特許第6021917号(P6021917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6021917導管をポートへと取り付けるための再使用可能なフィッティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021917
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】導管をポートへと取り付けるための再使用可能なフィッティング
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/60 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
   G01N30/60 P
【請求項の数】21
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-527283(P2014-527283)
(86)(22)【出願日】2012年8月23日
(65)【公表番号】特表2014-526054(P2014-526054A)
(43)【公表日】2014年10月2日
(86)【国際出願番号】US2012051981
(87)【国際公開番号】WO2013032835
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年8月17日
(31)【優先権主張番号】61/527,638
(32)【優先日】2011年8月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/527,639
(32)【優先日】2011年8月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/527,747
(32)【優先日】2011年8月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/527,648
(32)【優先日】2011年8月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/621,852
(32)【優先日】2012年4月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509131764
【氏名又は名称】ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミチエンジ,ジョージフ・ディー
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−170490(JP,A)
【文献】 特開平09−317971(JP,A)
【文献】 実公昭54−033135(JP,Y2)
【文献】 実開平02−141793(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0189390(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0224543(US,A1)
【文献】 米国特許第05163722(US,A)
【文献】 米国特許第05595406(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導管をポートへと取り付けるための再使用可能なフィッティングであって、
近位端にフェルール部を備えているハウジングと、
ハウジングに物理的に連絡したばねと、
ばねとハウジングとの間に配置され、ハウジングのフェルール部に対して遠位である導管の遠位部とハウジングのフェルール部に対して近位である導管の近位に固定された保持部とを受け入れ導管の遠位方向への軸方向移動を制限する開口を有するとともに、導管の保持部を通すための中心から外れた開口を定めている保持具と、
ばねと連絡してばねを保持具へと押し付けることによって導管を近位方向に押すキャップと
を備える、フィッティング。
【請求項2】
フェルール部が、導管を受け入れるための通路を定める穴を有している、請求項1に記載のフィッティング。
【請求項3】
ハウジングの遠位端が、フェルール部の穴よりも大きい幅を有するチャンバを定めている、請求項2に記載のフィッティング。
【請求項4】
チャンバの少なくとも一部分が、雌のねじ山を有している、請求項3に記載のフィッティング。
【請求項5】
フェルール部が、ポリエーテルエーテルケトンで形成されている、請求項1に記載のフィッティング。
【請求項6】
ハウジングが、ポリマーまたは鋼で形成されている、請求項1に記載のフィッティング。
【請求項7】
ハウジングの外面が、ポートへの取り付けのためのねじ山を有している、請求項1に記載のフィッティング。
【請求項8】
保持部が、導管の近位部に配置されたスリーブを備えている、請求項1に記載のフィッティング。
【請求項9】
スリーブが鋼で形成されている、請求項8に記載のフィッティング。
【請求項10】
保持具が、保持具の遠位端にばねとの係合のための内面を有しており、
保持具が、保持具の近位端に位置する2つの内面によって定められるスロットを有しており、
スロットの一部分が、導管を受け入れるためのハウジングのフェルール部によって定められる通路に位置合わせされている、請求項1に記載のフィッティング。
【請求項11】
2つの内面が、外周を有する第1の内面と、外周を有する第2の内面とを含んでおり、第1の内面の外周が、第2の内面の外周よりも大きく、第1の内面が、導管の保持部を受け入れ、第2の内面が、導管の保持部を妨げることによって遠位方向への導管の軸方向移動を制限する、請求項10に記載のフィッティング。
【請求項12】
保持具の近位端のスロットが、第1および第2の内面に関する径方向の延長である中心から外れた開口をさらに備え、中心から外れた開口は、導管の保持部の通過を許す、請求項10に記載のフィッティング。
【請求項13】
キャップが、導管を受け入れるための穴と、ばねとの係合のための空洞を定める内面とを有しており、穴が、ハウジングのフェルール部によって定められる通路に位置合わせされている、請求項2に記載のフィッティング。
【請求項14】
キャップの表面が、チャンバの雌のねじ山を有している部分と係合してハウジングへのキャップの締め込みを可能にするねじ山を有している、請求項4に記載のフィッティング。
【請求項15】
流体をやり取りするための導管と、
導管に流体連通したポートと、
導管をポートへと取り付けるためのフィッティングと
を備えており、
フィッティングが、
近位端にフェルール部を有しているハウジングと、
ハウジングに物理的に連絡したばねと、
ばねとハウジングとの間に配置され、ハウジングのフェルール部に対して遠位である導管の遠位部を受け入れ、ハウジングのフェルール部に対して近位である導管の近位に固定された保持部と物理的に連絡して、導管の遠位方向への軸方向移動を制限する開口を有するとともに、導管の保持部を通すための中心から外れた開口を定めている保持具と、
保持具によって導管が近位方向に押されるよう、ばねと物理的に連絡してばねを保持具へと押し付けるキャップと
を備える、液体クロマトグラフィ装置。
【請求項16】
ハウジングの外面が、ポートへの取り付けのためのねじ山を有している、請求項15に記載の液体クロマトグラフィ装置。
【請求項17】
フェルール部が、ポリエーテルエーテルケトンで形成されている、請求項15に記載の液体クロマトグラフィ装置。
【請求項18】
ハウジングが、ポリマーまたは鋼で形成されている、請求項15に記載の液体クロマトグラフィ装置。
【請求項19】
保持部が、導管の近位部に配置されたスリーブを備えている、請求項15に記載の液体クロマトグラフィ装置。
【請求項20】
スリーブが鋼からなる、請求項19に記載の液体クロマトグラフィ装置。
【請求項21】
導管をポートへと取り付けるための再使用可能なフィッティングを形成するように組み立てることができる構成部品を有しているキットであって、
再使用可能なフィッティングが、
近位端にフェルール部を有しているハウジングと、
ハウジングに物理的に連絡したばねと、
ばねとハウジングとの間に配置され、ハウジングのフェルール部に対して遠位である導管の遠位部を受け入れ、ハウジングのフェルール部に対して近位である導管の近位に固定された保持部と物理的に連絡して、導管の遠位方向への軸方向移動を制限する開口を有するとともに、導管の保持部を通すための中心から外れた開口を定めている保持具と、
保持具によって導管が近位方向に押されるよう、ばねと物理的に連絡してばねを保持具へと押し付けるキャップと
を備える、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年8月26日に出願された「Reusable Fitting for Attaching a Conduit to a Port」という名称の米国特許仮出願第61/527,638号、2011年8月26日に出願された「Chromatography Apparatus with Diffusion−Bonded Coupler」という名称の米国特許仮出願第61/527,639号、2011年8月26日に出願された「Liquid−Chromatography Conduit Assemblies Having High−Pressure Seals」という名称の米国特許仮出願第61/527,747号、2011年8月26日に出願された「Electrospray Assembly for a Microfluidic Chromatography Apparatus」という名称の米国特許仮出願第61/527,648号、および2012年4月9日に出願された「Chromatography Column Assembly」という名称の米国特許仮出願第61/621,852号の先行の出願日の優先権を主張し、これらの出願の全体が、ここでの言及によって本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、広くには、導管をポートへと取り付けるための再使用可能なフィッティングに関する。より詳しくは、本発明のいくつかの実施の形態は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)システムなどの高圧流体システムにおいて使用するための着脱式かつ交換可能なフィッティングに関する。
【背景技術】
【0003】
毛管HPLCシステムは、典型的には、毛管を金属製またはプラスチック製の流体ポートへと接続するための鋼製のフェルールであって、流体を漏らさないシールをもたらし、かつ毛管とポート内に埋め込まれた導管との間の空き容積が実質的にゼロであるフェルールを必要とする。そのような接続において、毛管は、鋼製のフェルールと圧縮ナットとを有するフィッティングに保持される。圧縮ナットが、フィッティングによって毛管が把持され、毛管が押されてポートに埋め込まれた導管の入り口または出口に直接接触して押し込まれるように、フェルールを押し込む。ひとたび接続がなされると、鋼製のフェルールは毛管へと恒久的に固定され、したがって特定のポートにしか使用することができない。フィッティングが別のポートへと移される場合、通常は、わずかな製造公差でも、空き容積が生じる結果となり、あるいは損傷および/または鋼製のフェルールの不適切な着座を引き起こしかねない妨害につながる。さらに、鋼製のフェルールが毛管へと恒久的に取り付けられるがゆえに、使用中にフィッティングの一部分が損傷した場合に、フィッティングのいかなる部分も単純な取り外しまたは交換が不可能であるため、フィッティング全体が廃棄され、新たなフィッティングが設置される。
【0004】
本技術分野で公知のとおり、ポリテトラフルオロエチレン製のフェルールおよび高性能ポリエーテルエーテルケトン製のフィッティングなど、HPLCシステムにおいて使用するための非着脱式、再使用不可能、かつ交換不可能な鋼製のフェルールの代案が存在する。しかしながら、ポリテトラフルオロエチレン製のフェルールは、数千ポンド/平方インチ(psi)未満の圧力に限られ、高性能ポリエーテルエーテルケトン製のフィッティングは、ポリエーテルエーテルケトン製のシールコーンが継続的な使用によって損傷する可能性があるため、再使用が制限される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、導管をポートへと取り付けるための再使用可能なフィッティングを特徴とする。再使用可能なフィッティングが、ハウジングと、ばねと、保持具と、キャップとを備える。ハウジングは、ハウジングの近位端にフェルール部を備える。ばねが、ハウジングに物理的に連絡する。保持具が、ばねとハウジングとの間に配置される。保持具は、導管の遠位部と導管の近位端に固定された保持部とを受け入れ導管の遠位方向への軸方向移動を制限する開口を有する。保持具は、導管の保持部を通すための中心から外れた開口を定めている。キャップが、ばねと連絡してばねを保持具へと押し付けることによって導管を近位方向に押す。
【0006】
別の態様において、本発明は、流体をやり取りするための導管と、導管に流体連通したポートと、導管をポートへと取り付けるためのフィッティングとを備える液体クロマトグラフィ装置を特徴とする。フィッティングが、近位端にフェルール部を有しているハウジングと、ハウジングに物理的に連絡したばねとを備える。さらにフィッティングは、保持具およびキャップを備える。保持具は、ばねとハウジングとの間に配置される。保持具は、導管の遠位部を受け入れる開口を有し、導管の近位端に固定された保持部と物理的に連絡して、導管の遠位方向への軸方向移動を制限する。保持具は、導管の保持部を通すための中心から外れた開口を定めている。キャップが、保持具によって導管が近位方向に押されるよう、ばねと物理的に連絡してばねを保持具へと押し付ける。
【0007】
さらに別の態様において、本発明は、導管をポートへと取り付けるための再使用可能なフィッティングを形成するように組み立てることができる構成部品を有しているキットを特徴とする。再使用可能なフィッティングが、近位端にフェルール部を有しているハウジングを備える。さらに、再使用可能なフィッティングは、ハウジングに物理的に連絡したばねと、ばねとハウジングとの間に配置された保持具と、キャップとを備える。保持具は、導管の遠位部を受け入れる開口を有し、導管の近位端に固定された保持部と物理的に連絡して、導管の遠位方向への軸方向移動を制限する。保持具は、導管の保持部を通すための中心から外れた開口を定めている。キャップが、保持具によって導管が近位方向に押されるよう、ばねと物理的に連絡してばねを保持具へと押し付ける。
【0008】
本発明の上述の利点およびさらなる利点を、以下の説明を添付の図面と併せて参照することによって、よりよく理解することができる。添付の図面においては、種々の図において、類似の参照番号は類似の構成要素および特徴を指し示している。分かりやすくするために、すべての図のすべての構成要素に標記がなされているわけではない。図面は必ずしも比例尺でなく、本発明の原理の説明に重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明による再使用可能なフィッティングの実施の形態の概略図である。
図2】本発明による再使用可能なフィッティングの実施の形態の断面図である。
図3図2の再使用可能なフィッティングのためのハウジングの断面図である。
図4A図2の再使用可能なフィッティングのための保持具の側面断面図である。
図4B図4Aに示した保持具の端面図である。
図5図2の再使用可能なフィッティングのためのキャップの断面図である。
図6A】切り離された状態にある本発明による液体クロマトグラフィ装置の実施の形態の一部分の断面図である。
図6B図6Aに示した液体クロマトグラフィ装置の一部分について、接続された状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書における「一実施の形態」または「実施の形態」への言及は、その実施の形態に関連して説明される細部、部分、構造、または特徴が、本教示の少なくとも1つの実施の形態に含まれることを意味する。本明細書における特定の実施の形態への言及は、必ずしもすべてが同じ実施の形態に言及しているわけではない。
【0011】
次に、本教示を、添付の図面に示されるとおりの本教示の典型的な実施の形態を参照してさらに詳しく説明する。本教示を、種々の実施の形態および実施例に関して説明するが、本教示がそのような実施の形態に限られるわけではない。むしろ、本教示は、当業者であれば理解できるであろう種々の代案、変更、および均等物を包含する。当業者であれば、本明細書の教示を利用して、本明細書に記載されるとおりの本開示の技術的範囲に包含されるさらなる実施例、変更、および実施の形態、ならびに他の利用分野を、理解できるであろう。
【0012】
用語「実質的に」は、本明細書において使用されるとき、変動しても関連の基本的機能に変化を引き起こすことがないと考えられるあらゆる定量的表現を修飾するために適用可能である。
【0013】
用語「毛管」は、本明細書において使用されるとき、約300μm以下の内径を有する管を指す。文脈に応じて、用語「毛管」および「導管」は、本明細書において入れ換え可能に使用される。
【0014】
用語「保持部」は、本明細書において使用されるとき、導管上に作成または構成され、フィッティングに保持されたときの導管の軸方向の移動を制限するものを指す。
【0015】
簡単に要約すると、本発明は、1つには、ポリエーテルエーテルケトンなどで形成されたフェルールを備えるフィッティングであって、導管をフィッティングに解除可能に固定することができる保持具を備えるフィッティングに関する。このフィッティングは、いくつかの実施の形態においては20,000psiを超えるかもしれない高い圧力の2つの流体の導管の接合部に、流体を漏らさないシールをもたらすとともに、そのような接合部における空き容積が実質的にゼロである。このフィッティングは、着脱可能、再使用可能、かつ交換可能であり、フェルールを特定の毛管(したがって、特定のポート)に恒久的に拘束することなく、流体ポートへの毛管の接続および再接続をユーザにとって可能にする。このフィッティングは、使用中にフィッティングの一部またはすべてが損傷した場合に、交換が可能である。
【0016】
図1が、フェルール部14を有するハウジング12と、保持具16とを備える再使用可能なフィッティング10の概略図である。フェルール部14は、導管18を受け入れるための通路を定めている穴を有しており、金属製またはプラスチック製のポートの雌の受け部に収容されるように構成されている。フェルール部14は、例えばポリエーテルエーテルケトンまたはポリエーテルエーテルケトン類のポリマーで形成されている。フェルール部14は、図示のようにハウジング12と一体であってよく、あるいは別の部品であってよい。
【0017】
導管18が、フィッティング10に保持され、ポートに埋め込まれた導管の入り口または出口と対合するように受け部へと押し込まれる。圧縮を、ねじ込みによる圧縮力、ばね力、締め付け力、またはこれらの力のうちの1つ以上の組み合わせなど、フェルール部14へと加えられる一方で、後に導管18を損傷させることなくフェルール部14から取り外すことができる任意の適切な力を使用して、達成することができる。換言すると、フェルール部14は、圧縮によって導管へと恒久的に取り付けられるわけではない。
【0018】
用語「保持具」は、本明細書において使用されるとき、導管18のフィッティングへの固定またはフィッティングからの解放を可能にする構造を有しているものを意味する。保持具16は、ハウジング12の一部分であってよく、あるいはハウジングの内側または外側に配置される別途の部品であってよい。保持具16は、導管18を受け入れるためのフェルール部14によって定められた通路に位置合わせされた開口を有している。保持具16は、1つ以上のロック領域20または機構を備えている。例えば、ロック領域20は、1つ以上のフック、バンド、スロット、溝、ピン、フランジ、または同様部分を使用することができる。ロック領域20は、導管18の保持部22をロック領域へと結合させることによって、導管18を固定することができる。さらに、構造20は、保持部22がロック領域20によってもたらされる妨げを迂回できるようにすることによって、導管18を解放することができる。種々の実施の形態において、導管18に結合される保持部22は、導管18の一部分に配置される鋼製の鞘、導管18の表面にコートされた材料、あるいは導管18上に構成または形作られ、ロック領域20と連係することによってフィッティング10における導管18の軸方向の移動を制限することができるものである。
【0019】
図2が、本発明による再使用可能なフィッティング30の一実施の形態の断面図である。フィッティング30は、ハウジング32と、ばね34と、保持具36と、キャップ38とを備えている。ハウジング32が、図3に別途図示されており、近位端のフェルール部40と、遠位端にチャンバ43を定めている内面42と備えている。ハウジングは、任意の適切な形状を有することができ、例えば図示のハウジング32は円形の断面を有するが、他の多角形の断面形状も可能である。ハウジング32は、ポリマー材料または金属材料などの任意の適切な材料から作られている。一部品からなるハウジング32として図示されているが、いくつかの別の実施の形態においては、ハウジングが2つ以上の部品を含む。他の実施の形態においては、フェルール部40が、ハウジング32の残りの部分とは別の部品であってよい。図示のフェルール部40は、導管を受け入れるための通路を定める穴44を有している。いくつかの実施の形態においては、穴44の内径が、約300μm以下である。チャンバ43の幅(または、直径)は、穴44の幅(または、直径)よりも大きい。フェルール部40の形状およびサイズが、フェルール部40をポートへと締め付けることができるように、ポートの雌の受け部に適合するように構成されている。フェルール部40は、ポリエーテルエーテルケトンで形成され、あるいはポリエーテルエーテルケトン類のポリマーなどの同様の材料で形成されるが、他の実施の形態においては、フェルール部40を、グラファイトまたはポリイミドなどの他の材料で構成してもよい。
【0020】
図2および図3の両方を参照すると、ばね34が、ハウジング32のチャンバ43に配置されている。保持具36が、チャンバ43の内側においてフェルール部40に最も近い端部に配置されている。ハウジング32は、キャップ38のねじ山付きの表面と係合するねじ山付きの内面45と、ポートへと取り付けられるように構成されたフェルール部40の付近のねじ山付きの外面47とを有している。ばね34は、チャンバ43において保持具36とキャップ38との間に配置されている。例として、ばね34は、ばね34が保持具36とキャップ38との間で圧縮された状態にあるときに、保持具36をハウジング32のチャンバ43内で所定の位置に保つための力が加えられるよう、つる巻きばね(図示のとおり)、板ばね、圧縮可能な弾性ワッシャ、圧縮可能な材料で形成された中空シリンダ、などであってよい。したがって、保持具36が、導管18を近位方向(すなわち、図における左方)に押し付ける。
【0021】
いくつかの好ましい実施の形態においては、保持部が、導管18の近位部に配置されたスリーブ46を備える。スリーブ46が、保持具36の構造に係合し、遠位方向(すなわち、図における右方)への導管18の軸方向の移動を制限する。
【0022】
一実施の形態においては、ハウジング32が、図2に示されているようなフェルール部40を備えない。代わりに、交換式のキャップが、導管またはスリーブの近位部の端部に設けられる。例として、キャップを、ポリエーテルエーテルケトン類のポリマーから製造することができ、導管またはスリーブの端部に保持されるように形作ることができる。導管をポートへと接続すべくフィッティングが受け部に押し付けられるとき、ばねの圧縮によって、導管の端面に面シールをもたらすための充分な軸方向の力が加えられる。別の代案の実施の形態においては、交換式のガスケットが、受け部において導管の端面をポートへとシールするために、キャップの代わりに使用される。フィッティングを受け部へと再び取り付ける場合や、別の受け部のポートへと固定する場合に、キャップまたはガスケットを取り除き、随意により別のキャップまたはガスケットと交換することができる。
【0023】
図4Aが、図2の再使用可能なフィッティング30のための保持具36の側面断面図であり、図4Bが、図4Aの左方から右方への方向に見た保持具36の端面図である。保持具36は、ばね34の一端を受け止めるための内面50を一端に備え、導管を受け入れるためのハウジングのフェルール部の通路に位置合わせされたスロット52を他端に備えている。スロット52は、外周を有する第1の内面54と、第1の内面54の外周よりも小さい外周を有する第2の内面56とを備えている。ロック領域が、内面54および56の組み合わせによって定められている。第1の内面54が、導管に位置するスリーブ(保持部)を受け入れるために充分な開口を定める一方で、第2の内面56は、スリーブを受け入れることはできないが、依然として導管を通すことができる程度には十分なより小さな外周を有している。
【0024】
解放領域が、スロット52の一端の中心から外れた開口58によって定められている。中心から外れた開口58は、両方の内面54および56の径方向の延長であり、スリーブを含む導管の近位部が、第2の内面56によって定められるロック領域が呈する妨げを迂回することによって保持具36を通過できるようにする。導管およびスリーブが保持具36の中心に向かって(すなわち、軸57に向かって)径方向に移動させられたとき、ひとたびスリーブが第2の内面56によって定められる狭い開口に遭遇すると、遠位方向への軸方向の移動が防止される。
【0025】
軸57から最も遠いスロット52の端部に位置する大径の開口によって、ユーザは、保持部46を保持具36に通すことができ、次いで保持部46および導管18を軸57に沿って位置するように戻すことで、保持部46および導管18をフィッティング30に固定することができる。後に、保持部46および導管18を、損傷を被ることなく遠位方向にフィッティング30から取り外すことができる。フィッティング30を、同じポートにおいて別の導管とともに再使用することができ、あるいは導管を別のポートに接続するために使用することができる。他の実施の形態においては、他の形状およびサイズのスロットを、保持部46および導管18をフィッティングに固定するために使用することができる。
【0026】
図5が、図2の再使用可能なフィッティング30のためのキャップ38の断面図を示している。キャップ38は、図3のハウジング32のフェルール部40によって定められる通路に位置合わせする穴58と、ばねとの係合のための空洞を定めている近位端の内面60とを有している。キャップ38の外面は、図3のハウジング32のチャンバ43に位置する相手方のねじ山45と係合するねじ山64を備えている。再び図2を参照すると、キャップ38が、ばね34を保持具36へと押し付ける回転によってハウジング32へと締め付けられる。結果として、保持具36が、フェルール部40を流体ポートに押し付けて密封する。
【0027】
本発明の一実施の形態においては、図2のフィッティング30などの再使用可能なフィッティングの構成部品が、キットとして提供される。構成部品を組み合わせ、導管をポートへと取り付けるための再使用可能なフィッティングを形成することができる。
【0028】
図6Aおよび図6Bは、それぞれ切り離された状態および接続された状態にある本発明の一実施の形態による液体クロマトグラフィ装置70の一部分の断面図である。図示の部分70は、流体の連絡のための導管72と、導管74との連通のためのポート74と、フィッティング76とを含んでいる。例えば、導管72およびフィッティング76は、図2に示した導管18およびフィッティング30と同様であってよい。ポート74は、流体入り口ポートまたは流体出口ポートであってよく、例えばポンプの出力ポート、カラムの入力ポート、サンプル注入ポート、バルブのポート、または分流ティーのポートであってよい。例えば、ポート74を、金属またはプラスチックから製造することができる。フィッティング76は、フェルール部78を備え、フェルール部78は、フェルール部78をポート74へと締め付けることができるようにポート74の雌の受け部80に適合する形状およびサイズを有している。
【0029】
これに限られない数値の例として、導管72は、約300μm以下の内径を有することができる。導管72の一部分が、典型的には、フィッティング76のフェルール部78を通って延びるスリーブ82の内側に配置される。
【0030】
フィッティング76のねじ山付きの部分84が、ポート74の雌の受け部80のねじ山付きの部分86と螺合する。ねじ山の螺合によるポート74への締め込みの際に、フィッティング76が、導管72を前方へとポート74に埋め込まれた導管88の入り口/出口に押し付ける。結果として、導管72は、保持具90をキャップ92に向かって後方へと押す。装置70は、2つの導管72および88の継ぎ目に流体を漏らさないシールをもたらすとともに、この継ぎ目における空き容積が実質的にゼロであり、20,000psiを超えることもある圧力に耐えることができる。
【0031】
いくつかの実施の形態においては、液体クロマトグラフィ装置が、例えばマサチューセッツ州MilfordのWaters Corporationから市販されているACQUITY UPLC(R)システムまたはnanoACQUITY UPLC(R)システムの一型式のHPLCシステムである。
【0032】
本明細書において説明した内容について、当業者であれば、特許請求の範囲に記載されるとおりの本発明の教示から外れることなく、修正、変更、および他の実施例に想到できるであろう。例えば、種々の実施の形態がコイルの形態のばねを備えているが、他の構造的形態のばねも考えられる。例えば、ばねは、波形ワッシャおよびエラストマ材料など、ばね定数または他の弾性を有する任意の構造または機構であってよい。したがって、本発明は、以上の例示の説明には限定されない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B