【文献】
HYUNJUNG JUNG,THREE-DIMENSIONAL MULTILAYERED NANOSTRUCTURES 以下省略,ACS NANO,2011年 8月23日,V5 N8,P6164-6173
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記のn回の連続した段階を含むことを特徴とする、シリコン、熱によるまたは天然の酸化物層を有するシリコン、ゲルマニウム、白金、タングステン、金、窒化チタン、グラフェン、BARC(反射防止膜)またはリソグラフィで使用される反射防止層の中から選択される表面を、互いに異なっていてもよい制御されたラジカル重合で調製されたn個のランダムコポリマー(nは2以上の整数)を用いて作る方法:
(1)被処理表面にポリマーi(iは1〜nの連続した整数値)の溶液または分散液を接触させた後に、被処理表面と上記ポリマーiとを接触させるのに用いた可溶化溶剤または分散溶剤を蒸発させ、その後に上記表面への化学的グラフト(熱処理、光化学処理等)の段階を実行し、
(2)上記段階でポリマーiで処理された表面上に、ポリマーj=i+1を用いて上記の段階を繰り返し、
その後に、こうして処理された表面上にブロックコポリマーを塗布する。
【背景技術】
【0003】
ブロックコポリマーはそのナノ構造化(nanostructuring)能力によってエレクトロニクスまたはオプトエレクトロニクスの分野で現在広く使用されている。このことは非特許文献1(Cheng et al. ACS nano, vol. 4, No. 8, 4815-4823, 2010)に記載されている。特に、コポリマーを構成するブロックの配置を50nm以下のオーダで構造化できる。
【0004】
しかし、所望の構造化を行う(例えば、表面に対して直角な領域を作る)ためには、表面エネルギーを制御する目的でコポリマーが塗布される支持体を準備する必要がある。公知の方法では支持体にランダムポリマーを塗布する。この場合、このランダムコポリマーのモノマーは塗布するブロックコポリマーで用いたモノマーと完全または部分的に同じにすることができる。
【0005】
さらに、例えばランダムポリマーの拡散を防止したい時には、適切な官能基を用いてポリマーを表面にグラフトおよび/または架橋するのが好ましい。「グラフト」とは支持体とポリマーとの間に結合、例えば共有結合を形成することを意味し、「架橋」とはポリマー鎖間に複数の結合が存在することを意味する。
【0006】
同じポリマーを順次(sequentially)使用する場合には、グラフトは「多層状または多層的」であるといわれる。実際には(塗布、アニールおよび溶剤洗浄を)複数回繰り返してポリマーをグラフトする。分子量および/または組成の異なるポリマーを塗布する場合には、グラフトは「階層状または階層的」であるといわれる。後者の場合にはポリマーの塗布を同時にまたは連続して(successively)行うことができる。
【0007】
表面上でのブロックコポリマーの形態(morphologie)を配向させるのに使用可能な方法の中で、表面上にランダムPMMA/PSポリマーの層を予め塗布しておく方法がある。
【0008】
非特許文献2(Mansky et al. in Science, Vol. 275, pages 1458-1460、7 March 1997)には鎖末端をヒドロキシル基で官能化したランダムポリ(メチルメタクリレート−co−スチレン)(PMMA/PS) ポリマーを用いることで表面にこのポリマーを効果的にグラフトできるということが開示されている。この文献の著者はこのポリマーのグラフト能力は開始剤から来る末端ヒドロキシル基の存在によるものであり、それが縮合グラフトのメカニズムを構成するとしている。しかし、このメカニズムはこの文献で要求される温度および時間、一般には140℃、24〜48時間ではあまり効率的ではない。
【0009】
メチルメタクリレート(MMA)とスチレン(STY)モノマーの一定モル比率では、ランダムポリマーとPSおよびPMMAの各々との界面エネルギーは厳密に同じである〔非特許文献3(Mansky et al., Macromolecules 1997, 30, 6810-6813)〕。この状態は表面上に極めて薄い酸化物層を有するシリコン支持体の場合に生じるが、この場合、PSおよびPMMAとの界面エネルギーを同じにするためにはランダムポリマーの理想的組成が正確に上記比率にしなければならないという欠点がある。この著者はランダムポリマーの組成が変化した場合にはランダムポリマー上に塗布されたPS−PMMAジブロックコポリマーがランダムポリマーの組成に応じた形態を示すということを示している。従って、ランダムポリマーのMMA/STYの比率が一定でない場合にはジブロックコポリマーの形態が変化することになる。
【0010】
最近になって、複数の官能基、例えばヒドロキシルまたはエポキシを鎖末端ではなくランダムポリマー自体の中に導入することによって表面へのランダムポリマーのグラフトを有利に強化できるということが示されている〔非特許文献4(Han et al., Macromolecules, 2008, 9090-9097)、非特許文献5(Ji et al., Macromolecules, 2008, 9098-9103)、非特許文献6(Insik In et al., Langmuir, 2006, 22, 7855-7860)〕。この場合、ポリマーは複数の官能基で表面上にグラフトされ(ヒドロキシルの場合)、表面で架橋される(エポキシ基の場合)。
【0011】
ランダムポリマーで処理した表面上でのブロックコポリマーの配向性(orientation)に関しては上記文献に記載の各方法である程度制御できるが、塗布されたブロックコポリマーの形態(morphologie)に多数の欠陥が生じることが多く、工業用途、特にエレクトロニクス分野で不利となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
グラフト段階の最適数nはグラフト化に使用するポリマーの分子量に依存する。重量平均分子量が10 000 g/モル以下の場合、nは1以上の整数、好ましくは2〜4である。特にnは3であり、より好ましくは、nは2である。
ポリマーの重量平均分子量が10 000 g/モル以上の場合には、nは1以上の整数、好ましくは3〜7である。特にnは3〜6であり、より好ましくは、nは4または5である。
【0019】
本発明の第1の好ましい実施例では多層的にグラフトする。本発明の第2の好ましい実施例では階層的にグラフトする。本発明の一変形例では、重量平均分子量の差が20%以上である
2つのポリマー
をグラフトする。
【0020】
本発明の方法で処理された表面上のブロックコポリマーの構造化は、下記のような形をとる:ハーマン−モーガン記号に従って円筒状〔六方対称(基本六方網状対称「6mm」)〕、または四角/正方(基本正方網状対称「4mm」)、球状〔六方対称(基本六方網状対称「6mm」または「6/mmm」)〕、または四角/正方(基本正方網状対称「4mm」)、または立方体(網状対称「m1/3m」)、ラメラ、またはらせん状。好ましい構造化の形は六方円筒状であるのが好ましい。
【0021】
本発明に従って処理した表面上のブロックコポリマーの自己集合プロセス(procede d'auto-assemblage)は熱力学法則によって支配される。この自己集合によって円筒状形態になる場合、各円筒は欠陥が全くない6つの等距離隣接円筒によって取り囲まれる。こうして複数の欠陥のタイプを同定できる。第1のタイプはブロックコポリマーの配置によって形成された円筒の周りにある隣接円筒の数の評価に基づくものである。5または7つの円筒が対象円筒を取り囲む場合は欠陥が存在するとみなす。第2のタイプの欠陥は対象円筒を取り囲む円筒間の平均距離に関係する(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12)
【非特許文献9】W. Li, F. Qiu, Y. Yang, and A.C.Shi, Macromolecules 43, 2644 (2010)
【非特許文献10】K. Aissou, T. Baron, M. Kogelschatz, and A.Pascale, Macromol. 40, 5054 (2007)
【非特許文献11】R. A. Segalman, H.Yokoyama, and E. J. Kramer, Adv. Matter. 13, 1152 (2003)
【非特許文献12】R. A. Segalman, H. Yokoyama, and E. J. Kramer, Adv. Matter. 13, 1152 (2003)
【0022】
2つの隣接円筒間のこの平均距離が2つの隣接円筒間の平均距離の2%以上である場合に欠陥が存在するとみなす。これらの2つのタイプの欠陥を決定するためにボロノイ(Voronoi)構造および関連するドローネー三角分割法を用いるのが一般的である。画像2値化後に、各円筒の中心を同定し、次いで、ドローネー三角分割法によって一次隣接円筒の数を特定し、2つの隣接円筒間の平均距離を計算することができる。このようにして、欠陥の数を求めることができる。
この計数方法は非特許文献13に記載されている。
【非特許文献13】Tiron et al. (J. Vac. Sci. Technol. B 29(6), 1071-1023, 2011)
【0023】
ポリマーとは、立体除外クロマトグラフィー(SEC)で測定した重量分子量が1モル当たり500g以上であるホモポリマーまたはランダム、ブロック、グラジエント(勾配)または櫛形コポリマーを意味する。本発明方法で用いるポリマーは任意の経路、例えば重縮合、開環重合、アニオン重合またはカチオン重合または制御された、または、制御されないラジカル重合で得られる。上記ポリマーをラジカル重合またはテロマリゼーションで作る場合には周知の任意の方法、例えばNMP(ニトロオキシド介在重合)、RAFT(可逆的付加フラグメンテーション連鎖移動)、ATRP(原子移動ラジカル重合)、INIFERTER(開始−移動−停止)、RITP(逆ヨウ素移動重合)またはITP(ヨウ素移動重合)によって制御できる。
【0024】
本発明で使用するコポリマーはランダムコポリマーである、すなわち少なくとも2つの異なるモノマーを含むのが好ましい。
【0025】
金属を含まない重合方法が好ましい。上記ポリマーはラジカル重合、特に制御されたラジカル重合、さらにはニトロオキシドで制御された重合で調製するのが好ましい。
特に、下記の安定なフリーラジカル(1)から得られるアルコキシアミンに由来のニトロオキシドが好ましい。
【0027】
この式で基R
Lはモル質量が15.0342g/モル以上である。基R
Lはハロゲン原子、例えば塩素、臭素またはヨウ素、飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素基、例えばアルキル基、フェニル基、エステル基−COOR、アルコキシ基−ORまたはホスホン酸基-PO(OR)
2にすることができるが、その分子量は15.0342以上でなければならない。一価である基R
Lはニトロオキシド基の窒素原子に対してβ位にあるといわれる。式(1)における炭素原子および窒素原子の残りの原子価は種々の基、例えば水素原子、1〜10の炭素原子を有する炭化水素基、例えばアルキル、アリールまたはアリールアルキル基に結合できる。式(1)の炭素原子と窒素原子が2価の基を介して互いに結合して環を形成したものも除外されない。しかし、式(1)の炭素原子と窒素原子の残りの原子価は一価の基に結合しているのが好ましい。基R
Lはモル質量が30g/モル以上であるのが好ましい。基R
Lのモル質量は例えば40〜450g/モルにすることができる。例えば、基R
Lはホスホリル基を含む基にすることができ、この基R
Lは下記式で表すことができる:
【0029】
(ここで、R
3とR
4はアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリール、アラルキルオキシ、ペルフルオロアルキルおよびアラルキル基の中から選択することができ、互いに同一でも異なっていてもよく、1〜20個の炭素原子を有することができる)。R
3および/またはR
4はハロゲン原子、例えば塩素または臭素またはフッ素またはヨウ素原子でもよい。基R
Lは少なくとも一種の芳香族環、フェニル基またはナフチル基を含むことができ、例えば1〜4個の炭素原子を有するアルキル基で置換できる。
【0030】
特に、下記の安定な基から得られるアルコキシアミンが好ましい:
N-tert-ブチル 1-フェニル-2-メチルプロピル ニトロオキシド,
N-tert-ブチル 1-(2-ナフチル)-2-メチルプロピル ニトロオキシド,
N-tert-ブチル 1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル ニトロオキシド,
N-tert-ブチル 1-ジベンジルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル ニトロオキシド,
N-フェニル 1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル ニトロオキシド,
N-フェニル 1-ジエチルホスホノ-1-メチルエチル ニトロオキシド,
N-(1-フェニル-2-メチルプロピル) 1-ジエチルホスホノ-1-メチルエチル ニトロオキシド,
4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ,
2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノキシ。
【0031】
制御されたラジカル重合で用いられるアルコキシアミンは、その結合エネルギーに加えて、モノマーの鎖の配列を効果的に制御できなければならない。すなわち、これらがすべて所定モノマーを効果的に制御できるとは限らない。例えば、TEMPOから得られるアルコキシアミンは限られた数を超えるモノマーを制御できない。同じことが2,2,5-トリメチル-4-フェニル-3-アザヘキサン 3-ニトロオキシド (TIPNO) から得られるアルコキシアミンにも当てはまる。逆に、式(1)に対応するニトロオキシドから得られる他のアルコキシアミン、特に式(2)に対応するニトロオキシドから得られるもの、さらにはN-tertブチル 1-ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル ニトロオキシドから得られるものは、制御されたラジカル重合を多数のモノマーまで拡大できる。
【0032】
さらに、アルコキシアミンの開始温度(opening temperature)も経済的要因に影響する。工業的な問題を最小にするためには低い温度を用いるのが好ましい。従って、TEMPOまたは2,2,5-トリメチル-4-フェニル-3-アザヘキサン 3-ニトロオキシド(TIPNO)から得られるアルコキシアミンより、式(1)に対応するニトロオキシドから得られるアルコキシアミン、特に式(2)に対応するニトロオキシドから得られるもの、さらにはN-tertブチル 1ジエチルホスホノ-2,2-ジメチルプロピル ニトロオキシドから得られるものが好ましい。
「グラジエント(勾配)ポリマー」とは、一般にリビングまたは疑似リビング重合で得られる、少なくとも2つのモノマーのポリマーを意味する。これらの重合法によって、ポリマー鎖は同時に成長し、従って、絶えず同じ比率のコモノマーを含む。従って、ポリマー鎖中のコモノマーの分散は合成中のコモノマーの相対濃度のプロファイル(profile)に依存する。グラジエントポリマーの理論的説明に関しては下記の文献を参照されたい。
【非特許文献14】T. Pakula & al., Macromol. Theory Simul. 5, 987-1006 (1996)
【非特許文献15】A. Aksimetiev & al. J. of Chem. Physics 111, No. 5; M. Janco J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem. (2000), 38(15), 2767-2778
【非特許文献16】M. Zaremski, & al. Macromolecules (2000), 33(12), 4365-4372
【非特許文献17】K. Matyjaszewski & al., J. Phys. Org. Chem. (2000), 13(12), 775-786
【非特許文献18】Gray Polym. Prepr. (Am. Chem. Soc., Div. Polym. Chem.) (2001), 42(2), 337-338
【非特許文献19】K. Matyjaszewski, Chem. Rev. (Washington, D.C.) (2001), 101(9), 2921-2990
【0033】
ポリマー組成で使用可能なモノマーとしては下記のものが挙げられる:
少なくとも一種のビニル、ビニリデン、ジエン、オレフィン、アリルまたは(メタ)アクリルモノマー。このモノマーは特に下記の中から選択される:単独でまたは少なくとも2種の下記モノマーの混合物としての芳香族ビニルモノマー、例えばスチレンまたは置換スチレン、特にα−メチルスチレン、アクリルモノマー、例えばアクリル酸またはその塩、アルキル、シクロアルキルまたはアリールアクリレート、例えばメチル、エチル、ブチル、エチルヘキシルまたはフェニルアクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、エーテルアルキルアクリレート、例えば2−メトキシエチルアクリレート、アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリアルキレングリコールアクリレート、例えばメトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアクリレート、またはこれらの混合物、アミノアルキルアクリレート、例えば2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(DMAEA)、フッ素含有アクリレート、シリル含有アクリレート、燐含有アクリレート、例えばアルキレングリコール燐酸アクリレート、グリシジルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、メタクリルモノマー、例えばメタクリル酸またはその塩、アルキル、シクロアルキル、アルケニルまたはアリールメタクリレート、例えばメチルメタクリレート(MMA)、またはラウリル、シクロヘキシル、アリル、フェニルまたはナフチルメタクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレートまたは2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、エーテルアルキルメタクリレート、例えば2−エトキシエチルメタクリレート、アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリアルキレングリコールメタクリレート、例えばメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリプロピレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールメタクリレートまたはこれらの混合物、アミノアルキルメタクリレート、例えば2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、フッ素含有メタクリレート、例えば2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、シリル含有メタクリレート、例えば3−メタクリロイルプロピルトリメチルシラン、燐含有メタクリレート、例えばアルキレングリコール燐酸メタクリレート、ヒドロキシエチルイミダゾリドンメタクリレート、ヒドロキシエチルイミダゾリジノンメタクリレート、2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチルメタクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミドまたは置換アクリルアミド、4−アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、メタクリルアミドまたは置換メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メタクリルアミドプロピルトリメチル塩化アンモニウム(MAPTAC)、グリシジルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、イタコン酸、マレイン酸またはその塩、無水マレイン酸、アルキルまたはアルコキシ−またはアリールオキシポリアルキレングリコールマレエートまたはヘミマレエート、ビニルピリジン、ビニルピロリジノン、(アルコキシ)ポリ(アルキレングリコール)ビニルエーテルまたはジビニルエーテル、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)ビニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、オレフィンモノマー、例えばエチレン、ブテン、ヘキセンおよび1−オクテン、ジエンモノマー、例えばブタジエン、イソプレン、および、フッ素含有オレフィンモノマー、および、ビニリデンモノマー、例えばフッ化ビニリデン。
【0034】
ポリマーはモノマー、特にスチレン、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メチルアクリレートまたはエチルアクリレートから成るのが好ましい。スチレンはポリマー中に40〜100%、好ましくは60〜85%のモル量で存在するのが好ましい。
【0035】
本発明の第1の好ましい実施例では、ポリスチレン標準品を用いてSECで測定したランダムポリマーの重量平均分子量Mwが1モル当たり20 000g以下、特に10 000g/モル以下である。第1ポリマーの分散度すなわち数平均分子量に対する重量平均分子量の比は5以下、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。本発明の第1の観点では、ポリマーの重量平均分子量は10 000 g/モル以下である。本発明の第2の観点では、ポリマーの重量平均分子量は10 000 g/モル以上である。
【0036】
2つ以上のポリマーを用いるとき、これらをポリマー iおよびポリマー i + 1とよび、これらは以下のように選択される:
階層的グラフトの場合、重量平均分子量M
wは、ポリマー i + 1の重量平均分子量M
wがポリマー iの重量平均分子量M
wより低くなるように選択される。
多層的グラフトの場合、コポリマーの重量平均分子量M
wは同等である。
【0037】
本発明の一つの好ましい実施例では、本発明のランダムポリマーは2-メチル-2-[N-tert-ブチル-N-(ジエトキシホスホリル-2,2ジメチルプロピル)アミノキシ]-プロピオン酸 (Blocbuilder MA(登録商標)アルケマ) と、スチレンと、メチルメタクリレートとから作られる。
【0038】
本発明のポリマーを用いた表面作成方法はシリコン、熱的に作ったまたは天然の酸化物層を有するシリコン、水素化またはハロゲン化シリコン、ゲルマニウム、水素化またはハロゲン化ゲルマニウム、白金および白金酸化物、タングステンおよびその酸化物、金、窒化チタンまたはグラフェンに適用できる。上記表面は鉱物であるのが好ましく、より好ましくはシリコンである。この表面は天然または熱的に作った酸化物層を有するシリコンであるのがさらに好ましい。
【0039】
本発明の一つの好ましい実施例では、本発明方法で処理された表面上に塗布されるブロックポリマーはジブロックポリマーまたはトリブロックポリマーであるのが好ましい。
【0040】
本発明方法は、好ましくは予め適切な溶剤に溶解または分散した上記ポリマーを、当業者に公知の方法、例えばスピンコーティング、ドクターブレード、ナイフシステム(knife system)またはスロットダイシステム(slot die system)として知られる方法で塗布することを含むが、他の任意の方法、例えば乾式塗布(dry application)、換言すれば、予め溶解しない塗布も使用できる。
【0041】
本発明方法は、一般に10nm以下、好ましくは5nm以下のポリマーのグラフト層を形成するためのものである。ブロックポリマーを塗布するための表面形成に本発明方法を用いる場合、上記ポリマーはランダムポリマーであるのが好ましく、続いて塗布されるブロックコポリマーのブロックとの相互作用エネルギーは、塗布された複数のポリマー層の相互作用エネルギーまたは塗布されたポリマー混合物の相互作用エネルギーに等しいのが好ましい。
【0042】
本発明の一つの好ましい実施例では、ポリマーを連続して(sequentially)、すなわち、次々にグラフトするが、組み合わせのグラフトすなわちポリマー混合物をグラフトするものも除外されない。
本発明方法は表面上のブロックコポリマーの構造化、インクまたは塗料の印刷特性、湿潤性、耐候性、耐老化性、接着性および生体適合性の強化、インクのマイグレーション防止、蛋白質の沈着、汚損またはカビの防止を制御するために使用できる。
本発明方法はブロックコポリマーの構造化の制御で使用するのが好ましい。
【実施例】
【0043】
実施例1
市販のアルコキシアミンBlocBuilder(登録商標)MAからのヒドロキシ官能化アルコキシアミンの調製
窒素でパージされた1リットルの丸底フラスコに下記(1)〜(3)を導入する:
(1)226.17gのBlocBuilder(登録商標)MA(開始剤1)(1当量)
(2)68.9gの2−ヒドロキシエチルアクリレート(1当量)
(3)548gのイソプロパノール。
反応混合物を4時間、加熱還流(80℃)し、次いで、イソプロパノールを真空下に蒸発させる。これによって、高粘性黄色油状の297gのヒドロキシ官能化アルコキシアミンが生成する。
【0044】
実施例2
実施例1で調製したヒドロキシ官能化アルコキシアミンからポリスチレン/ポリメチルメタクリレートポリマーを製造する実験のプロトコール:
撹拌器およびジャケットを備えたステンレス鋼反応器にトルエンおよびモノマー、例えばスチレン(S)、メチルメタクリレート(MMA)およびヒドロキシ−官能化アミンを導入する。スチレン(S)モノマーとメチルメタクリレート(MMA)モノマーの重量比は[表1]に示してある。トルエンの導入量(重量)は反応混合物に対して30%に固定する。反応混合物を撹拌し、室温で30分間窒素をスパージングして脱気する。
【0045】
次いで、反応混合物の温度を115℃に上げる。時間t=0は室温で開始する。モノマー変換率が約70%に達するまで、温度を重合の間中115℃に保持する。一定の間隔でサンプルを採り、重量測定(乾燥抽出物の測定)によって重合の反応速度を求めた。
変換率が70%に達したら、反応混合物を60℃に冷却し、溶剤および残留モノマーを真空蒸発させる。蒸発後、反応混合物にメチルエチルケトンを添加し、約25重量%のポリマー溶液を製造する。
次いで、このポリマー溶液を非溶剤(ヘプタン)を入れたビーカーに一滴ずつ導入し、ポリマーを沈殿させる。溶剤と非溶剤(メチルエチルケトン/ヘプタン)の重量比は約1/10である。沈殿したポリマーを濾過および乾燥して白色粉末の形で回収する。
【0046】
【表1】
【0047】
(a)立体除外クロマトグラフィーによる測定:
ポリマーをBHTで安定化したTHF中に1g/lで溶かす。較正は単分散ポリスチレン標準品を用いて行う。254nmでの屈折率および紫外線による二重検出によってポリマー中のポリスチレンの百分率を求めることができる。
【0048】
実施例3
実施例2に記載のポリマーの他に、Polymer Source Inc. (Dorval, Quebec)からブロックコポリマーPS−b−PMMA(PS 46.1kg.mol
-1,PMMA 21kg.mol
-1,PDI=1.09)を購入し、その後の精製を行わずに用いた。
【0049】
SiO2上へのグラフト:
シリコンプレート(結晶方位{100})を3×4cm片にカットし、ピラニア処理(H
2SO
4/H
2O
22:1 (v:v))で15分間洗浄し、次いで、脱イオン水で洗浄し、窒素流中で乾燥し、直後に官能化する。以降の手順は非特許文献20に記載の手順であるが、一つ変更がある(室温で且つ真空下ではない状態で焼成する)。
【非特許文献20】Mansky & al. (Science, 1997, 1458)
【0050】
上記ランダムポリマーをトルエンに溶かして1.5重量%の溶液にする。PS−r−PMMA溶液を新たに洗浄された水中に注入し、次いで、スピンコーティングによって700回転/分で塗布し、厚さが約90nmのフィルムにする。次いで、支持体を予め所望の温度に加熱したホットプレート上に室温で様々な時間の間、載せる。次いで、支持体を複数のトルエン浴で音波処理で数分間洗浄し、表面から未グラフトポリマーを除去し、窒素流下に乾燥する。
【0051】
特徴決定:
フィルム厚さの測定はPrometrix UV1280エリプソメータで実施した。走査電子顕微鏡法で得られた画像をHitachiのCD-SEM H9300に記録した。
【0052】
欠陥の数の測定に関しては一つの方法を開発した。すなわち、「一般的」リソグラフィ(例えばe-Beam、HSQ樹脂を用いる)によって、線幅と線間(lines/spaces)の網状構造を用いて、サンプルを予め構造化する。[
図1]に示すように樹脂ユニットの高さはh0であり、線幅はLであり、トレンチの幅はSである。これらのサンプル上に上記のようにしてランダムポリマーをグラフトし、焼成によってブロックコポリマーを構造化する。コポリマーフィルムの高さhはトレンチの高さh
0より大きい。hはh
0より小さくすることができるが、本発明の方法ではhはh
0より大きいのが好ましいことは理解できよう。続いてPMMA相をPS相に対して優先的に後退させ、CD-SEMを用いて表面を画像化する。こうして得られた画像を続いて、隣接円筒の数の計算と隣接円筒間の平均距離の両方を考慮に入れながら、既に述べたアルゴリズムを用いて処理する。このアルゴリズムはVoronoiの構造に基づいている。欠陥最小値は双子通約性条件L = na0およびS = Na0(ここで、nおよびNは整数である)および0=√3/2L0(ここで、L0はブロックコポリマーの固有時間である)に対応する。
【0053】
実験プロトコール:
(1)自己集合法、リソグラフユニットの高さおよびブロックコポリマーの厚さは、製造されたサンプルを通じて一定であり、唯一の違いは、ランダムコポリマーAおよびBのグラフトにある。
(2)ヒストグラムおよび表示されたグラフでは、各ポイントは、対象の帯域からランダムに撮られた10枚の写真に対して実施された平均値である。各写真は1350 x 1350 nmのサンプルの帯域である。
(3)エリプソメトリー実験に関するグラフでは、各ポイントは7つの異なる測定値から形成された平均値である。
【0054】
読みやすくするために、下記の用語を用いる:
「A1」 =「t 1」の時間の間にグラフトしたランダムコポリマー「A」、
「A1A1」 =「t 1」の時間の間に2回続けてグラフトしたランダムコポリマー「A」、
「A1A1A1」 =「t 1」の時間の間に3回続けてグラフトしたランダムコポリマー「A」、
「A1B1」 = 「t 1」の時間の間にランダムコポリマー「A」をグラフトした後に、「t 1」の時間の間にランダムコポリマー「B」をグラフトする。
【0055】
特に説明の無い限り、下記の時間を用いる:
時間「t 1」= 15分
時間「t 2」= 30分
時間「t 3」= 5分
グラフトに用いる温度は240℃である。
欠陥の数の下記の測定([表2]および[
図2])を1350 x 1350 nmの矩形に対して実施した。
【表2】
【0056】
最良の結果は約65個の欠陥に位置することがわかり、下記に対応する:
(1)階層的グラフト(A1B1)
(2)最低分子量のポリマーを用いた多層的グラフト(B3B3, B3B3B3)
(3)多層的グラフトと階層的グラフトの組合せ(A3A3B3B3)。
さらに、最適なグラフト回数が観察され、最高分子量のポリマーAの場合は4より上([
図3])に、最低分子量のポリマーBの場合は2または3([
図4])に位置する。
【0057】
階層的グラフト中に、グラフトされた第1ポリマーの分子量が、グラフトされた第2ポリマーの分子量より大きい(B1A1と比較してA1B1)のが好ましいことは理解できよう。
さらに、[
図1]のパラメータSが182〜190 nmで変わるとき、グラフトされる層の数に関する最適値は常に約3に位置する([
図5])。
【0058】
最後に、本発明者は、階層的または多層的グラフト操作の間に層の厚さが増加せず、それによって、ブロックコポリマーが塗布されるまで、リソグラフパラメータの一定性が確保されということ、[
図1]のパラメータh0、LおよびSは多層的および階層的グラフト操作の間、一定のままであるということを見出した。これは、連続したグラフト操作で得られる残留ポリマーの厚さの測定によって確認される([
図6])、すなわち、グラフト段階を複数回実施したときでも、この厚さはポリマーの単分子層の範囲内にとどまる。実際には、厚さがわずかに減少する傾向さえ観察される。