(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021803
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】ウエハ形状物品を保持するための装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-508589(P2013-508589)
(86)(22)【出願日】2011年4月26日
(65)【公表番号】特表2013-526074(P2013-526074A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】IB2011051800
(87)【国際公開番号】WO2011138706
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2014年4月24日
(31)【優先権主張番号】12/775,992
(32)【優先日】2010年5月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510141648
【氏名又は名称】ラム・リサーチ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ディーター
(72)【発明者】
【氏名】パグル・ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】フックス・ローマン
(72)【発明者】
【氏名】ラッハ・オット
【審査官】
儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−040656(JP,A)
【文献】
特開2004−269086(JP,A)
【文献】
特開2002−329773(JP,A)
【文献】
特開平01−240682(JP,A)
【文献】
特開2006−237407(JP,A)
【文献】
特開2006−310709(JP,A)
【文献】
特開平03−038051(JP,A)
【文献】
工業教育研究会,英和和英 機械用語図解辞典−第2版−,日本,日刊工業新聞社,1985年 5月30日,初版,第144頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ形状物品を保持するための装置であって、
前記ウエハ形状物品の周縁部と接触するよう適合されると共に、前記ウエハ形状物品と接触しない外側の開位置から前記ウエハ形状物品と接触する内側の位置である閉位置に向かって付勢されたクランプ要素と、
前記クランプ要素が前記閉位置に動く時にウエハ縁部に衝突する力を抑制する少なくとも1つのダンパ機構と、
を備え、
前記ダンパ機構は、線形ダッシュポットまたは回転ダッシュポットである、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記クランプ要素は、一連のピンであり、前記一連のピンは、前記開位置から前記閉位置まで一緒に移動可能である、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
前記装置は、枚葉式ウエハ湿式処理のための処理モジュール内のスピンチャックである、装置。
【請求項4】
請求項2に記載の装置であって、
前記ピンは、円形に沿って配列され、各ピンは、それぞれの旋回ベースから、前記旋回ベースの旋回軸と平行であり前記旋回軸からオフセットされた軸に沿って突出している、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、さらに、
各旋回ベースに形成された歯車とかみ合う共通歯車リングを備える、装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置であって、
前記ダンパ機構は、前記共通歯車リングと前記装置の本体とに結合されて、それらの間の相対運動を制動する、装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、
前記ダンパ機構は、前記装置の本体に固定されたハウジングと、前記ハウジングから突出し前記ハウジングから外向きに付勢されたロッドとを備え、
前記ロッドは、前記クランプ要素のための作動機構と接触するように配置され、前記本体および前記作動機構の間の第1の方向の相対運動によって、前記ロッドが付勢機構の作用に抗して前記ハウジング内に押し込まれる、装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置であって、
前記付勢機構は、コイルバネである、装置。
【請求項9】
請求項7に記載の装置であって、
前記付勢機構は、弾性ストリップまたは弾性膜である、装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置であって、
前記ダンパ機構は、前記クランプ要素が1cm/s(0.01m/s)以下の閉じ速度を有するように構成される、装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置であって、
前記ダンパ機構は、2Ns/mから200Ns/mまでの範囲の制動係数(速度当たりの力)を有する線形ダッシュポットを含む、装置。
【請求項12】
請求項1に記載の装置であって、
前記ダンパ機構は、0.07Nms/radから7Nms/radまでの範囲の制動係数(角速度当たりのトルク)を有する回転ダッシュポットを含む、装置。
【請求項13】
請求項5に記載の装置であって、
前記ダンパ機構は、前記共通歯車リングに作用する全制動係数が0.07Nms/rad(角速度当たりのトルク)から7Nms/radまでの範囲であるよう構成される、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハなどのウエハ形状物品を保持するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハは、エッチング、洗浄、研磨、および、材料蒸着などの様々な表面処理プロセスを受ける。かかるプロセスを行う際には、米国特許第4,903,717号および5,513,668号に例として記載されているように、単一のウエハが、回転可能なキャリアに関連するチャックによって1または複数の処理流体ノズルに対して支持されうる。
【0003】
上記に参照した特許は、ベルヌーイの法則に基づいており、ウエハは、チャックと接触することなくガスクッションによって下から支持を受ける。それにもかかわらず、かかるチャックは、通常、チャック上に配置されるウエハの半径方向外側に円形に沿って配置された一連のピンを備える。それらのピンは、チャックに対してウエハが側方にずれることを防ぐ。
【0004】
米国特許第4,903,717号に記載されるように、それぞれの旋回ベースから上方に突出するようにピンを構成しても有利である。ピンおよびベースの軸は、垂直であるが互いにオフセットされており、それにより、ベースを旋回させることで、それに関連するピンを円弧に沿って移動させてその半径方向位置を調整できる。旋回ベースの各々には、チャックの回転軸と同軸である共通歯車リングの歯とかみ合う歯車の歯が設けられる。したがって、チャックに対して歯車リングを回転させれば、すべてのピンが一緒に同じだけ動く。
【0005】
この構成は、ピンが、ウエハの載置または除去のために半径方向外向きに移動され、次いで、ウエハの周縁部に接触するように半径方向内向きに移動されることを可能にする。かかる接触は、チャックに対するウエハの側方へのずれだけでなく、チャックが回転される際のウエハおよびチャックの間の相対的な回転も防ぐ。
【0006】
チャックに対するウエハの回転は、「ウエハシフト」と呼ばれる。ウエハおよびチャックは、一般に、互いに対して移動することを意図されていないが、ピンがウエハと接触する領域でウエハベベルの正確な洗浄および/またはエッチングを実現するには、制御された量のウエハシフトが起きることが望ましい。これは、洗浄工程およびエッチング工程中にチャックに対して数度だけウエハをシフトすることを含む。ウエハシフトは、特定の時間間隔で実行される。この時間間隔内に、チャック内部の歯車リングは、チャックのピンを開き、ウエハがシフトされる。歯車リングは、バネの力によって戻される。
【0007】
ラムリサーチ社製のものなど、枚葉式ウエハ湿式処理のための処理モジュールで用いられるスピンチャックでは、処理工程中にチャックを加速または減速させることによって、ウエハシフトを実行できる。すなわち、チャックピンを駆動する歯車リングの慣性によって、チャックの加速および減速中に歯車リングおよびチャック本体の間に若干の相対的な回転が生じ、それにより、ピンは、チャックが加速または減速される際に、開閉動作を行って数ミリ秒間ウエハを解放する。その間、ウエハは固定されないため、チャックに対して数度だけ回転する。同様に、歯車がチャックベース本体の代わりに駆動される場合、歯車に対するチャックベース本体の相対運動が、チャックベース本体の慣性によって引き起こされ、チャックピンに対して同じ効果が生じる。
【発明の概要】
【0008】
本発明者は、上述のタイプのチャックにおいて、ピンが非常に急速に閉じることにより、ピンの過度の摩耗および溝の形成が起きることを発見した。これにより、チャックの耐用年数が短縮し、ウエハ処理中の望ましい制御されたウエハシフトが損なわれうる。
【0009】
本発明によると、ウエハ形状物品(半導体ウエハなど)を保持するための装置に、装置の接触要素がワークピースに衝突する力を制御するダンパ機構が設けられる。本発明の好ましい実施形態は、スピンチャック、特に、枚葉式ウエハ湿式処理のための処理モジュール内のスピンチャックであり、ウエハシフト後にチャックピンがウエハと再び接触する際にピンがウエハ周囲に衝突する力を、ダンパ機構によって制御および制限する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付の図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態についての以下の詳細な説明を読めば、本発明の他の課題、特徴、および、利点が明らかになる。
【0011】
【
図1】ウエハが載置された状態で、本発明の一実施形態によるチャックを上方から示した概略斜視図。
【0012】
【
図2】下側ベース本体が取り除かれ、その状態に対応して、ウエハがチャックピンによって把持されている、
図1のチャックを下方から示した概略斜視図。
【0013】
【
図3】チャックピンによってウエハが把持されていないこと以外は
図2と同様であるチャックを示す図。
【0014】
【
図4A】チャックが開位置にある時のダンパ機構51を示す概略断面図。
【0015】
【
図4B】チャックが閉位置にある時のダンパ機構51を示す概略断面図。
【0016】
【
図5A】チャックが開位置にある時の別の実施形態のダンパ機構51を示す概略断面図。
【0017】
【
図5B】チャックが閉位置にある時の別の実施形態のダンパ機構51を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1では、チャック10が作動位置にあり、作動位置とは、ウエハWがピン25によって保持されていることを意味する。円形の矢印は、チャックの時計回りの回転を示す。チャック10は、上側ベース本体11および下側ベース本体12を備える。ウエハは、一連のピンアセンブリ23によって周囲で保持され、ピンアセンブリ23の各々は、偏心取り付けされたチャックピン25を備える。上述のように、ピンアセンブリ23がその軸(チャックの回転軸に平行な軸)を中心に回転されると、ピン25は、ウエハ縁部に向かうように、および、ウエハエッジから離れるように移動される。
【0019】
チャック10は、ベルヌーイチャックであることが好ましく、ウエハは、複数のガスノズル(図示せず)によって提供されたガスクッション上に浮遊し、ベルヌーイ効果でガスクッションによって下方からも支持される。
【0020】
図2でも、円形の矢印は、チャックの時計回りの回転を示しているが、この図では、チャックの下から図示されているため、矢印自体は反時計回りに向いている。説明を簡単にするために、下側ベース本体12は図示されていない。したがって、
図2では、上側ベース本体11およびピンアセンブリ23だけでなく、リング歯車30も見えるようになっており、リング歯車30の歯37は、各ピンアセンブリ23の下側部分に形成された歯27とかみ合っている。
【0021】
コイルバネ43が、一端でリング歯車30のそれぞれのスポーク32に結合され、他方の端で上側ベース本体11に結合されている。バネ43は、
図1および
図2に示すようにピン25がウエハWと接触する半径方向内側の位置すなわち「閉位置」にピン25を配置するようにピンアセンブリ23が旋回されるよう、リング歯車30を付勢して上側ベース本体に対して回転させる。
【0022】
チャックベース本体は、駆動シャフト(図示せず)に結合されており、矢印で示した時計回りの方向にチャックが駆動された場合には、上述のように、チャック加速時のリング歯車30の慣性によって、ピン25が瞬間的に開く。逆に、チャックが反時計回りに回転される場合、瞬間的にピンを開くには、チャックを減速する必要がある。
【0023】
制御されたウエハシフトの典型的な角加速度は、3200deg/s
2である。
【0024】
上述のように、本発明者は、歯車リングが、特にバネ43の補助によって、チャックの加速または減速中に開位置から閉位置に戻る際に、チャックピン25とウエハWの周縁部との制御されない衝突によってピンが損傷されることを発見した。
【0025】
ピンの寿命を延ばすため、および/または、より安定したシフト性能を得るために、ダンパシステムがチャックに設けられる。特に、本実施形態は、上側ベース本体11に取り付けられたダンパ51を備える。ダンパは、ダンパ内のコイルバネによって突出位置(「伸長位置」)に向かって付勢されたロッド53を備える。ピン25がウエハ縁部に接触して、チャックが閉じられると、ダンパのロッド53は、歯車リング30の隣接するスポーク32と接触する。ただし、ロッド53は、スポーク32に固定されないことが好ましい。
【0026】
図3では、チャックは開位置にあり、これは、ウエハがピン25によって保持されていないため、チャックに対して自由に回転できることを意味する。
図3の円形の矢印は、チャックの加速された時計回りの回転を示す。リング歯車30の慣性により、リング歯車30は、(時計回りに回転しているが)チャック10のベース本体12に対しては反時計回りに回転される。この反時計回りの相対的な回転は、通常は閉位置に向かって旋回するようにリング歯車を付勢しているコイルバネ43の力に抗して起きる。したがって、ピンアセンブリ23は一瞬の間だけ時計回りに回転し、ピン25はウエハを解放する。
図3は、チャックが加速されたばかりで、歯車がその加速にまだ追いついていない状態のチャックを示している。
図3からわかるように、ダンパ51のロッド53は、まだ伸長していないため、スポーク32と接触していない。
【0027】
歯車30が閉位置に向かって引き戻される時に、スポーク32は、すでに若干伸長しているロッド53に接触する。したがって、チャックを追いかける歯車の速い動きが、ゆっくりと引っ込むロッド53によって妨げられ、その結果、ダンパ51は、閉位置に向かう歯車の動きの速度を制限する。
【0028】
ウエハシフト中にピンを閉じる工程は、歯車リングの慣性とバネの力によって駆動される。6つのチャックピンを有する従来のスピンチャックにおいて、閉じる際の全エネルギは、0.246Nmであることがわかっており、これは、6つのチャックピンによって消散されることになる。技術的な考察により、このエネルギは、弾性エネルギ、塑性エネルギ、および、「摩耗エネルギ」(ピンのポリマ材料の摩耗およびクラック形成)に変換されると仮定される。
【0029】
さらに、ピンの屈曲と、ウエハおよびピンの間の高い接触力とにより、従来のピンチャックでは、1つの処理の間に複数回のウエハシフトを実行できない可能性がある。これら複数回ウエハシフトの不具合の根本的な原因は、ピンの屈曲と、高いクランプ力によって生じる大きい摩擦力とによってシフトが行き詰まることであると考えられる。
【0030】
本発明によるダンパシステムは、チャックピンによって消散されるエネルギの量を減少させる。ダンパシステム(いくつかの点でショックアブソーバに類似する)、および/または、回転ブレーキが、ウエハシフトの際に閉じるエネルギを低減または排除するために導入される。ダンパは、さらに、調節可能であることが好ましく、発明者は、ダンパによって消散されるエネルギがおおよそ「ダンパのストローク」の線形関数であることを究明した。「ダンパのストローク」、ひいては、ダンパ機構によって消散されるエネルギは、制御可能である。現時点で好ましいエネルギ消散目標範囲は、理論的な閉じるエネルギの20から80%である。
【0031】
ダンパ要素は、クランプ要素の閉じ速度が約1cm/s(0.01m/s)を超えないように設計される。
【0032】
ウエハシフトを減少および制御するさらなる可能性は、回転ブレーキの利用を含む。回転ブレーキは、両方向に作用しうる。これは、リング歯車の開動作および閉動作中に、ブレーキがリング歯車の動きに対抗する力を生成することを意味する。チャック内で様々な回転ブレーキおよび様々な調節を用いることによって、ブレーキトルクを調節できる。
【0033】
ウエハシフト中のウエハの任意の軸方向の動きは、ウエハがガスクッション上に浮遊すると同時にベルヌーイ効果によってガスクッションによって保持されるベルヌーイチャックを用いて防ぐことができる。あるいは、ウエハシフト中のウエハの任意の軸方向の動きは、波形またはキノコ形のピンを用いることによって防ぐこともできる。
【0034】
図4Aおよび
図4Bは、チャックの開位置(
図4A)および閉位置(
図4B)でのダンパ機構を示す。ロッド53には、リング歯車30の隣接するスポーク32と接触するための拡大ヘッド55が設けられている。ダンパ機構51のハウジング内部で、ロッド53は、取り付けられたプレートを介してコイルバネ57と係合する。コイルバネ57のバネ力は、コイルバネ43よりも小さく、その結果、歯車リングの慣性に打ち勝つと、コイルバネ57は、
図4Aに示した弛緩状態から
図4Bに示した圧縮状態に移行する。
【0035】
図4Aおよび
図4Bは、圧縮バネを示しているが、ダンパは、一端でハウジングに取り付けられ他端でロッド53の遠位端に取り付けられた引張バネ(例えば、ダンパ機構51のハウジング内部でロッド53上に拘束されたバネなど)を備えてもよい。
【0036】
バネを用いた装置以外のダンパ機構が用いられてもよい。
図5Aおよび
図5Bは、弾性材料から形成されたストリップまたは膜59がバネの代わりに用いられた別のダンパ機構を示す。
【0037】
ダッシュポット(油圧ダンパ)がダンパ機構として用いられることが好ましい。
【0038】
ダッシュポットは、動きに抵抗するために粘性摩擦を利用する。ダッシュポットは、例えばショックアブソーバ内のバネと連動して粘性流体を通して動くピストンからなる。制動力は、運動の速度に比例する。動いている間、この制動力は、反対方向に反作用する。この反対向きの制動力は、運動に抗して、エネルギを吸収する。
【0039】
ダッシュポットを主に特徴付ける2つのパラメータは、ストロークおよび制動係数である。ダッシュポットの線形変位が、ストロークによって測定され、単位速度当たりの制動力が、制動係数によって測定される。
【0040】
線形ダッシュポットが用いられる場合、制動係数の好ましい範囲は、2Ns/mから200Ns/mまでであり、より好ましくは6Ns/mから60Ns/mまでである(例えば:20Ns/m)。
【0041】
回転ダッシュポットが用いられる場合、制動係数の好ましい範囲は、0.07Nms/rad(角速度当たりのトルク)から7Nms/radまでであり、より好ましくは0.2Nms/radから2Nms/radまでである(例えば:0.7Nms/rad)。これは、歯車が制動される実際の制動係数である。
【0042】
図2および
図3は、単一のダンパ機構を示しているが、チャックの周囲にわたってより均等に制動力を分布させ、より小さい個々の機構およびより軽いバネの利用を可能にするように、複数のダンパ機構が用いられてもよいことを理解されたい。例えば、6つのピンアセンブリを有するスピンチャックに、1、3、または、6つのダンパ機構が設けられてよい。
【0043】
本発明は、スピンチャックに関連して説明されているが、非回転チャックで用いられてもよい。さらに、本発明は、湿式化学処理に用いられるチャックに関連して説明されているが、乾式処理に用いられてもよい。
【0044】
本発明は様々な好ましい実施形態に関連して説明されているが、それらの実施形態は、本発明の例示のために提供されているに過ぎず、添付の特許請求の範囲の真の範囲および精神によって与えられる保護範囲を限定するための根拠として用いるべきではないことを理解されたい。
また、本発明は、以下の形態としても実現可能である。
適用例1:
ウエハ形状物品を保持するための装置であって、
前記ウエハ形状物品の周縁部と接触するよう適合されると共に、閉位置に向かって付勢されたクランプ要素と、
前記クランプ要素が前記閉位置に動く時にウエハ縁部に衝突する力を抑制する少なくとも1つのダンパ機構と、
を備える、装置。
適用例2:
適用例1の装置であって、
前記クランプ要素は、一連のピンであり、前記ピンは、前記ウエハ形状物品と接触しない外側の開位置から前記閉位置まで一緒に移動可能である、装置。
適用例3:
適用例1の装置であって、
前記装置は、枚葉式ウエハ湿式処理のための処理モジュール内のスピンチャックである、装置。
適用例4:
適用例2の装置であって、
前記ピンは、円形に沿って配列され、各ピンは、それぞれの旋回ベースから、前記旋回ベースの旋回軸と平行であり前記旋回軸からオフセットされた軸に沿って上方に突出している、装置。
適用例5:
適用例4の装置であって、さらに、
各旋回ベースに形成された歯車とかみ合う共通歯車リングを備える、装置。
適用例6:
適用例5の装置であって、
前記ダンパ機構は、前記共通歯車リングと前記装置の本体とに結合されて、それらの間の相対運動を制動する、装置。
適用例7:
適用例1の装置であって、
前記ダンパ機構は、前記装置の本体に固定されたハウジングと、前記ハウジングから突出し前記ハウジングから外向きに付勢されたロッドとを備え、
前記ロッドは、前記クランプ要素のための作動機構と接触するように配置され、前記本体および前記作動機構の間の第1の方向の相対運動によって、前記ロッドが付勢機構の作用に抗して前記ハウジング内に押し込まれる、装置。
適用例8:
適用例7の装置であって、
前記付勢機構は、コイルバネである、装置。
適用例9:
適用例7の装置であって、
前記付勢機構は、弾性ストリップまたは弾性膜である、装置。
適用例10:
適用例1の装置であって、
前記ダンパ機構は、前記クランプ要素が1cm/s(0.01m/s)以下の閉じ速度を有するように構成される、装置。
適用例11:
適用例1の装置であって、
前記ダンパ機構は、2Ns/mから200Ns/mまでの範囲の制動係数(速度当たりの力)を有する線形ダッシュポットを含む、装置。
適用例12:
適用例1の装置であって、
前記ダンパ機構は、0.07Nms/radから7Nms/radまでの範囲の制動係数(角速度当たりのトルク)を有する回転ダッシュポットを含む、装置。
適用例13:
適用例5の装置であって、
前記ダンパ機構は、前記共通歯車リングに作用する全制動係数が0.07Nms/rad(角速度当たりのトルク)から7Nms/radまでの範囲であるよう構成される、装置。