(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021903
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】多孔質基材での隠れたパターンの形成
(51)【国際特許分類】
B41M 3/00 20060101AFI20161027BHJP
D06B 11/00 20060101ALI20161027BHJP
D06C 23/00 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
B41M3/00 Z
D06B11/00 B
D06C23/00
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-515239(P2014-515239)
(86)(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公表番号】特表2014-523820(P2014-523820A)
(43)【公表日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】FI2012050591
(87)【国際公開番号】WO2012172172
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】20115586
(32)【優先日】2011年6月14日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(72)【発明者】
【氏名】トミー エルホ
(72)【発明者】
【氏名】テルホ コロルオマ
【審査官】
外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−034677(JP,A)
【文献】
実用新案登録第3082204(JP,Y2)
【文献】
国際公開第2010/003188(WO,A1)
【文献】
特開2004−293016(JP,A)
【文献】
特開2000−108563(JP,A)
【文献】
実開平01−084263(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/00
D06B 11/00
D06C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性の表面上に疎水性のパターンを形成することにより隠れたカラーパターンを有するパターン化された多孔質基材を製造するための方法であって、着色剤フリーの疎水性印刷溶液を用いて、多孔質基材においてフレキソまたはグラビア印刷によってパターンの形状で構造チャネルを製造することであり、ここで多孔質基材は、少なくとも乾燥状態にあるとき、本質的に不透明であることにより、および多孔質基材の裏面上に構造パターンの全体の幅にわたって延びるように有色エリアを適用することにより特徴付けられ、それによってそのような基材を濡らすとき、着色された裏面は透明なパターン形成されたエリアを通して可視にされる、方法。
【請求項2】
多孔質基材を、ニトロセルロースシート、セルロース系ペーパー、多孔質ポリマーシート、および織物から(たとえばクロマトグラフィペーパーから、または湿潤環境において使用を意図される衣類のための織物から)選ぶことにより特徴付けられる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基材シート中への印刷溶液の浸透を、印刷シリンダー圧、印刷の回数、印刷ロールのセルサイズ、印刷溶液の溶媒、および/または印刷溶液の粘度を採用して最適化することにより特徴付けられる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ポリマー(たとえばポリスチレン、ポリメチルメタクリラート、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマーまたはセルロースアセタート)、またはC≧20の有機化合物であるが、反復単位を欠くもの(たとえばパラフィンワックスまたはアルキルケテンダイマー)を含有する印刷溶液を用いることにより特徴付けられる請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
一またはそれよりも多くの疎水性有機溶媒(たとえばトルエンまたはキシレン、またはこれらの混合物)を含有する印刷溶液を用いることにより特徴付けられる請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリスチレンまたはアルキルケテンダイマーを(たとえば水性溶媒と共に)、分散物としてならびにトルエン、キシレン、またはこれらの混合物が包含される溶媒(たとえばポリスチレンを用いるとき)を、印刷溶液においてポリスチレンのシェアは2.5-40重量-%で、または水性溶媒(たとえばアルキルケテンダイマーの分散物を用いるとき)を含む印刷溶液を用いることにより特徴付けられる請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
有色エリアを、基材の後側に、均等カラーまたはスライディングシェードのエリアとして適用することにより特徴付けられる請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
有色エリアを、フレキソ、グラビア、オフセット、電子写真またはインクジェット印刷および慣習的な印刷インクを用いて適用することにより特徴付けられる請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
有色エリアを、多孔質基材の後側に、可視的な有色エリアを提供し、随意に基材の異なったカラーの後側の異なったエリアを与えるために、一またはそれよりも多くの着色剤を含有する印刷溶液を用いて適用することにより特徴付けられる請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
隠れたカラーパターンを有する多孔質基材であり、基材は親水性の表面上に疎水性のパターンを有し、多孔質基材においてパターンの形状で疎水性の、着色剤フリーの構造チャネル、および多孔質基材の裏面上の有色エリアを含むことを特徴とする多孔質基材。
【請求項11】
そのパターンは、基材のすべてのエリアが乾燥状態にあるとき、本質的に不可視であることを特徴とする請求項10のパターン化された多孔質基材。
【請求項12】
請求項10または11に記載の多孔質基材のパターンに可視の状態をもたらすための方法であって、親水性マーキング溶液をパターンを囲む基材の表面のエリアに吸収されるのに十分な量で用いて多孔質基材の頂面を濡らすことにより特徴付けられる方法。
【請求項13】
頂面を、親水性マーキング溶液を用い(たとえば注入、ブラッシングまたはスプレーを用い)ること、またはそれが湿性になることを可能にすること(たとえば凝結水、漏水、雨水または任意の自然供給の塩水または淡水、または任意の転換または付加水を介して濡らすこと)によって特徴付けられる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
可逆性の可視パターンを得るために、マーキング溶液として、水またはクリアーな着色剤フリーの親水性有機溶媒(たとえば水)を用いることにより特徴付けられる請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
不可逆性の可視パターンを得るために、有色親水性マーキング溶液(たとえばビール、コーラ、コーヒー、紅茶、ジュース、または別の強く着色したソフトドリンクまたはミックスドリンクを用いることにより特徴付けられる請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
カラーリングブック、飲料コースター、グリーティングカード、ポストカード、プレーイングカード、カードボードパッケージ、消費者包装品、または織物において隠れたラベルまたはパターンを有する表面としての請求項10または11に記載のパターン化された多孔質基材の使用。
【請求項17】
カラーリングブック、飲料コースター、グリーティングカード、ポストカード、プレーイングカードまたは消費者包装品は、水または別のクリアーな液体がパターン化された多孔質基材上に添加されて隠れたラベルまたはパターンが現されるために、そしてそれが乾燥されて再びラベルまたはパターンが隠されることが可能になるために、ユーザーに情報を与えるユーザーガイドと一緒に供給される請求項16に記載の使用。
【請求項18】
織物は、衣類または他の同様の保護手段のための織物(たとえば湿潤環境での使用を目的とするとき、たとえばスイムウェアー、タオル、レインコートまたは傘)から選ばれる生地であり、隠れたラベルまたはパターンは織物が衣類の一部分に成形される前または後のいずれかに織物の表面上に形成されているところのものである請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明の背景 本発明の分野
本発明は、隠れた色パターン、たとえば、多孔質基材上で、テキストまたはイメージのようなものを形成する方法に関する。特に、本発明は、親水性表面上に疎水性パターンを形成することによるパターン化された多孔質基材を製造するための方法、形成されパターン化された多孔質基材、および前記パターンに可視の状態をもたらすための方法に関する。
【0002】
関連技術の記載
多くの多孔質基材において、たとえば、ニトロセルロースシート、セルロース系ペーパー、および多孔質ポリマーシートのようなものでは、液体は基材シートに沿って横方向に進む。その流れは大抵は毛管現象である。そのようなシートおよびそれらの液体の流れは、診断の分野における多くの用途、たとえば、バイオセンサーおよび免疫アッセイラテラルフローにおけるようなものにおいて利用される。これらの用途では、ストリップが用いられており、そこでは、基材シートからのストリップ、切片の全幅に沿って、液体が横方向に運動する。マルチ分析テストにおいて、そこでは、サンプル液体はいくつかの反応/検出エリアに輸送されなければならず、それのためには、基材シートは、シートの特定の部分のみにおいてサンプル液体が運動するように形成されること、すなわち、液体フローを導く構造的な層がシートにおいて形成されるのが可能であることが有利である。
【0003】
液体の流れを導くそのような構造層は、たとえば、以下の方法のように、多くの異なる方法 〔たとえば、米国特許出願公開第2009/0298191A1号明細書(US 2009/ 0298191 A1)を参照〕 を用いて多孔質基材シートにおいて製造することができ、そこでは、
−基材シートは、フォトレジストを染み込まされ、液体チャネルが画定されるフォトマスクを通してUV光に露光され、そしてフォトレジストを液体チャネルの位置で溶解除去するとき、最終的に現像される。このような方法において、フォトレジストで飽和されたエリアは造られ、それは液体チャネルの縁部を規定する。
−硬化性ポリマー、例は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)は、スタンプ上に広がり、そのレリーフパターンは、液体チャネルの境界エリアを規定する。この後、スタンプは、基材シート上に、たとえば、20秒間押し付けられる。最後に、スタンプを除去し、そしてポリマーを硬化させる。
−液体は、それら自体疎水性であるか、またはそれらが基材シートを疎水性になるように変換することができるかのいずれかであり、たとえば、それは、以下の方法を用いて望ましいパターンに従って基材シート上に適用することができ、すなわち、ステンシルを通して液体をスプレーし、シルクスクリーン印刷によって、インクジェット印刷によって、またはプロッターを使用することによってである。
−基材の望ましいエリアは、熱を採用してワックスが吸収されることによって疎水性になるように染み込まされる。
【0004】
D. A. Bruzewicz(ブリュツェビッツ)、M. Reches(レヒェス)、およびG. M. Whitesides(ホワイトサイズ)による刊行物において〔「Low-cost printing of poly(dimethylsiloxane) barriers to define microchannels in paper{ペーパーでのマイクロチャネルを規定するためのポリ(ジメチルシロキサン)バリアーの低コスト印刷}」、Anal. Chem.(アナリティカル・ケミストリー)、2008年、80(9)、3387-3392〕、液体フローを導くバリアーラインはプロッターのペンにおいてインクとしてPDMS溶液を使用して製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォトレジスト系の方法を除いて、液体流路のエッジの精度は、先行技術に従う上述の方法において一つの問題である。液体は、それが液体フローを導くような方法で基材シートを変化させ、全体の基材シートを通して吸収されるに違いないので、それはまた横方向にも同時に拡散し、そして従って、液体流路のエッジは正確にならない。
【0006】
刊行物のK. Abe(アベ)、K. Suzuki(スズキ)、およびD. Citterio(チッテリオ)によるもので、「Inkjet-printed microfluidic multianalyte chemical sensing paper(インクジェット印刷されたマイクロ流体マルチ検体化学センシングペーパー)」、Anal. Chem.、80(18)、6928-6934、2008年は、ある方法を開示し、そこでは、ペーパーを先に1.0w-%のポリスチレン-トルエン溶液により飽和させ、乾燥され、そして液体チャネルは、最終的に、トルエンを用いるインクジェット印刷によってエッチングでオープンにされる。インクジェット印刷は大抵は、十分なエッチング深さを達成するために10-30回繰り返さなければならず、そのことはローラ-ツー-ローラ製造プロセスにおいてその方法が使用されることを困難にする。
【0007】
先行技術に従う上述の製造方法のすべては、非常に遅く、そして従って工業的大量製造プロセスにおいて使用することは困難である。US 2009/ 0298191 A1において、フォトレジスト系の方法を使用して単一の10×10cmの基材シートをパターニングすることは、約8-10分を要し、そしてスタンプを用いる方法では約2分と見積もられる。
【0008】
クレイヨラ(Crayola)は生成物の「Color Wonder(カラーワンダー)」を生産し、それはペーパーコーティングであり、それはカラーが形成されるようにして、「不可視」インクと反応する。この色変化は永続するという欠点を有する。さらに、システムは、特別に開発されたペーパーコーティングに基づいており、そして生産するのに高価である。
【0009】
Bruynzeel-sakura(ブリュインゼール・サクラ)は、生成物「COLOUR WITH WATER(カラー・ウィズ・ウォーター)」(例は、http://webshop.bruynzeel-sakura.com)を生産し、それは規定されたエリア上のホワイトペーパーコーティングからなり、それは、水のような液体を添加することにより透明になる。システムにおいてイメージの形状は、水の添加に先立って可視であり、それはコーティングの形態が透明になるエリアを画定するからである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概略 本発明の一つの目的は、多孔質基材上にパターンを形成するための、新しくて費用対効果が高く、そして迅速な方法を提示することであり、それは前記パターンを可視に、または不可視にするために基材の不透明度における変化の利用を可能にする。
【0011】
特に、ペーパーまたはファブリックのような多孔質基材において、前記多孔質基材上に液体吸収および流動が導かれるパターン化されたチャネルを形成することにより、隠れたイメージを形成するための新しい方法を提示することが、本発明の一つの目的である。
【0012】
これらの、および他の目的は、下記で説明し、および特許請求するように、既知の方法を超えてその利益と一緒に、本発明によって達成される。
【0013】
このようにして、本発明は、ペーパーのような多孔質基材上で隠れたイメージ(またはパターン)を形成する方法に関係し、それは隠れたイメージが、それらの形成後に少なくとも本質上不可視であるが、パターンの不透明度において誘発される変化を通して可視化することができる。
【0014】
パターンの視認性は、多孔質基材の裏面上に、有色エリアを適用することによって、好ましくはむしろ、印刷によって高められる。この有色エリアは、色が多孔質基材の上面に印刷された可視のグラフィックスまたはテキストに適合するように選ばれるとき、生成物上に視覚訴求をもたらす。
【0015】
より一層詳しくは、本発明のパターン化された多孔質基材を製造するための方法は、クレーム1の特徴部分に述べたものによって特徴付けられ、そして前記パターンに可視の状態をもたらすための方法は、クレーム14の特徴部分に述べたものによって特徴付けられる。
【0016】
さらに、本発明のパターン化された基材はクレーム10に述べたものによって特徴付けられ、そしてこの基材の使用はクレーム18に述べたものによって特徴付けられる。
【0017】
相当な利益は本発明を使って得られる。このようにして、本発明は、可視化させ、そして再度、繰り返し、隠すことができる隠れたイメージを用いて生成物をラベリングするための手段を提供する。イメージは、純水をマーキング液として用いて可視化することができ、混乱がなく、および色移り(例は、テーブル面への)が発生しない安全なマーキング手順が提供され、それは、多孔質基材においてパターンを造るのに使用される着色剤が、マーキング中に添加される代わりに、基材の層において存在することになるからである。
【0018】
本発明の別の利益は、印刷技術の観点から、既存の印刷機と適合性があり、そして従って大量生産にとって非常に適切なことである。本発明はまた一定の利益を有し、それは、単純な溶液で、重合体および溶媒を含むか、または実質それらからなる溶液が、たとえば、先行技術に従う方法において使用される商業上のフォトレジストよりも著しく経済的なことである。
【0019】
次に、本発明を添付図面および詳細な説明に関してより一層厳密に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下において、本発明の具体化および他の利点を図面に関してこれまで以上に詳細に検討する。
【
図3】本発明に従う方法を用いて製造したマイクロタイタープレートの例を提示する。
【
図4a】本発明の一実施形態に従う構造の図式的側方断面を示す。
【
図4b】本発明の別の実施形態に従う構造の図式的側方断面を示す。
【
図5】異なる方法において製造した液体チャネルでの液体の運動を例証する。
【
図6】生成した構造ゾーンの幅による側方液体フローを防ぐためのその能力についての効果を例証する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施形態の詳細な記載
本発明は、ペーパーのような多孔質基材上で、隠れたカラーイメージを形成する方法に関係し、それは、ペーパーの反対側上で、流体ガイドチャネル/エリアを印刷された色と組み合わせることによる。本発明はまた、前記チャネルおよび有色エリアを使用することで形成されたパターン化多孔質基材に関係する。流体のチャネル/エリアは、疎水性パターンを印刷することによってグラフィック形状として形成される。基材上にサンプル溶液を添加する際、基材の不透明度は、疎水性パターンを取り囲むエリアにおいてだけ減少し、このようにして基材上に可視イメージが造られる。クリアーな溶媒をサンプル溶液として用いる場合、イメージは、基材の表面が乾燥するとき再び消える。
【0022】
本発明は、疎水性領域が、基材上の一定の形状に対して印刷され、むしろ、フィンランド共和国特許出願第20096334号明細書(FI 20096334)に記載された方法に従い、すなわち、フレキソまたはグラビア印刷によって多孔質基材の頂部上面に構造的な液体案内チャネルを製造することによるというアイデアに基づく。この方法は産業上の生産のために最も有利であることが見出された。これらの印刷された領域は、たとえば、グラフィックスまたはテキストであることができ、そして基材の中に、むしろ、ペーパーなどのような基材の頂部(前面)側(サイド1)中に印刷される。チャネルは、表面の望ましいエリアに対し液体溶液を導くのに適する。
【0023】
「チャネル」は、液体の吸収を導くのに適した基材の任意のエリアを意味することが意図される。このようにして、これらのエリアのために、それらが十分に規定され、すなわち、反対の疎水性のエリアに対するクリアーなエッジを有することは唯一極めて重要である。
【0024】
図1は本発明の実施形態に従う構造を例証する。疎水性構造パターン2は、基材シート1上に形成され、それらの効果のため、親水性の液体が単に流路3、反応エリア4、および残りの親水性表面エリアの交点6にだけ沿って基材シート中に吸収されることができ、パターンが形成される。マーキング液体5はその基材の表面に適用され、このようにして、マーキング液体5は、対応する疎水性を有する基材表面のエリア中への吸収が引き起こされる。構造パターン2は、厚さ方向において、基材シートの全体の深さを通して延びる。統合された、またはローカルの層はまた、基材の裏面上に印刷される。このウェル被覆層は典型的に、構造パターン2の全体の幅にわたって延び、そしてまた、その厚さ方向においてマーキング液体が基材を通り過ぎることを防ぐことができた。この層は、マーキング液体を適用する前に、基材シート1の頂部側上で印刷された構造パターン2を見たとき、多孔質基材を通して単に部分的に可視であり、それは、本発明で、詳しくは、より一層低いグラメージの基材において使用するのに適した基材の多く(ペーパー基材の場合、特に、<100g/m
2)がわずかにしか光を通さないからである。しかしながら、マーキング液体を適用する前、形成されたパターンは可視ではない。
【0025】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、裏面に印刷され統合された、またはローカルの層は着色され、その一方、多孔質基材は、少なくとも乾燥状態にあるとき、本質的に不透明である。そのパターンは、引き続いて、多孔質基材において形成されるが、湿らせたとき、本質的にまたは少なくとも部分的に透明になるだけであろう。このようにして、そのような基材を濡らすとき、着色された裏面が透明なパターン形成されたエリアを通して可視になるであろう。
【0026】
たとえば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリラート、セルロースアセタート、アルキンケテンダイマーまたは架橋ポリビニルアルコール(PVA)、またはC≧20の有機化合物のようなものであるが、反復単位を欠き、たとえば、パラフィンワックスまたはアルキルケテンダイマー(AKD)などのようなポリマーで、溶媒において溶解されたものは、印刷溶液として用いることができ、その課題は、液体の流れが印刷された層のエリアにおいて防止されるように、基材シートを形成することである。ポリスチレンが好ましく、その理由は、それが熱処理を要求せず、そして十分に生体適合性だからである。しかしながら、アルキンケテンダイマー(AKD)もまた、特に、水性溶媒と共に、分散物として、用いるのによく適する。AKDは、印刷後に疎水性バリアーとして機能させるために加熱および時間を必要とする。これは容易に達成され、たとえば、印刷装置が熱を加える乾燥機を含む場合である。たとえば、Aquacer(アクアサー)の製品などのようなパラフィンワックスはまた、疎水性バリアーを提供し、および水性システムにおいて用いるのに適する。
【0027】
水性溶液中で作られる印刷溶液を用いるのがより一層好ましい。しかしながら、溶媒はまた、有機疎水性溶媒、たとえば、トルエン、キシレン、またはこれらの混合物であることができ、随意にまた、添加剤が含まれるが、着色剤は欠く。印刷溶液は、好ましくは、フレキソまたはグラビア印刷によって適用される。随意には、それは、ステンシルを通して液体を噴霧することによって、シルクスクリーン印刷によって、オフセットまたはインクジェット印刷によって、またはプロッターを使用することによって適用することができる。
【0028】
印刷溶液においてポリマーの量は、たとえば、1-40重量-%であることができる。
【0029】
一実施形態によれば、比較的低いポリマー濃度を有する印刷溶液が使用され、好ましくは、2-10重量-%、最も適切には3.5-7重量-%である。低濃度を使用することによって、大抵はより一層大きな構造的な深さが達成されるが、基材におけるポリマーの最終濃度は相応により一層低いであろう。これは、印刷層の数を増やすことによって、またはより一層大きなセルサイズを有するインク転写ロールの選定によって補償することができ、後者のオプションは、特に、フレキソ印刷を用いるときに適する。一実施形態によれば、そのような低いポリマー濃度では、少なくとも二つの印刷層が存在する。
【0030】
別の実施形態によれば、好ましくは、10-40重量-%、最も適切には15-35重量-%の比較的高いポリマー濃度を用いる。試験では、ポリスチレンのようなとりわけ低い分子量を有するポリマーが備わる印刷溶液において、この濃度範囲での粘度が、本発明に従う印刷方法を使用して印刷するために依然として十分に低く、そしてそれらは基材の孔に依然として良好に浸透することが観察されている。他に、短鎖のため、印刷された構造体の特性は、多くの場合に、より一層長い鎖を有するポリマー物質を用いるときよりも良好であることができる。とりわけ、そのような材料はおそらく、より一層高密度のバリアー層を形成するであろう。したがって、できるだけ少ない単一印刷が十分であるかもしれない。
【0031】
使用するポリマーの分子量は、たとえば、2500-500 000であることができる。ポリマーの濃度が印刷溶液の10重量-%よりも高い場合、せいぜい最大で250 000、特に、最大で100 000の分子量を有するポリマーを用いることが好ましい。たとえば、20重量-%の濃度を用いる試験では、約35 000の平均分子量を有する二相性(最頻値を2つもつ)ポリスチレンが、形成されたチャネルの液体ガイド能力の点から見て、非常に良好な印刷結果を生成することが観察された。しかしながら、最適な分子量は濃度だけでなく、基材材料、チャネルにおいて配置することが意図される材料のような他の要因に、および最終的な用途にも依存することに注目すべきである。
【0032】
図4aは本発明の一実施形態に従う構造体を図式的に示す。第一の疎水性印刷ゾーン42aおよび第二の疎水性印刷ゾーン42bは、基材40上に印刷され、その間には、印刷されていない親水性ゾーンが残り、それは液体ゾーン44として用いることができる。液体ゾーン44にもたらされる親水性の液体は、印刷ゾーン42a、42bのため、問題のゾーンにおいて残るであろう。
【0033】
互いの頂部上に一またはそれよりも多く(一以上)の印刷層が存在しうる。典型的には、1-3の印刷層が用いられる。互いの頂部上でいくつかの層を用いることによって、そのポリマーを、印刷構造体の液体ガイド効果を強化するために基材内により一層深く運ぶことができる。同様の効果はまた、印刷基材および印刷シリンダーの間の圧力を増加させることにより達成することができる。
【0034】
ポリマー濃度、印圧、印刷ロールのセルサイズおよび印刷の回数は、好ましくは、基材の十分な深さにまで延びる構造体ゾーンが達成されるように選定される。
【0035】
統合された、またはローカルのベース層46はまた、
図4bに示すように、基材の裏面(基材のサイド2)に印刷される。このウェル被覆層は、典型的には、液体ゾーン44の全体の幅にわたって延び、そして随意に、バリアー層として機能することができ、それによって、それは液体がその基材をその厚さ方向において通り抜けるのを防ぐ。このベース層46は、たとえば、均等カラーまたはスライディングシェード(変化する色合い)であることができ、そしてサイド1上の印刷されたパターンを見たとき、マーキング液体を適用する前に、多孔質基材を通して見えない。
【0036】
このようにして、構造体において、側方バリアー層42a、42bに加え、深さ方向のバリアー層は存在することができる。同時に、横方向の液体ガイド効果が向上し、そして基材の前面上の印刷層または圧力についての必要性が低減される。毛管容量が減少するので、大量の液体容量にとっての必要性が大幅に減少するという利益も存在する。基材の基部(例は、テーブルトップ)からのサンプルゾーンへの異物の移動も効果的に防止される。
【0037】
基材の裏面上でのベース層46は、好ましくは、マーキング液体の添加後、有色イメージを提供するために着色される。随意に、ベース層46は、単に、そのような層を欠く他の同様な基材と比較して増加した不透明度をもつだけであることができる。この随意の解法は、白色であるベース層46を用いて完成させることができる。
【0038】
本発明の選択枝によれば、ベース層46は、有色バインダーまたは接着剤を用いて適用され、それによって、多孔質基材は、飲料コースター、パッケージまたはラベルのような別の表面に、容易に接着させることができる。
【0039】
別の選択枝によれば、ベース層46は、一またはそれよりも多くの着色剤を含有するインクで、マーキング液体、詳しくは、水性マーキング液体において溶解されることが可能であり、および特に、対応する疎水性を有する湿らせた多孔質基材の領域へマーキング液体と共に移行することが可能なものを用いて適用される。しかし、これらの着色剤は、ベース層46において唯一存在し、構造的なパターンにおいてではなく(随意の移行の前)、またマーキング液体においてでもない。このようにして、これらのパターンは、マーキング液体を適用する前には眼に見えない。したがって、この選択枝によればまた、純水をマーキング液体として用いることができ、メスを起こさない安全なマーキング進行が提供される。
【0040】
適切な着色剤は、ペーパーマトリクスにおいて移行することが可能な任意の水溶性着色剤、染料分子、イオンおよび顔料である。
【0041】
移行性インクの選択枝に従い、多孔質基材の湿潤は、インクにおける着色剤および/または他の添加剤が多孔質基材の望ましいエリアへそこから移行するようにさせ、したがって、基材の厚さ全体を通して着色が引き起こされる。ペーパーの乾燥の間、着色剤および/または他の添加剤は元のインクに移行せず、したがって、前記エリアにおいて基材の不可逆的な着色が引き起こされる。
【0042】
実施形態によれば、基材の裏面に印刷されたベース層46において開口部が、液体ゾーン44へのマーキング液体の供給および/またはそれからそれを除去するために、たとえば、第一の基材の頂部上に配置された第二の基材に対して、存在する。
【0043】
任意のいかなる多孔質基材も、そこでは水系液体は横方向に進み、たとえば、ペーパー(紙)またはボード(板、厚紙)基材またはテキスタイル(繊維製品)基材などのような基材として用いることができる。好ましくは、基材は、繊維性基材から選ばれる。適切な基材の例としては、ニトロセルロースシート、セルロース系ペーパー、および多孔質ポリマーシートである。とりわけ、この目的のために設計されたクロマトグラフィーペーパーを用いることができる。他の例は、ラベルペーパー(ラベル用紙)、バッグペーパー(袋用紙)、フィルターペーパー(ろ紙)(シガレットフィルターペーパーが含まれ)およびブックペーパー(書籍用紙)である。別の選択枝によれば、基材は、衣類または、たとえば、スイムウェアー、タオル、レインコートまたは傘などのような湿潤環境での使用を目的とした他の同様な保護手段のためにファブリックで形成される。
【0044】
図2は、Eucalyptus(ユーカリ属)の繊維から作られた紙(50g/m
2)上で製造した液体フローガイド構造体層の例を示す。疎水性の構造体層6の効果のため、親水性の液体は、液体チャネル7-11に沿ってだけ進むことができる。チャネル7は、4-mm幅であり、そしてチャネル11は0.25-mm幅である。図面において、水の液滴12は、チャネルでの毛管作用によって拡散されており、そして実例となる目的のために食糧色素で着色されており、液体チャネルに対して適用される。液体の流れを導く構造体層6は、紙において、3つの印刷層を互いの頂部上に5重量-%のポリスチレン-キシレン溶液でフレキソ印刷することによって形成される。RK Flexiproof(RKフレキシプルーフ)100ユニットを、印刷装置として用いた。印刷速度は60m/分であった。印刷シリンダ圧は、最良の結果を達成するために最適化された。単一の統合した印刷溶液層が紙の裏側に印刷された場合、正面側での単一のパターン化された層は、液体チャネルを造るのに十分であろう。
【0045】
この例によれば、フローチャネル3の典型的な幅は30μm-5mm、特に、0.25mm-4mmである。
【0046】
図3は、ユーカリ属から作られた紙(50g/m
2)上で製造したマイクロタイタープレートの例を示す。その紙は7-mm直径の「液体ウェル」14を含み、それらのそれぞれ中に、20μlの水が適用される。液体の流れを導く構造体層13は、
図2の例におけるのと同様に、液体ウェルの周囲に形成されいる。
【0047】
図5は、異なる方法で作られた液体チャネルにおける水溶液の広がりを示す。ポリスチレン-キシレン(PS-XYL)溶液およびポリスチレン-トルエン(PS- TOL)溶液の双方を用いることで、水溶液(脱イオン水)に及ぼす最良のガイド効果が、5重量-%のポリマー濃度を使用し、そして少なくとも二つの印刷層を使用して達成された。図面におけるすべての場合において、液体ゾーンの幅は1mmである。
【0048】
図6は、液体の毛管運動に及ぼすバリアーゾーンの横幅の効果を示す。5-重量-%のポリスチレン-キシレン溶液を100-800μmのリング(内側リング)としてクロマトグラフィーペーパー上に印刷した。リングの内部に、5μlの脱イオン水を適用した。バリアーゾーンに対する横方向の流れは、約400μmの構造幅を用いることで完全に防止されたことが観察された。
【0049】
印刷プロセスおよび材料を最適化することにより、約100μmの同等の幅を有するチャネルを使用して形成されたパターンを達成することが可能であり、それにもかかわらず、それは十分にタイト(密)である。
【0050】
一実施形態によれば、同じ印刷プロセスにおいて、そこでは液体フローガイド構造体が生成され、生体分子または診断試験のために他の試薬もまた、基材上に印刷される。このようにして、全体の分析手段が容易に、たとえば、ロールツーロール法を用いて製造することができる。
【0051】
上述のマーキング溶液は形成されたパターンを可視化することを意図されている。任意の実質クリアーな、そして着色剤を含有しない(着色剤フリー)液体は、可逆的な可視パターンを得るために、マーキング液体、たとえば、水または有機溶媒のようなものとして用いることができる。しかし、好ましくは、親水性溶媒、最も好適には、水、たとえば、脱イオン水または蒸留水などのようなもの、特に、脱イオン水を用いる。そのような親水性溶液は、基材表面の親水性エリアの濡れを引き起こし、それに対して疎水性溶液は、表面の疎水性エリアの湿潤を引き起こすであろう。
【0052】
別の選択枝によれば、不可逆的な可視パターンを得るために、有色親水性マーキング溶液、たとえば、ビール、コーラ、コーヒー、紅茶、ジュース、または別の強く着色したソフトドリンクまたはミックスドリンク(混合酒、カクテル)が用いられる。
【0053】
好ましくは、マーキング溶液は、注ぎ込み(鋳込み)、ブラッシングまたはスプレーを用いて多孔質基材の頂部上面に適用され、または基材の表面は、たとえば、凝結(結露)水、漏水、雨水または任意の自然供給の塩水または淡水、または任意の転換または追加の水を介することによって湿性になることが許される。
【0054】
凝縮水は、たとえば、水が冷たいボトルまたは飲料の缶から、飲料コースターまたはラベルに移された水であることができ、その表面上には、前記パターン化された多孔質基材が含まれる。
【0055】
漏水は、たとえば、洗濯機または食器洗浄機から漏れる水であることができ、それには、パターン化された多孔質基材が、任意の潜在的な漏れ部位に近接して表面に追加されている。
【0056】
雨水は、たとえば、傘またはレインコートに移された水であることができ、その表面上に前記パターン化された多孔質基材が含まれる。
【0057】
さらに、水(ここでは、マーキング溶液)は、水着またはタオルに移されることができ、前記パターン化された多孔質基材が、それらの表面上またはそれらの織物内に、たとえば、認証または純粋に視覚的な特性、またはそれらがまだ乾燥していないことを意味することとして含まれる。
【0058】
本発明を用いて形成されたパターンは、印刷後、基材上で不可視である(
図1参照)。しかしながら、基材を前記マーキング溶液により湿らせることは、溶液が対応する疎水性を有する基材のエリアに吸収されるようにし、すなわち、親水性マーキング溶液を使用するとき、それはパターンを形成する印刷された構造を囲む親水性エリア中に吸収され、それにより、これらのエリアの不透明度における変化が発生し、それは次にはそのパターンを可視にする。このことは、基材(サイド1)の前面表面上に導入される水または他の澄んだまたは軽く着色した液体によって引き起こされる。マーキング溶液が蒸発すると、基材の乾燥につながり、パターンが再び消え、すなわち、不可視になる。
【0059】
液体は、対応する疎水性を有する多孔質基材構造体のエリア中に吸収されるので、繊維性基材のファイバー+充填材マトリクスのような基材マトリクスのこれらのエリアにおいて、その光の反射率の量を減少させ(光学面)、および後側(サイド2)上の印刷物は、これらのエリアにおいて基材を通して見ることができる。このことにより、紙構造変化における初期の不可視パターンが可視パターンに変化される。
【0060】
このように、本発明は、湿度指標として使用するのに適しており、そしてたとえば、水分に敏感なパッケージングまたはラベリングを行う際に利用することができる。本発明は、簡単に、子供向きのカラーリングブック(塗絵帳)または飲料コースターなどのような複数のマス市場向きの用途において使用することができる。本発明はまた、潜在的には、たとえば、ペーパーシート上に水/液体を追加し、隠れた画像を明らかにするために、ユーザーにその情報を与えることによって、貴重なマーケティングの工夫またはさらに、消費者包装品のパッケージングまたはラベリング中に偽造防止特性を提供することができる。したがって、本発明の市場潜在能力は、一日あたり数億ものオーダーの単位である。
【0061】
別の特に適した用途は、衣類または他の同様な保護手段用の織物のようなファブリックでのもので、特に、たとえば、スイムウェアー、タオル、レインコートまたは傘などのような湿潤環境での使用を目的とするときであり、隠れたラベルまたはパターンが、織物を成形して衣類の一部分にする前後のいずれかにも、その織物の表面上に形成されているところのものである。