(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機EL発光層を含む複数の画素を備える表示部と、前記表示部の第1方向に隣接する位置に配置され、前記有機EL発光層にそれぞれ接続されて前記有機EL発光層の表面を封止する封止膜から一部が露出された複数の端子を備える端子部とを備える第1基板と、
前記第1基板に対向して配置されて前記第1基板と接合される第2基板と、を備え、
前記第1基板は、前記複数の端子の下層において、前記封止膜の前記複数の端子を露出させる側の端部に対応する位置に配置されて前記第1方向に垂直な第2方向に延びる矩形状を有する第1金属層を含むことを特徴とする有機EL表示装置。
有機EL発光層を含む複数の画素を備える表示部と、前記表示部の第1方向に隣接する位置に配置され、前記有機EL発光層にそれぞれ接続されて前記有機EL発光層の表面を封止する封止膜から一部が露出された複数の端子を備える端子部とを備える有機EL表示装置の製造方法であって、前記有機EL表示装置の製造方法は、
複数の前記表示部がマトリクス状に配置される第1基板上に、複数の前記表示部の前記第1方向に隣接する位置に、前記第1方向に垂直な第2方向に互いに隣接する複数の前記表示部に共通して前記第2方向に延びる矩形状に形成され、前記表示部及び前記端子部の形成されない領域に前記第2方向に延長された第1接続部を備える第1金属層を複数形成し、
前記複数の第1金属層上に、第1絶縁層を形成し、
前記第1絶縁層上に、複数の端子を形成し、
前記複数の端子上に、前記複数の端子の一部を露出させる第2絶縁層を形成し、
前記第1接続部上の前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の一部を除去して複数のコンタクトホールをそれぞれ形成し、
前記複数のコンタクトホール内に外部の温度調節装置を前記第1接続部に接続させる複数の配線をそれぞれ形成し、
前記外部の温度調節装置により前記複数の第1金属層を吸熱しながら、前記第2絶縁層上に前記有機EL発光層の表面を封止する封止膜を形成し、
前記複数の第1金属層上にそれぞれ形成された前記封止膜を除去して前記複数の端子の一部を露出させ、
前記第1基板に第2基板を樹脂を介して接合することを含むことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
前記複数の第1金属層を形成することは、前記複数の第1金属層と同じ層であって前記複数の表示部に対応する位置に、複数の第2金属層を形成することをさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイパネルの薄型化や高輝度化や高速化を目的として、有機EL表示装置の開発が進められている。有機EL表示装置は、有機発光ダイオード(organic light-emitting diode)から構成された画素を備えた表示装置であり、機械的な動作がない為に反応速度が速く、各画素自体が発光するため高輝度表示が可能になるとともに、バックライトが不要となるため薄型化が可能になるので、次世代の表示装置として期待されている。
【0003】
図1は、有機EL表示装置10の積層構造の一例を示す縦断面図である。
図1に示すように、有機EL発光層1は、ガラス等の硬質な基板2上に形成される。有機EL発光層1は、
図1においては詳細な図示を省略しているが、例えば、基板2側から順に、TFT駆動回路層、反射電極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、透明電極が積層されることにより構成されてもよい。
【0004】
有機EL発光層1は、雰囲気中の水分に曝されると急速に劣化するため、外気から密閉される必要がある。このため、
図1に示すように、有機EL発光層1の表面は、例えば、CVD成膜された窒化シリコン膜等からなる透明な封止膜3によって覆われるとともに、封止膜3の表面は透明な樹脂4、5によって覆われ、樹脂4、5を介してガラス等の硬質透明部材からなる第2基板6が接合されることにより封止される。
【0005】
このような有機EL表示装置10は、
図2(a)に示すように、有機EL発光層1を含む複数の画素が配置されて画像を表示するための領域である表示部12と、外部回路と電気的な接続を行うための複数の端子13aが配置された領域である端子部13とを含む。
図2(a)は、有機EL表示装置10の平面透視図であり、
図1に示す第2基板6を透視して、基板2上に樹脂4、5によって覆われた表示部12と端子部13を備えた第1基板7側の構成を図示したものである。
図2(b)は、
図2(a)に示す有機EL表示装置10の断面図である。基板2上に形成された複数の端子13aは、図示しない配線等を介して有機EL発光層1のTFT駆動回路及び電極に接続されている。また、
図2(b)に示すように、端子部13は、封止膜3、樹脂4、5及び第2基板6に覆われず、複数の端子13aが露出されるように形成される。
【0006】
端子部13に引き出された複数の端子13aは、封止膜3及び第2基板6等に覆われた後、端子部13上に形成された封止膜3及び第2基板6等が除去されることにより、その端部が露出されて形成される。複数の端子13aの端部は、例えば、FPC(Flexible printed circuits)等の駆動信号を供給する外部回路に接続される。ここで、従来の有機EL表示装置には、複数の端子13aを覆う封止膜3等を剥離する方法として、複数の端子13aと封止膜3との間に有機EL発光層1の発光材料を用いて剥離層を形成し、剥離層上を表示部12と端子部13との境界に沿って割断することにより、封止膜3等を除去しようとするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施することができる。
【0018】
(第1の実施形態)
図1乃至
図4を参照し、以下、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置10の構成及びその製造方法について述べる。
【0019】
図1及び
図2は、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置10の概略構成を示す図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置10の端子部13の概略構成を示す図である。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置10の製造工程を説明するための図である。
【0020】
有機EL表示装置10は、
図1及び
図2に示すように、有機EL発光層1を含む複数の画素が配置された第1基板7と、第1基板7に対向して配置される第2基板6とを、樹脂4、5を介して貼り合わせた構成を有する。第2基板6は、ガラス等の硬質透明部材上に、カラーフィルタや、タッチパネル機能を有する薄膜デバイス等を備えるものであってもよい。
【0021】
図2(a)に示すように、有機EL表示装置10は、有機EL発光層1を含む複数の画素が配置された表示部12と、表示部12を囲むように配置され、TFT駆動回路層に駆動信号を伝達する配線等が配置される領域である額縁部11と、外部素子との電気的な接続を行うための複数の端子13aが配置される領域である端子部13とを含む。複数の端子13aは、その一部分は、端子部13において封止膜3及び第2基板6等から露出されて形成される。
【0022】
図3を参照し、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置10の端子部13の構成について説明する。
図3(a)は、第1基板7の構成を説明するための斜視図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示すA−A´線における端子部13の断面図である。
【0023】
図3(a)及び(b)に示すように、ガラス等の硬質な基板2上には、端子部13と重畳する位置であって表示部12を覆わない位置に、金属層14が形成される。金属層14は、複数の端子13aの形成された層の下に、第1絶縁層16を介して形成される。このため、
図3(a)においては、複数の端子13aの露出される部分を点線で図示している。
【0024】
端子部13において、基板2上に形成された金属層14の上には第1絶縁層16が形成され、第1絶縁層16の上に複数の端子13aが形成される。複数の端子13aの上には、複数の端子13aの一部がそれぞれ露出されるように第2絶縁層17が形成される。第2絶縁層17の上には、複数の端子13aの一部を露出する封止膜3が形成される。このとき、
図3(b)に示すように、封止膜3は、その端部が金属層14の端部と対応する位置に配置されるように一部が除去されて形成される。これにより、複数の端子13aの一部が封止膜3から露出されて形成される。
【0025】
以下、
図1乃至
図4を参照し、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置10の製造方法について述べる。
【0026】
(1)第1基板7の形成
図4に示すように、まず、製造用基板100上に、複数の金属層14を形成する。製造用基板100は、複数の有機EL表示装置10を形成するための基板である。製造用基板100は、
図1乃至
図3に示すガラス基板2に対応し、後述する製造工程において、製造用基板100から個片化されて複数の有機EL表示装置10が形成される。
図4には、ガラス基板である製造用基板100上に、所定の間隔を空けてマトリクス状に配置される複数の表示部12の位置と、複数の表示部12に隣接する位置に対応して配置される複数の端子13aの位置とを点線で図示している。
【0027】
図4に示すように、金属層14は、複数の表示部12の第1方向(
図4に示すy軸方向)に隣接する位置に、第1方向に垂直な第2方向(
図4に示すx軸方向)に互いに隣接する複数の表示部12に対応して共通に形成され、第2方向に互いに隣接する複数の端子部13と重畳する範囲に、第2方向に延びる矩形状に形成される。また、金属層14は、第2方向に並ぶ複数の有機EL表示装置10が形成される範囲から所定の長さkだけ延長されて表示部12及び端子部13の形成されない領域に引き出された部分14aを有して形成される。金属層14の両端部14aは、後述する製造工程において、外部の温度調節装置と接続される接続部14aとして用いられる。なお、ここでは、接続部14aが金属層14の両端部に配置される構成を例に挙げて説明するが、接続部14aは金属層14の両端部のうち何れか一方の端部に配置されるものであってもよい。また、金属層14の形状は、第2方向に並ぶ複数の表示部12に共通して形成され、表示部12及び端子部13の形成されない領域に延長された接続部14aを備える形状であれば、
図4に示す形状に限定されるものではない。このような接続部14aを有して形成される金属層14は、第2方向に並ぶ複数の有機EL表示装置10の行毎に、製造用基板100の第1方向に複数形成される。
【0028】
金属層14は、熱伝導性の高い金属として、例えば、アルミニウム、銅、クロム、タングステン、モリブデン等を用いて、スパッタ法及びフォトリソグラフィ法等の任意の公知の方法により形成してもよい。なお、ここでは、金属層14を別途形成する層として説明するが、金属層14は、各有機EL発光層1のTFT駆動回路のゲート層等を形成する際に同時に形成してもよい。
【0029】
次に、
図3(b)に示すように、金属層14の上に、金属層14を覆う第1絶縁層16を形成する。第1絶縁層16は、例えば、CVD法により形成された酸化シリコンや窒化シリコン膜等から形成されるものであってもよい。
【0030】
次に、第1絶縁層16の上に、複数の端子13aを形成する。複数の端子13aは、
図3(b)に図示していないが、有機EL発光層1のTFT駆動回路及び電極に接続される。従って、第1絶縁層16には複数のコンタクトホールが形成され、このコンタクトホールに形成される配線等を介して、複数の端子13aは有機EL発光層1のTFT駆動回路及び電極に接続される。
【0031】
次に、
図3(b)に示すように、複数の端子13aの上に、第2絶縁層17を形成する。第2絶縁層17は、表示部12と端子部13との間の仕切り部材及び隣接する複数の有機EL表示装置10の間の仕切り部材として機能するバンク層である。
【0032】
第2絶縁層17は、CVD法により形成された酸化シリコンや窒化シリコン膜等であってもよい。第2絶縁層17は、フォトリソグラフィ法や印刷法等の任意の方法を用いて複数の端子13aの上面を一部露出させる形状に形成される。このとき、
図3(a)及び
図4においては、複数の端子13aの露出される部分を点線で図示している。
【0033】
次に、複数の表示部12に、複数の画素を構成する有機EL発光層1(
図1参照)を形成する。有機EL発光層1は、公知の方法を用いて形成することができる。有機EL発光層1は、製造用基板100側から順に、例えば、TFT駆動回路層、反射電極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、透明電極を積層することにより形成してもよい。
【0034】
このように、製造用基板100において、複数の表示部12にはそれぞれ複数の有機EL発光層1が形成され、複数の端子部13にはそれぞれ金属層14、第1絶縁層16、複数の端子13a、及び第2絶縁層17が形成される。このような構成を備えた製造用基板100上に封止膜3を形成する。
【0035】
封止膜3を形成するにあたって、まず、複数の金属層14の接続部14a上にそれぞれ形成された第1絶縁層16及び第2絶縁層17等をエッチングにより除去し、複数のコンタクトホールを形成する。
図4には、複数のコンタクトホールが形成される位置を点線14bで図示している。この複数のコンタクトホールにそれぞれ形成される配線等を介して、複数の接続部14aに温度調節装置をそれぞれ接続する。
【0036】
次に、金属層14の接続部14aにそれぞれ接続された温度調節装置により、金属層14を吸熱しながら、封止膜3を形成する。封止膜3は、酸化シリコンや窒化シリコン等の材料を用いて、CVD法等により形成する。このような金属層14の吸熱により、金属層14上の封止膜3は、金属層14が存在しない領域の封止膜3よりも低温で成膜されるため、膜質が非緻密化される。これにより、封止膜3の緻密化された部分と非緻密化された部分との間に剥離境界が形成され、非緻密化された端子部13上の封止膜3は、積極的に剥離されやすくなる。このような剥離境界を利用して端子部13上の封止膜3を剥離することにより、封止膜3の剥離残りの低減および封止膜3の剥離境界の均一化を図ることが可能となる。
【0037】
このように、封止膜3は、端子部13と重複する領域に配置された金属層14を温度調節装置により低温化しながらCVD法等を用いて形成することにより、剥離対象の封止膜3の温度を局所的に低下させて形成することが可能となる。これにより、端子部13上の封止膜3を非緻密化し、非緻密化された封止膜3は容易に剥離することが可能となる。ここまでの構成が、
図1乃至
図3に示す第1基板7に対応する。
【0038】
(2)ダム材4の塗布
次に、第1基板7の表面上に、ダム材4として硬化前の粘度が比較的高い樹脂をディスペンサーによって塗布してダム材4を形成する。ダム材4としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等の、UV硬化型又は熱硬化型の透明樹脂を用いてもよい。
【0039】
ダム材4は、
図2(a)に示すように、表示部12と端子部13との間を通過して表示部12を囲む額縁状の形状に形成されてもよい。このように、ダム材4を表示部12と端子部13との間に形成することにより、後述する製造工程においてダム材4の内側に充填される充填材5が端子部13に流出しないように構成することができる。また、ダム材4は、充填材5の領域を画定するものであることから、ダム材4に用いる樹脂は、充填材5に用いる樹脂よりも硬化前の粘度が高い樹脂を用いるようにする。なお、ダム材4は、充填材5の領域を画定することのできる形状であれば、
図2(a)に示すような表示部12を囲む額縁状の形状に限らない。
【0040】
(3)充填材5の塗布
次に、複数のダム材4の内側の表示部12上に、それぞれ充填材5として硬化前の粘度が比較的低い樹脂を所定のピッチで点状に滴下する。充填材5としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等の、UV硬化型又は熱硬化型の透明樹脂を用いて形成してもよい。
【0041】
(4)第1基板7と第2基板6との接合
次に、減圧下のチャンバー内で第1基板7の表面に第2基板6を貼り合わせ、両基板6、7とダム材4によって囲まれる空間の全域に充填材5を押し広げ、大気圧下でダム材4及び充填材5を硬化させる。ダム材4及び充填材5の硬化工程は、例えば、ダム材4に紫外線硬化型の樹脂を用いて、充填材5に熱硬化型の樹脂を用いた場合は、第2基板6を通してダム材4に紫外線を照射した後、加熱炉内で充填材5を熱硬化する。これにより、ダム材4及び充填材5により有機EL発光層1が封止されて接合された第1基板7及び第2基板6を得ることができる。
【0042】
(5)有機EL表示装置10の個片化
接合された第1基板7及び第2基板6を、スクライブ・ブレーク等の公知の方法を用いて、有機EL表示装置10毎にそれぞれ切断する。また、端子部13上に配置された第2基板6についても、スクライブ・ブレーク等の公知の方法を用いて切断して除去する。これにより、
図1及び
図2に示す有機EL表示装置10が複数取得される。また、第2基板6を予め端子部13を覆わない形状に形成しておき、これをダム材4及び充填材5を介して第1基板7に貼り合わせた後、有機EL表示装置10毎にそれぞれ切断することにより、複数の有機EL表示装置10を得てもよい。
【0043】
このような製造工程により、本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置10を形成することができる。本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置10の製造方法によれば、基板2上に形成された金属層14を低温化して封止膜3を形成することにより、端子部13上に形成された封止膜3を容易に剥離することができるため、剥離残りを低減し、剥離境界を均一化して、複数の端子13aを封止膜3から露出させて形成することが可能となる。従って、有機EL表示装置10を、簡易な製造工程で製造原価を低減させ、且つ歩留りを向上させて製造することができる。
【0044】
(第1の実施形態の変形例)
図5及び
図6を参照し、以下、本発明の第1の実施形態の変形例に係る有機EL表示装置10の製造方法について述べる。本発明の第1の実施形態の変形例に係る有機EL表示装置10は、上述した本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置10とは、金属層14の形状のみが異なる。従って、以下、第1の実施形態に係る有機EL表示装置10と同様の構成については、その説明について省略する。
【0045】
図6に示すように、第1の実施形態の変形例に係る有機EL表示装置10の金属層14は、複数の表示部12がマトリクス状に配置される製造用基板100上に、複数の表示部12の第1方向(
図6に示すy軸方向)に隣接する位置に、第1方向に垂直な第2方向(
図6に示すx軸方向)に互いに隣接する複数の表示部12に共通して第2方向に延びる帯状の形状に形成される。また、金属層14は、
図6に示すように、表示部12及び端子部13の形成されない領域に第2方向に延長された接続部14aを有して形成される。
【0046】
図5に示すように、第1の実施形態の変形例に係る金属層14は、
図3に示す第1の実施形態に係る金属層14とは異なり、端子部13の一部の領域と重畳する範囲に、第1の実施形態に係る金属層14よりも小さな幅を有して略矩形状に形成される。このように、金属層14は、封止膜3を除去する境界に対応する位置であれば、端子部13の全領域と重畳しない位置に形成されていてもよい。金属層14を、後述する製造工程において剥離される封止膜3の一部を低温化して形成することが可能な大きさに形成することにより、金属層14に用いる材料を節減し、金属層14上に形成される他の構造へ与え得る影響を低減させることができる。
【0047】
金属層14を、封止膜3を除去する境界に対応する位置に形成した後、第1の実施形態に係る有機EL表示装置10の製造方法と同様に、第1絶縁層16、複数の端子13a、及び第2絶縁層17を形成し、金属層14の接続部14aに温度調節装置を接続し、金属層14を吸熱しながら封止膜3を形成する。これにより、金属層14上の封止膜3を非緻密化することができる。従って、第1の実施形態と同様に、緻密化された部分と非緻密化された部分とが形成されることにより、端子部13において非緻密化された剥離対象の封止膜3を容易に剥離することが可能となる。
【0048】
(第2の実施形態)
図7及び
図8を参照し、以下、本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置10の製造方法について述べる。本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置10は、上述した本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置10とは、表示部12と重畳される位置に形成される金属層15を備える構成が異なる。従って、第1の実施形態に係る有機EL表示装置10と同様の構成については、その説明について省略する。
【0049】
図8に示すように、第2の実施形態に係る有機EL表示装置10の製造方法によると、製造用基板100上に、第1方向(
図8に示すy軸方向)に複数形成される金属層14は、第1方向に垂直な第2方向(
図8に示すx軸方向)に互いに隣接して配置される複数の端子部13と重畳する位置に形成され、第1方向に複数形成される金属層15は、金属層14の形成される層と同じ層であって第2方向に互いに隣接して配置される複数の表示部12と重畳する位置に形成される。金属層14は、第1の実施形態に係る有機EL表示装置10の金属層14と同様の構成を備えるため、その説明を省略する。金属層15は、金属層14と同様に、第2方向に互いに隣接する複数の表示部12に共通して第2方向に延びる矩形状に形成され、その両端部において、有機EL表示装置10が形成されない領域に引き出された接続部15aを有して形成される。
【0050】
金属層14及び金属層15を形成した後、第1の実施形態に係る有機EL表示装置10の製造方法と同様に、第1絶縁層16、複数の端子13a、及び第2絶縁層17を形成し、これらを覆う封止膜3を形成する。封止膜3の形成にあたっては、まず、金属層14の接続部14a及び金属層15の接続部15aにそれぞれ温度調節装置を接続させる。接続部14a及び接続部15a上の第1絶縁層16及び第2絶縁層17にはそれぞれコンタクトホールを形成する。温度調節装置は、コンタクトホール内に配置された配線等を介して接続部14a及び接続部15aの
図8に示す点線14b及び点線15bに対応する位置に、それぞれ接続される。
【0051】
温度調節装置を用いて、金属層14については吸熱し、金属層15については加熱しながら封止膜3を形成する。これにより、金属層14上に形成される封止膜3については非緻密化することができる一方、金属層15上に形成される封止膜3を、他の部分と比べて高温で成膜することができるため膜質を緻密化することができる。
【0052】
従って、封止膜3は、金属層14上の非緻密化された部分と、金属層15上の緻密化された部分との間に、第1の実施形態と比較して、より明確な膜質の差を有するものに形成することができる。これにより、非緻密化された封止膜3を、より容易に剥離することが可能となるので、剥離境界の均一化を向上させることも可能となる。
【0053】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置10の製造方法によれば、金属層14を低温化し、金属層15を高温化して封止膜3を形成することにより、剥離対象の封止膜3を、温度を局所的に低下させて非緻密化して形成しつつ、剥離対象以外の封止膜3を、温度を上昇させて緻密化して形成することが可能となる。従って、封止膜3の非緻密化された部分と緻密化された部分との間に、膜質の異なる剥離境界を形成することが可能となる。これにより、第1の実施形態と同様に、非緻密化された封止膜3を容易に剥離することができるため、剥離残りを低減し、剥離境界を均一化することが可能となる。従って、有機EL表示装置10を、簡易な製造工程で製造原価を低減させ、且つ歩留りを向上させて製造することができる。
【0054】
(第2の実施形態の変形例)
図9及び
図10を参照し、以下、本発明の第2の実施形態の変形例に係る有機EL表示装置10の製造方法について述べる。本発明の第2の実施形態の変形例に係る有機EL表示装置10は、上述した本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置10とは、金属層14の形状のみが異なる。従って、以下、第2の実施形態に係る有機EL表示装置10と同様の構成については、その説明について省略する。
【0055】
図10に示すように、第2の実施形態の変形例に係る有機EL表示装置10の金属層14は、第1の実施形態の変形例に係る有機EL表示装置10の金属層14と同様に、封止膜3を除去する境界に対応する位置に形成される。また、第2の実施形態の変形例に係る有機EL表示装置10の金属層15は、第2の実施形態に係る有機EL表示装置10の金属層15と同様の構成を備えるため、その説明を省略する。
【0056】
金属層14及び金属層15を形成した後、第1の実施形態に係る有機EL表示装置10の製造方法と同様に、第1絶縁層16、複数の端子13a、及び第2絶縁層17を形成し、これらを覆う封止膜3を形成する。封止膜3の形成にあたっては、まず、金属層14の接続部14a及び金属層15の接続部15aの各々に温度調節装置を接続させる。温度調節装置は、それぞれ接続部14a及び接続部15a上の第1絶縁層16及び第2絶縁層17等を貫通するコンタクトホール内に形成された配線等を介して接続される。温度調節装置を用いて、金属層14については吸熱し、金属層15については加熱しながら封止膜3を形成する。これにより、金属層14上に形成される封止膜3については非緻密化することができる一方、金属層15上に形成される封止膜3を、他の部分と比べて高温で成膜することができるため膜質を緻密化することができる。
【0057】
従って、封止膜3は、金属層14上の非緻密化された部分と、金属層15上の緻密化された部分との間に、第1の実施形態と比較して、より明確な膜質の差を有するものに形成することが可能となる。これにより、端子部13上に形成された非緻密化された封止膜3を、より容易に剥離することが可能となるので、剥離境界の均一化を向上させることも可能となる。
【0058】
以上のとおり、本発明の第1及び第2の実施形態に係る有機EL表示装置10の製造方法によれば、簡易な製造工程により製造原価を低減しつつ、端子部13を覆う封止膜3を容易に剥離することが可能となる。従って、歩留りを向上させて、画質を向上させた有機EL表示装置10を提供することができる。