(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(ダイ剥離装置の構成)
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のダイ剥離装置100は、
図3に示すダイ集合体500を1ずつ剥離するものである。ダイ集合体500は、
図3に示すように、樹脂等で構成された枠体501と、枠体の内周側に取り付けられ上面に粘着層が形成された粘着シート502と、粘着シート502上に貼り付けられた複数の半導体素子であるダイ503とから構成されている。
【0018】
本実施形態のダイ剥離装置100は、
図1、
図2に示すように、主に、基台10、保持テーブル20、押し上げ部30、X方向移動装置40、Y方向移動装置50、負圧源60、制御部70とから構成されている。なお、
図1において、左右方向をX方向とし、上下方向をY方向とし、
図2において、左右方向をX方向とし、上下方向をZ方向とし、以下説明する。
【0019】
保持テーブル20は、ダイ集合体500を基台10上で保持するものである。
図1や
図2に示すように、保持テーブル20は、基部材21と、保持部材22とから構成されている。基部材21は、図示しないブラケットによって、基台10上に取り付けられている。基部材21は、板上であり、
図1に示すように、円形の貫通窓21aが形成されている。
【0020】
保持部材22は、円形の貫通窓22aが形成されている。保持部材22の上面の貫通窓22aの周囲には、ダイ集合体500を保持するための保持部22bが凹陥形成されている。保持部22bの形状は、ダイ集合体500の枠体501の形状に対応した形状となっている。保持部材22は、基部材21に、スライド可能に取り付けられている。保持部材22は、
図1の実線で示すように、基部材21に隣接して、保持部22bが露出した装着位置と、
図1の一点斜線で示すように、基部材21内に収納された保持位置との間をスライドする。保持部材22が装着位置にある状態で、ダイ集合体500が保持部22bに装着され、保持部材22が保持位置に移動すると、ダイ集合体500は、基部材21及び保持部材22によって保持される。
【0021】
押し上げ部30は、保持テーブル20で保持されているダイ集合体500の下面を、吸着しつつ、押し上げて、ダイ503の1つを粘着シート502から剥離するものである。押し上げ部30は、主に、本体31、吸引ノズル32、ピン33、ピン保持部材34、押し上げ装置35、回動装置36、ブラケット38とから構成されている。
【0022】
本体31は、筒状であり、保持テーブル20の下方に配設されている。吸引ノズル32は、本体31の上端に、着脱可能に取り付けられていて、上部に底部を有する有底筒状である。吸引ノズル32の上面は、吸引面32aとなっている。
図4に示すように、吸引面32aには、環状及び放射状の複数の溝32bが凹陥形成されている。そして、吸引面32aの溝32bの底部には、吸引ノズル32の内部に連通する流通穴32cが複数形成されている。また、吸引面32aの溝32bの底部には、吸引ノズル32の内部に連通する挿通穴32dが複数形成されている。
【0023】
吸引ノズル32の内部には、ピン保持部材34が上下方向に移動可能に配設されている。ピン保持部材34の上部には、複数のピン33が取り付けられ、当該複数のピン33がそれぞれ、吸引ノズル32の挿通穴32dに挿通している。このような構造により、ピン33は、吸引面32aから上方に突出可能に吸引ノズル32に装着されている。
【0024】
吸引ノズル32又は本体31の内部は、調圧弁80を介して負圧源60に接続されている。負圧源60は、真空ポンプ等で構成され、吸引ノズル32又は本体31の内部を吸引することにより、吸引面32aにおいて吸引負圧を発生させる。調圧弁80は、吸引面32aにおける吸引負圧を調整するものであり、本実施形態では、電磁弁である。
【0025】
吸引ノズル32又は本体31の内部には、吸引ノズル32の内部の負圧(吸引負圧)を検出するための圧力センサ39が配設されている。
【0026】
押し上げ装置35は、ピン33を上下動させるものであり、アクチュエータ等で構成され、本体31に取り付けられている。押し上げ装置35と、ピン保持部材34は、ロッド37によって連結されている。
【0027】
ブラケット38は、本体31を回動可能に支持するものである。回動装置36は、吸引ノズル32を位置決め可能に回動させるものである。本実施形態では、回動装置36は、ブラケット38に取り付けられ、回転軸36aを有するサーボモータである。回転軸36aに取り付けられたギヤ部材36bが、本体31の外周面に形成されたギヤ31aと係合している。
【0028】
X方向移動装置40は、押し上げ部30をX方向に移動させるものであり、
図1や
図2に示すように、Xスライド41、Xレール42、移動装置43を有している。Xレール42は、基台10上に、その長手方向をX方向として、取り付けられている。Xスライド41は、Xレール42にスライド可能に取り付けられている。移動装置43は、サーボモータ等であり、Xスライド41と係合するボールネジ44を回転させることにより、Xスライド41を、Xレール42上の任意の位置に移動させる。
【0029】
Y方向移動装置50は、押し上げ部30をY方向に移動させるものであり、
図1や
図2に示すように、Yスライド51、Yレール52、移動装置53を有している。Yレール52は、その長手方向をY方向として、Xスライド42に取り付けられている。Yスライド51は、Yレール52にスライド可能に取り付けられている。Yスライド51には、押し上げ部30のブラケット38が取り付けられている。移動装置53は、サーボモータ等であり、Yスライド51と係合するボールネジ54を回転させることにより、Yスライド51を、Yレール52上の任意の位置に移動させる。
【0030】
制御部70は、ダイ剥離装置100を統括制御するものであり、ECUを有している。ECUは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAM、ROM及び不揮発性メモリー等の「記憶部」を備えている。CPUは、ダイ剥離装置100を制御するためのプログラムを実行する。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、「記憶部」は前記プログラムを記憶している。
【0031】
制御部70は、押し上げ装置35、回動装置36、移動装置43、53、負圧源60、調圧弁80と通信可能に接続され、これらを制御する。また、制御部70は、圧力センサ39と通信可能に接続され、圧力センサ39で検出された「吸引負圧」の検出信号が入力される。
【0032】
なお、
図2に示すように、ダイ剥離装置100上には、図示しない移動装置によって、X、Y、Zのいずれの方向にも移動可能な吸着ノズル600が配設されている。吸着ノズル600は、筒状のノズル本体601と、当該ノズル本体601の下端に上下方向移動可能に取り付けられた筒状の吸着部602とから構成されている。吸着部602は、図示しない付勢部材によって、下方に付勢されていて、その下端面が吸着面602aとなっている。吸着ノズル600は、閉止弁を介して負圧源(いずれも不図示)に接続されている。
【0033】
(第一の実施形態のダイ剥離搬送処理の説明)
以下に、
図5のフローチャート、
図6の説明図、
図7のタイムチャートを用いて、粘着シート502からダイ503を剥離する第一の実施形態の「ダイ剥離搬送処理」について説明する。なお、負圧とは、大気圧よりも低い圧力であり、負圧が大きくなるとは、圧力が低下することをいう。保持テーブル20でダイ集合体500が保持されると、第一の実施形態の「ダイ剥離搬送処理」が開始し、S11において、制御部70は、粘着シート502から剥離するダイ503の「強度情報」を取得する。「強度情報」は、ダイ503が粘着シート502から剥離される際の割れやすさの情報である。S11が終了すると、プログラムは、S12に進む。
【0034】
次に、制御部70は、S12において、移動装置43、53に制御信号を出力することにより、吸引ノズル32を、ピックアップするダイ503の直下に移動させ、S13において、吸着ノズル600の移動装置に制御信号を出力することにより、前記ダイ503の直上に移動させたうえで、吸着部602の吸着面602aを前記ダイ503に当接させる(
図6(A))。S13が終了すると、プログラムは、S21に進む。
【0035】
S21において、制御部70は、S11で取得した「強度情報」に基づいて、「目標吸引負圧」を決定し、負圧源60及び調圧弁80に制御信号を出力することにより、吸引ノズル32内に「吸引負圧」を発生させる(
図7(A)の(1))。すると、ピックアップするダイ503の直下の粘着シート502が、吸引面32aにおいて吸引ノズル32で吸引される。なお、「目標吸引負圧」は、ダイ503の割れやすさに応じて、ダイ503が割れない負圧に決定される。S21において、制御部70は、圧力センサ39によって検出され圧力に基づいて、「吸引負圧」が、「目標吸引負圧」となるように、調圧弁80をフィードバック制御する。なお、吸引面32aにおける「吸引負圧」は、吸引ノズル32内の「吸引負圧」に対応(例えば、比例関係)している。S21が終了すると、プログラムは、S31に進む。
【0036】
S31において、制御部70は、「吸引負圧」が「規程負圧」以上となったと判断した場合には(S31:YES)、プログラムをS41に進め、「吸引負圧」が「規程負圧」に達していないと判断した場合には(S31:NO)、プログラムをS91に進める。なお、「規程負圧」とは、「目標吸引負圧」に対して所定の割合(例えば80%)の負圧である。
【0037】
S91において、制御部70は、吸引ノズル32での粘着シート502の吸引に異常があると判断した場合には(S91:YES)、プログラムをS92に進め、吸引ノズル32での粘着シート502の吸引に異常がないと判断した場合には(S91:NO)、プログラムをS21に戻す。なお、吸引ノズル32での粘着シート502の吸引の異常とは、吸引ノズル32での粘着シート502の吸引開始から所定の「規程エラー時間」が経過しても、「吸引負圧」が所定の負圧よりも上がらない場合であり(
図7(A)の(2))、粘着シート502や吸引ノズル32が破損して、粘着シート502と吸引面32aとの間にエア漏れが生じている場合に発生する。
【0038】
S92において、制御部70は、ダイ503のピックアップを中止するとともに、図示しない表示装置やスピーカ等の報知装置で、吸引ノズル32での粘着シート502の吸引の異常を報知し、プログラムをS12に戻す。
【0039】
S41において、制御部70は、押し上げ装置35に制御信号を出力することにより、ピン33を吸引面32aから突出させる
図7(B)の(1)。すると、
図6の(B)に示すように、粘着シート502は、吸引ノズル32の吸引面32aで吸引されている一方で、ダイ503はピン33によって
上方に突き上げられるので、ダイ503が粘着シート502から引き剥がされる。なお、吸着部602は、ノズル本体601に対して上下方向移動可能に取り付けられているので、上方に移動する。この状態では、吸着ノズル600の付勢部材によって、ダイ503は、吸着部602の吸着面602aで下方に押し付けられているので、ダイ503が吸着部602に対して水平方向がズレない。S41が終了すると、プログラムは、S51に進む。
【0040】
S51において、制御部70が、ピン33の押し上げ開始から(
図7(B)の(1))「規程吸引時間」が経過したと判断した場合には(S51:YES)(
図7(B)の(2))、プログラムをS61に進め、吸引開始から「規程吸引時間」が経過していないと判断した場合には(S51:NO)、S51の処理を繰り返す。なお、「規程吸引時間」は、その経過時に、ダイ503が粘着シート502から十分に引き剥がされる時間に設定されている。
【0041】
S61において、制御部70は、吸引ノズル600の閉止弁に制御信号を出力することにより、吸着部602の吸着面602aでの吸着を開始させ(
図7(C)の(1))、吸着ノズル600の移動装置に制御信号を出力することにより、ダイ503を吸着部602の吸着面602aで吸着させた状態で、所望の位置に搬送する(
図6の(C))。S61が終了すると、S71に進む。
【0042】
S71において、制御部70が、ダイ集合体500の最後のダイ503の搬送が完了したと判断した場合には(S71:YES)、「ダイ剥離搬送処理」が終了し、ダイ集合体500の最後のダイ503の搬送が完了していないと判断した場合には(S71:NO)、プログラムをS12に戻す。
【0043】
(第二の実施形態のダイ剥離搬送処理)
以下に、
図8に示すフローチャート及び
図9の説明図を用いて、第二の実施形態の「ダイ剥離搬送処理」について第一の実施形態と異なる点について説明する。なお、第二の実施形態の「ダイ剥離搬送処理」のS11、S12、S13、S21、S31、S41、S61、S71、S91、S92は、それぞれ、第一の実施形態のS11、S12、S13、S21、S31、S41、S61、S71、S91、S92と同一の処理であるので、その説明を省略する。
【0044】
S13が終了すると、S14において、制御部70は、回動装置36に制御信号を出力することにより、吸引ノズル32を「プレ剥離位置」に回動させる。なお、「プレ剥離位置」とは、ダイ503の粘着シート502からの剥離時における保持テーブル20との相対位置である「剥離位置」(
図9(B)示)から吸引ノズル32の軸線回りに所定角度相対回動した位置である(
図9(A)示)。S14が終了すると、プログラムは、S15に進む。
【0045】
S15において、制御部70は、S11で取得した「強度情報」に基づいて、「目標吸引負圧」を決定し、負圧源60及び調圧弁80に制御信号を出力することにより、吸引ノズル32内に「吸引負圧」を発生させる。制御部70は、圧力センサ39によって検出され圧力に基づいて、「吸引負圧」が、「目標吸引負圧」となるように、調圧弁80をフィードバック制御する。S15が終了すると、プログラムは、S16に進む。
【0046】
S16において、制御部70は、押し上げ装置35に制御信号を出力することにより、ピン33を吸引面32aから突出させて、「プレ剥離」を実行する。この「プレ剥離」によって、
図9(A)の斜線で示す領域が剥離される。S16が終了すると、S17に進む。
【0047】
S17において、制御部70は、回動装置36に制御信号を出力することにより、吸引ノズル32を「剥離位置」に回動させる(
図9(B)示)。S14が終了すると、プログラムは、S15に進む。
【0048】
S41において、ピン33が上方に押し上げられ、「本剥離」が実行されると、
図9(B)の斜線で示す領域が剥離される。
【0049】
このように、第二の実施形態の「ダイ剥離搬送処理」では、ダイ503を粘着シート502から剥離する「本剥離」の前に、「プレ剥離動作」(S14、S15、S16)の処理を実行している。これにより、「本剥離」によって剥離される領域(
図9(B)示)と異なる位置が剥離される(
図9(A)示)ので、
図9の(C)に示すように、粘着シート502からダイ503が剥離されない領域が殆ど発生しない。
【0050】
(第三の実施形態のダイ剥離搬送処理)
以下に、
図10のフローチャート及び
図11の説明図を用いて、第三の実施形態の「ダイ剥離搬送処理」について第一の実施形態と異なる点について説明する。なお、第三の実施形態の「ダイ剥離搬送処理」のS11、S12、S13、S21、S31、S41、S61、S71、S91、S92は、それぞれ、第一の実施形態のS11、S12、S13、S21、S31、S41、S61、S71、S91、S92と同一の処理であるので、その説明を省略する。
【0051】
S41が終了すると、S42において、制御部70は、回動装置36に制御信号を出力することにより、吸引ノズル32を一方向に所定角度回動させた後に(
図11の(A))、これと反対方向に吸引ノズル32を所定角度回動させる(
図11の(B))動作を繰り返す。すると、ピン33の位置が、粘着シート502やダイ503に対して移動するので、ダイ503が粘着シート502から広範な範囲において剥離される。また、吸引ノズル32が一方向に回動した後に、これと反対方向に回動するという動作が繰り返されるので、粘着シート502に当該動作による振動が付与され、より確実に、ダイ503が粘着シート502から剥離される。S42が終了すると、S51に進む。
【0052】
S51において、制御部70が、ピン33の押し上げ開始から(
図7(B)の(1))「規程吸引時間」が経過したと判断した場合には(S51:YES)(
図7(B)の(2))、プログラムをS61に進め、吸引開始から「規程吸引時間」が経過していないと判断した場合には(S51:NO)、プログラムをS42に戻す。
【0053】
(第四の実施形態のダイ剥離搬送処理)
以下に、
図12のフローチャート及び
図13説明図を用いて、第四の実施形態の「ダイ剥離搬送処理」について第一の実施形態と異なる点について説明する。なお、第四の実施形態の「ダイ剥離搬送処理」のS12、S13、S21、S31、S41、S61、S71、S91、S92は、それぞれ、第一の実施形態のS12、S13、S21、S31、S41、S61、S71、S91、S92と同一の処理であるので、その説明を省略する。
【0054】
第四の実施形態の「ダイ剥離搬送処理」のS11では、制御部70は、ダイ503の「強度情報」を取得するとともに、ダイ503の「形状情報」や「姿勢情報」を取得する。なお、「姿勢情報」とは、ダイ集合体500が保持テーブル20で保持されている状態における、ダイ503の吸引ノズル32に対する水平方向の姿勢の情報であり、
図13に示すように、ダイ503が長方形等の正方形で無い異形である場合に、吸引ノズル32に対するダイ503の長手方向等の情報である。
【0055】
S13が終了すると、S18において、制御部70は、S11において、取得したダイ503の「形状情報」や「姿勢情報」に基づいて、吸引ノズル32のダイ503に対する回動位置が適切で無いと判断した場合には(S18:YES)、プログラムをS19に進め、吸引ノズル32のダイ503に対する回動位置が適切であると判断した場合には(S18:NO)、プログラムをS21に進める。なお、制御部70は、
図13の(A)に示すように、ピン33の水平位置が、ダイ503からはみ出してしまう場合や、
図13の(B)に示すように、例えば、ピン33の配列の長手方向がダイ503の長手方向と一致しない等、ピン33の配置位置がダイ503の水平方向の姿勢に対して適切で無く、適切にピン33でダイ503を押圧できない場合には、吸引ノズル32のダイ503に対する回動位置が適切で無いと判断する。
【0056】
S19において、制御部70は、回動装置36に制御信号を出力することにより、
図13の(C)に示すように、吸引ノズル32のダイ503に対する回動位置が適切な位置となるように、吸引ノズル32を回動させて位置決めする。S19が終了すると、プログラムは、S21に進む。なお、上述したS18及びS19の処理は、吸引ノズル32を移動させるS12の処理の前に行うことにしても差し支え無い。
【0057】
(本実施形態の効果)
上述した説明から明らかなように、
図5、
図8、
図10及び
図12のS21、
図8のS15において、調圧弁80(吸引負圧調整部)が、吸引ノズル32の「吸引負圧」を調整することにより、吸引面32aにおける「吸引負圧」を調整する。これにより、破損しやすいダイ503を粘着シート502から剥離する場合には、調圧弁80によって、吸引面32aにおける「吸引負圧」を小さくすることにより、ピン33の押し上げによりダイ503が粘着シート502から剥離する際に、ダイ503が粘着シート502から緩慢に剥離し、剥離時にダイ503への過大な応力の作用が防止される。このため、ダイ503を粘着シート502から剥離する際における、ダイ503の破損が防止される。
【0058】
一方で、ダイ503の強度が十分な場合には、
図5、
図8、
図10及び
図12のS21、
図8のS15において、S11において取得された「強度情報」に基づいて、調圧弁80が吸引ノズル32の「吸引負圧」を大きくし、吸引面32aにおける「吸引負圧」を大きくすることにより、ダイ503を粘着シート502から剥離するためのタクトタイムを短縮することができる。
【0059】
また、制御部70は、吸引ノズル32の「吸引負圧」が「規程負圧」以上に達したと判断した場合に(
図5、
図8、
図10、及び
図12のS31でYESと判断)、ピン33を押し上げる(
図5、
図8、
図10及び
図12のS41)。これにより、吸引面32aにおける「吸引負圧」が小さい状態で、ピン33が押し上げられることに起因する、ダイ503の粘着シート502から剥離不良を防止することができる。また、本実施形態では、「規程負圧」を、「目標吸引負圧」に対して所定の割合の負圧に設定しているので、吸引ノズル32の「吸引負圧」が「目標吸引負圧」に達する前に、ピン33が押し上げられる(
図7(B)の(1))。このため、吸引ノズル32の「吸引負圧」が「目標吸引負圧」に達するのを待ってピン33を押し上げるのと比較して、ダイ503を粘着シート502から剥離するためのタクトタイムを短縮することができる。
【0060】
また、
図8のS14において、制御部70(プレ剥離実行手段)が、ダイ503を粘着シート502から剥離させる前に、吸引ノズル32を剥離時における保持テーブル(保持部)との相対位置から吸引ノズル32の軸線回りに所定角度相対回動した「プレ剥離位置」(
図9(A)示)に回動させ、
図8のS15及びS16において、粘着シート502の下面を吸引ノズル32で吸引しつつ、ピン33で粘着シート502の下面を押し上げる「プレ剥離」を実行する。これにより、
図9の(A)に示すように、吸引ノズル32で吸着する直前の「本剥離」によってダイ503が粘着シート502から剥離される位置(
図9(B)示)と、異なる位置が剥離される。このため、
図9の(C)に示すように、ダイ503が粘着シート502から剥離されない領域を減少させることができ、ダイ503が粘着シート502から剥離されない領域が殆ど生じない。よって、ダイ503が粘着シート502から十分に剥離されておらず、ダイ503が粘着シート502に強固に接着されていることに起因する、吸着ノズル600でのダイ503の吸着ミスを防止することができる。また、吸着ノズル600でダイ503を吸着し搬送する際における、ダイ503の破損を防止することができる。
【0061】
また、
図9の(A)に示すように、吸着ノズル600で吸着する直前の「本剥離」によってダイ503が粘着シート502から剥離される位置(
図9の(B)示)と、異なる位置が剥離されるので、吸引ノズル32での「吸引負圧」を小さく設定し、吸引面32aにおける「吸引負圧」が小さくなったとしても、十分に、ダイ503を粘着シート502から剥離させることができる。このため、「吸引負圧」を小さく設定することにより、吸引ノズル32での吸引時におけるダイ503の破損を、より確実に、防止することができる。
【0062】
また、
図10のS42において、回動装置36(回動剥離手段)は、吸引ノズル32で粘着シート502の下面を吸引しつつ、ピン33で粘着シート502の下面を押し上げている際に、吸引ノズル32を回動させる。これにより、ピン33の水平方向位置が、粘着シート502やダイ503に対して移動するので、ダイ503が粘着シート502から広範な範囲において剥離される。また、粘着シート502と当接しているピン33が水平方向に移動することにより、粘着シート502に振動が付与され、より確実に、ダイ503が粘着シート502から剥離される。このため、吸引ノズル32での「吸引負圧」を小さく設定したとしても、十分に、ダイ503を粘着シート502から剥離させることができる。このように、「吸引負圧」を小さく設定することができるので、吸引ノズル32での吸引時におけるダイ503の破損を、より確実に、防止することができる。
【0063】
また、制御部70が、吸引ノズル32に装着されているピン33のダイ503に対する回動位置が適切で無い(
図13の(A)の状態)と判断した場合には(
図12のS18でYESと判断)、ピン33のダイ503に対する回動位置が適切な位置となるように、吸引ノズル32を、吸引ノズル32の軸線回りに回動させたうえで位置決めする。これにより、
図12のS41において、ダイ503がピン33によって適切に押し上げられ、確実に、ダイ503を粘着シート502から引き剥がすことができる。また、異形のダイ503の供給方向が変更された場合であっても、ダイ503の供給方向の変更に対応するようなピン33が装着された吸引ノズル32を新たに用意する必要が無く、吸引ノズル32を回動させるだけで、ダイ503の供給方向の変更に対応することができる。
(別の実施形態)
【0064】
なお、以上説明した実施形態では、吸引ノズル32が基台10に対して回動することにより、吸引ノズル32が保持テーブル20に対して相対回動している。しかし、保持テーブル20が、基台10に対して回動することにより、吸引ノズル32が基台10に対して回動することにより、吸引ノズル32が保持テーブル20に対して相対回動する実施形態であっても差し支え無い。この実施形態の場合には、保持テーブル20に対する吸引ノズル32の水平方向の相対位置(吸引位置及び押し上げ位置)が変わらないように、保持テーブル20の回動に連動して、移動装置43、53によって吸引ノズル32が水平方向に移動される。
【0065】
また、以上説明した実施形態では、調圧弁80によって、吸引ノズル32の吸引面32aでの「吸引負圧」を調整している。しかし、
図14に示すように、「吸引負圧」を制限するレギュレータ81が設けられた流路と、レギュレータ81が設けられていない流路の二つの流路を負圧源60に接続し、制御部70からの指令に基づいて流路を切り替える切替バルブ82を吸引ノズル32に接続する流路に設け、切替バルブ82によって、吸引ノズル32に接続する流路を、レギュレータ81が設けられた流路とレギュレータ81が設けられていない流路のいずれかに切り替えて接続する実施形態であっても差し支え無い。
【0066】
また、
図10のS42において、制御部70は、粘着シート502と剥離するダイ503の情報に基づいて、回動装置36によって吸引ノズル32を回動させる際において、回動角度、回動回数、回動速度、回動時間等を適宜変更することにしても差し支え無い。また、制御部70は、回動装置36によって吸引ノズル32を回動させる際において、位置方向のみ回動させても差し支え無く、回動角度を小さくして、回動回数を増やして、ピン33によって粘着シート502に振動をより効果的に付与することにしても差し支え無い。
【0067】
以上説明した実施形態では、吸引ノズル32を回動させる回動装置36は、サーボモータであるが、シリンダ等であっても差し支え無い。