(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021807
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】共振回路の調整装置を動作させるための方法並びに調整装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-514708(P2013-514708)
(86)(22)【出願日】2011年6月15日
(65)【公表番号】特表2013-532462(P2013-532462A)
(43)【公表日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】EP2011059967
(87)【国際公開番号】WO2011160993
(87)【国際公開日】20111229
【審査請求日】2012年12月13日
【審判番号】不服2015-9775(P2015-9775/J1)
【審判請求日】2015年5月26日
(31)【優先権主張番号】102010030328.3
(32)【優先日】2010年6月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン キューナー
【合議体】
【審判長】
新川 圭二
【審判官】
山田 正文
【審判官】
稲葉 和生
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−6614(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/022365(WO,A1)
【文献】
特開平5−143168(JP,A)
【文献】
特開2005−151608(JP,A)
【文献】
特開2006−311729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの直列接続されたスイッチング素子(8,9)が調整装置(1)に設けられており、該スイッチング素子(8,9)間に共振回路(2)の端子(6)が接続されている、
共振回路(2)の調整装置(1)を動作させるための方法において、
前記スイッチング素子(8,9)の駆動周波数を、前記端子(6)から取り出された電圧に基づき、該駆動周波数と前記共振回路(2)の共振周波数との関係を表す信号を導出することにより、前記共振周波数と整合し、
前記スイッチング素子(8,9)には、それぞれ1つのフリーホイールダイオード(13,14)が並列接続されており、
前記スイッチング素子(8,9)が開かれているときのみ、前記端子(6)から電圧が取り出されることを特徴とする、
共振回路(2)の調整装置(1)を動作させるための方法。
【請求項2】
前記共振回路(2)を励振させるために、前記スイッチング素子(8,9)を周期的に開閉する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記取り出された電圧を比較器(19)へ供給してディジタル信号に変換する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ディジタル信号をフリップフロップ(20)及び/又はカウンタ(25)のための入力信号として用いる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記調整装置(1)のコントローラ(18)が、定められた周波数によって、前記スイッチング素子(8,9)を駆動する、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記周波数は、カウンタ(25)により求められた周波数である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記コントローラ(18)から前記フリップフロップ(20)及び/又はカウンタ(25)へ、クロック信号を供給する、請求項4を引用する請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記フリップフロップ(20)へ供給されたクロック信号により、前記電圧の取り出し動作を行わせる、請求項4記載の方法。
【請求項9】
前記共振回路(2)を、無接触でエネルギーを伝達するために、又は圧電振動子(36)を駆動するために使用する、請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つの直列接続されたスイッチング素子(8,9)が設けられており、該スイッチング素子(8,9)間に共振回路(2)の端子(6)が接続されている、
共振回路(2)の調整装置(1)において、
前記スイッチング素子(8,9)の駆動周波数が、前記端子(6)から取り出された電圧に基づき、該駆動周波数と前記共振回路(2)の共振周波数との関係を表す信号を導出することにより、前記共振周波数と整合され、
前記スイッチング素子(8,9)には、それぞれ1つのフリーホイールダイオード(13,14)が並列接続されており、
前記スイッチング素子(8,9)が開かれているときのみ、前記端子(6)から電圧が取り出されることを特徴とする、
共振回路(2)の調整装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振回路の調整装置を動作させるための方法に関する。この場合、調整装置は、少なくとも2つの直列接続されたスイッチング素子を有しており、これらのスイッチング素子には、例えばそれぞれ1つのフリーホイールダイオードが並列接続されている。スイッチング素子間に共振回路の端子が接続されている。さらに本発明は、共振回路の調整装置にも関する。
【0002】
背景技術
冒頭で述べた形式の方法は従来技術から公知である。共振回路は例えば、電気的な共振回路もしくは電気機械的な共振回路である。共振回路のことを振動回路とも称することができる。この回路は通常、少なくとも1つの容量素子(コンデンサ)と少なくとも1つの誘導素子(コイル)とから成る。したがって振動回路は、電気的な振動を生じさせることのできる共振可能な電気回路である。コイルとコンデンサとから成るLC振動回路の場合、エネルギーはコイルの磁界とコンデンサの電界との間で周期的に交換され、これによって高い電流強度または高い電圧が交互に生じる。
【0003】
共振回路に対応して調整装置が設けられており、この調整装置は共振回路を有利にはその共振周波数で励振させるために用いられる。この場合、調整装置は少なくとも2つのスイッチング素子を有しており、これらのスイッチング素子は有利には直列に接続されている。有利にはスイッチング素子の各々に、フリーホイールダイオードが並列に接続されている。共振回路の接続は、直列接続されたスイッチング素子の間で行われる。制御素子と呼ぶこともできるこれらのスイッチング素子によって、共振回路に所定の周波数が予め与えられる。この周波数は、有利には共振回路の共振周波数と一致したものである。共振回路を駆動するためのスイッチング素子を作動させる駆動周波数を調整する目的で、一般にチョーク電圧及びチョーク電流が測定される。ここでチョーク電圧及びチョーク電流とは、誘導素子において降下する電圧及び誘導素子を流れる電流に対応するものである。ただし調整装置によって共振回路の共振制御を実行するためには、少なくともチョーク電流が測定されるように構成される。
【0004】
とはいえ、チョーク電流及び場合によってはこれに加えてチョーク電圧を求めるためには、センサ機構を設ける必要がある。これに加えて、センサ機構によって測定された信号を評価し、この評価に基づき共振制御を実行する装置も設けなければならない。信号処理にあたり、いわゆる微分位相測定ないしは差分位相測定がしばしば適用される。しかしながらチョーク電圧もしくはチョーク電流の測定は煩雑であり、そのために必要とされるセンサ機構はコストがかかる。
【0005】
発明の概要
これに対し、請求項1記載の特徴を備えた共振回路の調整装置を動作させるための方法により得られる利点とは、チョーク電圧もしくはチョーク電流を測定するための上述のセンサ機構を設けることなく調整装置を稼働できる点にある。本発明によればこのことは、端子から取り出された電圧に応じてスイッチング素子を駆動することによって達成される。したがって、チョーク電圧を測定するためのセンサ機構も、チョーク電流を測定するためのセンサ機構も不要である。本発明によればこのような測定を行うのではなく、スイッチング素子の間の電圧つまりは端子における電圧が取り出されるようにするだけである。この電圧に基づき、スイッチング素子を高い信頼性を伴って駆動することができる。その際にこの電圧は、目下流れているチョーク電流に対する尺度を成し、殊にすべてのスイッチング素子が開放されているときには、この電圧をチョーク電流よりもきわめて簡単に求めることができる。2つのスイッチング素子はハーフブリッジを成しており、このハーフブリッジは回路技術的にみてそれらの間に位置するセンタタップを有しており、そこに共振回路の端子が接続されている。スイッチング素子を、例えばパワーエレクトロニクス制御素子とすることができる。この端子から取り出される電圧は、例えば共振回路の別の端子と関連づけて測定される。したがって電圧測定を共振回路の2つの端子間で行うことができ、有利にはスイッチング素子の1つもしくはそれに対応するフリーホイールダイオードと並列に行うことができる。
【0006】
本発明の1つの実施形態によれば、共振回路の励振のためにスイッチング素子が周期的に開閉され、スイッチング素子が開放されているときだけ、端子から電圧が取り出される。調整装置を駆動するために、もしくは共振回路を励振するために、スイッチング素子がそれ自体周知のようにして周期的に開閉される。スイッチング素子が直列に接続されている場合、調整装置が短絡してしまうのを避けるため、スイッチング素子を同時に閉鎖してはならず、つまり導通状態にしてはならない。一般にスイッチング素子のスイッチオン遅延及び/又はスイッチオフ遅延が実際には発生するので、それらのスイッチング素子はロックタイムもしくはデットタイムによって制御される。このような時間を設けることによって、スイッチング素子のいずれも閉鎖されていない期間つまりは電流が流れない期間が生じる。この期間中、電流はフリーホイールダイオードの少なくとも1つを介して案内される。そして複数のスイッチング素子もしくはすべてのスイッチング素子が開かれている間に、端子から電圧が取り出されるようにする。つまりこの場合、複数のスイッチング素子から成るハーフブリッジのセンタタップにおける電圧が取り出される。この電圧から、調整装置のスイッチング素子を駆動している目下の駆動周波数が、共振回路の共振周波数よりも高いか低いかを求めることができる。この情報を用いることで、開ループ制御及び/又は閉ループ制御により駆動周波数を追従制御することができ、共振回路が常にその共振周波数で駆動されるようになる。
【0007】
本発明の1つの実施形態によれば、取り出された電圧が比較器例えばシュミットトリガへ供給され、ディジタル信号に変換される。既述の通り、複数のスイッチング素子が開放されている期間中、電流はフリーホイールダイオードの一方を介して流れる。その際、正の電流のときには、一方のフリーホイールダイオードを介して電流が流れ、負の電流のときには、他方のフリーホイールダイオードを介して電流が流れる。その結果、端子から取り出される電圧は、例えば正の電流であればゼロになり、負の電流であれば給電電圧に相応する。したがって正の電流のときに取り出された電圧と負の電流のときに取り出された電圧との差は、給電電圧の絶対値に相応する。取り出される電圧は、電流の向きに左右される。電圧からディジタル信号を発生させる目的で、電圧が比較器へ供給される。この場合、比較器は取り出された電圧を、有利には予期される最小電圧よりも高くかつ予期される最大電圧よりも低い電圧と比較する。このようにして、例えばフリーホイールダイオードの順方向電圧に起因するエラーをフィルタリングして取り除くことができる。比較器は有利にはシュミットトリガである。したがってスイッチング素子が開放されている場合にディジタル信号は、チョーク電流の極性を表す。この極性に基づき、共振回路がその共振周波数で駆動されるよう、スイッチング素子を駆動制御することができる。
【0008】
本発明の1つの実施形態によれば、ディジタル信号はフリップフロップ及び/又はカウンタのための入力信号として使用される。フリップフロップによって、ディジタル信号を時間的に安定させることができる。この目的でフリップフロップは、決められたサンプリング周波数で駆動される。これに加えて、あるいはこれに代わる構成として、カウンタが設けられる。カウンタによってディジタル信号から、これまでの駆動周波数の代わりに調整装置を駆動することになる新たな駆動周波数つまりはスイッチング素子を駆動することになる新たな駆動周波数を求めることができ、これによって共振回路をその共振周波数で駆動できるようになり、あるいは目下用いられている駆動周波数よりも少なくとも共振周波数に近づけて駆動できるようになる。このようにしてカウンタを用いることにより新たな駆動周波数が定められ、その後、この新たな駆動周波数がこれまでの駆動周波数の代わりに調整装置を駆動するために用いられる。殊に有利であるのは、ディジタル信号をフリップフロップへ供給し、カウンタをフリップフロップの出力側に接続することである。このようにして、きわめてロバストな調整装置の駆動を実現することができる。
【0009】
本発明の1つの実施形態によれば、調整装置のコントローラが、定められた周波数によって、例えばカウンタにより求められた周波数によって、スイッチング素子を駆動する。このコントローラは、スイッチング素子が開放状態または閉鎖状態をとるようスイッチング素子を駆動するために設けられている。その際、スイッチング素子が交互にもしくは周期的に開放又は閉鎖されるよう、ただし調整装置における既述の短絡を回避するために決して同時には閉鎖されないよう、駆動が行われる。この場合、スイッチング素子の駆動は、所定の(駆動)周波数で行われる。所定の駆動周波数は、有利にはカウンタによって求められる。
【0010】
本発明の1つの実施形態によれば、コントローラからフリップフロップ及び/又はカウンタへクロック信号が供給される。この場合、一般にフリップフロップのクロック信号とカウンタのクロック信号とは異なる。コントローラは、端子から電圧を取り出すべきときに、つまりスイッチング素子が開かれたときに、有利にはクロック信号をフリップフロップへ伝達する。これに対し、カウンタへ供給されるクロック信号は、有利には一定の周波数を有している。
【0011】
本発明の1つの実施形態によれば、フリップフロップへ供給されるクロック信号によって電圧の取り出し動作が行われる。既述のように、端子から電圧を取り出すべきときに、コントローラからフリップフロップへクロック信号が供給される。一般にこれは、スイッチング素子が開いている場合に該当する。
【0012】
本発明の1つの実施形態によれば共振回路は、無接触でエネルギーを伝達するために、あるいは圧電共振子を駆動するために用いられる。このようにすれば、無接触でエネルギーを伝達するための装置を、もしくは圧電共振を駆動するための装置を、きわめて好適なコストで実現することができる。
【0013】
さらに本発明は、例えば既述の方法を実施するための、共振回路の調整装置にも関する。この場合、調整装置には、例えばそれぞれ1つのフリーホイールダイオードが並列接続されている、少なくとも2つの直列接続されたスイッチング素子が設けられており、これらのスイッチング素子間に共振回路の端子が接続されている。この場合、調整装置は、端子から取り出される電圧に依存してスイッチング素子が駆動されるように構成されている。
【0014】
これらに加え本発明は同様に、無接触エネルギー伝達装置及び圧電共振子駆動装置にも関する。これらの装置は既述の調整装置を有しており、及び/又は既述の方法を実施するように構成されている。
【0015】
次に、図面に示された実施例に基づき本発明について詳しく説明する。なお、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】調整装置を動作させるための方法に適用可能な調整装置及び共振回路の回路図
【
図2】無接触のエネルギー伝達に共振回路を用いた場合の回路図
【
図3】圧電振動子を駆動するための共振回路を示す図
【
図4】圧電共振回路をその共振周波数で駆動したときのチョーク電流及び測定電圧を時間軸上で示したグラフ
【
図5】
図4に示したグラフに基づき、共振回路を共振周波数よりも高い駆動周波数で駆動したときの様子を示すグラフ
【
図6】
図4に示したグラフに基づき、共振回路を共振周波数よりも低い駆動周波数で駆動したときの様子を示すグラフ
【0017】
図1は、調整装置1と共振回路2を示す回路図である。この場合、調整装置1は、共振回路2を駆動もしくは励振するために用いられる。
【0018】
ここで示す実施例の場合、共振回路2はコンデンサ3とコイル4と(オプションとして)抵抗5を有している。その際、コンデンサ3とコイル4と抵抗5は直列に接続されている。共振回路2は、第1の端子6及び第2の端子7を有している。この実施例の場合、これら両方の端子6,7が調整装置1と接続されている。
【0019】
調整装置1は2つのスイッチング素子8,9を有しており、これらは互いに直列に(この図には詳しくは示されていない)エネルギー供給装置10と接続されている。エネルギー供給装置10は、極11と12との間において給電電圧U
Batを供給する。この場合、エネルギー供給装置10の2つの極11と12との間に、2つのスイッチング素子8,9から成る直列回路が設けられている。スイッチング素子8は極11に対応づけられており、スイッチング素子9は極12に対応づけられており、もしくは両者はそれぞれこれらの極にじかに接続されている。スイッチング素子8及び9には、それぞれフリーホイールダイオード13ないしは14が並列に接続されている。この点ではスイッチング素子8及び9は、これらのスイッチング素子8,9の間に位置するセンタタップ16を備えたハーフブリッジ15を成している。そしてこのセンタタップ16には共振回路2の第1の端子6が接続されている一方、第2の端子7はエネルギー供給装置10の極12と接続されている。したがって共振回路2は、スイッチング素子9もしくはフリーホイールダイオード14と並列に配置されていることになる。エネルギー供給装置10の極11は例えば正の電位であり、他方、極12は、シンボル17で表されているようにアース電位に対応する。スイッチング素子8及び9は、例えばパワーエレクトロニクス制御素子である。
【0020】
スイッチング素子8及び9は、調整装置1のコントローラ18によりそれぞれ開閉のための駆動周波数で駆動される。つまりスイッチング素子8及び9は周期的に開閉される。このようにして共振回路2の励振が行われる。スイッチング素子8及び9によって、共振回路2の駆動周波数が設定される。共振回路2を効率的に駆動するためには、この駆動周波数を共振回路3の共振周波数と少なくとも近似的に一致させる必要がある。この場合、共振周波数は共振周波数2の様々な特性に依存し、例えばコンデンサ3の容量やコイル4のインダクタンスに左右される。スイッチング素子8及び9の駆動周波数を制御するために従来技術から知られているのは、チョーク電圧U
Lとチョーク電流I
Lを測定し、チョーク電圧U
Lとチョーク電流I
Lとの位相差に基づいて制御を行うことである。
【0021】
本発明によれば、端子6もしくはセンタタップ16から電圧U
HBが取り出され、取り出された電圧U
HBに応じてスイッチング素子8及び9が制御される。したがって、チョーク電圧U
Lとチョーク電流I
Lを測定するために一般的に使用されているセンサ機構が省略される。この目的で、第1の端子6もしくはセンタタップ16が比較器19と接続されており、ここでは比較器19はシュミットトリガとして実装されている。つまり取り出された電圧U
HBは、比較器19の入力信号として用いられる。比較器19の出力信号はフリップフロップ20へ供給される。これに加えて、コントローラ18からフリップフロップ20へクロック信号も供給される。このため、コントローラ18のクロック信号出力端子21がフリップフロップ20のクロック入力端子22と接続されている。フリップフロップ20の出力端子23は、カウンタ25の入力端子24と接続されている。さらにカウンタ25のクロック入力端子26へ、コントローラ18のクロック出力端子27から送出されたクロック信号が供給される。カウンタ25は周波数信号出力端子28を有しており、この端子はコントローラ18の周波数信号入力端子29と接続されている。コントローラ18はさらに、第1の制御出力端子30と第2の制御出力端子31を有しており、第1の制御出力端子30にはスイッチング素子8が接続され、第2の制御出力端子31にはスイッチング素子9が接続されている。制御出力端子31及び32を介して、コントローラ18はスイッチング素子8及び9の開閉を制御する。
【0022】
調整装置1と共振回路2に対し以下の機能が得られる。すなわちコントローラ18によってスイッチング素子8及び9が、駆動周波数を用いて周期的に開閉される。このようにしてそれ自体公知のやり方で、共振回路2の振動が励起される。スイッチング素子8及び9の切替過程の実施に必要な時間ではあるけれども、極11と12の短絡を回避する目的で、ロックタイムもしくはデッドタイムが設けられており、この期間中はスイッチング素子8と9が同時に開放される。したがってスイッチング素子8及び9の制御は、例えば最初にスイッチング素子8が閉じられるようにして行われる。このため、スイッチング素子8を開きスイッチング素子9を閉じるようにするときには、最初にスイッチング素子8が開かれ、予め定められた期間すなわちロックタイムもしくはデッドタイムが経過してからスイッチング素子9が閉じられるよう、コントローラ18によって制御される。このため、スイッチング素子8及び9が同時に閉じられてしまう状態は決して発生しない。エネルギー供給装置10の極11と12の短絡は、このようにして効果的に阻止される。
【0023】
スイッチング素子8及び9が開放されている間、電流はフリーホイールダイオード13もしくは14を介して流れる。共振回路2に目下供給されている電流が正であるならば、フリーホイールダイオード14を通って電流が流れる。負の電流であれば、フリーホイールダイオード13を通って電流が流れる。その結果、取り出される電圧U
HBは、正の電流であれば、ダイオードの順方向電圧を無視すればゼロに向かい、負の電流であれば給電電圧U
Batに相応する。つまり電圧の変位は給電電圧U
Batの絶対値に対応する。したがって第1の端子6もしくはセンタタップ16から、電流の流れる方向に応じてU
Batであるかまたはゼロである電圧U
HBを取り出すことができる。
【0024】
電圧U
HBは比較器19によってディジタル信号に変換される。その際、電圧U
HBは、比較器19により予め定められ一般的には一定である基準電圧と比較される。有利にはこの基準電圧は、ゼロよりも大きいが給電電圧U
Batよりも小さい。それゆえこのディジタル信号は、スイッチング素子8,9が開放されている場合には、チョーク電流I
Lの極性を表す。電圧U
HBの取り出しが行われるのは、比較器19の後段に接続されたフリップフロップ20へクロック入力端子22を介してクロック信号が供給されたときである。その際、クロック信号の供給は、スイッチング素子8及び9が双方とも開放されているときにコントローラ18によって行われる。このためフリップフロップ20はその出力端子23から、最後に取り出された電圧U
HBに対応する時間的に安定したディジタル信号を供給する。ついでこの信号は、カウンタ27の入力端子へ供給される。これと同時にカウンタ25へは、有利にはコントローラ18から別のクロック信号が供給され、このクロック信号は有利には一定の周波数を有している。入力端子24にディジタル信号がセットされると、つまり取り出された電圧U
HBが正であり、もしくはチョーク電流I
Lが負であると、カウンタ25はクロック信号ごとに値をカウントアップし、すなわちその値をインクリメントする。
【0025】
これによって生じた値は、有利には電圧U
HBを次に取り出す前に、または次に取り出すときに、周波数信号出力端子28を介してコントローラ18の周波数信号入力端子29へ供給され、有利にはカウンタ25がリセットされる。コントローラ18は伝達された値から、スイッチング素子8及び9のための新たな駆動周波数を決定し、あるいは目下の駆動周波数が共振周波数よりも高いか低いかの情報を求める。後者の場合、目下の駆動周波数から出発して新たな駆動周波数を、有利には予め定められた値だけ、もしくは少なくとも目下の駆動周波数から求められた値だけ、低減するかまたは増加させる。新たな駆動周波数は、カウンタ25が新たに値を伝達するまで、これまでの駆動周波数の代わり使用される。このようにしてコントローラ18は、駆動周波数が共振回路2の共振周波数に漸次整合されるよう、開ループ制御及び/又は閉ループ制御によって共振回路2に順応する。さらにこのようにして、チョーク電圧U
L及びチョーク電流I
Lをじかに測定する必要なく、共振周波数に対する駆動周波数の整合調整を行うことができる。したがって、調整装置1を低コストで開ループ制御及び/又は閉ループ制御することができる。
【0026】
図2には、
図1に示した回路を、例えば携帯型工作機械の充電など無接触のエネルギー伝達に用いた事例を示す回路図が描かれている。この場合、例えば充電ステーションに属する共振回路2に対応して、さらに別の共振回路32が設けられている。この別の共振回路32は、ここでは1つのコイルのみによって構成されている。さらにこの別の共振回路32は、4つのダイオード34から成る整流回路33と接続されている。これに加えて平滑回路35が、例えばコンデンサとして設けられている。
図2の回路図は簡略化されて描かれているので、例えば調整装置1全体は示されていない。したがって、詳細については
図1の説明を参照されたい。
【0027】
図3には、
図1に示した回路を圧電振動子36の駆動に用いた事例を示す回路図が描かれている。既に
図2に示したとおり、この場合、共振回路2に対応して別の共振回路32が設けられている。別の共振回路32は圧電振動子36と接続されている。この別の共振回路32も、ここでは1つのコイルのみによって構成されている。調整装置1は、既に
図1及び
図2に示した調整装置1に対応している。ただし、ここで用いられる共振回路2の構造は、
図1及び
図2を参照しながら説明したものとは異なっている。したがって、次にその相違点について説明する。この場合、共振回路2は、コイル4のほかに別のコイル37と2つのコンデンサ38,39を有している。コイル4は、別のコイル37と直列に接続されている。その際にコイル37は、ハーフブリッジ15のセンタタップ16と接続されており、つまりスイッチング素子8と9との間に接続されている。コイル4は別のコイル37とは反対側でコンデンサ38と39との間に接続されており、この場合、コンデンサ38はコイル4とは反対側で極11と接続されており、コンデンサ39はコイル4とは反対側で極12と接続されている。このようにしてこの実施例の場合も、チョーク電圧U
Lとチョーク電流I
Lを測定するためにセンサ機構を設けることなく、圧電振動子36を動作させることができる。
【0028】
図4〜
図6に示されているグラフには、電圧がボルトで、電流がアンペアで、ミリ秒単位の時間軸上に書き込まれている。経過特性40は取り出された電圧U
HBに対応し、経過特性41はチョーク電流I
Lに対応する。
図4には、駆動周波数が共振回路2の共振周波数と実質的に一致している場合の、取り出された電圧U
HBとチョーク電流I
Lの経過特性が示されている。このグラフからわかるのは、経過特性40の立ち上がり縁もしくは立ち下がり縁が、経過特性41の変曲点に位置していることである。電圧H
UBの取り出しは、経過特性40の立ち上がり縁のデッドタイムにおいて行われる。駆動周波数が低すぎると電流は正となり、駆動周波数が高すぎると電流は負となる。これについては
図6及び
図5から読み取ることができる。ハーフブリッジ15のセンタタップ16もしくは第1の端子6における電圧U
HBの取り出しを適正な時点で行えば、チョーク電流I
Lはゼロと等しくなる。したがって、駆動周波数が高すぎるのか低すぎるのかを表すディジタル信号が得られる。このディジタル信号により、カウンタ24を用いて、あるいはその代わりに積分器を用いて、周波数追従制御を行うことができる。このようにして駆動周波数が、それまでの値よりも共振周波数に近い新たな値に、あるいは理想的には共振周波数と一致した新たな値にセットされる。