特許第6021939号(P6021939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6021939エアレーションノズル及び、当該エアレーションノズルの目詰まり除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021939
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】エアレーションノズル及び、当該エアレーションノズルの目詰まり除去方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/20 20060101AFI20161027BHJP
   B01F 5/00 20060101ALI20161027BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   C02F3/20 Z
   B01F5/00 D
   B01F3/04 F
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-549874(P2014-549874)
(86)(22)【出願日】2013年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2013081959
(87)【国際公開番号】WO2014084276
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】61/730,441
(32)【優先日】2012年11月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515281204
【氏名又は名称】株式会社清和
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 明徳
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−018330(JP,A)
【文献】 特開2002−001077(JP,A)
【文献】 特開2004−141701(JP,A)
【文献】 特開2010−268829(JP,A)
【文献】 特表2009−541045(JP,A)
【文献】 特開2005−144425(JP,A)
【文献】 特開昭51−084456(JP,A)
【文献】 実開平05−067325(JP,U)
【文献】 特開2010−012443(JP,A)
【文献】 特開2010−104931(JP,A)
【文献】 特開2008−012470(JP,A)
【文献】 米国特許第05993158(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/14− 3/26
B01F 1/00− 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気供給源に接続される空気供給口と処理槽内の汚水を吸い込む汚水吸込口とが一端部に設けられ、前記空気供給口より供給された空気を上記汚水吸込口から吸いこんだ汚水と混合し、微細気泡を生成する微細気泡発生手段が前記空気供給口に対向して設けられたエアレーションノズルであって、
前記微細気泡発生手段は円筒状の本体と前記本体から中心に向かって突き出た複数のブレードとからなる筒体を、前記空気供給口より送り込まれた空気が通過する位置に配置した構成を有し、
前記筒体の前記ブレードは
基端部上記筒体の内面に固定され、かつ各先端が上記筒体の中央で互いに向かい合うように成形されており、
かつ弾性部材(例えばゴム)で形成されていることにより、基端部を起点として先端部が撓むように構成されている
ことを特徴とするエアレーションノズル。
【請求項2】
請求項1記載のエアレーションノズルにおいて、
上記ブレードは、上記空気供給口側から次第に幅が広くなるように構成され、これにより上記ブレードの可撓性が設定されているものである
ことを特徴とするエアレーションノズル。
【請求項3】
請求項1記載のエアレーションノズルにおいて、
記空気の通過方向に沿ってこのブレードを貫通し空気の通過を許容する複数の貫通孔を更に有し、これにより上記ブレードの可撓性が設定されているものである
ことを特徴とするエアレーションノズル。
【請求項4】
請求項1記載のエアレーションノズルにおいて、
上記ブレードは、その表面に空気の通過方向に沿って設けられた凹部(エッジを有するもの)を有し、これにより上記ブレードの可撓性が設定されているものである
ことを特徴とするエアレーションノズル。
【請求項5】
請求項1記載のエアレーションノズルにおいて、
上記筒体は、このエアレーションノズルに導入された空気及び汚水が通過する軸方向に複数段重ねて設けられ、
上記各筒体に設けられたブレードは、上記軸線方向の隣り合う互いの位置を、軸線周りに角度をずらして配置されており、
このエアレーションノズルは、
目詰まり解消用メンテナンス用治具を上段の筒体のブレード間に挿入し、それらのブレードを撓ませた場合に、その先端部をさらに下段の筒体のブレード間に挿入できるように構成されている
ことを特徴とするエアレーションノズル。
【請求項6】
請求項1記載のエアレーションノズルを、このエアレーションノズルが汚水処理槽内に設置された状態で目詰まりの除去を行うエアレーションノズルの目詰まり除去方法であって、
1又は複数の先端部を有するメンテナンス用治具を用い、このメンテナンス用治具の先端部を前記ブレード間に挿入し、捩じることで前記弾性部材により形成されているブレードを弾性的に撓ませてブレード間の隙間を広げる工程
を有することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、
上記ブレード間の隙間を広げる工程は、前記空気供給源を作動させた状態で行うことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、
前記メンテナンス用治具は、上記汚水処理槽の深さに対応した長さの延長部を有し、汚水処理槽内に汚水が貯留されている状態で上記ブレード間の隙間を広げる工程を実行できるように構成されている
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、汚水処理装置に用いるエアレーションノズル及び、当該エアレーションノズルの目詰まりを除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水や洗浄水を使用する工場等においては、鉱物油や植物油などで汚れた水を浄化するために、その汚水に好気性菌等を作用させ、この好気性菌等を繁殖させることで汚れた成分を消化させることにより処理する方法が一般的に使用されている。このような汚水処理装置においては、好気性菌等を繁殖させるために、汚水に微細な気泡を混合して酸素呼吸を促し、好気性菌等の生存環境を整えることが必要とされる。
【0003】
このような汚水中への微細な気泡の混合や発生を行う装置は、エアレータと呼ばれ、浄化しようとする汚水中に配置されることで、汚水と空気とを混合し、汚水中の好気性菌を活性化させるように構成されている。このようなエアレータとして、従来から、内部に螺旋状の羽を備え、空気流によって生じる上方への水流をこの螺旋状の羽などで渦巻き状の水流とし、上昇水流中で気泡の混入を促進する構造のものがあった。
【0004】
このような羽を備えるエアレータおいては、汚水中に含まれる異物が羽に引っかかって、目詰まりを起こしてしまうということが想定される。しかしながら、このように内部に羽を備えるエアレータを取り出して掃除等することは一般に困難であり、メンテナンス上の問題となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、性能が高くかつメンテナンスの容易なエアレーションノズル及び、そのエアレーションノズルの目詰まり解消方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によれば、
(1) 空気供給源に接続される空気供給口と処理槽内の汚水を吸い込む汚水吸込口とが一端部に設けられ、前記空気供給口より吸い込まれた空気を上記汚水吸込口から吸いこんだ汚水と混合し、微細気泡を生成する微細気泡発生手段が前記空気供給口に対向して設けられたエアレーションノズルであって、
前記微細気泡発生手段は筒状の本体と前記本体から中心に向かって突き出た複数のブレードとからなる筒体を、前記空気供給口より吸い込まれた空気が通過する位置に複数個配置した構成を有し、
前記筒体の前記ブレードは
基端部が上記筒体の内面に固定され、かつ各先端が上記筒体の中央で互いに向かい合うように成形されており、
かつ弾性部材(例えばゴム)で形成されていることにより、基端部を起点として先端部が撓むように構成され、これにより、例えば、処理槽の上部より挿入されたメンテナンス用治具をブレード間に受け入れ、この治具でブレードを撓ませて、ブレード間に詰まった異物を取り除くように構成されている。
【0007】
また、上記構成ようによれば、動作中に上記ブレードが弾性的に振動することにより異物が引っかかりにくくまた引っかかったとしてもすぐに脱落しやすい。
(2) (1)のエアレーションノズルにおいて、
上記ブレードは、上記空気供給口側から次第に幅が広くなるように構成され、これにより上記ブレードの可撓性が設定されているものであることを特徴とする。
(3) (1)のエアレーションノズルにおいて、
上記空気の通過方向に沿ってこのブレードを貫通し空気の通過を許容する複数の貫通孔を有し、これにより上記ブレードの可撓性が設定されているものであることを特徴とする。
(4) (1)のエアレーションノズルにおいて、
上記ブレードは、その表面に空気の通過方向に沿って設けられた凹部(エッジを有するもの)を有し、これにより上記ブレードの可撓性が設定されているものである。
(5) (1)のエアレーションノズルにおいて、
上記筒体は、このエアレーションノズルに導入された空気及び汚水が通過する軸方向に複数段重ねて設けられ、
上記各筒体に設けられたブレードは、上記軸線方向の隣り合う互いの位置を、軸線周りに角度をずらして配置されており、
このエアレーションノズルは、
目詰まり解消用メンテナンス用治具を上段の筒体のブレード間に挿入し、それらのブレードを撓ませた場合に、その先端部をさらに下段の筒体のブレード間に挿入できるように構成されている
ことを特徴とする。
(6)上記(1)のノズルが汚水を一旦貯留する処理槽にあらかじめ装着されてなる汚水ユニット。この汚水ユニットは、汚水が出るあらゆる施設(工場、業務用厨房、一般家庭)に適用可能である。
(7) (1)のエアレーションノズルを、このエアレーションノズルが汚水処理槽内に設置された状態で目詰まりの除去を行うエアレーションノズルの目詰まり除去方法であって、
1又は複数の先端部を有するメンテナンス用治具を用い、このメンテナンス用治具の先端部を前記ブレード間に挿入し、捩じることで前記弾性部材によって形成されているブレードを弾性的に撓ませてブレード間の隙間を広げる工程
を有することを特徴とする方法。
(8) (7)の方法において、
上記ブレード間の隙間を広げる工程は、前記空気供給源を作動させた状態で行うことを特徴とする方法。
(9) (8)の方法において、
前記メンテナンス用治具は、上記汚水処理槽の深さに対応した長さの延長部を有し、汚水処理槽内に汚水が貯留されている状態で上記ブレード間の隙間を広げる工程を実行できるように構成されている
ことを特徴とする方法。
【0008】
なお、上記した以外の本発明の特徴は、添付した図面及びそれらの図面に基づいて説明される最良の実施形態の記載から当業者にとって明らかにされるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、この発明の一実施形態に係るエアレーションノズルを備えた汚水処理装置を示す側面図である。
図2図2は、同じく、エアレーションノズルを示す側面図である。
図3図3は、同じく、上面図である。
図4図4は、同じく、下面図である。
図5図5は、同じく、上段の円筒形気泡発生体を示す平面図である。
図6図6は、同じく、下面図である。
図7図7は、同じく、ブレードの構成を示す模式図である。
図8図8は、同じく、ノズルの目詰まりを解消するための治具を用いる場合の模式図である。
図9図9は、同じく、治具の先端部を拡大して示す側面図である。
図10図10は、同じく、平面図である。
図11図11は、別の実施形態を示す開閉弁の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
図1は、この実施形態のエアレーションノズル1が設置されてなる汚水処理装置2を示すものである。
【0012】
この汚水処理装置2は、一般に家庭や工場に設置された浄化槽(図示しない)に接続され、浄化槽からの汚水をさらに浄化する機能を有する装置であり、第1、第2の処理槽3、4を有する。この第1、第2の処理槽3、4は、円筒形の内部形状を有し、それぞれの底部に、前記エアレーションノズル1が設置されている。
【0013】
第1の処理槽3の上部には汚水流入口5が接続されており、矢印6で示すように浄化槽からの汚水がこの第1の処理槽3内に流入するようになっている。また、第1、第2の処理槽3、4は、高さ方向中途部において流通口7を介して互いに連結されており、矢印8で示すように、この流通口7を通して第1の処理槽3で処理された汚水が第2の処理槽4に流入するようになっている。
【0014】
第1、第2の処理槽3、4内においては、後で詳しく説明するように、エアレーションノズル1から噴出する微細気泡9が、円筒状の内壁に沿って周方向及び上下方向に効果的・効率的に循環し、処理槽内に常在する菌を活性化して有機物の分解を促すようになっている。
【0015】
この第1の処理槽3内の汚水は、上記流通口7を通して第2の処理槽4に押し出され、これら、第1、第2の処理槽3、4内で汚水処理が順次行われる。
【0016】
第2の処理槽4の下部には吐出口10が設けられており、この吐出口10には排出管11が接続されている。この排出管11は、第2の処理槽4の下部から上方に延出され、所定の高さで水平方向に屈曲され、この高さでオーバフローが生じ、矢印12で示すように処理済みの汚水が排出されるように構成されている。
【0017】
また、この汚水処理装置の外側には、エアレーションポンプ13が設けられ、このエアレーションポンプ13は、接続管15を介して各処理槽3、4に設けられたエアレーションノズル1に接続され、上記ポンプ13から所定の圧力(流量)の空気がノズル1内に供給されるようになっている。
【0018】
エアレーションポンプ13の容量は、槽の大きさやエアレーションノズル1の大きさに応じて可変であるが、この実施形態では毎分60L〜250L(60〜250L/mim)である。
【0019】
図2図4は、上記エアレーションノズル1を拡大して示す側面図、上面図、下面図である。
【0020】
エアレーションノズル1は、前記エアレーションポンプ13からの接続管15が下端(空気吸込口16a)に接続され、この接続管15が接続された部位は略円錐形の吸込カバー16となっていて、接続管15の周囲に設けられた汚水吸込口17から、この処理槽3内の汚水を吸い込むようになっている。
【0021】
前記吸込カバー16の上方には、微細気泡発生手段18が固定されている。この微細気泡発生手段18には、円筒状気泡発生体19a、19bが軸方向に上下2段に積層された状態で設けられている。
【0022】
図5及び図6は、上記円筒状気泡発生体19a、19bのうち、上段に設けられた円筒状気泡発生体19aを示す上面図及び下面図である
この円筒状気泡発生体19aは、円筒状の本体21と、本体21から中心に向かって突き出た複数のブレード22とから構成されている。すなわち、これらのブレード22は、それぞれ、基端部が上記本体21の内面に固定され、かつ各先端が上記本体21の中央で互い所定の隙間(開口部28)を介して向かい合うように成形されている。
【0023】
また、このブレード22は、ゴム材料で形成されていることにより、基端部を起点として先端側が撓むように柔軟に構成され、後で説明するように目詰まりの除去が容易になるように構成されている。この実施形態では、このブレード22及び本体21を含む気泡発生体19a全体がゴム材料で形成されているが、上記本体21がステンレス等の剛体で形成され上記ブレード22のみがゴム材料等の弾性体で形成されていても良い。
【0024】
また、上記ブレード22は、その材質に加え、以下のように孔や溝等が形成されていることにより、その柔軟性を向上させ、弾性が目詰まり除去に好適になるように制御可能となっている。
【0025】
図7は、上記ブレード部分を拡大して示す図であり、図中、(a)はこのブレード22の上面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)はブレード22を上記気泡発生体19aの中心からから見た場合の側面図である。
【0026】
このブレード22は、上記吸入口17側から上方に向かって次第に幅が広くなるように一面22a側がテーパー状に構成され、かつ汚水の通過方向に沿ってこのブレード22を貫通し空気の通過を許容する複数の細孔24を有するものである。また、上記ブレード22は、その表面に空気の通過方向に沿って設けられた溝部25を有する。この溝部25とブレード22の境界部25aが鋭いエッジを構成し、後で説明するように気泡の発生を助けるものである。また、ブレード22の突出方向の先端部のエッジ22bも同様の機能を奏するようになっている。
【0027】
この上段の気泡発生体19aの下側に配置された下段の気泡発生体19bも、基本的に同形状であり、本体21とこの本体内に中央方向に向かって突出した複数のブレード22とを有するが、上記ブレード22の配置が図3に点線で示すように、周方向に30度だけずらされて配置されているものである。
【0028】
そして、上段及び下段の気泡発生体19a、19b及び上記吸込口カバーは、周方向4か所で、4本のネジ27によって相互に固定されている。
【0029】
次に、この微細気泡発生手段18における気泡9の発生作用を説明する。
【0030】
上記接続管15を通して上記エアレーションポンプ13から供給された空気は、上記吸込カバー16内へ上方向に向けて噴出される。これにより、カバー16内が負圧になるから、上記供給口17から上記処理槽内の汚水が吸込カバー16内に吸い込まれる。
【0031】
このようにして吸込口カバー16内に導入された汚水及び空気は、上記2段の気泡発生体19a、19bに導入される。上方に向かう気液混合流は、上記ブレード22に激しく衝突して微細な気泡になる、このときにキャビテーション現象が発生し始める。すなわち、ノズル内を上昇する微細な気泡を含む水流は、上記ブレード22による抵抗があるために、中央部の開口部28に集まろうとする。そして中央に集まる流体は、通過流速が、この開口部28を通過する際に速くなる。そして流速が速くなれば、その部分における圧力が低下する(ベルヌーイの定理による)。このことで、圧力の低下した流体中の空気の一部は、圧力の低下にともない更に細かな気泡となると同時に、これらの気泡は上記ブレード22の先端のエッジに発生する渦巻く水流にも揉まれて、更に微細な気泡になって行く。また、各ブレード22にも細孔24が形成されているから、この細孔24を通過するときにも同様の作用により気泡が生じる。これらの作用は、すなわち、キャビテーションであり、この場合、前記開口部28や細孔24は、その直径が小さいほど通過する液体の流速が増加し、より効果的にキャビテーションが起こって微細気泡の発生が促進される。
【0032】
この後、開口部28を通過した水流は、一気に開放されて、気泡崩壊、すなわち多数の微細気泡9が発生し、微細化して崩壊する微細気泡は槽内に広がりつつ消滅して行く。また、中央の開口部28から周辺に逃げた流体は、前記エッジ22b、25bや溝部25と衝突する。これらによって渦キャビテーションや小さな乱流が起こり、渦キャビテーションおよび条件によってはクラウドキャビテーションも発生する。このようにして、さらに、微細な気泡の発生が促進される。
【0033】
効果的にキャビテーションを発生させるために、上記エアレーションポンプ13の出力が、処理する汚水等の状態により適切決定されており、この実施形態においては、毎分30L〜250Lに設定されている。
【0034】
ここで、汚水等には、ごみや泥等の異物が混入しているため、開口部28や細孔24の径や、ブレード22の隙間の通過幅が小さいと詰まりが生じる可能性がある。しかし、この実施形態のブレード22は、ゴム材料という弾性体で形成されているため、通過する流体の抵抗及びキャビテーションにより微小振動を生じやすく、目詰まりがしにくくなっている。
【0035】
一方、それでも、目詰まり生じた場合、内部にブレード22を備えるエアレーションノズル1を外部に取り出して掃除等することは一般に困難である。これに対して、この実施形態では、図8に29で示すようなメンテナンス用治具を用いて外部から掃除が行えるようになっている。
【0036】
上記メンテナンス用治具29は、長尺の延長部30と、二股に分かれた先端部31とを有するもので、処理槽3、4の上部開口からこの処理槽3、4内に挿入し、上記二股の先端部31を、ブレード22間の隙間に挿入する。図9は、この状態を示す側面図、図10は、同じく上面図である。
【0037】
つぎに、この治具29の延長部30を図10に矢印32で示すように軸周りに駆動することで、上記弾性材料からなるブレード22の先端側を撓ませ、ブレード22間の隙間を広げることができる。上記エアレーションノズル1の運転中にこの作業を行うことで、ブレード22間に詰まった異物を水流により押し出して取り除くことができる。
【0038】
なお、このメンテナンス用治具29は、二股に限らず、三股、四股、五股、六股等であっても良い。これは、エアレーションノズル1のサイズや作業性、作業効率性に応じて適宜決定すればよい。
【0039】
また、この実施形態においては、上記ブレード22には上下方向に貫通する複数の細孔24及び溝25が設けられているので、その先端側における可撓性が向上させられ、上記メンテナンス用治具29による作業がしやすくなるように構成されている。この観点から、上記細孔24及び溝部25の大きさ、位置、数はメンテナンスのしやすさを考慮して、適宜の位置に設けるようにすることが好ましい。
【0040】
なお、この発明は、上記一実施形態のものに限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、円筒状気泡発生体は、上段と下段の2段に限らず、1段、3段等であってもよい。円筒状気泡発生体の段数に応じて、各段のブレード22の数も適宜変更可能である。また、ブレード22の配置も周方向に30度ずらすものに限定されるものではなく、上記メンテナンス用治具29の先端部31を挿入しやすくするために、ずらす角度を30度以下にしてもよい。その代わりに先端部31の長さ及び直径自体を小さくして、先端部31を挿入しやすくしてもよい。
【0041】
上記一実施形態では、上記両方の処理槽3、4に設けられたエアレーションノズル1を同時に作動させるようにしていたが、窒素を分解した際に発生するイオン(硝酸イオン、亜硝酸イオン)を処理するために、少なくとも第2の処理槽4におけるエアレーションノズル1の動作時間を短時間にすることで無酸素槽にして脱窒反応を起こさせ、フィルター槽を通過させて排出するようにしても良い。また、第1の処理槽3と第2の処理槽4を同時に、または、交互に無酸素槽とすることで脱窒を行うというような運用も可能である。
【0042】
そのためには、上記エアレーションポンプ13と各槽3、4に設けられたエアレーションノズル1を接続する接続管15の中途部に槽3、4用の開閉弁34a、34bを独立して設け、コントローラ35で各弁34a、34bの開閉時間を独立的に制御することが有効である。また、エアレーションノズル1毎に独立したエアレーションポンプを設け、それらのポンプを、同時に或は別々に作動を行うことも可能である。
【0043】
また、第2の処理槽4にはエアレーションノズル1を設けず、完全な無酸素槽とすることも考えられるが、無酸素槽でもエアレーションノズル1を取り付け、少時間稼動すれば汚れをより分解することが可能になり長期の沈殿を少なくすることができる。
【0044】
この場合、処理槽内の沈殿物を効率よく分解処理するために、処理槽の底面部におけるエアレーションノズル1を設置する箇所(ノズル1の汚水吸込口17が対向する面)を一番低く設計し、沈殿物を吸引しやすくすることも有効である。
【符号の説明】
【0045】
1…エアレーションノズル
2…汚水処理装置
3…第1の処理槽(汚水処理槽)
4…第2の処理槽(汚水処理槽)
5…汚水流入口
7…流通口
9…微細気泡
10…吐出口
11…排出管
13…エアレーションポンプ(空気供給源)
15…接続管
16…吸込口カバー
16a…空気吸込口
17…汚水吸込口
18…微細気泡発生手段
19a、19b…円筒状気泡発生体(筒体)
21…本体
22…ブレード
24…細孔
25…溝部
27…ネジ
28…開口部
29…メンテナンス用治具
30…延長部
31…先端部
34a.34b…開閉弁
35…コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11