(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外部操作信号は、複数の異なる田面の農営情報を管理する管理コンピュータシステムに格納された農用資材供給情報に基づいて前記管理コンピュータシステムから送られてくる請求項1に記載の水田作業機。
前記外部操作信号として、農用資材の供給禁止指令が入力された場合、前記アクチュエータを作動させる制御ユニットは、前記農用資材供給装置への農用資材供給用動力の伝達遮断を指令する請求項1または2に記載の水田作業機。
前記外部操作信号の入力時に信号入力中を報知する第1報知信号と、前記外部操作信号による前記供給量の調節時に供給量調節中を報知する第2報知信号と、当該調節の完了を報知する第3報知信号とを報知デバイスに出力する報知信号出力部が備えられており、前記第1報知信号、第2報知信号、第3報知信号による各報知は互いに異なるものである請求項1から3のいずれかに記載の水田作業機。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2で支持された機体の後部に、上下揺動自在なリンク機構3が備えられて、リンク機構3を介して8条植型式の苗植付装置5が昇降自在に支持され、リンク機構3を昇降駆動する油圧シリンダ4が備えられて、水田作業機の一例である乗用型田植機が構成されている。
【0013】
図1及び
図2に示すように、苗植付装置5は、4個の伝動ケース6、伝動ケース6の後部に回転駆動自在に支持された一対の回転ケース7、回転ケース7の両端に備えられた一対の植付アーム8、接地フロート9及び苗のせ台10等を備えて構成されている。
【0014】
図1及び
図2に示すように、エンジン17の動力が、ミッションケース18に備えられた走行用の静油圧式無段変速装置(図示せず)、株間変速装置(図示せず)、植付クラッチ(図示せず)から伝動軸19及びPTO軸20を介して、苗植付装置5に伝達される。これにより、苗のせ台10が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース7が回転駆動されて、苗のせ台10の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面に植え付ける。
【0015】
図1及び
図2に示すように、運転座席31の後側に、粉粒状の肥料(農用資材に相当)を貯留するホッパー12及び2つの植付条に対応した4個の繰り出し部13が備えられており、運転座席31の下側にブロア14が備えられている。接地フロート9に作溝器15が固定されて、8個の作溝器15が備えられており、繰り出し部13と作溝器15とに亘って8本のホース16が接続されている。ホッパー12、繰り出し部13、ブロア14、作溝器15及びホース16等により、施肥装置11が構成されている。
【0016】
図2,3,4に示すように、ブロア14は電動モータ25により駆動されるように構成されて、ブロア14の吸入ダクト32がエンジン17の付近に延出されており、エンジン17の付近の高温の空気をブロア14が吸入するように構成されている。ブロア14に二股状の分岐ダクト26が接続されて、分岐ダクト26と繰り出し部13の前部とに亘って供給ダクト27が接続されており、繰り出し部13の吸入部13aが供給ダクト27に挿入されている(
図5参照)。
【0017】
図4及び
図5に示すように、繰り出し部13の後部に排出口13b及び排出口13bを開閉するシャッタ28が備えられて、繰り出し部13の排出口13bに亘って排出ダクト29が接続されており、供給ダクト27と排出ダクト29とに亘って接続ダクト30が接続されている。分岐ダクト26及び接続ダクト30にシャッタ33,34が備えられ、繰り出し部13の前部の左右方向に亘って操作軸35が回転自在に支持されており、操作軸35とシャッタ28,33,34とに亘って連係部材36が接続されている。
【0018】
図5に示す状態は、操作軸35によりシャッタ28,34を閉位置に操作し、シャッタ33を開位置に操作している状態であり、ブロア14の送風が分岐ダクト26及び供給ダクト27を介して繰り出し部13に供給される。これにより、ホッパー12から肥料が所定量ずつ繰り出し部13により繰り出されるとて、ブロア14の送風により肥料がホース16を通って作溝器15に供給され、作溝器15を介して肥料が田面に供給される。
【0019】
植付作業が終了した後、ホッパー12に残る肥料を回収する場合、
図6に示すように、操作軸35の取っ手部35aを持って操作軸35を回動操作して、シャッタ28,34を開位置に操作し、シャッタ33を閉位置に操作する。これにより、ホッパー12の肥料が繰り出し部13の排出口13bから排出ダクト29に出るのであり、ブロア14の送風が分岐ダクト26、左の供給ダクト27及び接続ダクト30を介して排出ダクト29に供給されて、排出ダクト29に出た肥料が送られて排出ダクト29の排出口29aから排出される。
【0020】
図1,3,4に示すように、エンジン17の動力が、走行用の静油圧式無段変速装置(図示せず)及び施肥クラッチ(図示せず)から伝動軸21に伝達されている。施肥装置11の右側後部の左右方向に沿って伝動軸22が回転自在に支持されており、伝動軸21の後端部に固定されたアーム21aと、伝動軸22の左端部(中央側の端部)に固定されたアーム22aとに亘って連係ロッド23が接続されている。これにより、伝動軸21の回転動力が、伝動軸21のアーム21a及び連係ロッド23により上下の往復運動に変換され、所定角度A1(
図7参照)の範囲での往復回転運動として伝動軸22に伝達される。
【0021】
図3及び
図4に示すように、施肥装置11の右端部に供給量調節装置24が備えられており、伝動軸22の右端部が供給量調節装置24に接続されている。繰り出し部13の後部の左右方向に沿って伝動軸37が回転自在に支持されており、伝動軸37の右端部が供給量調節装置24に接続されている。
【0022】
図4に示すように、回転に伴って肥料を所定量ずつ繰り出す繰り出しロール(図示せず)が繰り出し部13に内装されており、繰り出しロールに接続された入力ギヤ13cが繰り出し部13の右の横側面に備えられている。伝動軸37に駆動ギヤ37aが固定されており、伝動軸37の駆動ギヤ37aが繰り出し部13の入力ギヤ13cに咬合している。
【0023】
図3,4,7に示すように、伝動軸21の回転動力が伝動軸21のアーム21a及び連係ロッド23により上下の往復運動に変換され、所定角度A1の範囲での往復回転運動として伝動軸22に伝達されて、供給量調節装置24に伝達される。供給量調節装置24において、後述する所定角度A2が大小に調節されて、一方向クラッチ38により一定方向の回転運動に変換されて伝動軸37に伝達されるのであり、伝動軸37により繰り出しロールが回転駆動されて、繰り出し部13から肥料が繰り出される。
【0024】
図7,8,9に示すように、板材を箱状に折り曲げて構成された支持枠39が施肥装置11の右端部に固定されており、支持枠39の底部39aに縦壁状の右及び左の支持部材40が固定されている。支持部材40の下部のボス部40aに伝動軸22の右端部が回転自在に支持されており、支持部材40の左右方向の横軸芯P2周りに上下揺動自在に支持されたアーム41と、伝動軸22の右端部に固定されたアーム22bとに亘って、連係ロッド42が接続されている。
【0025】
図7及び
図9に示すように、支持部材40に前後方向に沿った横向きの長孔40bが形成されており、支持部材40の長孔40bに軸受け部材43がスライド自在に支持され、軸受け部材43に亘って支点ピン44が支持されて、支点ピン44にカラー45が外嵌されている。板材を断面U字状に折り曲げて天秤アーム46が構成されて、天秤アーム46の横側面に長孔46aが形成されており、天秤アーム46の長孔46aに支点ピン44が挿入されて、天秤アーム46が支点ピン44の左右方向の横軸芯P1周りに上下に揺動自在に支持されている。
【0026】
図7及び
図8に示すように、連係ロッド42がアーム41に接続されるのに加えて、天秤アーム46の後側の端部にも接続されている、支持部材40の下部に固定されたブラケット47のボス部47aに伝動軸37の右端部が回転自在に支持されて、伝動軸37の右端部に一方向クラッチ38が外嵌されており、一方向クラッチ38のアーム38aと天秤アーム46の前端部とに亘って、連係ロッド48が接続されている。
【0027】
伝動軸21の回転動力が伝動軸21のアーム21a及び連係ロッド23により上下の往復運動に変換され、所定角度A1の範囲での往復回転運動として伝動軸22に伝達されると、伝動軸22のアーム22b及び連係ロッド42を介して、天秤アーム46が横軸芯P1周りに上下揺動する。天秤アーム46により連係ロッド48が上下に往復運動して、連係ロッド48の上下の往復運動が一方向クラッチ38により一定方向の回転運動に変換されて伝動軸37に伝達される。
【0028】
図9に示すように、支点ピン44に固定された板状の規制部材44aが上方に延出されて、支持部材40の上辺部に近接するように配置されている。これにより、支点ピン44が横軸芯P1周りに回転しようとしても、支点ピン44の規制部材44aが支持部材40の上辺部に接当することにより、支点ピン44の回転が止められる。
【0029】
次に、供給量調節装置24において、支点ピン44の位置を支持部材40の長孔40bに沿って調節することにより、伝動軸37の回転速度を調節する構造(所定面積当たりの繰り出し部13の肥料の繰り出し量を調節する構造)について説明する。なお、ここでの肥料の繰り出し量は、施肥装置(農用資材供給装置)11から供給される肥料(農用資材)の供給量を意味するので、以後これを供給量と称する。
【0030】
図7及び
図9に示すように、支持枠39の前側の縦壁部39b及び後側の縦壁部39cに軸受け部49が固定されて、ネジ軸50が軸受け部49に回転自在に支持されている。鋳物により一体的に構成された調節部51が備えられており、調節部51の上部のボス部51a(内面に雌ネジが形成されている)に、ネジ軸50が挿入されている。調節部51の下部に一対のアーム部51bが備えられており、調節部51のアーム部51bの開孔に
支点ピン44が挿入されている。
【0031】
図7に示すように、ネジ軸50を回転駆動して、調節部51をネジ軸50に沿って移動させることにより、支点ピン44の位置を支持部材40の長孔40bに沿って調節することができる。この場合、天秤アーム46は連係ロッド42を介してアーム41に接続されているので、支点ピン44の移動に連れて移動することはなく、支点ピン44は天秤アーム46の長孔46aに沿って移動する。
【0032】
図7に示す状態は、調節部51を紙面左端部に位置させている状態(支点ピン44を天秤アーム46の長孔46aの紙面左端部に位置させている状態)である。伝動軸22の往復回転運動の所定角度A1の範囲は一定であるので、
図7に示す状態において、天秤アーム46の前端部が横軸芯P1周り上下揺動する所定角度A2が大きなものとなる。これにより、天秤アーム46の前端部の1回の揺動に伴って伝動軸37が大きく回転する状態となって、伝動軸37の回転速度が高速になる(所定面積当たりの繰り出し部13の肥料の供給量が多くなる状態)。
【0033】
図10に示す状態は、調節部51を紙面右端部に位置させている状態(支点ピン44を天秤アーム46の長孔46aの紙面右端部に位置させている状態)である。伝動軸22の往復回転運動の所定角度A1の範囲は一定であるので、
図10に示す状態において、天秤アーム46の前端部が横軸芯P1周り上下揺動する所定角度A2が小さなものとなる。これにより、天秤アーム46の1回の揺動に伴って伝動軸37が小さく回転する状態となって、伝動軸37の回転速度が低速になる(所定面積当たりの繰り出し部13の肥料の供給量が少なくなる状態)。
【0034】
次に、供給量調節装置24において、ネジ軸50を回転駆動する構造及び調節部51の位置を検出する構造について説明する。
図7及び
図8に示すように、ネジ軸50が支持枠39の前側の縦壁部39bから前方に突出しており、ネジ軸50の前端部に入力ギヤ50aが固定されている。
【0035】
図7及び
図8に示すように、支持枠39の前側の縦壁部39bに板状の支持部材52が固定されており、支持部材52に電動モータ53(アクチュエータに相当)及び減速機構54が固定され、減速機構54のピニオンギヤ54aがネジ軸50の入力ギヤ50aに咬合している。これにより、電動モータ53により減速機構54のピニオンギヤ54aを正方向及び逆方向に回転駆動することによって、ネジ軸50を正方向及び逆方向に回転駆動する。
【0036】
図7及び
図9に示すように、支持部材40に板状の支持部材55が固定されており、ポテンショメータにより構成された位置センサ56が支持部材55に固定されている。施肥装置11から供給される肥料の供給量は、供給量調節装置24における調節量に基づいて表示される。この表示を行う表示器として、この実施形態では、板材を折り曲げて構成された変位指針57が備えられている。この変位指針57が調節部51にボルト58により固定されており、位置センサ56の検出アーム56aのピン56bが変位指針57の上下向きの長孔57aに挿入されている。なお、調節部51と変位指針57とを鋳物により一体的に形成して、位置センサ56の検出アーム56a(ピン56b)を、調節部51(変位指針57)に直接に接続する構造を採用してもよい。
【0037】
図7及び
図9に示すように、ネジ軸50に沿って調節部51及び変位指針57が一体で移動するのに伴って、位置センサ56の検出アーム56aが左右方向の横軸芯P3周りに揺動する。これによって、位置センサ56により調節部51及び変位指針57の位置を検出するのであり、調節部51及び変位指針57の位置を、所定面積当たりの繰り出し部13の肥料の供給量として検出する。
【0038】
図7及び
図9に示すように、位置センサ56は支持板59に固定されており、支持板59が支持部材55にボルト60により固定されている。この場合、支持板59の長孔59aにボルト60が挿入されて、支持板59が支持部材55に固定されているので、支持部材55に対する支持板59及び位置センサ56の位置を、横軸芯P3周りに微調節することができるのであり、位置センサ56の検出値と調節部51及び変位指針57の位置との関係を微調節することができる。
【0039】
次に、供給量調節装置24において、変位指針57及び目盛部材61について説明する。
図7及び
図9に示すように、支持枠39の前側及び後側の縦壁部39b,39cに亘って、目盛部材61が前後方向の横軸芯P4周りに向き調節自在に支持されており、目盛部材61の後端部に目盛部材61の向きを変更する為の取っ手部61dが備えられている。
【0040】
図7及び
図9に示すように、目盛部材61は四角柱状であり、3面の各々に3種類の目盛ラベル61a,61b,61c(目盛部に相当)が貼り付けられている。目盛部材61の3面の目盛ラベル61a,61b,61cは各々異なるものであり、肥料の種類に応じた比重(標準)の目盛ラベル61a、比重(小)の目盛ラベル61b及び比重(大)の目盛ラベル61cとなっている。これにより、目盛部材61の取っ手部61dを持って目盛部材61を横軸芯P4周りに回転させて向きを変更することにより、目盛部材61のうち所望の目盛ラベル61a,61b,61cを上側に位置させることができる。
【0041】
図7及び
図9に示す状態は、目盛部材61の目盛ラベル61bを上側に位置させている状態であり、変位指針57の先端部57bが目盛部材61の目盛ラベル61bの上側に位置している状態である。この状態において、前述のようにネジ軸50に沿って調節部51及び変位指針57が移動するのに伴い、変位指針57の先端部57bが目盛部材61の目盛ラベル61bの上側に沿って移動する。
【0042】
これにより、変位指針57の先端部57bと目盛部材61の目盛ラベル61bとを目視することにより、調節部51及び変位指針57の位置を読み取ることができるのであり、所定面積当たりの繰り出し部13の肥料の供給量を読み取ることができる。この後、肥料を変更した場合には、目盛部材61のうち変更した肥料に対応した目盛ラベル61a,61b,61cを上側に位置させればよい。
【0043】
この場合、肥料の粒径の大小に応じて異なる目盛ラベルを目盛部材61に貼り付けるように構成してもよく、肥料の性状に応じて異なる目盛ラベルを目盛部材61に貼り付けるように構成してもよい。肥料の種類に応じて2枚の目盛ラベルを張り付けたり、4枚以上の目盛ラベルを貼り付けたりしてもよい。
【0044】
次に、電動モータ53を操作する手動操作具である手動スイッチ65について説明する。
図7及び
図8に示すように、板材を折り曲げて構成された支持ブラケット62が支持枠39の前側の縦壁部39bに固定されており、合成樹脂製の支持部材63が支持ブラケット62に固定されている。ポテンショメータで構成された位置センサ64が支持部材63に固定されており、位置センサ64の検出軸64aが支持部材63の開口部63aを通りネジ軸50に向けて突出している。
【0045】
図7及び
図8に示すように、手動スイッチ65が位置センサ64の検出軸64aに固定されて、手動スイッチ65が支持ブラケット62の開口部62aを通って上方に突出している。手動スイッチ65は目盛部材61の右の横外側の前側に位置する状態となり、手動スイッチ65が左右方向の横軸芯P5(位置センサ64の検出軸64a)周りに、前後方向に揺動自在に支持されている。
【0046】
図7及び
図8に示すように、手動スイッチ65は側面視で扇形状の基部65aと、基部65aに備えられた凸部状の操作部65bを備えて、合成樹脂により一体的に形成されている。手動スイッチ65の基部95aの上面の横幅が、支持ブラケット62の開口部62aの横幅と略同じに設定されているので、手動スイッチ65の基部65aの上面により支持ブラケット62の開口部62aが塞がれた状態となっており、支持ブラケット62の開口部62aを通して下側が見えない状態となっている。
【0047】
図7及び
図8に示すように、手動スイッチ65の基部65aの裏側上部と、支持部材63の下部とに亘って、板バネ66が固定されており、板バネ66により手動スイッチ65が中央の中立位置に付勢されている。これにより、手動スイッチ65を中立位置から後側の増大位置に操作しても、手動スイッチ65から手を離せば手動スイッチ65は中立位置に戻るのであり、手動スイッチ65を中立位置から前側の減少位置に操作しても、手動スイッチ65から手を離せば手動スイッチ65は中立位置に戻る。
【0048】
図7や
図10に示されているように、支持部材40の長孔40bの上側の面に、施肥装置(農用資材供給装置)11における基準供給量を作り出す調節位置である基準位置BMが示されている。基準位置BMは認識しやすい基準マーカで示されるのが好ましく、ここでは、基準マーカは、3つの刻印線または塗布線として形成され、各基準位置はA、B、Cで示されている。つまり、この基準位置BMに、供給量調節装置24の軸受け部材43の縦エッジを合わせることで、アーム41の揺動角度、つまり基準位置BMでの施肥装置11による供給量(基準供給量)が決定される。
図11に模式的に示されているように、例えば、供給量が70Kgとなるときに位置する軸受け部材43の縦エッジの位置を基準位置「A」とすることができる。同様に、供給量が40Kgの位置を基準位置「B」、供給量が10Kgの位置を基準位置「C」とすることができる。この軸受け部材43と変位指針57とは連動しているので、軸受け部材43の変位は、変位指針57の変位となる。
【0049】
この基準位置BMに関する変位指針(表示器)57と施肥装置(農用資材供給装置)11と供給量調節装置24との関係を、原理的に、
図12を用いて説明する。
図12(a)では、手動スイッチ65によって供給量調節装置24への調節量が設定されることで、施肥装置11からの肥料の供給量が変更されている。ここでは、調節量:XはX1,X2・・・で示されている。この調節量に基づいて調節される施肥装置11の肥料供給の機能は、関数:Fで示されているので、調節量:Xに基づいて調節された、施肥装置11からの実際の供給量(実供給量):Yは、
Y=F(X)で表される。調節量がX1,X2・・・の時、実供給量はY1,Y2・・・となる。なお、関数:Fは、供給量調節装置24と施肥装置11とで機械的に決定されるものであり、実質的には不変であるとみなされる。
【0050】
この調節量は、上述した供給量調節装置24では、例えば、軸受け部材43の長孔40bにおける位置に対応する。この調節量、つまり軸受け部材43の位置によって、変位指針57の位置が決定し、目盛部材61との関係で目視できる供給量、つまり表示供給量:Zが得られる。ここでは、調節量:Xによって表示供給量:Zを導く関係を関数:Dで表している。つまり、関数:Dは、軸受け部材43の変位を変位指針57の先端部57bと目盛部材61の目盛とで決まる特定値を変換する関数である。これは、必ずしも線形でなくてもよく、カムやリンクを用いることで非線形なものとすることが可能である。
【0051】
さらには、関数:Dを電気信号伝達系で構築することができる。そのような電気信号伝達系は、供給量調節装置24の調節量を電気的な調節信号として供給量調節装置から受け取る信号入力部と、調節信号に基づいて表示供給量を表示するための表示信号を生成する表示信号生成部と、表示信号に基づいて前記表示供給量を表示する表示部とを含むことになる。具体的には、この実施形態では、変位指針57及び目盛部材61からなる本発明の表示器は、位置センサ56からの電気信号を用いて表示供給量を表示させるディスプレイユニットで構築できる。
【0052】
以上の説明から明らかなように、もし変位指針57が曲がったり、目盛部材61がずれたりすると、つまり関数:Dが正常な値を導出しなくなったとすれば、同じ調節量でも異なった表示供給量となってしまう。この正常でなくなった関数:Dを修正するために、基準位置BMが用いられる。この修正を
図12の(b)を用いて説明する。
ここでは、基準位置BMとして、A、B、Cの3つの基準位置が採用されている。また、各基準位置で得られる実供給量はここでは基準供給量:Ya、Yb、Ycで表されている。さらに、A、B、Cの3つの基準位置で示された表示供給量は、Za、Zb、Zcで表されている。
各基準位置における、基準供給量と表示供給量を比較して一致しなかった場合は、関数:D、つまり変位指針57や目盛部材61にずれが生じているとみなされるので、表示供給量が基準供給量になるように、変位指針57または目盛部材61あるいはその両方を修正する。
関数:Dが電気信号伝達系の場合は、ディスプレイの数値マッピングの変更や、位置センサ56の調節により、表示供給量を基準供給量に一致させるとよい。
【0053】
このように、基準位置BMを用いた点検を行うことで、供給量の調節(設定)の高精度が保証される。
【0054】
次に、操縦パネル71の付近の構造について説明する。
図13は、操縦パネル71の付近を示しており、右及び左の前輪1を操向操作する操縦ハンドル80が操縦パネル71の中央に備えられている。操縦パネル71において操縦ハンドル80の右横側に、エンジン17の始動用のキースイッチ72、ウインカー(図示せず)などの作動を行う操作スイッチ74、エンジン17のアクセルレバー75が備えられている。
【0055】
図13に示すように、操縦パネル71において操縦ハンドル80の左横側に、走行の静油圧式無段変速装置を操作する変速レバー76、苗植付装置5を水平に維持するローリング制御の各種の設定を行う為の操作部77が備えられている。操縦パネル71において操縦ハンドル80の前側に、各種の表示を行う為の液晶の表示パネル78が備えられている。操縦パネル71において操縦ハンドル80の後側に、少数条クラッチ(図示せず)を伝動及び遮断状態に操作する操作スイッチ79が備えられている。
【0056】
図13に示すように、操縦ハンドル80を支持するハンドルポスト81に昇降レバー82が支持されており、ハンドルポスト81を覆うカバー83を通って、昇降レバー82が右の横外側に延出されている。昇降レバー82は、中央の中立位置から上方位置及び下方位置、前方位置及び後方位置の4方向に操作自在に構成されて、中立位置に付勢されている。カバー83において昇降レバー82の前側にシガーソケット84が備えられている。
【0057】
昇降レバー82を上方位置に操作すると、植付クラッチが遮断状態に操作されて、苗植付装置5が自動的に上限位置まで上昇する。昇降レバー82を下方位置に操作すると、植付クラッチが遮断状態に操作された状態で、苗植付装置5が田面まで自動的に下降するのであり、次に昇降レバー82を下方位置に操作すると、植付クラッチが伝動状態に操作される。
【0058】
外部のコンピュータシステムなどとデータ交換するために利用されるスマートフォン67を支持する支持アーム85の基部85aが、ハンドルポスト81に固定されて右斜め前方に延出されており、カバー83におけるシガーソケット84の前下側の位置を通って右の横外側に出ている。支持アーム85の中間部85bが、支持アーム85の基部85aから折り曲げられて、平面視で操作スイッチ74の前側を通って右の横外側に延出されている。
【0059】
図13に示すように、支持アーム85の端部85cが、アイドリング位置のアクセルレバー75の上方付近で上方に折り曲げられて上方に延出されており、平板状の支持台86が支持アーム85の端部85cの上端に固定されている。支持台86は前上がり状(後下がり状)の斜め姿勢に設定されており、支持台86の上面に面ファスナ86a(商品名:マジックテープ)が貼り付けられている。側面視で支持台86は、操縦ハンドル80の外周部とアイドリング位置のアクセルレバー75との間に位置している。平面視で支持台86は、操縦ハンドル80の外周部の下方に重複する位置に位置しており、アイドリング位置のアクセルレバー75の上方に重複する位置に位置している。
【0060】
施肥装置11からの供給量を調節する供給量調節装置24の調節量を操作するアクチュエータである電動モータ53は、上述したように、手動スイッチ65による指令だけでなく、スマートフォン(携帯情報端末)67による指令によっても制御可能である。このため、この乗用型田植機には、スマートフォン67とのデータ交換が可能な無線データ通信機器としてのWi−Fiユニット68及び制御装置69が備えられている。
図14に示すように、スマートフォン67とWi−Fiユニット68とが有するデータ通信機能により、この乗用型田植機は、インターネットや携帯電話網などのデータ通信回線を介して、遠隔地の営農センタに設置された管理コンピュータ200とデータ交換可能となっている。
【0061】
図14に示すように、スマートフォン67とWi−Fiユニット68とはWi−Fi規格により相互に無線通信するように構成されており、Wi−Fiユニット68と制御装置69とは車載LANの一例であるCANにより接続されている。位置センサ56,64などの各種信号機器と制御装置69とがハーネスにより接続されており、電動モータ53と制御装置69ともハーネスにより接続されている。もちろん、この信号伝送形態は一例であり、Wi−Fiユニット68以外の無線データ通信機器が使用されてもよいし、スマートフォン67とWi−Fiユニット68とを一体化させた機器を使用してもよい。またハーネス接続の一部あるいはすべてを車載LANや無線LANで置き換えることも可能である。
【0062】
営農センタの管理コンピュータ200は、この実施形態ではWEBサーバシステムとして構築されており、WEBサーバ210とデータベースサーバ220とアプリケーションサーバ230とを備えている。WEBサーバシステム自体はよく知られているので、詳しい説明は省略するが、アプリケーションサーバ230には、圃場管理部231、施肥管理部232、農機管理部234が実質的にはコンピュータプログラムによって構築されている。圃場管理部231は、各農家が所有する圃場単位の圃場情報、圃場名、圃場位置、作付け履歴、施肥履歴、収穫履歴などを生成管理して、データベースサーバ220に格納する。施肥管理部232は、実施された施肥作業の内容(日付、肥料種、単位面積当たりの施肥量など)を生成管理して、データベースサーバ220に格納する。農機管理部234は、各農作業における農機の設定データや直接農機の制御装置69に与える設定指令などを生成管理して、データベースサーバ220に格納する。
【0063】
まずは、
図14の制御システムに組み込まれた水田作業機における概略的な肥料供給量制御を説明する。
1日の作業を開始する場合、最初に植付作業を行う圃場の位置に関する圃場データが管理コンピュータ200からスマートフォン67に送信される。運転者はスマートフォン67が受信した圃場データをスマートフォン67に表示させて、表示された圃場データを目視確認しながら、目的の圃場に乗用型田植機を移動させる。
【0064】
目的の圃場に到着すると、目的の圃場における各種の作業データが管理コンピュータ200からスマートフォン67に送信される。スマートフォン67が受信した作業データのうち、所定面積当たりの繰り出し部13の肥料の供給量に相当する施肥用の作業データが、スマートフォン67からWi−Fiユニット68に送信されて、Wi−Fiユニット68から制御装置69に送られる。
【0065】
施肥用の作業データを制御装置69が受け取ると、施肥用の作業データに基づいて制御装置69が、電動モータ53に操作信号を出力して電動モータ53を作動させる。施肥用の作業データに対応する位置に調節部51が達したことが位置センサ56により検出されると、電動モータ53が停止する。これと同時に調節部51の位置が位置センサ56から、制御装置69を介してWi−Fiユニット68に送られて、Wi−Fiユニット68からスマートフォン67に送信され、スマートフォン67から管理コンピュータ200に送信される。
【0066】
作業対象となる圃場における各種の作業データにおいて、所定面積当たりの繰り出し部13の肥料の供給量以外の作業データ(植付アーム8による苗の植付深さ、株間の間隔、植付アーム8による苗の取り出し量、苗のせ台10の横送り速度等)がスマートフォン67に表示される。運転者はスマートフォン67の表示に従って、植付アーム8による苗の植付深さ、株間の間隔、植付アーム8による苗の取り出し量、苗のせ台10の横送り速度等を、手動操作により設定する。
【0067】
この手動操作の1つである、手動スイッチ65による電動モータ53の操作について説明する。手動スイッチ65を中立位置、増大位置及び減少位置に操作している状態での位置センサ64の検出値(電圧)が各々異なるので、制御装置69は位置センサ64の検出値により、手動スイッチ65が中立位置、増大位置及び減少位置に操作されていることを判断する。手動スイッチ65が中立位置に操作されていると、制御装置69から電動モータ53に操作信号は出力されず、電動モータ53は停止する。
【0068】
手動スイッチ65が増大位置に操作されると、制御装置69から電動モータ53に操作信号が出力され、ネジ軸50が正方向に回転駆動されて、調節部51が
図7及び
図10の紙面左方に移動する。手動スイッチ65から手を離すと、板バネ66により手動スイッチ65が中立位置に戻って、電動モータ53が停止する。
手動スイッチ65が減少位置に操作されると、制御装置69から電動モータ53に操作信号が出力され、ネジ軸50が逆方向に回転駆動されて、調節部51が
図7及び
図10の紙面右方に移動する。手動スイッチ65から手を離すと、板バネ66により手動スイッチ65が中立位置に戻って、電動モータ53が停止する。
【0069】
手動スイッチ65を増大及び減少位置に操作して、電動モータ53を作動させた場合には、調節部51の位置が位置センサ56から、制御装置69を介してWi−Fiユニット68に送られて、Wi−Fiユニット68からスマートフォン67に送信され、スマートフォン67から管理コンピュータ200に送信される。
【0070】
この制御装置69は、外部の管理コンピュータ200から送られてきた操作指令(外部操作信号)と、乗用田植機を運転している運転者によって操作される手動操作具である手動スイッチ65に基づく操作指令(内部操作信号)が衝突した場合に外部からの操作指令を優先させる機能を有する。なお、この外部からの操作指令には、管理コンピュータ200から送られてきた操作指令以外に、乗用田植機からはなれたところでスマートフォン67を持参している管理者による、スマートフォン67に基づく操作指令も含まれている。
【0071】
図14に示されているように、制御装置69に構築される機能部のうち、本発明に関係するものとして、外部操作信号入力部101と、手動操作信号入力部102と、優先操作信号決定部103と、供給量調節制御部104と、機器制御信号出力部105、報知信号出力部106が挙げられる。
【0072】
外部操作信号入力部101には、Wi−Fiユニット68を介して外部から無線通信によって送られてきた電動モータ53に対する外部操作信号が入力される。手動操作信号入力部102には、手動スイッチ65の操作量に基づいて位置センサ64で生成された手動操作信号が入力される。優先操作信号決定部103は、手動操作信号と外部操作信号とが同時に発生している時には、手動操作信号に対して外部操作信号を優先的に電動モータ53に対する操作信号として取り扱う。優先操作信号決定部103は、図示されていない操作具の操作によって生成される優先切替信号によって、手動操作信号を外部操作信号に対して優先的に取り扱う例外モードも有する。
なお、外部操作信号によって規定される調節量に基づいて施肥装置11の供給量が調節されている時に、この乗用田植機のキースイッチ72がオフされた場合には、その調節量が記憶部に記憶される。したがって、キースイッチ72がオンされた段階で、この調節量に基づく供給量調節が再開される。
【0073】
供給量調節制御部104は、優先操作信号決定部103から転送される手動操作信号または外部操作信号に基づいて電動モータ53に駆動信号を与えて電動モータ53を駆動する。その際、位置センサ56からの位置信号をフィードバック信号として、電動モータ53によるネジ軸50、結果的には調節部51の位置制御を行う。機器制御信号出力部105は、施肥装置(農用資材供給装置)11を含むこの乗用田植機の各種制御機器を制御するため制御信号を生成して、出力する。その一例として、施肥装置11の回転動力を伝達する動力系に設けられた施肥クラッチの入り/切を切り替える切替信号を出力する。したがって、この実施形態の乗用田植機では、外部操作信号として施肥クラッチの入り/切信号を外部から制御装置69に送ることにより、施肥クラッチが操作され、施肥装置11を駆動または停止させることできる。
例えば、管理コンピュータ200から、制御装置69に施肥なしの指令がくれば、施肥クラッチが切り操作されるとともに、ブロア14も停止する。また、制御装置69に施肥実行の指令が施肥量を決定する調節量とともに送られてくれば、施肥クラッチが入り操作されるとともに、ブロア14も駆動する。さらに、入力された調節量に基づいて、施肥装置11は、所望の供給量に設定される。
【0074】
報知信号出力部106は、外部操作信号の入力時に信号入力中を報知する第1報知信号と、外部操作信号による前記供給量の調節時に供給量調節中を報知する第2報知信号と、当該調節の完了を報知する第3報知信号とを報知デバイス110に出力する。第1報知信号、第2報知信号、第3報知信号は、それぞれ互いに異なるものである。例えば、報知デバイス110がブザーである場合、ビープ音の回数、持続長さ、間隔などを変えることによって、識別可能な報知音を作ることができる。これにより、運転者は、ビープ音によって、外部操作信号の受信中、供給量調節の実行中、供給量調節の完了、さらに受信した調節量が現状の調節量と一致していることなどを認識することができる。
【0075】
外部操作信号に基づいて供給量が自動的に調節される場合、運転者は、乗用田植機を走行させて施肥作業を開始してよいかどうかを、スマートフォン67の画面で確認することができる。外部操作信号がスマートフォン67を経由するため、スマートフォン67の画面に目標の供給量(施肥量)を表示させることも可能である。さらに、スマートフォン67は制御装置69ともデータ交換可能であるので、供給量調節の完了を制御装置69から受け取ることができる。従って、供給量調節の完了の時点で、スマートフォン67の画面に施肥作業の開始ボタンを表示させることも可能である。この開始ボタンを押すことによって乗用田植機の施肥作業に関する諸機能をアクティブにするように構成すれば、確実な作業が実現する。
【0076】
[発明の実施の第1別形態]
上述した実施形態におけるシガーソケット84に代えて、USBポート(図示せず)を備えてもよい。これにより、Wi−Fiユニット68を備えない場合、スマートフォン67と制御装置69とをUSBポートにより直接に接続することができ、USBポートを介してスマートフォン67の充電も行うことができる。この場合に、スマートフォン67がWi−Fiユニット68の機能も兼用する
【0077】
上述した実施形態におけるポテンショメータ(位置センサ64)を廃止し、手動スイッチ65が増大位置に操作されたことを検出するリミットスイッチ(図示せず)、及び手動スイッチ65が減少位置に操作されたことを検出するリミットスイッチ(図示せず)を備えて、位置センサ64を構成してもよい。