(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021821
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】好ましくない成分から空気を浄化し、そのような成分を除去するための装置と方法
(51)【国際特許分類】
B03C 3/68 20060101AFI20161027BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20161027BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20161027BHJP
B03C 3/02 20060101ALI20161027BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20161027BHJP
G21F 9/02 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
B03C3/68 Z
A61L9/01 E
A61L9/16 Z
B03C3/02 A
B03C3/40 A
G21F9/02 521A
【請求項の数】7
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-548866(P2013-548866)
(86)(22)【出願日】2011年7月14日
(65)【公表番号】特表2014-509249(P2014-509249A)
(43)【公表日】2014年4月17日
(86)【国際出願番号】FI2011000037
(87)【国際公開番号】WO2012095549
(87)【国際公開日】20120719
【審査請求日】2014年5月28日
(31)【優先権主張番号】20110007
(32)【優先日】2011年1月12日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】513177864
【氏名又は名称】アーヴィ・テクノロジーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AAVI TECHNOLOGIES LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】イルマスティ,ヴェイッコ・イルマリ
【審査官】
藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−044959(JP,A)
【文献】
特開2005−075234(JP,A)
【文献】
特開平09−000610(JP,A)
【文献】
特開2009−233059(JP,A)
【文献】
特開2006−057942(JP,A)
【文献】
特開平08−298197(JP,A)
【文献】
特開2001−310141(JP,A)
【文献】
特開平01−123648(JP,A)
【文献】
特開平04−194791(JP,A)
【文献】
特開平04−251132(JP,A)
【文献】
特開昭62−083019(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/092510(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/68
A61L 9/01
A61L 9/16
B03C 3/02
B03C 3/40
G21F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくないガス、微生物、小滴、ナノサイズまたはそれ以上のサイズの粒子から空気を浄化するための装置であって、それを通って浄化対象空気(1)が流れるように構成されるとともに、浄化対象空気が水ダストを通して流されるように構成されるゾーン(6)を備える浄化チャンバと、収集面(9)に向けられたイオンブラストチップ(8)を備えるイオンブラストチャンバ(7)とを有する装置であって、浄化対象空気中に含まれ、且つ前記イオンブラストチップ(8)から噴出されるイオン噴流を介して供給される小滴または粒子状物質が、接地された前記収集面(9)に向けて投げ出されることによりこれら収集面上に収集された物質が前記浄化チャンバの底部へと流下し、そこから、更に、浄化済み空気が前記浄化チャンバを離れると同時に排出部(5)へと流れるように構成された装置であって、
前記浄化チャンバの入口端部に、浄化対象空気が水ダストゾーン(6)を通して案内される前にこの浄化対象空気のイオン化のためのイオン化放出チップ(4)を備えるイオン化チャンバ(3)が設けられ、更に前記イオン化チャンバ(3)より前側の前記浄化チャンバの入口に、前記浄化チャンバの電気/制御センター(10)に接続されたガスセンサ(2)が設けられ、前記センター(10)が、前記ガスセンサからの信号に基づいて、前記イオン化に用いられる電荷の正負を判定するように構成されており、
前記水ダストゾーン(6)の水ダストに使用される水は、ガス除去と微生物の駆除とを強化するべく過酸化水素によって酸化され
前記ガスセンサからの信号に基づいて、前記電気/制御センターは、前記水ダストゾーン(6)の水ダストの酸化必要度を判定するように構成されている
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記浄化対象空気(1)の前記ガスセンサによって、前記イオン化における電圧の自動制御も可能とされ、それによって、必要な場合高オゾン発生が可能とされることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記浄化対象空気から、ヨウ素ガス、二酸化炭素、およびアンモニアを効果的に除去することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記水ダストゾーン(6)の水ダストの小滴サイズが、20μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
好ましくないガス、微生物、小滴、ナノサイズまたはそれ以上のサイズの粒子から空気を浄化するための方法であって、浄化対象空気(1)を水ダストゾーン(6)と、次に、イオンブラストゾーン(7)とを通過するように案内する工程を有し、浄化対象空気中に含まれイオンブラストチップ(8)からのイオン噴流を介して供給される小滴形状または粒子状物質が、接地された収集面(9)に向けて投げ出され、前記収集面上に収集された物質が前記浄化チャンバの底部へと流下し、そこから、浄化済み空気が放出されると同時に排出部(5)へと流れる、方法であって、
浄化対象空気(1)が、前記水ダストゾーン(6)を通して案内される前に、イオン化され、イオン化の前に前記浄化対象空気がガスセンサ(2)と接触するように案内されて、電気/制御センター(10)が、前記センサからの信号に基づいて前記イオン化に用いられる電荷の正負を判定し、
前記水ダストゾーン(6)の水ダストに使用される水は、ガス除去と微生物の駆除とを強化するべく過酸化水素によって酸化され、
前記ガスセンサ(2)からの信号に基づいて、前記電気/制御センター(10)は、前記水ダストゾーン(6)の水ダストの酸化必要度を判定する
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記水ダストゾーン(6)の水ダストの小滴サイズが20μm未満であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ウィルス、バクテリア、胞子、菌類のうちの少なくともいずれかの微生物が、浄化済み空気の排出前に駆除されることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノサイズまたはそれ上のサイズの好ましくないガス、微生物、小滴、粒子から空気を浄化するための装置であって、それを通って浄化対象空気が流れるように構成されるとともに、浄化対象空気が水ダストまたは蒸気を通して流されるように構成されるゾーンを備える浄化チャンバと、収集面に向けられたイオンブラストチップを備えるイオンブラストチャンバとを有する装置であって、浄化対象空気中に含まれ、且つ前記イオンブラストチップから噴出されるイオン噴流を介して供給される小滴または粒子状物質が、接地された前記収集面に向けて投げ出されることによりこれら収集面上に収集された物質が前記浄化チャンバの底部へと流下し、そこから、更に、浄化済み空気が前記浄化チャンバを離れると同時に排出部へと流れるように構成された装置に関する。
【0002】
本発明は、更に、好ましくないガス、微生物、ナノサイズまたはそれ以上のサイズの液滴粒子から空気を浄化するための方法であって、浄化対象空気を水ダストまたは蒸気のゾーンと、次に、イオンブラストチャンバとを通過するように案内する工程を有し、浄化対象空気中に含まれイオン放出チップから噴出されるイオン噴流を介して供給される小滴または粒子状物質が、接地された収集面に向けて投げ出され、前記収集面上に収集された物質が前記浄化チャンバの底部へと流下し、そこから、更に、浄化済み空気が放出されると同時に排出部へと流れる、方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
実施とテストとによって、1ミリメートル以上のサイズの粒子のみならず、ナノサイズの粒子や蒸気もイオンブラスト法によって分離することが可能であることが示されている。公知の方法では、臭気とガスの分離は問題があった。イオンブラスト法等のそれ自身公知の空気浄化解決構成は数多くのフィンランドおよび米国特許に見出すことができる。
【0004】
例えば、フィンランド特許公報FI−116122に対応の文献WO2005/092510において、空気から好ましくないガスと粒子とを除去するためのそれ自身公知の装置と方法とが開示されている。この文献のページ1,32−33行目には、「実験によって、本発明の装置と方法とによって浄化対象空気から臭気を効果的に除去することが可能であることが示された」と記載されている。
【0005】
好ましくないガスおよび粒子から空気を浄化するための方法と装置のもう一つの例がフィンランド特許公報FI−121165に開示されている。この公報のページ2、6−11行目には、その英語翻訳文で、本発明の装置と方法は、浄化チャンバの空気導入開口部または入口ゾーンに空気のための強力な酸化ゾーンが設けられ、それによって、たとえば、過酸化水素を含有する水ダストによる酸化が提供されることを特徴としている、記載されている。酸化によって、臭気の除去に加えて、例えば、ウィルス、バクテリア、胞子といった病原菌、及びその他の微生物の駆除、収集面上への粒子状汚染物質との無生物物質の除去を達成することが可能である。しかしながら、強力で不快な臭気が或程度装置を通過し十分に強力な酸化物質を使用することは常に可能であるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】フィンランド特許公報第FI−116122号
【特許文献2】国際公開第WO2005−092510号
【特許文献3】フィンランド特許公報第FI−121165号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、これらの欠点を解消し、強力な酸化なしで、臭気を効果的に分離することが可能な装置と方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、浄化チャンバの入口端部に、浄化対象空気が水ダストまたは水蒸気ゾーンを通して案内される前にこの浄化対象空気のイオン化のためのイオン化放出チップを備えるイオン化チャンバが設けられ、更に、前記浄化チャンバの入口に、前記浄化チャンバの電気/制御センターに接続されたガスセンサが設けられ、前記センターが、前記ガスセンサからの信号に基づいて、前記イオン化の電荷の正負を判定するように構成されていることを特徴とする、装置と方法とによって達成される。これにより、空気の強力なイオン化が前記水ダストゾーンの前の浄化チャンバの入口ゾーンにおいて行われ、前記ガスセンサからの信号に基づいて、イオン化を、オゾンが所望のレベルで発生される電圧レベルに制御することも可能となる。
【0009】
前記水ダストゾーンの水ダストとして使用される水は、好ましくは、ガスの除去と微生物の駆除を強化するべく過酸化水素によって酸化することができる。イオン化装置が非常に安価でしかもその運転コストが非常に低いことによって、ガスの効果的な除去と、例えばウィルス、バクテリア、胞子などの病原菌およびその他の微生物の駆除を、水ダストの低レベルの酸化によってもすでに達成することが可能である。
【0010】
浄化チャンバの入口に設けられたガスセンサからの信号に基づいて、電気/制御センターが、水ダストゾーンにおける水ダストの酸化必要度を判断することも可能である。前記水ダストゾーンの水ダストの小滴サイズは、好ましくは、20μm未満である。
【0011】
本発明において、水ダストに代えて、たとえば+200℃の温度を有する蒸気を使用することも可能である。
【0012】
実験により、本発明の前記装置と方法によって、浄化対象空気から臭気を効果的に分離することが可能であることが示された。同時に、ナノサイズ以上の粒子が空気からほとんど100%除去される。
【0013】
一好適実施例に依れば、空気は、前記浄化チャンバ内に案内される前に、負または正の電荷によってイオン化される。そして荷電された空気が、必要であれば、過酸化水素やその他の酸化剤をそれに混合することが可能な前記水ダストまたは水蒸気へと案内される。20μm未満の粒子サイズの水ダストが実用的に最も有利である。イオンブラスト現象を作り出す前記浄化チャンバ内の高電圧作動チップによって、収集面への数百万のイオンの連続噴流が作り出され、それとともに、浄化対象空気から、ナノサイズ以上の浄化された粒子、小滴、病原菌、その他の微生物および好ましくないガスが取り出される。エーロゾルの荷電能力は重要ではなく、したがって、この点において、前記方法は電子フィルタと異なる。前記収集面に打ち付けられた小滴は連続的に取り除かれ、収集面から排出部に向けて下方に通過する。前記接地収集面も、実際の浄化作業を中断することなく、水洗によってクリーニングすることが可能である。
【0014】
世界において殺菌剤として、媒体として水を含む過酸化水素が一般に使用されており、それによって病原菌及び微生物を殺すことができる。過酸化水素の使用には、他の酸化剤の使用において生じる、ガスや化学残留物質の生成などの問題がない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による空気浄化装置の一実施例を概略図示するものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して本発明を実施例によって説明するが、ここで、
図1は本発明による空気浄化装置の一実施例を概略図示するものである。
【0017】
前記空気浄化装置は以下を有する。導入される浄化対象空気1、種々のガスを検出する複数のセンサ2。イオン化チャンバ3、その内では、浄化対象空気がイオン放出チップ4へと案内される。すべての空気処理ゾーンからの水の除去は、排出部またはタンク5へ行われる。ゾーン6、これは水ダストゾーンであって、ここでは、水ダストまたは酸化水ダストまたは水蒸気が作られる。ここで、最も好適な小滴サイズは20μm未満である。イオンブラストチャンバ7。ここでは収集面に向けられたイオンブラストチップ8からのイオン噴流が接地された収集面9に対して打ち付けられる。前記浄化チャンバの底部は水を排出部5へと案内する。電気/制御センター10は、好ましくは10kV〜36kVの負または正の電圧によって、前記イオンブラストのための、好ましくは16kV〜150kVの高電圧センターの制御に応じたイオン化のための電圧センターと、超音波発振器、または、その他のダスト発生装置、のための電流源と、ダスト装置のための自動給水装置とを有する。
【0018】
本発明による前記装置と方法は、空気によって運ばれる臭気、ガス、病原菌およびナノサイズ以上の粒子を空気から分離することを目的とする用途に適している。前記方法の大きな利点は、浄化対象空気の量を用途に応じて増やすことが可能であることである。前記方法および装置は、住居の特定の空気清浄と、家、ホテル、公共建築物や工場等の大きな空間の空気浄化との両方に適している。前記方法は、原子力発電所からの空気放出物中の放射性粒子とヨウ素ガスの分離に適し、これらの健康に危害を及ぼす汚染をほとんど100%浄化する。前記方法は、更に、非常にコスト効率が高く、エネルギ消費量は低く、その運転とメンテナンス費用は、繊維濾過法と比較して低い。