(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行用動力源として少なくともモータを搭載すると共に、該モータの電源であるバッテリの充放電に伴う温度上昇を抑制すべく、冷却制御手段により冷却手段を駆動制御して上記バッテリを冷却する電気自動車のバッテリ冷却装置において、
上記バッテリが充放電に伴って温度上昇する温度上昇期間と該充放電の中止に伴って温度上昇が停滞する温度停滞期間とを判別するバッテリ温度変化判別手段を備え、
上記冷却制御手段は、上記バッテリ温度変化判別手段により判別された上記温度停滞期間において上記冷却手段を作動させることを特徴とする電気自動車のバッテリ冷却装置。
車両が走行する予定の走行予定経路の路面勾配に関する情報に基づき、該走行予定経路を走行するときの上記モータの運転パターンを予測し、該運転パターンに基づき上記バッテリの充電率の変化パターンを予測する充電率変化パターン予測手段と、
上記充電率変化パターン予測手段により予測された充電率の変化パターンに基づき、冷却能力を抑制した第1の作動状態で上記冷却手段を作動させた場合の上記バッテリの温度の変化パターンを予測する温度変化パターン予測手段と、
上記温度変化パターン予測手段により予測された上記バッテリの温度の変化パターンに基づき、上記バッテリの温度が予め設定された上限温度を超えるか否かを予測する過熱予測手段とを備え、
上記バッテリ温度変化判別手段は、上記温度変化パターン予測手段により予測された上記バッテリの温度の変化パターンに基づき上記走行予定経路中に点在する上記温度停滞期間を判別し、
上記冷却制御手段は、上記過熱予測手段により上記バッテリの温度が上限温度を超えると予測されたとき、上記各温度停滞期間において上記冷却手段を順次作動させるように冷却スケジュールを確定し、該冷却スケジュールに沿って、上記冷却手段を上記第1の作動状態に比較して冷却能力を高めた第2の作動状態で作動させることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車のバッテリ冷却装置。
上記冷却制御手段は、上記上限温度に対するバッテリ温度の超過量を算出し、該温度超過量に相当する分だけ上記バッテリの温度が低下するまで、上記各温度停滞期間において上記冷却手段を順次作動させるように上記冷却スケジュールを確定し、該冷却スケジュールに沿って上記冷却手段を作動させることを特徴とする請求項2に記載の電気自動車のバッテリ冷却装置。
上記冷却制御手段は、上記冷却スケジュールに沿った上記冷却手段の作動が終了すると、その時点からの新たな走行予定経路に基づき冷却スケジュールを確定し、該冷却スケジュールに沿って上記冷却手段を作動させることを特徴とする請求項3に記載の電気自動車のバッテリ冷却装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、冷却ファンの作動のための電力消費は、ハイブリッド電気自動車の場合には燃費、電気自動車の場合には電費(以下、これらを燃費と総称する)の悪化の要因になる。そこで、過熱によるバッテリの劣化や破損を防止した上で、冷却ファンの冷却能力(例えば回転速度や作動時間)を可能な限り抑制することが望まれている。そのためには、限られた冷却ファンの冷却能力をバッテリの温度低下のために効率的に利用する必要があるが、特許文献1のバッテリ冷却装置では、このような要望を満たすことができなかった。
【0006】
即ち、特許文献1のバッテリ冷却装置では、バッテリ温度と充放電量が増加する地点までの距離とから冷却開始地点(冷却ファンの作動開始タイミング)を算出しているため、このときのバッテリは温度上昇中の場合も温度低下中の場合もあり得る。バッテリ温度が急激に上昇しているときに冷却ファンの作動を開始した場合、その冷却能力は、急激な温度上昇を抑制するために消費されてしまう。よって、温度上昇の抑制後にさらに温度低下させるには、かなり高い冷却能力が冷却ファンに要求される。結果として多くの電力を消費してしまい、燃費が悪化するという問題があった。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、冷却手段を適切なタイミングで作動させることにより、過熱に起因するバッテリの劣化や破損を防止した上で、冷却手段の冷却能力を必要最小限にとどめて電力消費を抑制でき、もって良好な燃費を実現することができる電気自動車のバッテリ冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の電気自動車のバッテリ冷却装置は、走行用動力源として少なくともモータを搭載すると共に、モータの電源であるバッテリの充放電に伴う温度上昇を抑制すべく、冷却制御手段により冷却手段を駆動制御してバッテリを冷却する電気自動車のバッテリ冷却装置において、バッテリが充放電に伴って温度上昇する温度上昇期間と充放電の中止に伴って温度上昇が停滞する温度停滞期間とを判別するバッテリ温度変化判別手段を備え、バッテリ温度変化判別手段により判別された温度停滞期間において冷却手段を作動させるように、冷却制御手段が構成されたことを特徴とする。
【0009】
バッテリ温度が上昇する温度上昇期間中に冷却手段は作動せず、温度上昇が停滞する温度停滞期間において冷却手段が作動してバッテリの過熱が防止される。このように温度停滞期間で冷却手段が作動することから、同一の温度低下量を達成する場合に、より低い冷却手段の冷却能力で達成可能となる。
【0010】
その他の態様として、車両が走行する予定の走行予定経路の路面勾配に関する情報に基づき、走行予定経路を走行するときのモータの運転パターンを予測し、運転パターンに基づき上記バッテリの充電率の変化パターンを予測する充電率変化パターン予測手段と、充電率変化パターン予測手段により予測された充電率の変化パターンに基づき、冷却能力を抑制した第1の作動状態で冷却手段を作動させた場合のバッテリの温度の変化パターンを予測する温度変化パターン予測手段と、温度変化パターン予測手段により予測されたバッテリの温度の変化パターンに基づき、バッテリの温度が予め設定された上限温度を超えるか否かを予測する過熱予測手段とを備え、温度変化パターン予測手段により予測されたバッテリの温度の変化パターンに基づき走行予定経路中に点在する温度停滞期間を判別するように、バッテリ温度変化判別手段を構成し、過熱予測手段によりバッテリの温度が上限温度を超えると予測されたとき、各温度停滞期間において冷却手段を順次作動させるように冷却スケジュールを確定し、冷却スケジュールに沿って、冷却手段を第1の作動状態に比較して冷却能力を高めた第2の作動状態で作動させるように、冷却制御手段を構成することが望ましい。
【0011】
車両が走行予定経路を走行するときのバッテリ温度の変化パターンが予測され、その変化パターンに基づきバッテリ温度が上限温度を超えるか否かが予測される。そして、バッテリ温度が上限温度を超える場合には、バッテリ温度の変化パターンから判別した各温度停滞期間において冷却手段を順次作動させるように、冷却スケジュールが確定される。そして、冷却能力を高めた第2の作動状態で冷却スケジュールに沿って冷却手段が作動することにより、バッテリの過熱が防止される。
【0012】
別の態様として、上限温度に対するバッテリ温度の超過量を算出し、温度超過量に相当する分だけバッテリの温度が低下するまで、各温度停滞期間において冷却手段を順次作動させるように冷却スケジュールを確定し、冷却スケジュールに沿って冷却手段を作動させるように、冷却制御手段を構成することが望ましい。
上限温度に対するバッテリ温度の超過量に相当する分だけバッテリの温度が低下するまで、冷却スケジュールに沿って冷却手段が作動する。結果として必要最小限のバッテリ温度の低下が行われるため、冷却手段の電力消費を抑制した上で、バッテリ温度が上限温度の直前に確実に抑制される。
【0013】
別の態様として、冷却スケジュールに沿った冷却手段の作動が終了すると、その時点からの新たな走行予定経路に基づき冷却スケジュールを確定し、冷却スケジュールに沿って冷却手段を作動させるように、冷却制御手段を構成することが望ましい。
冷却スケジュールが終了する度に、新たな走行予定経路に基づき冷却スケジュールが確定される。結果として、冷却スケジュールは最新の走行予定経路に対応する内容に常に更新されるため、より適切な冷却手段の作動、ひいては一層の電力消費の抑制が実現される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷却手段を適切なタイミングで作動させることにより、過熱に起因するバッテリの劣化や破損を防止した上で、冷却手段の冷却能力を必要最小限にとどめて電力消費を抑制でき、もって良好な燃費を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をハイブリッド型トラックのバッテリ冷却装置に具体化した一実施形態を説明する。
図1は本実施形態のバッテリ冷却装置が搭載されたハイブリッド型トラックを示す全体構成図である。
ハイブリッド型トラック1は所謂パラレル型ハイブリッド車両として構成されており、以下の説明では、車両と称する場合もある。車両1には走行用動力源としてディーゼルエンジン(以下、エンジンという)2、及び例えば永久磁石式同期電動機のように発電機としても作動可能なモータ3が搭載されている。エンジン2の出力軸にはクラッチ4が連結され、クラッチ4にはモータ3の回転軸を介して自動変速機5の入力側が連結されている。自動変速機5の出力側にはプロペラシャフト6を介して差動装置7が連結され、差動装置7には駆動軸8を介して左右の駆動輪9が連結されている。
【0017】
自動変速機5は一般的な手動変速機をベースとしてクラッチ4の断接操作及び変速段の切換操作を自動化したものであり、本実施形態では、前進12速後退1速の変速段を有している。当然ながら、変速機5の構成はこれに限るものではなく任意に変更可能であり、例えば手動式変速機として具体化してもよいし、2系統の動力伝達系を備えたいわゆるデュアルクラッチ式自動変速機として具体化してもよい。
【0018】
モータ3にはインバータ10を介してバッテリ11が接続されている。バッテリ11に蓄えられた直流電力はインバータ10により交流電力に変換されてモータ3に供給され(力行制御)、モータ3が発生した駆動力は自動変速機5で変速された後に駆動輪9に伝達されて車両1を走行させる。また、例えば車両1の減速時や降坂路での走行時には、駆動輪9側からの逆駆動によりモータ3が発電機として作動する(回生制御)。モータ3が発生した負側の駆動力は制動力として駆動輪9側に伝達されると共に、モータ3が発電した交流電力がインバータ10で直流電力に変換されてバッテリ11に充電される。
【0019】
このようなモータ3が発生する駆動力は上記クラッチ4の断接状態に関わらず駆動輪9側に伝達され、これに対してエンジン2が発生する駆動力はクラッチ4の接続時に限って駆動輪9側に伝達される。従って、クラッチ4の切断時には、上記のようにモータ3が発生する正側または負側の駆動力が駆動輪9側に伝達されて車両1が走行する。また、クラッチ4の接続時には、エンジン2及びモータ3の駆動力が駆動輪9側に伝達されたり、或いはエンジン2の駆動力のみが駆動輪側に伝達されたりして車両1が走行する。
【0020】
一方、バッテリ11には、モータ26を駆動源とした冷却ファン27(冷却手段)が備えられている。モータ26はインバータ10を介してバッテリ11から供給される電力により冷却ファン27を回転駆動し、冷却ファン27からの送風によりバッテリ11が冷却されるようになっている。
なお、このように本実施形態では空冷式の冷却手段を採用したが、冷却手段の構成はこれに限ることはなく、例えば水冷式の冷却手段を採用してもよい。具体的には、バッテリ11の周囲に冷却水路を形成して内部を循環する冷却水によりバッテリ11を冷却し、この冷却により昇温した冷却水を順次ラジエータに導いて温度低下させてもよい。
【0021】
車両ECU13は車両全体を統合制御するための制御回路である。そのために車両ECU13には、アクセルペダル14の操作量θaccを検出するアクセルセンサ15、ブレーキペダル16の踏込操作を検出するブレーキスイッチ17、車両1の速度Vを検出する車速センサ18、エンジン2の回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ19、モータ3の回転速度Nmを検出するモータ回転速度センサ20、及びバッテリ11の温度Tbを検出する温度センサ28(温度検出手段)などの各種センサ・スイッチ類が接続されている。
また、車両ECU13には、上記した冷却ファン27のモータ26、図示はしないがクラッチ4を断接操作するアクチュエータ、及び自動変速機5を変速操作するアクチュエータなどが接続されると共に、エンジン制御用のエンジンECU22、インバータ制御用のインバータECU23、及びバッテリ11を管理するバッテリECU24が接続されている。
【0022】
車両ECU13は、運転者によるアクセル操作量θaccなどに基づき車両1を走行させるために必要な要求トルクを算出し、その要求トルクやバッテリ11のSOCなどに基づき車両1の走行モードを選択する。本実施形態では走行モードとして、エンジン2の駆動力のみを用いるE/Gモード、モータ3の駆動力のみを用いるEVモード、及びエンジン2及びモータ3の駆動力を共に用いるHEVモードが設定されており、その何れかの走行モードを車両ECU13が選択するようになっている。
【0023】
車両ECU13は選択した走行モードに基づき、要求トルクをエンジン2やモータ3が出力すべきトルク指令値に換算する。例えばHEVモードでは要求トルクをエンジン2側及びモータ3側に配分した上で、その時点の変速段に基づきエンジン2及びモータ3のトルク指令値を算出する。また、E/Gモードでは要求トルクを変速段に基づきエンジン2へのトルク指令値に換算し、EVモードでは要求トルクを変速段に基づきモータ3へのトルク指令値に換算する。
【0024】
そして、車両ECU13は選択した走行モードを実行すべく、EVモードでは上記クラッチ4を切断し、E/Gモード及びHEVモードではクラッチ4を接続した上で、エンジンECU22及びインバータECU23にトルク指令値を適宜出力する。また、車両1の走行中において車両ECU13は、アクセル操作量θaccや車速Vなどに基づき図示しないシフトマップから目標変速段を算出し、この目標変速段を達成すべく、アクチュエータによりクラッチ4の断接操作及び変速段の切換操作を実行する。
【0025】
一方、エンジンECU22は、車両ECU13から入力された走行モード及びトルク指令値を達成するように噴射量制御や噴射時期制御を実行する。例えばE/GモードやHEVモードでは、正側のトルク指令値に対してエンジン2に駆動力を発生させ、負側のトルク指令値に対してエンジンブレーキを発生させる。また、EVモードの場合には、燃料噴射の中止によりエンジン2を停止保持する、またはアイドル運転状態とする。
【0026】
また、インバータECU23は、車両ECU13から入力された走行モード及びトルク指令値を達成するように、インバータ10を駆動制御する。例えばEVモードやHEVモードでは、正側のトルク指令値に対してモータ3を力行制御して正側の駆動力を発生させ、負側のトルク指令値に対してはモータ3を回生制御して負側の駆動力を発生させる。また、E/Gモードの場合には、モータ3の駆動力を0に制御する。また、バッテリECU24は、バッテリ11の温度、バッテリ11の電圧、インバータ10とバッテリ11との間に流れる電流などを検出し、これらの検出結果からバッテリ11のSOCを逐次算出して車両ECU13に出力する。
【0027】
一方、車両ECU13は、充放電に伴う内部発熱に起因するバッテリ11の過熱を防止するために、冷却ファン27のモータ26を駆動制御する(冷却制御手段)。当該制御は、自車の走行予定経路に基づきバッテリ11の温度変化パターンを予測し、その温度変化パターンに基づき冷却ファン27を適宜作動させるものである。この予測処理に関しては特許文献1のバッテリ冷却装置と近似するが、[発明が解決しようとする課題]で述べたように特許文献1の技術では、バッテリ温度Tbttの上昇中においても冷却ファン27の作動を開始することから、限られた冷却ファン27の冷却能力を効率的に利用できずに燃費が悪化するという問題があった。
【0028】
そこで、本実施形態では、予測したバッテリ11の温度変化パターンに基づき、バッテリ温度Tbttの上昇が停滞する期間(以下、温度停滞期間Taと称し、バッテリ11が充放電されずに略一定のSOCが維持される期間でもある)に限って冷却ファン27を作動させる対策を講じており、以下、当該対策のために車両ECU13が実行する処理について説明する。
自車の走行予定経路に基づきバッテリ11の温度変化パターンを予測するには、走行予定経路の路面勾配の情報が必要である。走行予定経路に存在する登坂路や降坂路に応じて走行用のモータ3の力行制御や回生制御が実行され、それに応じてバッテリ11が充放電されてバッテリ温度Tbttが上昇するためである。そこで、路面勾配を含めた走行予定経路の各種情報を取得するために、車両ECU13には、
図1に示すようにナビゲーション装置31及び通信装置32が接続されている。
【0029】
ナビゲーション装置31は自己の記憶領域に予め地図情報を記憶しており、車両1の走行中にはアンテナを介してGPS情報を逐次受信して地図上の自車位置を特定する。また、通信装置32は路側に設置されているデータセンタの路側通信システムとの間で路車間通信を行うと共に、周囲を走行中の他車との間で車々間通信を行う。通信対象としては、例えば自車が保有しない地図情報、道路情報(道路のカーブや路面勾配など)や交通情報(渋滞情報、事故情報、工事情報など)、或いは地域情報(観光スポットの案内など)などがあり、通信装置32は、これらの情報を路側通信システムや他車から取得したり、逆に他車に供給したりする。
【0030】
車両ECU13は、これらの各種情報をナビゲーション装置31及び通信装置32を介して取得する。また、ナビゲーション装置32には運転者により走行予定経路が入力され、車両ECU13は、この走行予定経路の路面勾配(より具体的には、登坂路や降坂路に起因する起伏変化)に基づき、走行予定経路を走行しているときのバッテリ温度Tbttの変化パターンを予測する。
【0031】
そして、この温度変化パターンに基づき、走行予定経路中に点在するバッテリ温度Tbttが上昇する温度上昇期間Tb、及びバッテリ温度Tbttの上昇が停滞する温度停滞期間Taをそれぞれ特定する(バッテリ温度変化判別手段)。これと並行して、バッテリ11の温度変化パターンに基づき走行予定経路の走行中にバッテリ11の温度が上限温度Tlmtを超えるか否かを判定する。上限温度Tlmtは、バッテリ11にとって許容可能な上限の温度として予め設定された閾値である。バッテリ温度Tbttが上限温度Tlmtを超えると予測した場合には、温度停滞期間Ta毎に冷却ファン27を作動させて、上限温度Tlmtに対する超過量ΔTexceedだけ事前にバッテリ温度Tbttを低下可能な冷却ファン27の作動スケジュール(以下、冷却スケジュールという)を作成し、この冷却スケジュールに従って冷却ファン27を作動させる。
【0032】
図2は車両ECU13が実行する冷却スケジュール確定ルーチンを示すフローチャート、
図3は冷却スケジュールの実行状況を示すタイムチャートであり、これらの図に基づきさらに詳細に説明する。
まず車両ECU13は
図2のステップS2で、ナビゲーション装置31及び通信装置32から自車の位置情報、走行予定経路、及び走行予定経路の路面勾配に関する情報を取得する。続くステップS4では、バッテリECU24から入力された現在のバッテリ11のSOCを起点として、走行予定経路を走行したときのSCOの変化パターンを予測する(充電率変化パターン予測手段)。登坂路や降坂路の起伏変化に応じてモータ3の力行制御や回生制御が実行されるため、まず路面勾配の情報から走行予定経路を走行しているときのモータ3の運転パターンを予測できる。そして、モータ3の運転パターンに応じてバッテリ11が充放電されるため、
図3に示すように、モータ3の運転パターンからバッテリ11のSCOの変化パターンを予測できる。
【0033】
その後、ステップS6で、予測したSCOの変化パターンに基づき、冷却ファン27を最小回転(最小冷却能力)で作動させ続けたとき(第1の作動状態)のバッテリ温度Tbttの変化パターンを予測する(温度変化パターン予測手段)。バッテリ11のSOCが急激に増減するほどバッテリ11への充放電電流が大であり、周知のように、充放電電流の二乗と相関するようにバッテリ11が発熱する。
よって、まずSOCの変化パターンに基づき、
図3に示すように単位時間当たりのSOCの変化量ΔSOCの二乗(ΔSOC
2 )の変化パターンを予測する。ΔSOC
2 は、充放電によってバッテリ11に生じる発熱量と相関することになる。詳しくは、バッテリ11の充電に伴うSOCの増加期間(ΔSOCが正)及び放電に伴うSOCの低下期間(ΔSOCが負)では、ΔSOC
2 が正の値となってバッテリ温度Tbttが上昇する(温度上昇期間Tb)。また、バッテリ11が充放電されずにSOCが略一定に保持される期間(ΔSOC=0)では、ΔSOC
2 が0となってバッテリ温度Tbttは上昇しない(温度停滞期間Ta)。
【0034】
このようにして予測されたΔSOC
2 の変化パターンに基づき、上記ステップS6では、現在のバッテリ温度Tbttを起点として、走行予定経路を走行中におけるバッテリ温度Tbttの変化パターンを予測する。
図3に示すようにΔSOC
2 が0の期間には、冷却ファン27の冷却によりバッテリ温度Tbttが緩やかに低下し、ΔSOC
2 が正の値の期間には、最小回転の冷却ファン27では冷却不足になるためバッテリ温度Tbttが上昇する。このように上昇と低下を繰り返しながら、バッテリ温度Tbttは全体として次第に上昇する。
【0035】
続くステップS8では、予測したバッテリ温度Tbttの変化パターンに基づき、バッテリ温度Tbttが上限温度Tlmtを超えるか否かを予測し(過熱予測手段)、No(否定)のときにはそのままルーチンを終了する。また、ステップS8の判定がYes(肯定)のときにはステップS10に移行する。
バッテリ温度Tbttの変化パターンに従って上昇中のバッテリ温度Tbttが上限温度Tlmtを超えるか、或いは上限温度Tlmtよりも低温側で平衡するかは、現在のバッテリ温度Tbttや外気温度などの外的な要因によって相違する。例えば現在のバッテリ温度Tbttが十分に低く、且つ厳寒により温度上昇し難い環境であれば、バッテリ温度Tbttは上限温度Tlmtに超えることなく低温側で平衡する。よって、この場合には、以下に述べる温度停滞期間Ta毎の冷却ファン27によるバッテリ11の冷却が不要と見なせるため、
図2のフローチャートではルーチンを終了している。
【0036】
また、現在のバッテリ温度Tbttがかなり高く、且つ酷暑により温度上昇し易い環境であれば、短期間のうちにバッテリ温度Tbttが上限温度Tlmtを超える。よって、この場合には、冷却ファン27によるバッテリ11の冷却が必要と見なせる。このようなときに車両ECU13はステップS10に移行し、予測したバッテリ温度Tbttの変化パターンに基づき、上限温度Tlmtに対するバッテリ温度Tbttの超過量ΔTexceedを算出する。
上昇と低下とを繰り返しながらバッテリ温度Tbttは全体として次第に上昇し、何れかの時点で上昇中に上限温度Tlmtを超え、その後に下降に転じる。この最初にバッテリ温度Tbttが上限温度Tlmtを超えたときの温度超過量ΔTexceedがステップS10で算出される。
【0037】
続くステップS12では、予測したバッテリ温度Tbttの変化パターンに基づき、バッテリ温度Tbttの上昇が停滞する温度停滞期間Taをそれぞれ特定する。
図3に示すように、温度停滞期間Taは、ΔSOC
2 が0に保持される期間、換言すればバッテリ11のSOCが略一定に保たれる期間として走行予定経路中に多数点在することになり、各温度停滞期間Taの間に温度上昇期間Tbがそれぞれ介在する。
その後、ステップS14で冷却試行回数nとして1をセットする。以下に述べるように、各温度停滞期間Taにおいて冷却ファン27を作動させたときのバッテリ11の冷却状態(バッテリ温度Tbttの低下量ΔTdrop)をシミュレートする。冷却試行回数nとは、このときのバッテリ11に対する冷却の試行回数を意味し、換言すれば、現時点から順に各温度停滞期間Taに付した番号でもある。
【0038】
続くステップS16では、現時点からn回目の温度停滞期間Taが終了するまでに、各温度停滞期間Taにおいて冷却ファン27を最小冷却能力よりも高い冷却能力(例えば最大冷却能力の50%)で作動させた場合に得られるバッテリ11の温度低下量ΔTdropを算出する。
温度低下量ΔTdropは、冷却ファン27が作動する温度停滞期間Ta中に増加し、その温度停滞期間Taが終了して冷却ファン27が停止すると減少し始める。冷却ファン27の冷却能力が最小冷却能力から高められているため、温度停滞期間Taにおけるバッテリ温度Tbttの増加(即ち、温度低下)はより急激なものとなり、結果として温度低下量ΔTdropは増加と減少を繰り返しながら全体として次第に増加する。
【0039】
このようにしてステップS16で現在の冷却試行回数nに対応する温度低下量ΔTdropを算出し、続くステップS18では温度低下量ΔTdropが温度超過量ΔTexceedを超えているか否かを判定する。判定がNoのときにはステップS20に移行して冷却試行回数nを+1インクリメントした後に、再びステップS16,18の処理を繰り返す。冷却試行回数nが増加する度に新たな温度停滞期間Taが加えられて、その温度停滞期間Ta中において冷却が試行されるため、予測される温度低下量ΔTdropは次第に増加する。
【0040】
そして、ステップS18の判定がYesになるとステップS22に移行し、温度低下量ΔTdropが温度超過量ΔTexceedを超える要因になった最後の温度停滞期間Taが終了するまでを、現時点からの冷却スケジュールとして確定する。
図3の例では、n=3の温度停滞期間Taが終了するまでが冷却スケジュールとして確定される。
従って、このときの冷却スケジュールは、n=1〜3の各温度停滞期間Taにおいて冷却ファン27を順次作動させる内容となり、その実施により、バッテリ温度Tbttは温度低下量ΔTdropだけ低下することになる。
【0041】
以上のようにして冷却スケジュールを確定した後に、車両ECU13は、
図3に示すように実際に冷却スケジュールに沿って冷却ファン27を作動させる。即ち、最小冷却能力で冷却した場合にバッテリ温度Tbttが上限温度Tlmtを超える時期はかなり後であるが、現時点で冷却スケジュールに沿った冷却ファン27の作動(例えば最大冷却能力の50%)によりバッテリ11が冷却され、バッテリ温度Tbttが温度低下量ΔTdropだけ事前に低下する。結果として、その後にたとえ冷却ファン27を最小冷却能力で作動させたとしても、バッテリ温度Tbttは上限温度Tlmtを超えることなくその直前に抑制される。
【0042】
そして、冷却スケジュールに沿って冷却ファン27が作動されてn=3の温度停滞期間Taが終了すると、再び上記と同様の手順により
図2のルーチンに従って予測処理が開始される。従って、
図3の例では、n=3の温度停滞期間Taが終了した時点からの新たな走行予定経路に基づきバッテリ温度Tbttの変化パターンが予測され、バッテリ温度Tbttが上限温度Tlmtを超える場合には、上限温度Tlmtの直前に抑制可能な冷却スケジュールが確定される。この冷却スケジュールに沿って各温度停滞期間Taで冷却ファン27が所定の冷却能力で順次作動することにより、事前にバッテリ11が冷却される。
なお、冷却スケジュールが終了した時点で再び予測処理を繰り返す代わりに、例えば冷却スケジュールの終了から所定時間が経過した後、或いは所定距離走行した後に、再び予測処理を繰り返すようにしてもよい。
【0043】
このように冷却スケジュールが終了する毎に新たにバッテリ温度Tbttの変化パターンが予測され、バッテリ温度Tbttが上限温度Tlmtを超えると予測される場合には、上限温度Tlmtの直前に抑制可能な冷却スケジュールが確定されて事前にバッテリ11が冷却される。結果として、冷却スケジュールの実行毎に必要最小限のバッテリ温度Tbttの低下(温度低下量ΔTdrop)が行われるため、モータ26の電力消費を抑制した上で、バッテリ温度Tbttが上限温度Tlmtの直前に確実に抑制される。
【0044】
そして、冷却スケジュールでは、特許文献1の技術のようにバッテリ温度Tbttの上昇中(本実施形態の温度上昇期間Tbに相当)に冷却ファン27を作動させることなく、バッテリ温度Tbttの上昇が停滞する温度停滞期間Taに限って冷却ファン27を作動させている。このため、同一の温度低下量ΔTdropを達成する場合には、特許文献1の技術に比較して、より低い冷却ファン27の冷却能力、例えばより低い回転速度、或いはより少ない冷却試行回数(作動時間)で温度低下量ΔTdropを達成できることになる。
【0045】
以上のように、バッテリ温度Tbttを抑制するための温度低下量ΔTdropを必要最小限に設定し、且つその温度低下量ΔTdropを達成するための冷却ファン27の作動を温度停滞期間Taに限定している。よって、これらの要因が相俟って、過熱に起因するバッテリ11の劣化や破損を防止した上で、冷却ファン27の冷却能力を必要最小限にとどめて電力消費を抑制でき、もって良好な燃費を実現することができる。
また、冷却スケジュールが終了する度に、新たな走行予定経路に基づき予測処理を開始している。結果として、冷却スケジュールは最新の走行予定経路に対応する内容に常に更新されるため、より適切な冷却ファン27の作動、ひいては一層の電力消費の抑制を実現することができる。
【0046】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態ではハイブリッド型トラックに適用したが、ハイブリッド型のバスや乗用車に適用してもよいし、走行用動力源としてモータのみを備えた電気自動車に適用してもよい。
また上記実施形態では、予定走行経路に基づきバッテリ温度Tbttの変化パターンを予測し、バッテリ温度Tbttが上限温度Tlmtを超えると予測した場合に、温度超過量ΔTexceedに相当する分(温度低下量ΔTdrop)だけバッテリ温度Tbttを低下させるように冷却スケジュールを確定して、事前にバッテリ11を冷却した。しかし、このような予測処理を用いることは必ずしも必要ない。
【0047】
例えば一般的なバッテリ11の温度制御と同様に、実際のバッテリ温度Tbttが上限温度Tlmtに達した時点で冷却ファン27の作動を開始し、バッテリ温度Tbttが所定量だけ低下すると冷却ファン27の作動を停止させるようにしてもよい。この場合であっても、現在のバッテリ11のSOCから発熱量と相関するΔSOC
2 を算出し、ΔSOC
2 が0に保たれる期間を温度停滞期間Taとして特定し、この温度停滞期間Taに限って冷却ファン27を作動させればよい。
また、予測処理を用いる場合であっても、その手順は上記実施形態に限ることはない。例えば温度超過量ΔTexceedに基づき冷却スケジュールを確定することなく、予め設定した冷却試行回数nだけ各温度停滞期間Taで冷却ファン27を作動させる内容で冷却スケジュールを確定してもよい。
【0048】
また上記実施形態では、温度停滞期間Taに限って冷却ファン27を作動させた。しかし、冷却ファン27の作動は温度停滞期間Taのみに厳密に限るものではなく、主に温度停滞期間Taで冷却ファン27を作動させるのであればよい。よって、例えば温度停滞期間Taの両側の温度上昇期間Tb側にはみ出すように冷却ファン27の作動期間を設定してもよいし、温度停滞期間Ta中の一部で冷却ファン27を作動させるようにしてもよい。