特許第6021913号(P6021913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6021913炭素系伝導体と量子ドットとを有するフォトトランジスタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021913
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】炭素系伝導体と量子ドットとを有するフォトトランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
   H01L31/10 E
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-523308(P2014-523308)
(86)(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公表番号】特表2014-522117(P2014-522117A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】EP2012064979
(87)【国際公開番号】WO2013017605
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年5月29日
(31)【優先権主張番号】P201131345
(32)【優先日】2011年8月2日
(33)【優先権主張国】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】512117362
【氏名又は名称】フンダシオ インスティチュート デ サイエンセズ フォトニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ゲラシモス、コンスタンタトス
(72)【発明者】
【氏名】フランク、コッペン
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−332991(JP,A)
【文献】 特開2006−210620(JP,A)
【文献】 特表2007−519240(JP,A)
【文献】 特開2005−277263(JP,A)
【文献】 特開2006−032564(JP,A)
【文献】 特開2010−153793(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/082955(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトトランジスタであって、
炭素系伝導層(2)と、当該炭素系伝導層(2)の上面上の、光を吸収するためのコロイド状量子ドットの層(1)と、を有するプラットフォームと
横の位置で前記炭素系伝導層(2)に接続されたソース電極及びドレイン電極(Vs、Vd)と、を備え、
前記フォトトランジスタは、前記コロイド状量子ドットの層(1)に入り込む入射する光子が、前記コロイド状量子ドットの層(1)内で電子キャリアを生成し、その生成された電子キャリアが前記炭素系伝導層(2)に搬送されるような、光ゲート効果を生じさせるようになっており、
前記炭素系伝導層(2)は、グラフェンからなり、搬送される前記生成された電子キャリアを搬送するためのキャリア搬送路を構成す
ことを特徴とするフォトトランジスタ。
【請求項2】
基板(4)と、当該基板(4)と前記炭素系伝導層(2)との間の誘電性中間層(3)と、を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトトランジスタ。
【請求項3】
前記基板(4)は、ケイ素、窒化ホウ素及びヒ化ガリウムのうちのいずれかであり、
前記誘電性中間層は、二酸化ケイ素、フッ化リチウム、アルミナ及び酸化ハフニウムのうちのいずれか、あるいは、二酸化ケイ素、フッ化リチウム、アルミナ及び酸化ハフニウムの混合物である
ことを特徴とする請求項に記載のフォトトランジスタ。
【請求項4】
前記量子ドットは、CdSe、CdS、PbSe、ZnO、ZnS、CZTS、Cu2S、Bi2S3、Ag2S、HgTe、CdHgTe、InAs、及びInSbのうちの1つまたは複数である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフォトトランジスタ。
【請求項5】
前記炭素系伝導層(2)は、長方形、ナノコンストリクション、ホールバーまたはリボンの形態に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフォトトランジスタ。
【請求項6】
前記コロイド状量子ドットの層(1)は、共役ポリマーまたは染料を更に備える
請求項1乃至5のいずれかに記載のフォトトランジスタ。
【請求項7】
前記コロイド状量子ドットの層(1)に接触する上部電極
を更に備える請求項1乃至6のいずれかに記載のフォトトランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電子プラットフォームに関する。特に、プラットフォームの光導電性の増幅の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトダイオード(短波長赤外線のためのインジウムガリウムヒ化物、及び、可視光並びに近赤外線のためのケイ素)は、高い感度を示す。しかしながら、これらは、読み取りノイズによって制限され、これらの量子効率は、単一に制限される(すなわち、吸収された光子毎に1つのキャリア)。フォトダイオードにおける光導電性の増幅の欠如の観点において、APDs(アバランシェ・フォトダイオード)が、キャリア増幅効果を介して増幅を提供するべく発展されてきた。これらのデバイスの増幅は、吸収された光子毎に、100乃至1000のオーダーのキャリアである。これらの構造を汎用的なイメージセンサ及び低コストの検出素子に一体化させる技術的試みは、高操作バイアスが要求され(ボルトで100のオーダー)、漏洩電流を抑制するため及び高適用バイアスによる劣化から装置寿命を延長するための追加層が要求される。さらに、これらの装置は、APDsのために要求される異なる成長過程により、CMOS電子回路にモノリシックに一体化可能ではない。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、炭素系伝導層と、当該炭素系伝導層の上面上の、光を吸収するためのコロイド状量子ドットの層と、を備えたフォトトランジスタを提供することによって、従来技術の問題を克服する。当該プラットフォームは、有利には、基板と、当該基板と前記炭素系伝導層との間の酸化中間層と、を備える。前記炭素系伝導層は、好ましくは、グラフェンからなる。前記基板は、窒化ホウ素またはヒ化ガリウムのうちのいずれかであり得て、前記酸化中間層は、二酸化ケイ素、フッ化リチウム、アルミナ及び酸化ハフニウムのうちのいずれか、あるいは、二酸化ケイ素、フッ化リチウム、アルミナ及び酸化ハフニウムの混合物であり得る。前記量子ドットは、以下の物質:CdSe、CdS、PbSe、ZnO、ZnS、CZTS、Cu2S、Bi2S3、Ag2S、HgTe、CdHgTe、InAs、及びInSb、のうちの1つまたは複数であり得る。前記炭素系伝導層は、長方形、ナノコンストリクション、ホールバーまたはリボンのいずれかの形態に形成され得る。また、本発明は、ソース電極とドレイン電極とを有するトランジスタと、そのようなプラットフォームと、を備えており、選択的に、前記量子ドット層に接触する上部電極を、更に備える。
【図面の簡単な説明】
【0004】
説明を完全にするため、及び、本発明のより良い理解を提供するために、図面が提供される。当該図面は、本発明の好ましい実施の形態を示しており、発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、どのように本発明が具現化され得るかの単なる一例として解釈されるべきである。当該図面は、以下の図からなる。
図1】本発明の第1の実施の形態を示す。
図2】どのようにホールが量子ドット層から炭素系伝導層へ運ばれ、空乏層を形成するかを示す。
図3】本発明の作用原理の概略である。
図4】グラフェンの経路での光導電性の増幅のグラフである。
図5】本発明の装置のスペクトル反応を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、一体化されたCMOSと互換可能のフォトトランジスタであり、コロイド状量子ドット(CQDs)に反応されるようにした炭素系層(例えば、グラフェン)から構成されている。炭素系層は、キャリア運搬経路として用いられており、CQDsは、吸収物質として採用されている。図1に示されるように、フォトトランジスタに適用される時、グラフェン層(2)は、フォトトランジスタのゲートを形成するためにSiO2中間層(3)と共にシリコン基板(4)上に載置(成膜)されており、2つの電極が、FETトランジスタにおけるソース及びドレイン電極へのデバイスの金属接点を相似に形成するために、横の位置でグラフェンに接続されている(Vs,Vd)。グラフェンは、そのバンドギャップがQDs(CdSe:400−650nm,PbS:650−2000nm,HgTe:1500nm−4000nm)のサイズ及び材料に応じて調整され得るCQDs(1)の層で上塗りされている。
【0006】
基本的なメカニズムの説明のために、我々はPbS QDsの場合に焦点を合わせるが、これは一般的に他のQD材料にも適用され得る。グラフェンとQD層との境界面には、PbS QDsのドーピングにより形成された、組み込みの電界(field)がある。PbS QDsからのホールが、グラフェンへ運ばれ、図2に示されるように、PbSフィルム及び組み込みフィルムにおける空乏層を形成する。入射する(incident)光子は、量子ドット内において電子ホールのペアを生成する。グラフェン層へのQDsのバンド整合(alignment)のために、シングルタイプのキャリア(電子)が、グラフェン層に運ばれ、グラフェンを介してソースからドレインへの電界の印加によって促進された金属接点に至る。ホールは、PbS層内に捕捉されたままであり、それらのキャリア寿命を延長する。グラフェン層内の光発生電子(photogenerated electrons)がドレイン接触部に到達する時、他の電子が、電荷維持を提供するためにソースによって再注入される(図3)。従って、一つの吸収された光子のために、一つの電気キャリアが、再結合する前に、デバイス内を再循環される。グラフェン−QD層で形成されるヘテロ接合は、再結合を抑制し、従って、キャリアの数は、グラフェン経路内の電子の運搬時間に対するキャリアの寿命の比によって与えられる。グラフェン経路によって提供される非常に高いキャリア移動性によれば、106のオーダーの光導電性の増幅が、本発明において観察された(図4)。グラフェンの高い移動性の観点で、デバイスは、ソース−ドレインにおいて非常に低い印加電界、数μV乃至数ボルトを要求し、当該増幅は、印加電圧に対して線形に調整され得る。この現象(光ゲート効果とも呼ばれる)は、光学的に制御されたゲートとして機能するQD層内においてキャリアを生成するために入射光が用いられるグラフェン層の頂部ゲートを有することと等しい。
【0007】
提案された装置は、ゲートの電位、したがってグラフェン経路の導電性を制御することによって、フォトトランジスタとして作動され得る。そこからの暗電流は、グラフェン層(グラフェンがバンドギャップを有する場合)の暗伝導率(暗伝導度)を切るためにゲートに電位をかけることによって最小化され得る。追加的なゲートが、CQD層内の電極を制御するためにCQD層の上面上に配置され得る。このゲートは、入射光を十分に吸収するために採用されるCQDフィルムの厚い層を十分に激減させるために採用され得る。追加的なゲートの使用は、デバイスのリセット及び一時的な応答を制御するように延ばされ得る。つまり、ゲートVg2の高逆バイアス信号パルスは、電界の方向を切り替えることができ、再結合を誘導するために、QD層内に捕捉された光発生ホールをグラフェン内に駆動するか、グラフェンからの光発生電子をQD層内に駆動することができる。
【0008】
デバイスのスペクトル応答が図5に示されている。グラフェンのスペクトル感度は、QD被覆層における光子の吸収によって決定され、感作物質の適切な選択によって調整され得る。
【0009】
デバイスは、溶液からQDs層を回転成形またはスプレー成形することによって製造され得る。量子ドットは、表面からオレイン酸を取り除き、量子ドットを架橋結合する二座配位子で置き換え、それらを導電性の固体の状態にするための配位子交換処理を受ける。そのような配位子は、エタンジチオール、エチレンジアミン、ヒドラジン、エタンチオール、プロパンチオール、ギ酸、シュウ酸、酢酸、または、SnS4、PbBr2、Pbl2、PbCl2のような無機成分、であり得る。二座配位子の分子は、QDsをグラフェン層に電気的に結合するためにも採用される。そのような二座配位子は、エタンジチオール、エチレン、ジアミン、ベンゼンジチオール、ヒドラジンを含む。QD層の全体の厚さは、入射光を十分に吸収するために数nm乃至数百nmまで調整され得る。
【0010】
炭素系層は、カーボンナノチューブ(CNT)またはパターン化されたグラフェンまたは酸化還元グラフェン層であり得る。CNTは、CVDによって成長され得て、基板に転写され得る。単層または多層のグラフェンは、CVDや溶液処理によって成長され、基板へ転写されるか、または、グラフェンは、削られて基板に転写される。炭素系伝導体のパターニングは、化学的なまたはプラズマエッチングのような、または熱活性型ナノ粒子、イオンビーム、走査プローブリソグラフィー、またはレイヤーバイレイヤーリムーバル(Layer by layer removal)のような広範囲の技術によってなされ得る。グラフェンをナノリボンとするための代替的な方法は、ナノチューブのジップオープン(zip open)である。
【0011】
QDsは、CdSe、CdS、PbSe、ZnO、ZnS、CZTS、Cu2S、Bi2S3、Ag2S、HgTe、CdHgTe、InAs、InSb、等であり得る(これらに限定されない)。
【0012】
QD半導体材料は、P型、N型または真性であり得る。感光性の半導体材料は、グラフェン上に、回転成形、スプレー成形、ドロップキャスティング、または蒸着されたグラフェンに載置された共役ポリマーまたは染料であり得る。
【0013】
炭素系伝導体は、長方形、ナノコンストリクション、ホールバーまたはリボン(数nmの幅のみの小片)のような特定の幾何形状にパターン化される。炭素系層がグラフェンから構成されるとき、それは、グラフェンの単一の層または複数の層で形成され得る。グラフェン層は、炭素系層内のバンドギャップを開くように変更され得る。これは、デバイスの暗電流を減少させること、及び、トランジスタの経路を電気的に切ることを、許容する。さらに、デバイスの暗電流を減少させるための、及び、単一の光子の検出を許容するための変更は、暗電流を減少させ単一の光子の検出を可能にするクーロンブロッケード現象を提供し得る、炭素系経路のナノコンストリクションの形成を含む。
【0014】
基板層は、ケイ素、窒化ホウ素、ヒ化ガリウム等であり得て、誘電性中間層は、二酸化ケイ素、フッ化リチウム、アルミナ、酸化ハフニウム等のような酸化物であり得る。
【0015】
本発明は、とりわけ、デジタルカメラ、リモートセンシング、暗視装置、単一の光子の検出等のためのイメージセンサ、低出力レベルでの伝送及び検出のための光学的通信、及び、超低出力検出のための光学装置において、応用を発見し得る。
【0016】
この文章において、「comprise(備える)」及びその派生(comprisingのような)の文言は、除外する意味に解釈されるべきではなく、つまり、これらの文言は、説明及び規定されたものが他の要素を更に含み得ることの可能性を、除外するものとして解釈されるべきではない。
【0017】
他方で、本発明は、ここで説明された特定の実施の形態に限定されないことが明らかであるだけでなく、請求項において規定された発明の一般的な範囲内で、当該技術分野の当業者によって考慮され得る変形を含む(例えば、材料、寸法、要素、形状等の選択に関して)。
図1
図2
図3
図4
図5