特許第6021932号(P6021932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6021932-CO2回収装置およびCO2回収方法 図000002
  • 特許6021932-CO2回収装置およびCO2回収方法 図000003
  • 特許6021932-CO2回収装置およびCO2回収方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021932
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】CO2回収装置およびCO2回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20161027BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20161027BHJP
   C01B 31/20 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   B01D53/62ZAB
   B01D53/14 200
   C01B31/20 B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-542051(P2014-542051)
(86)(22)【出願日】2013年10月4日
(86)【国際出願番号】JP2013077079
(87)【国際公開番号】WO2014061471
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2015年2月18日
(31)【優先権主張番号】13/652713
(32)【優先日】2012年10月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】辻内 達也
(72)【発明者】
【氏名】本城 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】米川 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】杉田 覚
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−115724(JP,A)
【文献】 特開2011−177674(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/058426(WO,A1)
【文献】 特表2010−516464(JP,A)
【文献】 特表2012−500713(JP,A)
【文献】 特開平05−184867(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/115992(WO,A1)
【文献】 特表2011−502746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/85
B01D 53/14−53/18
C01B 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の硫黄分を除去する脱硫部と前記脱硫部で硫黄分が除去された脱硫排ガスを冷却水により冷却する冷却部を有する脱硫塔と、
前記脱硫塔により硫黄分が除去された脱硫排ガスと塩基性アミン化合物吸収液とを接触させて、当該脱硫排ガス中のCOを当該塩基性アミン化合物吸収液に吸収させるCO吸収部、前記CO吸収部でCOが除去された脱炭酸排ガスと洗浄水とを接触させて当該脱炭酸排ガスを洗浄する洗浄部、および前記CO吸収部によりCOが吸収された脱炭酸排ガスを酸性水と接触させて、当該脱炭酸排ガスに同伴する塩基性アミン化合物を排ガスから除去する吸収液処理部を有する吸収塔と、
COを吸収した前記塩基性アミン化合物吸収液を加熱して、この吸収液からCOを分離後、除去することにより、COガスを排出するとともに、吸収液を再生する再生塔と、
前記脱硫部へ導入される前の前記排ガスと水とを接触させて、前記酸性水を製造する酸性水製造装置であって、前記脱硫塔内に配置される酸性水製造装置を備え、
前記排ガスと接触させる水が、前記脱硫塔、前記吸収塔又は前記再生塔で発生する凝縮水であるCO回収装置。
【請求項2】
前記酸性水製造装置中の酸性水の水位を測定する水位センサー(water level sensor)と、酸性水のpH値を測定するpHセンサーと、前記水位センサーとpHセンサーの測定値に基づいて、酸性水製造装置へ供給する前記排ガスと前記凝縮水と酸性水製造装置からの排水を調整して酸性水のpH値と水位とを制御する第1制御部と、を備える請求項1記載のCO回収装置。
【請求項3】
前記吸収液処理部を循環する酸性水のpH値を測定するpHセンサーと、前記吸収液処理部へ供給する酸性水の流量を測定するフローセンサー(flow sensor)と、前記pHセンサーの測定値に基づいて、前記吸収液処理部へ供給する酸性水の流量を調整して前記脱炭酸排ガスと接触させる酸性水のpH値と流量とを制御する第2制御部と、を備える請求項1記載のCO回収装置。
【請求項4】
CO回収方法であって、
排ガス中の硫黄分を除去する脱硫工程と、
排ガスを冷却する冷却工程と、
前記脱硫工程で硫黄分が除去された脱硫排ガスと塩基性アミン化合物吸収液とを接触させて、当該脱硫排ガス中のCOを当該塩基性アミン化合物吸収液に吸収させるCO吸収工程と、
COを吸収した吸収液を加熱して、この吸収液からCOを分離後、除去することにより、COガスを排出するとともに、吸収液を再生する再生工程と、
前記CO吸収工程でCOが除去された脱炭酸排ガスと洗浄水とを接触させて、当該脱炭酸排ガスを洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程後の脱炭酸排ガスを酸性水と接触させて、当該脱炭酸排ガスに同伴する塩基性アミン化合物を排ガスから除去する除去工程と、
前記脱硫工程へ導入される前の前記排ガスと、前記脱硫工程、前記冷却工程、前記CO吸収工程、再生工程または洗浄工程で発生する凝縮水とを接触させて、前記酸性水を酸性水製造装置によって製造する酸性水製造工程であって、前記酸性水製造装置として、前記脱硫塔内に配置される酸性水製造装置を使用する酸性水製造工程を含むCO回収方法。
【請求項5】
前記酸性水製造工程は、酸性水の水量を測定する工程と、酸性水のpH値を測定する工程と、前記水量とpHの測定値に基づいて排ガスと水との接触を制御して酸性水の水量とpHを調整する工程と、を含む請求項4記載のCO回収方法。
【請求項6】
前記除去工程は、酸性水を循環させて脱炭酸排ガスと接触させる循環工程と、循環する酸性水のpH値を測定する工程と、前記pHの測定値に基づいて前記循環する酸性水へ新たな酸性水を供給する工程と、前記新たな酸性水の供給量を測定する工程と、前記pHの測定値に基づいて前記新たな酸性水の供給量を制御する工程と、を含む請求項5記載のCO回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO回収装置およびCO回収方法に関し、特に、吸収液と接触してCOを除去された脱炭酸排ガスに残存して放出される塩基性アミン化合物類の濃度を低減するCO回収装置およびCO回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球の温暖化現象の原因の一つとして、COによる温室効果が指摘され、その対策が急務となっている。COの発生源としては、化石燃料を燃焼させるあらゆる人間の活動分野に及び、その排出抑制への要求が一層強まる傾向にある。これに伴い、大量の化石燃料を使用する火力発電所などの動力発生設備を対象に、ボイラの排ガスをアミン化合物水溶液などのアミン系吸収液と接触させ、排ガス中のCOを除去し回収する方法が研究されている。
【0003】
このようなアミン系吸収液を用いて排ガスからCOを回収する場合、COが回収された脱炭酸排ガスに、アミン化合物が同伴してしまう。同伴したアミン化合物による大気汚染が発生する事態を防ぐため、脱炭酸排ガスと共に放出されるアミン化合物の放出量を低減する必要がある。
【0004】
特開平10−33938号公報では、アミン化合物を捕集する技術として、吸収液との気液接触によりCOが吸収除去された脱炭酸排ガスに対して硫酸を噴霧させることで、脱炭酸排ガスに同伴されたアミン化合物を塩基性アミン化合物硫酸塩にした後、塩基性アミン化合物硫酸塩を含む脱炭酸排ガスをデミスタに通過させることで、脱炭酸排ガスから塩基性アミン化合物硫酸塩を捕集することが開示されている。
【0005】
このような構成のCO2吸収装置では、排出されるガスに同伴するCO2吸収液に由来する塩基性アミン化合物の濃度をできるだけ低くすることが求められる。特に、将来予想される処理ガス流量の多い火力発電所などの排ガスに対して、CO回収装置を設置する場合、排ガスの放出量が多量であることから、脱炭酸排ガスに残存して放出される吸収液成分の放出量が増加する傾向にあり、放出される吸収液成分の濃度をより一層低減することが必要である。
【0006】
特開2011−115724号公報では、吸収液成分の濃度をより一層低減する技術が開示されている。具体的には、排ガスと塩基性アミン化合物吸収液とを接触させて前記排ガス中のCOを前記塩基性アミン化合物吸収液に吸収させるCO吸収部、および前記CO吸収部でCOを除去された脱炭酸排ガスと洗浄水とを接触させて前記脱炭酸排ガスに同伴する塩基性アミン化合物類を除去する少なくとも一つ以上の水洗部を有する吸収塔を備えるCO回収装置が開示されている。このCO回収装置は、前記水洗部の脱炭酸排ガスの流れの後段に、前記脱炭酸排ガスと循環する酸性水とを接触させて前記脱炭酸排ガスに同伴する塩基性アミン化合物類をさらに除去する吸収液処理部を備えることを特徴とする。この装置によれば、脱炭酸排ガスに残存して放出される吸収液成分の濃度をより一層低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
吸収液処理部を備えるCO回収装置では、脱炭酸排ガスと接触させる硫酸等の酸性水を購入し、塩基性アミン化合物類を除去するために、CO回収装置に供給する。塩基性アミン化合物類の除去に用いた酸性水は、排水することとなる。ここで、酸性水はプロセス外の水であり、プロセス水の排水の他に酸性水を排水することとなるため、排水の総量が増加してしまう。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するべく、コストや排水の総量を抑えることが可能な、吸収液処理部を備えるCO回収装置、およびCO回収方法を提供することを目的とする。
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係るCO回収装置は、排ガス中の硫黄分を除去する脱硫部と前記脱硫部で硫黄分が除去された脱硫排ガスを冷却水により冷却する冷却部を有する脱硫塔と、前記脱硫塔により硫黄分が除去された脱硫排ガスと塩基性アミン化合物吸収液とを接触させて、当該脱硫排ガス中のCOを当該塩基性アミン化合物吸収液に吸収させるCO吸収部、前記CO吸収部でCOが除去された脱炭酸排ガスと洗浄水とを接触させて当該脱炭酸排ガスを洗浄する洗浄部、および前記CO吸収部によりCOが吸収された脱炭酸排ガスを酸性水と接触させて、当該脱炭酸排ガスに同伴する塩基性アミン化合物を排ガスから除去する吸収液処理部を有する吸収塔と、COを吸収した前記塩基性アミン化合物吸収液を加熱して、この吸収液からCOを分離後、除去することにより、COガスを排出するとともに、吸収液を再生する再生塔と、前記脱硫部へ導入される前の前記排ガスと水とを接触させて、前記酸性水を製造する酸性水製造装置を備え、前記排ガスと接触させる水が、前記脱硫塔、前記吸収塔又は前記再生塔で発生する凝縮水である。
【0010】
また、本発明に係るCO回収方法は、排ガス中の硫黄分を除去する脱硫工程と、排ガスを冷却する冷却工程と、前記脱硫工程で硫黄分が除去された脱硫排ガスと塩基性アミン化合物吸収液とを接触させて、当該脱硫排ガス中のCOを当該塩基性アミン化合物吸収液に吸収させるCO吸収工程と、COを吸収した吸収液を加熱して、この吸収液からCOを分離後、除去することにより、COガスを排出するとともに、吸収液を再生する再生工程と、前記CO吸収工程でCOが除去された脱炭酸排ガスと洗浄水とを接触させて、当該脱炭酸排ガスを洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程後の脱炭酸排ガスを酸性水と接触させて、当該脱炭酸排ガスに同伴する塩基性アミン化合物を排ガスから除去する除去工程と、前記脱硫工程へ導入される前の前記排ガスと、前記脱硫工程、前記冷却工程、前記CO吸収工程、再生工程または洗浄工程で発生する凝縮水とを接触させて、前記酸性水を製造する酸性水製造工程を含む。
【発明の効果】
【0011】
脱硫処理前の排ガスの硫化物とプロセス中の冷却水を原料として酸性水を製造することにより、酸性水の購入コストや、排水の総量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るCO回収装置の概略図である。
図2図2は、図1とは異なる形態の本発明の実施の形態に係るCO回収装置の概略図である。
図3図3は、図1図2とは異なる形態の本発明の実施の形態に係るCO回収装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係るCO回収装置およびCO回収方法について、その一般的形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
まず、本発明のCO回収装置は、脱硫塔、吸収塔、再生塔、および酸性水製造装置を基本構成とする。脱硫塔は、少なくとも脱硫部と冷却部を有する。脱硫部は、排ガス中の硫黄分を除去する部分であり、冷却部は、前記脱硫部で硫黄分が除去された脱硫排ガスを冷却水により冷却する部分である。脱硫排ガスの温度が高い場合には、COを吸収する効率が低下するため,前記吸収液と脱硫排ガスを接触させる前に、冷却部により脱硫排ガスを冷却しておくことができる。
【0015】
吸収塔は、CO吸収部、洗浄部、および吸収液処理部を少なくとも有する。CO吸収部は、前記脱硫塔により硫黄分が除去された脱硫排ガスと塩基性アミン化合物吸収液とを接触させて、当該脱硫排ガス中のCOを当該塩基性アミン化合物吸収液に吸収させる部分である。洗浄部は、前記CO吸収部でCOが除去された脱炭酸排ガスと洗浄水とを接触させて、当該脱炭酸排ガスを洗浄する。洗浄により、脱炭酸排ガスに同伴した塩基性アミン化合物吸収液を除去することができる。吸収液処理部は、前記CO吸収部によりCOが吸収された脱炭酸排ガスを酸性水と接触させて、当該脱炭酸排ガスに同伴する塩基性アミン化合物を排ガスから除去する部分である。
【0016】
再生塔は、COを吸収した前記塩基性アミン化合物吸収液を加熱して、この吸収液からCOを分離後、除去することにより、COガスを排出するとともに、吸収液を再生する塔である。
【0017】
本発明のCO回収装置は、前記脱硫装置へ導入される前の前記排ガスと水とを接触させて、前記酸性水を製造する酸性水製造装置を備える。酸性水製造装置によって、脱硫処理前の排ガスが含む硫化物を原料とし、この硫化物と水とを接触させて酸性水を製造することができる。この酸性水製造装置により、酸性水の購入コストを抑えることができる。酸性水製造装置の具体例としては、スクラバ、充填塔、ジェットバルブリアクタなどが挙げられる。
【0018】
前記排ガスと接触させる水が、前記脱硫塔、前記吸収塔又は前記再生塔で発生する凝縮水である。前記凝縮水を用いれば、酸性水を製造するために脱硫塔の系外から水を補給する必要がないため、排水の総量を抑えることができる。
【0019】
前記酸性水製造装置は、前記脱硫塔内に配置することができる。酸性水製造装置を脱硫塔内に配置することにより、酸性水製造装置の設置面積を低減することができる。
【0020】
本発明のCO回収装置は、前記酸性水に硫酸を添加する硫酸補給タンクを備えることができる。排ガス中の硫化物や冷却水の量が少ない場合には、塩基性アミン化合物の除去に十分な酸性水を、酸性水製造装置にて製造することができない。この場合に、硫酸補給タンクを備えていれば、硫酸を添加することで塩基性アミン化合物の中和に十分な酸性水を供給することができる。
【0021】
本発明のCO回収装置は、前記酸性水製造装置中の酸性水の水位を測定する水位センサー(water level sensor)と、酸性水のpH値を測定するpHセンサーと、前記水位センサーとpHセンサーの測定値に基づいて、酸性水製造装置へ供給する前記排ガスと前記凝縮水と酸性水製造装置からの排水とを調整して酸性水のpH値と水位とを制御する第1制御部と、をさらに備えることができる。これらを備えることにより、酸性水の製造を管理することができるからである。
【0022】
本発明のCO回収装置は、前記吸収液処理部を循環する酸性水のpH値を測定するpHセンサーと、前記吸収液処理部へ供給する酸性水の流量を測定するフローセンサー(flow sensor)と、前記pHセンサーの測定値に基づいて、前記吸収液処理部へ供給する酸性水の流量を調整して前記脱炭酸排ガスと接触させる酸性水のpH値と流量とを制御する第2制御部と、をさらに備えることができる。これらを備えることにより、塩基性アミン化合物の除去に十分な酸性水を無駄なく吸収液処理部へ供給することができるからである。
【0023】
本発明のCO回収装置は、基本構成となる脱硫塔、吸収塔、再生塔、酸性水製造装置の他、他の設備を有することができる。
【0024】
次に、本発明のCO回収方法について説明する。本発明のCO回収方法は、脱硫工程と、冷却工程と、CO吸収工程と、再生工程と、洗浄工程と、除去工程と、酸性水製造工程を少なくとも含む。
【0025】
脱硫工程は、排ガス中の硫黄分を除去する工程である。冷却工程は、前記脱硫工程で硫黄分が除去された脱硫排ガスを冷却水により冷却する工程である。塩基性アミン化合物吸収液中のアミン化合物は、熱により分解してしまう。そのため、脱硫排ガスの温度が高い場合には、前記吸収液と脱硫排ガスを接触させる前に、冷却工程により脱硫排ガスを冷却しておくことができる。
【0026】
CO吸収工程は、前記脱硫工程で硫黄分が除去された脱硫排ガスと塩基性アミン化合物吸収液とを接触させて、当該脱硫排ガス中のCOを当該塩基性アミン化合物吸収液に吸収させる工程である。
【0027】
再生工程は、COを吸収した吸収液を加熱して、この吸収液からCOを分離後、除去することにより、COガスを排出するとともに、塩基性アミン化合物吸収液がCOを吸収できるよう前記吸収液を再生する工程である。
【0028】
洗浄工程は、前記CO吸収工程と除去工程との間に、前記CO吸収工程でCOが除去された脱炭酸排ガスと洗浄水とを接触させて、当該脱炭酸排ガスを洗浄する工程である。前記洗浄工程により、脱炭酸排ガスに同伴した塩基性アミン化合物吸収液を除去することができる。
【0029】
除去工程は、前記CO吸収工程でCOが除去された脱炭酸排ガスを酸性水と接触させて、当該脱炭酸排ガスに同伴する塩基性アミン化合物を排ガスから除去する工程である。
【0030】
酸性水製造工程は、前記脱硫工程へ導入される前の前記排ガスと、前記脱硫工程、前記冷却工程、前記CO吸収工程又は再生工程で発生する凝縮水とを接触させて、前記酸性水を製造する工程である。脱硫処理前の排ガスが含む硫化物を原料とし、この硫化物と前記凝縮水とを接触させて酸性水を製造することができる。この工程により、酸性水の購入コストを抑えることができる。
【0031】
本発明のCO回収方法は、前記処理工程の前に、前記酸性水に硫酸を添加する硫酸添加工程を含むことができる。排ガス中の硫化物や冷却水の量が少ない場合には、酸性水製造工程において塩基性アミン化合物の除去に十分な酸性水を製造することができない。この場合に、硫酸添加工程により硫酸を添加することで、塩基性アミン化合物の除去に十分な酸性水を供給することができる。
【0032】
本発明のCO回収方法において、前記酸性水製造工程は、酸性水の水量を測定する工程と、酸性水のpH値を測定する工程と、前記水量とpHの測定値に基づいて排ガスと水との接触を制御して酸性水の水量とpHを調整する工程と、を含むことができる。これらの工程を含むことにより、酸性水の製造を管理することができる。
【0033】
本発明のCO回収方法において、前記除去工程は、酸性水を循環させて脱炭酸排ガスと接触させる循環工程と、循環する酸性水のpH値を測定する工程と、前記pHの測定値に基づいて前記循環する酸性水へ新たな酸性水を供給する工程と、前記新たな酸性水の供給量を測定する工程と、前記pHの測定値に基づいて前記新たな酸性水の供給量を制御する工程と、を含むことができる。これらの工程を含むことにより、塩基性アミン化合物の除去に十分な酸性水を無駄なく脱炭酸排ガスと接触させることができる。
【0034】
本発明のCO回収方法は、脱硫工程、冷却工程、CO吸収工程、再生工程、除去工程、酸性水製造工程の他、他の工程を含むことができる。
【0035】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この図面により本発明が限定されるものではない。
【0036】
図1は、本実施の形態に係るCO回収装置の概略図である。脱硫塔10、吸収塔20、再生塔50、および酸性水製造装置30を基本構成とする。
【0037】
脱硫塔10は、脱硫装置11と冷却装置12を有する。脱硫装置11は、排ガス中の硫黄分を除去する装置である。脱硫装置11を用いた硫黄分の除去方法としては、例えば、石灰石(CaCO)を水に懸濁させた石灰石スラリーを排ガスと接触させ、排ガス中の亜硫酸ガス(SO)を吸収除去する方法を用いることができる。
【0038】
そして、冷却装置12は、脱硫装置11で硫黄分が除去された脱硫排ガスを冷却水により冷却する装置である。吸収塔20でのCOを吸収する効率を向上させるため、冷却装置12で脱硫排ガスを冷却する。脱硫排ガスは冷却部13で冷却水と接触する。脱硫排ガスは冷却水で冷却されて、同伴する水蒸気が凝縮する。この凝縮水と冷却水は冷却部13より排出される。排出された凝縮水は、冷却水循環ポンプ14により冷却水管15を通って冷却部13の上部へ運ばれる。その途中で、凝縮水と使用された冷却水はクーラー16により冷却され、再び冷却水となって新たな脱硫排ガスを冷却する。
【0039】
吸収塔20は、CO吸収部21、洗浄部22、および吸収液処理部23を有する。CO吸収部21は、前記脱硫塔10により冷却された脱硫排ガスと塩基性アミン化合物吸収液とを接触させて、当該脱硫排ガス中のCOを当該塩基性アミン化合物吸収液に吸収させる部分である。
【0040】
脱硫排ガスと接触した塩基性アミン化合物吸収液は、CO吸収部21より排出される。排出された塩基性アミン化合物吸収液は、吸収液循環ポンプ21aにより吸収液管21bを通って再生塔50へ運ばれる。
【0041】
洗浄部22は、CO吸収部21でCOが除去された脱炭酸排ガスと洗浄水とを接触させて、脱炭酸排ガスを洗浄する部分である。
【0042】
脱炭酸排ガスと接触した洗浄水は、凝縮水となって洗浄部22より排出される。排出された凝縮水は、洗浄水循環ポンプ22aにより洗浄水管22bを通って洗浄部22の上部へ運ばれる。その途中で、凝縮水はクーラー22cにより冷却され、洗浄水となって新たな脱炭酸排ガスを洗浄する。また、凝縮水の一部は酸性水製造装置30へ送られる。
【0043】
吸収液処理部23は、洗浄部22により洗浄された脱炭酸排ガスを酸性水と接触させて、脱炭酸排ガスに同伴する塩基性アミン化合物を中和する部分である。
【0044】
洗浄部22で洗浄された脱炭酸排ガスと接触した酸性水は、吸収液処理部23より排出される。排出された酸性水は、酸性水循環ポンプ23aにより酸性水管23bを通って吸収液処理部23の上部へ運ばれ、新たな脱炭酸排ガスと接触する。繰り返し循環することで、塩基性アミン化合物を飽和近くまで中和した酸性水は、バルブ23cを開放することにより、排水管23eを介して排水処理部23fへ排水される。
【0045】
酸性水製造装置30は、脱硫装置10へ導入される前の排ガスと、冷却装置12、洗浄部22、または分離器60の凝縮水とを接触させて、酸性水を製造する。排ガスは、ガス導入管31により脱硫装置10へ導入される。バルブ32を開放することにより、脱硫装置10へ導入される排ガスの一部を酸性水製造装置30へ導入する。また、バルブ33を開放することで、凝縮水を酸性水製造装置30へ導入する。酸性水製造装置中の酸性水の量を水位センサー34で測定し、酸性水のpHはpHセンサー35で測定する。これらのセンサーで測定した酸性水の水量やpHの値に応じて、バルブ32、33を開閉し、酸性水の水量とpHを制御する。また、過剰量の酸性水は、バルブ36を開放することにより、脱硫装置11の石灰石スラリータンク17へ導入することができる。酸性水の水量やpHの制御、および過剰量の酸性水の石灰石スラリータンク17への導入は、制御部37により行われる。
【0046】
酸性水製造装置30で製造された酸性水は、酸性水輸送ポンプ40により酸性水輸送管41を介して酸性水管23bへ供給される。吸収液処理部23を循環する酸性水のpH値は、pHセンサー42にて測定する。また、酸性水管23bへ供給する酸性水の流量は、フローセンサー43にて測定する。pHセンサー42の測定値に基づいて、酸性水管23bへ供給する酸性水の流量を調整することにより、脱炭酸排ガスと接触させる酸性水のpH値と供給流量とを、バルブ23cおよびバルブ45の開閉により制御する。酸性水のpH値と流量の前記制御、および排水するためのバルブ23dの開閉は、制御部44により行われる。
【0047】
再生塔50は、COを吸収した塩基性アミン化合物吸収液からCOを放出させて、塩基性アミン化合物吸収液がCOを吸収できるよう再生する設備である。COを吸収した塩基性アミン化合物吸収液は、吸収液循環ポンプ21aにより吸収液管21bから熱交換器51を経由し、吸収液管52を通って再生塔50に送られる。再生塔50に送られた塩基性アミン化合物吸収液は、下部充填層53を通過しつつ、再生塔50の下部に接続されたリボイラ54による加熱によりCOガスが放出され、その後再生塔50内の底部55に貯留される。底部55に貯留されたCOガスを放出した塩基性アミン化合物吸収液は、吸収液管56を通り、吸収液管21bを経由して吸収塔20へ供給される。その途中で、塩基性アミン化合物吸収液はクーラー21cにより冷却され、新たな脱硫排ガスと接触する。放出されたCOガスは、再生塔50を上昇し、上部充填層57を経て、再生塔50の頂部より排出管58を通って排出される。ここで、排出されるCOガスには水分が含まれているため、コンデンサ59にて冷却して凝縮水とする。この凝縮水とCOガスは、分離器60にて分離する。高純度となったCOガスはバルブ61を開放して回収される。凝縮水の一部は酸性水製造装置30へ送られる。または還流水として還流水管62を通って再生塔50へ送られる。
【0048】
図2は、図1とは異なる形態の本発明の実施の形態に係るCO回収装置の概略図である。脱硫塔10、吸収塔20、再生塔50、および酸性水製造装置30を基本構成とする点は図1のCO回収装置と同様であり、図1と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。排ガスに同伴される塩基性アミン化合物の量が多い場合,吸収液処理部23へ供給する酸性水の量が多くなる。一方で,排ガス中の硫黄分が少ない場合,酸性水の製造量が減少する。そこで,硫酸などの酸を,酸性水製造装置で製造した酸性水に添加することにより,pHを低く維持し,吸収液処理部23に酸性水を供給しても良い。図2のCO回収装置は、酸性水に添加する硫酸を蓄える硫酸補給タンク70をさらに備える。塩基性アミン化合物の除去に必要な量の酸性水を、酸性水製造装置30にて十分に製造することができない場合や、酸性水製造装置30で製造した酸性水のpH値が高い場合には、バルブ71を閉めてバルブ72を開放し、硫酸補給タンク70から硫酸導入管73を介して硫酸が酸性水に加えられる。バルブ71、72の開閉は、制御部74により行われる。
【0049】
図3は、図1図2とは異なる形態の本発明の実施の形態に係るCO回収装置の概略図である。脱硫塔10、吸収塔20、および再生塔50を基本構成とする点は図1のCO回収装置と同様であり、図1と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。図3のCO回収装置は、図1図2に示すCO回収装置とは異なり、酸性水製造装置75を脱硫塔20内に配置している。
【0050】
酸性水製造装置75は、脱硫装置10へ導入される排ガスを分取し、冷却装置12、洗浄部22、または分離器60の凝縮水と接触させて、酸性水を製造する。排ガスは、ガス導入管76により酸性水製造装置75へ導入される。バルブ77を閉鎖することにより、脱硫装置10へ導入される排ガスの一部を酸性水製造装置75へ導入する。また、バルブ78を開放することで、凝縮水を酸性水製造装置75へ導入する。酸性水製造装置中の酸性水の量を水位センサー79で測定し、酸性水のpHはpHセンサー80で測定する。これらのセンサーで測定した酸性水の水量やpHの値に応じて、バルブ77、78を開閉し、酸性水の水量とpHを制御する。酸性水の水量やpHの制御は、制御部81により行われる。酸性水製造装置75で製造された酸性水は、酸性水輸送ポンプ40により酸性水輸送管41を介して酸性水管23bへ供給される。
【0051】
ここまで本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 脱硫塔
11 脱硫装置
12 冷却装置
13 冷却部
14 冷却水循環ポンプ
15 冷却水管
16 クーラー
17 石灰石スラリータンク
20 吸収塔
21 CO吸収部
21a 吸収液循環ポンプ
21b 吸収液管
21c クーラー
22 洗浄部
22a 洗浄水循環ポンプ
22b 洗浄水管
22c クーラー
23 吸収液処理部
23a 酸性水循環ポンプ
23b 酸性水管
23c バルブ
23d バルブ
23e 排水管
23f 排水処理部
30 酸性水製造装置
31 ガス導入管
32 バルブ
33 バルブ
34 水位センサー
35 pHセンサー
36 バルブ
37 制御部
40 酸性水輸送ポンプ
41 酸性水輸送管
42 pHセンサー
43 フローセンサー
44 制御部
45 バルブ
50 再生塔
51 熱交換器
52 吸収液管
53 下部充填層
54 リボイラ
55 底部
56 吸収液管
57 上部充填層
58 排出管
59 コンデンサ
60 分離器
61 バルブ
62 還流水管
70 硫酸補給タンク
71 バルブ
72 バルブ
73 硫酸導入管
74 制御部
75 酸性水製造装置
76 ガス導入管
77 バルブ
78 バルブ
79 水位センサー
80 pHセンサー
81 制御部
図1
図2
図3