(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コイルを巻回するための巻枠と、前記巻枠にコイル状に巻回されたヒータ線と、前記ヒータ線に重なるようにコイル状に巻回された超伝導線と、前記巻枠を支持する筐体とを備え、冷凍機で冷却される超電導装置内に設けられた超電導コイルを含む超電導回路を断続する永久電流スイッチであって、
前記永久電流スイッチは、前記筐体の内部と外部とを連通させ且つ前記筐体の内部に気体及び/又は液体の冷媒を供給する導入口を有し、
前記巻枠が、伝熱量を制限する伝熱制限部材を介して前記冷凍機の冷却部材上に支持されている
ことを特徴とする永久電流スイッチ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。従って、本発明の技術的範囲は、本実施形態に開示内容に限定されるものではない。また、以下に説明する各実施形態において、同一の構成部材には、同一の符号及び同一の名称を付すこととする。従って、同一の符号及び同一の名称が付された構成部材については、同じ説明を繰り返さない。
【0022】
[第1実施形態]
図1及び
図2を参照して、本発明の第1実施形態による永久電流スイッチ1Aについて説明する。
図1は、MRI(磁気共鳴画像)装置やNMR(核磁気共鳴)装置などに用いられる磁場発生装置である超電導装置10の概略構成を示す図である。
図2は、永久電流スイッチ1Aの内部の構成を示す断面図である。
【0023】
まず、
図1を参照して、永久電流スイッチ1Aが設けられる超電導装置10の構成を説明する。
超電導装置10は、収納容器2と、収納容器2に収納された超電導コイル3と、収納容器2の外表面が室温の大気と触れないように収納容器2を内部に保持する真空容器4と、超電導コイル3を超電導転移温度以下に冷却する冷却手段5とを有する。
【0024】
収納容器2は、例えば薄肉のステンレス鋼など、機械強度及び耐腐食性に優れた材料で形成された中空の容器である。収納容器2は、後に詳述する超電導コイル3を収納すると共に冷却手段5も収納し、これによって、収納容器2内の超電導コイル3が超電導転移温
度以下にまで冷却される。
超電導転移温度とは、熱力学温度にして数K(ケルビン)といった極低温である。従って、ステンレス鋼など熱伝導性の高い材料で形成された収納容器2を室温に置いた場合、室温から収納容器2内へ熱が侵入するので、収納容器2の内部を超電導転移温度以下に保つのは困難である。そこで収納容器2は、外表面が室温の大気と触れないように、内部が真空となった後述する真空容器4内に保持される。
【0025】
超電導コイル3は、超電導体(超電導物質)からなる線材を巻回して得られるコイルであり、収納容器2内に収容される。超電導転移温度以下で超電導コイル3に電流が供給されると、供給された電流は、いわゆる永久電流として電気抵抗がほぼゼロ0となった超電導コイルを流れ続ける。超電導コイル3は、この永久電流が引き起こす電磁誘導によって磁場を発生する。
【0026】
また、超電導コイル3には、該超伝導コイル3に電流を供給する電源部(外部の電源)が接続可能となっており、また、永久電流を流す閉回路を形成するために、後述する永久電流スイッチ1Aが超電導コイル3に接続されている。永久電流スイッチ1AのON(接続)とOFF(切断)を切り替えることで、永久電流を流す閉回路の形成と解消を切り替えることができ、永久電流スイッチ1Aを接続すれば閉回路が形成され、切断すれば閉回路が解消される。このとき、閉回路を形成するケーブルは、超電導コイル3と同様に超電導体から形成される。
【0027】
真空容器4は、収納容器2と同様に、例えばステンレス鋼など、機械強度及び耐腐食性に優れた材料で形成された中空の容器であり、超電導コイル3を収納する収納容器2を内部に保持する。真空容器4は、内部が超電導転移温度以下といった極低温となる収納容器2の外表面が室温の大気と触れないように、真空に保った内部に収納容器2を保持する。言い換えれば、真空容器4は、真空の空間を隔てて収納容器2を保持している。つまり、収納容器2と真空容器4は、いわゆる魔法瓶の構造を形成しており、収納容器2と室温とは真空容器4による真空の空間を隔てて断熱される。
【0028】
冷却手段5は、例えば、GM(ギフォード・マクマホン)冷凍機などの極低温冷凍機(以下、単に冷凍機という)である。冷却手段5である冷凍機(以下、冷凍機5という)は、棒状かつ長尺であって、一端側に圧縮機等を含む駆動部50が設けられ、さらに、駆動部50から他端に向かう中途部に熱交換を行う第1段ステージ51を有し、他端側に第2段ステージ52を有する2段構成となっている。第1段ステージ51は、例えば30K程度にまで冷却可能な熱交換部であり、第2段ステージ52は、4K程度にまで冷却可能な熱交換部である。
【0029】
図1に示すように、冷凍機5は、真空容器4の外部から真空容器4と収納容器2を貫通して、第2段ステージ52を収納容器2の内部で保持している。冷凍機5の駆動部50は真空容器4の貫通孔の周囲で気密に保持され、第1段ステージ51は収納容器2に密に接続され、第2段ステージ52は収納容器2の内部で、熱抵抗の低い板状の冷却部材6(例えば銅製の部材)を介して超電導コイル3に接続されている。ここで、冷却部材6は、第2段ステージ52の延長であると見ることができる。
図1に示すように、超電導コイル3が第2段ステージ52に接続されることで、例えば4Kといった超電導転移温度以下にまで超電導コイル3を冷却することができる。
【0030】
上述の構成を有する超電導装置10は、さらに、永久電流スイッチ1Aを有する。以下、
図1及び
図2を参照して、永久電流スイッチ1Aについて説明する。
永久電流スイッチ1Aは、上述したように、永久電流を流す閉回路を形成するために、超電導コイル3に導線(ケーブル)によって接続されるものであり、巻枠11、ヒータ線12、スイッチ部13、及びこれらを内部に格納する筐体(外筒部材)14を含んで構成される。
【0031】
巻枠11は、例えば外径15mm程度の円柱形状の胴部Mを有する部材であり、後述するヒータ線12による発熱の伝熱を抑制するために、例えばGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)などの熱抵抗の高い材料で構成されている。巻枠11は、円柱形状の胴部Mの両端に円板状の平板(フランジ)F1,F2を有し、いわゆるボビンとして構成されて
いる。巻枠11の一方のフランジF1には、胴部Mと重ならない位置に胴部Mの長手方向に沿った導入口(貫通孔T)が設けられている。
【0032】
ヒータ線12は、コンスタンタン線など、通電により発熱する導電性の部材であり、例えば外径15mm巻枠に巻幅100mm程度で100Ωに相当する長さが無誘導巻でコイル状に巻き付けられる。
スイッチ部13は、例えばCuNi/NbTiなどの超電導体で構成される超電導線であり、室温時の両端抵抗が100Ωとなる長さが、巻枠11に巻き付けられたヒータ線12の上に重なるように無誘導巻でコイル状に巻き付けられる。このスイッチ部13は、超電導転移点以下に冷却されれば、電気抵抗がほぼゼロ0となるのでON(接続)状態となり、ヒータ線12の発熱によって超電導転移点を超えれば、電気抵抗が発生するのでOFF(切断)状態となる。
【0033】
外筒部材14は、例えば銅などの熱抵抗の低い材料で構成された円筒形状の部材であって、ヒータ線12及びスイッチ部13が巻回された巻枠11を円筒内に内包し、巻枠11のフランジF1,F2と気密に接続することで巻枠11を保持するものである。このとき外筒部材14は、スイッチ部13との間に所定の間隔の空間Sを確保できる程度の内径を有している。
【0034】
上述の通り、ヒータ線12及びスイッチ部13が巻回された巻枠11を外筒部材14内に保持することで、
図2に示すような断面構成を有する永久電流スイッチ1Aが構成されるが、ヒータ線12及びスイッチ部13の端部は、永久電流スイッチ1Aの外に引き出され、ヒータ線12は超電導装置10の外部の電源に接続されている。
さらに、永久電流スイッチ1Aは、巻枠11のフランジF1,F2に形成された貫通孔Tに、永久電流スイッチ1Aの内部と外部を連通するための銅製の導管Pが設けられている。この導管Pによって、永久電流スイッチ1Aの内部に気体及び/又は液体の冷媒を供給することができ、また、永久電流スイッチ1Aの内部を排気することができる。この冷媒の供給及び排気については、永久電流スイッチ1Aの動作として後述する。
【0035】
再び
図1を参照して、超電導装置10内における永久電流スイッチ1Aの配置について説明する。永久電流スイッチ1Aは、超電導コイル3が発する磁場の影響が少ない位置で、外筒部材(筐体)14が熱抵抗の低い板状の冷却部材(例えば銅製の部材)7に物理的に接触することで支持され、この冷却部材7が冷凍機5の第2段ステージ52と物理的に接続される。ここで、冷却部材7は、第2段ステージ52の延長であると見ることができる。このようにして、永久電流スイッチ1Aは、冷凍機5の第2段ステージ52と熱的に接続されるので、スイッチ部13の超電導転移点である4.2K付近にまで冷却される。
【0036】
その上で、巻枠11のフランジF1に設けられた銅製の導管Pには、超電導装置10の外部に設けられた排気ポンプ8と、冷媒供給源9が接続されている。排気ポンプ8は、永久電流スイッチ1Aの内部を排気するポンプ(排気手段)であり、冷媒供給源9は、永久電流スイッチ1Aの内部にヘリウムガスを供給する供給源である。冷媒供給源9とフランジF1に設けられた導管Pを接続する配管は、ヘリウムガスが永久電流スイッチ1Aへの到達時に極力4.2K付近となるように、収納容器2の内部において冷却機5に対して熱アンカを取る構造を有している。さらに排気ポンプ8及び冷媒供給源9の配管には、それぞれ開閉バルブV1又はV2が設けられている。
【0037】
上述の構成を有する永久電流スイッチ1Aの動作について、以下に説明する。
まず、超電導コイル3が冷凍機5によって超電導転移点以下に冷却されて且つ励磁されていない状態から、超電導コイル3に永久電流を流して励磁する過程を説明しながら永久電流スイッチ1Aの動作を説明する。
まず、超電導装置10は、超電導コイル3が4.2Kといった超電導転移点以下に冷却された状態で、永久電流スイッチ1Aのヒータ線12に通電してスイッチ部13の温度を超電導転移点より上に維持している。これによって永久電流スイッチ1Aは、スイッチ部13がOFF(切断)状態となり、超電導コイル3に永久電流を流す閉回路が解消された状態である。このとき、永久電流スイッチ1Aの内部は、排気ポンプ8によってほぼ真空に排気されており、ヒータ線12と永久電流スイッチ1Aの外筒部材14は真空の空間S
によって断熱される。従って、永久電流スイッチ1Aの外筒部材14は、冷凍機5によって冷却されて超電導転移点以下の温度に保たれている。
【0038】
この状態から、周知の方法によって、超電導装置10の外部の電源から超電導コイル3に電流を供給し、超電導コイル3を励磁する。超電導コイル3に流れる電流が定格に達した後、ヒータ線12への通電を止め、排気ポンプ8側の開閉バルブV1を閉じると共に、冷媒供給源9側の開閉バルブV2を開け、ヘリウムガスを永久電流スイッチ1A内に流入させる。なお、流入するヘリウムガスによって永久電流スイッチ1Aの外筒部材14の温度が若干上昇し、冷凍機5の熱負荷が上昇してしまう。しかし、このとき既に超電導コイル3は定格磁場を発生しており、励磁操作時の主な熱源となる超電導コイル3の交流発熱は収まっているため、流入するヘリウムガスの熱負荷が冷凍機5へ加わっても大きな負荷とはならない。しかし、冷凍機5への負荷を更に下げるために、冷媒供給源9で事前にヘリウムガスを冷却しても良い。
【0039】
永久電流スイッチ1A内に流入したヘリウムガスは、外筒部材14の内壁に触れることで4.2K以下に冷却されて液体ヘリウムに再凝縮し、外筒部材14内に貯まる。このように永久電流スイッチ1A内に存在するヘリウムガス及び液体ヘリウムによってヒータ線12が冷却されて、スイッチ部13が超電導転移点以下に冷却される。このとき、冷媒供給源9から供給されるヘリウムガスは、永久電流スイッチ1Aに至るまでに液化するように冷却されるとより好ましい。
【0040】
スイッチ部13が超電導転移点以下に冷却されると、永久電流スイッチ1Aのスイッチ部13がON(接続)状態となり、超電導コイル3に永久電流を流す閉回路が形成されるので、超電導コイル3に電流を供給した外部の電源を超電導コイル3から切り離す。この一連の動作を経て、超電導コイル3は永久電流が流れる永久電流モードで運転され、磁場を発生し続けることができる。
【0041】
超電導コイル3の運転を停止するには、冷媒供給源9側の開閉バルブV2を閉じると共に、排気ポンプ8側の開閉バルブV1を開けて、永久電流スイッチ1Aの内部を真空に排気する。その排気と同時又は排気後にヒータ線12に通電して、スイッチ部13の温度を超電導転移点を超える温度にまで上昇させる。スイッチ部13の温度が超電導転移点を超えれば、スイッチ部13がOFF(切断)状態となり、超電導コイル3に永久電流を流す閉回路が解消されるので、超電導コイル3へは永久電流が流れなくなり、超電導コイル3は磁場の発生を停止する。このとき、永久電流スイッチ1A内の空間Sは、内部に貯まっていた液体ヘリウムがヒータ線12の熱によって気化した熱抵抗の高いヘリウムガスで満たされるので、ヒータ線12及びスイッチ部13と外筒部材14とは空間Sによってほぼ断熱された状態となる。
【0042】
上述のように、永久電流スイッチ1A内の内部には液体ヘリウムが貯まるので、液体ヘリウムによるスイッチ部13の冷却効果を高めるなど液体ヘリウムを効率的に利用するためには、
図1及び
図2に示すように、巻枠11の胴部Mの長手方向が重力方向に対してほぼ垂直方向となるように(つまり、胴部Mが水平となるように)、永久電流スイッチ1Aを横置きにするのが好ましい。
【0043】
本実施形態で説明した永久電流スイッチ1Aを用いれば、永久電流スイッチ1AをOFF状態とする際に、永久電流スイッチ1Aの内部を、熱抵抗の高いヘリウムガス等で満たしたり真空状態に排気したりといった断熱状態で保持することができる。これによって、永久電流スイッチ1Aの発熱部分と冷凍機5間での熱的な抵抗を増やすことができ、冷凍機5への負荷を低減することができる。また、永久電流スイッチ1AをON状態とする際には、永久電流スイッチ1Aの内部で液体に凝縮された液体ヘリウムによってヒータ線12の熱を吸収し、スイッチ部13を超電導状態に保つことができる。このような構成を有することで、永久電流スイッチ1Aは、OFF状態(スイッチ部13が常伝導状態)において、永久電流スイッチ1Aの内部を断熱状態で保持することができるので、ヒータ線12の通電による発熱を冷凍機5側へ伝えることはほとんど無い。また、永久電流スイッチ1Aは、ON状態(スイッチ部13が超電導状態)において、液体ヘリウム等の冷媒によってスイッチ部13が冷却されて超電導状態を維持できるため、安定したスイッチング動
作を実現することが出来る。
【0044】
最後に、永久電流スイッチ1A内に導入されたヘリウムガスは、外筒部材14の内壁に触れることで4.2K以下に冷却されて液体ヘリウムに再凝縮すると説明したが、この再凝縮の速度を上げるために、
図3に示すように外筒部材(筐体)14の内壁に凝縮部15を形成した永久電流スイッチ1Bを用いてもよい。凝縮部15は、具体的には外筒部材の内壁に形成された溝であり、このような溝を形成することで外筒部材14の内壁の表面積を大きくとることができ、ヘリウムガスと外筒部材14の内壁の間の熱交換が容易となる。
【0045】
[第2実施形態]
図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、MRI(磁気共鳴画像)装置やNMR(核磁気共鳴)装置などに用いられる磁場発生装置である超電導装置20の概略構成を示す図である。本実施形態において、超電導装置20は、第1実施形態で説明した超電導装置10とほぼ同様の構成を有し、同じく第1実施形態で説明した永久電流スイッチ1A又は1Bを設けている。
【0046】
図4を参照して、永久電流スイッチ1Aが設けられる超電導装置20の構成を説明する。
超電導装置20では、超電導コイル3は、液体ヘリウムHに浸漬されている。また、冷凍機5の第2段ステージ52は、液体ヘリウムHに浸漬されることなく、収納容器2内で気化したヘリウムガスを再凝縮するためのフィン53が設けられている。また、収納容器2と真空容器4の間には、超電導装置20の外部から収納容器2内に侵入する輻射による熱を遮蔽するための遮蔽シールド16が設けられている。
【0047】
このような構成の超電導装置20において、永久電流スイッチ1Aは、第1実施形態と同様に冷却部材7によって支持されると共に、冷凍機5の第2段ステージ52と熱的に接続されて冷却されている。その上で、永久電流スイッチ1Aの巻枠11のフランジF1に設けられた導管Pは、冷凍機5の第2段ステージ52に設けられたフィン53の近傍に開口が配置されるように取り回されて配管されている。
【0048】
永久電流スイッチ1Aを、超電導装置20内において本実施形態のように用いても、第1実施形態における永久電流スイッチ1Aと同様の効果を得ることができる。つまり、本実施形態における永久電流スイッチ1AをOFF状態とするとき、ヒータ線12が発熱しているため永久電流スイッチ1Aの内部は比較的温度の高いヘリウムガスで満たされて、外筒部材14とヒータ線12及びスイッチ部13との間の熱絶縁性を向上させることができる。このとき、永久電流スイッチ1Aの内部は、ヒータ線12の発熱による温度上昇に伴って圧力が上昇し、内部のヘリウムガスが永久電流スイッチ1Aから排出される。しかし、排出されたヘリウムガスは、冷凍機5の第2段ステージ52に設けられた再凝縮用のフィン53付近に排出されるので、フィン53によって液体ヘリウムに再凝縮される。
【0049】
また、永久電流スイッチ1AをON状態とするとき、ヒータ線12は発熱していないので、永久電流スイッチ1Aは冷凍機5により4.2K以下に冷却される。この冷却によって、永久電流スイッチ1Aの内部の圧力は永久電流スイッチ1Aの外部に比べて低くなるので、この圧力差によって、第2段ステージ52に設けられたフィン53近傍の比較的低温のヘリウムガスが、フランジF1に設けられた導管Pを通して永久電流スイッチ1Aの内部に導入される。永久電流スイッチ1Aの内部に導入されたヘリウムガスは、外筒部材14の内壁に触れることで4.2K以下に冷却されて液体ヘリウムに再凝縮し、永久電流スイッチ1Aの内部に貯まる。
【0050】
本実施形態で説明したように、超電導コイル3が液体ヘリウムHに浸漬されて冷却される構成の超電導装置20の場合、永久電流スイッチ1Aに対して第1実施形態で説明したような排気ポンプ8や冷媒供給源9を接続しなくともよい。収納容器2内の液体ヘリウムH乃至はこの液体ヘリウムHから蒸発したヘリウムガスを冷媒供給源9の代わりに用いるように永久電流スイッチ1Aの導管Pを構成すれば、例えば永久電流スイッチ1AをOFF状態とする際に、永久電流スイッチ1Aの内部を、熱抵抗の高いヘリウムガス等で満たすといった断熱状態で保持することができる。これによって、永久電流スイッチ1Aの発
熱部分と冷凍機5の間での熱的な抵抗を増やすことができ、冷凍機5への負荷を低減することができる。また、永久電流スイッチ1AをON状態とする際には、永久電流スイッチ1Aの内部で液体に凝縮された液体ヘリウムによってヒータ線12の熱を吸収し、スイッチ部13を超電導状態に保つことができる。このような構成を有することで、永久電流スイッチ1Aは、OFF状態(スイッチ部13が常伝導状態)において、永久電流スイッチ1Aの内部を断熱状態で保持することができるので、ヒータ線12の通電による発熱を冷凍機5側へ伝えることはほとんど無い。また、永久電流スイッチ1Aは、ON状態(スイッチ部13が超電導状態)において、液体ヘリウム等の冷媒によってスイッチ部13が冷却されて超電導状態を維持できるため、安定したスイッチング動作を実現することが出来る。
【0051】
[第3実施形態]
図5を参照しながら、本発明の第3実施形態について説明する。
図5は、本実施形態による永久電流スイッチ1Cの内部の構成を示す断面図である。本実施形態による永久電流スイッチ1Cは、第1実施形態による超電導装置10や第2実施形態による超電導装置20などの超電導装置で用いられる永久電流スイッチであり、上述の永久電流スイッチ1A,1Bと同様に、ON(接続)とOFF(切断)を切り替えることで、永久電流を流す閉回路の形成と解消を切り替えることができる。以下の説明では、一例として、永久電流スイッチ1Cを超電導装置10に設ける場合を説明する。
【0052】
図5を参照し、永久電流スイッチ1Cの構成を説明する。尚、本実施形態以降の各実施形態では、冷却部材7において永久電流スイッチが載置される面である載置面からほぼ垂直に離れる方向を上方といい、その反対に載置面にほぼ垂直に近づく方向を下方という。
図5の永久電流スイッチ1Cを
図1に示す超電導装置10のように配置した場合、下方が重力方向に対応する。
【0053】
永久電流スイッチ1Cは、上述のように、永久電流を流す閉回路を形成するために、導線(ケーブル)によって超電導コイル3に接続されるものである。この永久電流スイッチ1Cは、巻枠11と、ヒータ線12と、スイッチ部13と、これらを内部に格納する筐体14Aと、筐体14A内で巻枠11を支持する支持部17と、筐体14A内にヘリウムガスを導入し筐体14A内からヘリウムガスを排出する導管P1と、筐体14A内へ導入されるヘリウムガスの温度を計測する温度センサ18とを備える。本実施形態において、巻枠11は銅で構成されているが、ステンレス鋼などの金属やGFRPで構成されてもよい。
【0054】
巻枠11、ヒータ線12、及びスイッチ部13は、第1実施形態で説明した永久電流スイッチ1A,1Bにおける構成とほぼ同様の構成を有する。しかし、本実施形態において、巻枠11のフランジF1には、貫通孔Tは設けられていない。
筐体14Aは、例えば、直方体形状、立方体形状及び円柱形状など、冷凍機5の冷却部材7上に配置可能な形状で、ヒータ線12及びスイッチ部13が巻回された巻枠11である熱スイッチを格納可能な大きさを有する中空の容器であり、例えば薄肉のステンレス鋼など、機械強度及び耐腐食性に優れた材料で形成されている。
図5に示すように、冷却部材7上に配置される筐体14Aは気密な容器であるが、筐体14Aの内部と外部を連絡すると共に後述する導管P1が接続される貫通孔T1が、冷却部材7から十分に離れた位置で、内部に溜まった液体ヘリウムが筐体14A外へ漏れ出さない位置に形成されている。
【0055】
支持部17は、
図5に示すように、筐体14A内で、巻枠11を筐体14Aと接することのないように支持すると共に筐体14Aに対して位置決めするものであって、巻枠11を支持する強度を有する柱状又はブロック(塊)状の部材である。この支持部17は、金属よりも熱伝導率の低いGFRPなどの樹脂で構成される。
支持部17は、筐体14A内で、胴部Mが冷却部材7とほぼ平行となるように配置された巻枠11のフランジF1,F2を支持することで巻枠11を位置決めする。支持部17は、例えば、フランジF1の上方と下方において、フランジF1と筐体14Aの間に挟み込まれるように配置されて、筐体14Aに対してフランジF1を支持する。支持部17は、フランジF1と同様にフランジF2も支持することで、巻枠11の全体を筐体14A内
で支持し位置決めする。このとき、支持部17は、巻枠11を、筐体14Aの上下の壁面からほぼ等しく間隔(空間)を空けると共に、左右の壁面からほぼ等しく間隔(空間)を空けるように、筐体14A内のほぼ中央付近に支持すると好ましい。
【0056】
このような支持部17は、例えば、円板状のフランジF1,F2の各円周面の下方の2点を2つの支持部17で支持し、同じくフランジF1,F2の各円周面の上方の2点を2つの支持部17で支持する。つまり、フランジF1,F2のそれぞれは、各円周面が上下あわせて4つの支持部17を用いて4点で支持される。このとき、支持部17は、その強度が許す限り小さな面積でフランジF1,F2及び筐体14Aと接する形状に構成されるのが好ましい。フランジF1,F2及び筐体14Aとの接点の面積を可能な限り小さくすることで、フランジF1,F2と筐体14Aとの間の伝熱量を可能な限り小さくすることができる。
【0057】
上述の構成の支持部17は、フランジF1,F2と筐体14Aの間の伝熱量を制限する伝熱制限部材でもあり、この伝熱制限部材である支持部17を介して、巻枠11を筐体14A内で冷凍機5の冷却部材7上に支持することができる。伝熱制限部材である支持部17は、上述のように巻枠11を冷却部材7上に支持して、巻枠11と冷却部材7との間に空間Sを形成する。筐体14A内を真空に排気して巻枠11と冷却部材7との間の空間Sを真空にしたときに、巻枠11と筐体14A(冷却部材7)の間に真空の断熱層が形成される。従って、巻枠11と筐体14Aの間の伝熱は、フランジF1,F2と筐体14Aの間の伝熱制限部材を介しての伝熱にほぼ限られるので、巻枠11と筐体14A(冷却部材7)の間を効果的に断熱することができる。
【0058】
導管P1は、
図5に示すように、筐体14Aの上方に設けられた貫通孔T1に接続され、筐体14Aの内部と外部を連通するためのステンレス鋼からなる管体である。導管P1は、第1実施形態による導管Pと同様に、超電導装置の外部に設けられた排気ポンプ8と、冷媒供給源9に接続される。筐体14Aの内部と外部を連通する導管P1が排気ポンプ8及び冷媒供給源9に接続されていることによって、筐体14Aの内部、つまり永久電流スイッチ1Cの内部にヘリウムガス及び/又は液体ヘリウムを供給することができ、また、永久電流スイッチ1Cの内部を排気することができる。
【0059】
しかし、液体ヘリウムなどの液体の冷媒を、導管P1を通して永久電流スイッチ1Cの内部に円滑に供給することは困難であるため、通常、導管P1には気体のヘリウムガスが供給される。導管P1を通じて筐体14Aの内部に流入したヘリウムガスは、冷却部材7と接する筐体14Aによって冷却されて液化し、液体ヘリウムとなって筐体14Aの内部(永久電流スイッチ1Cの内部)に溜まる。
【0060】
そこで、導管P1を流通するヘリウムガスの液化を防ぐために、導管P1は所定の温度に保たれる必要があり、導管P1にはヒータ線12と同様に電流によって発熱するヒータ線19が巻き付けられている。ヒータ線19の発熱によって導管P1を所定温度に維持すれば、導管P1を流通するヘリウムガスが導管P1の途中で液化して導管P1を塞ぐ栓となるのを防ぐことができる。
【0061】
導管P1を熱伝導率の高い銅で構成すると導管P1内でヘリウムガスが液化し易くなるので、金属の中でも熱伝導率の低いステンレス鋼を用いて導管P1を構成するのが好ましい。
温度センサ18は、導管P1を流通するヘリウムガスの温度を計測するセンサである。温度センサ18は、
図5に示すように、筐体14Aにおいて導管P1と筐体14Aの接合部である貫通孔T1の近傍に設けられ、導管P1を通って筐体14A内に流入する直前、又は流入した直後のヘリウムガスの温度を計測する。
【0062】
尚、温度センサ18が設けられる位置は、
図5で示す位置に限らず、導管P1上であってもよい。
図5では、筐体14Aにおいて巻枠11のフランジF1側の上方に導管P1が設けられているが、導管P1と同様の破線で示す導管P2を、筐体14Aにおいて巻枠11のフランジF2側の上方に設けてもよい。つまり、筐体14Aにおいて、巻枠11を挟んで導管P1とは反対側に、筐体14A内のヘリウムガスを排気するための導管P2を設ける。
【0063】
導管P2の経路の途中に筐体14Aから外部への流出は許すが外部から筐体14Aへの流入を制限する逆止弁を設けて、この逆止弁を有する導管P2を排気ポンプ8に接続すれば、導管P1から筐体14A内に流入したヘリウムガスを筐体14A内から導管P2へ流出させる一方通行の流路を形成することができ、ヘリウムガスの導入及び排出を円滑に行うことができる。
【0064】
本実施形態による永久電流スイッチ1Cを用いれば、ヒータ線12及びスイッチ部13が巻回された巻枠11である熱スイッチと冷凍機5の冷却部材7の間の高い断熱性が、支持部17及び巻枠11と冷却部材7との間の空間Sによって得られるので、ヒータ線12の発熱が冷却部材7へ逃げることがほとんど無くなる。これにより、より少ないヒータ線12の発熱によって永久電流スイッチ1CをOFFにする(切断する)ことができる。
【0065】
尚、上述の説明では、永久電流スイッチ1Cを超電導装置10に設けた場合について説明したが、永久電流スイッチ1Bと同様に、永久電流スイッチ1Cを排気ポンプ8及び冷媒供給源9を備えない超電導装置20に設けることもできる。
[第4実施形態]
図6を参照しながら、本発明の第4実施形態について説明する。
【0066】
図6は、本実施形態による永久電流スイッチ1Dの内部の構成を示す断面図である。本実施形態による永久電流スイッチ1Dは、第1実施形態による超電導装置10や第2実施形態による超電導装置20などの超電導装置で用いられる永久電流スイッチであり、上述の永久電流スイッチ1A〜1Cと同様に、ON(接続)とOFF(切断)を切り替えることで、永久電流を流す閉回路の形成と解消を切り替えることができる。以下の説明では、一例として、永久電流スイッチ1Dを超電導装置10に設けた場合を説明する。
【0067】
図6を参照し、永久電流スイッチ1Dの構成を説明する。
図6に示すように、永久電流スイッチ1Dは、上述の実施形態で説明した巻枠11とほぼ同様の構成の巻枠11Aと、ヒータ線12及びスイッチ部13が巻回された巻枠11A(熱スイッチ)を冷却部材7上に支持する支持部17Aとを備えている。永久電流スイッチ1Dは、冷却部材7において永久電流スイッチ1Dが載置される面である載置面に対して、巻枠11Aを縦置きする構成を有している。つまり、巻枠11Aは、巻枠11Aの軸心が上下方向に沿って当該載置面に対してほぼ垂直となるように配置され、支持部17Aによって冷却部材7上に支持される。
【0068】
巻枠11Aは、巻枠11とほぼ同様の構成であって、胴部Mと2つの円板状の平板であるフランジF1a,F2を備えている。巻枠11Aにおいて巻枠11と異なる構成は、フランジF1aの形状である。
フランジF1aは、フランジF2よりも大きな径を有する円板状の平板で胴部M及びフランジF2と同心状あって、巻枠11Aが冷却部材7上に配置される際に、フランジF2よりも上方に配置される。フランジF2よりも大径のフランジF1aを、フランジF2と冷却部材7の間に空間Sを確保しつつ下方から支持することによって、巻枠11Aは、冷却部材7に対して縦置きされる。
【0069】
支持部17Aは、
図6に示すように、巻枠11AのフランジF1a(つまり、巻枠11Aの上端側)を下方から支持する部材であって、フランジF1aとほぼ同径の円筒状に形成されたステンレス鋼の筒体である。支持部17Aは、巻枠11Aの軸心方向の長さよりも大きな全長を有する薄肉の筒体であり、その筒体(支持部17A)の一端の開口を、冷却部材7において永久電流スイッチ1Dが載置される面である載置面に気密に固定し、該筒体(支持部17A)の他端の開口側で、筒体(支持部17A)内にフランジF2側から挿入された巻枠11AのフランジF1aを支持する。支持部17Aの他端の開口側と巻枠11AのフランジF1aを気密に接着又は接合すれば、巻枠11Aを、円筒状の支持部17A内で気密に保持することができる。
【0070】
上述の構成の支持部17Aは、フランジF1aと冷却部材7の間の伝熱量を極力小さくするためにその強度が許す限り薄肉に形成され、伝熱制限部材として働く。このような構成の支持部17Aによって、巻枠11AのフランジF2は、支持部17Aの全長のうち巻枠11Aの軸心方向に沿った長さより長い分だけ冷却部材7から離れて、フランジF2の
下方(つまり、巻枠11Aの下端側)に空間Sが形成される。
【0071】
このような支持部17Aは、その内部に巻枠11Aを格納して支持することに加えて、該内部が真空に排気されることで、巻枠11Aと支持部17A及び冷却部材7との間に空間Sを含む真空層(断熱層)を形成するので、伝熱制限部材としての働きに加えて、第3実施形態における筐体14Aの働きも実現する。従って、伝熱制限部材である支持部17Aは、筐体を兼ねて構成されているといえる。
【0072】
ここで、
図6に示すように、支持部17Aの上方に、第3実施形態で説明した貫通孔T1及び導管P1を設けて排気ポンプ8及び冷媒供給源9に接続し、支持部17A内へのヘリウムガスの導入及び排気を行うことができる。
このとき、導管P1は、フランジF1aと支持部17Aが接着又は接合する部位の近傍であれば好ましい。導管P1には、第3実施形態と同様に、ヒータ線19を巻き付けてもよい。また、支持部17Aに、第3実施形態で説明した導管P2を設けて排気ポンプ8に接続することもできる。さらに、貫通孔T1及び導管P1の近傍に温度センサ18を設けて、支持部17A内に流入する直前、又は流入した直後のヘリウムガスの温度を計測することもできる。
【0073】
上述の構成を有する永久電流スイッチ1Dを用いれば、熱伝導率の低い薄肉の支持部17Aの伝熱量が非常に小さいので、フランジF1aから支持部17Aを通って冷却部材7に至る熱パスの伝熱量を非常に小さく抑えることができる。これに加えて、ヒータ線12及びスイッチ部13が巻回された巻枠11Aと冷凍機5の冷却部材7の間の高い断熱性が支持部17A及び巻枠11Aと冷却部材7との間の空間Sによって得られるので、ヒータ線12の発熱が冷却部材7へ逃げることがほぼ無くなる。これにより、より少ないヒータ線12の発熱によってスイッチ動作をOFFにする(切断する)ことができる永久電流スイッチ1Dを、伝熱制限部材と筐体を兼ねた支持部17Aを用いた簡易な構成で実現することができる。
【0074】
尚、上述の説明では、永久電流スイッチ1Dを超電導装置10に設けた場合について説明したが、永久電流スイッチ1Bと同様に、永久電流スイッチ1Dを排気ポンプ8及び冷媒供給源9を備えない超電導装置20に設けることもできる。
[第5実施形態]
図7を参照しながら、本発明の第5実施形態について説明する。
【0075】
図7は、本実施形態による永久電流スイッチ1Eの内部の構成を示す断面図である。本実施形態による永久電流スイッチ1Eは、第1実施形態による超電導装置10や第2実施形態による超電導装置20などの超電導装置で用いられる永久電流スイッチであり、上述の永久電流スイッチ1A〜1Dと同様に、ON(接続)とOFF(切断)を切り替えることで、永久電流を流す閉回路の形成と解消を切り替えることができる。以下の説明では、一例として、永久電流スイッチ1Eを超電導装置10に設けた場合を説明する。
【0076】
図7を参照し、永久電流スイッチ1Eの構成を説明する。
図7に示すように、永久電流スイッチ1Eは、上述の実施形態で説明した巻枠11と、ヒータ線12及びスイッチ部13が巻回された巻枠11(熱スイッチ)を冷却部材7上に支持する支持部17Bとを備えている。永久電流スイッチ1Eは、永久電流スイッチ1Dと同様に、冷却部材7において永久電流スイッチ1Eが載置される面である載置面に対して、巻枠11を縦置きする構成を有している。つまり、巻枠11は、巻枠11の軸心が上下方向に沿って当該載置面に対してほぼ垂直となるように配置され、支持部17Bを介して、つまり支持部17Bを挟んで冷却部材7上に支持されている。
図7において巻枠11は、フランジF1が上方となるように縦置きされているが、フランジF2が上方となるように縦置きされてもよい。
【0077】
支持部17Bは、縦置きされた巻枠11の下方(つまり、巻枠11の下端側)のフランジ(例えば、フランジF2)に固定されると共に、冷却部材7上に固定されることによって、巻枠11と冷却部材7の間に空間Sを確保しつつ巻枠11の下端側を冷却部材7に対して支持するものである。支持部17Bは、例えば、円板状のフランジF2とほぼ同じ大きさ及び形状の底面を有する円柱形状で、内部が中空となった部材であって、ステンレス
鋼等の金属で構成される。
【0078】
このような構成を有する円柱形状の支持部17Bは、一方の底面(端面)で巻枠11の下端側であるフランジF2と接し、他方の底面(端面)で冷却部材7と接する。このとき、支持部17B内部の中空の部分は、巻枠11のフランジF2を冷却部材7から隔てる空間Sを形成し、この空間Sが真空に排気されることでフランジF2と冷却部材7の間に真空の断熱層を形成する。この断熱層によって、巻枠11と冷却部材7の間を効果的に断熱することができる。尚、真空となった空間Sによる断熱効果を効果的に得るためには、支持部17Bは、銅よりも熱伝導率の低いステンレス鋼を用いるのが好ましく、可能な限り薄肉となるように構成するとよい。
【0079】
ここで、
図7に示すように、支持部17Bの上方に、第3実施形態で説明した貫通孔T1及び導管P1を設けて排気ポンプ8及び冷媒供給源9に接続し、支持部17B内へのヘリウムガスの導入及び排気を行うことができる。
このとき、導管P1は、支持部17BとフランジF2が接着又は接合する部位の近傍であれば好ましい。導管P1には、第3実施形態と同様に、ヒータ線19を巻き付けてもよい。また、支持部17Bに、第3実施形態で説明した導管P2を設けて排気ポンプ8に接続することもできる。さらに、貫通孔T1及び導管P1の近傍に温度センサ18を設けて、支持部17B内に流入する直前、又は流入した直後のヘリウムガスの温度を計測することもできる。
【0080】
上述の構成を有する永久電流スイッチ1Eを用いれば、巻枠11と冷凍機5の冷却部材7の間の高い断熱性が支持部17B内の空間Sによって得られると共に、熱伝導率の低い薄肉の支持部17Bの伝熱量が非常に小さいので、フランジF2から支持部17Bを通って冷却部材7に至る熱パスの伝熱量を非常に小さく抑えることができる。これにより、熱スイッチであるヒータ線12及びスイッチ部13が巻回された巻枠11を気密に覆う筐体を必要とせず、より少ないヒータ線12の発熱によってスイッチ動作をOFFにする(切断する)ことができる永久電流スイッチ1Eを、簡易な構成で実現することができる。
【0081】
尚、上述の説明では、永久電流スイッチ1Eを超電導装置10に設けた場合について説明したが、永久電流スイッチ1Bと同様に、永久電流スイッチ1Eを排気ポンプ8及び冷媒供給源9を備えない超電導装置20に設けることもできる。
[第6実施形態]
図8を参照しながら、本発明の第6実施形態について説明する。
【0082】
図8は、本実施形態による永久電流スイッチ1Fの内部の構成を示す断面図である。本実施形態による永久電流スイッチ1Fは、第5実施形態による永久電流スイッチ1Eの変形例である。従って、第1実施形態による超電導装置10や第2実施形態による超電導装置20などの超電導装置で用いられて、永久電流を流す閉回路の形成と解消を切り替えることができる。以下の説明では、一例として、永久電流スイッチ1Fを超電導装置10に設けた場合を説明する。
【0083】
図8を参照し、永久電流スイッチ1Fの構成を説明する。
図8に示すように、永久電流スイッチ1Fは、上述の実施形態で説明した巻枠11とほぼ同様の構成を有し、内部に貫通孔を有すると共に縦置きされる巻枠11Bと、ヒータ線12及びスイッチ部13が巻回された巻枠11B(熱スイッチ)を冷却部材7上に支持する支持部17Cとを備えている。永久電流スイッチ1Fは、永久電流スイッチ1Eと同様に、冷却部材7において永久電流スイッチ1Fが載置される面である載置面に対して、巻枠11Bを縦置きする構成を有している。つまり、巻枠11Bは、巻枠11Bの軸心が上下方向に沿って当該載置面に対してほぼ垂直となるように配置され、支持部17Cを介して、つまり支持部17Cを挟んで冷却部材7上に支持されている。
図8において巻枠11Bは、フランジF1が上方となるように縦置きされているが、フランジF2が上方となるように縦置きされてもよい。
【0084】
巻枠11Bは、上述の実施形態で説明した巻枠11と同様に、フランジF1、胴部M及びフランジF2によって構成されるが、フランジF1、胴部M、フランジF2を巻枠11の軸心位置で貫通する貫通孔を有する。巻枠11Bは、銅などの金属で構成される。
支持部17Cは、縦置きされた巻枠11Bの下方(つまり、巻枠11Bの下端側)のフランジ(例えば、フランジF2)に固定されると共に、冷却部材7上に固定されることによって、巻枠11Bと冷却部材7の間に空間Sを確保しつつ巻枠11Bの下端側を冷却部材7に対して支持するものである。支持部17Cは、例えば、円板状のフランジF2とほぼ同じ大きさ及び形状の底面を有する円柱形状で、内部が中空となった第1支持部と、巻枠11Bの軸心位置に形成された貫通孔に対応する円柱形状で、内部が中空となった第2支持部とが一体となった部材であって、ステンレス鋼等の金属で構成される。第1支持部は第5実施形態による支持部17Bに対応し、第1支持部内の中空の部分は、空間Sに相当する。円柱形状の第2支持部は、同じく円柱形状の第1支持部とほぼ同軸となるように第1支持部と一体となっており、第2支持部の中空の部分と第1支持部の空間Sは連通している。
【0085】
支持部17Cの第2支持部は、巻枠11Bの軸心方向に沿った長さとほぼ同じ長さを有し、フランジF2側から巻枠11Bの貫通孔に挿入される。第2支持部は、巻枠11Bの貫通孔と密に接し、第1支持部と共に巻枠11Bを支持する。
ここで、
図8に示すように、支持部17Cの第2支持部の上方に、第3実施形態で説明した貫通孔T1及び導管P1を設けて排気ポンプ8及び冷媒供給源9に接続し、支持部17C内へのヘリウムガスの導入及び排気を行うことができる。
【0086】
このとき、貫通孔T1及び導管P1は、第2支持部がフランジF1の上端面から露出した部分に設けられる。導管P1には、第3実施形態と同様に、ヒータ線19を巻き付けてもよい。さらに、貫通孔T1及び導管P1の近傍に温度センサ18を設けて、支持部17C内に流入する直前、又は流入した直後のヘリウムガスの温度を計測することもできる。
上述の構成の巻枠11B及び支持部17Cを有する永久電流スイッチ1Fによれば、巻枠11Bを構成する金属の量を、支持部17Cの第2支持部が挿入される貫通孔の分だけ減らすことができるので、巻枠11B、ひいては永久電流スイッチ1Fの熱容量を減少させることができる。また、熱容量の小さい巻枠11Bは、より小さなヒータ線12の発熱によって容易に温度が上昇すると共に、貫通孔に挿入された第2支持部に導入されるヘリウムガスによって効果的に冷却されるので、スイッチ動作のON(接続)とOFF(切断)を迅速に切り換えることができる永久電流スイッチ1Fを、簡易な構成で実現することができる。
【0087】
尚、上述の説明では、永久電流スイッチ1Fを超電導装置10に設けた場合について説明したが、永久電流スイッチ1Bと同様に、永久電流スイッチ1Fを排気ポンプ8及び冷媒供給源9を備えない超電導装置20に設けることもできる。
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、動作条件や測定条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0088】
具体的に、上述した第1実施形態及び第2実施形態において、永久電流スイッチ1A及び1Bでは、巻枠11の一方のフランジF1には、胴部Mと重ならない位置に胴部Mの長手方向に沿った導入口(貫通孔T)が設けられると説明したが、この貫通孔Tの数は1つとは限らない。フランジF1とフランジF2に1つずつ貫通孔Tが設けられてもよいし、フランジF1とフランジF2のいずれかに複数の貫通孔Tが設けられてもよい。このように、複数の貫通孔Tが設けられた場合でも、各貫通孔Tを通じて永久電流スイッチ1A及び1B内に気体及び/又は液体の冷媒を供給することができ、また、永久電流スイッチ1A及び1Bの内部を排気することができる。