特許第6021925号(P6021925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6021925二酸化塩素によって引き起こされる劣化に対する抵抗性が増大したポリオレフィン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021925
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】二酸化塩素によって引き起こされる劣化に対する抵抗性が増大したポリオレフィン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/02 20060101AFI20161027BHJP
   C09K 15/08 20060101ALI20161027BHJP
   C09K 15/24 20060101ALI20161027BHJP
   C09K 15/30 20060101ALI20161027BHJP
   C08K 5/134 20060101ALI20161027BHJP
   C08K 5/24 20060101ALI20161027BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20161027BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   C08L23/02
   C09K15/08
   C09K15/24
   C09K15/30
   C08K5/134
   C08K5/24
   C08K5/3477
   C08K5/13
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-534968(P2014-534968)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公表番号】特表2014-534299(P2014-534299A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】EP2012005156
(87)【国際公開番号】WO2013091800
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年4月10日
(31)【優先権主張番号】11010092.2
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100180932
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】ヤルトベルグ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】コスタ,フランシス
(72)【発明者】
【氏名】オデールケルク,イェローン
(72)【発明者】
【氏名】ゲッデ,ウルフ ヴェー.
【審査官】 杉江 渉
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−084839(JP,A)
【文献】 米国特許第04532165(US,A)
【文献】 特開平01−090239(JP,A)
【文献】 特開2010−018659(JP,A)
【文献】 特開昭53−114852(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0257311(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリオレフィンベース樹脂(A)と、
b)トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート(Cyanox (登録商標) 1790)、1, 2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジド(Irganox (登録商標) MD1024)、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(Naugard (登録商標) 445)およびエチレンビス[3, 3-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブチレート](Hostanox (登録商標) O3)から成る群より選択される、少なくとも1種の抗酸化剤(B)と、
c)1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(Irganox (登録商標) 3114)である抗酸化剤(C)と、
d)式(I)
【化1】
[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は独立にHであり、またはヘテロ原子を含み得る、置換されていないもしくは置換されている脂肪族もしくは芳香族のヒドロカルビル基である]
で表される少なくとも1種の抗酸化剤(D)と
を含むポリオレフィン組成物であって、
70℃および6.8±0.1のpHにおける10 ppmの二酸化塩素を含有する水に対する抵抗性が、本明細書中に記載した二酸化塩素劣化試験により測定して210℃での初期酸素誘導時間の50%に到達するまでの時間(OIT(210℃),50%)として表して少なくとも450分である、上記ポリオレフィン組成物。
【請求項2】
抗酸化剤(B)を、ポリオレフィン組成物の総重量に基づいて、0.01 wt%から0.5 wt%までの量で含有する、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項3】
抗酸化剤(C)を、ポリオレフィン組成物の総重量に基づいて、0.01 wt%から0.5 wt%までの量で含有する、請求項1または2に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項4】
抗酸化剤(D)を、ポリオレフィン組成物の総重量に基づいて、0.01 wt%から0.2 wt%までの量で含有する、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項5】
ポリオレフィン組成物が、少なくとも500分のOIT(210℃),50%値を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物を含む物品。
【請求項7】
パイプ、取付部品または貯蔵容器である、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
パイプ、取付部品または貯蔵容器の製造のための、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリオレフィン組成物の使用。
【請求項9】
二酸化塩素含有水の輸送または貯蔵のための、請求項6または7に記載の物品の使用。
【請求項10】
二酸化塩素含有水と永久接触する、ポリオレフィン組成物から製造される物品の抵抗性を増大させるための、ポリオレフィンベース樹脂(A)を含むポリオレフィン組成物における少なくとも1種の各抗酸化剤(B)、(C)および(D)の組合せの使用であって、
前記抗酸化剤が、
(a)トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート(Cyanox (登録商標) 1790)、1, 2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジド(Irganox (登録商標) MD1024)、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(Naugard (登録商標) 445)およびエチレンビス[3, 3-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブチレート](Hostanox (登録商標) O3)から成る群より選択される、少なくとも1種の抗酸化剤(B)、
(b)1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(Irganox (登録商標) 3114)である抗酸化剤(C)、および
d)式(I)
【化2】
[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は独立にHであり、またはヘテロ原子を含み得る、置換されていないもしくは置換されている脂肪族もしくは芳香族のヒドロカルビル基である]
で表される少なくとも1種の抗酸化剤(D)
であり、70℃および6.8±0.1のpHにおける10 ppmの二酸化塩素を含有する水に対する前記ポリオレフィン組成物の抵抗性が、本明細書中に記載した二酸化塩素劣化試験により測定して210℃での初期酸素誘導時間の50%に到達するまでの時間(OIT(210℃),50%)として表して少なくとも450分である、上記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化塩素含有水によって引き起こされる劣化に対する抵抗性が増大したポリオレフィン組成物、およびこのようなポリオレフィン組成物から製造された物品に関する。本発明は、二酸化塩素含有水によって引き起こされる劣化に対する抵抗性が増大した物品の製造のためのポリオレフィン組成物の使用、および二酸化塩素含有水との接触によって引き起こされる劣化に対するポリオレフィン組成物の抵抗性を増大させるための特定的な種類の抗酸化剤の組合せの使用に更に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーの製造および加工における最近の進歩により、現代の日常生活に関する実質的にあらゆる面でプラスチックが応用されるようになった。ポリオレフィンは、その他の数多くの用途に加えて、飲料水分配システム用のパイプ、取付部品または貯蔵容器の作製のために使用されている。下記の開示では、パイプに与えられるすべての特徴および作用は、たとえ具体的に言及されていなくとも、取付部品および貯蔵容器にも与えられる。人間による消費を企図した飲料水の品質を確実に良好にするために、しばしば消毒が用いられる。消毒とは、病原性微生物の除去、不活性化または殺滅を意味する。
【0003】
しかしながら、ポリマー化合物は、酸化剤、光および熱の作用により老化しやすい。これは、強度、剛性および可撓性の損失等の寿命に関する損失、変色およびひっかき傷ならびに光沢の損失をもたらす。
【0004】
これらの作用を抗酸化剤および光安定剤により阻止または少なくとも低減できることは、当分野では周知である。数種類の添加剤が、加工中のポリマーの保護および所望の最終的使用特性の達成のためにポリマーに加えられる。添加剤は、一般に安定剤および改質剤にグループ分けされる。抗酸化剤のような慣例的および現在使用されている安定剤は、立体障害フェノール類、芳香族アミン、ヒンダードアミン安定剤、有機ホスファイト/有機ホスホナイトおよびチオエーテルを含む。しかしながら、安定剤の適切な組合せは、ポリマー物品が有するべき所望の最終的特性に応じて慎重に選択しなければならない。感染症の蔓延を阻止するために、水処理中に消毒剤として塩素が使用されることは公知である。塩素処理水の欠点の1つが、塩素と有機材料との塩素含有反応生成物が飲料水中に存在してしまうことである。前記反応生成物の幾つかは、健康上のリスクをもたらすと述べられている。
【0005】
ポリオレフィン等の数多くのポリマーを含めた大半の材料が、塩素処理水に影響され得ることも公知である。実験室内での圧力試験の結果および当分野での経験からは、水中の高濃度の塩素により、ポリオレフィンパイプ内に脆性破壊が早期に起き得ることが示された。
【0006】
飲料水システム用に有効な代替的消毒剤は、二酸化塩素(ClO2)である。二酸化塩素は塩素より強い酸化剤であり、ハロゲン化した副生成物を形成しない。二酸化塩素は水中で加水分解しないが、溶存ガスとして溶液中に残留する。ポリオレフィン樹脂は、二酸化塩素含有水中では、塩素含有水中より寿命が短くなることが示されている。したがって、耐塩素性ポリオレフィン樹脂は、二酸化塩素に対して抵抗性ではあり得ない。
【0007】
それにも関わらず、二酸化塩素含有水も同様にポリマー材料と永久的に接触している。ポリマー材料の内面への永久的な接触のため、ポリオレフィン組成物の変質が起きる。
【0008】
良好な抵抗性を塩素処理水に提供することが知られた、パイプ用のポリオレフィン組成物中に使用される抗酸化剤は、二酸化塩素含有水に対する満足な抵抗性を必ずしも提供しないことが見出された。したがって、ClO2含有水に対するより良好な保護を提供する、より効率的な抗酸化剤システムの必要性が依然としてある。このような抗酸化剤システムによれば、このような抗酸化剤を含有するポリオレフィン組成物から製造された物品、例えばパイプ、取付部品または貯蔵容器の寿命をより長くすることが可能になる。
【0009】
ポリオレフィン組成物中の抗酸化剤の存在に関する更なる重要な課題は、例えばこのようなポリオレフィン組成物から製造されたパイプ内に輸送される媒体の汚染を回避することである。これは、飲料水を輸送するパイプの場合は特に重要である。大まかに言えば、可能性としてパイプから輸送水の中に抽出され得る抗酸化剤の量を低下させるために、できるだけ低濃度の抗酸化剤を使用することが好ましい。これに関連して、更に、使用される抗酸化剤は、パイプから輸送水に抽出される傾向が低いことが望ましい。
【0010】
飲料水中の有害な化合物の許容量は法的要件により定められており、いわゆる「欧州許容基準」の導入を伴う、更により厳格な要件を予想すべきである。
【0011】
ポリオレフィン系材料に加えられる安定剤および改質剤の移動挙動は、ポリマーマトリックス中での分子の拡散速度、添加剤の化学的安定性、添加剤分解生成物の種類等のような、幾つかの相異なる特性に依存する。一例を挙げれば、特定の添加剤化合物は、改善された化学的安定性を有することにより、移動挙動に有益な作用を及ぼし得る。一方、その他のより不安定な添加剤化合物は、ポリマーマトリックス中に容易に拡散する化合物に分解することにより、移動挙動に有害な作用を及ぼし得る。更に、移動挙動の改善は、ポリマーマトリックスの安定化を犠牲にして得なければならないことを考慮しなければならない。したがって、低い移動傾向の添加剤組成物を提供することは簡単ではなく、むしろ適切な化合物の慎重な選択を必要とする。
【0012】
しかしながら、飲料水品質を更に改善するため、且つ近い将来に予想されるより厳格な法的要件を考慮して、高い熱安定性および化学的安定性のポリマー材料を提供することは依然として非常に評価されている。
【0013】
EP 1 911 798 A1は、ポリオレフィン(A)と、ジホスファイト構造を有する化合物(B)と、c)フェノール化合物(C)と、d)任意選択による紫外光安定剤(D)とを含む組成物を開示しており、ここで、移動する化合物(B)、化合物(C)および存在するならば化合物(D)、ならびにそれらの分解生成物の合計量は、この組成物中では特定のしきい値水準より低い。この組成物により、塩素処理されていない水を用いてEN-12873-1に従って室温(23℃)で浸出させた組成物試料と接触している水中への添加剤の移動の抑制が示される。
【0014】
EP 2 199 330 A1は、二酸化塩素含有水によって引き起こされる劣化に対して良好な抵抗性を有するのと同時に、使用された添加剤およびその分解生成物、特にフェノールの、組成物から外への移動が少ない、ポリオレフィン組成物に関する。このポリオレフィン組成物は、ポリオレフィンベース樹脂(A)と、クロマン-6-オール構造を有する抗酸化剤(B)と、フェノール型構造を有する抗酸化剤(C)とを含み、ここで、その分子全体はエステル基を備えておらず、ポリオレフィン組成物中での抗酸化剤(C)の濃度は、合計組成物に基づいて少なくとも1200 ppmである。これらの組成物は、ASTM F2263-03に従って90℃でClO2含有水に対する抵抗性を示し、EN-12873-1に従って室温(23℃)で水中へのフェノール移動の抑制が示される。
【0015】
EP 2 014 704 A1は、使用された添加剤およびその分解生成物、特にフェノールの、組成物から外への移動が少ないポリオレフィン組成物であり、したがって、この組成物は
、例えば飲料水用のパイプ用途に特に適している。このポリオレフィン組成物は、ポリオレフィン(A)、ビタミンE型安定剤(B)およびフェノール系安定剤(C)、ならびに任意選択による紫外線安定剤(D)を含む。
【0016】
EP 1 911 799 A1は、ClO2含有水によって引き起こされる劣化に対する抵抗性が増大したポリオレフィン組成物、およびこのようなポリオレフィン組成物から製造されたパイプに関し、ここで、ポリオレフィン組成物中に使用された抗酸化剤は、パイプ内に輸送される水により抽出されにくい。このポリオレフィン組成物は、ポリオレフィンベース樹脂および抗酸化剤を含み、ここで、前記ポリオレフィン組成物は、使用される設備がASTM F2263-03に従った、90℃且つ4 ppmのClO2濃度でのClO2含有水に対する抵抗性を測定する試験において、少なくとも200時間の寿命を有する。
【0017】
消毒剤として使用された塩素により劣化したパイプの場合、塩素との直接反応により抗酸化剤が消費されたことが観察された。二酸化塩素が消毒剤として使用されるとき、二酸化塩素は、パイプ用ポリマー材料に対して塩素よりはるかに攻撃的であることが見出された。抗酸化剤は、二酸化塩素により迅速に消費されて約1 mmの深さにまで減ってしまうことが見出された。これによりポリマーが未保護のままになってしまい、厚さ50〜200μmの層中で酸化が起きる。パイプ内の応力のため、劣化した材料から影響を受けない材料に遷移する間に微小クラックが生じ、クラック先端における化学的攻撃のため、クラックが材料中に伝播する。ポリマー表面が接触する水中の消毒剤の攻撃に対する保護として働くはずの抗酸化剤が、ポリオレフィン組成物から枯渇した後には、上記機構により、ポリマー材料の劣化時間が加速し得る。
【0018】
したがって、パイプ、取付部品または貯蔵用途に適した改善されたポリオレフィン組成物の必要性、特に、二酸化塩素含有水との接触中の安定性が改善されたポリオレフィン組成物の必要性が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】EP 1 911 798 A1
【特許文献2】EP 2 199 330 A1
【特許文献3】EP 2 014 704 A1
【特許文献4】EP 1 911 799 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、二酸化塩素に対する、特にその物品が二酸化塩素含有水と永久的に接触している(permanent contact)ときの抵抗性が増大したパイプ、取付部品または貯蔵容器等の物品のためのポリオレフィン組成物を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、ポリオレフィン組成物が数種類の抗酸化剤の特定の組合せを含むならば、本発明の目的を達成できるという発見に基づいている。
【0022】
したがって、本発明は、
a)ポリオレフィンベース樹脂(A)と、
b)本明細書中に記載した190℃でのOIT試験に従って測定して35分超の初期酸素誘導時間(OIT190℃)を有し且つ本明細書中に記載した二酸化塩素劣化試験において、OIT190℃(分)が曝露時間(分)の関数として記録された場合に、曲線の傾きが少なくとも-0.07である、少なくとも1種の抗酸化剤(B)と、
c)本明細書中に記載した190℃でのOIT試験に従って測定して35分以下の初期酸素誘導時間(OIT190℃)を有し且つ本明細書中に記載した二酸化塩素劣化試験において、OIT190℃(分)が曝露時間(分)の関数として分を記録された場合に、曲線の傾きが-0.07未満である、少なくとも1種の抗酸化剤(C)と
を含むポリオレフィン組成物であって、70℃且つ6.8±0.1のpHにおける10 ppmの二酸化塩素を含有する水に対する抵抗性が、本明細書中に記載した二酸化塩素劣化試験に従って測定して初期OITの50%に到達するまでの時間(OIT(190℃),50%)として表して少なくとも450分である、ポリオレフィン組成物に関する。
【0023】
驚くべきことに、比較的高い初期OIT190℃(後述するように190℃でのOIT試験に従って測定)を有するが、二酸化塩素含有水への曝露時間に伴うOIT190℃の低下(後述する劣化試験に従って測定)が比較的速い少なくとも1種の抗酸化剤(B)と、比較的低い初期OIT190℃(後述するように190℃でのOIT試験に従って測定)を有するが、二酸化塩素含有水への曝露時間に伴うOIT190℃の低下(後述する劣化試験に従って測定)が比較的緩やかな少なくとも1種の抗酸化剤(C)との組合せは、少なくとも1種の抗酸化剤(B)と少なくとも1種の抗酸化剤(C)との組合せを含む、二酸化塩素含有水に曝露されるポリオレフィン組成物および物品の全体的な安定性および抵抗性を著しく改善できることが今や見出された。したがって、このようなポリオレフィン組成物、および、この組成物から製造され、二酸化塩素含有水に永久的に接触しており、上述した少なくとも2種の抗酸化剤の組合せを含むポリオレフィン組成物を包含する物品の安定性は、顕著に延長される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明例のClO2曝露時間に対してプロットしたOIT210℃の結果を示している。
図2図2は、比較例のClO2曝露時間に対してプロットしたOIT210℃の結果を示している。
図3図3は、例E1から例E5および比較例CE1から比較例CE5の初期OIT210℃値を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
理論に拘束されはしないが、ClO2分子のラジカル攻撃に対する抗酸化剤の安定性に下記現象が影響すると考えられる。酸化反応は抗酸化剤のイオン化ポテンシャルに依存しており、ClO2のような酸化性種に対して安定な抗酸化剤を得るためには、このイオン化ポテンシャルはできるだけ高くすべきである。芳香族環系の電子密度の尺度であるハメット定数は、置換基の電子吸引力の増大により増大し、これにより、イオン化ポテンシャルが増大し、分子がClO2に対してより安定になる。したがって、強力な電子吸引性基を有する抗酸化剤は、ClO2に対してより抵抗性であり得るが、同時に、酸化性分子に攻撃されたならばすぐに、効率が減じた抗酸化剤になってしまう。芳香族基における相互作用は、環系の反応性に影響する別の方法である。このような相互作用は、分子間型または分子内型であり得る。
【0026】
抗酸化剤(B)および抗酸化剤(C)を選択するための試験は、Polymer Testing、第28巻、2009年9月6日刊行、661〜667ページの中でB. Azhdar、W. Yu、T. ReitbergerおよびU.W. Geddeが公開した技法の翻案に基づいている。マトリックスとしてスクアランを使用する代わりに、抗酸化剤が0.1 wt%から0.3 wt%の間の濃度でポリエチレン組成物中に導入された。この組成物から、0.3 mmの厚さのテープを押出により製造した。複数枚のテープを、6.8±0.1のpHおよび70℃で10 ppmのClO2を含有する水に曝露しておき、酸素誘導時間(OIT)を測定するために、これらのテープの小型試料を定期的な時間間隔で引き出す。この試験は、後で方法についての部分で詳細に記載されている。ClO2含有水中での曝露時間の増大に伴って、抗酸化剤が消毒剤により継続的に劣化し、OITが低下する。
【0027】
抗酸化剤(B)は、後述するOIT190℃試験に従って測定して35分超の比較的高い初期OIT190℃、および、6.8±0.1のpH且つ70℃で10 ppmのClO2を含有する水に晒されたときのOIT190℃値の比較的速い低下を特徴とする。曝露時間の関数としてOIT190℃が低下していくこの速度は、二酸化塩素への曝露時間(分)の関数としてOIT190℃(分)が記録されるとき、曲線の傾きとして表すことができる。この変数は、ClO2含有水に対する材料の「劣化速度」または「枯渇速度」として指し示される。抗酸化剤(B)は、少なくとも-0.07という前記OIT190℃低下曲線の傾きを示す。
【0028】
抗酸化剤(C)は、後述するOIT190℃試験に従って測定して35分以下の比較的低い初期OIT190℃、および、6.8±0.1のpH且つ70℃で10 ppmのClO2を含有する水に晒された後のOIT190℃値の比較的緩やかな低下を特徴とする。曝露時間に伴ったOIT190℃のこの緩やかな低下は、OIT190℃が前記ClO2含有水への曝露時間の関数として記録されるとき、その関数の傾きとして表される。抗酸化剤(C)は、-0.07未満という前記OIT190℃低下関数の傾きを示す。
【0029】
驚くべきことに、二酸化塩素に対する抵抗性が初期には(上述した初期OIT190℃変数の観点から)かなり高いが(上述したOIT190℃低下の観点から)かなり速く低下する抗酸化剤(B)と、二酸化塩素に対する抵抗性が初期には(上述した初期OIT190℃変数の観点から)かなり低いが(上述したOIT190℃低下の観点から)かなり緩やかに低下する抗酸化剤(C)との組合せは、少なくとも1種の抗酸化剤(B)と少なくとも1種の抗酸化剤(C)との組合せを含有するポリオレフィン組成物の、ClO2含有水に対する非常に良好な安定性を与えたことが見出された。
【0030】
初期OIT210℃の50%に到達するまでの、二酸化塩素への曝露時間(分)は、二酸化塩素と接触している、抗酸化剤の選択された組合せを含有する各ポリオレフィン組成物の半減期劣化速度または半減期枯渇速度(OIT(210℃),50%)とみなす。抗酸化剤(B)および抗酸化剤(C)の本発明の組合せを含むポリオレフィン組成物のこの半減期劣化速度は著しく低下し、後述する劣化試験に従って測定して、70℃且つ6.8±0.1のpHで10 ppmの二酸化塩素を含有する水中での曝露の後、少なくとも450分、好ましくは少なくとも500分、より好ましくは少なくとも550分、更により好ましくは少なくとも600分という、増大したOIT(210℃),50%値により測定することができる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、抗酸化剤(B)および抗酸化剤(C)の組合せは、下記の群より選択することができる。
【0032】
少なくとも1種の抗酸化剤(B)は、好ましくは、トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート(Cyanox (登録商標) 1790)、ペンタエリトリチル-テトラキス(3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート) (Irganox (登録商標) 1010)、1, 2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジド(Irganox (登録商標) MD1024)、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(Naugard (登録商標) 445)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン(Irganox (登録商標) 1330)、エチレンビス[3, 3-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブチレート](Hostanox (登録商標) O3)およびオクタデシル3,5-ジ-(tert)-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナメート(Irganox (登録商標) 1076)から成る群より選択される。
【0033】
少なくとも1種の抗酸化剤(C)は、好ましくは、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(Irganox (登録商標) 3114)およびヘキサデシル3,5-bis-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(Cyasorb (登録商標) 2908)から成る群より選択される。
【0034】
少なくとも1種の抗酸化剤(B)と少なくとも1種の抗酸化剤(C)との任意の組合せが本発明に包含されることを理解すべきである。抗酸化剤(B)および抗酸化剤(C)のそれぞれのうち2種以上を組み合わせることもできる。
【0035】
抗酸化剤(B)は、合計組成物の重量に基づいて好ましくは0.01 wt%から0.5 wt%までの、より好ましくは0.05 wt%から0.3 wt%までの、更により好ましくは0.1 wt%から0.2 wt%までの量で、ポリオレフィン組成物中に含有されている。
【0036】
抗酸化剤(C)は、好ましくは、合計組成物の重量に基づいて0.01 wt%から0.5 wt%までの、より好ましくは0.05 wt%から0.3 wt%までの、更により好ましくは0.1 wt%から0.2 wt%までの量で、ポリオレフィン組成物中に含有されている。
【0037】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、ポリオレフィン組成物は、式(I)
【化1】
【0038】
[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は独立にHであり、またはヘテロ原子を含み得る置換されていないもしくは置換されている脂肪族もしくは芳香族のヒドロカルビル基である]
による少なくとも1種の抗酸化剤(D)を更に含み得る。
【0039】
式(I)による抗酸化剤(D)の置換されていないまたは置換されている脂肪族または芳香族のヒドロカルビル基R1、R2、R3、R4および/またはR5中に存在し得るヘテロ原子は、酸素、硫黄、窒素またはリン等であり得る。しかしながら、R1、R2、R3、R4またはR5、より好ましくはR1、R2、R3、R4およびR5は、ヘテロ原子を含まないことが好ましく、即ち、置換されていないまたは置換されている脂肪族または芳香族のヒドロカルビル基のみである、または言及したようにHであることが好ましい。
【0040】
更に、好ましくはR2、R3、R4またはR5、より好ましくはR2、R3、R4およびR5はHであり、または、1個から5個までの炭素原子を含む飽和脂肪族ヒドロカルビル基であり、R2、R3、R4またはR5、より好ましくはR2、R3、R4およびR5がHまたはメチル基であるのが更により好ましい。
【0041】
更に、R5は、R2からR4までの他の残基の性質に関わらずメチル基であるのが好ましい。
【0042】
特に好ましい一実施形態では、R4およびR5はメチル基であり、R2およびR3はHまたはメチル基である。
【0043】
最も好ましくは、R2、R3、R4およびR5のすべてがメチル基である.
なお更には、好ましくはR1は、5個から50個までの炭素原子を含む置換されていないまたは置換されている脂肪族または芳香族のヒドロカルビル基であり、より好ましくはR1は、5個から50個までの、より好ましくは10個から30個までの炭素原子を含む置換されていないまたは置換されている脂肪族ヒドロカルビル基であり、最も好ましくはR1は、4,8,12-トリメチル-トリデシル基である。
【0044】
更により好ましい抗酸化剤(D)は、2,5,7,8-テトラメチル-2-(4’,8’,12’-トリメチルトリデシル)クロマン-6-オール(Irganox (登録商標) E201またはビタミンE)である。
【0045】
抗酸化剤(D)は、合計組成物の重量に基づいて好ましくは0.01 wt%から0.2 wt%までの、より好ましくは0.02 wt%から0.1 wt%までの、更により好ましくは0.05 wt%から0.1 wt%までの量で、ポリオレフィン組成物中に含有されている。
【0046】
二酸化塩素に対する抵抗性および劣化速度への本発明によるポリオレフィン組成物中の抗酸化剤組合せの作用は、210℃でのポリオレフィン組成物の「酸素誘導時間」(OIT210℃)の測定により測定される。
【0047】
酸素誘導時間の測定の詳細は、後で実験についての部分で説明する。標準化された条件下では、抗酸化剤は、OIT試験中に酸化剤(ここでは酸素ガス)との接触により、完全に枯渇するまで経時的に消費される。この時点で、ポリマー試料が劣化または酸化して更なる熱を放出する(発熱反応)。酸化剤が導入された時間からこの発熱反応が出現するまでにかかる時間(分)を、酸素誘導時間(OIT)として記録する。これは、材料の酸化安定性の尺度である。
【0048】
二酸化塩素への曝露下で劣化抵抗性および劣化速度を測定する場合、試料テープ(幅35 mm、厚さ0.3 mm)は、10 ppmのClO2を含有する6.8±0.1のpHで70℃の水に曝露した。一定の時間間隔の後、これらの試料を二酸化塩素含有水から除去し、上記OIT210℃試験に供して、二酸化塩素への曝露時間(分)の関数としてOIT210℃を測定した。
【0049】
これらの測定では、3つの変数が特に重要である。
【0050】
・初期OIT190℃、即ち、抗酸化剤(複数可)の完全な枯渇の後に二酸化塩素中への試料の曝露無しでポリオレフィンの劣化が始まるまでの時間(分)、および
・二酸化塩素への曝露時間(分)の関数としてOIT190℃(分)が記録されるとき、曲線の傾きとして表すことができる曝露時間の関数としてOIT190℃が低下する速度。この変数は、ClO2含有水に対する材料の「劣化速度」として指し示される。
【0051】
上記2つの変数は、本発明に従って抗酸化剤(B)および抗酸化剤(C)を選択するために使用される。OITが190℃で測定されるこれらの試験では、単一の抗酸化剤のみをポリオレフィンに組み込んで試験する。
【0052】
・OIT(210℃),50%、即ち、0分の曝露時間(初期OIT210℃)における値の約50%にOIT210℃が到達するまでの、二酸化塩素中での曝露時間(分)、本明細書では材料の「半減期劣化速度」としても表される。後者の変数は、少なくとも2種の抗酸化剤の組合せを含有するポリオレフィン組成物の、二酸化塩素に対する抵抗性を測定するために使用される。この試験では、OITは210℃で測定される。
【0053】
任意の組合せにおけるペンタエリトリチル-テトラキス(3-(3’,5’-ジ-tert.ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート) (Irganox (登録商標) 1010)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン(Irganox (登録商標) 1330)、トリス(2,4-ジ-tert.ブチルフェニル)-ホスファイト(Irgafos (登録商標) 168)およびビタミンE誘導体等の従来の抗酸化剤組合せを含有する材料に比較して、OIT(210℃),50%に到達するまでの時間の増大として表すと、ClO2含有水に対するポリオレフィン組成物の抵抗性が顕著に増大することは、本発明の更なる作用である。
【0054】
一方でこれは、抗酸化剤の本発明の組合せを組み込んだ本発明によるポリオレフィン組成物の二酸化塩素への永久的な接触に起因する劣化が、既知の抗酸化剤またはそれらの組合せを組み込んだポリオレフィン組成物において観察されるものより顕著に遅い時間帯で起きることも意味する。
【0055】
「ベース樹脂」という用語は、本発明によるポリオレフィン組成物中のポリマーコンポーネントの全体を表し、通常は合計組成物の少なくとも90 wt%を占める。
【0056】
本発明による抗酸化剤の好適な作用は、使用されるポリオレフィンベース樹脂の種類に依存しない。したがって、ベース樹脂は、任意のポリオレフィンまたはポリオレフィン組成物であってよい。
【0057】
しかしながら、ベース樹脂(A)は、2個から8個までの炭素原子を有する少なくとも1種のオレフィンを含む、オレフィンポリマーを包含することが好ましい。少なくとも1種のエチレンホモ-もしくはコポリマーまたはプロピレンホモ-もしくはコポリマーが、特に好ましい。好ましくは、コモノマーは、4個から8個までの炭素原子を有するエチレン、プロピレンおよびα-オレフィンから選択される。更により好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンから選択されるエチレン、プロピレンまたはα-オレフィンが、コモノマーとして使用される。
【0058】
ベース樹脂(A)中のコモノマーの量は、好ましくは、0.1 mol%から7.0 mol%の間である。
【0059】
ベース樹脂(A)が、エチレンホモ-もしくはコポリマーまたはプロピレンホモ-もしくはコポリマーを含むことが特に好ましく、ベース樹脂(A)が、エチレンホモ-もしくはコポリマーまたはプロピレンホモ-もしくはコポリマーから成ることがより好ましい。
【0060】
本発明の一実施形態では、ベース樹脂は、2種以上のポリオレフィンを含み、より好ましくは、相異なる重量平均分子量を有するポリエチレン画分を含む。このような樹脂は通常、多峰性樹脂として表される。
【0061】
単峰性樹脂または多峰性樹脂または架橋樹脂を含むポリオレフィン、特にポリエチレン組成物は、例えば機械的強度、耐食性および長期的安定性のようなそれらの好適な物理的特性および化学的特性のため、例えばパイプおよび取付部品の製造用に頻繁に使用される。このような組成物は、例えばEP 0 739 937およびWO 02/102891に記載されている。本明細書で使用される分子量という用語は、一般に、重量平均分子量Mwを表す。
【0062】
言及したように、通常、相異なる重合条件下で生成されたことにより重量平均分子量が相異なっている少なくとも2つのポリエチレン画分を含むポリエチレン組成物は、「多峰性」と呼ばれる。「多」という接頭辞は、組成物を構成している相異なるポリマー画分の数に関する。したがって、例えば、2つの画分のみから成る組成物は、「二峰性」と呼ばれる。
【0063】
このような多峰性ポリエチレンに関する分子量分布曲線の形状、即ち、その分子量の関数としてのポリマー重量分率のグラフの外観は、2つ以上の最大値を示し、または、少なくとも個々の画分に関する曲線に比較すれば明瞭に幅広くなっている。
【0064】
例えば、直列に連結された反応器を利用し且つ各反応器内に相異なる条件を用いた逐次式多段階プロセスによりポリマーを生成するならば、相異なる反応器内で生成されるポリマー画分はそれぞれ、それらに特有の分子量分布および重量平均分子量を有することになる。このようなポリマーの分子量分布曲線が記録されるとき、これらの画分による個々の曲線が、得られた合計のポリマー生成物に関する分子量分布曲線になるように重ね合わされ、通常は、明瞭な2つ以上の最大値を有する曲線が生じる。
【0065】
ベース樹脂が2つのポリエチレン画分から成る好ましい一実施形態では、より低い重量平均分子量を有する画分は画分(A)と表され、もう一方の画分は画分(B)と表される。
【0066】
画分(A)は、好ましくはエチレンホモポリマーである。
【0067】
画分(B)は、好ましくはエチレンコポリマーであり、好ましくは少なくとも0.1 mol%の少なくとも1種のα-オレフィンコモノマーを含む。コモノマーの量は、好ましくは最大で14 mol%である。
【0068】
ポリオレフィン組成物がポリエチレン組成物である好ましい一実施形態では、ポリエチレン組成物のベース樹脂は、好ましくは少なくとも0.1 mol%、より好ましくは少なくとも0.3 mol%、更により好ましくは少なくとも0.7 mol%の少なくとも1種のα-オレフィンコモノマーを含む。コモノマーの量は、好ましくは最大で7.0 mol%、より好ましくは最大で6.0 mol%、更により好ましくは最大で5.0 mol%である。
【0069】
α-オレフィンコモノマーとして、好ましくは4個から8個までの炭素原子を有するα-オレフィンが使用される。更により好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンから選択されるα-オレフィンが使用される。
ポリオレフィンベース樹脂は、好ましくは、0.01 g/10分から5.0 g/10分までの、より好ましくは0.1 g/10分から2.0 g/10分までの、更により好ましくは0.2 g/10分から1.5 g/10分までの、最も好ましくは0.5 g/10分から1.0 g/10分までのMFR5(190℃、5 kg)を有する。
【0070】
ベース樹脂の密度は、好ましくは、920 kg/m3から960 kg/m3までであり、より好ましくは930 kg/m3から958 kg/m3までであり、最も好ましくは936 kg/m3から955 kg/m3までである。
【0071】
ベース樹脂および抗酸化剤に加えて、ポリオレフィンと共に利用するための通例の添加剤、例えば、顔料(例えばカーボンブラック)、安定剤、防酸剤および/または耐紫外線剤、帯電防止剤および利用剤(utilization agent)(例えば、加工助剤)が、ポリオレフィン組成物中に存在していてもよい。
【0072】
このような添加剤の量は通常、10 wt%以下である。
【0073】
カーボンブラックは一般に使用される顔料であり、紫外線吸収剤としても作用する。一般的には、カーボンブラックは、0.5重量%から5重量%までの、好ましくは1.5重量%から3.0重量%までの最終的な量で使用される。好ましくは、カーボンブラックは、マスターバッチ、即ちカーボンブラックマスターバッチ(CBMB)として加えられ、実施例で示されたような特定の量のポリマー、好ましくはポリエチレンと予備混合される。
【0074】
ベース樹脂の製造用の重合触媒には、チーグラーナッタ(ZN)触媒、メタロセン触媒、非メタロセン触媒、Cr触媒等のような、遷移金属の配位触媒が挙げられる。触媒は、例えば、シリカ、Al含有担体および二塩化マグネシウム系担体を含めた従来の担体によって担持され得る。好ましくは、触媒はZN触媒であり、より好ましくは、触媒は、シリカに担持されていないZN触媒であり、最も好ましくはMgCl2系ZN触媒である。
【0075】
チーグラーナッタ触媒は、更に好ましくは、グループ4(新IUPAC方式に従ったグループ番号付け)の金属化合物、好ましくはチタン、二塩化マグネシウムおよびアルミニウムを含む。
【0076】
触媒は購入することもできるし、または、文献に従ってもしくは文献と同様にして製造することもできる。本発明に使用できる好ましい触媒の調製に関しては、BorealisのWO 2004/055068およびWO 2004/055069、ならびにEP 0 810 235を参照する。これらの文書の内容は、その中に記載された触媒の普遍的な実施形態およびすべての好ましい実施形態ならびに触媒の製造のための方法に特に関して、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。特に好ましいチーグラーナッタ触媒は、EP 0 810 235に記載されている。
【0077】
本組成物は、一般的には抗酸化剤および任意選択によるその他の添加剤と一緒に反応器から粉末として得られるベース樹脂を、押出機内で押出して本発明による組成物を生じさせるコンパウンディングステップを含むプロセスにより生成するのが好ましい。
【0078】
当然ながら、本発明の組成物を使用するときは、本組成物の加工性および表面特性を改善するために、安定剤、改質剤、充填材、鉱物および潤滑剤等の従来の添加剤から選択される更なる化合物を加えることができる。
【0079】
本発明の組成物は、好ましくは、二酸化塩素含有水に対する抵抗性が増大した物品の製造のために使用される。このような物品には、好ましくは、黒色ならびに天然の(即ち、着色されていない)パイプもしくは取付部品、または着色されたパイプ/取付部品を挙げることができる。好ましくは、このようなパイプまたは取付部品は、飲料水供給システム内に使用される。パイプが冷水用または温水用のパイプであること、即ち、パイプが冷水または温水の輸送用に設計されていることが更により好ましい。本組成物は、更に好ましくは、水または水性液体の貯蔵用の物品の製造のために使用することができる。このような物品には、好ましくは、タンク、貯蔵器、または、ボトル等の容器を挙げることができる。
【0080】
したがって、本発明は、すべての好ましい実施形態を含めた上述した本発明のポリオレフィン組成物を含む物品、好ましくはパイプ、取付部品または貯蔵容器も対象としている。このような物品は、二酸化塩素含有水に対する改善された抵抗性を示す。
【0081】
パイプ、取付部品または貯蔵容器は、好ましくは、ポリオレフィン組成物の押出により製造される。これらの物品は、押出ブロー成形または射出成形等のブロー成形により製造することもできる。
【0082】
したがって、本発明は、パイプ、取付部品または貯蔵容器の製造のための、すべての好ましい実施形態を含めた本発明によるポリオレフィン組成物の使用も対象としている。
【0083】
本発明は、二酸化塩素含有水の輸送のための、前記本発明のパイプ/取付部品の使用も対象としており、または、二酸化塩素含有水の貯蔵のための本発明の容器の使用も対象としている。
【0084】
最後に、本発明は、二酸化塩素含有水との永久的な接触に対する前記ポリオレフィン組成物から製造されたパイプ、取付部品または貯蔵容器等の物品の抵抗性を増大させるための、ポリオレフィン組成物中への、すべての好ましい実施形態を含めた上記で規定した抗酸化剤(B)と抗酸化剤(C)との組合せの使用を更に対象としている。
【0085】
前記の二酸化塩素に対する増大した抵抗性は、いかなる抗酸化剤も含んでいない対応するポリオレフィン組成物から製造された物品に比較して、好ましくは、抗酸化剤を含むまたは抗酸化剤(B)と抗酸化剤(C)との組合せ以外にも等しい濃度の抗酸化剤の組合せを含む対応するポリオレフィン組成物から製造された物品に比較して増大した、後述する試験方法に従って二酸化塩素含有水に晒した後に記録されるそのOIT(210℃),50%時間により示される。
【0086】
「対応するポリオレフィン組成物」とは、抗酸化剤(B)と抗酸化剤(C)との組合せの他に、本発明のポリオレフィン組成物と同じベース樹脂と同じ添加剤とを同じ濃度で含むポリオレフィン組成物を表す。
【0087】
抗酸化剤に関する「等しい濃度」は、対応するポリオレフィン組成物中での抗酸化剤(B)および抗酸化剤(C)の濃度の総和、ならびに抗酸化剤の濃度の総和のことを扱っている。
【実施例】
【0088】
1.定義および測定方法
a)密度
密度は、EN ISO 1872-2(2007年2月)に従って調製される圧縮成形試験片について、ISO 1183-1:2004(方法A)に従って測定し、kg/m3で示す。
【0089】
b)メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)は、ISO 1133に従って測定し、g/10分で示す。MFRは、ポリマーの流動性、したがって加工性の指標である。メルトフローレートがより高いほど、ポリマーの粘度がより低くなる。MFRは、ポリエチレンに関しては190℃で測定し、5.00 kgの荷重において測定する(MFR5)。
【0090】
c)単一の抗酸化剤(B)または抗酸化剤(C)の選択のための評価方法
この試験は、所与の抗酸化剤が、本明細書で規定した(B)型の抗酸化剤または本明細書で規定した(C)型の抗酸化剤のいずれかに規定されるかを判定するのに役だった。この試験では、上記で明確に述べたように、単一の抗酸化剤をポリエチレン材料に組み込んで、OIT190℃値を測定した。二酸化塩素に試料を曝露せずにOIT190℃試験中に得られた時間(分)が、「初期OIT190℃」である。二酸化塩素含有水に晒されたポリオレフィン中での安定剤の劣化挙動を評価するための試験方法は、Polymer Testing、第28巻、2009年9月6日刊行、661〜667ページの中で公開されている、B. Azhdar、W. Yu、T. ReitbergerおよびU.W. Geddeにより確立された方法に由来するものであった。
【0091】
この資料は、塩素処理水型媒体(水中のCl2およびClO2)に晒されたポリオレフィン中でのフェノール系抗酸化剤の効率を研究するための新たな方法を提供した。液体炭化水素類縁体であるスクアランを、水性相中に液滴として用いて分散させた。有機相からのサンプリングを容易に実施し、残留している効率的なフェノール系抗酸化剤の濃度を、示差走査熱量測定を用いた標準的な方法により評価した。
【0092】
ここで適用した試験方法では、下記修正を実施した。スクアラン相を使用する代わりに、0.1 wt%の濃度の相異なる添加剤を含有するポリエチレン化合物を使用した。次いでこれらの化合物を薄いテープ(厚さ0.3 mm)の形態で押出し、次いでこれらのテープを、Polymer Testing、第28巻、2009年9月6日刊行、661〜667ページで述べられているのと同じ構成を用いて二酸化塩素含有水に差し入れた。次いでテープ試料の部分を、接触している水から相異なる時間間隔で引き出し、OIT190℃測定により分析した。
【0093】
水溶液中で亜塩素酸ナトリウムを塩素ガスと反応させることにより、16, 000 ppmの二酸化塩素を含んだストック溶液を調製した。亜塩素酸ナトリウム(210 g)を7 lの水に溶解した。上記溶液が飽和するまで、塩素ガスを4時間、上記溶液を通してバブリングした。次いで窒素ガスを約8時間、上記溶液を通して穏やかにバブリングし、亜塩素酸ナトリウムを含んだカラムの中を通るようにガス流を導いて、残留しているCl2を除いた。これにより、形成された二酸化塩素は、純水が入った別のフラスコに移った。10±1 ppmという最終的なClO2濃度になるまで、ストック溶液を脱イオン水で希釈した。
【0094】
濃硫酸(20 ml)と、水(10 ml)中のヨウ化カリウムの2 wt%溶液とを、10 mlの二酸化塩素水に加えることにより、水中の二酸化塩素濃度を測定した。黄色溶液は、黄色が消えるまで0.1M Na2S2O3によって滴定した。1モルのClO2が5モルのS2O32-と等価であることに留意すべきである。
【0095】
pHは、下記の緩衝液を用いて、6.8±0.1に一定に保った。6.8±0.1にpHを調節する緩衝液を、0.1M NaOH(22.4 ml)および0.1M KH2PO4(50 ml)をベースとして調製し、塩素処理水溶液(219 ml)に加えた。最終的な溶液のpHを、WTWpH330i電極を用いて、室温で測定した。
【0096】
(調製後70℃に保たれた)抗酸化剤を含んだ試験片と、(10 ppmの濃度の)二酸化塩素含有水型媒体とが入ったガラスフラスコを、2個の加熱器(ホットプレートおよび密閉型加熱器)により70±1℃に保った。密閉型加熱器(enclosing heater)は、PID制御装置(Eurotherm 914)によって制御した。揮発分の損失を最小化するために、(約10℃の)冷水が供給される冷却器をガラスフラスコの頂部に置いた。反応室は、空気が出入りできるようにして70±1℃に保った。この水溶液は、上述した滴定方法により、二酸化塩素濃度について定期的に確認した。
【0097】
この試験構成における具体的な条件は、
抗酸化剤の濃度:ポリオレフィンの重量に基づいて0.1 wt%、
ClO2の濃度: 6.8±0.1のpH、温度70℃で10 ppm
だった。
【0098】
単一抗酸化剤試験用の試験片についてのOIT試験は、以下のv)で後述するように、常に190℃の温度で実施した(OIT190℃測定)。
【0099】
具体的には、二酸化塩素含有水への曝露時間の関数としてのOIT190℃低下を記録し、曲線の傾きを測定した。傾きがより平坦であるほど、二酸化塩素への曝露時間の関数としてより大きなOIT190℃値が記録され、二酸化塩素含有水に対するより強い試験試料の抵抗性が観察され得る。
【0100】
i)本発明のポリマー組成物のコンポーネント
MDPE: 942.5 kg/m3の密度およびMFR (190℃/荷重5.0 kg) = 0.78 g/10分を有するチーグラーナッタ触媒(Lynx (登録商標) 200、BASF SEから入手可能)を用いて、Borstar (登録商標) PE反応器内で製造された、二峰性中密度ポリエチレン粉末(低圧式ポリエチレン)。
【0101】
ii)本組成物のコンパウンディング
ポリマー粉末を、選択された添加剤と一緒にパイロット規模の押出機(Prism TSE 24 TC)に入れた。得られた混合物を、以下の表中に与えられている条件下で溶融混合し、糸状に押出し、ペレット化した。
【表1】
【0102】
iii)試料調製
幅35 mmおよび厚さ0.3 mmの寸法を有するテープを、Collin teach-line E 20T押出機により押出した。これらのテープは、次の設定温度:180℃/190℃/210℃且つ30 rpmによって製造した。
【0103】
iv)二酸化塩素曝露
10 ppmのClO2を含有する水へのテープ試料の曝露を、KTH実験室規模設備において実施した。pHを6.8±0.1に一定に保ち、実験を70℃で実施した。OIT190℃測定のために、円盤状試料を、テープ厚さ(0.3 mm)を貫いて穴開けし、300分の曝露時間に至るまで定期的な間隔で取り出した。
【0104】
v)単一抗酸化剤試験用の試料についてのOIT測定
190℃での酸化誘導時間(OIT)は、ASTM D 3895に従って、温度較正およびエネルギー較正済みのMettler-Toledo DSC-820内で測定した。機器の較正は、非常に純粋なインジウムおよび非常に純粋な亜鉛を溶融し、これらの物質のそれぞれに関する溶融の開始および融解熱を記録することにより実施した。較正による温度の最大誤差は、0.1 K未満だった。5±1 mgの重量を有する各ポリマー試料(5 mmの直径および0.3±0.05 mmの厚さを有する円柱形状)を、カバー内に3個の孔(直径= 1 mm)を有する標準的な100μlアルミニウム製るつぼに封入し、50 ml min-1のガス流量により、窒素(>99.95 vol%のN2、<5 ppmのO2)中で10℃min-1の速度において25℃から190℃まで加熱し、雰囲気を純粋な酸素(>99.95 vol%のO2)に切り替える前に5分間、やはり50 ml min-1の流量で静置しておいた。試料を一定温度に維持し、酸化に伴う発熱を記録した。酸化誘導時間は、酸素フローの開始から、等温ベースラインとこのベースラインから1.5 Wg-1の偏差における接線との交差までの時間として測定した。提供された各データ点は、独立した2回の測定の平均だった。
【0105】
上述した接線法は、切片の点を決定する好ましい手段である。しかしながら、酸化反応が緩やかであるならば、発熱ピークが前縁部になってしまい、適切な接線を選択するのが困難になる恐れがある。
【0106】
適切なベースラインの選択が接線法を用いても明確でないならば、オフセット法を使用することができる。したがって、第2のベースラインは、第1のベースラインより0.05 W/gの距離だけ上に、第1のベースラインに対して平行に引かれる。この第2のラインと発熱シグナルとの交差は、酸化の開始として規定される。結果は、以下の表1の中に与えられている。
【0107】
各条件について二重の試料を測定し、平均値を計算する。事前には二酸化塩素に晒されていなかった試料のOIT190℃値は、初期OIT190℃値を意味する。
【0108】
酸化誘導時間(OIT190℃)測定は、相異なる曝露時間の後、上記二酸化塩素含有水中で実施した。得られた単一抗酸化剤型試料についてのOIT190℃データから、曝露時間の関数としてOIT190℃を記録する曲線の傾きを計算した。この曲線は、0分から300分までの曝露時間間隔にわたって得られた。
【0109】
d)二酸化塩素含有水に対する抗酸化剤の組合せを含有する試験片の抵抗性の測定のための評価方法
第2の試験構成では、上記の第1の試験構成において(B)型および(C)型と分類した抗酸化剤の組合せをそれぞれ組み合わせ、上記で明確に述べたように、同じポリエチレン材料に組み込んだ。これらの試料は、上記で明確に述べた同じ二酸化塩素含有水に晒し、特定の時間間隔で引き出し、上記で明確に述べたのと同じようにしてOIT210℃試験(210℃の温度でのOIT試験)を受けさせた。試験は、0分の曝露時間での初期OIT値の50%にOIT210℃が到達した後に終了した。この時刻は、「OIT(210℃),50%」として記録した。同様に、0分の曝露時間での初期値の75%にOIT210℃が到達した時間は、「OIT(210℃), 75%」として記録した。この第2の試験構成における具体的な条件は、
抗酸化剤の濃度:以下に示すように0.1 wt%から0.3 wt%の間、
ClO2の濃度: 10 ppm; 6.8±0.1のpH; 温度70℃
だった。
【0110】
組み合わせた抗酸化剤試験用試料についてのOIT試験は、常に210℃の温度で実施した(OIT210℃測定)。
【0111】
2.組成物および試験結果
e) i)下に上記で明記した二峰性中密度ポリエチレン粉末を、選択された添加剤と一緒にパイロット規模押出機(Prism TSE 24 TC)内で押出し、上述した方法により、得られた混合物を溶融混合し、押出してペレットにした。
【0112】
下記添加剤を下記試験中に使用した。
【0113】
ペンタエリトリチル-テトラキス(3-(3’,5’-ジ-tert.ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート) (Irganox (登録商標) 1010)、
1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン(Irganox (登録商標) 1330)、
1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(Irganox (登録商標) 3114)、
1, 2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジド(Irganox (登録商標) MD1024)、
トリス(2,4-ジ-tert.ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos (登録商標) 168)、
ヘキサデシル3,5-bis-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(Cyasorb (登録商標) 2908)、
トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート(Cyanox (登録商標) 1790)、
2,5,7,8-テトラメチル-2-(4’,8’,12’-トリメチルトリデシル)クロマン-6-オール(ビタミンE-Irganox (登録商標) E 201)。
【0114】
単一の抗酸化剤のみを含有するポリオレフィン試料を、上記の方法により調製した。これらの試料は、選択された抗酸化剤が、本発明によるグループ(B)またはグループ(C)に関する基準を満たしいているかを判定するのに役だった。以下の表1は、単一抗酸化剤型試料についての結果を示している。
【0115】
下記の本発明例では、以下に与えられている重量比率で、添加剤混合物を上記二峰性中密度ポリエチレンに組み込んだ。OIT210℃測定値は、以下の表2および表3の中に示されている。
【0116】
表2は、ClO2への曝露無しのOIT210℃測定値を含み、したがって、これらは、初期OIT210℃(抗酸化剤が枯渇して酸化に伴う発熱が起きるまでの時間(分)を測定)である。
【0117】
表3は、試料をClO2に曝露し、ClO2曝露の時間(分)を記録し、その後、OIT210℃が0分の曝露時間での初期値の75%または50%のそれぞれに到達したときのOIT210℃測定値を含み、したがって、こららはそれぞれ、OIT(210℃), 75%およびOIT(210℃),50%の値である。
【0118】
・実施例1(E1):Irganox (登録商標) 1010(0.2 wt%) + Cyasorb (登録商標) 2908(0.1 wt%)、
・実施例2(E2):Cyanox (登録商標) 1790(0.2 wt%) + Irganox (登録商標) 3114(0.1 wt%)、
・実施例3(E3):Cyanox (登録商標) 1790(0.2 wt%) + Irganox (登録商標) 3114(0.1 wt%) + ビタミン E(0.05 wt%)
・実施例4(E4):Irganox (登録商標) 1010(0.2 wt%) + Cyasorb (登録商標) 2908(0.1 wt%) + ビタミン E(0.05 wt%)、
・実施例5(E5):Cyanox (登録商標) 1790(0.1 wt%) + Irganox (登録商標) MD 1024(0.1 wt%) + Irganox (登録商標) 3114(0.1 wt%) + ビタミンE(0.05 wt%)。
【0119】
下記の添加剤混合物を比較例として使用した:
・比較例1(CE1):0.11 wt%のIrganox (登録商標) 1010 + 0.11 wt%のIrgafos (登録商標) 168、
・比較例2(CE2):0.3 wt%のIrganox (登録商標) 1010、
・比較例3(CE3):0.1 wt%のIrganox (登録商標) 1330 + 0.2 wt%のIrganox (登録商標) 1010、
・比較例4(CE4):0.2 wt%のIrganox (登録商標) 1330 + 0.1 wt%のIrgafos (登録商標) 168、
・比較例5(CE5):0.25% wt%のIrganox (登録商標) 1010 + 0.05 wt%のIrganox (登録商標) E201(ビタミンE)。
【0120】
表4は、ClO2への曝露無しのOIT210℃測定値、したがって初期OIT210℃(抗酸化剤が枯渇して酸化に伴う発熱が起きるまでの時間(分)を測定)を含む。
【0121】
表5は、試料をClO2に曝露し、ClO2曝露の時間(分)を記録し、その後、OIT210℃が0分の曝露時間での初期値の75%または50%のそれぞれに到達したときのOIT210℃測定値を含み、したがって、これらはそれぞれ、OIT(210℃), 75%およびOIT(210℃),50%の値である。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0122】
本発明例のClO2曝露時間に対してプロットしたOIT210℃の結果を示している図1および表3を、比較例のClO2曝露時間に対してプロットしたOIT210℃の結果を示している図2および表5と比較したとき、本発明による抗酸化剤組合せの強力なOIT210℃増大作用を認めることができる。CE1、CE3またはCE4の抗酸化剤組合せの使用に関わらず、PEベース樹脂(CE2)に加えられた0.3 wt%の単一の抗酸化剤Irganox (登録商標) 1010を用いて達成されたOIT(210℃),50%値は、ほとんど改善できていなかった。0.05 wt%のビタミンE(CE5)という更なる混合物は、OIT(210℃),50%値を中程度の27%増大させた。CE1は、比較用基準とみなされ得る、ポリオレフィン樹脂用の一般的な従来の商用の抗酸化剤組合せを表すことに留意すべきである。
【0123】
驚くべきことに、本発明による抗酸化剤組合せについての結果は、図1および表3において記載したように、非常に良く成し遂げられた。実施例1による最低の改善を伴った本発明の組成物でさえ、比較例の最良性能組成物(CE5)を73%上回る増大を伴ったOIT(210℃),50%値を示した。0.05 wt%のビタミンE(E3〜E5)の混合物は、それぞれ39%(E3<->E4)および68%(E4<->E1)のOIT(210℃),50%値の更なる増大を示した。したがって、ビタミンEの添加により、本発明によるポリオレフィン組成物の二酸化塩素に対する抵抗性の増大への更なる「ブースター」作用が達成された。
【0124】
一方、例E1から例E5および比較例CE1から比較例CE5の中の初期OIT210℃値の間に相関関係が存在しないことを、図3から理解することができる。したがって、各抗酸化剤組合せの(二酸化塩素含有水への曝露前の)高い初期OIT210℃値は、二酸化塩素含有水への曝露のときの同じ組合せの高い抵抗性(OIT(210℃),50%値)と必ずしも相関しない。
【0125】
したがって、本発明の組成物の作用は、予想外且つ驚異的であることが示された。
図1
図2
図3