(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
オキサゾリン基含有量が6.0〜9.0mmol/gであるオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)を5〜55重量%、カルボキシル基含有量が0.5〜3.5mmol/gである水性アクリル系樹脂(B)を95〜45重量%を含有し(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、水性アクリル系樹脂(B)の合計量を100重量%とする)、オキサゾリン基のモル数とカルボキシル基のモル数の比率〔オキサゾリン基のモル数(xmmol)とカルボキシル基のモル数(ymmol)の比(x/y)×100[mol%]で示される。〕が100〜420mol%であることを特徴とするガスバリア性樹脂組成物。
オキサゾリン基含有量が6.0〜9.0mmol/gであるオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)を5〜55重量%、およびカルボキシル基含有量が0.5〜2.0mmol/gである水性ポリエステル系樹脂(C)を95〜45重量%含有し(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、水性ポリエステル系樹脂(C)の合計量を100重量%とする)、オキサゾリン基のモル数とカルボキシル基のモル数の比率〔オキサゾリン基のモル数(xmmol)とカルボキシル基のモル数(ymmol)の比(x/y)×100[mol%]で示される。〕が65〜420mol%であることを特徴とするガスバリア性樹脂組成物。
オキサゾリン基含有量が6.0〜9.0mmol/gであるオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)を10〜55重量%、カルボキシル基含有量が0.5〜3.5mmol/gである水性アクリル系樹脂(B)を10〜80重量%、並びにカルボキシル基含有量が0.5〜2.0mmol/gである水性ポリエステル系樹脂(C)を10〜80重量%含有し(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、水性アクリル系樹脂(B)、水性ポリエステル系樹脂(C)の合計量を100重量%とする)、オキサゾリン基のモル数とカルボキシル基のモル数の比率〔オキサゾリン基のモル数(xmmol)とカルボキシル基のモル数(ymmol)の比(x/y)×100[mol%]で示される。〕が150〜420mol%であることを特徴とするガスバリア性樹脂組成物。
基材層、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のガスバリア性樹脂組成物の硬化物からなる層、及び無機薄膜層の各層をこの順で有することを特徴とするガスバリア性の複合フィルム。
基材層の少なくとも一方の面が請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のガスバリア性樹脂組成物の硬化物からなる層を介して、周期表4B族元素のうちの1以上の金属、金属酸化物、金属窒化物、
金属酸窒化物、金属フッ化物、並びに周期表2A族元素、遷移元素、2B族元素、および3B族元素のうちの1以上の金属、金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物の単体または2以上の複合物から構成されている無機薄膜層からなることを特徴とするガスバリア性の複合フィルム。
無機薄膜層を構成する金属が、珪素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、マグネシウムあることを特徴とした請求項4または請求項5に記載のガスバリア性複合フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ガスバリア性樹脂組成物(ポリマー2成分を必須とする系)
態様(i)
本発明のガスバリア性樹脂組成物の態様(i)によれば、オキサゾリン基含有量が6.0〜9.0mmol/gであるオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)を5〜55重量%、カルボキシル基含有量が0.5〜3.5mmol/gである水性アクリル系樹脂(B)を95〜45重量%を含有し(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)及び水性アクリル系樹脂(B)の合計量を100重量%とする)、オキサゾリン基のモル数とカルボキシル基のモル数の比率〔オキサゾリン基のモル数(xmmol)とカルボキシル基のモル数(ymmol)の比(x/y)×100[mol%]で示している。〕が100〜420mol%である。
【0013】
この態様においては、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)と水性アクリル系樹脂(B)が必須のポリマー成分であり、必要に応じてそれ以外の他の樹脂等のポリマー成分も併用される。
【0014】
必須のポリマー成分であるオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)のオキサゾリン基の含有量は、6.0〜9.0mmol/g、好ましくは、6.5〜8.5mmol/g、さらに好ましくは7.0〜8.0mmol/gである。
【0015】
また、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の配合割合は5〜55重量%、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜45重量%であり、さらに好ましくは25〜40重量%である(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)及び水性アクリル系樹脂(B)の合計量を100重量%とする)。
【0016】
オキサゾリン基を含有する水性ポリマー(A)の配合割合が5重量%未満の場合はオキサゾリン基による架橋が不十分であり、55重量%を超える場合はガスバリア性樹脂組成物の硬化物からなる層の耐熱水性および耐溶剤性が不十分となる傾向がある。また、このような範囲に調節することにより、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層を利用したガスバリア性複合フィルムの熱水処理後のガスバリア性の安定性を向上させることができる。
【0017】
一方、水性アクリル系樹脂(B)については、カルボキシル基含有量が0.5〜3.5mmol/gであり、その中でも0.8〜3.5mmol/g、またその中でも、1.0〜3.5mmol/gが好ましく、さらに1.5〜3.0mmol/gが好ましく、最も好ましくは2.0〜3.0mmol/gである。
【0018】
このような範囲に調節することにより、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層を利用したガスバリア性複合フィルムの熱水処理後のガスバリア性の安定性を向上させることができる。
【0019】
なかでも、後記するように基材層、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層、及び無機薄膜層の各層をこの順で有する複合フィルムに利用する場合において、無機薄膜層が珪素などの周期表4B族に属する金属、その酸化物、窒化物、酸窒化物、フッ素化物などを含む層の場合、水性アクリル系樹脂(B)のカルボキシル基含有量が0.5〜3.5mmol/gが好ましく、その中でも0.8〜3.5mmol/g、さらに1.0〜3.0mmol/gが好ましく、さらに好ましくは1.5〜3.0mmol/g、最も好ましくは2.0〜3.0mmol/gである。
【0020】
一方、後記するように基材層、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層、及び無機薄膜層の各層をこの順で有する複合フィルムに利用する場合において、無機薄膜層がアルミニウム等の周期表2A族に属する元素、遷移元素、2B族元素および3B族元素の金属、その酸化物、窒化物、フッ素化物などを含む層の場合は、水性アクリル系樹脂(B)のカルボキシル基含有量が1.5〜3.5mmol/gが好ましく、さらに好ましくは2.0〜3.0mmol/gである。
【0021】
また、態様(i)の水性アクリル系樹脂(B)の配合割合は、95〜45重量%であり、好ましくは90〜50重量%、より好ましくは85〜55重量%、最も好ましくは75〜60重量%である(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)及び水性アクリル系樹脂(B)の合計量を100重量%とする)。
【0022】
このような範囲に調節することにより、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層を利用したガスバリア性複合フィルムの熱水処理後のガスバリア性の安定性を向上させることができる。
【0023】
態様(i)のガスバリア性樹脂組成物のオキサゾリン基のモル数とカルボキシル基のモル数の比率〔オキサゾリン基のモル数(xmmol)とカルボキシル基のモル数(ymmol)の比(x/y)×100[mol%]で示している。〕は、100〜420mol%であり、好ましくは、110〜400mol%であり、さらに好ましくは115〜300mol%、最も好ましくは120〜260mol%である。
【0024】
なかでも、後記するように基材層、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層、及び無機薄膜層の各層をこの順で有する複合フィルムに利用する場合において、無機薄膜層が珪素などの周期表4B族に属する金属、その酸化物、窒化物、酸窒化物、フッ素化物などを含む層の場合は、上記のモル数の比率を100〜300mol%とすることが好ましく、110〜280mol%とすることがより好ましく、120〜260mol%とすることが最も好ましい。
【0025】
一方、後記するように基材層、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層、及び無機薄膜層の各層をこの順で有する複合フィルムに利用する場合において、無機薄膜層がアルミニウム等の周期表2A族に属する元素、遷移元素、2B族元素および3B族元素の金属、その酸化物、窒化物、フッ素化物などを含む層の場合は、上記のモル数の比率を150〜420mol%とすることが好ましく、115〜300mol%とすることがより好ましく、120〜260mol%とすることが最も好ましい。
態様(ii)
本発明のガスバリア性樹脂組成物の1つの態様(ii)によれば、オキサゾリン基含有量が6.0〜9.0mmol/gであるオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)を5〜55重量%、カルボキシル基含有量が0.5〜2.0mmol/gである水性ポリエステル系樹脂(C)を95〜45重量%を含有し(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)及び水性ポリエステル系樹脂(C)の合計量を100重量%とする)、オキサゾリン基のモル数とカルボキシル基のモル数の比率〔オキサゾリン基のモル数(xmmol)とカルボキシル基のモル数(ymmol)の比(x/y)×100[mol%]で示している。〕が65〜420mol%である。
【0026】
この態様においては、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)と水性ポリエステル系樹脂(C)が必須のポリマー成分であり、必要に応じてそれ以外の他の樹脂等のポリマー成分も併用される。
【0027】
必須のポリマー成分であるオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)のオキサゾリン基の含有量は、6.0〜9.0mmol/g、好ましくは、6.5〜8.5mmol/g、さらに好ましくは7.0〜8.0mmol/gである。
【0028】
また、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の配合割合は5〜55重量%、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜45重量%、最も好ましくは25〜40重量%である(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)及び水性ポリエステル系樹脂(C)の合計量を100重量%とする)。
【0029】
オキサゾリン基を含有する水性ポリマー(A)の配合割合が5重量%未満の場合はオキサゾリン基による架橋が不十分であり、55重量%を超える場合はガスバリア性樹脂組成物の硬化物からなる層の耐熱水性および耐溶剤性が不十分となる傾向がある。また、このような範囲に調節することにより、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層を利用したガスバリア性複合フィルムの熱水処理後のガスバリア性の安定性を向上させることができる。
【0030】
一方、水性ポリエステル系樹脂(C)については、カルボキシル基含有量が0.5〜2.0mmol/gであり、その中でも0.7〜1.8mmol/g、またその中でも、0.8〜1.6mmol/gが好ましく、さらに好ましくは1.0〜1.4mmol/gである。
【0031】
このような範囲に調節することにより、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層を利用したガスバリア性複合フィルムの熱水処理後のガスバリア性の安定性を向上させることができる。
【0032】
なかでも、後記するように基材層、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層、及び無機薄膜層の各層をこの順で有する複合フィルムに利用する場合において、無機薄膜層が珪素などの周期表4B族に属する金属、その酸化物、窒化物、酸窒化物、フッ素化物などを含む層の場合、水性ポリエステル系樹脂(C)のカルボキシル基含有量が0.7〜1.8mmol/gが好ましく、0.8〜1.6mmol/gがより好ましく、さらに1.0〜1.4mmol/gが最も好ましい。
【0033】
一方、後記するように基材層、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層、及び無機薄膜層の各層をこの順で有する複合フィルムに利用する場合において、無機薄膜層が周期表2A族に属する元素、遷移元素、2B族元素および3B族元素の金属、その酸化物、窒化物、フッ素化物などを含む層の場合は、水性ポリエステル系樹脂(C)のカルボキシル基含有量が0.8〜1.6mmol/gが好ましく、さらに好ましくは1.0〜1.4mmmol/gである。
【0034】
また、水性ポリエステル系樹脂(C)の配合割合は、95〜45重量%であり、好ましくは90〜50重量%、より好ましくは90〜60重量%、さらに好ましくは90〜70重量%である(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)及び水性ポリエステル系樹脂(C)の合計量を100重量%とする)。
【0035】
このような範囲に調節することにより、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層を利用したガスバリア性複合フィルムの熱水処理後のガスバリア性の安定性を向上させることができる。
【0036】
態様(ii)のガスバリア性樹脂組成物のオキサゾリン基のモル数とカルボキシル基のモル数の比率〔オキサゾリン基のモル数(xmmol)とカルボキシル基のモル数(ymmol)の比(x/y)×100[mol%]で示している。〕は、65〜420mol%であり、好ましくは、68〜300mol%であり、さらに好ましくは70〜250mol%である。
【0037】
なかでも、後記するように基材層、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層、及び無機薄膜層の各層をこの順で有する複合フィルムに利用する場合において、無機薄膜層が珪素などの周期表4B族に属する金属、その酸化物、窒化物、酸窒化物、フッ素化物などを含む層の場合は、上記のモル数の比率を70〜250mol%とすることが好ましい。
【0038】
一方、後記するように基材層、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層、及び無機薄膜層の各層をこの順で有する複合フィルムに利用する場合において、無機薄膜層が周期表2A族に属する元素、遷移元素、2B族元素および3B族元素の金属、その酸化物、窒化物、フッ素化物などを含む層の場合は、上記のモル数の比率を70〜250mol%とすることが好ましい。
ガスバリア性樹脂組成物(ポリマー3成分を必須とする系)
態様(iii)
また、本発明の他の態様(iii)におけるガスバリア性樹脂組成物は、オキサゾリン基含有量が6.0〜9.0mmol/gであるオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)を10〜55重量%、カルボキシル基含有量が0.5〜3.5mmol/gである水性アクリル系樹脂(B)を10〜80重量%、並びに、カルボキシル基含有量が0.5〜2.0mmol/gである水性ポリエステル系樹脂(C)を10〜80重量%含有し(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、水性アクリル系樹脂(B)及び水性ポリエステル系樹脂(C)の合計量を100重量%とする)、オキサゾリン基のモル数とカルボキシル基のモル数の比率〔オキサゾリン基のモル数(xmmol)とカルボキシル基のモル数(ymmol)の比(x/y)×100[mol%]で示される。〕が150〜420mol%である。
【0039】
この態様(iii)においては、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、水性アクリル系樹脂(B)、並びに、水性ポリエステル系樹脂(C)が必須のポリマー成分であり、必要に応じてそれ以外の他の樹脂等のポリマー成分も併用される。
【0040】
オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)のオキサゾリン基含有量は、6.0〜9.0mmol/g、好ましくは、6.5〜8.5mmol/g、さらに好ましくは7.0〜8.0mmol/gである。
【0041】
このような範囲に調節することにより、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層を利用したガスバリア性複合フィルムの熱水処理後のガスバリア性の安定性を向上させることができる。
【0042】
また、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の配合割合は、10〜55重量%、好ましくは15〜55重量%、中でも18〜55重量%がより好ましい。(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、水性アクリル系樹脂(B)及び水性ポリエステル系樹脂(C)の合計量を100重量%とする)。
【0043】
なかでも、後記するように基材層、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層、及び無機薄膜層の各層をこの順で有する複合フィルムに利用する場合において、無機薄膜層が珪素などの周期表4B族に属する金属、その酸化物、窒化物、酸窒化物、フッ素化物などを含む層の場合は、上記のオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の配合割合を15〜50重量%が好ましく、中でも好ましくは18〜50重量%とすることが好ましく、さらに20〜45重量%とすることが好ましい。
【0044】
一方、後記するように基材層、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層、及び無機薄膜層の各層をこの順で有する複合フィルムに利用する場合において、無機薄膜層が周期表2A族に属する元素、遷移元素、2B族元素および3B族元素の金属、その酸化物、窒化物、フッ素化物などを含む層の場合は、上記のオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の配合割合を15〜50重量%とすることが好ましく、中でも20〜45重量%とすることが好ましい。
【0045】
オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)のオキサゾリン基含有量が6.0mmol/g未満の場合やオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の配合割合が10重量%未満の場合はオキサゾリン基による架橋が不十分であり、一方、9.0mmol/gを超える場合や55重量%を超える場合は未反応のオキサゾリン基が多く残存し、その耐熱水性および耐溶剤性が不十分となる。
このような範囲に調節することにより、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層を利用したガスバリア性複合フィルムの熱水処理後のガスバリア性の安定性を向上させることができる。
【0046】
一方、水性アクリル系樹脂(B)については、カルボキシル基含有量が0.5〜3.5mmol/gであり、中でも0.8〜3.5mmol/gが好ましく、より好ましくは1.0〜3.0mmol/gであり、その中でもさらに好ましくは1.5〜3.0mmol/g、最も好ましくは2.0〜3.0mmol/gである。
【0047】
なかでも、後記するように基材層、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層、及び無機薄膜層の各層をこの順で有する複合フィルムに利用する場合、無機薄膜層が珪素などの周期表4B族に属する金属、その酸化物、窒化物、酸窒化物、フッ素化物などを含む層の場合は、水性アクリル系樹脂(B)のカルボキシル基含有量が0.5〜3.5mmol/gであることが好ましい。
【0048】
一方、後記するように基材層、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層、及び無機薄膜層の各層をこの順で有する複合フィルムに利用する場合において、無機薄膜層が周期表2A族に属する元素、遷移元素、2B族元素および3B族元素の金属、その酸化物、窒化物、フッ素化物などを含む層の場合は、水性アクリル系樹脂(B)のカルボキシル基含有量が1.5〜3.5mmol/gが好ましく、さらに好ましくは2.0〜3.0mmol/gである。
【0049】
このような範囲に調節することにより、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層を利用したガスバリア性複合フィルムの熱水処理後のガスバリア性の安定性を向上させることができる。
【0050】
また、水性アクリル系樹脂(B)の配合割合は10〜80重量%であり、好ましくは20〜80重量%が好ましく、中でも10〜70重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜65重量%、最も好ましくは15〜65重量%である(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、水性アクリル系樹脂(B)及び水性ポリエステル系樹脂(C)の合計量を100重量%とする)。
【0051】
水性アクリル系樹脂(B)の配合割合が10重量%未満の場合は、耐水性、耐溶剤性の効果が十分に発揮されない傾向にあり、80重量%を超える場合は、バリア層の接着性が悪化する傾向にある。
【0052】
このような範囲に調節することにより、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層を利用したガスバリア性複合フィルムの熱水処理後のガスバリア性の安定性を向上させることができる。
【0053】
さらに、水性ポリエステル系樹脂(C)のカルボキシル基含有量は、0.5〜2.0mmol/gであり、好ましくは0.7〜1.8mmol/g、より好ましくは0.8〜1.6mmol/gであり、中でも1.0〜1.5mol/gが好ましく、最も好ましくは1.0〜1.4mmol/gである。
【0054】
このような範囲に調節することにより、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層を利用したガスバリア性複合フィルムの熱水処理後のガスバリア性の安定性を向上させることができる。
【0055】
また、水性ポリエステル系樹脂(C)の配合割合は、10〜80重量%であり、好ましくは10〜70重量%であり、中でも15〜70重量%が好ましく、さらに好ましくは15〜65重量%である(オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、水性アクリル系樹脂(B)及び水性ポリエステル系樹脂(C)の合計量を100重量%とする)。
【0056】
10重量%未満の場合は、無機薄膜層等のバリア層が硬化物の層と共に剥離する傾向にあり、80重量%を超える場合は、耐水性を悪化させる傾向にある。
【0057】
このような範囲に調節することにより、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層を利用したガスバリア性複合フィルムの熱水処理後のガスバリア性の安定性を向上させることができる。
【0058】
態様(iii)のガスバリア性樹脂組成物(ポリマー3成分を必須とする系)のオキサゾリン基のモル数とカルボキシル基のモル数の比率〔オキサゾリン基のモル数(xmmol)とカルボキシル基のモル数(ymmol)の比(x/y)×100[mol%]で示している。〕は、100〜420mol%であり、好ましくは150〜420mol%でり、中でも好ましくは130〜420mol%であり、さらに好ましくは165〜420mol%である。
【0059】
なかでも、後記するように基材層、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層、及び無機薄膜層の各層をこの順で有する複合フィルムに利用する場合において、無機薄膜層が珪素などの周期表4B族に属する金属、その酸化物、窒化物、酸窒化物、フッ素化物などを含む層の場合は、上記のモル数の比率を150〜300mol%であり、好ましくは、160〜280mol%であり、さらに好ましくは170〜260mol%である。
【0060】
一方、後記するように基材層、ガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層、及び無機薄膜層の各層をこの順で有する複合フィルムに利用する場合において、無機薄膜層が周期表2A族に属する元素、遷移元素、2B族元素および3B族元素の金属、その酸化物、窒化物、フッ素化物などを含む層の場合は、上記のモル数の比率を150〜420mol%とすることが好ましく、中でも160〜420mol%が好ましく、さらに好ましくは170〜420mol%である。
オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)
前記のオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)としては、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって得られるポリマーである。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中では2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好適である。
【0061】
また、他のモノマーとしては、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであればよく、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等)等のアクリル酸あるいはメタクリル酸、それらのエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたもの等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα、β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα、β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
水性アクリル系樹脂(B)
前記の水性アクリル系樹脂(B)としては、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートを主要な成分とする樹脂であり、具体的には、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレート成分の含有割合が通常40〜95mol% 、共重合可能で且つ官能基を有するビニル単量体成分の含有割合が通常5〜60mol%の水溶性または水分散性樹脂である。
【0062】
上記のビニル単量体における官能基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基またはその塩、アミド基またはアルキロール化されたアミド基、アミノ基(置換アミノ基を含む)、アルキロール化されたアミノ基またはそれらの塩、水酸基、エポキシ基などが挙げられ、特に、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基などが好ましい。これらの基は、樹脂中に2種類以上含有されていてもよい。
【0063】
前記の水性アクリル系樹脂(B)において、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートの含有量を40mol% 以上にすることにより、塗布性、塗膜の強度、耐ブロッキング性が特に良好になる。そして、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートを95mol%以下とし、共重合成分として特定の官能基を有する化合物を水性アクリル系樹脂に5mol% 以上導入することにより、水溶化ないし水分散化を容易にすると共にその状態を長期にわたり安定化することが出来る。その結果、硬化物の層と基材層、とりわけポリエステルフイルム層との接着性の改善、硬化物の層内での反応による硬化物の層の強度、耐水性、耐薬品性の改善などを図ることができる。
【0064】
上記のアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートのアルキル基としては、例えば、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。カルボキシル基や酸無水物などを有する化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸など、これらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが挙げられ、さらに、無水マレイン酸等の無水物等が挙げられる。スルホン酸基またはその塩を有する化合物としては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、これらスルホン酸のナトリウム等の金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0065】
上記のアミド基またはアルキロール化されたアミド基を有する化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、メチロール化メタクリルアミド等が挙げられる。
【0066】
上記のアミノ基やアルキロール化されたアミノ基またはそれらの塩を有する化合物としては、例えば、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0067】
上記の水酸基を有する化合物としては、例えば、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルメタクリレート、β−ヒドロキシビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。エポキシ基を有する化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0068】
更に、併用し得る化合物としては、例えば、アクリロニトリル、スチレン類、ブチルビニルエーテル、マレイン酸モノ又はジアルキルエステル、フマル酸モノ又はジアルキルエステル、イタコン酸モノ又はジアルキルエステル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0069】
上記の水性アクリル系樹脂(B)としては、何れのタイプのアクリル系樹脂であってもよいが、乳化剤を含まないタイプのアクリル系樹脂が好適に使用される。その理由は、前記のオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の耐水性が乳化剤によって阻害されないからである。
【0070】
従って、水性アクリル系樹脂(B)は、反応性乳化剤を使用して合成された自己分散タイプの水性アクリル系樹脂や高分子量の界面活性剤を使用して合成された水性アクリル系樹脂であってもよい。その理由は、前記のオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の耐水性が反応した乳化剤や高分子量の界面活性剤によって阻害されないからである。
【0071】
水性アクリル系樹脂(B)は、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の耐水性や耐溶剤性の低下を防止する。上記の低下防止効果は、次の理由によると考えられる。アクリル系樹脂の被膜には、ポリエチレンテレフタレート表面にオリゴマーが析出するのを防止する効果がある。このオリゴマー析出の防止効果により、オリゴマー塊によって形成された欠陥バリア層に浸入した水分の被塗布層、即ち基材層への攻撃が阻止される。従って、水性アクリル系樹脂は、オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)の耐水性および耐溶剤性を十分に発揮させると考えられる。
水性ポリエステル系樹脂(C)
本発明のガスバリア性樹脂組成物には、前記のオキサゾリン基含有水性ポリマー(A)、水性アクリル系樹脂(B)の他に、水性ポリエステル系樹脂(C)を含有する態様(ii)あるいは(iii)がある。水性ポリエステル系樹脂(C)は、特に制限されないが、好ましくは低分子の親水性分散剤などを含有しない水性または水分散性の飽和または不飽和ポリエステルの何れをも使用することができる。
【0072】
上記の飽和ポリエステルのジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、p−キシレンジオール等の芳香族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリ(オキシアルキレン)グリコール等が挙げられる。
【0073】
上記の飽和ポリエステルは線状構造であるが、3価以上のエステル形成成分を使用して分岐状ポリエステルとすることも出来る。一方、上記の不飽和ポリエステルとしては、例えば、次の(1)及び(2)で示されるものが挙げられる。
(1)特公昭45−2201号公報、特公昭44−7134号公報、特開昭48−78233号公報、特開昭50−58123号公報などで知られている様に、共重合性不飽和基を含有する原料成分と他の原料成分とを反応させて得られる樹脂骨格中に共重合性不飽和基を有する不飽和ポリエステル。
(2)特公昭49−47916号公報、特公昭50−6223号公報などで知られている様に、共重合性不飽和基を持たない飽和ポリエステルを得た後、その飽和ポリエステル中に存在する水酸基またはカルボキシル基などの官能基と反応性を有する官能基とビニル基を有するビニル系モノマーを飽和ポリエステルに付加して得られる不飽和ポリエステル。
【0074】
上記のビニル系モノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基とビニル基を有する化合物、ビニルメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン等のアルコキシシラノール基とビニル基を有する化合物、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの酸無水基とビニル基を有する化合物、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート−ヘキサメチレンジイソシアネート付加物などのイソシアネート基とビニル基を有する化合物などが挙げられる。
【0075】
水性ポリエステル系樹脂(C)は、水媒体との親和性を高めるため、カルボキシル基を含有するものが好ましい。飽和または不飽和ポリエステルの側鎖へのカルボキシル基の導入は、カルボン酸を有するジオキサン化合物をポリエステルと反応させる方法(特開昭61−228030号公報)、不飽和カルボン酸をポリエステルにラジカル的にグラフトする方法(特開昭62−225510号公報)、ポリエステルとハロゲノ酢酸を反応させて芳香族環に置換基を導入する方法(特開昭62−225527号公報)、ポリエステルと多価無水カルボン酸化合物とを反応させる方法(特開昭62−240318号公報)等により容易に行うことが出来る。
【0076】
水性ポリエステル系樹脂(C)のカルボキシル基は対イオンを有していてもよく、このような対イオンとしては、通常一価イオン、好ましくは水素イオン又はアンモニウムイオンを含むアミン系オニウムイオンが挙げられる。
ガスバリア性樹脂組成物の硬化物
本発明のガスバリア性樹脂組成物は、それを硬化させることにより、その優れたガスバリア性を利用した種々の用途に利用することができる。
【0077】
例えば、ガスバリア性樹脂組成物は、一般にイソシアネート系の硬化剤等を配合して、あるいは配合することなく、加熱することにより水分を蒸発させて除去させる方法が一般的であり、オーブン等の公知の機器を使用することがでる。
【0078】
本発明のガスバリア性樹脂組成物の硬化物はガスバリア性を向上させる優れた性能を有し、種々の用途に用いられる。中でも、基材層に、このガスバリア性樹脂組成物の硬化物の層、さらに無機薄膜層をこの順序で有する複合フィルムは、酸素、水蒸気、炭酸ガス等に対して優れたガスバリア性を有し、かつ透明性を有している。
【0079】
ガスバリア性を有する複合フィルムについて、以下に説明する。
基材層
本発明の他の態様である複合フィルムに用いられる基材層としては、格別の制限はなく、シート状またはフィルム状の物であって、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、セロファン、ポリビニルアルコール、あるいはこれらの共重合体など、一般にフィルム成形が可能な高分子材料の未延伸や延伸フィルムが使用できる。またこれらのフィルムに合成樹脂、バリア性材料、帯電防止剤等を被覆した複合フィルムも使用できる。基材層は用途に応じて上記材料から適宜選択される。
【0080】
基材層としてのフィルム(以下、「基材フィルム」と呼ぶことがある。)は慣用のフィルム成形法、例えばTダイ法やインフレーション法などの溶融成形法や、溶液を用いたキャスティング法などで成形することができる。基材フィルムは、未延伸でも良く、一軸および二軸延伸したものでもかまわない。延伸法としては慣用の延伸法、例えば、テンター延伸、チューブラー延伸、ロール延伸、圧延延伸、ベルト延伸や、これらを組み合わせた延伸などが適用できる。
【0081】
基材フィルムの厚みは特に制限されず、包装適性、機械的強度、可撓性などを考慮して適宜選択されるが、通常3ミクロンメータ(μm)〜200ミクロンメータ(μm)、好ましくは5ミクロンメータ(μm)〜100ミクロンメータ(μm)程度である。
【0082】
この基材フィルムに用いられる樹脂材料に、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑材、着色剤など公知の添加剤が、必要に応じて適宜添加される。
ガスバリア性樹脂組成物の硬化物からなる層
本発明においてガスバリア性樹脂組成物の硬化物からなる層は、前記ガスバリア性樹脂組成物を加熱、硬化させることにより形成することができる。ガスバリア性樹脂組成物を加熱、硬化させるためには、加熱することにより水分を蒸発させて除去させる方法が一般的であり、オーブン等の公知の機器を使用することがでる。
【0083】
ガスバリア性樹脂組成物の硬化物からなる層の厚みは、好ましくは0.01ミクロンメータ(μm)〜3.0ミクロンメータ(μm)、より好ましくは0.01ミクロンメータ(μm)〜1.0ミクロンメータ(μm)、最も好ましくは0.01ミクロンメータ(μm)〜0.1ミクロンメータ(μm)である。上記範囲であれば、ガスバリア性も良好であり、経済性もある。
【0084】
ガスバリア性樹脂組成物の硬化物からなる層を形成するコーティング方法としては、特に制限されず、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法などの慣用の方法を採用でき、これらを適当に組み合わせて実施することも可能である。また基材フィルムの製造時にコーティングをする、インラインコート法を用いることも例示される。
熱処理
上記の硬化物からなる層は、更に熱処理することによって熱水処理後のガスバリア性能を更に向上させることができる。熱処理は、通常60〜280℃、好ましくは100〜250℃、さらに好ましくは150〜230℃の温度範囲で行うことが望ましく、大気雰囲気下、不活性ガス雰囲気のいずれでもよい。また、圧力は特に限定されず、加圧下、減圧下、常圧下のいずれでもよい。さらに、無機薄膜層を形成する前に熱処理を行ってもよく、無機薄膜層の形成後に熱処理をおこなってもよい。加熱処理時間は、通常1秒から60分程度であり、中でも2秒から45分が好適であり、特に3秒から30分が好適である。
無機薄膜層
基材層の表面に前記のガスバリア性樹脂組成物の硬化物からなる層を介して、無機薄膜層が形成される。
【0085】
無機薄膜層としては、周期表の4B族に属する1以上の金属、当該金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属フッ化物、さらには、周期表2A族元素、遷移元素、2B族元素、および3B族元素に属する金属、金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物の単体または2以上の複合物から選ばれる少なくとも1以上の成分で構成されることがガスバリア性の観点から好ましい。
無機薄膜層を構成する4B族の金属としては、珪素、ゲルマニウム、錫が挙げられ、これらの中では特に珪素が好適である。これら金属単体を無機薄膜層として設けることもできるし、金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物の単体または2以上の複合物として設けることもできる。ガスバリア性の観点から、酸化ケイ素、窒化珪素、酸窒化珪素のいずれか、またはこれらの複合物であることが好適である。
また、無機薄膜層を構成する2A族の金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、遷移金属としてはチタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、タンタルなどが挙げられ、3B族の金属としては、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムなどが挙げられる。
無機薄膜層を構成する金属のうちでは、珪素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、マグネシウムが好適である。これらの金属単体を金属薄膜層として設けることもできるし、金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物の単体または2以上の複合物として設けることもできる。これらの中では、ガスバリア性の観点から、アルミニム、酸化アルミニウムが好適である。
【0086】
上記の無機薄膜層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法(CVD法)等の真空プロセスにより形成される。
【0087】
上記の無機薄膜層の膜厚は、用途によって異なり、好ましくは0.001ミクロンメータ(μm)〜0.5ミクロンメータ(μm)の範囲であるが、より好ましくは0.001ミクロンメータ(μm)〜0.2ミクロンメータ(μm)である。上記の範囲であれば薄膜の連続性、クラックの発生しにくさ、可撓性の点で有効である。
【0088】
本発明のガスバリア性の複合フィルムは、基材層の形状により、また用途に応じ、積層フィルム、積層シート、トレー、カップ、中空体(ボトル)等の種々の形状を取り得る。
【0089】
本発明により得られるガスバリア性の複合フィルムは、その少なくとも片面に、熱融着層を積層することにより、ヒートシール可能な包装用フィルムとして好適な多層フィルムが得られる。なお、熱融着層としては、通常熱融着層として公知のエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル・ペンテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリブテン、ポリ4−メチル・ペンテン−1、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体等のポリオレフィンを単独若しくは2種以上の組成物、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体あるいはその金属塩、EVAとポリオレフィンとの組成物等から得られる層である。
【0090】
中でも、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン等のエチレン系重合体から得られる熱融着層が低温ヒートシール性、ヒートシール強度に優れるので好ましい。
【0091】
これらの熱融着層等の他の層は、ウレタン系接着剤、エステル系接着剤等の接着剤を介して、あるいは介することなく複合フィルムの一方の面、例えば無機薄膜層の側にドライラミネート、押出ラミネート等の種々の方法により積層することができる。
【実施例】
【0092】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0093】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。
<評価方法>
(1)多層フィルムの作成:
厚さ50ミクロンメータ(μm)の線状低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ社製 商品名:T.U.X FCS)の片面に、ウレタン系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケラックA310):12重量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケネートA3):1重量部及び酢酸エチル:7重量部)を塗布・乾燥後、実施例、比較例で得られたガスバリア性の複合フィルムの無機薄膜側を貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルム(a)を得た。
【0094】
また、厚さ70ミクロンメータ(μm)の無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製 商品名:RXC21)の片面に、エステル系接着剤(ポリエステル系接着剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケラックA525):9重量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学ポリウレタン社製 商品名:タケネートA52):1重量部及び酢酸エチル:7.5重量部)を塗布・乾燥後、実施例、比較例で得られたガスバリア性の複合フィルムの無機薄膜層の側の面を貼り合わせ(ドライラミネート)、多層フィルム(b)を得た。
(2)レトルト処理:
上記方法で得た無延伸ポリプロピレンフィルムと貼り合わせた多層フィルム(b)を無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるよう折り返し、2方をヒートシールして袋状にした後、内容物として水を40cc入れ、もう1方をヒートシールにより袋(三方シール袋)を作成し、これを高温高圧レトルト殺菌装置で135℃、30分間の条件でレトルト処理を行った。レトルト処理後、内容物の水を抜き、レトルト処理後の多層フィルム(b)を得た。
(3)酸素透過度(O
2TR)[ml/(m
2・day・MPa)]:
上記方法で得られた多層フィルムを、モコン社製OX−TRAN2/21 MLを用いて、JIS K 7126に準じ、温度20℃、湿度80%R.H.の条件で測定した。
【0095】
多層フィルム(a)について、上記測定方法でレトルト処理前の、即ち初期の酸素透過度を測定した。また、前記レトルト処理後の多層フィルム(b)について、同様に酸素透過度を測定した。
すなわち、酸素透過度(O
2TR)のレトルト処理前(表中では「初期」と表示している)については、多層フィルム(a)を用い、レトルト処理後(表中では「135℃」あるいは「レトルト処理後」と表示している)は多層フィルム(b)を用いている。これはレトルト処理前において、多層フィルム(a)の酸素透過度(O
2TR)と多層フィルム(b)の酸素透過度(O
2TR)は同じであることに基づく。
(4)水蒸気透過度(WVTR)[g/(m
2・day)]:
多層フィルムを線状低密度ポリエチレンフィルム面が内側になるように折り返し、2方をヒートシールして袋状にした後、内容物として塩化カルシウムを入れ、もう1方をヒートシールにより、表面積が0.01平方メータ(m
2)になるように袋(三方シール袋)を作成し、これを40℃、90%R.H.の条件で3日間放置し、その重量差で水蒸気透過度を測定した。
【0096】
多層フィルム(a)について、上記測定方法でレトルト処理前の、即ち初期の水蒸気透過度を測定した。また、前記レトルト処理後の多層フィルム(b)について、同様に水蒸気透過度を測定した。
すなわち、水蒸気透過度(WVTR)のレトルト処理前(表中では「初期」と表示している)については、多層フィルム(a)を用い、レトルト処理後(表中では「135℃」あるいは「レトルト処理後」と表示している)は多層フィルム(b)を用いている。これはレトルト処理前において、多層フィルム(a)の水蒸気透過度(WVTR)と多層フィルム(b)の水蒸気透過度(WVTR)は同じであることに基づく。
実施例1〜13、比較例1〜10
厚さ12ミクロンメータ(μm)の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる基材のコロナ処理面に、下記に示す成分を含有し、かつ、硬化物層を形成するために塗布された層を構成する樹脂が下記の表1、2に示す配合割合になる水媒体塗布液を0.06ミクロンメータ(μm)塗布し、120℃、1分間乾燥した。次にその塗布面に、真空蒸着法により、厚さ20ナノメートル(nm)(0.02μm)の無機薄膜層として酸化珪素の層を設けてガスバリア性の複合フィルムを得た。更に、これをオーブン中で120℃条件下で30分間熱処理した。
【0097】
得られたガスバリア性の複合フィルムを上記記載の方法で評価した結果を表1、2に示す。
【0098】
樹脂A−1:
オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)として、オキサゾリン基含有量が7.7mmol/gである水性塗剤の日本触媒(株)社製「エポクロスWS−300」を使用した。
【0099】
樹脂A−2:
オキサゾリン基含有水性ポリマー(A)として、オキサゾリン基含有量が4.5mmol/gである水性塗剤の日本触媒(株)社製「エポクロスWS−500」を使用した。
【0100】
樹脂B−1:
水性アクリル系樹脂(B)として、カルボキシル基含有量が0.9mmol/gである東亞合成(株)社製「ジュリマーET−410」を使用した。
【0101】
樹脂B−2:
水性アクリル系樹脂(B)として、次の方法で得られた水性アクリル系樹脂水性塗料を使用した。
【0102】
すなわち、アクリル酸エチル30重量部、メタクリル酸メチル50重量部、メタクリル酸20重量部の混合物をイソプロピルアルコール中で溶液重合し、重合後水を加えつつ加熱しイソプロピルアルコールを除去した。アンモニア水でpH8.5に調節し、カルボキシル基含有量が2.7mmol/gである水性アクリル系樹脂(B)を得た。
【0103】
樹脂B−3:
水性アクリル系樹脂(B)として、カルボキシル基含有量が0.4mmol/gである東亞合成(株)社製「ジュリマーFC−80」を使用した。
【0104】
樹脂C:
水性ポリエステル系樹脂(C)として、カルボキシル基含有量が1.2mmol/gである日本合成化学工業(株)社製「ポリエスターWR―961」を使用した。
【0105】
尚、「オキサゾリン基のモル数とカルボキシル基のモル数との比率〔オキサゾリン基のモル数(xmmol)とカルボキシル基のモル数(ymmol)の比(x/y)×100[mol%]」を表1、2において、「オキサゾリン基量/カルボキシル基量」と記載する。
【0106】
実施例14〜17、比較例11〜24
実施例1において、水媒体塗布液を0.03ミクロンメータ(μm)塗布し、120℃、1分間乾燥した。次にその塗布面に、真空蒸着法により、厚さ9ナノメートル(nm)(0.009μm)の無機薄膜層として酸化アルミニウムを無機薄膜層として設ける以外は、同様に行った。
【0107】
評価結果を表3に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】