計測室を設け、前記計測室に前記濃度センサと前記圧力センサとを配置し、前記圧力センサの信号により前記濃度センサの信号を調整する処理回路部を設け
前記処理回路部に圧力センサの圧力信号の応答速度を濃度センサの濃度信号の応答速度に近付ける応答速度調整部を設け、
前記応答速度調整部は、前記圧力センサからの圧力信号から前記濃度センサの濃度信号の応答速度に対応する周波数よりも高い高周波数信号成分を除去又は減衰する機能を有し、
前記濃度信号は前記応答速度調整部によって調整された後の圧力信号に基づいて補正されることを特徴とするガスセンサ装置。
【請求項2】
請求項に記載のガスセンサ装置において、
前記処理回路部に、前記濃度センサからの濃度信号を入力しデジタル値に変換する第1のA/D変換器と、前記圧力センサからの圧力信号を入力しデジタル値に変換する第2のA/D変換器とを備え、
前記応答速度調整部はデジタル値に変換された圧力信号から前記高周波数信号成分を除去又は減衰する機能を有し、
前記応答速度調整部によって前記高周波信号成分が除去又は減衰された後の圧力信号に基づいて、前記第1のA/D変換器でデジタル値に変換された濃度信号に対して補正演算する演算器を備えたことを特徴とするガスセンサ装置。
【請求項3】
請求項に記載のガスセンサ装置において、
前記計測室を測定対象となる気体が流れる外部空間に連通する連通路を設け、前記気体の流れに沿ったハウジング面に前記連通路を開口したことを特徴とするガスセンサ装置。
【請求項4】
請求項に記載のガスセンサ装置において、
前記濃度センサは、発熱抵抗体の放熱量が気体の濃度によって変化することを利用して、気体の濃度を計測することを特徴とするガスセンサ装置。
【請求項5】
請求項に記載のガスセンサ装置において、
前記濃度センサは、前記発熱抵抗体を半導体基板に形成した薄肉部上に形成したことを特徴とするガスセンサ装置。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のガスセンサ装置において、
流量センサ素子及び吸気温度センサ素子を前記ハウジングと一体化して備えると共に前記濃度センサとして湿度を計測する湿度センサを備え、前記湿度センサの湿度信号または前記圧力信号を用いて前記流量センサ素子の流量信号に対し補正を加えることを特徴とするガスセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体の量(濃度)を検出するためのセンサ素子を備えるガスセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気体の量を計測するガスセンサ装置は、種々の技術分野で使用されており、例えば自動車においては、内燃機関を最適に運転するために湿度を計測する湿度センサや、吸気通路の燃料濃度などを計測する濃度センサなどがある。このようなガスセンサ装置は、水素を燃料とする内燃機関や燃料電池においても使用される。
【0003】
例えば内燃機関の吸気通路に用いるガスセンサ装置には、高精度、耐汚損性、耐衝撃性、耐熱性が要求される。さらに近年では、燃焼室の吸排気バルブの開閉タイミングの可変により、燃焼効率などを向上させる可変バルブ機構が用いられている。可変バルブ機構を搭載した内燃機関では、吸気通路内の吸気の流速や圧力の変動が激しくなる。さらにこのような吸気の状態は内燃機関の気筒数、吸気通路の長さ・形状によって様々である。したがって、このような吸気通路内の環境においても吸気に関する所量を高精度に計測することが要求される。
【0004】
吸気通路内の吸気の流速や圧力の変動に対応する技術として、特許文献1,2に記載のものが知られている。特許文献1(特開2013-36852号公報)は、ガスに含まれる特定ガス成分の濃度である特定成分濃度に応じた出力値を出力するガスセンサ(濃度センサ)とガスの圧力を測定する圧力センサとを備え、濃度センサ値と圧力センサ値とから仮特定成分濃度を演算し、さらに関数による補正値を用いて仮特定成分濃度を補正する従来技術である(要約参照)。なお、特許文献1では、圧力センサと濃度センサである酸素センサとは内燃機関の吸気配管(吸気通路)の上下流方向(吸気の流れ方向)に分けて配置されている(段落0029参照)。特許文献2(特開2010-151795号公報)は、バイパス通路よりも管壁から遠ざけた計測室内に圧力センサ素子、湿度センサ素子、温度センサ素子などの環境センサ素子を少なくとも一つ設置することで、気体の流れによる影響や管壁からの熱による影響を低減する従来技術である(段落0015−0027参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-36852号公報
【特許文献2】特開2010-151795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、濃度センサの位置と圧力センサの位置とが離れているため、高流量域や高回転域などの運転状態によって濃度センサと圧力センサとがそれぞれ異なる圧力下に位置することになり正確な補正ができない。したがって内燃機関の様々な運転条件下において良好な補正効果が得られにくい。内燃機関が一定の回転数で運転している条件であれば、回転数と圧力センサ値と濃度センサ値との各信号を用いて最適な補正値となるように補正値を適合させることが可能であるが、加速時や減速時のように回転数が変化する状況下では補正精度が低下する。さらに高精度化するためには、より多くの検出信号(吸入空気量、スロットル開度、回転数、吸・排気バルブの状態)が必要であり、適合させる工数が膨大になる。また車種ごとに(吸気管長さ、センサ位置、吸気形状)に補正値の最適化が必要になる。
【0007】
特許文献2では、計測室内に環境センサ素子を収納することで吸入空気の流れとともに飛来するオイルや塵埃などによる環境センサ素子の汚損を低減している。気体の流れの影響に関しては考慮されているが、濃度センサの出力を圧力センサの出力で補正することについては考慮されておらず、圧力変動に対する配慮が十分とは言えない。
【0008】
特許文献2には環境センサ素子の一つである湿度センサ素子について具体的な記載はないが、例えば特許文献1にはセラミック基板に感湿膜を形成し電気抵抗及び静電容量を検知する方式が記載されている(特許文献1の段落0058参照)。このような静電容量式のセンサは、感湿膜中に水分を吸収したり、感湿膜中から水分が離脱することにより、感湿膜の誘電率が変化する原理を利用している。このため、湿度変化に対する応答速度が数秒〜数十秒であり、比較的低速応答である。一方、圧力センサは圧力によるダイアフラム変形を検出するため、高速応答である特徴がある。このように、それぞれ応答速度が異なるセンサ値を用いて補正を行う場合、過補正や不要な補正が生じる可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、内燃機関の様々な運転条件下において良好な補正効果が得られるガスセンサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明のガスセンサ装置は、気体の濃度を計測する濃度センサと気体の圧力を計測する圧力センサとを備えたセンサ装置において、空気流から隔離された計測室を設け、この計測室に濃度センサと圧力センサとを配置し、圧力センサの信号により濃度センサの信号を調整する処理回路部を設けこの処理回路部に圧力センサの検出信号の応答速度を濃度センサの検出信号の応答速度に近付ける応答速度調整部を設ける。この応答速度調整部は圧力センサからの圧力信号から濃度センサの濃度信号の応答速度に対応する周波数よりも高い高周波数信号成分を除去又は減衰する機能を有し、濃度信号は応答速度調整部によって調整された後の圧力信号に基づいて補正される
更に、本発明における濃度センサとして、加熱抵抗体の放熱量が気体の濃度によって変化することを利用して、気体の濃度を計測する方式であればより効果的である。
更に、本発明における濃度センサとして、半導体基板に薄肉部を形成し、この薄肉部に加熱抵抗体を形成することで、より効果的である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、濃度センサと圧力センサとが同じ圧力となる空間に設置されるため、正確な圧力値を用いて正確な補正を行うことができる。これにより、内燃機関の様々な運転条件下において良好な補正効果が得られ、ガスセンサ装置の高精度化が可能である。
【0012】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例としてのガスセンサ装置およびガスセンサ装置の取付け構造を示す断面図。
図2図1のII−II線断面図。
図3図1のIII−III線断面図。
図4図2に図示されたセンサパッケージの内部構造を示す平面図。
図5】本実施例におけるセンサ信号の処理形態を示すブロック図。
図6A】湿度センサ素子と圧力センサ素子とを吸気通路の上下流方向に離して配置した場合の簡易モデルの図。
図6B】本実施例のガスセンサ装置を内燃機関の吸気通路に設置した簡易モデルの図。
図7A図6Aのシステムにおける湿度センサ素子の位置における圧力と圧力センサ素子の位置における圧力とを示すグラフ。
図7B図6Bのシステムにおける湿度センサ素子の位置における圧力と圧力センサ素子の位置における圧力とを示すグラフ。
図8】静電容量型の湿度センサと圧力センサの応答性を比較したグラフ。
図9】本発明の実施例2に係る熱式湿度センサを示す平面図。
図10図9のX−X線断面図。
図11】熱式湿度センサと圧力センサの応答性を比較したグラフ。
図12】本発明の実施例3に係るガスセンサ装置およびガスセンサ装置の取付け構造を示す断面図。
図13図12における湿度センサ素子部の拡大図。
図14図13のXIV−XIV線断面図。
図15A】モールドパッケージ化したセンサパッケージの外観を示す図。
図15B】モールドパッケージ化したセンサパッケージの構造図。
図16】実施例3におけるセンサ信号の処理形態を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
以下、図1図8を参照して、本発明に係るガスセンサ装置の第一の実施例について説明する。
【0016】
図1に、本実施例におけるガスセンサ装置とその取付け構造を、断面図で示す。
ガスセンサ装置1は、内燃機関の吸気通路2の内側に突出するように取り付けられている。ガスセンサ装置1のハウジング3の内部には、気体の量を検出する検出素子(濃度センサ素子)としての湿度センサ素子4と、吸気通路2の圧力を検出するための圧力センサ素子5とが設置される。また、ハウジング3の内部には吸気通路2を流れる吸気6の流れから遮蔽された計測室7が設けられている。計測室7には、計測室7の室内を吸気通路2と連通し吸気通路2を流れる吸気(空気)6を取り込む連通路8が形成されている。湿度センサ素子4と圧力センサ素子5とは、計測室7の内部に設置される。すなわち湿度センサ素子4と圧力センサ素子5とは同一の圧力下に設置されている。また、湿度センサ素子4と圧力センサ素子5とは、同一の連通路8から取り込まれた吸気に晒されている。計測室7および連通路8により、湿度センサ素子4に吸気通路2を流れる吸気6が直接流入することを低減している。すなわち、計測室7は吸気通路2を流れる吸気6の流れ(空気流)から隔離されており、この計測室7に湿度センサ素子4と圧力センサ素子5とを配置することにより、湿度センサ素子4と圧力センサ素子5とが吸気通路2を流れる吸気6の流れに晒されるのを防止している。これにより、湿度センサ素子4周辺の空気流動が低減され、安定した気体中において湿度を計測することで高精度な計測ができる。
【0017】
なお、湿度センサ素子4は、水蒸気の濃度を検出する素子であり、濃度センサに含まれるものである。以下、濃度センサを湿度センサとして説明する。
【0018】
連通路8は、ハウジング3の底部3jに設けられている。ハウジング3の底部3jは、吸気通路2を流れる吸気6の流れ方向に沿った、吸気6とほぼ平行に配置された側面となっている。吸気2の取入口である連通路8は、底部3jから計測室7に向かって、吸気2の流れ方向に対してほぼ垂直に延在している。連通路8は、連通する方向に垂直な断面形状が円形でも矩形でもよく、あるいはスリット状や複数の孔であってもよい。連通路8の容積は計測室7の容積より十分小さい方が好ましい。この連通路8の形状により、計測室7への吸気6の直接流入を低減している。
【0019】
図2図1のII−II線断面図を、また図3図1のIII−III線断面図を示す。
図2に図示されるように、湿度センサ素子4は、支持部材としてのセンサパッケージ10に搭載されている。センサパッケージ10は、射出成形技術により湿度センサ素子4を封止樹脂により封止してパッケージ化したものである。湿度センサ素子4の検出部11は、封止樹脂から露出してパッケージ化されている。これにより、センサパッケージ10に一体化された湿度センサ素子4がハウジング3の計測室7内に設置された状態で、湿度センサ素子4の検出部11が計測室7内に露出し、計測室7内の空気の湿度を計測することが可能となっている。
【0020】
圧力センサ素子5は、図2に図示された湿度センサ素子と同様に、射出成形技術によりセンサパッケージ10にパッケージ化される。ただし圧力センサ素子5の表面は圧力により変形する保護膜で覆われていても良い。これにより、センサパッケージ10に一体化された圧力センサ素子5がハウジング3の計測室7内に設置され、圧力センサ素子の検出部が計測室7内の空気の圧力を計測することが可能となっている。
【0021】
図2図3に図示されるように、ハウジング3はベース3aとカバー3bとにより構成されている。湿度センサ素子4及び圧力センサ素子5を内蔵するセンサパッケージ10は、ベース3aとカバー3bで覆われる。ベース3a及びカバー3bを型成形した後、接着または接合することにより、計測室7と連通路8とが形成される。
【0022】
図4に、センサパッケージ10の内部構造を示す。
湿度センサ素子4及び圧力センサ素子5と共に、リードフレーム12a、12b、12c、12d、半導体チップ14、およびワイヤ13a、13b、13c、13d、13eが封止樹脂15により封止されて、センサパッケージ10として一体化されている。湿度センサ素子4及び圧力センサ素子5は、リードフレーム12a上に接着され固定されている。湿度センサ素子4と圧力センサ素子5とは同一の支持部材(リードフレーム12a)上に接着されている。
【0023】
湿度センサ素子4の電極(図示せず)は、ワイヤボンディング法を用いて、ワイヤ13aによりリードフレーム12bに接続されている。湿度センサ素子4のグランド電極は、ワイヤ13aによりリードフレーム12aに接続されている。リードフレーム12bは、ワイヤ13bを介して半導体チップ14の入力電極(図示せず)に電気的に接続されている。圧力センサ素子5の電極(図示せず)は、ワイヤボンディング法を用いて、ワイヤ13cによりリードフレーム12cに接続されている。リードフレーム12cは、ワイヤ13dを介して半導体チップ14の入力電極(図示せず)に電気的に接続されている。
【0024】
リードフレーム12dは、ワイヤ13eにより半導体チップ14の出力電極に接続されている。半導体チップ14のグランド電極は、リードフレーム12aにワイヤ13cにより接続されている。
【0025】
半導体チップ14は半導体プロセスにより製造された半導体集積チップであり、ガスセンサ装置1の処理回路を構成する。この半導体チップ(処理回路部)14は、湿度センサ素子4の駆動回路、湿度を計測するための検出回路を備えている。また半導体チップ14は、圧力センサ素子5の駆動回路、圧力を計測するための検出回路を備えている。半導体チップ14は湿度センサ素子4及び圧力センサ素子5を接着した同一のリードフレーム12a上に接着により固定される。半導体チップ14の電源線及び検出した信号(出力信号線)はワイヤ13eを介してリードフレーム12dに接続されている。リードフレーム12dの端部は、外部接続用の端子としてセンサパッケージ10の外部に引き出されている。ワイヤ13a、13eにより湿度センサ素子4及び半導体チップ14のグランド電極に接続されたリードフレーム12aの端部12aは、リードフレーム12dの端部と共にセンサパッケージ10の外部に引き出されている。
【0026】
本実施例では、リードフレーム12aを共通接地端子とするとともに、湿度センサ素子4、圧力センサ素子5及び半導体チップ14を搭載する部材としても用いている。上述した如く、湿度センサ素子4の検出部11a、圧力センサ素子5の検出部11bおよびリードフレーム12d、12aの端部が露出するように、湿度センサ素子4、圧力センサ素子5、リードフレーム12a〜12d、半導体チップ14およびワイヤ13a〜13eが封止樹脂15により封止されてパッケージ化されている。
【0027】
図5に、半導体チップ14におけるセンサ信号の処理形態を示す。
センサチップ14には、湿度センサ4からのアナログ信号を入力しデジタル値に変換するA/D変換器AD1と、圧力センサ5からのアナログ信号を入力しデジタル値に変換するA/D変換器AD2が備わる。AD1においてデジタル値に変換された湿度信号は信号処理部FLT1により、信号ノイズが除去され演算器PUに入力される。AD2においてデジタル値に変換された圧力信号は信号処理部FLT2により、信号ノイズが除去され演算器PUに入力される。PUでは、湿度信号に対して補正演算が行われる。補正演算では、圧力信号値とあらかじめ記憶装置MMRに保存された定数を基に補正量が決定され、湿度信号に補正量を加える。その後、演算器PUで補正された湿度信号がOUTPUTとして出力される。
【0028】
本実施例のガスセンサ装置1の作用・効果を説明する。図6Aに、湿度センサ素子4と圧力センサ素子5とを吸気通路2の上下流方向に離して配置した場合の簡易モデルを示す。図6Bに、本実施例のガスセンサ装置1を内燃機関の吸気通路2に設置した場合の簡易モデルを示す。
【0029】
図6Aにおいて、吸気通路2内には吸気6が流れ、吸気通路2の左側は大気圧P0とし、湿度センサ素子4が設置される箇所の圧力(静圧)をP4、圧力センサ素子5が設置された箇所の圧力(静圧)をP5とする。図6Aのシステムでは、吸気通路2の左端から湿度センサ素子4までの距離L4と、吸気通路2の左端から圧力センサ素子5までの距離L5とは、それぞれ異なっている。図6Bに示した本発明を適用したシステムでは、ガスセンサ装置1までの距離がLであり、湿度センサ素子4と圧力センサ素子5とは共に計測室8に設置されている。このとき、計測室8には一つの連通路8を介して吸気通路2から空気が取り込まれ、計測室8の室内の圧力は均一になっている。したがって、圧力に関して言えば、吸気通路2の左端から湿度センサ素子4までの距離と、吸気通路2の左端から圧力センサ素子5までの距離とは同一の距離Lになる。
【0030】
次に、図6A及び図6Bの各システムについて、湿度センサ素子4の受ける圧力と圧力センサ素子5の受ける圧力とを比較した計算結果について説明する。図7A図6Aのシステムにおける圧力、図7Bに本発明を適用したシステムにおける圧力を示す。
【0031】
図7Aでは、吸気通路2の位置L5、L4により特に100kg/h以上の高流量域において圧力P4及びP5が異なる。図6Aのシステムにおいて、圧力センサ素子5の検出圧力P5を用いて湿度センサ素子4の圧力依存を補正する場合、両センサ素子4、5の設置位置の違いにともなうP5とP4との関係を考慮した補正演算が必要になる。さらに、内燃機関の機種によって吸気通路の形状や長さ、内径が様々であり、機種毎に補正演算の定数を設定する必要がある。さらに、図7Aは流量が一定で定常状態における吸気圧力の計算結果であり、実際の内燃機関の吸気通路内の空気には、吸気バルブの開閉にともなう圧力変動、さらには逆流を伴う脈動が発生する。このような様々な内燃機関の運転条件に応じた圧力P4と圧力P5との関係を予め設定し、補正演算すると、補正定数や演算量が膨大となる。また、内燃機関の運転状態(回転数、スロットルバルブの状態、吸排気バルブの状態等)を常時モニターし、各条件において補正定数を選択して演算することが必要であり、複雑なシステムとなる。
【0032】
これに対し本発明を適用したシステムでは、図6Bに示すように、湿度センサ素子4と圧力センサ素子5とは共通の連通路8を介して空気が取り込まれる計測室7に設置されており、湿度センサ素子4の位置おける圧力P4と圧力センサ素子5の位置おける圧力P5とは共にガスセンサ装置1までの距離Lの位置における圧力値になる。これにより、図7Bに示すように、湿度センサ素子4と圧力センサ素子5とは同一の圧力状態に常に維持することができる。したがって、様々な内燃機関の運転条件において圧力P4と圧力P5とは一致するため、圧力P4と圧力P5との関係を予め設定する必要がない。また内燃機関の運転状態(回転数、スロットルバルブの状態、吸排気バルブの状態等)の常時モニターが不要であり、簡易なシステムで高精度な湿度計測が可能である。
【0033】
以下、本実施例における湿度センサ素子4として、感湿膜中の水分の増減による誘電率の変化を検出する静電容量型の湿度センサ素子を用いた場合について、より好適な補正方法について説明する。
【0034】
図8に、静電容量型の湿度センサの応答性と一般的な圧力センサの応答性とを比較した図を示す。
静電容量式の応答速度は数秒(1Hzのオーダー)程度であるのに対して、圧力センサは数ミリ秒(1kHzのオーダー)の応答速度である。内燃機関を高回転で運転させると100Hz程度の吸気脈動が発生する。静電容量型の湿度センサは応答速度が遅いため、100Hzの吸気脈動による圧力変化に追従できない。これに対し、圧力センサは十分に追従する。吸気脈動時に応答速度の速い圧力センサを用いて湿度センサを補正すると、不要な補正を加えてしまうことになり、補正された湿度信号の精度が低下する可能性がある。すなわち、補正により湿度センサの信号に高周波信号を重ねた信号となってしまう。
【0035】
上記の課題に対して、図5に示した圧力センサ素子5の検出信号を、信号処理部FLT2により信号処理する方法が有効である。信号処理部FLT2の処理内容としては、図8に示した湿度センサ素子4の応答速度を超える圧力信号の高周波成分を除去または減衰することが望ましい。高周波成分を除法または減衰する方法としては、時定数を湿度センサ素子4の応答速度に合わせたローパスフィルタを用いることができる。また、湿度センサ素子4の応答速度にあわせた時間平均により平均化処理することができる。これにより、高周波脈動時の不要な補正を低減することができ、高精度な湿度信号(出力)を得ることができる。
【0036】
すなわち、本実施例では、湿度センサ素子4の検出信号と圧力センサ素子5の検出信号との間の応答速度の差を調整する応答速度調整手段(応答速度調整部)を備えており、この応答速度調整手段は信号処理部FLT2によって構成される。応答速度調整手段は圧力センサの検出信号(圧力信号)の応答速度を濃度センサの検出信号(濃度信号)の応答速度に近付ける。応答速度調整手段としてローパスフィルタを用いる場合は、カットオフ周波数を湿度センサ素子4の応答速度に対応する周波数f4と圧力センサ素子5の応答速度に対応する周波数f5との間(f4以上かつf5より小、好ましくはf4よりも高くかつf5よりも低い周波数)に設定する。このとき、カットオフ周波数はf5側よりもf4側に近付けることが好ましい。また、平均化処理の場合も、周波数f4と周波数f5との間に存在する変動分を除去または減衰するように処理を行う。上述の説明では、周波数f4及び周波数f5を図8の応答特性に現れる折れ点としているが、現実にはこのような折れ点が存在しないため、通常、最大値から3dB減衰した周波数をそれぞれ周波数f4及び周波数f5とする。
【実施例2】
【0037】
図9乃至図11を参照して、本発明を適用してなるさらに好適な実施例2のガスセンサ装置を説明する。
【0038】
実施例2の特徴としては、湿度センサ素子として絶対湿度の計測が可能な熱式湿度センサを適用した点である。
【0039】
図9に、本発明の効果を得るのに好適な熱式湿度センサの平面図を示す。図10に、図9のセンサ素子4bのX−X線断面図を示す。
【0040】
本実施例の熱式湿度センサの湿度センサ素子4bは、単結晶シリコンで形成された基板16を有している。基板16には、空洞部17が形成されており、この空洞部17は絶縁膜18aで覆われ、絶縁膜18a上に発熱体(発熱抵抗体)19、20が形成されている。発熱体19、20は空洞部17内の絶縁膜18a上に形成される。さらに、発熱体19、20を保護するために表面が絶縁膜18bで覆われる。また、発熱体19、20に電圧、電流の供給、取り出しなどのための電極21a〜21dが形成される。さらに、電極21a〜21dは加熱制御装置(図示なし)に金線ボンディングワイヤーやリードフレームなどにより電気的に接続される。
【0041】
発熱体19、20としては、抵抗温度係数が高い材料として、例えば、白金(Pt)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)等が選定され、絶縁層18a、18bとしては酸化シリコン(SiO2)と窒化シリコン(Si3N4)とが単層あるいは積層構成にて選定される。また、絶縁層18a、18bには、ポリイミドなどの樹脂材料やセラミック、ガラスなどを組み合わせて選定することもできる。また、電極21a〜21dとしては、アルミニウム(Al)または金(Au)等が選定される。
【0042】
発熱体19、20、空洞部4、絶縁膜18a、18bおよび電極10a〜10fは、フォトリソグラフィーを利用した半導体微細加工技術、異方性エッチング技術を用いて形成される。
【0043】
以下、本実施例における熱式湿度センサの測定原理を説明する。
【0044】
発熱抵抗体19は、400℃〜500℃程度に加熱制御される。また、発熱抵抗体20は200℃から300℃に加熱制御される。空気の湿度が変化すると空気の熱伝導率が変化し、発熱抵抗体19から空気へ放熱される熱量が変化する。この放熱量の変化を検出することにより絶対湿度の測定ができる。発熱抵抗体20は、発熱抵抗体19の周囲を一定温度に保持するための補助的な発熱体である。発熱抵抗体20により、センサ素子4bが設置される空気の温度が変化しても発熱体19の近傍は一定温度に保持することができ、湿度計測における温度特性を向上することができる。本実施例では発熱抵抗体20を設ける構成としたが、発熱抵抗体19のみでも湿度計測は可能である。一つの発熱抵抗体で構成する場合、必要に応じて温度センサなどを用いて空気の温度変化による計測誤差を別途補償することにより、温度特性の補償が可能である。
【0045】
本実施例における熱式湿度センサの特徴としては、空洞部17を形成し薄膜部上に発熱抵抗体19を設けていることから熱容量が小さく、空気の熱伝導率の変化に対して高速に応答することができる。その他の湿度センサ素子として、上述した静電容量型の素子があるが、基板上に形成した感湿膜中の水分の増減による誘電率の変化を検出する原理であるため応答が遅い。例えば、湿度変化による応答速度として、静電容量型では5〜10秒程度であるのに対して、熱式湿度センサでは数十ミリ秒以下である。
【0046】
本実施例に示す熱式湿度センサを用いたガスセンサ装置の作用・効果を説明する。上述したように熱式湿度センサは高速応答である特徴があるが、圧力変化に対しても同様に高速に応答する。この湿度センサ素子の応答性は、圧力センサを用いた圧力補正において重要となる。
【0047】
図11に、熱式湿度センサの応答性と一般的な圧力センサの応答性とを比較した図を示す。
熱式湿度センサ素子4bと圧力センサとは数ミリから数十ミリ秒(100Hz〜1kHz)の応答速度である。したがって熱式湿度センサと圧力センサとはほぼ同等の応答性である。内燃機関を高回転で運転させると100Hz程度の吸気脈動が発生するが、熱式湿度センサ4b及び圧力センサは十分に追従する。したがって熱式湿度センサ素子4bを用いることにより、高周波の吸気脈動時においても圧力センサ5の検出値を用いて熱式湿度センサ素子4bの検出値を補正することができる。その結果、高周波の吸気脈動時においても高精度な絶対湿度の瞬時値を計測することが可能である。
【0048】
さらに、図5に示した湿度センサ素子4の検出信号の信号処理部FLT1や圧力センサ素子5の検出信号の信号処理部FLT2を用いればさらに高精度化に効果がえられる。熱式湿度センサ4bの素子自体は高速であるが、圧力センサ素子5と微小に応答速度に差が生じる。そのため、信号処理部FLT1、FLT2を用いて、圧力センサ素子5の応答速度を湿度センサ素子4bの応答速度に近づける。または、湿度センサ素子4bの応答速度を圧力センサ素子5の応答速度に近づける処理を行う。これにより圧力センサ素子5と熱式湿度センサ素子4bとの特性が一致し、補正が簡易になり高精度化が図れる。特に、自動車の内燃機関ではその運転状態に応じて、発熱抵抗体19の制御特性を変えることにより、熱式湿度センサ素子4bの応答速度が遅くなるように制御する場合があり得る。このような場合は、熱式湿度センサ素子4bの応答速度と圧力センサ素子5の応答速度との差が大きくなる。そこで、圧力センサ素子5の応答速度を湿度センサ素子4bの応答速度に近づける応答速度調整手段(応答速度調整部)としての信号処理部FLT2が有効になる。
【0049】
本実施例では、湿度センサ素子4として熱式湿度センサ素子4bを用いており、それ以外の構成は実施例1と同様に実施することができる。この場合、熱式湿度センサ素子4bの応答速度を考慮して、処理回路14を構成する各部の状態が調整されることは言うまでもない。
【実施例3】
【0050】
以下、内燃機関の吸気通路に設置される空気流量計と、温度、湿度などの環境センサとを一体化した複合センサ装置に、本発明を適用した実施例を説明する。本実施例では、一例として吸気流量センサと吸気温度センサと湿度センサと圧力センサとを一体化した複合センサ装置について説明する。
【0051】
図12に、本実施例の複合センサ装置22とその取付け構造を断面図で示す。図12において、複合センサ装置22は、内燃機関の吸気通路2の内部に突出するように取りつけられている。複合センサ装置22のハウジング3の内部には、湿度センサ素子4、圧力センサ素子5、流量センサ素子23、吸気温度センサ素子24が搭載されている。流量センサ素子23としては半導体基板に形成した薄膜部に発熱体(発熱抵抗体)を設け、発熱体の放熱量または発熱体周辺の温度分布の変化から流量を計測する熱式の素子が用いられる。吸気温度センサ素子24としては、サーミスタや測温抵抗体などが用いられる。これらの湿度センサ素子4、圧力センサ素子5、流量センサ素子23、吸気温度センサ素子24は同一のセンサパッケージ10に一体化されている。
【0052】
ハウジング3には吸気通路2の空気を分流する副通路25が形成されており、副通路25内に流量センサ素子23が露出するように配置されている。吸気温度センサ素子24がハウジング3の外へ突出するようにセンサパッケージ10の一部をビーム形状に成型し、ビームの先端部に吸気温度センサ素子24を配置する。
【0053】
図13に、図12において湿度センサ素子4および圧力センサ素子5が形成された箇所の拡大図を示す。
湿度センサ素子4および圧力センサ素子5は、ハウジング3の内部に設けた計測室7(第1空洞部)に配置する。計測室7はハウジングの内部に設けた膨張室26(第2空洞部)に連通部27を介して連通する。膨張室26には吸気通路2へ開口する連通路8が設けられる。連通路8は、ハウジング3の吸気通路2の流れに沿った面(側面)に設ける。連通路8から湿度センサ素子4までの容積変化としては、第1実施例と同様に、連通路8により吸気通路2への開口部が絞られ、膨張室6により容積が膨らみ、連通部7により容積が絞られ計測室5により容積が膨らむ構成である。
【0054】
図14に、図13のXIV−XIV線断面図を示す。
図14において、湿度センサ素子4及び圧力センサ素子5は、支持部材としてのセンサパッケージ10により固定されている。支持部材10としては、射出成形技術により製造したモールドパッケージを用いている。湿度センサ素子4の検出部11は、パッケージから露出するように形成されている。支持部材10はベース3aとカバー3bとで覆われる。ベース3aとカバー3bとによってハウジング3を形成している。ベース3a及びカバー3bを成型、接着または接合することにより、計測室7、膨張室26、連通部27、連通路8が形成される。
【0055】
次に、モールドパッケージ化したセンサパッケージ10の構造を説明する。
【0056】
図15Aに、センサパッケージ10の外観を示す。
湿度センサ素子4、圧力センサ素子5及び流量センサ素子21は検出部が露出するようにモールド樹脂によりパッケージ化する。吸気温度センサ素子24はパッケージの一部を突出させたビーム28の先端部に埋め込まれる。パッケージ内部には、これらの湿度センサ素子4、圧力センサ素子5、流量センサ素子23、吸気温度センサ素子22の駆動、検出、補正を行うための半導体チップ(処理回路部)14が搭載されている。これらの素子への電源供給や、半導体チップ14で検出した信号はリードフレーム12d、12aの一部をパッケージ10から露出させた端子から出力される。
【0057】
図15Bに、センサパッケージ10の内部構造を示す。
湿度センサ素子4、圧力センサ素子5、流量センサ素子21及び半導体チップ14は、リードフレーム12a上に接着固定される。吸気温度センサ素子24はビーム28と供に延設したリードフレーム12eの先端部に設置される。湿度センサ素子4の電極はボンディングワイヤー13fにより半導体チップ14に電気的に接続される。圧力センサ素子5の電極はボンディングワイヤー13gにより半導体チップ14に電気的に接続される。また、流量センサ素子23も同様にボンディングワイヤー13hにより半導体チップ14に接続される。吸気温度センサ素子24は、リードフレーム12eと半導体チップ14をボンディングワイヤー13iにより接続することによって半導体チップ14に電気的に接続される。
【0058】
半導体チップ14の電源及び検出した信号はボンディングワイヤー13jを介してリードフレーム12d、12aに接続され、パッケージ10の外部に電極が取り出される。本実施例ではリードフレーム12aを共通接地端子とするとともに湿度センサ素子4、圧力センサ素子5、流量センサ素子21及び半導体チップ14を搭載する部材としても用いている。
【0059】
図16に、本実施例の半導体チップ14におけるセンサ信号の処理形態を示す。
半導体チップ14には、湿度センサ4からのアナログ信号を入力しデジタル値に変換するA/D変換器AD1と、圧力センサ素子5からのアナログ信号を入力しデジタル値に変換するA/D変換器AD2とが備わる。AD1においてデジタル値に変換された湿度信号は信号処理部FLT1により信号ノイズが除去され、演算器PUに入力される。AD2においてデジタル値に変換された圧力信号は信号処理部FLT2により信号ノイズの除去と上述した応答速度調整とが行われ、演算器PUに入力される。更に、流量センサ素子21からのアナログ信号を入力しデジタル値に変換するA/D変換器AD3、吸気温度センサ素子24からのアナログ信号を入力しデジタル値に変換するA/D変換器AD4が搭載されている。PUでは、湿度信号に対して補正演算が行われる。補正演算では、圧力信号値とあらかじめ記憶装置MMRに保存された定数とを基に補正量が決定され、湿度信号に補正量を加える。その後、演算器PUで補正された湿度信号がOUTPUTとして出力される。本実施例では、各センサによって様々な情報を計測可能であり、これらのセンサ信号を出力するための出力回路MPを備えている。出力回路MPはいずれかのセンサ信号を選択し出力するマルチプレクサ機能を備えている。または、一つの出力信号線に複数のセンサ信号や電源電圧を重畳させる機能を備えている。
【0060】
本実施例の処理回路14においても、実施例1及び実施例2で説明したような湿度センサ素子4の検出信号と圧力センサ素子5の検出信号との応答速度差を調整する処理が行われる。
【0061】
本実施例では流量センサ素子21、吸気温度センサ素子24、湿度センサ素子4(4b)および圧力センサ素子5を複合した構成であることから、半導体チップ14にデジタル補正機能を備えることにより、各センサ素子の信号を相互に補正し、高精度化することが可能である。例えば、流量センサ素子21の信号に対し、湿度依存性、圧力依存性の補正を加えることが可能である。
【0062】
さらには、湿度センサ素子4と流量センサ素子21とが複合されていることから、空気流量に加えて、空気に含まれる水分の流れ込み量を高精度に計測することもできる。特に、湿度センサ素子4として熱式湿度センサ素子4bを用いることにより、絶対湿度の計測が容易であり、空気に含まれる水分の流れ込み量をさらに高精度に計測し、内燃機関の燃焼制御を最適化することもできる。
【0063】
また、熱式湿度センサ素子4bは高温環境や高湿環境での特性に優れることから、より過酷な環境においてガスセンサ装置の高精度化、高信頼化が可能である。例えば、吸気通路2に過給器が搭載された内燃機関において、過給器の下流側で加圧や減圧が繰り返されるとともに、オイルなどの汚損物質が浮遊する通路内に搭載することが可能である。
【0064】
上述した各実施例によれば、濃度センサ(湿度センサを含む)と圧力センサとが同じ圧力となる空間に設置されるため、正確な圧力値を用いて正確な補正が可能である。したがって内燃機関の様々な運転条件下において良好な補正効果が得られ、ガスセンサ装置の高精度化が可能である。さらに、ガスセンサ装置単体で圧力補正が可能であるため、ガスセンサ装置を内燃機関へ適合させるための工数を削減できる。また吸気管長さ、センサ位置、吸気形状等が異なる車種ごとにガスセンサ装置を適合させるための工数を削減できる。
【0065】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0066】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【0067】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…センサ装置、2…吸気通路、3…ハウジング、3a…ベース、3b…カバー、4,4b…湿度センサ素子、5…圧力センサ素子、6…吸気、7…連通路、8…気体取入口、10…センサパッケージ、11…検出部、12…リードフレーム、13…ワイヤ、14…半導体チップ、15…封止樹脂、16…基板、17…空洞部、18…絶縁膜、19,20…発熱体、21…電極、22…複合センサ装置、23…流量センサ素子、24…吸気温度センサ素子、25…副通路、26…膨張室、27…連通部、28…ビーム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16