(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インバータ回路への入力電流または前記加熱コイルに流れるコイル電流の電流変化量を検出する電流変化量検出手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱調理器。
前記駆動制御手段は、前記加熱期間の長さに基づいて前記駆動周波数を変化させて前記高周波電力を低下させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
前記駆動制御手段は、前記加熱期間の長さに基づいて前記駆動信号のオンデューティ比を変化させて前記高周波電力を低下させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態1.
(構成)
図1は、本発明の誘導加熱調理器の実施形態1を示す分解斜視図である。
図1に示すように、誘導加熱調理器100の上部には、鍋などの被加熱物5が載置される天板4を有している。天板4には、被加熱物5を誘導加熱するための加熱口として、第一の加熱口1、第二の加熱口2、第三の加熱口3が設けられている。また、誘導加熱調理器100は、各加熱口1〜3に対応してそれぞれ第一の加熱手段11、第二の加熱手段12、第三の加熱手段13を備えており、それぞれの加熱口1〜3に対して被加熱物5を載置して誘導加熱を行うことができるものである。
図1では本体の手前側に左右に並べて第一の加熱手段11と第二の加熱手段12が設けられ、本体の奥側ほぼ中央に第三の加熱手段13が設けられている。
なお、各加熱口1〜3の配置はこれに限るものではない。例えば、3つの加熱口1〜3を略直線状に横に並べて配置しても良い。また、第一の加熱手段11の中心と第二の加熱手段12の中心との奥行き方向の位置が異なるように配置しても良い。
【0011】
天板4は、全体が耐熱強化ガラスや結晶化ガラス等の赤外線を透過する材料で構成されており、誘導加熱調理器100本体に対し上面開口外周との間にゴム製パッキンやシール材を介して水密状態に固定される。天板4には、第一の加熱手段11、第二の加熱手段12及び第三の加熱手段13の加熱範囲(加熱口1〜3)に対応して、鍋の大まかな載置位置を示す円形の鍋位置表示が、塗料の塗布や印刷等により形成されている。
【0012】
天板4の手前側には、第一の加熱手段11、第二の加熱手段12、及び第三の加熱手段13で被加熱物5を加熱する際の火力や調理メニュー(湯沸しモード、揚げ物モード等)を設定するための入力装置として、操作部40a、操作部40b、及び操作部40c(以下、操作部40と総称する場合がある)が設けられている。また、操作部40の近傍には、報知手段41として、誘導加熱調理器100の動作状態や操作部40からの入力・操作内容等を表示する表示部41a、表示部41b、及び表示部41cが設けられている。なお、操作部40a〜40cと表示部41a〜41cは加熱口1〜3毎に設けられている場合や、加熱口1〜3を一括して操作部40と表示部41を設ける場合など、特に限定するものではない。
【0013】
天板4の下方であって本体の内部には、第一の加熱手段11、第二の加熱手段12、及び第三の加熱手段13を備えており、各々の加熱手段11〜13はそれぞれ加熱コイル11a〜13aで構成されている。
【0014】
誘導加熱調理器100の本体の内部には、各加熱手段11〜13の加熱コイル11a〜13aに高周波電力を供給する駆動回路50と、駆動回路50を含め誘導加熱調理器100全体の動作を制御するための制御部30とが設けられている。
【0015】
加熱コイル11a〜13aは、略円形の平面形状を有し、絶縁皮膜された任意の金属(例えば銅、アルミニウムなど)からなる導電線を円周方向に巻き付けることにより構成されている。そして、各加熱コイル11a〜13aは駆動回路50から高周波電力が供給されたときに誘導加熱動作により被加熱物5を加熱する。
【0016】
図2は
図1の誘導加熱調理器100の駆動回路50の一例を示す模式図である。
図2には駆動回路50は加熱手段11〜13毎に設けられている場合であって、加熱コイル11aについての駆動回路50について例示する。各加熱手段11〜13の回路構成は同一であっても良いし、加熱手段11〜13毎に変更しても良い。
図2の駆動回路50は、直流電源回路22と、インバータ回路23と、共振コンデンサ24aとを備える。
【0017】
直流電源回路22は、交流電源21から入力される交流電圧を直流電圧に変換して、インバータ回路23へ出力するものであって、ダイオードブリッジ等からなる整流回路22a、リアクタ(チョークコイル)22b、平滑コンデンサ22cを備える。なお、直流電源回路22の構成は上記構成に限らず、種々の公知の技術を用いることができる。
【0018】
インバータ回路23は、直流電源回路22から出力される直流電力を高周波の交流電力に変換し、加熱コイル11aと共振コンデンサ24aとに供給するものである。インバータ回路23は、スイッチング素子23a、23bが直流電源回路22の出力に直列に接続された、いわゆるハーフブリッジ型のインバータであり、フライホイールダイオードとしてダイオード23c、23dがそれぞれスイッチング素子23a、23bと並列に接続されている。
【0019】
スイッチング素子23a、23bは、例えばシリコン系からなるIGBTからなっている。なお、炭化珪素あるいは窒化ガリウム系材料などのワイドバンドギャップ半導体からなっていてもよい。スイッチング素子23a、23bにワイドバンドギャップ半導体を用いることで、スイッチング素子23a、23bの通電損失を減らすことができる。また、スイッチング周波数(駆動周波数)を高周波(高速)にしても駆動回路の放熱が良好であるため、駆動回路の放熱フィンを小型にすることができ、駆動回路50の小型化および低コスト化を実現することができる。なお、スイッチング素子23a、23bがIGBTの場合について例示しているがこれに限定されるものではなく、MOSFET等のその他のスイッチング素子でもよい。
【0020】
このスイッチング素子23a、23bの動作は制御部30により制御されており、インバータ回路23は制御部30からスイッチング素子23a、23bへ供給される駆動周波数に応じて20kHz〜50kHz程度の高周波交流電力を出力する。すると、加熱コイル11aに数十A程度の高周波電流が流れ、加熱コイル11aは流れる高周波電流により発生する高周波磁束によって直上の天板4上に載置された被加熱物5を誘導加熱する。
【0021】
このインバータ回路23には、加熱コイル11aおよび共振コンデンサ24aにより構成された共振回路が接続されている。共振コンデンサ24aは加熱コイル11aに直列接続されており、この共振回路は加熱コイル11aのインダクタンスや共振コンデンサ24aの容量等に応じた共振周波数となる。なお、加熱コイル11aのインダクタンスは被加熱物5(金属負荷)が磁気結合した際に金属負荷の特性に応じて変化し、このインダクタンスの変化に応じて共振回路の共振周波数が変化する。
【0022】
さらに、駆動回路50は、入力電流検出手段25a、コイル電流検出手段25b、温度検知手段26を有している。入力電流検出手段25aは、交流電源(商用電源)21から直流電源回路22へ入力される電流を検出し、入力電流値に相当する電圧信号を制御部30へ出力する。
【0023】
コイル電流検出手段25bは、加熱コイル11aと共振コンデンサ24aとの間に接続されている。コイル電流検出手段25bは、加熱コイル11aに流れる電流を検出し、加熱コイル電流値に相当する電圧信号を制御部30に出力する。
【0024】
温度検知手段26は、例えばサーミスタにより構成され、被加熱物5から天板4に伝熱した熱により温度を検出する。なお、サーミスタに限らず赤外線センサなど任意のセンサを用いても良い。温度検知手段26で検知した温度情報を活用することで、より信頼性の高い誘導加熱調理器100を得ることができる。
【0025】
図3は
図2の誘導加熱調理器100における制御部30の構成を示す機能ブロック図であり、
図3を参照して制御部30について説明する。
図3の制御部30はマイコンやDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)等からなる誘導加熱調理器100の動作を制御するものであって、駆動制御手段31、負荷判定手段32、駆動周波数設定手段33、電流変化検出手段34、期間計測手段35、入出力制御手段36を備えている。
【0026】
駆動制御手段31は、インバータ回路23のスイッチング素子23a、23bに駆動信号DSを出力してスイッチング動作させることにより、インバータ回路23を駆動するものである。そして駆動制御手段31は、加熱コイル11aに供給する高周波電力を制御することにより、被加熱物5への加熱を制御する。この駆動信号DSは例えば所定のオンデューティ比(例えば0.5)の20〜50kHz程度の所定の駆動周波数からなる信号である。
【0027】
負荷判定手段32は、被加熱物5の負荷判定処理を行うものであって、負荷として被加熱物5の材質を判定するものである。なお、負荷判定手段32は、負荷となる被加熱物5(鍋)の材質は、例えば鉄やSUS430等の磁性材、SUS304等の高抵抗非磁性材、アルミニウムや銅等の低抵抗非磁性材に大別し判定される。
【0028】
負荷判定手段32は、入力電流とコイル電流との関係を用いて上述した被加熱物5の負荷を判定する機能を有している。
図4は、加熱コイル11aに流れるコイル電流と入力電流の関係に基づく被加熱物5の負荷判別テーブルの一例を示すグラフである。
図4に示すように、天板4に載置された被加熱物5の材質(鍋負荷)によってコイル電流と入力電流との関係が異なる。
【0029】
負荷判定手段32には
図4に示す入力電流とコイル電流との相関関係をテーブル化した負荷判定テーブルが記憶されている。そして、負荷判定手段32は、駆動制御手段31から負荷判定用の駆動信号が出力されてインバータ回路23を駆動された際に、入力電流検出手段25aの出力信号から入力電流を検出する。同時に負荷判定手段32は、コイル電流検出手段25bの出力信号からコイル電流を検出する。負荷判定手段32は検出したコイル電流および入力電流に基づいて
図4の負荷判定テーブルから載置された被加熱物(鍋)5の材質を判定する。このように、負荷判定テーブルを内部に記憶することで安価な構成で自動的に負荷を判定する負荷判定手段32を構成することができる。
【0030】
なお、
図3の負荷判定手段32が被加熱物5は低抵抗非磁性材であると判定した場合、誘導加熱調理器100では加熱不可能であると判断する。そして、入出力制御手段36はその旨を報知手段41に出力されるように制御し、使用者に鍋の変更を促す。このとき、駆動回路50から加熱コイル11aへ高周波電力が供給されないように制御される。また、負荷判定手段32が無負荷状態であると判定した場合、入出力制御手段36は加熱不可能であることが報知手段41から報知されるように制御し、使用者に鍋の載置を促す。この際も加熱コイル11aには高周波電力が供給されないように制御される。一方、負荷判定手段32は、被加熱物5が磁性材または高抵抗非磁性材であると判定した場合、これらの鍋は誘導加熱調理器100で加熱可能な材質であると判断する。
【0031】
駆動周波数設定手段33は、インバータ回路23から加熱コイル11aへ供給する際、インバータ回路23へ出力する駆動信号DSの駆動周波数fを設定するものである。特に、駆動周波数設定手段33は、負荷判定手段32の判定結果に応じて駆動周波数fを自動的に設定する機能を有している。具体的には、駆動周波数設定手段33には、例えば被加熱物5の材質と設定火力とに応じて駆動周波数fを決定するためのテーブルが記憶されている。そして、駆動周波数設定手段33は、負荷判定結果および設定火力が入力された際に、このテーブルを参照することで駆動周波数fの値fdが決定される。なお、駆動周波数設定手段33は、入力電流が過大とならないように共振回路の共振周波数(
図5における駆動周波数fmax)よりも高い周波数を設定する。
【0032】
このように、駆動周波数設定手段33が負荷判定結果に基づき被加熱物5の材質に応じた駆動周波数fによりインバータ回路23を駆動させることにより、入力電流の増加を抑制することができるため、インバータ回路23の高温化を抑制して信頼性を向上することができる。
【0033】
電流変化検出手段34は、駆動周波数設定手段33において設定された駆動周波数f=fdでインバータ回路23を駆動した際に、所定時間当たりの入力電流の電流変化量ΔIを検出するものである。
図5は被加熱物5の温度変化時の駆動周波数fに対する入力電流の関係を示すグラフである。なお、
図5において、細線は被加熱物5が低温のときの特性であり、太線は被加熱物5が高温のときの特性である。
図5に示すように、被加熱物5の温度によって入力電流が変化する。特性が変化するのは金属で形成される被加熱物5の電気抵抗率、透磁率は温度変化に伴って変化し、駆動回路50における負荷インピーダンスが変化することに起因する。なお、所定時間とは予め設定された期間であってもよいし、操作部40の操作により変更可能な期間であってもよい。
【0034】
図6は
図5の破線で示した部分を拡大したグラフである。前述のように、駆動周波数をfmaxより高い周波数で駆動するため、
図6に示すように、駆動周波数fをfdに固定した状態でインバータ回路23を駆動した場合、被加熱物5の温度上昇に伴い入力電流が徐々に低下し、被加熱物5が低温から高温になるにつれて入力電流(動作点)が点Aから点Bへ向かって変化していく。なお、駆動周波数fをfdに固定した状態においては、インバータ回路23のスイッチング素子のオンデューティ(オンオフ比率)も固定した状態とする。
【0035】
図7は、被加熱物5に内容物として水を収容し、駆動周波数fが固定された状態で加熱した際の被加熱物5の温度および入力電流の時間変化を示すグラフである。
図7(a)のように駆動周波数fを固定して加熱が行われた場合、
図7(b)に示すように被加熱物5の温度(水温)は沸騰するまで徐々に上昇する。また、被加熱物5の温度上昇に伴い、
図7(c)に示すように入力電流が徐々に低下していく(
図6参照)。
【0036】
そして、水が沸点に達するにつれて温度変化量が小さくなり、これに合わせて入力電流の変化量も小さくなる。水が沸騰状態になった際には温度変化量および電流変化量ΔIは非常に小さくなる。そこで、
図3の電流変化検出手段34は入力電流の電流変化量ΔIが設定電流変化量ΔIref(例えば電流変化量が入力電流の3%)以下になったとき、被加熱物5が所定の温度になり沸騰(湯沸かし)が完了したと判断するようになっている。
【0037】
このように、電流変化量ΔIの検出は被加熱物5の温度を検出することを意味する。電流変化量ΔIに基づき被加熱物5の温度変化を検出することにより、被加熱物5の材質によらず、被加熱物5の温度変化を検出することができる。また、入力電流の変化により被加熱物5の温度変化を検出することができるので、温度センサ等と比較して高速に被加熱物5の温度変化を検出することができる。
【0038】
期間計測手段35は、加熱コイル11aへの電力供給開始から電流変化検出手段34において電流変化量ΔIが設定電流変化量ΔIref以下になるまでの加熱期間Thを計測するものである。そして、駆動制御手段31は、期間計測手段35により計測された加熱期間Thの長さに応じて加熱コイル11aに供給する電力を低下させる。駆動制御手段31は、駆動周波数f=fdの固定を解除し、駆動周波数fを増加量Δfだけ増加させ(f=fd+Δf)、インバータ回路23を駆動する。
【0039】
特に、駆動制御手段31は、加熱期間Thの長さに応じて増加量Δfを変化させるものであって、加熱期間Thが長ければ長いほど増加量Δfを小さく設定する。なお、駆動制御手段31には加熱期間Thと増加量Δfとの関係を示すテーブルが予め記憶されており、駆動制御手段31はこのテーブルを参照しながら増加量Δfを決定する。
【0040】
図8および
図9は、被加熱物5内に水が投入され湯沸しを行った際の各特性(駆動周波数f、温度、入力電流)の時間変化の一例を示すグラフである。なお、
図8と
図9とは、湯沸かしモード時において同一の材質からなる被加熱物5内に水を収容したときの特性を示すものであって、
図9は
図8よりも水の量が多い場合の各特性を示すものである。
【0041】
図8(a)に示すように、駆動周波数fをfdに固定して加熱が開始されると、
図8(b)に示すように被加熱物5の温度(水温)は沸騰するまで徐々に上昇する。駆動周波数固定制御においては、被加熱物5の温度上昇に伴い、
図8(c)に示すように入力電流値が、入力電流が徐々に低下していく。また、
図8(b)、(c)に示すように、温度が上昇するにつれて電流変化量ΔIが小さくなっていく。
【0042】
そして、時刻t1において入力電流の電流変化量ΔIが設定電流変化量ΔIref以下になった場合、電流変化検出手段34は湯沸しが完了したと判断するとともに、期間計測手段35は電力供給開始から設定電流変化量ΔIref以下になる時刻t1までの加熱期間Thを計測する。
【0043】
ここで、
図9(a)〜(c)に示すように、被加熱物5の容量(水量)が多い場合、電流変化量ΔIが設定電流変化量ΔIref以下になる時刻t2までの加熱期間Thは
図8における加熱期間Th(時刻t1)よりも長くなる(t2>t1)。被加熱物5内の水量によって入力電流の電流変化量ΔIが設定電流変化量ΔIref以下になるまでの加熱期間Thは異なり、被加熱物5の容量(水量)が多くなればなるほど加熱期間Thは長くなっていく。なお、水の湯沸かしモードにおいて水の容量が異なる場合について例示しているが、湯沸かしモード以外であっても被加熱物5の内容物の種類が異なる場合には加熱期間Thは種類毎に異なることになる。
【0044】
このとき、駆動制御手段31は、駆動周波数fをfdに固定した状態で加熱した後に所定の温度状態(沸騰状態)に保温する際、駆動周波数fを増加量Δfだけ増加させた駆動周波数f=fd+Δfの駆動信号DSを出力する。つまり、被加熱物5の保温時には温度を上昇させる程の火力は不要であるため、加熱コイル11aから被加熱物5への加熱量を抑える。したがって、
図8のように加熱期間Thが短い場合、駆動周波数fを大きく増加させ、駆動周波数f=fd+Δf1の駆動信号DSでインバータ回路23を駆動する。一方、
図9のように加熱期間Thが長い場合、駆動周波数fを小さく増加させ、駆動周波数f=fd+Δf2の駆動信号DSでインバータ回路23を駆動する。
【0045】
図10は駆動周波数fの増加量と入力電流(火力)との関係を示すグラフである。
図10に示すように、駆動周波数fがfdに固定された状態で加熱動作が行われたとき、入力電力は点Aの電流値Iaから点Bの電流値Ibへと変化する。そして、点Bにおいて、電流変化量ΔIが設定電流変化量ΔIref以下になった場合、駆動制御手段31は、加熱期間Thの長さに応じて増加量Δf1(
図8参照)もしくは増加量Δf2(
図9参照)を決定する。
【0046】
この際、駆動周波数fを上げて火力を低下させても水温が殆ど低下せず一定の温度を保ち続けるように増加量Δf1、Δf2が設定され、動作点が点Bから点C1(もしくは点C2)に変化する。そして、駆動周波数f=fd+Δf1の駆動信号DSによりインバータ回路23が駆動した場合、入力電流は電流値Ic1となる。一方、駆動周波数f=fd+Δf2の駆動信号DSによりインバータ回路23が駆動した場合、入力電流は電流値Ic2(>Ic1)となる。すると、駆動周波数fを上げて火力を低下させても、水温は殆ど低下せず保温状態を維持することになる。
【0047】
このように、加熱期間Th以降に投入する高周波電力(火力)について、加熱期間Thが長い場合は火力を高めに設定し、加熱期間Thが短い場合は火力を低めに設定することで、無駄な電力供給を抑えつつ、保温動作を行うことができる省エネで使い勝手の良い誘導加熱調理器を得ることができる。特に、湯沸し(水の沸騰)モードの場合では、必要以上に火力を上げても水温が100℃以上になることはないため、駆動周波数fを上げて火力を低下させても、沸騰状態を維持することができる。
【0048】
(動作例)
図11は誘導加熱調理器100の動作例を示すフローチャートであり、
図1から
図11を参照して誘導加熱調理器100の動作例について説明する。まず、使用者により天板4の加熱口に被加熱物5が載置され、加熱開始(火力投入)の指示が操作部40に行われる。すると、負荷判定手段32において、入力電流とコイル電流との関係を示す負荷判定テーブルを用いて、載置された被加熱物(鍋)5の材質が負荷として判定される(ステップST1、
図4参照)。なお、負荷判定結果が、加熱不可能な材質もしくは無負荷であると判定した場合、その旨を報知手段41から報知され、駆動回路50から加熱コイル11aに高周波電力が供給されないように制御される。
【0049】
次に、駆動周波数設定手段33において、負荷判定手段32の負荷判定結果に基づき判定した鍋材質に応じた駆動周波数fの値fdが決定される(ステップST2)。このとき、駆動周波数fは、入力電流が過大とならないように共振回路の共振周波数よりも高い周波数f=fdに設定される。その後、駆動制御手段31により、駆動周波数fをfdに固定してインバータ回路23が駆動されることにより誘導加熱動作が開始される(ステップST3)。電力供給開始による誘導加熱動作の開始とともに期間計測手段35による加熱期間Thの計測が開始される。
【0050】
誘導加熱動作が行われている間、電流変化検出手段34において所定のサンプリング間隔で電流変化量ΔIが算出される(ステップST4)。この電流変化量ΔIの検出により被加熱物5の温度変化が検出されることになる。そして、電流変化量ΔIが設定電流変化量ΔIref以下であるか否かが判断される(ステップST5)。被加熱物5が低温から高温になるにつれて、電流変化量ΔIが小さくなっていく(
図7〜
図9参照)。入力電流の変化により被加熱物5の温度変化を検出することができるので、温度センサ等と比較して高速に被加熱物5の温度変化を検出することができる。
【0051】
そして、電流変化量ΔIが設定電流変化量ΔIref以下となったとき、期間計測手段35において加熱期間Thが検出される(ステップST6)。その後、駆動制御手段31において、加熱期間Thから駆動周波数fの増加量Δfが決定される。駆動制御手段31においてインバータ回路23の駆動周波数f=fdからf=fd+Δfに変更され、低下した高周波電力がインバータ回路23から加熱コイル11aに供給される(ステップST7、
図8〜
図10参照)。なお、電流変化量ΔIが設定電流変化量ΔIref以下になったとき、もしくは駆動周波数fの値fdを増加量Δfだけ増加させ駆動周波数f=fd+Δfにしたとき、入出力制御手段36の制御により報知手段41から使用者に湯沸し完了の報知が行われる。
【0052】
このように、加熱期間Thの長さに応じて所定の電流変化量ΔIに到達した後に加熱コイル11aに供給される電力の駆動周波数fを増加量Δf1、Δf2だけ変更させることにより、使い勝手が良く、省エネ化を実現した誘導加熱調理器100を提供することができる。すなわち、従来のように、設定電流変化量ΔIrefになった際に所定の駆動周波数fまで単に増加させた場合、内容物の量や種類に応じて最適な保温状態を保つことができないという問題がある。つまり、被加熱物5の内容物の量が多い場合には熱量が足りずに温度が徐々に低下してしまい再加熱が必要となってしまう。一方で被加熱物5の内容物の量が少ない場合には過剰な電力を消費してしまう。
【0053】
ここで、
図8および
図9に示すように、被加熱物5の内容物の容量等が異なれば駆動周波数fは同一であっても加熱期間Thが異なる。この点に着目し、駆動制御手段31が加熱期間Thの長さに応じて増加量Δfを決定し、保温する際の駆動周波数fを変化させる。これにより、被加熱物5の量に即して必要十分な電力を加熱コイル11aに供給することができるため、効率よく省エネ化を図ることができる。
【0054】
実施形態2.
図12および
図13は本発明の実施形態2を示すグラフであり、
図12および
図13を参照して誘導加熱調理器100の駆動制御手段31の別の動作例について説明する。なお、
図12および
図13において
図8および
図9のグラフと同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
図12および
図13の駆動制御手段31の制御が、
図8および
図9の駆動制御手段31の制御と異なる点は、駆動周波数fの変更タイミングである。
【0055】
図12および
図13に示すように、駆動制御手段31は、電流変化量ΔIが設定電流変化量ΔIref以下になってから所定の付加期間Teを経過した後に、高周波電力を低下させる制御を行うようになっている。なお、付加期間Teは、設定電流変化量ΔIref以下になった時刻t1から駆動周波数fを変更する時刻t10(
図12参照)、t20(
図13参照)までの期間を意味する。
【0056】
ここで、付加期間Teは予め駆動制御手段31に設定されたものであってもよいし、操作部40等から入力可能としても良いが、駆動制御手段31は、加熱期間Thの長さに応じて付加期間Teの長さを決定する機能を有している。具体的には、駆動制御手段31は、加熱期間Thが長ければ長いほど付加期間Teを長く設定する。なお、駆動制御手段31は例えば付加期間Te=α×加熱期間Th(αは所定の係数)で算出するようにしてもよいし、加熱期間Thと付加期間Teとの関係を示すテーブルを記憶していても良い。
【0057】
したがって、湯沸しモード設定時は駆動周波数fをfdに固定して駆動しているため、被加熱物5に投入された水量によって、加熱期間Thは変化する。すなわち、
図12のように水量が少ない場合には加熱期間Thは短くなり、
図13のように水量が多い場合には加熱期間Thは長くなる。このとき、駆動制御手段31では加熱期間Thが短い場合、
図12に示すように付加期間Teを短く設定し、加熱期間Thが長い場合、
図13に示すように付加期間Teを長く設定して駆動回路50を駆動する。
【0058】
これにより、確実に被加熱物5内の内容物全体を所定の温度に達するように加熱動作を行うことができる。すなわち、電流変化量ΔIが設定電流変化量ΔIref以下になった直後において、被加熱物(鍋)5の温度は約100℃に達しているが、被加熱物5の内部に投入された水は温度ムラがあり、水全体としては沸騰に至っていない場合がある。そこで、電流変化量ΔIが設定電流変化量ΔIref以下になり、所定の温度に達したと判断した後においても付加期間Teが経過するまで駆動周波数fをfdに固定した状態でインバータ回路23を駆動する。
【0059】
さらに、水量が多い場合は少ない場合と比べて、被加熱物5の内部の水の温度ムラが大きくなることが多く、水全体を確実に沸騰させるためにはより多くの時間が必要となる。そこで、加熱期間Thの長さに応じて付加期間Teを設定する。これにより、沸騰に必要な無駄な電力供給を抑制すると共に、短時間で確実に水全体を沸騰させることができる省エネでかつ使い勝手の良い誘導加熱調理器100を得ることができる。
【0060】
実施形態3.
図14は本発明の誘導加熱調理器の実施形態3を示す図であり、
図14を参照して誘導加熱調理器について説明する。なお、
図14の駆動回路150において
図2の駆動回路50と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
図14の駆動回路150が
図2の駆動回路50と異なる点は、駆動回路150が複数の共振コンデンサ24a、24bを有する点である。
【0061】
具体的には、駆動回路150において、共振コンデンサ24aに並列接続された共振コンデンサ24bをさらに備えた構成を有している。したがって、駆動回路50には加熱コイル11aと共振コンデンサ24a、24bとにより共振回路が構成されることになる。ここで、共振コンデンサ24a、24bの容量は誘導加熱調理器に必要とされる最大火力(最大入力電力)によって決定される。共振回路において複数の共振コンデンサ24a、24bを用いることにより、個々の共振コンデンサ24a、24bの容量を半分にすることができるため、複数の共振コンデンサ24a、24bを使用した場合でも安価な制御回路を得ることができる。
【0062】
このとき、コイル電流検出手段25bは並列接続した複数の共振コンデンサ24a、24bのうち、共振コンデンサ24a側に配置されている。すると、コイル電流検出手段25bに流れる電流は、加熱コイル11a側に流れるコイル電流の半分になる。このため、小型・小容量のコイル電流検出手段25bを用いることが可能となり、小型で安価な制御回路を得ることができ、安価な誘導加熱調理器を得ることができる。
【0063】
本発明の実施形態は上記各実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。例えば、実施形態1において、電流変化検出手段34が入力電流検出手段25aで検出した入力電流の電流変化量ΔIを検出する場合について例示したが、入力電流に代えて、コイル電流検出手段25bで検出したコイル電流の電流変化量ΔIを検出しても良い。この場合、
図5および
図6に示す駆動周波数fと入力電流との関係を示すテーブルに代えて、駆動周波数fとコイル電流との関係を示すテーブルが記憶されることになる。さらに、入力電流とコイル電流の両方の電流変化量ΔIを検出しても良い。
【0064】
また、上記各実施形態において、ハーフブリッジ型のインバータ回路23について説明したが、フルブリッジ型や一石電圧共振型のインバータなどを用いた構成でも良い。
【0065】
さらに、負荷判定手段32での負荷判定処理において、入力電流とコイル電流との関係を用いる方式について説明したが、負荷判定の方式は特に問わず、共振コンデンサの両端の共振電圧を検出することで負荷判定処理を行う方式等の種々の手法を用いることができる。
【0066】
また、上記各実施形態において、被加熱物5の内容物として水を用いた場合について例示しているが、内容物の種類は問わず、水分と固形物とが混在した場合であってもよいし油等であっても適用することができる。
【0067】
また、上記各実施形態において、駆動周波数fを変更することで高周波電力(火力)を制御する方式について述べたが、インバータ回路23のスイッチング素子23a、23bのオンデューティ(オンオフ比率)を変更することで火力を制御する方式を用いても良い。具体的には、例えば駆動制御手段31には、加熱期間Thと最大火力となるスイッチング素子のオンデューティ比(例えば0.5)からのずらし量との関係が予め記憶されている。そして、駆動制御手段31は、期間計測手段35により計測された加熱期間Thに対応するずらし量でオンデューティ比をずらしてスイッチング素子23a、23bを駆動させることになる。
【0068】
さらに、上記実施形態2において、付加期間Teが加熱期間Thの長さに応じて設定される場合について例示しているが、加熱期間Thの経過後であって電流変化量ΔIがゼロ、すなわち入力電流が略一定になるまで付加期間Teとして設定するようにしてもよい。この場合であっても、被加熱物5内を温度ムラのない状態にすることができる。
【0069】
さらに、上記実施形態において、駆動周波数設定手段33が負荷判定手段32による材質の負荷判別結果に応じて駆動周波数fをfdに設定する場合について例示しているが、例えば炊飯器のような必ず同材質の被加熱物を加熱する等の場合、予め設定された駆動周波数fで駆動した電流変化量ΔIを用いて判定を行うようにしても良い。
【0070】
実施形態4.
本実施形態4では、上記実施形態1〜3における駆動回路50の詳細について説明する。
【0071】
図15は、実施形態3に係る誘導加熱調理器の駆動回路の一部を示す図である。なお、
図15においては、上記実施形態1〜3の駆動回路50の一部の構成のみを図示している。
図15に示すように、インバータ回路23は、正負母線間に直列に接続された2個のスイッチング素子(IGBT23a、23b)と、そのスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されたダイオード23c、23dとによって構成されるアームを1組備えている。
【0072】
IGBT23aとIGBT23bは、制御部45から出力される駆動信号によりオンオフ駆動される。
制御部45は、IGBT23aをオンさせている間はIGBT23bをオフ状態にし、IGBT23aをオフさせている間はIGBT23bをオン状態にし、交互にオンオフする駆動信号を出力する。
これにより、IGBT23aとIGBT23bとにより、加熱コイル11aを駆動するハーフブリッジインバータを構成する。
【0073】
なお、IGBT23aとIGBT23bとにより本発明における「ハーフブリッジインバータ回路」を構成する。
【0074】
制御部45は、投入電力(火力)に応じて、IGBT23aおよびIGBT23bに高周波の駆動信号を入力し、加熱出力を調整する。IGBT23aおよびIGBT23bに出力される駆動信号は、加熱コイル11aおよび共振コンデンサ24aにより構成される負荷回路の共振周波数よりも高い駆動周波数の範囲で可変して、負荷回路に流れる電流が負荷回路に印加される電圧と比較して遅れ位相で流れるように制御する。
【0075】
次に、インバータ回路23の駆動周波数とオンデューティ比とによる投入電力(火力)の制御動作について説明する。
【0076】
図16は、実施形態4に係るハーフブリッジ回路の駆動信号の一例を示す図である。
図16(a)は高火力状態における各スイッチの駆動信号の例である。
図16(b)は低火力状態における各スイッチの駆動信号の例である。
制御部45は、インバータ回路23のIGBT23aおよびIGBT23bに、負荷回路の共振周波数よりも高い高周波の駆動信号を出力する。
この駆動信号の周波数を可変することにより、インバータ回路23の出力が増減する。
【0077】
例えば、
図16(a)に示すように、駆動周波数を低下させると、加熱コイル11aに供給される高周波電流の周波数が、負荷回路の共振周波数に近づき、加熱コイル11aへの投入電力が増加する。
また、
図16(b)に示すように、駆動周波数を上昇させると、加熱コイル11aに供給される高周波電流の周波数が、負荷回路の共振周波数から離れ、加熱コイル11aへの投入電力が減少する。
【0078】
さらに、制御部45は、上述した駆動周波数の可変による投入電力の制御とともに、インバータ回路23のIGBT23aおよびIGBT23bのオンデューティ比を可変することで、インバータ回路23の出力電圧の印加時間を制御し、加熱コイル11aへの投入電力を制御することも可能である。
火力を増加させる場合には、駆動信号の1周期におけるIGBT23aのオン時間(IGBT23bのオフ時間)の比率(オンデューティ比)を大きくして、1周期における電圧印加時間幅を増加させる。
また、火力を低下させる場合には、駆動信号の1周期におけるIGBT23aのオン時間(IGBT23bのオフ時間)の比率(オンデューティ比)を小さくして、1周期における電圧印加時間幅を減少させる。
【0079】
図16(a)の例では、駆動信号の1周期T11におけるIGBT23aのオン時間T11a(IGBT23bのオフ時間)と、IGBT23aのオフ時間T11b(IGBT23bのオン時間)との比率が同じ場合(オンデューティ比が50%)の場合を図示している。
また、
図16(b)の例では、駆動信号の1周期T12におけるIGBT23aのオン時間T12a(IGBT23bのオフ時間)と、IGBT23aのオフ時間T12b(IGBT23bのオン時間)との比率が同じ場合(オンデューティ比が50%)の場合を図示している。
【0080】
制御部45は、上記実施形態1〜3で説明した、入力電流(又はコイル電流)の電流変化量ΔIを求める際に、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態においては、インバータ回路23のIGBT23aおよびIGBT23bのオンデューティ比を固定した状態にしている。
これにより、加熱コイル11aへの投入電力が一定の状態で、入力電流(又はコイル電流)の電流変化量ΔIを求めることができる。
【0081】
実施形態5.
本実施形態5においては、フルブリッジ回路を用いたインバータ回路23について説明を行う。
図17は、実施形態5に係る誘導加熱調理器の駆動回路の一部を示す図である。なお、
図17においては、上記実施形態1〜4の駆動回路50との相違点のみを図示している。
本実施形態5では、1つの加熱口に対して2つの加熱コイルが設けられている。2つの加熱コイルは、例えば、それぞれ直径が異なり、同心円状に配置されている。ここでは、直径の小さい加熱コイルを内コイル11bと称し、直径の大きい加熱コイルを外コイル11cと称する。
なお、加熱コイルの数及び配置は、これに限定されない。例えば、加熱口の中央に配置した加熱コイルの周囲に複数の加熱コイルを配置する構成でも良い。
【0082】
インバータ回路23は、正負母線間に直列に接続された2個のスイッチング素子(IGBT)と、そのスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されたダイオードとによって構成されるアームを3組備えている。なお、これ以降、3組のアームのうち1組を共通アーム、他の2組を内コイル用アームおよび外コイル用アームと呼ぶ。
【0083】
共通アームは、内コイル11bおよび外コイル11cに接続されたアームで、IGBT232a、IGBT232b、ダイオード232c、及びダイオード232dで構成されている。
内コイル用アームは、内コイル11bが接続されたアームで、IGBT231a、IGBT231b、ダイオード231c、及びダイオード231dで構成されている。
外コイル用アームは、外コイル11cが接続されたアームで、IGBT233a、IGBT233b、ダイオード233c、及びダイオード233dで構成されている。
【0084】
共通アームのIGBT232aとIGBT232b、内コイル用アームのIGBT231aとIGBT231b、外コイル用アームのIGBT233aとIGBT233bは制御部45から出力される駆動信号によりオンオフ駆動される。
【0085】
制御部45は、共通アームのIGBT232aをオンさせている間はIGBT232bをオフ状態にし、IGBT232aをオフさせている間はIGBT232bをオン状態にし、交互にオンオフする駆動信号を出力する。
同様に、制御部45は、内コイル用アームのIGBT231aとIGBT231b、外コイル用アームのIGBT233aとIGBT233bを交互にオンオフする駆動信号を出力する。
これにより、共通アームと内コイル用アームとにより、内コイル11bを駆動するフルブリッジインバータを構成する。また、共通アームと外コイル用アームとにより、外コイル11cを駆動するフルブリッジインバータを構成する。
【0086】
なお、共通アームと内コイル用アームとにより本発明における「フルブリッジインバータ回路」を構成する。また、共通アームと外コイル用アームとにより本発明における「フルブリッジインバータ回路」を構成する。
【0087】
内コイル11bおよび共振コンデンサ24cにより構成される負荷回路は、共通アームの出力点(IGBT232aとIGBT232bの接続点)と、内コイル用アームの出力点(IGBT231aとIGBT231bの接続点)との間に接続される。
外コイル11cおよび共振コンデンサ24dにより構成される負荷回路は、共通アームの出力点と、外コイル用アームの出力点(IGBT233aとIGBT233bの接続点)との間に接続されている。
【0088】
内コイル11bは、略円形に巻回された外形の小さい加熱コイルであり、その外周に外コイル11cが配置されている。
内コイル11bに流れるコイル電流は、コイル電流検出手段25cにより検出する。コイル電流検出手段25cは、例えば、内コイル11bに流れる電流のピークを検出し、加熱コイル電流のピーク値に相当する電圧信号を制御部45に出力する。
外コイル11cに流れるコイル電流は、コイル電流検出手段25dにより検出する。コイル電流検出手段25d、例えば、外コイル11cに流れる電流のピークを検出し、加熱コイル電流のピーク値に相当する電圧信号を制御部45に出力する。
【0089】
制御部45は、投入電力(火力)に応じて、各アームのスイッチング素子(IGBT)に高周波の駆動信号を入力し、加熱出力を調整する。
共通アーム及び内コイル用アームのスイッチング素子に出力される駆動信号は、内コイル11bおよび共振コンデンサ24cにより構成される負荷回路の共振周波数よりも高い駆動周波数の範囲で可変して、負荷回路に流れる電流が負荷回路に印加される電圧と比較して遅れ位相で流れるように制御する。
また、共通アーム及び外コイル用アームのスイッチング素子に出力される駆動信号は、外コイル11cおよび共振コンデンサ24dにより構成される負荷回路の共振周波数よりも高い駆動周波数の範囲で可変して、負荷回路に流れる電流が負荷回路に印加される電圧と比較して遅れ位相で流れるように制御する。
【0090】
次に、インバータ回路23のアーム相互間の位相差による投入電力(火力)の制御動作について説明する。
【0091】
図18は、実施形態5に係るフルブリッジ回路の駆動信号の一例を示す図である。
図18(a)は高火力状態における各スイッチの駆動信号と各加熱コイルの通電タイミングの例である。
図18(b)は低火力状態における各スイッチの駆動信号と各加熱コイルの通電タイミングの例である。
なお、
図18(a)及び(b)に示す通電タイミングは、各アームの出力点(IGBTとIGBTの接続点)の電位差に関係するものであり、内コイル用アームの出力点および外コイル用アームの出力点に対して共通アームの出力点が低い状態を「ON」で示している。また、内コイル用アームの出力点および外コイル用アームの出力点に対して共通アームの出力点が高い状態および同電位の状態を「OFF」で示している。
【0092】
図18に示すように、制御部45は、共通アームのIGBT232aおよびIGBT232bに、負荷回路の共振周波数よりも高い高周波の駆動信号を出力する。
また、制御部45は、共通アームの駆動信号より位相の進んだ駆動信号を、内コイル用アームのIGBT231aとIGBT231b、外コイル用アームのIGBT233aとIGBT233bに出力する。なお、各アームの駆動信号の周波数は同一周波数であり、オンデューティ比も同一である。
【0093】
各アームの出力点(IGBTとIGBTの接続点)には、IGBTとIGBTのオンオフ状態に応じて、直流電源回路の出力である正母線電位、あるいは負母線電位が高周波で切り替わって出力される。これにより、内コイル11bには、共通アームの出力点と、内コイル用アームの出力点との電位差が印加される。また、外コイル11cには、共通アームの出力点と、外コイル用アームの出力点との電位差が印加される。
したがって、共通アームへの駆動信号と、内コイル用アームおよび外コイル用アームへの駆動信号との位相差を増減することにより、内コイル11bおよび外コイル11cに印加する高周波電圧を調整することができ、内コイル11bと外コイル11cに流れる高周波出力電流と入力電流を制御することができる。
【0094】
火力を増加させる場合には、アーム間の位相αを大きくして、1周期における電圧印加時間幅を大きくする。なお、アーム間の位相αの上限は、逆相(位相差180°)の場合であり、このときの出力電圧波形はほぼ矩形波となる。
図18(a)の例では、アーム間の位相αが180°の場合を図示している。また、各アームの駆動信号のオンデューティ比が50%の場合、つまり、1周期T13におけるオン時間T13aとオフ時間T13bとの比率が同じ場合を図示している。
この場合、駆動信号の1周期T14における、内コイル11b、外コイル11cの通電オン時間幅T14aと、通電オフ時間幅T14bとが同じ比率となる。
【0095】
火力を低下させる場合には、高火力状態と比較してアーム間の位相αを小さくして、1周期における電圧印加時間幅を減少させる。なお、アーム間の位相αの下限は、例えば、ターンオン時に負荷回路に流れる電流の位相等との関係でスイッチング素子に過大電流が流れて破壊してしまわないレベルに設定する。
図18(b)の例では、アーム間の位相αを
図18(a)と比較して小さくした場合を図示している。なお、各アームの駆動信号の周波数及びオンデューティ比は、
図18(a)と同じである。
この場合、駆動信号の1周期T14における、内コイル11b、外コイル11cの通電オン時間幅T14aは、アーム間の位相αに応じた時間となる。
このように、アーム相互間の位相差によって、内コイル11b、外コイル11cへの投入電力(火力)を制御することができる。
【0096】
なお、上記の説明では、内コイル11bおよび外コイル11cを共に加熱動作させる場合を説明したが、内コイル用アーム又は外コイル用アームの駆動を停止し、内コイル11b又は外コイル11cの何れか一方のみを加熱動作させるようにしても良い。
【0097】
制御部45は、上記実施形態1〜3で説明した、入力電流(又はコイル電流)の電流変化量ΔIを求める際に、インバータ回路23の駆動周波数を固定した状態においては、アーム間の位相αと、各アームのスイッチング素子のオンデューティ比とを固定した状態にする。なお、その他の動作は上記実施形態1〜3と同様である。
これにより、内コイル11b、外コイル11cへの投入電力が一定の状態で、入力電流(又はコイル電流)の電流変化量ΔIを求めることができる。
【0098】
なお、本実施形態5では、内コイル11b流れるコイル電流と、外コイル11c流れるコイル電流とを、コイル電流検出手段25cとコイル電流検出手段25dによってそれぞれ検出している。
このため、内コイル11bおよび外コイル11cを共に加熱動作させた場合において、コイル電流検出手段25c又はコイル電流検出手段25dの何れか一方が、故障などでコイル電流値が検出できない場合であっても、他方の検出値によって、コイル電流の電流変化量ΔIを検出することが可能となる。
また、制御部45は、コイル電流検出手段25cで検出されたコイル電流の電流変化量ΔIと、コイル電流検出手段25dで検出されたコイル電流の電流変化量ΔIとをそれぞれ求め、それぞれ変化量のうち大きい方を用いて、上記実施形態1〜3で説明した各判断動作を行うようにしても良い。また、それぞれの変化量の平均値を用いて、上記実施形態1〜3で説明した各判断動作を行うようにしても良い。
このような制御を行うことで、コイル電流検出手段25c又はコイル電流検出手段25dの何れか検出精度が低い場合であっても、コイル電流の電流変化量ΔIを、より精度良く求めることができる。