特許第6021909号(P6021909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6021909低温試料グループホルダーにおける寸法変化の補正のための方法と装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021909
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】低温試料グループホルダーにおける寸法変化の補正のための方法と装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20161027BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20161027BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   G01N35/04 G
   G01N35/04 H
   G01N35/00 B
   B65G1/00 531
【請求項の数】20
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-521859(P2014-521859)
(86)(22)【出願日】2012年7月23日
(65)【公表番号】特表2014-521108(P2014-521108A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】US2012047883
(87)【国際公開番号】WO2013013246
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2015年6月3日
(31)【優先権主張番号】61/510,455
(32)【優先日】2011年7月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/555,957
(32)【優先日】2012年7月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505047094
【氏名又は名称】ブルックス オートメーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098464
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 洌
(74)【代理人】
【識別番号】100149630
【弁理士】
【氏名又は名称】藤森 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100184826
【弁理士】
【氏名又は名称】奥出 進也
(72)【発明者】
【氏名】ニーパー、ロバート ケイ
【審査官】 渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/066269(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0044263(US,A1)
【文献】 特開2007−033130(JP,A)
【文献】 特表2005−507074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器を試料グループホルダーへ、および試料グループホルダーから移動させるように構成された取り出しヘッドと、
前記取り出しヘッドに接続され、前記試料グループホルダーの少なくとも1つの所定の特徴部を検出するように構成された少なくとも1つのセンサと、
前記少なくとも1つのセンサから、前記少なくとも1つの所定の特徴の検出に対応する検出信号を受け取り、前記少なくとも1つの所定の特徴の検出位置に基づいて、前記試料グループホルダーの所定の特徴変化を判定し、
前記検出信号に基づいて、1つまたは2つ以上の前記試料容器を前記試料グループホルダーへ、および前記試料グループホルダーから移動させることを可能にするために、前記試料グループホルダーにおける1つまたは2つ以上の試料容器の位置を判定するように構成された制御部とを
備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記試料グループホルダーの所定の特徴変化が、前記試料グループホルダーの公称長さからの長さの変化である請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記試料グループホルダーの所定の特徴変化が、前記試料グループホルダーの公称幅からの幅の変化である請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記試料グループホルダーの所定の特徴変化が、前記装置の取り出しテーブル上の前記試料グループホルダーの公称位置からの位置の変化である請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記試料グループホルダーの所定の特徴変化が、前記装置の取り出しテーブル上の前記試料グループホルダーの公称方向からの方向の変化である請求項1記載の装置。
【請求項6】
ガントリーシステムをさらに備え、前記取り出しヘッドが前記ガントリーシステムの可動部材に取り付けられた請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの所定の特徴部が、前記試料グループホルダーのエッジである請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記試料グループホルダーが、試料容器のグループを保持するように構成されたトレイからなり、前記エッジが前記トレイのエッジである請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの所定の特徴部が、前記試料グループホルダーに収容された試料容器のグループの境界である請求項1記載の装置。
【請求項10】
フレームと、
前記フレームに取り付けられ、その上に少なくとも1つの試料グループホルダーを保持するように構成された取り出しテーブルと、
前記フレームに取り付けられた可動取り出しヘッドであって、前記可動取り出しヘッドが、前記可動取り出しヘッドに接続された少なくとも1つのセンサを有し、前記センサが前記少なくとも1つの試料グループホルダーの1つまたは2つ以上の特徴部を検出するように構成された可動取り出しヘッドと、
前記可動取り出しヘッドおよび前記少なくとも1つのセンサに動作可能に連結された制御部であって、前記制御部が、前記少なくとも1つのセンサからの検出信号に基づいて、前記少なくとも1つの試料グループホルダーの寸法変化を判定するように構成され、前記検出信号は前記少なくとも1つの試料グループホルダーの前記1つまたは2つ以上の特徴部の検出に対応し、前記寸法変化に基づいて、前記少なくとも1つの試料グループホルダーにおける少なくとも1つの試料容器の位置を判定するように構成された制御部とを
備えることを特徴とする試料保管および取り出しシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの試料グループホルダーの寸法変化が、温度による寸法変化である請求項10記載の試料保管および取り出しシステム。
【請求項12】
前記フレームが取り出し温度に維持された試料取り出し領域を形成し、前記取り出し領域に連絡可能に連結され、前記取り出し温度より低い保管温度に維持された試料保管領域をさらに備えることを特徴とする請求項10記載の試料保管および取り出しシステム。
【請求項13】
前記制御部が、前記少なくとも1つの試料グループホルダーの温度の上昇に伴う前記少なくとも1つの試料グループホルダーの寸法変化を明らかにするために、所定の時間間隔で少なくとも1つの試料グループホルダーの前記寸法変化を判定するように構成された請求項10記載の試料保管および取り出しシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの試料グループホルダー内の試料の取り出しが失敗した時、前記制御部が、前記少なくとも1つの試料グループホルダーの寸法変化を判定するように構成された請求項10記載の試料保管および取り出しシステム。
【請求項15】
前記制御部が、前記少なくとも1つの試料グループホルダーの検出された1つまたは2つ以上の特徴部に基づいて、前記取り出しテーブル上の試料グループホルダーの公称位置に対する前記少なくとも1つの試料グループホルダーの位置を判定するようにさらに構成された請求項10記載の試料保管および取り出しシステム。
【請求項16】
前記制御部が、前記少なくとも1つの試料グループホルダーの検出された1つまたは2つ以上の特徴部に基づいて、前記取り出しテーブル上の試料グループホルダーの公称方向に対する前記少なくとも1つの試料グループホルダーの方向を判定するようにさらに構成された請求項10記載の試料保管および取り出しシステム。
【請求項17】
前記取り出しヘッドが、前記少なくとも1つの試料グループホルダー内の前記試料容器を分離するために、前記試料容器のシールを切るように構成された請求項10記載の試料保管および取り出しシステム。
【請求項18】
前記少なくとも1つの試料グループホルダーの前記1つまたは2つ以上の特徴部が、前記試料グループホルダーの1つまたは2つ以上のエッジを含む請求項10記載の試料保管および取り出しシステム。
【請求項19】
前記制御部が、前記少なくとも1つの試料グループホルダーの測定された寸法と前記少なくとも1つの試料グループホルダーの公称寸法とを比較し、少なくとも1つのオフセット寸法を判定し、前記少なくとも1つのオフセット寸法に基づいて、前記少なくとも1つの試料グループホルダーにおける少なくとも1つの試料容器の位置を判定するように構成された請求項10記載の試料保管および取り出しシステム。
【請求項20】
フレームと、
前記フレームに取り付けられ、その上に少なくとも1つの試料グループホルダーを保持するように構成された取り出しテーブルと、
前記フレームに取り付けられた可動取り出しヘッドであって、前記可動取り出しヘッドが、前記可動取り出しヘッドに接続された少なくとも1つのセンサを有し、前記センサが前記少なくとも1つの試料グループホルダーの1つまたは2つ以上の特徴部を検出し、前記1つまたは2つ以上の特徴部に対応する検出信号を生成するように構成された可動取り出しヘッドと、
前記可動取り出しヘッドおよび前記少なくとも1つのセンサに動作可能に連結された制御部であって、前記制御部が、前記少なくとも1つのセンサからの前記検出信号に基づいて、前記少なくとも1つの試料グループホルダーの試料グループホルダー測定値を判定し、前記試料グループホルダー内の試料容器間の1つまたは2つ以上の間隔と前記試料グループホルダー内の試料容器の中心の位置を判定するように構成された制御部とを
備えることを特徴とする試料保管および取り出しシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示的な本実施形態は、概して保管および取り出しシステムに関し、より詳細には自動保管および取り出しシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
工業会社、規制機関、研究所、学術機関を含む多くの科学および医療機関は、非常に多くの、例えば何百万もの試料および標本を確実に保管する必要がある。こうした分野には薬剤、バイオテクノロジー、研究所診断、ゲノミクス、生物検体、法医学、農薬、特殊化学などがある。応用によって、試料サイズは数十マイクロリットルから数ドラムまでばらつきがあるが、試料は小さい密封されたプラスチックチューブやバイアル、またはマルチウェルプレートに保管される。それぞれの試料容器は、ラックまたは1つまたは2つ以上のラックを保持する試料グループホルダーをシステムから取り外すことなく、それぞれの試料を入れたり出したりできるラックに保持される。試料の有効な使用期間を延ばすために、試料は低温(通常、−20℃〜−80℃、またはそれ以下)、低湿度、不活性ガス(窒素)の制御された環境に保管され、できるだけ環境変化を受けないようにする。最も効率的な方法で非常に多くの試料を処理するために、応用に応じたシステムの順応性と適応性を高めるようにいくらかの配慮がなされなければならない。
【0003】
多くのこのような保管システムの重要な構成要素は、例えば低温環境への影響を最小限に抑えながら保管区画からラックおよび試料グループホルダーを取り外し、取り替えるための、例えば試料グループホルダーのコンベヤなどのロボットシステムである。試料グループホルダーのコンベヤは、試料グループホルダーまたはラックを、選択された試料とともに、制御された環境に運ぶ。制御された環境は、保管区画ほど低温でないが、試料が解凍されないように保管区画の低温または超低温と検査室環境との間のおよそ中間の温度である。試料バイアルが運ばれるこの制御された温度領域はまた、不活性雰囲気および低湿度環境に保たれてもよい。試料グループホルダーコンベヤと連携する別のロボットシステムはチューブピッカーであり、「チェリーピッカー」と呼ばれることもあり、保管コンパートメントから取り出された試料グループホルダーまたはラックからそれぞれのチューブを抜き出し、処理または分析のために別の試料グループホルダーまたはラックに置く。例となるバイアルピッカーは特許文献1に記載され、その全体を参照することによって本明細書に含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0044263号明細書
【発明の概要】
【0005】
簡潔に言えば、試料グループホルダーのコンベヤおよびチューブピッカーの動作も制御する保管システムの制御部は、各試料が保管区画内に保管されている場所(例えば棚またはカルーセル)および各試料の試料グループホルダーおよびラック内での場所などの各試料に関する情報のデータベースを保持する。試料グループホルダーが保管区画から取り外され、「取り出しテーブル」に置かれると、チューブピッカーがx−y面の中で、「ソース試料グループホルダー」と呼ばれる、抜き出される試料を保持する試料グループホルダー内の事前に選択された位置に移動する。チューブピッカーは、試料容器を試料グループホルダーから持ち上げて取り出すプッシャー機構と、プッシャー機構によって持ち上げられた試料容器を受け取るための1つまたは2つ以上のキャビティを有する取り出しヘッドを備える。プッシャー機構は可動取り出しヘッドから独立して動き、取り出しヘッドが試料グループホルダーの様々な場所から複数のチューブを受け取れるようにする。次に取り出しヘッドは移動先試料グループホルダーの上の目的地に移動され、イジェクタ機構が作動し、全てのチューブを1つの動作で配置する。
【0006】
試料グループホルダーにおけるチューブのサイズの小ささや近接した詰め込みは、試料グループホルダーからチューブを取り出す際にかなりの正確さを必要とすることを意味する。選択されたそれぞれのチューブを正確に置くことは、例えば試料グループホルダーの材料への熱的影響などによって困難になる。具体的には、試料グループホルダーはおよそ数ミリメートルオーダーで、長さの変化をする可能性があり、これによって、予想よりチューブが2〜3ミリメートル離れている場合、ピッカーがチューブを見つけて選択することは困難になる。
【0007】
開示された実施形態の前述した態様と他の特徴は、添付図面と関連させて以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1a】開示された実施形態の態様による、取り出しテーブルと取り出しヘッドのガントリーと、ソースおよび移動先試料グループまたはアレイ用のホルダーが適所にある正面図である。
図1b】開示された実施形態の態様による、取り出しテーブルと取り出しヘッドのガントリーと、ソースおよび移動先試料グループまたはアレイ用のホルダーが適所にある上面図である。
図2a】開示された実施形態の態様による、試料セレクター機構の正面図である。
図2b】開示された実施形態の態様による、試料セレクター機構の側面図である。
図2c】開示された実施形態の態様による、試料セレクター機構の斜視図である。
図3a】開示された実施形態の態様による、ピッカー機構とセンサの斜視図である。
図3b】開示された実施形態の態様による、ピッカー機構とセンサの側面図である。
図3c】開示された実施形態の態様による、ピッカー機構とセンサの背面図である。
図4a】開示された実施形態の態様による、試料グループホルダーの長さおよび/または位置における変化の測定と補正の手順を順番に示している。
図4b】開示された実施形態の態様による、試料グループホルダーの長さおよび/または位置における変化の測定と補正の手順を順番に示している。
図4c】開示された実施形態の態様による、試料グループホルダーの長さおよび/または位置における変化の測定と補正の手順を順番に示している。
図4d】開示された実施形態の態様による、試料グループホルダーの長さおよび/または位置における変化の測定と補正の手順を順番に示している。
図5】開示された実施形態の態様による、試料グループホルダーの長さおよび/または位置の測定および算出および位置オフセットにおいて用いられる例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示された実施形態の態様を、図面を参照して説明するが、開示された実施形態の態様は多くの形態で実施され得ることを理解すべきである。さらに、要素または材料の任意の適切なサイズ、形、または種類が使用され得る。
【0010】
開示された実施形態の態様は、例えば温度変化、材料応力、(例えば保管および取り出しシステムの構成要素間の、および/または試料グループホルダーの部品間の)公差の蓄積、はめ合い構成要素間の干渉および/またはずれ(例えば試料間および試料グループホルダー内の各保持位置間の干渉/ずれ、試料グループホルダー間および試料グループホルダーのハンドラ/コンベヤ間の干渉/ずれ)等の結果、保管および取り出しシステムにおける試料グループホルダーの位置および/または試料グループホルダーによって保持された1つまたは2つ以上の試料容器の位置に関して起こる寸法変化に対処するための装置と方法を提供し、迅速な自動試料容器選択に必要な正確さを可能にする。試料容器は本明細書でチューブとして表現されているが、他の態様において試料容器は任意の適切な形状/形態を有してもよいことを理解すべきである。さらに他の態様において、試料は容器に入っていなくてもよい。
【0011】
開示された実施形態の態様に従って、下記に詳細を記載するように、試料グループホルダーの1つまたは2つ以上の端部および/または側面または試料グループホルダー上の任意の他の適切な基準面の位置に配置するために、1つまたは2つ以上のセンサが、例えば取り出しヘッド上に、または保管および取り出しシステムの任意の他の適切な場所に設置される。センサは、試料グループホルダーまたはトレイが置かれる取り出しテーブルまたはプラテン(platen)に対して移動可能である。センサの移動は、取り出しヘッドと共通のモータによって駆動されてもよく、あるいはセンサは、取り出しヘッドから独立して取り出しテーブルに対してセンサを動かすために、独立した駆動部およびモータを有してもよい。便宜上、本明細書で使用する試料グループホルダーの用語は、ホルダーフレームを有する任意の適切なサイズおよび形状のホルダーであってもよく、本明細書でトレイとも表現され、試料容器の1つまたは2つ以上のグループ(またはアレイ)または(試料容器の1つまたは2つ以上のグループまたはアレイを保持する)ラックを保持してもよいことに留意する。前述のように、それぞれの試料容器は、試料グループホルダーと所定の関係で配置された任意の適切なグループまたはアレイの配置で試料グループホルダーに保持されてもよい。試料グループホルダーの中の試料容器のアレイまたはグループはラックと呼ばれ、その中の試料容器グループとともに一体となって試料グループホルダーのフレームから取り外すことができる。1つまたは2つ以上のセンサは、試料グループホルダーの長さおよび/または幅の実際の測定値を得て、(所定の温度で公称寸法を有し、公称位置にある試料グループホルダー内のチューブの理論上の位置とは対照的に)チューブの実際の位置に適合させるために、例えばコントローラ内のメモリまたはデータベースの範囲内で全てのチューブの予想位置を調整するのに使用されてもよい。試料グループホルダーの公称寸法は、例えば熱膨張/収縮、材料応力等による試料グループホルダーの寸法変化の前の試料グループホルダーの寸法であってもよいことに留意する。試料グループホルダーの公称位置は、例えば公差の蓄積、はめ合い構成要素間の干渉および/またはずれなどが起こる前の、試料グループホルダーへ、および試料グループホルダーからチューブを移動させるための試料グループホルダーの所定の位置であってもよい。試料グループホルダーの「実際の測定値」と「実際の位置」は、上記の公称寸法と公称位置からのずれに一致してもよい。温度に関して、試料グループホルダーの長さは温度とともに常に変化し得るため、1つまたは2つ以上のセンサによる試料グループホルダーの測定は、試料グループホルダーの温度(または試料グループホルダーが置かれる制御された環境の温度)が上昇したり下降したりするにつれて変化する寸法に対して取り出し位置/配置位置を調整するために、任意の適切な時間間隔で繰り返されてもよい。ある態様において、試料グループホルダーは、(寸法変化および/または位置変化に対して)一定の時間間隔でおよび/または段階的な時間間隔で測定されてもよい。他の態様において、上記の測定は、取り出しが失敗した時、または任意の他の適切な時に繰り返されてもよい。
【0012】
保管および取り出しシステム制御部999内部のソフトウェアは、上記の「実際の」測定値および/または位置を用いて、試料グループホルダー内のチューブの間隔および/またはチューブの中心の位置を算出し、算出したスペース/位置に基づいて、取り出しヘッドを、標的試料またはチューブの現在または実際の位置に移動させる。
【0013】
開示された実施形態の態様によるチューブピッカーセンサは、試料を−20℃に保管するシステムに著しい改善をもたらし、このセンサは試料グループホルダーが−80℃で保管され、−20℃で取り出される−80℃のシステムに必須である。
【0014】
図1aおよび1bはピッカー機構902を示し、これは開示された実施形態の態様による試料保管および取り出しシステムの典型的なチェリーピッカーモジュール900で利用される。ある実施形態において、チェリーピッカー900はチューブを取り出し、配置するように構成され、他の態様において、チェリーピッカー900は任意の適切な試料容器または収容されていない試料を取り出し、配置するように構成されてもよい。ピッカーモジュール900は、例えば1つまたは2つ以上(図示された例では2つ)のソース試料グループホルダー位置920、921、および1つ(または2つ以上)の移動先試料グループホルダー位置950を有し、それらは複数の試料ラック922と952をそれぞれ保持する。試料グループホルダーは固定面すなわち「取り出しテーブル」901上で支持され、一方でピッカー機構はx−y面内で移動し、試料グループホルダー内の様々な位置にアクセスし、所望の移動動作を行う。試料が、あるソース試料グループホルダー位置から抜き出されている間、異なるソース試料グループホルダーは別のソース試料グループホルダー位置への移動が可能であり、事実上連続的な試料選択が可能になる。
【0015】
典型的なピッカー機構902は、レール910、取り出しヘッド904、およびプッシャー機構906を備えている。図示された典型的なピッカー機構902は例示的なもので、他の態様において、ピッカー機構は、例えばSCARA(選択的柔軟関節ロボットアーム)構造、または試料グループホルダーからおよび試料グループホルダーへ試料容器を取り出し配置するために、取り出しヘッドを移動可能に位置付けるように配置された「フロッグレッグ」アームなどの関節アームロボットなどの任意の適切な構造を有してもよい。レール910は、直線移動機構(linear translator)(図示せず)に駆動するように取り付けられることが可能であり、直線移動機構は1つまたは2つ以上のトラックを備え、それに沿ってレール910は1つの軸916(図1bのy軸)に沿った移動をする。理解されるように、直線移動機構とレール910は取り出しヘッド904の移動を可能にするガントリーシステムを形成してもよい。取り出しヘッド904はレール910に駆動するように取り付けられ、レール910に沿った他の軸917(図1bのx軸)に沿って移動するように構成されてもよい。軸916に沿ったレール910の動作と軸917に沿った取り出しヘッド904の動作は、任意の適切な駆動部によって駆動されてもよい。プッシャー機構906の位置付けは、例えばスクリュードライブなどの任意の適切な駆動部または移動機構908によって、1つまたは2つ以上の軸916、917において制御されてよい。
【0016】
またプッシャー機構906は、下記に詳細を記載するように、試料容器を持ち上げてラック922から取り出すためにプッシャーロッド970を移動させるように構成されたZ動作駆動部を備え、試料容器を取り出しヘッド904の中の1つまたは2つ以上のキャビティの中に押し込む。ある態様において、プッシャー機構906は取り出しヘッド904から独立して移動し、実質的に取り出しヘッドが移動することなく、取り出しヘッドが試料グループホルダーの様々な場所から複数のチューブを受け取れるようにする(例えば、取り出しヘッド904が実質的に試料グループホルダーの保持場所と同じ間隔を有する複数のキャビティを備える場合、実質的に取り出しヘッド904を移動させることなくチューブをキャビティに入れるためにプッシャー機構906を移動させることによって、プッシャーロッド970はキャビティのそれぞれと位置が合致する。取り出しヘッド904のキャビティが一杯になると、取り出しヘッド904は移動先試料グループホルダー950におけるラック952上の目的地へ移動させられ、そこで取り出しヘッド904のイジェクタ機構は作動され、取り出しヘッド904によって運ばれた全ての試料容器をラック952に1つの動作で配置する。
【0017】
図2a〜2cは、取り出しヘッド904とプッシャー機構906の要素を示す。取り出しヘッド904は、例えば取付板948によってなど、任意の適切な方法でレール910に取り付けられる(図1aおよび1b)。また取付板948は、取り出しヘッドの部品の取り付け用のフレームを備える。取り出しヘッド底部プレート931は、取付板948に対して垂直に延び、試料容器が通る開口部を有するフレームの一部に取り付けられる。底部プレート931は通常、試料が取り出されるラック922からわずかに上方の位置に置かれる。下記に記載のように、ピッカー機構902が、粘着シートで密閉されたチューブを分離するためにも使用される時、底部プレート931はラック922の上面に実質的に接触してもよい。底部プレート931のすぐ上には、ブロック945に取り外し可能に取り付けられる(フレームに取り付けられてもよい)スプリング961〜963があり、スプリング961〜963は、例えばラック922に向かって、下方へ延びる。各スプリング961〜963は、弾性金属または他の適切な弾性材料から形成され、内側に延びるテーパー状の歯を有し、試料容器が歯に当たって上に押し上げられる時、スプリングを外側に出させる。各スプリング961〜963の内面、ブロック945の下面、および後壁976は、取り出しプロセスの間に1つまたは2つ以上の試料容器942、944、946が保持され得る1つまたは2つ以上の試料容器保持位置を有するキャビティ960を形成する。テーパー状の歯の上端とブロック945の下面の間のスプリング961〜963の長さによって決められ得るキャビティのサイズは、確実に適切な動作を行うために試料容器のサイズにぴったりと適合すべきである。スプリング961〜963は、様々な長さの試料容器の処理を可能にするため取り外し可能であってもよい。例えば、様々な長さの試料容器が処理される時、スプリング961〜963は、スプリングスクリューを外すことによって取り外してもよく、処理される試料容器に一致する長さを持つスプリングに取り替えてもよい。スプリングは、その関連する試料容器が押し出されるまで、その試料容器をキャビティ960の中で保持する。
【0018】
センサ/イジェクタブレード952〜954は、フレームにスライド可能に取り付けられ、ブロック945におけるスロットを通って延び、試料容器942、944、946がキャビティ960の中に押し込まれる時、試料容器942、944、946の上方のブレード952〜954は押し上げられ、それによってブレードの上端が、ブロック945の上のプリント基板933上に取り付けられた一組の光検出器956の1つに検出される位置にくる(PCB933はピッカー制御部999(図1b)への電気接続または任意の他の適切な有線接続または無線接続を与えてもよい)。光センサ956の起動によって、試料容器942、944、946が取り出しヘッド904の所定のスロットの中に保持されていることをピッカー制御部999に知らせる信号が生成される。図2aに示すように、試料容器946がキャビティ960の中に保持されると、ブレード954が上方に押し上げられ、ブレードの上端が光センサ956によって検出される。試料容器944は、プッシャーロッド970によってスプリング962のテーパー状の歯に対して押し上げられている。試料容器944の最上部がブレード953の下端に接触し、ブレードを上方へ押し上げて、同様に対応する光センサ956によって検出される。ある態様において、3つのスプリング961〜963、3つのブレード952〜954、3つの光センサ956があるので、取り出しヘッド904は3つの試料容器を受容するように構成される。他の態様において、取り出しヘッド904は任意の適切な数の試料容器を保持するように構成されてもよい。ある態様において、全ての光センサ956がキャビティ960の中に試料容器が入っていることを検出すると、ピッカー制御部999は、取り出しヘッド904に、試料容器942、944、946を入れる移動先試料グループホルダー950(図1b)の移動先ラック位置952に移動するように指令を出す。取り出しヘッド904が移動先ラック952の上の位置にくると、取り出しヘッドのカムモータ934はフライホイール958を回転させるために駆動され、カムホイール947にチャネル938に対して下向きの力をかけさせる。チャネル938は取り出しヘッドスライダ935の後側に取り付けられ、スライダ935をガイド936に沿って下へ動かす。イジェクタバー943は、スライダ935の前側から延び、各ブレード952〜954のスロットを通って延びるイジェクタタブを有する。スライダ935が下へ動く時、イジェクタバーはブレード952〜954をキャビティ960の中の試料容器942、944、946の最上部に対して下へ押し下げ、同時に試料容器を取り出しヘッド904から押し出し、移動先ラック952の中へ入れる。フライホイール958は、完全なサイクルを確実にするために、駆動時に慣性を加えるように重みをかけることができる。
【0019】
上記で3つの試料容器を受容するように構成された取り出しヘッド904について説明したが、上記のように、効率的な操作に実用的であるように1つのキャビティ−スプリング−ブレード−センサの組み合わせから多くのこのような組み合わせまでを与えることによって、より多くの、またはより少ない試料容器を処理することができることは容易に理解できるであろう。
【0020】
プッシャー機構906は、例えば試料グループホルダー920とラック922の開いた底部を通ってプッシャーロッド970を上へ動かすことによって、取り出しヘッド904と連携し、試料容器942、944、946を持ち上げ、この試料容器を取り出しヘッド904の歯付スプリング961〜963に対して上へ押し上げる。プッシャー機構906は、プッシャー機構906と取り出しヘッド904の独立した動きを可能にするため、取付板948を介して移動機構908に取り付けられてもよい。プッシャーロッド970は、支柱973に沿って垂直に動き、プッシャーガイド974によって安定させられるプッシャースライド937に取り付けられる。支柱973とプッシャーガイド974は両方ともベース932に取り付けられてもよい。プッシャーロッド970の垂直の動作は、取り出しヘッドイジェクタに関する上述のものに類似したカム機構によって始められてもよい。例えば、カムモータ940はフライホイール972を回転させ、フライホイールはカムホイール964をチャンネル966の中へ移動させ、チャネル966に対する上方または下方の力をかける。プッシャースライド937の後側に取り付けられているチャネル966は、フライホイール972の回転の方向によって、プッシャーロッド970を上または下へ動かす。取り出しヘッド904と同様に、フライホイール972は、完全なサイクルを行うのに十分な慣性を確実に生成するために、重みをかけることができる。プッシャーロッド970は取り外し可能で、ある態様において、異なる長さの試料容器の処理が必要な場合に、異なる長さのロッドに取り替えることができる。
【0021】
各カムモータアセンブリ934、940は、磁気位置センサ941または939をそれぞれ備え、その完全なサイクルでフライホイールを確実に回転させられるように、対応するフライホイール958または972の位置に関するフィードバックを与える。ある態様において、制御電子回路は、モータ934、940の端部に取り付けられたボックスCEの中に設置されてもよい。ある態様において、上記のように、取り出しヘッド904は打ち抜き(die cutting)の機能を行うように変更することができ、これによって、例えば1枚の箔やポリマー(例えば試料容器のシール)でシールされた試料ラック922などの試料ラック内の試料容器を分離するための付加的なステップおよび付加的な器具の必要性をなくす。この態様において、切断プレート980は、例えば取り出しヘッド底部プレート931の底部(または取り出しヘッド904の任意の他の適切な場所)に取り付けられ、刃先982はキャビティ960の底部に合致する。切断プレート980は、例えばアルミニウムまたはステンレス鋼などの任意の適切な材料から形成できる。切断プレートを、切断したり、穴を開けることによって開口部を形成するように機械加工する通常のプロセスは、試料容器がプッシャー機構によって上に押し上げられる時、試料容器の外周の周りのシールを切るのに十分鋭い刃を生成するので、刃先982は意図的に研ぐ必要はない。これによって試料容器942、944、946は必要な時までシールを無傷で保管することが可能になる。通常は、一度に2〜3個だけの試料が必要となるため、試料が選択されるのに備える時、所望の試料の試料容器942、944、946の周りでのみシールは切られる。
【0022】
図3a〜3cは、ソース試料グループホルダー920の上に配置された取り出しヘッド904を示す。図3a〜3cに示す構成は典型的なもので、他の態様において、試料保管および取り出しシステムは任意の適切な構成を有してもよい。任意の適切なセンサ100(例えば、CCDカメラ、光検出器、反射光センサ、近接検出器などのうちの1つまたは2つ以上など)は、任意の適切な方法で取り出しヘッド904に取り付けられてもよく、このセンサが例えば試料グループホルダー920のエッジ(例えば1つまたは2つ以上の端部920E1、920E2、および側部920S1、920S2のエッジ)(または試料グループホルダー内の1つまたは2つ以上のラック922、952の1つまたは2つ以上のエッジ)を検出できるようにする。他の態様において、センサ100が、試料グループホルダー920上の任意の適切な基準面を検出してもよい。さらに他の態様において、センサ100は、1つまたは2つ以上の試料容器のエッジEGおよび/または試料容器942のグループGのエッジまたは境界を検出してもよく、および/または例えば任意の適切な点(例えば2つまたは3つまたはそれ以上の点)またはエッジまたは境界(例えばそれによってエッジが形成する線が定まる)を示すセクションなどの特徴を検出してもよい。図示された実施例において、センサ100は、取り出しヘッド904の側面に取り付けられるが、他の態様において、センサ100は、取り出しヘッド904の任意の適切な位置に取り付けられてもよいし、または取り出しヘッドから独立して移動可能であるように、取り出しヘッドから独立して取り付けられてもよい。センサ100は、システム制御部999に1つまたは2つ以上のエッジ検出信号を送るために、例えば制御部999などの任意の適切な制御部に、任意の適切な方法で動作可能に接続されてもよい。上記のように、システム制御部999とともにセンサ100は、試料グループホルダー920とその中に保持された試料容器の実際の寸法および/または実際の場所を判定するための補正システムを形成してもよく、ここでシステム制御部999は、下記に記載のように、1つまたは2つ以上のエッジ検出信号から試料容器の位置を判定するように構成される。
【0023】
図4a〜4cは、一連の補正システムの動作を示す。上述のように、取り出しテーブル901上の試料グループホルダー920の実際の位置および/または寸法は、例えば温度変化、材料応力、(例えば保管および取り出しシステムの構成要素間および/または試料グループホルダーの部品間の)公差の蓄積、はめ合い構成要素間の干渉および/またはずれ(例えば試料間および試料グループホルダー内の各保持位置間の干渉/ずれ、試料グループホルダー間および試料グループホルダーのハンドラ/コンベヤ間の干渉/ずれ)などの任意の適切な理由で、取り出しテーブル上の試料グループホルダー920の公称または予想される位置および/または寸法と異なる。補正システムは、これらの寸法の差異に対して補正するために試料グループホルダーの1つまたは2つ以上の測定値を取得するように構成されてもよい。図4aは試料グループホルダーコンベヤ(図示せず)による搬送後の所定の位置にある、取り出しテーブル901とソース試料グループホルダー920を示す。ガントリーシステムと取り出しヘッド904は、試料グループホルダー920の所定の特徴を検出するために、試料グループホルダー920の最上部の上方の開始位置に配置されてもよい。開始位置は、例えば試料グループホルダーの端部またはエッジなどの任意の適切な所定の位置または試料グループホルダーの基準面であってもよい。ある態様において、単なる例示だが、開始位置における所定の特徴は、試料グループホルダー920の端部920S1であってもよいが、他の態様において、所定の特徴は、試料グループホルダーの任意の適切な特徴であってもよい(例えば、試料グループホルダーの任意の適切な側面または基準面、1つまたは2つ以上の試料容器のエッジ、または試料グループホルダーに配置されたラックの1つまたは2つ以上のエッジ、1つのグループの試料容器のエッジまたは境界など)。
【0024】
図4bは、試料グループホルダー920の端部920E1に移動したガントリーシステムのレール910を示し、ここでセンサ100は、例えば試料グループホルダー920の端部920E1のエッジを検出するまたは探す。試料グループホルダー920の端部920E1のエッジの位置は、例えば線形熱膨張による試料グループホルダーの長さLの算出に使用するためにシステム制御部999に送信されてもよい。ある態様において、レール910は試料グループホルダー920の他方の端部920E2に移動してもよく、ここでセンサ100は図4cに示すように、端部920E2の試料グループホルダー920のエッジを検出するまたは探す。試料グループホルダー920の端部920E2のエッジの位置はまた、例えば線形熱膨張による試料グループホルダーの長さLの算出に使用するために、システム制御部999に送信されてもよい。システム制御部999は、試料グループホルダーの端部920E1、920E2の測定されたエッジの位置から試料グループホルダーの実際の長さを判定し、例えば試料グループホルダー920内の試料容器942の位置を判定するために方向916における調整またはオフセット値を求めるために、試料グループホルダー920の実際の長さと試料グループホルダーの公称長さを比較してもよい。
【0025】
別の態様において、システム制御部999は、例えば、測定された試料グループホルダーの長さLから実質的に直接、方向916における試料容器の位置を判定するように構成されてもよい。例えば、図3Aも参照すると、試料容器と例えば試料グループホルダー920の公称長さとの所定の関係を理解することができる(例えば、試料容器のそれぞれの列は、例えば方向916において、端部920E1のエッジから試料グループホルダーの公称長さの所定の割合だけ離れて位置してもよい)。システム制御部999は、端部920E1と920E2のエッジの位置を判定するようにガントリーシステムを制御してもよい。システム制御部999は、試料グループホルダー920の測定した長さLと各列の割合長さに基づいて、少なくとも端部920E1からの試料容器942の各列の位置を判定するように構成されてもよい。例えば、試料容器の第1の列は、端部920E1のエッジからX1/Lの割合に位置してもよく、試料容器の第2の列は、端部920E1のエッジからX2/Lの割合に位置してもよく、試料容器の第3の列は、端部920E1のエッジからX3/Lの割合に位置してもよいなど、試料グループホルダーの測定された長さLがわかると、制御部は任意の適切な方法で、割合長さを用いて方向916における試料容器の「実際の」位置を判定してもよい。
【0026】
理解されるように、取り出しヘッド904はまた、試料グループホルダー920の実際の幅Wを判定するために、上述の方法とほぼ同じ方法で、センサが側面920S1、920S2のそれぞれのエッジを検出するまたは探すことができるように動かされてもよく、それによって、ある態様において、システム制御部999は、試料容器の位置を判定するための方向917における調整のために、またはオフセット値を求めるために試料グループホルダー920の実際の幅Wと試料グループホルダーの公称幅とを比較する。他の態様において、システム制御部999は、上述の方法とほぼ同じ方法で、試料グループホルダーの測定された幅Wと試料容器の各列の割合幅とから実質的に直接、試料容器の位置を判定してもよい。
【0027】
他の態様において、システム制御部は、例えば試料グループホルダー920の対向する角の適切な特徴を検出することによってなど、わずか2つの地点から実際の長さLと幅Wを判定してもよい。
【0028】
さらに他の態様において、システム制御部999は、2つまたはそれ以上の寸法の測定値d1m、2mを用いて、試料グループホルダーの長さLを判定するように構成されてもよく、例えば、試料グループホルダーの公差の蓄積は、試料グループホルダーの長さを判定する間に実質的になくすことができる。
例えば、図3aを参照すると:
Δd1=Δd2/2 [等式1]
1m=d2m/2 [等式2]
ここでΔd1とΔd2は、上述したように、例えば温度変化または任意の他の適切な変化による試料グループホルダー920の寸法の変化である。寸法d1mとd2mは、試料グループホルダー920の公称寸法である。さらに、
Δd1=d1mt−(d1m+V/2) [等式3]
Δd2=d2mt−(d2m+V) [等式4]
ここでd1mtとd2mtは、時間tにおけるd1mとd2mに相当する試料グループホルダー920の測定値であり、Vは試料グループホルダーにおける変化である。理解されるように、等式3と4のうちの一方を変化Vに対して解き、例えば等式1と2の1つまたは2つ以上を用いて、Δd2を求めるために等式3と4のうちの他方に代入してもよい。
【0029】
他の態様において、各試料グループホルダーの長さLおよび/または幅Wは、試料保管および取り出しシステムに試料グループホルダー920を入れる際に(例えば時間T0において)測定されてもよい。試料グループホルダーの長さLおよび/または幅Wは、例えば時間T1およびT2などの後の時間に測定されてもよく、それによって時間T1またはT2の試料グループホルダー920の長さLの変化は、例えば時間T1またはT2の長さLから時間T0の長さLを引くことによって求められる。同様に、時間T1またはT2の試料グループホルダー920の幅Wの変化は、例えば時間T1またはT2の幅Wから時間T0の幅Wを引くことによって求められる。
【0030】
システム制御部999は、方向916、917(例えばxおよびy方向)における1つまたは2つ以上の調整値を標的チューブまたは試料容器の実際の位置に配置するための指示に挿入し、取り出しヘッド904を標的チューブの調整されたx座標とy座標の上の位置に動かす。ある態様において、1つまたは2つ以上のxオフセット値とyオフセット値は、試料グループホルダーの長さに沿って均一であると想定できるが、他の態様において、任意の適切なアルゴリズムが、例えば単なる例示だが、端部920E1または側面920S1(例えば、長さまたは幅の測定の開始位置)などの試料グループホルダー920の任意の適切な基準位置からの距離に基づいて試料グループホルダー上の任意の位置の1つまたは2つ以上のxオフセット値とyオフセット値を求めるのに用いることができる。ある態様において、試料グループホルダー920の長さLおよび/または幅Wを算出するプロセスは、時間の経過とともに、また例えば試料グループホルダー920の温度変化がより早く起こる場合などに、より頻繁な測定が行われてもよい場合、最初の測定から一定の間隔または段階的な間隔で繰り返すことができる。他の態様において、最初の測定の後、試料グループホルダー920の長さLおよび/または幅Wを測定、算出するプロセスは、予想位置からのずれによる取り出しヘッドがチューブの取り出しに失敗するまで、または任意の他の適切な時に引き延ばすことができる。その時点で測定と補正の算出を繰り返すことができる。
【0031】
理解されるように、補正システムはまた、試料グループホルダー920が取り出しテーブル901上で傾斜しているかどうかを測定し、チューブまたは試料容器の取り出しおよび/または配置ができるように制御部内の試料グループホルダー920の基準フレームを回転させるか、または調整してもよい。例えば、図4dも参照して、取り出しヘッド904は、センサ100が試料グループホルダー920の1つのまたは共通の側面920S1、920S2(または端部920E1、920E2)上の少なくとも2つの地点を検出するように配置されてもよい。センサ100は、試料グループホルダー920の実際の軸MXの算出に用いるために、少なくとも2つの地点の位置をシステム制御部999に送信してもよい。システム制御部999は、試料グループホルダー920の実際の軸MXを少なくとも2つの地点の測定された位置から判定し、調整またはオフセット値θを求めるために、試料グループホルダー920の実際の軸MXと取り出しテーブル901上の試料グループホルダー920の公称のまたは予想される軸RXと比較してもよい。システム制御部999は、オフセット値θのみを使用するか、またはxおよびyのオフセットに関して、上記で判定された位置情報(例えば、試料グループホルダーの端部および/または側面の実際の位置および/またはxとyのオフセット値)と組み合わせてオフセット値θを使用して、取り出しヘッド904のxおよびyの移動が、傾斜した試料グループホルダー920におけるチューブまたは試料容器の位置に一致するように取り出しヘッド904を移動させられるようするために、制御部の内部で試料グループホルダー920の座標系または基準フレームを回転させてもよい。
【0032】
図5は、例えば試料グループホルダーの長さ、幅、位置、および/または方向および位置のオフセットを測定し、算出するのに用いることができる例示的なプロセスを示すフローチャートである。また図4a〜4cを参照して、ブロック501において、そのプロセスは、取り出された試料グループホルダー920を取り出しテーブル901上に置くまたは配置することによって開始される。試料グループホルダー920の公称寸法および変化は、例えばシステム制御部999のメモリ内の試料グループホルダー920の公称寸法および変化を調べることによって、または試料グループホルダーが保管および取り出しシステムに入れられる時に試料グループホルダーを測定することによってなど、任意の適切な方法で判定することができる(図5、ブロック502)。システム制御部999は、試料グループホルダー920の端部920E1、920E2が位置していると予測される取り出しテーブル上の予測領域を推定してもよく(図5、ブロック503)、取り出しテーブル901上の試料グループホルダーの公称位置から推定された試料グループホルダーの位置の変化に基づいて、ガントリーシステムの動作を調整してもよい(図5、ブロック504)。ブロック505において、取り出しヘッド904上のセンサ100が、例えば端部920E1での試料グループホルダーのエッジ、またはエッジが検出されるような任意の他の適切な基準面などの試料グループホルダーの上の任意の適切な初期基準位置に動かされるように、ガントリーシステムが動かされる。この態様において、この基準位置は、例えば試料グループホルダーの長さLの測定に使用され、他の態様において、基準位置は、上述のように試料グループホルダーの位置、ずれ、および/または方向を判定するのに用いられてもよい。ブロック506において、例えば端部920E2での試料グループホルダーのエッジ、または任意の他の適切な基準面などの、第2の位置における試料グループホルダー920の特徴部(feature)を検出するまで、取り出しヘッド904上のセンサ100が例えば試料グループホルダーの他方の端部920E2などの試料グループホルダー920の第2の位置に移動するように、ガントリーシステムは動かされる。例えば、端部920E1、920E2のエッジなどの試料グループホルダー920の初期位置および第2の位置の試料グループホルダーの特徴部が検出されると、試料グループホルダーの長さL、試料グループホルダーの幅W、試料グループホルダーの方向(例えば、試料グループホルダーのθ回転、図4d)および/または基準点からの試料グループホルダーの位置(取り出しテーブル901上の試料グループホルダーのxおよび/またはy位置)などの試料グループホルダー920の任意の適切な特徴(characteristic)が、上述のように判定されてもよい(図5、ブロック507)。ある態様において、システム制御部999は、任意の適切なプログラミングおよび構造(例えば、プロセッサ、メモリなど)を備えてもよく、例えば試料グループホルダーの測定された長さL、測定された幅W、測定された位置、および/または測定された方向と、試料グループホルダーにおけるさまざまなチューブの位置を判定するのに用いられた標準または公称の試料グループホルダーの長さL、幅W、位置および/または方向とを比較するように構成されてもよい(図5、ブロック508A)。他の態様において、システム制御部999は、任意の適切なプログラミングおよび構造(例えばプロセッサ、メモリなど)を備えてもよく、上述のように試料グループホルダーにおける様々なチューブの位置を判定するために、測定された特徴を(公称の試料グループホルダーの特徴と比較することなく)実質的に直接、適用するように構成されてもよい(図5、ブロック508B)。さらに他の態様において、時間Ti(すなわち現在の時刻)の測定値は、オフセットを求めるためにそれより前の時間Ti-1の測定値と比較してもよい。ブロック509において、1つまたは2つ以上のx、y、およびθの方向のオフセットが、例えば試料グループホルダーの長さLおよび/または幅Wが熱的作用によってどのくらい伸びて、または収縮しているかを求めるために算出される。他の態様において、上述のように、取り出しテーブル901上の試料グループホルダーの位置および/または方向のオフセットが算出されてもよい。標的チューブのチューブ位置のオフセットは算出され、調整された座標がガントリーシステムに与えられ、取り出しヘッド904を標的チューブにアクセスするための位置に移動させる(図5、ブロック510)。ブロック511において、標的チューブが取り出しヘッド904によって取り出され、移動先試料グループホルダー950に移動させられる(図1b)。ブロック512において、全ての標的チューブが取り出されると、取り出された試料グループホルダー920から標的チューブを取り出すプロセスが完了し(図5、ブロック513)、新しい試料グループホルダーが取り出される。プロセスが完了せず、さらなるチューブが同じ試料グループホルダーから選択されようとする場合、ブロック514において、例えば熱変化によって、例えば試料グループホルダーの長さLおよび/または幅Wにおける大きな変化が起こった間に、事前にセットされた、または所定の時間が経過したかを、システム制御部999は判定する。他の態様において、システム制御部999は、試料グループホルダーの温度および/または試料グループホルダーが置かれている制御された環境の周囲温度を検出するように構成された熱センサ999Sに動作可能に接続されてもよい。熱センサ999Sは、例えば光高温計などの任意の適切な熱センサであってもよい。熱センサ999Sは、所定の温度変化が起こった時に検出し、試料グループホルダーの再測定を始めるために、制御部999に検出信号を送ってもよい。最後の測定から事前にセットされた時間が経過したか、および/または所定の温度変化が検出された場合、測定と算出ブロック505〜510が、次のチューブを取り出そうとする前に繰り返される。または、最後のチューブを取り出す際にエラーが起こると、ブロック505〜510が繰り返される。
【0033】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、装置が提供される。この装置は、試料容器を試料グループホルダーへ、および試料グループホルダーから移動させるように構成された取り出しヘッドと、この取り出しヘッドに接続され、試料グループホルダーの少なくとも1つの所定の特徴部を検出するように構成された少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つのセンサから、少なくとも1つの所定の特徴の検出に対応する検出信号を受け取り、少なくとも1つの所定の特徴の検出位置に基づいて、試料グループホルダーの所定の特徴変化を判定し、そのエッジ検出信号に基づいて、1つまたは2つ以上の試料容器を試料グループホルダーへ、および試料グループホルダーから移動させることを可能にするために、試料グループホルダーにおける1つまたは2つ以上の試料の位置を判定するように構成された制御部とを備える。
【0034】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、試料グループホルダーの所定の特徴変化は、試料グループホルダーの公称長さからの長さの変化である。
【0035】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、試料グループホルダーの所定の特徴変化は、試料グループホルダーの公称幅からの幅の変化である。
【0036】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、試料グループホルダーの所定の特徴変化は、装置の取り出しテーブル上の試料グループホルダーの公称位置からの位置の変化である。
【0037】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、試料グループホルダーの所定の特徴変化は、装置の取り出しテーブル上の試料グループホルダーの公称方向からの方向の変化である。
【0038】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、この装置はガントリーシステムをさらに備え、取り出しヘッドがこのガントリーシステムの可動部材に取り付けられている。
【0039】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、少なくとも1つの所定の特徴部は、試料グループホルダーのエッジである。
【0040】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、試料グループホルダーは、試料容器のグループを保持するように構成されたトレイからなり、エッジはトレイのエッジである。
【0041】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、少なくとも1つの所定の特徴部は、試料グループホルダーに収容された試料容器のグループの境界である。
【0042】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、試料保管および取り出しシステムが提供される。この試料保管および取り出しシステムは、フレームと、このフレームに取り付けられ、その上に少なくとも1つの試料グループホルダーを保持するように構成された取り出しテーブルと、このフレームに取り付けられた可動取り出しヘッドであって、この可動取り出しヘッドが、この可動取り出しヘッドに接続された少なくとも1つのセンサを有し、このセンサが少なくとも1つの試料グループホルダーの1つまたは2つ以上の特徴部を検出するように構成された可動取り出しヘッドと、この可動取り出しヘッドおよび少なくとも1つのセンサに動作可能に連結された制御部であって、この制御部が少なくとも1つのセンサからの検出信号に基づいて、少なくとも1つの試料グループホルダーの寸法変化を判定するように構成され、検出信号は少なくとも1つの試料グループホルダーの1つまたは2つ以上の特徴部の検出に対応し、寸法変化に基づいて、少なくとも1つの試料グループホルダーにおける少なくとも1つの試料の位置を判定するように構成された制御部とを備える。
【0043】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、少なくとも1つの試料グループホルダーの寸法変化は、温度による寸法変化である。
【0044】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、フレームは取り出し温度に維持された試料取り出し領域を形成し、試料保管および取り出しシステムは、この取り出し領域に連絡可能に連結され、取り出し温度より低い保管温度に維持された試料保管エリアをさらに備える。
【0045】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、制御部は、少なくとも1つの試料グループホルダーの温度の上昇に伴う少なくとも1つの試料グループホルダーの寸法変化を明らかにするために、所定の時間間隔で少なくとも1つの試料グループホルダーの寸法変化を判定するように構成される。
【0046】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、少なくとも1つの試料グループホルダー内の試料の取り出しが失敗した時、制御部は、少なくとも1つの試料グループホルダーの寸法変化を判定するように構成される。
【0047】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、制御部は、少なくとも1つの試料グループホルダーの検出された1つまたは2つ以上の特徴部に基づいて、取り出しテーブル上の試料グループホルダーの公称位置に対する少なくとも1つの試料グループホルダーの位置を判定するようにさらに構成される。
【0048】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、制御部は、少なくとも1つの試料グループホルダーの検出された1つまたは2つ以上の特徴部に基づいて、取り出しテーブル上の試料グループホルダーの公称方向に対する少なくとも1つの試料グループホルダーの方向を判定するようにさらに構成される。
【0049】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、取り出しヘッドは、少なくとも1つの試料グループホルダー内の試料容器を分離するために、試料容器のシールを切るように構成される。
【0050】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、少なくとも1つの試料グループホルダーの1つまたは2つ以上の特徴部は、試料グループホルダーの1つまたは2つ以上のエッジを含む。
【0051】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、制御部は、少なくとも1つの試料グループホルダーの測定された寸法と少なくとも1つの試料グループホルダーの公称寸法とを比較し、少なくとも1つの寸法オフセットを判定し、少なくとも1つの寸法オフセットに基づいて、少なくとも1つの試料グループホルダーにおける少なくとも1つの試料の位置を判定するように構成される。
【0052】
開示された実施形態の1つまたは2つ以上の態様に従って、試料保管および取り出しシステムが提供される。試料保管および取り出しシステムは、フレームと、このフレームに取り付けられ、その上に少なくとも1つの試料グループホルダーを保持するように構成された取り出しテーブルと、そのフレームに取り付けられた可動取り出しヘッドであって、この可動取り出しヘッドが、この可動取り出しヘッドに接続された少なくとも1つのセンサを有し、このセンサが少なくとも1つの試料グループホルダーの1つまたは2つ以上の特徴部を検出し、この1つまたは2つ以上の特徴部に対応する検出信号を生成するように構成された可動取り出しヘッドと、この可動取り出しヘッドおよび少なくとも1つのセンサに動作可能に連結された制御部であって、この制御部が、少なくとも1つのセンサからの検出信号に基づいて、少なくとも1つの試料グループホルダーの試料グループホルダー測定値を判定し、試料グループホルダー内の試料間の1つまたは2つ以上の間隔と試料グループホルダー内の試料の中心の位置を判定するように構成された制御部とを備える。
【0053】
前述の説明は、開示された実施形態の態様の単なる例示であるということを理解すべきである。様々な代替および修正が、開示された実施形態の態様から逸脱することなく当業者によって考案され得る。したがって、開示された実施形態の態様は、添付の請求項の範囲内にある、全てのこうした代替、修正、および変形を含むことを意図している。さらに、異なる特徴が互いに異なる従属項や独立項に挙げられているという単なる事実は、これらの特徴の組み合わせを有利に用いることができないということを示しておらず、こうした組み合わせは本発明の態様の範囲内にある。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図4d
図5