(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ソースおよびドレイン電極は、前記活性層上に形成された第2の導電膜からなる第1のソースおよびドレイン電極と、第3の導電膜からなるとともに前記第1のソースおよびドレイン電極上に形成された第2のソースおよびドレイン電極とを備える請求項1または2に記載の薄膜トランジスタ。
前記第2の導電膜としてTiが用いられたときは、前記Tiが酸化した結果としてのTiOからなり、前記ソースおよびドレイン電極以外の領域に形成されたin−situ保護層をさらに備える、請求項3に記載の薄膜トランジスタ。
前記下部保護層が100℃から250℃までの範囲の温度にて、10Åから100Åまでの範囲の膜厚となるように形成される請求項7または8に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
前記第2の導電膜を酸化することによりin−situ保護層を形成するステップを更に備え、前記ソース及びドレイン電極としてTiが用いられたときは、該in−situ保護層が、TiOからなり、且つ、該ソースおよびドレイン電極以外の領域に形成され、
前記in−situ保護層として用いられるように、前記第2の導電膜の前記Tiを前記TiOに酸化させる、請求項9に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
前記下部保護層を形成した後に、200℃から300℃までの範囲の温度にて該下部保護層に対して熱処理を行うステップを更に備える請求項9に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、情報ディスプレイへの関心が高まり、携帯可能な情報媒体を利用しようとする要求が高まるにつれて、既存の表示装置であるブラウン管(Cathode Ray Tube; CRT)に代わる軽量、薄型のフラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display; FPD)に関する研究及び商業化が重点的に行われている。特に、このようなフラットパネルディスプレイのうち、液晶表示装置(Liquid Crystal Display; LCD)は、液晶の光学的異方性を利用して画像を表示する装置であって、解像度、カラー表示、画質などに優れており、ノートパソコンやデスクトップパソコンのモニタなどに盛んに適用されている。
【0003】
液晶表示装置は、カラーフィルタ基板と、アレイ基板と、前記カラーフィルタ基板と前記アレイ基板との間に形成された液晶層とを含む。
【0004】
液晶表示装置に主として用いられる駆動方式であるアクティブマトリクス(Active Matrix; AM)方式は、スイッチング素子として非晶質シリコン薄膜トランジスタ(Amorphous Silicon Thin Film Transistor; a-Si TFT)を用いて画素部の液晶を駆動する方式である。
【0005】
以下、
図7を参照して一般的な液晶表示装置について詳細に説明する。
【0006】
図7は、一般的な液晶表示装置の構造を概略的に示す分解斜視図である。
【0007】
同図に示すように、一般的な液晶表示装置は、カラーフィルタ基板5と、アレイ基板10と、カラーフィルタ基板5とアレイ基板10との間に形成された液晶層30とを含む。
【0008】
カラーフィルタ基板5は、赤(R)、緑(G)、青(B)の色を実現する複数のサブカラーフィルタ7で構成されたカラーフィルタCと、サブカラーフィルタ7を区分して液晶層30を透過する光を遮断するブラックマトリクス6と、液晶層30に電圧を印加する透明な共通電極8とからなる。
【0009】
また、アレイ基板10は、縦横に配列されて複数の画素領域Pを定義する複数のゲートライン16及びデータライン17と、ゲートライン16とデータライン17との交差領域に形成されたスイッチング素子である薄膜トランジスタTと、画素領域P上に形成された画素電極18とからなる。
【0010】
カラーフィルタ基板5とアレイ基板10とは、画像表示領域の外郭に形成されたシーラント(図示せず)により対向して貼り合わせられて液晶パネルを構成し、カラーフィルタ基板5とアレイ基板10との貼り合わせは、カラーフィルタ基板5又はアレイ基板10に形成された貼り合わせキー(図示せず)を用いて行う。
【0011】
一方、前述した液晶表示装置は、軽量、低消費電力という利点から最も注目されているが、発光素子ではなく、受光素子であるため、明るさ、コントラスト比(明暗比)、視野角などに技術的限界があり、これらの欠点を克服する新しいディスプレイ素子の開発が盛んに行われている。
【0012】
新しいフラットパネルディスプレイの1つである有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode; OLED)は、自発光型であるため、液晶表示装置に比べて視野角やコントラスト比などに優れ、バックライトを必要としないので軽量、薄型が可能であり、消費電力面でも有利であるという利点がある。また、直流低電圧駆動が可能であり、応答速度が速く、特に製造コスト面で有利であるという利点がある。
【0013】
近年、有機ELディスプレイの大面積化に関する研究が盛んに行われており、これを達成するために、有機発光ダイオードの駆動トランジスタとして、定電流特性を備えて安定した動作及び耐久性を実現する薄膜トランジスタの開発が求められている。
【0014】
前述した液晶表示装置に用いられる非晶質シリコン薄膜トランジスタは、低温工程で製造することができるが、移動度が非常に低く、定電流バイアス条件を満たさない。それに対して、多結晶シリコン薄膜トランジスタは、移動度が高く、定電流バイアス条件を満たす反面、均一な特性の確保が難しく、大面積化が困難であり、高温工程を必要とする。
【0015】
そこで、活性層を酸化物半導体で形成した酸化物薄膜トランジスタが開発されているが、酸化物半導体を既存のボトムゲート構造の薄膜トランジスタに適用した場合、ソース/ドレイン電極のエッチング工程で酸化物半導体が損傷して変性を起こすという問題があった。
【0016】
図8は、一般的な酸化物薄膜トランジスタの構造を概略的に示す断面図である。
【0017】
同図に示すように、一般的な酸化物薄膜トランジスタにおいては、基板10上にゲート電極21及びゲート絶縁層15が形成され、ゲート絶縁層15上に酸化物半導体からなる活性層24が形成され、活性層24上にソース/ドレイン電極22、23が形成される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の好ましい実施の形態による酸化物薄膜トランジスタ及びその製造方法について、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように添付図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
本発明の利点及び特徴、並びにそれらを達成する方法は、添付図面及び後述する実施の形態によりさらに明確になるであろう。しかし、本発明は、後述する実施の形態に限定されるものではなく、様々な形態で実現することができる。後述する実施の形態は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に本発明の範疇を完全に理解させるために提供されるものであり、本発明の範疇は、特許請求の範囲により定められるべきである。なお、明細書全体にわたって、同一の構成要素には同一の符号を付す。図面において、層及び領域の大きさや相対的な大きさなどは、より明確な説明のために誇張することもある。
【0040】
素子又は層が他の素子又は層「上」もしくは「の上部」に存在するということは、素子又は層が他の素子又は層の直上にある場合だけでなく、中間にさらに他の素子又は層が存在する場合をも含む。それに対して、素子又は層が他の素子又は層「の直上」もしくは「のすぐ上」に存在するということは、中間にさらに他の素子又は層が存在しないことを示す。
【0041】
空間的に相対的な用語である「下」、「下部」、「上」、「上部」などは、図示のように1つの素子又は構成要素と他の素子又は構成要素との相関関係を容易に説明するために用いられる。空間的に相対的な用語は、図示の方向に加え、使用時や動作時の素子又は構成要素の様々な方向を含む用語として理解されるべきである。例えば、図示の素子をひっくり返すと、他の素子の「下」にあると記載されている素子の場合、他の素子の「上」にあることになる。つまり、例示的な用語である「下」は、下方向と上方向の両方を含むといえる。
【0042】
本明細書で用いられる用語は、実施の形態を説明するためのもので、本発明を限定するものではない。本明細書で用いられる単数の表現は、特に断らない限り、複数の表現を含む。本明細書で用いられる「含む」や「構成される」などの用語は、明細書に記載された素子、構成要素、段階及び/又は動作が存在することを指定しようとするもので、1つ又はそれ以上の他の素子、構成要素、段階及び/又は動作の存在や付加可能性を排除するものではない。
【0043】
図1は、本発明の第1の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタの構造を概略的に示す断面図であり、非晶質亜鉛酸化物系半導体を活性層に用いた酸化物薄膜トランジスタの構造を示す。
【0044】
同図に示すように、本発明の第1の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、所定の基板110上に形成されたゲート電極121と、ゲート電極121が形成された基板110上に形成されたゲート絶縁層115aと、ゲート絶縁層115a上に形成され、非晶質亜鉛酸化物系半導体からなる活性層124と、活性層124の所定領域に電気的に接続されるソース/ドレイン電極122、123とを含む。
【0045】
このような本発明の第1の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタにおいては、ソース/ドレイン電極122、123のパターニング時に発生する前記非晶質亜鉛酸化物系半導体、すなわち活性層124の損傷を防止すると共に、活性層124とソース/ドレイン電極122、123との接触抵抗を最小限に抑えるために、ソース/ドレイン電極122、123を二重層構造で形成する。
【0046】
すなわち、本発明の第1の実施の形態によるソース/ドレイン電極122、123は、上部層に形成され、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体との接触抵抗に関係なく比抵抗が低い銅、金、モリブデンなどの金属からなる第2のソース/ドレイン電極122b、123bと、活性層124と接触する下部層に形成され、第2のソース/ドレイン電極122b、123bとのウェットエッチング時の選択性を有し、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体との接触抵抗が低いチタン、モリブデンチタンなどのチタン合金、モリブデンなどの金属からなる第1のソース/ドレイン電極122a、123aとからなるようにしてもよい。
【0047】
ここで、第1のソース/ドレイン電極122a、123aは、ドライエッチングが要求される金属の厚さを最小化することにより、第1のソース/ドレイン電極122a、123aのドライエッチング中に発生する活性層124の損傷を最小限に抑えることができる。
【0048】
このような本発明の第1の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、非晶質亜鉛酸化物系半導体を用いて活性層124を形成することにより、移動度が高く、定電流バイアス条件を満たすと共に、均一な特性が確保されるので大面積ディスプレイに適用できるという利点がある。
【0049】
亜鉛酸化物(ZnO)は、酸素含有量によって導電性、半導体性及び抵抗性の3つの性質を全て実現できる物質であり、非晶質亜鉛酸化物系半導体を用いて活性層124を形成した酸化物薄膜トランジスタは、液晶表示装置や有機ELディスプレイを含む大面積ディスプレイに適用できるという利点がある。
【0050】
また、近年、透明電子回路に多大な関心と活動が集中しているが、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体を用いて活性層124を形成した酸化物薄膜トランジスタは、移動度が高いと共に、低温製作が可能であるため、透明電子回路に使用できるという利点がある。
【0051】
特に、本発明の第1の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、前記亜鉛酸化物(ZnO)にインジウム(In)やガリウム(Ga)などの重金属を含有するa−IGZO半導体で活性層124を形成することを特徴とする。
【0052】
前記a−IGZO半導体は、透明であり、可視光線を通過させることができ、また、前記a−IGZO半導体で製造された酸化物薄膜トランジスタは、1〜100cm
2/Vsの移動度を有し、非晶質シリコン薄膜トランジスタに比べて移動度が高い特性を有する。
【0053】
また、前記a−IGZO半導体は、広いバンドギャップを有するため、色純度の高いUV発光ダイオード(Light Emitting Diode; LED)、白色LEDや、その他の部品を製造でき、低温工程が可能であるため、軽く柔軟な製品を生産できるという特徴を有する。
【0054】
さらに、前記a−IGZO半導体で製造された酸化物薄膜トランジスタは、非晶質シリコン薄膜トランジスタと同様に均一な特性を有するため、部品構造も非晶質シリコン薄膜トランジスタのように簡単であり、大面積ディスプレイに適用できるという利点がある。
【0055】
このような特徴を有する本発明の第1の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、スパッタリング時の反応ガス中の酸素濃度を調節することにより、活性層124のキャリア濃度を調節し、薄膜トランジスタの素子特性を調節することを特徴とする。一例として、活性層124は、酸素濃度1〜10%の条件下で蒸着したa−IGZO半導体で形成してもよい。
【0056】
さらに、本発明の第1の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、ソース/ドレイン電極122、123を二重層以上の多層構造にし、上部層金属として前記a−IGZO半導体との接触抵抗に関係なく比抵抗が低い物質を選択し、下部層は薄く形成することにより、ドライエッチングによる酸化物半導体の損傷を最小限に抑えることを特徴とする。
【0057】
ただし、ソース/ドレイン電極122、123を多層構造にしても、酸化物半導体の損傷が完全に防止されるわけではなく、一部の活性層124が損傷して欠陥が生じる可能性が依然として存在する。
【0058】
そこで、本発明の第1の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタにおいては、表面処理による欠陥領域の安定化に加え、上部保護層を用いる欠陥領域の安定化を図るが、欠陥領域を改善又は復元するために保護層を二重にし、下部保護層115bは欠陥を改善できるように所定条件で蒸着し、上部保護層115cは外部からの影響を最小限に抑えられるように所定条件で蒸着する。
【0059】
すなわち、下部保護層115bは、第1のソース/ドレイン電極122a、123aのパターニング時にドライエッチングにより酸素が足りなくなったバックチャネル領域のキュア(curing)のために、酸素(好ましくは1E+20/cm
2以上)と微量の水素(好ましくは1E+20/cm
2以下)とを含む絶縁膜からなり、一例として、TiOx、TaOx、AlOxなどのMOx(M:金属)又はSiOxが挙げられる。ここで、多孔性絶縁層を形成するために、蒸着温度は250℃以下であることが好ましく、一例として、100℃〜250℃の温度で10Å〜100Åの厚さになるように形成してもよい。このような条件で下部保護層115bを蒸着した後、200℃〜300℃の温度で追加熱処理を行うようにしてもよい。
【0060】
また、上部保護層115cは、薄膜トランジスタを外部環境から完全に遮断する層であり、SiO
2を含む高密度膜からなるようにしてもよい。
【0061】
以下、このように構成される本発明の第1の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタの製造方法について、
図2A〜
図2Fを参照して詳細に説明する。
【0062】
図2A〜
図2Fは、
図1に示す本発明の第1の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタの製造工程を順次示す断面図である。
【0063】
図2Aに示すように、透明な絶縁物質からなる基板110上に所定のゲート電極121を形成する。
【0064】
ここで、本発明による酸化物薄膜トランジスタに適用される非晶質亜鉛酸化物系複合半導体は、低温蒸着が可能であるので、プラスチック基板、ソーダライムガラスなど、低温工程に適用可能な基板を使用してもよい。また、非晶質特性を示すので、大面積ディスプレイ用基板を使用してもよい。
【0065】
ゲート電極121は、基板110の全面に第1の導電膜を蒸着し、フォトリソグラフィ工程(第1のマスク工程)で選択的にパターニングすることにより形成する。
【0066】
ここで、前記第1の導電膜は、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、タングステン(W)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、白金(Pt)、タンタル(Ta)などの低抵抗の不透明な導電物質で形成してもよく、インジウム錫酸化物(ITO(Indium Tin Oxide))、インジウム亜鉛酸化物(IZO(Indium Zinc Oxide))などの透明な導電物質で形成してもよく、前記導電物質が2種以上積層された多層構造で形成してもよい。
【0067】
次に、
図2Bに示すように、ゲート電極121が形成された基板110の全面に、シリコン窒化膜(SiNx)、シリコン酸化膜(SiO
2)などの無機絶縁膜又はハフニウム(Hf)オキシド、アルミニウムオキシドなどの高誘電率酸化膜からなるゲート絶縁層115aを形成する。
【0068】
ゲート絶縁層115aは、化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition; CVD)又はプラズマ化学気相蒸着(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition; PECVD)により形成してもよい。
【0069】
そして、ゲート絶縁層115aが形成された基板110の全面に、非晶質亜鉛酸化物系半導体を蒸着して所定の非晶質亜鉛酸化物系半導体層を形成し、フォトリソグラフィ工程(第2のマスク工程)で選択的にパターニングすることにより、ゲート電極121の上部に前記非晶質亜鉛酸化物系半導体からなる活性層124を形成する。
【0070】
ここで、前記非晶質亜鉛酸化物系複合半導体、特にa−IGZO半導体は、ガリウム酸化物(Ga
2O
3)、インジウム酸化物(In
2O
3)及び亜鉛酸化物(ZnO)の複合ターゲットを用いてスパッタリング方法により形成してもよく、その他に、化学気相蒸着や原子層蒸着(Atomic Layer Deposition; ALD)などの化学蒸着方法を用いてもよい。ただし、本発明はこれらに限定されるものではなく、活性層124はMaMbMcOd(Ma,Mb,Mc:金属)の酸化物系半導体からなるようにしてもよい。
【0071】
また、前記a−IGZO半導体は、ガリウム、インジウム及び亜鉛の原子比がそれぞれ1:1:1、2:2:1、3:2:1、4:2:1などである複合酸化物ターゲットを用いて、非晶質亜鉛酸化物系半導体層を形成してもよい。
【0072】
このような本発明の第1の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタにおいては、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体層を形成するためのスパッタリング時の反応ガス中の酸素濃度を調節することにより、活性層124のキャリア濃度を調節するが、酸素濃度1〜10%の条件で均一な素子特性を確保することができる。
【0073】
次に、
図2Cに示すように、活性層124が形成された基板110の全面に、第2の導電膜120及び第3の導電膜130を形成する。
【0074】
ここで、第2の導電膜120としては、下部層の第1のソース/ドレイン電極を形成するために、その上部の第2のソース/ドレイン電極とのウェットエッチング時の選択性を有し、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体との接触抵抗が低いチタン、モリブデンチタンなどのチタン合金、モリブデンなどの金属を使用してもよい。また、第2の導電膜120は、前記チタン、モリブデンチタンなどのチタン合金、モリブデンなどの金属に少なくとも1つの他の導電物質が積層された多層構造で形成してもよい。
【0075】
ここで、本発明の第1の実施の形態による第2の導電膜120は、約50〜200Åの薄厚に形成し、ドライエッチングを用いる場合は、約50〜300Åの薄厚に形成することにより、ドライエッチングによる酸化物半導体の損傷を最小限に抑えることができる。
【0076】
また、第3の導電膜130としては、上部層の第2のソース/ドレイン電極を形成するために、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体との接触抵抗に関係なく比抵抗が低い銅、金、モリブデンなどの金属を使用してもよい。
【0077】
ここで、活性層124が形成された基板110上に第2の導電膜120を蒸着する前に、酸素プラズマ処理などの所定の表面処理を行ってもよいが、これは、第2の導電膜120としてチタンを選択した場合、前記チタンの強い酸化性により前記非晶質亜鉛酸化物系半導体の表面に余剰酸素を供給するためである。
【0078】
次に、
図2Dに示すように、フォトリソグラフィ工程(第3マスク工程)で第3の導電膜130を選択的にパターニングすることにより、第2の導電膜120上に第3の導電膜130からなる第2のソース/ドレイン電極122b、123bを形成する。
【0079】
ここで、第3の導電膜130のエッチングとしては、大面積及び均一度のためにウェットエッチングを用いることが好ましい。
【0080】
そして、その下部の第2の導電膜120を選択的にパターニングすることにより、第2の導電膜120からなる第1のソース/ドレイン電極122a、123aを形成する。ここで、第2の導電膜120のエッチングとしては、ドライエッチングを用いてもよく、前述したように、約50〜300Åの薄厚に形成することにより、ドライエッチングによる酸化物半導体の損傷を最小限に抑えることができる。
【0081】
次に、
図2Eに示すように、ソース/ドレイン電極122、123が形成された基板110の全面に、第2の導電膜120のドライエッチングによるバックチャネルの損傷をキュアするために、下部保護層115bを形成する。
【0082】
すなわち、前述したように、下部保護層115bは、第1のソース/ドレイン電極122a、123aのパターニング時にドライエッチングにより酸素が足りなくなったバックチャネル領域のキュアのために、酸素(好ましくは1E+20/cm
2以上)と微量の水素(好ましくは1E+20/cm
2以下)とを含む絶縁膜からなり、一例として、TiOx、TaOx、AlOxなどのMOx(M:金属)又はSiOxが挙げられる。
【0083】
ここで、多孔性絶縁層を形成するために、蒸着温度は250℃以下であることが好ましく、一例として、100℃〜250℃の温度で10Å〜100Åの厚さになるように形成してもよい。このような条件で下部保護層115bを蒸着した後、200℃〜300℃の温度で追加熱処理を行うようにしてもよい。
【0084】
次に、
図2Fに示すように、下部保護層115bが形成された基板110の全面に、薄膜トランジスタを外部環境から完全に遮断するために、上部保護層115cを形成する。
【0085】
ここで、上部保護層115cは、SiO
2を含む高密度膜からなるようにしてもよい。
【0086】
このように、本発明の第1の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、欠陥領域を改善又は復元するために、保護層(下部保護層115b及び上部保護層115c)を二重にすることを特徴とする。
【0087】
一方、前記ソース/ドレイン電極の下部層をTiで形成した場合、これをTiOに酸化させてin situ保護層として用いることにより、工程を単純化すると共に、接触抵抗を最小限に抑えることができるが、これを以下の本発明の第2の実施の形態により詳細に説明する。
【0088】
図3は、本発明の第2の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタの構造を概略的に示す断面図である。本発明の第2の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、ソース/ドレイン電極の下部層をTiで形成し、これをTiOに酸化させてin situ保護層として用いることを除いては、本発明の第1の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタと同様に構成される。
【0089】
同図に示すように、本発明の第2の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、所定の基板210上に形成されたゲート電極221と、ゲート電極221が形成された基板210上に形成されたゲート絶縁層215aと、ゲート絶縁層215a上に形成され、非晶質亜鉛酸化物系半導体からなる活性層224と、活性層224の所定領域に電気的に接続されるソース/ドレイン電極222、223とを含む。
【0090】
このような本発明の第2の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、前述した本発明の第1の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタと同様に、非晶質亜鉛酸化物系半導体を用いて活性層224を形成することにより、移動度が高く、定電流バイアス条件を満たすと共に、均一な特性が確保されるので大面積ディスプレイに適用できるという利点がある。
【0091】
また、本発明の第2の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、前記亜鉛酸化物にインジウムやガリウムなどの重金属を含有するa−IGZO半導体で活性層224を形成することを特徴とする。
【0092】
さらに、本発明の第2の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、スパッタリング時の反応ガス中の酸素濃度を調節することにより、活性層224のキャリア濃度を調節し、薄膜トランジスタの素子特性を調節することを特徴とする。一例として、活性層224は、酸素濃度1〜10%の条件下で蒸着したa−IGZO半導体で形成してもよい。
【0093】
さらに、本発明の第2の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタにおいては、ソース/ドレイン電極222、223のパターニング時に発生する前記非晶質亜鉛酸化物系半導体、すなわち活性層224の損傷を防止すると共に、活性層224とソース/ドレイン電極222、223との接触抵抗を最小限に抑えるために、ソース/ドレイン電極222、223を二重層構造で形成する。
【0094】
すなわち、本発明の第2の実施の形態によるソース/ドレイン電極222、223は、前述した本発明の第1の実施の形態と同様に、上部層に形成され、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体との接触抵抗に関係なく比抵抗が低い銅、金、モリブデンなどの金属からなる第2のソース/ドレイン電極222b、223bと、活性層224と接触する下部層に形成され、第2のソース/ドレイン電極222b、223bとのウェットエッチング時の選択性を有し、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体との接触抵抗が低いチタンからなる第1のソース/ドレイン電極222a、223aとからなるようにしてもよい。
【0095】
特に、本発明の第2の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、ソース/ドレイン電極222、223を二重層以上の多層構造で形成することにより、上部層金属として前記a−IGZO半導体との接触抵抗に関係なく比抵抗が低い物質を選択し、前記ソース/ドレイン電極の下部層をTiで形成した場合、これをTiOに酸化させてin situ保護層215として用いることを特徴とする。
【0096】
さらに、本発明の第2の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタにおいては、欠陥領域を改善又は復元するために保護層を二重にし、下部保護層215bは欠陥を改善できるように所定条件で蒸着し、上部保護層215cは外部からの影響を最小限に抑えられるように所定条件で蒸着する。
【0097】
すなわち、下部保護層215bは、酸素が足りなくなったバックチャネル領域のキュアのために、酸素(好ましくは1E+20/cm
2以上)と微量の水素(好ましくは1E+20/cm
2以下)とを含む絶縁膜からなり、一例として、TiOx、TaOx、AlOxなどのMOx(M:金属)又はSiOxが挙げられる。ここで、多孔性絶縁層を形成するために、蒸着温度は250℃以下であることが好ましく、一例として、100℃〜250℃の温度で10Å〜100Åの厚さになるように形成してもよい。このような条件で下部保護層215bを蒸着した後、200℃〜300℃の温度で追加熱処理を行うようにしてもよい。
【0098】
また、上部保護層215cは、薄膜トランジスタを外部環境から完全に遮断する層であり、SiO
2を含む高密度膜からなるようにしてもよい。
【0099】
以下、このように構成される本発明の第2の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタの製造方法について、
図4A〜
図4Gを参照して詳細に説明する。
【0100】
図4A〜
図4Gは、
図3に示す本発明の第2の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタの製造工程を順次示す断面図である。
【0101】
図4Aに示すように、透明な絶縁物質からなる基板210上に所定のゲート電極221を形成する。
【0102】
ここで、本発明による酸化物薄膜トランジスタに適用される非晶質亜鉛酸化物系複合半導体は、低温蒸着が可能であるので、プラスチック基板、ソーダライムガラスなど、低温工程に適用可能な基板を使用してもよい。また、非晶質特性を示すので、大面積ディスプレイ用基板を使用してもよい。
【0103】
ゲート電極221は、基板210の全面に第1の導電膜を蒸着し、フォトリソグラフィ工程(第1のマスク工程)で選択的にパターニングすることにより形成する。
【0104】
ここで、前記第1の導電膜は、アルミニウム、アルミニウム合金、タングステン、銅、ニッケル、クロム、モリブデン、チタン、白金、タンタルなどの低抵抗の不透明な導電物質で形成してもよく、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物などの透明な導電物質で形成してもよく、前記導電物質が2種以上積層された多層構造で形成してもよい。
【0105】
次に、
図4Bに示すように、ゲート電極221が形成された基板210の全面に、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜などの無機絶縁膜又はハフニウムオキシド、アルミニウムオキシドなどの高誘電率酸化膜からなるゲート絶縁層215aを形成する。
【0106】
そして、ゲート絶縁層215aが形成された基板210の全面に、非晶質亜鉛酸化物系半導体を蒸着して所定の非晶質亜鉛酸化物系半導体層を形成し、フォトリソグラフィ工程(第2のマスク工程)で選択的にパターニングすることにより、ゲート電極221の上部に前記非晶質亜鉛酸化物系半導体からなる活性層224を形成する。
【0107】
ここで、前記非晶質亜鉛酸化物系複合半導体、特にa−IGZO半導体は、ガリウム酸化物、インジウム酸化物及び亜鉛酸化物の複合ターゲットを用いてスパッタリング方法により形成してもよく、その他に、化学気相蒸着や原子層蒸着などの化学蒸着方法を用いてもよい。ただし、本発明はこれらに限定されるものではなく、活性層224はMaMbMcOd(Ma,Mb,Mc:金属)の酸化物系半導体からなるようにしてもよい。
【0108】
また、前記a−IGZO半導体は、ガリウム、インジウム及び亜鉛の原子比がそれぞれ1:1:1、2:2:1、3:2:1、4:2:1などである複合酸化物ターゲットを用いて、非晶質亜鉛酸化物系半導体層を形成してもよい。
【0109】
前述したように、このような本発明の第2の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタにおいては、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体層を形成するためのスパッタリング時の反応ガス中の酸素濃度を調節することにより、活性層224のキャリア濃度を調節するが、酸素濃度1〜10%の条件で均一な素子特性を確保することができる。
【0110】
次に、
図4Cに示すように、活性層224が形成された基板210の全面に、第2の導電膜220及び第3の導電膜230を形成する。
【0111】
ここで、第2の導電膜220としては、下部層の第1のソース/ドレイン電極を形成するために、その上部の第2のソース/ドレイン電極とのウェットエッチング時の選択性を有し、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体との接触抵抗が低いチタンを使用してもよい。また、第2の導電膜220は、前記チタンに少なくとも1つの他の導電物質が積層された多層構造で形成してもよい。
【0112】
ここで、本発明の第2の実施の形態による第2の導電膜220は、約50〜200Åの薄厚に形成し、ドライエッチングを用いる場合は、約50〜300Åの薄厚に形成することにより、ドライエッチングによる酸化物半導体の損傷を最小限に抑えることができる。
【0113】
また、第3の導電膜230としては、上部層の第2のソース/ドレイン電極を形成するために、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体との接触抵抗に関係なく比抵抗が低い銅、金、モリブデンなどの金属を使用してもよい。
【0114】
ここで、活性層224が形成された基板210上に第2の導電膜220を蒸着する前に、酸素プラズマ処理などの所定の表面処理を行ってもよいが、これは、第2の導電膜220としてチタンを選択した場合、前記チタンの強い酸化性により前記非晶質亜鉛酸化物系半導体の表面に余剰酸素を供給するためである。
【0115】
次に、
図4Dに示すように、フォトリソグラフィ工程(第3マスク工程)で第3の導電膜230を選択的にパターニングすることにより、第2の導電膜220上に第3の導電膜230からなる第2のソース/ドレイン電極222b、223bを形成する。
【0116】
ここで、第3の導電膜230のエッチングとしては、大面積及び均一度のためにウェットエッチングを用いることが好ましい。
【0117】
次に、
図4Eに示すように、第2の導電膜220としてチタンを適用する場合は、第3の導電膜230をウェットエッチングした後、酸素プラズマ処理又は酸素含有雰囲気での所定の熱処理により、露出した第2の導電膜220を酸化させ、TiOからなるin situ保護層215を形成する。ここで、活性層224の上部に位置するin situ保護層215は、活性層224のバックチャネルを保護する役割を果たす。
【0118】
また、上部に第2のソース/ドレイン電極222b、223bが位置する第2の導電膜220は、in situ保護層215と区別され、第2の導電膜220からなる第1のソース/ドレイン電極222a、223aを構成する。
【0119】
このように、ソース/ドレイン電極222、223の下部層をTiで形成した場合、これをTiOに酸化させてin situ保護層215として用いることにより、工程を単純化すると共に、接触抵抗を最小限に抑えることができる。
【0120】
すなわち、第2の導電膜220としてチタンを適用する場合、前記チタンの常温で酸化する程度はΔH=−940KJ/molであり、これは亜鉛(−350KJ/mol)に比べて約2.5倍大きいため、第1のソース/ドレイン電極222a、223aと接触する活性層224のソース/ドレイン領域での前記非晶質亜鉛酸化物系半導体は、導体に転移し、接触抵抗が最小限に抑えられ、素子性能が向上する。
【0121】
次に、
図4Fに示すように、ソース/ドレイン電極222、223が形成された基板210の全面に、バックチャネルの損傷をキュアするために、下部保護層215bを形成する。
【0122】
すなわち、前述したように、下部保護層215bは、バックチャネル領域のキュアのために、酸素(好ましくは1E+20/cm
2以上)と微量の水素(好ましくは1E+20/cm
2以下)とを含む絶縁膜からなり、一例として、TiOx、TaOx、AlOxなどのMOx(M:金属)又はSiOxが挙げられる。
【0123】
ここで、多孔性絶縁層を形成するために、蒸着温度は250℃以下であることが好ましく、一例として、100℃〜250℃の温度で10Å〜100Åの厚さになるように形成してもよい。このような条件で下部保護層215bを蒸着した後、200℃〜300℃の温度で追加熱処理を行うようにしてもよい。
【0124】
次に、
図4Gに示すように、下部保護層215bが形成された基板210の全面に、薄膜トランジスタを外部環境から完全に遮断するために、上部保護層215cを形成する。
【0125】
ここで、上部保護層215cは、SiO
2を含む高密度膜からなるようにしてもよい。
【0126】
一方、前述した本発明の二重保護層構造は、ボトムゲート構造の薄膜トランジスタだけでなく、コプラナ構造の薄膜トランジスタにも適用することができるが、これを以下の本発明の第3の実施の形態により詳細に説明する。
【0127】
図5は、本発明の第3の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタの構造を概略的に示す断面図であり、自己整合(self aligned)したコプラナ構造の酸化物薄膜トランジスタを示す。
【0128】
同図に示すように、本発明の第3の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、所定の基板310上に形成されたバッファ層311と、バッファ層311上に形成され、非晶質亜鉛酸化物系半導体からなる活性層324と、ゲート絶縁層315aを介して活性層324上に形成されたゲート電極321と、活性層324上に形成され、活性層324の所定領域、すなわちソース/ドレイン領域324a、324bに電気的に接続されるソース/ドレイン電極322、323とを含む。
【0129】
同図において、符号324cは、その上部のゲート電極321により定義され、ソース領域324aとドレイン領域324bとの間に伝導チャネルを形成するチャネル領域を示す。
【0130】
このような本発明の第3の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、前述した第1及び第2の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタと同様に、非晶質亜鉛酸化物系半導体を用いて活性層324を形成することにより、移動度が高く、定電流バイアス条件を満たすと共に、均一な特性が確保されるので大面積ディスプレイに適用できるという利点がある。
【0131】
また、本発明の第3の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、前記亜鉛酸化物にインジウムやガリウムなどの重金属を含有するa−IGZO半導体で活性層324を形成することを特徴とする。
【0132】
さらに、本発明の第3の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、スパッタリング時の反応ガス中の酸素濃度を調節することにより、活性層324のキャリア濃度を調節し、薄膜トランジスタの素子特性を調節することを特徴とする。一例として、活性層324は、酸素濃度1〜10%の条件下で蒸着したa−IGZO半導体で形成してもよい。
【0133】
このような特徴を有する本発明の第3の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、活性層324の上部にゲート電極321とソース/ドレイン電極322、323が位置するコプラナ構造を適用することにより、ソース/ドレイン電極322、323をエッチングする際に活性層324のチャネル領域324cに損傷を与えず、優れた素子特性を確保できるという特徴を有する。
【0134】
もっとも、このようなコプラナ構造の酸化物薄膜トランジスタは、活性層324のソース/ドレイン領域324a、324bとソース/ドレイン電極322、323との接触領域とゲート電極321との間に所定距離離れた領域、すなわちオフセット領域を有するが、従来、当該オフセット領域は、前記接触領域に比べて抵抗の大きい抵抗領域として作用するため、素子特性を不安定にしていた。
【0135】
そこで、本発明の第3の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタは、コプラナ構造を適用すると共に、ゲート電極321のパターニング時にドライエッチングにより活性層324をオーバーエッチングし、前記オフセット領域を含むソース/ドレイン領域324a、324bを導体化することにより、安定した素子特性を実現することを特徴とする。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、ゲート絶縁層315aを所定部分残し、ソース/ドレイン電極322、323のパターニング時に残存するゲート絶縁層315aを除去して導体化を行うようにしてもよいが、これは、ゲート絶縁層315aを完全に除去して導体化した領域がソース/ドレイン電極322、323のパターニング時に二重に導体化する恐れを回避できるという利点がある。
【0136】
さらに、本発明の第3の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタにおいては、活性層324とソース/ドレイン電極322、323との接触抵抗を最小限に抑えるために、ソース/ドレイン電極322、323を二重層構造で形成してもよい。
【0137】
すなわち、本発明の第3の実施の形態によるソース/ドレイン電極322、323は、前述した本発明の第1及び第2の実施の形態と同様に、上部層に形成され、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体との接触抵抗に関係なく比抵抗が低い銅、金、モリブデンなどの金属からなる第2のソース/ドレイン電極322b、323bと、活性層324と接触する下部層に形成され、第2のソース/ドレイン電極322b、323bとのウェットエッチング時の選択性を有し、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体との接触抵抗が低いチタン、モリブデンチタンなどのチタン合金、モリブデンなどの金属からなる第1のソース/ドレイン電極322a、323aとからなるようにしてもよい。
【0138】
さらに、本発明の第3の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタにおいては、欠陥領域を改善又は復元するために保護層を二重にし、下部保護層315bは欠陥を改善できるように所定条件で蒸着し、上部保護層315cは外部からの影響を最小限に抑えられるように所定条件で蒸着する。
【0139】
このようなコプラナ構造の本発明の第3の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタにおいては、バックチャネル領域がゲート絶縁層315aにより保護されるが、前述した本発明の第1及び第2の実施の形態と同様に、下部保護層315bは、バックチャネル領域のキュアのために、酸素(好ましくは1E+20/cm
2以上)と微量の水素(好ましくは1E+20/cm
2以下)とを含む絶縁膜からなり、一例として、TiOx、TaOx、AlOxなどのMOx(M:金属)又はSiOxが挙げられる。ここで、多孔性絶縁層を形成するために、蒸着温度は250℃以下であることが好ましく、一例として、100℃〜250℃の温度で10Å〜100Åの厚さになるように形成してもよい。このような条件で下部保護層315bを蒸着した後、200℃〜300℃の温度で追加熱処理を行うようにしてもよい。
【0140】
また、上部保護層315cは、薄膜トランジスタを外部環境から完全に遮断する層であり、SiO
2を含む高密度膜からなるようにしてもよい。
【0141】
以下、このように構成される本発明の第3の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタの製造方法について、
図6A〜
図6Gを参照して詳細に説明する。
【0142】
図6A〜
図6Gは、
図5に示す本発明の第3の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタの製造工程を順次示す断面図である。
【0143】
図6Aに示すように、透明な絶縁物質からなる基板310上に所定の酸化物半導体、例えば非晶質亜鉛酸化物系半導体を蒸着し、フォトリソグラフィ工程(第1のマスク工程)で選択的にパターニングすることにより、基板310上に前記酸化物半導体からなる活性層324を形成する。
【0144】
ここで、基板310上に前記酸化物半導体を蒸着する前に、基板310上にバッファ層311を形成するようにしてもよい。
【0145】
バッファ層311は、基板310中に存在するナトリウム(Na)などの不純物が熱処理などの工程で上部層に浸透することを防止する役割を果たすが、本発明においては、酸化物半導体を用いて活性層324を形成することから、バッファ層311を省略してもよい。
【0146】
ここで、本発明による酸化物薄膜トランジスタに適用される非晶質亜鉛酸化物系複合半導体は、低温蒸着が可能であるので、プラスチック基板、ソーダライムガラスなど、低温工程に適用可能な基板を使用してもよい。また、非晶質特性を示すので、大面積ディスプレイ用基板を使用してもよい。
【0147】
ここで、前記非晶質亜鉛酸化物系複合半導体、特にa−IGZO半導体は、ガリウム酸化物、インジウム酸化物及び亜鉛酸化物の複合ターゲットを用いてスパッタリング方法により形成してもよく、その他に、化学気相蒸着や原子層蒸着などの化学蒸着方法を用いてもよい。ただし、本発明はこれらに限定されるものではなく、活性層324はMaMbMcOd(Ma,Mb,Mc:金属)の酸化物系半導体からなるようにしてもよい。
【0148】
また、前記a−IGZO半導体は、ガリウム、インジウム及び亜鉛の原子比がそれぞれ1:1:1、2:2:1、3:2:1、4:2:1などである複合酸化物ターゲットを用いて、非晶質亜鉛酸化物系半導体層を形成してもよい。
【0149】
前述したように、このような本発明の第3の実施の形態による酸化物薄膜トランジスタにおいては、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体層を形成するためのスパッタリング時の反応ガス中の酸素濃度を調節することにより、活性層324のキャリア濃度を調節するが、酸素濃度1〜10%の条件で均一な素子特性を確保することができる。
【0150】
次に、
図6Bに示すように、活性層324が形成された基板310上に所定の絶縁膜及び第1の導電膜を蒸着し、フォトリソグラフィ工程(第2のマスク工程)で選択的にパターニングすることにより、活性層324上に前記第1の導電膜からなるゲート電極321を形成する。
【0151】
ゲート電極321は、前記絶縁膜からなるゲート絶縁層315aを介して活性層324の上方に形成される。ここで、活性層324及びゲート電極321は、回折マスク又はハーフトーンマスクを用いて1回のマスク工程で形成するようにしてもよい。
【0152】
ここで、前記絶縁膜は、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜などの無機絶縁膜又はハフニウムオキシド、アルミニウムオキシドなどの高誘電率酸化膜からなり、前記絶縁膜のエッチングには、酸素プラズマ処理などのドライエッチングを用いる。なお、SiOx、HfOx又はAlOxなどの酸化物系で絶縁膜を形成する場合は、前記絶縁膜を蒸着する前に、表面処理又は熱処理を行うようにしてもよい。
【0153】
また、前記第1の導電膜は、アルミニウム、アルミニウム合金、タングステン、銅、ニッケル、クロム、モリブデン、チタン、白金、タンタルなどの低抵抗の不透明な導電物質で形成してもよく、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物などの透明な導電物質で形成してもよく、前記導電物質が2種以上積層された多層構造で形成してもよい。
【0154】
このようなドライエッチングにより活性層324の露出した領域がオーバーエッチングされ、オフセット領域を含むソース/ドレイン領域324a、324bが形成される。
【0155】
すなわち、ゲート絶縁層315aをパターニングするために酸素プラズマ処理により前記絶縁膜をオーバーエッチングする際に、露出した活性層324の抵抗が酸素プラズマにより減少し、活性層324にソース/ドレイン領域324a、324bが形成される。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、ゲート絶縁層315aをパターニングした後、酸素プラズマなどの表面処理又は熱処理により、露出した活性層324の抵抗を変化させ、ソース/ドレイン領域324a、324bを形成するようにしてもよい。また、本発明においては、ゲート絶縁層315aを所定部分残し、ソース/ドレイン電極322、323のパターニング時に残存するゲート絶縁層315aを除去して導体化を行うようにしてもよい。
【0156】
ここで、ゲート絶縁層315aの下部に位置する活性層324は、伝導チャネルを形成するチャネル領域324cを構成する。
【0157】
次に、
図6Cに示すように、活性層324が形成された基板310の全面に、第2の導電膜320及び第3の導電膜330を形成する。
【0158】
ここで、第2の導電膜320としては、下部層の第1のソース/ドレイン電極を形成するために、その上部の第2のソース/ドレイン電極とのウェットエッチング時の選択性を有し、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体との接触抵抗が低いチタン、モリブデンチタンなどのチタン合金、モリブデンなどの金属を使用してもよい。また、第2の導電膜320は、前記チタン、モリブデンチタンなどのチタン合金、モリブデンなどの金属に少なくとも1つの他の導電物質が積層された多層構造で形成してもよい。
【0159】
ここで、本発明の第3の実施の形態による第2の導電膜320は、約50〜200Åの薄厚に形成し、ドライエッチングを用いる場合は、約50〜300Åの薄厚に形成することにより、ドライエッチングによる酸化物半導体の損傷を最小限に抑えることができる。
【0160】
また、第3の導電膜330としては、上部層の第2のソース/ドレイン電極を形成するために、前記非晶質亜鉛酸化物系半導体との接触抵抗に関係なく比抵抗が低い銅、金、モリブデンなどの金属を使用してもよい。
【0161】
ここで、活性層324が形成された基板310上に第2の導電膜320を蒸着する前に、酸素プラズマ処理などの所定の表面処理を行ってもよいが、これは、第2の導電膜320としてチタンを選択した場合、前記チタンの強い酸化性により前記非晶質亜鉛酸化物系半導体の表面に余剰酸素を供給するためである。
【0162】
次に、
図6Dに示すように、フォトリソグラフィ工程(第3マスク工程)で第3の導電膜330を選択的にパターニングすることにより、第2の導電膜320上に第3の導電膜330からなる第2のソース/ドレイン電極322b、323bを形成する。
【0163】
ここで、第3の導電膜330のエッチングとしては、大面積及び均一度のためにウェットエッチングを用いることが好ましい。
【0164】
次に、
図6Eに示すように、その下部の第2の導電膜320を選択的にパターニングすることにより、第2の導電膜320からなる第1のソース/ドレイン電極322a、323aを形成する。ここで、第2の導電膜320のエッチングとしては、ドライエッチングを用いてもよく、前述したように、約50〜300Åの薄厚に形成することにより、ドライエッチングによる酸化物半導体の損傷を最小限に抑えることができる。
【0165】
次に、
図6Fに示すように、ソース/ドレイン電極322、323が形成された基板310の全面に、下部保護層315bを形成する。
【0166】
すなわち、前述したように、下部保護層315bは、酸素(好ましくは1E+20/cm
2以上)と微量の水素(好ましくは1E+20/cm
2以下)とを含む絶縁膜からなり、一例として、TiOx、TaOx、AlOxなどのMOx(M:金属)又はSiOxが挙げられる。
【0167】
ここで、多孔性絶縁層を形成するために、蒸着温度は250℃以下であることが好ましく、一例として、100℃〜250℃の温度で10Å〜100Åの厚さになるように形成してもよい。このような条件で下部保護層315bを蒸着した後、200℃〜300℃の温度で追加熱処理を行うようにしてもよい。
【0168】
また、チタンを第2の導電膜として使用する場合、露出した第2の導電膜320を酸化し、第3の導電膜330のウェットエッチングの後に、酸素プラズマまたは酸素雰囲気下での所定の熱処理により、TiOを形成し、TiOからなるin−situ保護層315を形成しても良い。
【0169】
次に、
図6Gに示すように、下部保護層315bが形成された基板310の全面に、薄膜トランジスタを外部環境から完全に遮断するために、上部保護層315cを形成する。
【0170】
ここで、上部保護層315cは、SiO
2を含む高密度膜からなるようにしてもよい。
【0171】
前述したように、本発明は、液晶表示装置だけでなく、薄膜トランジスタを用いて製造する他の表示装置、例えば、駆動トランジスタに有機発光ダイオードが接続された有機ELディスプレイ装置にも適用することができる。
【0172】
さらに、本発明は、移動度が高いと共に低温工程が可能な非晶質亜鉛酸化物系半導体を活性層に用いることにより、透明電子回路やフレキシブルディスプレイにも適用することができる。
【0173】
以上の説明に多くの事項が具体的に記載されているが、これは発明の範囲を限定するものではなく、好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。従って、本発明の範囲は、前述した実施形態によって定められるのでなく、特許請求の範囲とその均等物によって定められるべきである。